カラー液晶表示装置には、液晶パネルを構成する透明電極基板の各画素電極上にR(赤)、G(緑)、B(青)の3原色のマイクロカラーフィルタを1つ1つ形成し、液晶を光スイッチとして前記カラーフィルタを透過した色光を混合することによって多色表示又はフルカラー表示を実現する方式が多く採用されている。一般にカラーフィルタは、顔料粒子を堆積させて、又は顔料粒子と樹脂との混合物により形成されるので、その表面には大きな凹凸がある。特にSTN方式の液晶パネルは、カラーフィルタの上にITO(Indium Tin Oxide)を成膜しかつパターニングして、透明電極を形成する必要がある。このため、カラーフィルタを透明保護層で被覆してその保護及び平坦化を図るのが通例である。
例えば図21に示す構造のカラーフィルタ100は、透明なガラス板からなる支持体101上に3原色の画素の集合からなる着色層102を有し、かつその上に透明保護層103が形成されている。透明保護層103上には、ITO膜からなる透明電極104が液晶の駆動電極として形成されている。透明保護層103は、有機樹脂材料をスピンコートしたり印刷する等により支持体101及び着色層102の全面に形成される。透明電極104の端子部105には、液晶パネルを完成した後に別個のテープキャリアパッケージ(TCP)や基板に搭載された液晶の駆動回路を異方性導電膜や異方性接着剤等で電気的に接続する。ところが、端子部105は、その下に比較的軟らかい有機樹脂層があるため、駆動回路を接続する際の圧力で割れ易いという問題がある。また、実装した駆動回路を補修のために取り外す際に、透明保護層103が剥がれ易いという問題がある。
これらの問題を解消するために、図22に示すカラーフィルタ100は、透明保護層103が、透明な支持体101上の着色層102のみを被覆するように部分的に形成され、かつその上に透明電極104が形成される。従って、透明電極104の端子部105は支持体101上に直接形成されている。また、図23に示す構造のカラーフィルタ100は、透明な支持体101上に透明電極104を直接形成して、ITO膜のパターニングを容易にしている。この型式のカラーフィルタは、透明電極104の上に形成される着色層102の表面に凹凸があるため、その上に同様に透明保護層103を被覆して平坦化し、液晶を入り易くしかつ液晶の配向不良が起こらないようにしている。透明保護層103は、透明電極104の端子部105を露出させるように部分的に形成される。
図22及び図23のように透明保護層103を部分的に形成する場合は、支持体101及び着色層102の全面に有機樹脂材料をスピンコート、印刷等により成膜した後に端子部105の部分を部分的に除去する方法、又は最初から端子部105の部分を除いて有機樹脂材料をオフセット印刷等により部分的に成膜する方法がある。有機樹脂膜の部分的除去には、一般にホトリソグラフィ技術又はレーザが使用される。
また、液晶パネルの電極パターンを形成した透明電極基板の表面には、配向膜が形成される。一般に配向膜は、上述したカラーフィルタの透明保護層と同様に、ポリイミド等の有機樹脂材料を基板全面に塗布した後、透明電極の端子部から部分的に除去することによって、又は印刷法で有機樹脂材料を基板の前記端子部を除いて部分的に印刷することによって形成される。
しかしながら、ホトリソグラフィ技術で透明保護層103を形成する場合、感光性材料を用いる必要があるために、その中に含まれる光反応開始材が成膜後に透明保護層103の中に残存し、その耐熱性を低下させる虞がある。そのため、透明保護層に使用し得る樹脂材料が制限されるという問題がある。更に透明保護層103のエッジ部106が、図22に示すように垂直であるため、その上に成膜されるITOのカバレッジが悪くなり、パターニング後に透明電極が断線する虞が生じる。
レーザにより有機樹脂材料を部分除去する方法は、透明保護層103のエッジ部が損傷を受けて剥がれ易くなり、耐久性が低下する虞がある。更に透明電極104の上に透明保護層103を成膜する構造の場合、下層のITO膜を残して上層の有機樹脂材料だけを選択的に除去することが困難であり、端子部105が損傷を受け易いという問題がある。特にエキシマレーザの場合には、装置が高価であり、かつ安全性の確保にコストがかかるという問題もある。
また、部分的な印刷で透明保護層103を形成する場合は、そのようなパターン印刷に適した材料が必要であり、揮発性の少ない溶剤を用いること、最適な粘性を有するなどの条件が要求されるため、使用し得る材料が制限されるという問題がある。特にこのパターン印刷では、図24に示すように、透明保護層104のエッジ部106が樹脂材料の表面張力により盛り上がり、その膜厚が他の部分と比較して2倍以上に厚くなることがある。盛り上がった部分の厚さtが液晶パネルのセルギャップより大きい場合には、透明保護層103の研磨が必要になる。厚さaがセルギャップより小さい場合でも、この部分にはシール印刷ができないから、ガラス基板全体の寸法が大きくなり、液晶表示装置の小型化が図れない。しかも、部分的な印刷法では、透明保護層104の平坦度を確実かつ十分に確保することが困難であり、また、樹脂材料が熱硬化する際に放出する有機物によって基板表面が汚れる虞がある。
特に、顔料粒子をコロイド分散させたミセル水溶液の電解によって着色層を形成した所謂ミセルカラーフィルタの場合には、着色層が導電性を有するため、その上に形成する透明保護層を、通常のカラーフィルタの膜厚(1μm以上)よりも薄く、好適には0.1〜0.4μm程度の膜厚に成膜する必要があるから、部分的な印刷法を採用することは技術的に困難である。
他方、プラズマを用いて被処理材の表面を様々に処理するための技術が、従来より様々な分野で利用されている。このようなプラズマ表面処理によっても、上記透明保護層に使用するような有機樹脂材料の被膜をアッシングして除去することができる。しかし、従来のプラズマ表面処理方法は、一般に真空中又は減圧された環境下でプラズマ放電させ、それにより生成される活性種を用いるため、真空チャンバ等の特別な装置・設備が必要であり、処理能力が低くかつ大面積の処理が困難で、製造コストが高くなるという問題があった。更に、真空中では、生成されたラジカルの平均自由工程が長く、拡散が大きいため、上述したカラーフィルタの透明保護層を形成する場合のように、制限された領域だけの局部的な表面処理には不向きである。
最近では、大気圧付近の圧力下でプラズマ放電させることにより生成される励起活性種を用いて、被処理材の表面を処理する技術が開発されている。大気圧下でのプラズマ表面処理は、真空設備を必要とせず、装置を簡単かつ小型化することができ、インライン化や連続処理が可能で、生産性の向上を図りかつ低コストを実現できる等の利点がある。例えば特許文献1に記載される従来の表面処理装置は、一定の離隔距離をもって対向配置された1対の円板状の電極間で放電させ、放電ガスを多孔質誘電体を通して放電領域全体に分散させ、前記電極間に配置された被処理物の広い表面を一度に処理するものである。例えば特許文献2に記載される別の従来の表面処理装置は、細長い直線状の電極を有する所謂ラインタイプで、そのすぐ下側を相対的に移動する被処理材の表面を走査しながら処理する。異常放電を防止するべく誘電体で包囲した前記電極と被処理材との間で放電を発生させ、該電極の下面開口から放電ガスを放電領域に噴出させ、その励起活性種により被処理材表面を連続的に処理する。
特開平6−2149号公報
国際公開第WO96/31997号パンフレット
しかしながら、従来の大気圧プラズマ表面処理方法及び装置は、上述したように主に比較的大きな面積を短時間で表面処理することを目的としており、被処理物の表面を部分的にかつ選択的に処理することはできなかった。このため、従来の大気圧プラズマによる表面処理をカラーフィルタの透明保護層の形成に適用した場合には、ガラス板の全面が表面処理されてしまい、透明保護層全体がアッシングされて除去されることになる。
また、液晶パネルの配向膜を形成する場合に、液晶パネル全面に配向膜を形成すると、配向膜とシール剤との密着性があまり良くないので、液晶パネルの信頼性を損なう虞がある。また、液晶パネルのシール部から配向膜を部分的に除去する場合、ホトリソグラフィ技術を用いると、使用し得る感光性材料が限定される問題があり、レーザを用いると、配向膜だけでなく透明電極まで除去する虞がある。液晶パネルを組み立てた後に上記プラズマ処理を行い、外部に露出している配向膜の部分をアッシングして除去する別の方法もあるが、一般にスループットが悪く、液晶パネルの他の部分をプラズマにより損傷する虞がある。また、配向膜の部分的印刷は、使用し得る材料が限定されるという問題がある。
そこで、本発明は、上述した従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、大気圧付近の圧力下で発生させたプラズマを用いて、被処理物の表面を部分的にかつ選択的に処理することができる表面処理方法及びそのための装置を提供することにある。
また、本発明の別の目的は、大気圧プラズマによる部分的な表面処理を利用して、透明保護層が透明電極の端子部から部分的に除去され、かつ高い平坦性を有し、その上に透明電極が形成し易くかつ断線し難い信頼性の高いカラーフィルタ、及びそのようなカラーフィルタを透明保護層の材料を限定することなく低コストでかつ簡単に製造し得る方法を提供することにある。
更に、本発明の目的は、大気圧プラズマによる部分的な表面処理を利用して、配向膜が透明電極の端子部から部分的に除去され、かつ高い平坦性を有し、液晶の配向性の均一さを確保し得る液晶パネル、及びそのような液晶パネルを配向膜の材料を限定することなく低コストでかつ簡単に製造し得る方法を提供することにある。
本発明の表面処理方法は、上述した目的を達成するためのものであり、大気圧及びその近傍の圧力下において電極と被処理材との間で気体放電を発生させ、この気体放電により所定のガスの励起活性種を生成し、該励起活性種に被処理材表面を曝露して表面処理する工程からなり、この被処理材表面上にマスク手段を配設してその処理領域を制限する工程を含むことを特徴とする。
大気圧近傍の圧力下では、真空中又は減圧環境下に比して電子の平均自由工程が短く、しかも前記所定のガスの気体分子によって励起活性種の運動が妨げられ易い。このため、励起活性種の移動がマスク手段によって容易に制限され、被処理材表面の所望の領域だけを選択的に、高い精度で良好に処理することができる。前記所定のガスを適当に選択しかつ放電条件を適当に設定することによって、エッチング、アッシング、ぬれ性改善等の表面改質、被膜形成などの様々な表面処理が可能である。ここで、エッチングとは金属や無機物を除去することをいうものとし、アッシングとは有機物を酸化等により除去することをいうものとする。
或る実施例では、前記マスク手段を被処理材の表面に接触させて配置する。これによって、被処理材表面は、マスク手段が接触している領域及びそれより外側の領域が前記ガスの励起活性種から完全に遮断されるので、処理したい領域だけを高い精度で選択的に表面処理することができる。別の実施例では、マスク手段を、被処理材の表面との間に僅かなギャップを画定するように配置する。このギャップを、励起活性種が侵入したりその中を通って外部に拡散しない程度に設定することによって、被処理材表面の選択的な部分処理を可能にすると同時に、マスク手段から汚れが転写したり被処理材表面が損傷する等の虞が解消され、被処理材または被膜の材質、用途、表面の状態などの処理条件に左右されないので、様々な材質の被処理材に対応でき、広範な分野で所望の部分表面処理が可能となる。
被処理材表面とマスク手段との間にギャップを設ける場合、このギャップ内に前記所定のガスを噴出させて気体放電の発生領域に供給することができる。これにより、単に放電領域への大気の混入だけでなく、ギャップへの励起活性種の侵入及び外部への拡散を確実に阻止することができる。従って、被処理材表面の所望の領域をより高精度にかつ高効率に安定して処理することができる。
前記ギャップは、或る実施例によれば、被処理材を載せるステージに対するマスク手段の高さ位置を予め決定しておき、これに合わせてマスク手段を機械的に位置決めすることにより形成される。この場合、複雑な位置決め機構を必要とせず、ギャップを簡単に形成することができる。別の実施例では、マスク手段と被処理材表面との距離を光学的に検出することによって、前記ギャップを決定することができる。これによって、被処理材の厚さ・形状のばらつきに左右されることなく、常に一定のギャップを形成して、均一な表面処理を確保することができる。更に、上述したようにギャップを介して前記所定のガスを供給する場合は、ギャップ内に噴出させるガスの圧力を検出することによって、ギャップの大きさを決定することができる。これにより、励起活性種のギャップへの侵入阻止と同時に、被処理材の厚さや形状のばらつきに対応して常に一定のギャップが形成される。
また、本発明の別の側面によれば、大気圧及びその近傍の圧力下において被処理材との間で気体放電を発生させるための電極と、前記気体放電の発生領域に所定のガスを供給する手段とを備え、前記気体放電により生成される前記ガスの励起活性種に曝露される前記被処理材表面の領域を制限するマスク手段を更に有することを特徴とする表面処理装置が提供される。これにより、上述した本発明の部分的な表面処理方法を比較的簡単な構成により低コストで実現することができ、前記マスク手段によって、大気圧近傍の圧力下で発生させたプラズマによる表面処理を被処理材表面の制限された領域だけ選択的に行うことができる。
マスク手段は、被処理材の表面に接触させて、又は被処理材表面との間に僅かなギャップを画定するように配置する。マスク手段を接触させる場合には、その先端部を例えばくさび状に形成して細くし、被処理材表面との接触面積を小さくすると、マスク手段から被処理材表面に汚れが転写する虞を少なくすることができる。マスク手段は、通常絶縁体材料で例えばシリコンゴム、テフロン、ガラス等の誘電体で形成し、気体放電の発生に影響を与えないようにする。
これに対し、別の実施例では、マスク手段の全体又は一部分を金属等の導電体で形成し、接地電極として機能させることができる。これにより、気体放電の範囲をマスク付近の領域に制御できるので、局所的な表面処理能力の向上を図ることができる。特に非接触型のマスク手段の場合には、気体放電がマスク手段と被処理材とのギャップにまで広がらないように制御することができる。
また、非接触型のマスク手段は、ギャップに向けて開口するガス噴出口を設けることによって、前記ガス供給手段から所定のガスが前記ギャップを通して放電領域に供給されるようにすることができる。これにより、ガス噴出口が放電領域に開口する構造に比して、励起活性種のギャップ内への侵入をより効果的に阻止できることに加えて、放電領域に面して露出する角の部分が無くなるので、放電によるパーティクルの発生及びそれによる被処理材の汚染が減少し、局所的な表面処理能力の向上が図られる。
別の実施例では、被処理材を載せるステージに対してマスク手段を相対的に接近・離反させる駆動機構を備えることができる。マスク手段の高さ位置を予め設定しておき、これに合わせてマスク手段を動かせば、被処理材表面とのギャップを機械的に決定できるので再現性が良く、かつ構造及び操作が簡単でコストの低減を図れるので好都合である。更に光センサを設けて、マスク手段と被処理材表面との間隔を測定すると、被処理材の厚さや形状のばらつきに左右されることなく、常にギャップを一定に維持し、均一な表面処理を確保できるので、有利である。また、上述したガス供給手段を一体化した前記非接触型のマスク手段では、前記光センサに代えて、ギャップ内に噴射するガスの圧力を検出する圧力センサを設けることができる。この圧力センサは、ギャップの大きさに対応して変化する前記ガスの圧力によって、所望のギャップを決定する。この場合には、放電領域へのガスの供給と適正なギャップの形成とを1つの構成で同時に行うことができるので、好都合である。
前記電極を細長い直線状に形成し、かつマスク手段を該電極に沿って延長するように、好適にはその全長に亘って設けると、被処理材表面を直線状に仕切って所望の処理を高精度に行うことができる。更に、このようなマスク手段を電極の両側に沿って設けると、被処理材表面を細長い直線状の領域に限定して処理することができる。
また前記電極は、その外面を誘電体で覆うことによって、異常放電の発生やそれによる被処理材又はステージの破壊又は損傷を防止することができる。前記マスク手段をこの誘電体と一体的に形成すると、前記電極と一体化されて、被処理材に関する電極及びマスク手段の位置を同時にかつ一義的に適正な位置に設定することができる。また、気体放電の発生領域に面する前記誘電体の部分を多孔質体で形成し、かつ該多孔質体を介して所定のガスを導入すると、前記ガスが放電領域に均一に分配されるので、励起活性種の分布及びそれによる表面処理がより均一になる。
更に、前記電極を挟んでマスク手段と反対側に排気口を開設すると、放電領域から使用済みのガスを強制的に排出することができ、被処理材表面から除去した物質等の再付着や汚染を防止し、放電によるオゾン等を適切に処理できるので好都合である。
更に、本発明の別の側面によれば、透明な支持体と、該支持体上に形成された着色層、透明保護層及び透明電極とからなる液晶パネルのカラーフィルタの製造において、前記透明電極の端子部の位置に対応する透明保護層の周辺部分を該透明保護層の他の部分から仕切るようにマスク手段を配置し、大気圧及びその近傍の圧力下において電極と前記透明保護層との間で気体放電を発生させ、この気体放電により所定のガスの励起活性種を生成し、該励起活性種に透明保護層の前記周辺部分を選択的に曝露して除去する工程からなることを特徴とするカラーフィルタの製造方法が提供される。
このように構成することによって、従来の製造工程に対して複雑な工程を加えたり高価な装置・設備を用いることなく、使用する材料に制限を受けることなく透明保護層をスピンコート、ロールコート、印刷法等により支持体の全面に成膜できるので、上述した従来の問題点を解消して透明保護層を平坦に形成でき、かつ透明保護層を高精度に部分除去できると共に、工程全体を簡単化、低コスト化することができる。しかも、透明保護層の上にITOを成膜して透明電極を形成する構造のカラーフィルタでは、大気圧プラズマによる表面処理によって透明保護層のエッジ部が丸く形成されるので、透明電極の形成が容易になり、ITO膜のカバレッジが良いためにパターニング後にも断線等の不具合を生じる虞が無く、高品質で信頼性の高いカラーフィルタが簡単にかつ低コストで得られる。
従って本発明によれば、透明な支持体と、該支持体上に形成された着色層、透明保護層及び透明電極とを有し、該透明保護層が、その透明電極の端子部に対応する周辺部分を他の部分から仕切るようにマスク手段を配置し、かつ大気圧及びその近傍の圧力下において電極と前記透明保護層との間で気体放電を発生させ、この気体放電により生成される所定のガスの励起活性種に選択的に曝露させて除去することにより、透明電極の端子部を除くように部分的に形成されていることを特徴とするカラーフィルタが提供される。
従って、支持体上に形成した着色層の上に透明保護層が形成されかつその上に透明電極が形成される構造のカラーフィルタでは、透明電極の端子部のみが支持体上に直接成膜される。透明電極が支持体上に直接形成されかつその上に形成した着色層の上に透明保護層が形成される構造のカラーフィルタでは、支持体上に直接成膜された透明電極の端子部のみが露出している。いずれの場合にも、液晶パネルへの駆動回路の実装及び取外しを容易に行うことができる。
更に本発明によれば、透明電極を形成した透明基板の上にその全面に亘って配向膜を形成し、前記透明電極の端子部の位置に対応する配向膜の部分を該配向膜の他の部分から仕切るようにマスク手段を配置し、大気圧及びその近傍の圧力下において電極と前記配向膜との間で気体放電を発生させ、この気体放電により所定のガスの励起活性種を生成し、該励起活性種に配向膜の前記部分を選択的に曝露して除去する工程からなることを特徴とする液晶パネルの製造方法が提供される。
このように構成することによって、同様に従来の製造工程に対して複雑な工程を加えたり高価な装置・設備を用いることなく、使用する材料に制限を受けることなく配向膜をスピンコート、ロールコート、印刷法等により透明基板の全面に平坦に成膜できる。このように製造された液晶パネルは、透明電極の端子部から配向膜を高い精度で部分的に、液晶パネルの他の部分を損傷することなく容易に除去できる。この部分にシール部を設けた場合、シール剤との密着性が改善され、液晶パネルの信頼性の向上が図られる。従って、液晶の配向性の均一さを確保し得る高品質の液晶パネルを簡単かつ低コストで製造することができる。
また本発明によれば、透明基板と、その上に形成された透明電極と配向膜とを有し、配向膜が、その透明電極の端子部に対応する周辺部分を他の部分から仕切るようにマスク手段を配置し、かつ大気圧及びその近傍の圧力下において電極と前記配向膜との間で気体放電を発生させ、この気体放電により生成される所定のガスの励起活性種に前記周辺部分を選択的に曝露させて除去することにより、透明電極の端子部を露出させるように部分的に形成されていることを特徴とする液晶パネルが提供される。
図1には、本発明による表面処理装置の好適な実施例が示されている。表面処理装置1は、交流電源2に接続された概ね直方体の細長い電極3を有する。電極3下面には、長手方向に全長に亘って同一形状・寸法の2本の放電発生部4、5が、一定の離隔距離をもって平行に下向きに突設されている。電極3の下部には、全長に亘って誘電体6が装着されている。両放電発生部4、5間には、前記誘電体によって中間チャンバ7が画定され、電極3上面に開口するガス導入口8に連通している。誘電体6の中央には、中間チャンバ7から下向きに開口する細い直線状のガス噴出口9が、電極3の全長に亘って形成されている。
誘電体6の下面には、ガス噴出口9に沿って電極3の全長に亘って直線状に延長するマスク10が突設されている。本実施例のマスク10は、その下面が誘電体下面と平行な矩形の断面形状を有し、石英ガラスで形成されている。マスク10は誘電体6と一体に形成することができ、または別個に形成したものを一体的に結合してもよい。マスク10には、目的とする表面処理に応じて放電時に生成される励起活性種に対する耐久性の高いものであれば、石英ガラス以外のガラス材料や絶縁体材料、例えばシリコンゴム、フッ素樹脂、セラミック材料等の誘電体を用いることができる。
表面処理装置1の下方には、被処理材例えば回路基板やウエハが配置される。電極3は、図2に示すように、マスク10下面が被処理材11の表面に接触し、該マスクを境として被処理材表面の処理したい領域11Aが電極側に、他の領域から完全に遮断されるように配置する。この状態で、所望の表面処理に適した所定のガスを外部ガス供給源からガス導入口8を介して中間チャンバ7内に供給し、ガス噴出口9から被処理材表面に向けて噴出させる。これと同時に、交流電源2から電極3に所定の電圧を印加して、前記両放電発生部と被処理材11との間で気体放電を発生させる。誘電体6下面と被処理材表面との間隙には、前記放電で発生したプラズマによる前記所定のガスの励起活性種が生成される。被処理材表面は、前記励起活性種がマスク10に妨げられて外側に流れ出ず、その内側の領域11aのみが選択的に曝露されて処理される。ここで、電極3または放電発生部4に対するマスク10の位置は、使用するガス種、その流量、電圧などの放電条件によって放電領域の範囲や処理能力が異なるので、これらの条件に応じて適当に設定する。
図3に示す変形例では、マスク10がくさび形の断面形状に形成され、かつその先端10Aを下向きにして誘電体6下面に設けられている。マスク10は、領域11Aを他の領域から仕切るように、先端10Aを被処理材11表面に接触させて配置する。この場合、マスク10と被処理材表面との接触面積が図2の場合に比して大幅に小さくなる。従って、マスクに付着しているごみや汚れが被処理材表面に転写される可能性が非常に少なくなる。このように被処理材表面との接触面積を小さくできるマスクの形状は、上述したくさび形に限定されず、薄い板状の仕切壁に形成したり、被処理材表面を傷つけないようにマスク先端を丸くしたり多少の幅を持たせることもできる。
図1の表面処理装置を用いて被処理材の表面からアクリル樹脂の被膜を部分アッシングする実験を行った。被処理材には、ソーダガラスの表面にアクリル樹脂(日本合成ゴム株式会社製 SS1121)を0.2μmの厚さで成膜したものを用いた。マスク10はシリコンゴムで形成し、図4に示すように、被処理材11のアクリル樹脂膜12表面に接触させた。前記外部ガス供給源から放電ガスとしてヘリウムを毎分20リットル、酸素を毎分200ミリリットルの割合で導入し、気体放電を発生させた。
この結果、僅か30秒で被処理材11表面の領域11Aからアクリル樹脂膜12を部分アッシングすることができた。アクリル樹脂膜12は、マスク10より内側の部分が完全に除去されると共に、マスク10直下の部分が、図4に示すように角部が凸状に湾曲したテーパ状をなすように、部分的にアッシングされた。本発明では、大気圧またはその近傍の圧力下で気体放電させるため、真空中または減圧下に比して電子の平均自由工程が短く、しかも前記励起活性種の運動が気体分子によって妨げられ易い。このテーパ状部分は、励起活性種の運動が真空または減圧の場合よりも緩やかなことによって形成されたものと考えられる。テーパ状部分12Aの幅は約400μmであり、充分に高い精度でアッシングすることができた。
第1実施例の表面処理装置を用いた別の実施例では、図5に示すように、マスク10下面を被処理材11の表面に接触させず、該表面との間に僅かなギャップ13を画定するように、かつ所望の領域11Aが電極側に、他の領域から仕切られるように電極3を配置する。所定のガスをガス噴出口9から被処理材11表面に向けて噴出させつつ、電極3に所定の電圧を印加して、放電発生部4、5と被処理材11との間で気体放電を発生させ、前記所定のガスの励起活性種を生成する。
上述したように本発明では、大気圧またはその近傍の圧力下での気体放電により、真空中または減圧下に比して電子の平均自由工程が短く、かつプラズマの密度が低く、しかも励起活性種の運動が気体分子によって妨げられる。従って本実施例では、前記ギャップの大きさaを適当に狭く設定することによって、励起活性種のギャップ13への侵入及び該ギャップから外部への拡散を有効に阻止できる。被処理材11表面は、マスク10の下側部分まで不必要に処理されることなく、また処理レートを低下させることなく、所望の領域11Aのみが選択的にかつ効率的に処理される。
図5において、マスク10と被処理材11表面とのギャップ量a、マスク10の高さb、誘電体6下面と被処理材11との距離cを様々に設定して、第1実施例の表面処理装置を用いて部分アッシングの実験を行った。放電ガスは、図3の場合と同様に、ヘリウムを毎分20リットル、酸素を毎分200ミリリットルの割合で用いた。その結果を以下の表1に示す。同表において、テーパ部12Aの幅が700μm以下でアッシングの直線性が300μm以下のもの、即ち部分アッシングの精度が1mm以下の状態のものを○印を付して表した。ここでアッシングの直線性とは、アッシングした部分の長さ15cmの範囲に生じたうねりの大きさをもって示した。部分アッシングの精度が1mm以下ということは、液晶パネルの製造においてパネルの組立に必要な精度2mmを十分に満足する値で、実用上高い精度を意味する。
表1の結果から分かるように、マスク10の高さb、誘電体下面と被処理材との距離cを放電可能な適当な大きさである場合、マスクと被処理材表面とのギャップ13の大きさaを0.6mm以下に設定することによって、ガスの励起活性種の移動がマスク10によって有効に阻止され、被処理材表面の所望の領域だけが前記ガスの励起活性種に曝露され、その結果高精度な部分アッシングが可能であることが分かる。
図6には、本発明による表面処理装置の第2実施例が示されている。この表面処理装置14は、金属板を垂直に立てた電極15と、その下部を包むように装着された誘電体16とを有する。誘電体16の電極15を挟んで対向する一方の部分17には、その下面にマスク18が前記電極と平行にかつその全長に亘って突設されている。本実施例のマスク18は、第1実施例のマスク10と同様に矩形の断面形状を有し、例えば石英ガラスで誘電体16と一体に形成されている。前記一方の対向部分17及びマスク18の略中央には、前記電極に沿って下向きに開口する細い直線状のガス噴出口19が形成されている。対向部分17の上部には、その全長に亘って前記ガス噴出口に連通する中間チャンバ20を画定するように金属ブロック21が取り付けられている。金属ブロック21の上面には、所定のガスを外部ガス供給源から中間チャンバ20に導入するためのガス導入口22が開設されている。
表面処理装置14は、図7に示すように、その直ぐ下方に配置される被処理材11の表面とマスク18下面との間に僅かなギャップ23が画定されるように、かつマスク18によって前記被処理材の所望の処理領域11Aが電極側に、他の領域から仕切られるように位置決めする。ギャップ23の大きさは、図5の場合と同様に0.6mm以下に設定すると好都合である。前記外部ガス供給源から供給された所定のガスは、ガス噴出口19からギャップ23を通過して、前記マスクにより仕切られた電極15と被処理材の領域11Aとの間の空間に導入される。一部の前記ガスは、ギャップ23から電極15と反対側に流出する。
電極15に所定の電圧を印加して被処理材11との間で気体放電を発生させると、放電領域24内でプラズマにより前記ガスの励起活性種が生成される。本実施例では、前記励起活性種がギャップ23内に噴出する前記ガスに妨げられて、前記ギャップへ侵入しまたは該ギャップから外部へ拡散するのを、図5の場合よりもより確実に阻止できる。従って、前記被処理材は、所望の領域11Aのみが選択的に処理される。また、本実施例の誘電体16は、ギャップ23を介してガスを導入するようにしたから、第1実施例のガス噴出口9のように放電領域24に面して直接開口したり尖った角を構成する部分が無く、放電によるパーティクルの発生が減少するので、それによる被処理材の汚染や表面処理装置の汚れが大幅に少なくなる。
図8には、第2実施例の表面処理装置14の変形例が示されている。この変形例では、ガス噴出口19と中間チャンバ20とを連通するガス通路25が、少なくともガス噴出口付近において電極側に斜めに形成されている。これにより、ギャップ23から放電領域24へのガスの導入が、よりスムーズに効率よく行われる。また、ギャップから外部に流出するガスの量が減少する。従って、放電に使用されるガスの流量がより高精度にかつ簡単に制御できるようになる。
図9に示す別の変形例では、誘電体16のマスク18と反対側の対向部分26に、その下面に開口する排気通路27が内設されている。ガス噴出口19からギャップ23を通過して放電領域24に導入されたガスは、該放電領域を出た後大気中に拡散することなく、排気通路27から強制的に排出される。排気通路27は、例えば図7に示す誘電体16のマスク18と反対側の側面に沿って、或る間隔をもって誘電体の仕切板を配設することによって、容易に形成することができる。
本実施例によれば、排気構造をこのように表面処理装置に一体化しかつ放電領域の近傍から排気することによって、装置全体を小型化でき、かつ放電時に発生するオゾンの大気中への放出を防止することができる。また、大気がマスク18と反対側から放電領域24に侵入するのを防止できるので、放電の安定性が高められる。
図10には、図6及び図7に示す第2実施例の表面処理装置の更に別の変形例が示されている。この実施例の誘電体16は、電極15を挟んで反対側の対向部分26にも、対向部分17のマスク18と同様のマスク28が突設されている。前記両マスクは、同一の形状にかつ一定の離隔距離dをもって平行に形成されている。更にマスク28には、その下面にマスク18と同様のガス噴出口29が設けられ、被処理材11表面との間のギャップ30に開口している。前記両ガス噴出口には、前記外部ガス供給源からそれぞれ所定のガスが供給される。
本実施例では、図10に示すように被処理材11表面の所望の領域11Aをマスク18、28により両側から規制するように、電極15を配置する。電極15に所定の電圧を印加して気体放電させ、かつ同時に前記各ガス噴出口からギャップ23、30を介して前記ガスを放電領域24に導入する。本実施例では、各ガス噴出口から噴出する一部のガスが前記ギャップから外部に流出するにも拘わらず、放電領域24が外部から前記両マスクにより両側から遮断されているので、領域11Aを距離dで決定される所望の幅の直線状に高精度にかつ効率的に表面処理することができる。
両マスク18、28間の距離dは、表面処理したい領域11Aの幅に応じて適当に設定することができる。また、本実施例と図9の実施例とを組み合わせて、一方のガス噴出口(例えば19)をそのままガス導入用に使用し、かつ他方のガス噴出口(例えば29)をガス排出用に変更して使用することもできる。その場合、図9の実施例に比して排気側がマスクで外部と遮断されているので、排気による大気の汚染及び大気の放電領域への混入がより確実に防止される。
この実施例では、一定幅の直線状の領域11Aを処理するために、該領域の両側にのみマスクを配置されるように構成したが、別の実施例では、マスクを処理領域の全周を包囲するように設けることができる。更に、マスク及び必要に応じて電極の平面形状を処理領域の外周形状に合わせて変更すると、上述した直線状の表面処理だけでなく、広い面積を処理する場合にもより効果的な表面処理が可能になる。
図11には、本発明による表面処理装置の第3実施例を概略的に示している。第3実施例の表面処理装置31は、図6の第2実施例の構成と比較して、電極32の下部に誘電体33が装着され、かつその一方の対向部分34の下面にマスク35が設けられている点で同じであるが、マスク35が接地された導電体で形成され、電源電極32に対する接地電極の機能を有する点において異なる。マスク35の下面にはガス噴出口36が開口し、誘電体の対向部分34及びマスクに内設された通路を介して供給される所定のガスを、マスク35と被処理材11とのギャップ37に噴出させるようになっている。
本実施例において、前記電源電極に所定の電圧を印加すると、気体放電は、電源電極32と被処理材11表面との間において特に該電極とマスク35との間に集中して起こり、放電領域38が図6の第2実施例の場合よりも狭い空間に制限される。従って、前記気体放電がギャップ37内にまで広がるのを抑制することができ、部分的表面処理の精度をより一層高めることができる。特に被処理材11表面の非常に狭い領域を処理する場合に有利である。
図12は、上述した第3実施例の変形例を示している。この実施例では、マスク35の一部分39が接地電極として導電体で形成され、他の部分が誘電体33と同じ絶縁体で形成されている。導電体部分39は放電領域38に直接面しない位置に設けられるので、図11の場合よりも気体放電の範囲が広がる。
図13は、本発明による表面処理装置の第4実施例を概略的に示している。本実施例の表面処理装置40は、電極41の下部に装着された誘電体42の内面と該電極の先端部との間に画定される空隙によって、前記誘電体内部にガス導入通路43が形成されている。ガス導入通路43は、前記電極の全長に亘って設けられ、誘電体42上部に開設したガス導入口44から所定のガスが供給される。誘電体42の下面は、ガス導入通路43と外部とを仕切る誘電体からなる多孔質板45で形成されている。従って、ガス導入通路43内に供給された前記ガスは、多孔質板45を通過して前記誘電体下面から放電領域46全体に略均一に供給される。誘電体42の一方の対向部分47の下面には、上述した各実施例と同様にマスク48が突設されており、該マスクによって被処理材11表面の領域11Aを他の領域から分離して表面処理が行われる。
このようにガスが均一に供給されることによって、放電領域46内に生成される前記ガスの励起活性種の分布がより均一になるので、領域11Aをより均一に表面処理することができる。また、第2実施例の表面処理装置と同様に、第1実施例のように放電領域に面して直接開口したり尖った角を構成する部分が無いので、放電によるパーティクルの発生及びそれによる被処理材の汚染や表面処理装置の汚れが大幅に減少する。本実施例は、特に広い面積を表面処理する場合に有利である。尚、図13では、マスク48と被処理材11表面との間にギャップを設けたが、図2の実施例のように、マスク48の下面を被処理材表面に接触させて処理することもできる。
図14には、上述した本発明の表面処理装置を被処理材に対して位置決めするための駆動機構49が示されている。駆動機構49は、被処理材11を載せるステージ50と、表面処理装置51を支持するためのハウジング52とを備える。ハウジング52は、ステージ50の四隅に垂設された4本のコラム53と、該コラムの各上端を互いに結合する水平な4本のビーム54とにより箱形のフレーム構造に構成されている。ハウジング52には、水平な支持フレーム55がコラム53に沿って上下に移動可能に取り付けられている。表面処理装置51は、その上部が支持フレーム55の中央に固定されている。各コラム53の外周面にはねじ部56が形設され、これに歯合するギア機構57及び該ギア機構に駆動連結された電動モータ58がそれぞれ支持フレーム55上に配設されている。表面処理装置51の下端には、電源電極とその下部に装着された誘電体とからなる電極部59が設けられている。
電極部59は、各電動モータ58を駆動して支持フレーム55を昇降させることによって、被処理材11に対して接近または離反させる。電動モータ58は、電極部59に下向きに突設されたマスク60を被処理材11表面の所定位置に接触させ、または該表面との間に適当なギャップを設けるように、前記支持フレームの移動を制御することができる。本実施例によれば、上述した簡単な構成により、ステージ50に対する支持フレーム55の高さ位置を予め決定しておくことによって、電極部59即ちマスク60を常に同じ高さに位置決めすることができる。電動モータ58の駆動制御は、手動により、またはマイクロコンピュータなどの自動制御により行われる。自動制御の場合には、支持フレーム55の高さ位置をマイクロコンピュータに予め設定しておくことによって、より正確な位置決めが可能となる。
被処理材11表面に対する電極部59即ちマスク60の位置決めは、図15または図16に示すギャップ検出機構を用いることによって、より正確かつ確実に行うことができる。図15のギャップ検出機構は、電極部59のマスク60側の側面に装着された光センサ61を備える。光センサ61は、例えば半導体レーザなどの発光素子から発射して被処理材11表面で反射された光を検出して、該表面までの距離を測定する公知のセンサである。光センサ61は、ケーブル62を介して電動モータ58の駆動制御部に接続されている。前記駆動制御部は、光センサ61から入力する信号に基づいて電動モータ58を制御し、マスク60と被処理材11との実際のギャップを正確に調整する。この光センサによるギャップ検出機構は、マスクを被処理材表面に接触させる場合も含めて、上述した全ての実施例の表面処理装置に適用することができる。
これに対し、図16のギャップ検出機構は、電極部59が、マスク60と被処理材11表面との間にギャップ60Aを形成しかつ該ギャップ内にガスを噴出させる構造を有する、上述した第2実施例のような表面処理装置に使用するものである。即ち、電極部59は、電極63の下部に装着された誘電体64の一方の対向部分65に、ガス噴出口66に連通するガス導入通路67が内設されている。対向部分64の側面には、例えばダイヤフラムを用いた半導体圧力センサのような公知の圧力センサ68が取り付けられている。圧力センサ68は、前記ガス導入通路内を流れるガスの圧力をガス噴出口66に比較的近い位置で通孔69を介して測定する。
前記ガス導入通路内のガス圧力は、ギャップ62の大きさによって変動する。圧力センサ68は、前記ガス圧力の変動を検出し、或る一定以上の圧力になるとケーブル70を介して電動モータ58の駆動制御部に信号を出力する。前記駆動制御部は、圧力センサ68からの入力信号に基づいて電動モータ58を制御し、マスク60と被処理材11との実際のギャップを正確に調整する。この実施例によれば、放電領域へのガスの供給と正確なギャップの形成とを1つの構成で同時に行うことができる。このように被処理材表面との距離を計測するセンサを使用することによって、個々の被処理材の厚さの相違や、反り・傾斜などによる被処理材表面の高さの変動に対応して、常に実際のギャップを所望の大きさに正確に設定することができる。
本発明による表面処理方法及び装置は、使用するガス種を適当に選択することによってぬれ性の向上などの表面改質やエッチング、アッシング等の様々な部分表面処理を行うことが可能である。この部分表面処理技術は、様々な技術分野に適用することができ、特に高精度で微細な表面処理加工を必要とする半導体、電子機器の分野において有利である。本発明によれば、上述した部分表面処理技術を用いて液晶パネルを製造することができる。
図17には、本発明による液晶パネル用カラーフィルタの製造方法が工程順に示されている。先ず、図17Aに示すように、透明なガラス基板71の表面に着色層72を形成する。着色層72は、R(赤)、G(緑)、B(青)の3原色を順に配置した多数の画素73とそれらの間を仕切るブラックマトリクス(以下、BMと称す)74とからなる。画素73及びBM74は、公知の方法例えば顔料分散法により、色素を分散させたフォトレジスト液をガラス基板71表面に塗布し、パターン露光し、現像する工程を各色毎に繰り返すことによって形成される。着色層72は、染色法、印刷法などの他の方法によっても同様に形成することができる。
次に、ガラス基板71の全面に透明保護膜75を形成する。図17Bは、図17Aの向きに関して直角の方向からガラス基板を見たものである。透明保護膜75は、公知の有機材料、例えばエポキシ、シリコーン、ポリイミド系など耐熱性の熱硬化性樹脂を用いて、スピンコート、ロールコート、印刷法などの方法により平坦に成膜する。前記ガラス基板は後の工程で、図17Bにおいて着色層72より外側の端縁の領域71Aに透明電極の端子部が形成される。このため、次に領域71Aにある前記透明保護膜の部分75Aを除去する。
本実施例では、上述した本発明の第1実施例による表面処理装置76を使用する。表面処理装置76は、図17Cに示すように、透明保護膜の部分75Aがマスク77によって電極側に仕切られるように、該マスクを透明保護膜75上面に接触させて配置する。電極78に所定の電圧を印加して前記ガラス基板との間で気体放電を発生させ、大気圧またはその近傍の圧力下で放電領域79にヘリウムと酸素との混合ガスを供給する。放電領域79には前記混合ガスの励起活性種が生成され、これに曝露された透明保護膜の部分75Aがアッシングされて、図18に示すように前記ガラス基板表面の領域71Aから完全に除去される。アッシングした後の透明保護膜75の縁端には、図4の場合と同様に緩やかに湾曲するテーパ部75Bが形成されている。
次に、前記ガラス基板全体にSiO2膜80をスパッタリングで形成し、かつその上にITO膜81を同じくスパッタリングで成膜する。ITO膜81をホトリソグラフィ技術でパターニングすることによって、図17Eに示すように、着色層72の各画素に対応させて透明電極82が形成される。尚、図17Eは、ガラス基板71を図17Aと同じ向きから見たものである。このようにして、無機材料からなる透明電極82の端子部が、比較的軟質の有機材料からなる透明保護層上でなくガラス基板表面に形成され、上述した従来の問題点を解消した液晶パネルのカラーフィルタが得られる。
図19は、本発明による部分表面処理技術を適用した所謂ミセルカラーフィルタの製造方法が工程順に示されている。先ず従来と同様に、透明なガラス基板82の表面にITOをスパッタリングで膜厚例えば2000Åに成膜し、かつホトリソグラフィ技術を用いてパターニングし、透明電極83を形成する。透明電極83の間にはBM84が、色素を分散させたフォトレジストを塗布し、パターン露光及び現像することによって形成される(図19A)。
他方、導電化した着色層を形成するためのミセル電解液を準備する。ミセル電解液の作成方法は、例えば本願出願人による国際出願(国際公開番号WO94/27173)の明細書に記載されており、その表面を疎水化した透明導電粒子例えばITO粒子と、顔料粒子とを界面活性剤で取り囲んだ顔料ミセルコロイド水溶液を、R、G、Bの3色についてそれぞれ調整する。
図19Bに示すように、透明電極83を形成した前記ガラス基板の全面にフォトレジスト85を塗布し、パターニングして一部の透明電極83の上面を露出させる。本実施例では、最初にR着色層を形成する透明電極の部分のフォトレジストを除去した。このガラス基板をアノードとして、かつステンレス基板をカソードとして、Rの前記顔料ミセルコロイド水溶液中に浸漬し、例えば+0.4Vの定電位で20分間電解することによって、前記透明電極の露出面にRの前記顔料粒子及び透明導電粒子を析出させ、赤色の顔料膜86を0.8μmの厚さに形成する。同様の工程を繰り返して緑色及び青色の顔料膜をそれぞれ形成することによって、図19Cのように透明電極83上にR、G、B3原色の着色層87が形成される。
次に、ガラス基板82全面にスピンコートによりアクリル樹脂を0.2μmの厚さに成膜して透明保護層88を形成する(図19D)。図19Dは、図19Aの向きに関して直角の方向からガラス基板を見たものである。透明保護層88の成膜後にR、G、B着色層の各抵抗値を測定したところ、それぞれ1×106.5 オームcm以下であり、透明電極83が着色層87の下側に存在しても、液晶駆動に何ら問題の無い抵抗値レベルであることが分かる。次に、ガラス基板82は、図19Dにおいて着色層87より外側の端縁の領域82Aにある前記透明保護膜の部分88Aを除去する。
図17の実施例と同じ本発明の第1実施例による表面処理装置76を使用し、図19Eに示すように、透明保護膜の部分88Aをマスク77によって電極側に仕切るように、かつ該マスクと透明保護膜88との間にギャップを画定するように配置する。電極78に所定の電圧を印加して前記ガラス基板との間で気体放電を発生させ、大気圧またはその近傍の圧力下で放電領域89にヘリウムと酸素との混合ガスを供給する。透明保護膜の部分88Aは、放電領域89に生成される前記混合ガスの励起活性種に曝露されてアッシングされ、前記ガラス基板表面から完全に除去される。これにより、透明電極83の端子部83Aが、図19Fに示すようにガラス基板82上に露出する。
本実施例では、図5における前記ギャップ量、マスク高さなどの各寸法をa=0.4mm、b=2.0mm、c=2.4mmとし、前記混合ガスとしてヘリウムを毎分20リットル、酸素を毎分200ミリリットルの割合で導入した。部分88Aをアッシングした後の透明保護膜88は、図18と同様に、その縁端に緩やかに湾曲したテーパ部が形成され、その幅は0.50mm、直線性は0.15mm/15cmであり、液晶パネルの組立に何ら問題の無い高いアッシング精度であった。
図20には、本発明による配向膜を有する液晶パネルの製造方法が工程順に示されている。図20Aに示すように、透明なガラス基板90の表面にITOをスパッタリングで成膜しかつパターニングして、透明電極91を形成する。このガラス基板の全面に、ポリイミド膜92をスピンコート、ロールコートまたは印刷法などの方法で200〜500Åの厚さに成膜する(図20B)。次に、前記ガラス基板は、透明電極91より外側の端縁の領域90Aにあるポリイミド膜の部分92Aを除去する。
本実施例では、図17及び図19の各実施例と同じ本発明の第1実施例による表面処理装置76を使用する。表面処理装置76は、図20Cに示すように、ポリイミド膜の部分92Aをマスク77によって電極側に仕切るように、該マスクを前記ポリイミド膜表面に接触させて配置する。電極78に所定の電圧を印加して前記ガラス基板との間で気体放電を発生させ、大気圧またはその近傍の圧力下で放電領域93にヘリウムと酸素との混合ガスを供給する。ポリイミド膜の部分92Aは、放電領域93に生成される前記混合ガスの励起活性種に曝露されてアッシングされ、前記ガラス基板表面から完全に除去される(図20D)。
次に、ポリイミド膜92を例えば一定方向にラビングすることによって配向膜を形成した後、図20Eに示すように、ポリイミド膜を除去したガラス基板周縁の領域90Aにシール接着剤を印刷してシール部94を形設する。このシール部94を介して前記ガラス基板に、電極パターン及びその上に配向膜を形成した別のガラス基板95を重ね合わせ、一体的に結合する(図20F)。更に、前記ガラス基板間の空隙96に液晶を注入し、かつ両面に偏光板を貼着することによって、液晶パネルが完成する。
以上、本発明について好適な実施例を用いて詳細に説明したが、本発明はその技術的範囲内において上記実施例に様々な変形・変更を加えて実施することができる。例えば、図1〜図16の各実施例は、それぞれ適当に組み合わせて実施することができる。また、図17では、ガラス基板上に着色層、透明保護層を形成し、その上に透明電極を形成する構造のカラーフィルタ製造方法について説明したが、本発明の部分表面処理は、ガラス基板表面に透明電極を形成しかつその上に着色層を形成する構造のカラーフィルタにも同様に適用することができる。また、上述した本発明のカラーフィルタ及び液晶パネルは、STN型、TFT型、MIM型等、全ての型式の液晶パネルに同様に適用することができる。
1,14,31,40,51,76…表面処理装置、2…交流電源、3,15,32,41,63,78…電極、4,5…放電発生部、6,16,33,42,64…誘電体、7,20…中間チャンバ、8,22,44…ガス導入口、9,19,29,36,66…ガス噴出口、10,18,28,35,48,60,77…マスク、11…被処理材、11A…処理領域、12…アクリル樹脂膜、12A…テーパ状部分、13,23,30,37,60A…ギャップ、17,75A,88A,92A…部分、21…金属ブロック、24,38,46,79,89,93…放電領域、25…ガス通路、26,34,47,65…対向部分、27…排気通路、39…導電体部分、43,67…ガス導入通路、45…多孔質板、49…駆動機構、50…ステージ、52…ハウジング、53…コラム、54…ビーム、55…フレーム、56…ねじ部、57…ギア機構、58…電動モータ、59…電極部、61…光センサ、62,70…ケーブル、68…圧力センサ、69…通孔、71,90,95…ガラス基板、71A,82A,90A…領域、72,87,102…着色層、73…画素、74,84…BM、75…透明保護膜、75B…テーパ部、80…SiO2膜、81…ITO膜、82,83,91,104…透明電極、83A,105、…端子部、85…フォトレジスト、86…顔料膜、88,103…透明保護層、92…ポリイミド膜、94…シール部、96…空隙、100…カラーフィルタ、101…支持体、106…エッジ部。