JP4039509B2 - 小規模立坑の掘削および復旧工法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、小規模立抗の掘削および復旧工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
マンホールの設置工事やガス管あるいは水道管などの配管の埋設工事、さらには既設埋設管の修理補修や点検作業を行うために、アスファルトコンクリートの舗装面を一旦壊して路盤を露出させ、開削する必要がある。
【0003】
従来、アスファルトコンクリートを壊す場合には、掘削位置決定後、アスファルトカッターによって表層アスファルトコンクリートを切削し、その後、エンジンブレーカにより切削した範囲のアスファルトコンクリートを破砕し、破砕したアスファルトコンクリート塊(アス塊)を廃材として回収し、工事現場から再生プラントに運搬して加熱再生処理されるようになっている。
また、アスファルトコンクリートを壊して掘削された箇所での工事が終了すると、埋め戻しが行われるが、その埋め戻しは、路床、路盤および表層部に対してそれぞれ砂、採石およびアスファルト混合物などが各層での仕様に応じて用いられ、転圧されて仕上げる復旧工事が行われる。
一方、アスファルトコンクリートを壊す機会としては上述したマンホールなどよりも小径の立抗を掘削する場合がある。小径の立て坑は埋設管の漏洩検査機器や埋設物の探査機器あるいは埋設管の防食機器を挿入する際に用いられ、その径が10〜30cm程度の小規模な立抗が形成される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
小規模な立抗を掘削および掘削箇所の復旧に際しては、バイブロランマーやプレートコンパクターなどの転圧機械が使用されるが、復旧後の仕上がり具合が材料の種類や転圧機械の種類あるいは作業者の熟練度の違いによって一様ではなく、安定した復旧品質を得ることが難しいのが現状である。
加えて、小規模狭窄部では、復旧の際の埋め戻し時に転圧機械の転圧範囲と小規模な立抗の面積とが大きく異なると立抗以外の路面に転圧力が作用して立抗には転圧がうまく作用しないこともあり、これによって、十分な転圧が行えないという不具合がある。そこで、掘削範囲を広げたり特殊な狭窄用ランマーを準備することで対応しているが、転圧が十分でない場合には小規模の立抗部の路面沈下を誘発する虞がある。補助的にはセメントコンクリートなどの固化剤を埋め戻しのために用いることもあるが、工事が大がかりとなり、しかも固化時間が長く必要となることから復旧完了までの時間がながくなり、道路の交通再開に手間取るという二次的な弊害が生じてしまう。
【0005】
本発明の目的は、上記従来の小規模立抗を対象とした掘削および埋め戻しによる復旧工法における問題に鑑み、簡単な設備および簡単な作業によって転圧不良を起こすことなく短時間で復旧が完了させられる小規模立抗の掘削および復旧工法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するため、請求項1記載の発明は、小規模立抗の掘削および復旧工法であって、表層、路盤、路床部からなる道路の路面から地中に円筒状カッターを進入させて上記表層および上記路盤を一括して切削し、上記円筒状カッター内に上記表層および上記路盤を収容したコア状のままで地中から抜き取ることで上記小規模立抗を開削する開削工程と、上記小規模立抗の復旧時、上記路床部上面に、セメント、乳剤、凝固までの時間に応じた量の水から構成されるセメント乳剤モルタルを充填する充填工程と、上記円筒状カッターから取り出したコア状の上記表層および上記路盤を上記小規模立抗内に装填する装填工程とを含むことを特徴としている。
【0007】
請求項2記載の発明は、小規模立抗の掘削および復旧工法であって、表層、路盤、路床部からなる道路の路面から地中に円筒状カッターを進入させて上記表層および上記路盤を一括して切削することで上記小規模立抗を開削する開削工程と、上記小規模立抗の復旧時、上記路床部上面に、前記路盤としての強度に対応させて設定された粒度を揃えた砕石と、セメント、乳剤、凝固までの時間に応じた量の水から構成されるセメント乳剤モルタルとを混入して打設する打設工程とを含むことを特徴としている。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項2に記載の小規模立抗の掘削および復旧工法において、凝固固化した上記砕石および上記セメント乳剤モルタルの表面に既設舗装部分との間の段差を修正する段差修正材を塗布する塗布工程をさらに含むことを特徴としている。
【0010】
【作用】
請求項1記載の発明では、表層と路盤とが一括して切削されて除去されることにより表層および路盤の破壊を行わないようにすることができる。この開削時に表層と路盤とが円筒状カッター内にコア状で残されるので、復旧時にはそのコア状の表層および路盤をそのまま小規模立抗内に落とし込んで装填するだけで現状復帰が行える。しかも、落とし込まれた表層および路盤は予め路床部上面に充填されたセメント乳剤モルタルが浸透することで凝固固化するので、埋め戻し後の転圧作業が不要となり、埋め戻しの際の手間を省くことができる。
【0011】
請求項2および3記載の発明では、開削された小規模立抗に対して路盤としての強度に対応させて設定された粒度を揃えた砕石とセメント乳剤モルタルとを混入して打設するだけでセメント乳剤モルタルの凝固固化による現状復帰が行えるので、埋め戻しの際の転圧作業を不要にできる。しかも、砕石およびセメント乳剤モルタルの混入量を調整するだけで小規模立抗の大きさに対応することができるので、埋め戻し作業を容易化することができる。特に、必要であれば、既設舗装面との段差を段差修正材の塗布によりなくすことができるので、仕上がり状態を均一化することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面に示した実施例により本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本実施例による小規模立抗の開削状態を説明するための道路の断面図である。
図1において本実施例により開削される立抗1は、10〜30cm程度の小径の立抗であり、この立抗1を開削する際には、立抗の内径に対応する外径を有した円筒状カッター2が準備される(図1(A)参照)。
円筒状カッター2を路面から地中に進入させて表層1Aおよび路盤1Bを一括して切削し、円筒状カッター2内にこれら表層1Aおよび路盤1Bを収容した状態で地中から抜き取る(図1(B)、(C)参照)。
円筒状カッター2内に収容された状態で地中から抜き取られた表層1Aおよび路盤1Bは、図2に示すように、概ね凝縮固化した状態であるのでコア状をなし、円筒状カッター2内から取り出した際にも地中にあった状態を維持している。
【0013】
図3は、開削された立抗1の復旧状態を説明するための道路の断面図である。
図3において表層1Aおよび路盤1Bが抜き取られた立抗1の埋め戻しの際には、路床部1Cの上面にセメント乳剤モルタル3を充填し、円筒状カッター2から取り出したコア状の表層1Aおよび路盤1Bを立抗1内に落とし込んで装填する。
本実施例において使用されるセメント乳剤モルタル3は、固化剤となるセメントに乳剤を加え、さらに固化遅延材としての水が加えられて構成されている。このため、水の量を調整することで凝固するまでの時間を変化させることができるようになっている。凝固までの時間は後述する表層1Aおよび路盤1B内への浸透度に影響する。
【0014】
表層1Aおよび路盤1Bが立抗1内に装填されると、セメント乳剤モルタル3は落とし込まれたコア状の表層1Aおよび路盤1Bによって押し潰されて表層1Aおよび路盤1Bの周囲に持ち上がりながら表層1Aおよび路盤1B内に浸透する。
これにより、円筒状カッター2を挿入した際に生じる隙間部分と表層1Aおよび路盤1B内に浸透したセメント乳剤モルタル3が自己硬化することで凝固される。このときの凝固までの時間を調整することで浸透度が適正化され、立抗1内面に対する表層1Aおよび路盤1Bの一体化が最適化される。
【0015】
埋め戻された立抗1は、表層1Aおよび路盤1Bがセメント乳剤モルタル3と共に凝固することで現状復帰されるので従来必要とされていた転圧作業を行うことなく仕上げられることになる。
【0016】
次の本発明の実施形態に係る別実施例を図4において説明する。
図4は、図1に示した掘削作業後の復旧状態を説明するための道路の断面図である。
図4において開削された立抗1内には、路床部1Cの上面に粒度を揃えた砕石4とセメント乳剤モルタル3とが混入されて打設される。
砕石4は、路盤1Bとしての強度に対応させて粒度が設定され、強度を高める場合には小粒度の砕石が用いられる。
砕石4が立抗1における表層1Aの位置まで埋め込まれるとセメント乳剤モルタル3が注入され、砕石4間に浸透させられる。
砕石4およびセメント乳剤モルタル3を混入させて打設することにより、セメント乳剤モルタル3の自己硬化による凝固によって立抗1内面に対してセメント乳剤モルタル3を介して砕石4が一体化されて現状復帰される。これにより、従来行われていた転圧作業を行わないで復旧させることができる。
【0017】
砕石4とセメント乳剤モルタル3とを混入して打設することにより現状復帰が行えるが、場合によっては、図4中、符号5で示すように段差修正材を塗布して既存の舗装面との段差をなくす仕上げ処理が実行される。
【0018】
以上のような実施例によれば、転圧作業を行わないで現状復帰させることができる。しかも、復旧の際にはコンクリートミキサーなどの大がかりな設備ではなく、セメント乳剤モルタルの各般に用いるバケツとハンドミキサーなどの小規模な工具のみですむ。
さらに、埋め戻しの際にはセメント乳剤モルタルが自己硬化により凝固することを利用するだけであるので、転圧作業を行う場合と違って仕上がり状態を一様化することができ、安定した復旧品質が得られる。しかも凝固までの時間を調整することによりセメント乳剤モルタルの浸透度を変化させることができるので、凝固状態を最適化して強度低下を防止することが可能となるばかりでなく復旧作業後の道路の交通再開時までの時間を短縮させることもできる。
【0019】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によれば、表層と路盤とが一括して切削されて除去されることにより表層および路盤の破壊を行わないようにすることができる。これにより、エンジンブレーカなどの大がかりな設備を要することなく小規模の立抗形成が可能となる。しかも、復旧時には、円筒状カッター内に収容されたコア状の表層および路盤をそのまま用いて小規模立抗内に凝固固化させるだけで現状復帰ができるので、転圧作業が不要になる。この結果、転圧不良の発生がなくなる。加えて、新たな復旧材料を用いる必要がないので、作業手順の簡略化による作業時間の短縮および用いる材料のコスト低減が可能となる。
【0020】
請求項2および3記載の発明によれば、開削された小規模立抗に対して路盤としての強度に対応させて設定された粒度を揃えた砕石とセメント乳剤モルタルとを混入して打設するだけでセメント乳剤モルタルの凝固固化による現状復帰が行えるので、埋め戻しの際の転圧作業を不要にできる。しかも、砕石およびセメント乳剤モルタルの混入量を調整するだけで小規模立抗の大きさに対応することができるので、埋め戻し作業を容易化することができる。特に、必要であれば、既設舗装面との段差を段差修正材の塗布によりなくすことができるので、仕上がり状態を均一化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明実施例による立抗の開削状態を説明するための図であり、(A)は開削前を、(B)は開削中を、(C)は開削後をそれぞれ示している。
【図2】開削時に地中から抜き取られた表層と路盤とを示す図である。
【図3】復旧時の一作業態位を示す図である。
【図4】復旧時の他の作業態位を示す図である。
【符号の説明】
1 小規模な立抗
1A 表層
1B 路盤
1C 路床部
2 円筒状カッター
3 セメント乳剤モルタル
4 砕石
5 段差修正材
Claims (3)
- 小規模立抗の掘削および復旧工法であって、
表層、路盤、路床部からなる道路の路面から地中に円筒状カッターを進入させて上記表層および上記路盤を一括して切削し、上記円筒状カッター内に上記表層および上記路盤を収容したコア状のままで地中から抜き取ることで上記小規模立抗を開削する開削工程と、
上記小規模立抗の復旧時、上記路床部上面に、セメント、乳剤、凝固までの時間に応じた量の水から構成されるセメント乳剤モルタルを充填する充填工程と、
上記円筒状カッターから取り出したコア状の上記表層および上記路盤を上記小規模立抗内に装填する装填工程とを含む
ことを特徴とする小規模立抗の掘削および復旧工法。 - 小規模立抗の掘削および復旧工法であって、
表層、路盤、路床部からなる道路の路面から地中に円筒状カッターを進入させて上記表層および上記路盤を一括して切削することで上記小規模立抗を開削する開削工程と、
上記小規模立抗の復旧時、上記路床部上面に、前記路盤としての強度に対応させて設定された粒度を揃えた砕石と、セメント、乳剤、凝固までの時間に応じた量の水から構成されるセメント乳剤モルタルとを混入して打設する打設工程とを含む
ことを特徴とする小規模立抗の掘削および復旧工法。 - 請求項2に記載の小規模立抗の掘削および復旧工法において、
凝固固化した上記砕石および上記セメント乳剤モルタルの表面に既設舗装部分との間の段差を修正する段差修正材を塗布する塗布工程をさらに含む
ことを特徴とする小規模立抗の掘削および復旧工法。
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