JP4038018B2 - ジオグリッド、ジオグリッドからなる土木工学構造体 - Google Patents
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Description
本発明は、互いに平行にまたは実質的に平行に伸びる延伸したポリマーの長手方向のストラップおよび長手方向のストラップに結合したポリマーの横方向のストラップからなるジオグリッド(geogrid)に関する。
【0002】
グリッドそれ自体は公知である。英国特許第2266540号明細書には、例えばストラップを部分的に溶融することにより一緒に結合した、十分に延伸したポリマーの長手方向のストラップおよび横方向のストラップからなるグリッドが記載されている。
【0003】
国際公開第94/26503号パンフレットには長手方向のストラップおよび横方向のストラップの間の接触部分の領域内のポリマーを溶融することにより一緒に結合した、延伸したポリマーストラップのグリッドが記載されている。ポリマーの加熱は高周波電界内でストラップ表面の底面に直接配置された導電性粒子を加熱することにより達成される。この方法で、結合を生じるために使用されるポリマーの部分のみが溶融することが保証される。残りのポリマーはほとんど作用を受けず、延伸したストラップの強度が実質的に影響されずに残存する。国際公開第94/26503号パンフレットによるグリッドは原則的に大きい負荷にさらすことができる。
【0004】
しかしながら、実際には、例えば土木工学構造体(すなわち、特に水力工学および道路工学で扱う構造体)に生じるような大きい負荷の場合に、負荷された長手方向のストラップがきわめて低い負荷で破断し、これらのストラップの仕様および適用される結合技術にもとづいて予想されるよりかなり広い破断負荷分布を示すことが判明した。
【0005】
その理由から、本発明の課題は、特に土木工学構造体に使用するために適しており、記載された早すぎる破壊を受けることがない、冒頭に記載のグリッドを提供することである。
【0006】
この課題は、横弾性率が長手方向のストラップの縦弾性率の15%より小さく、有利には8%より小さい、横方向のストラップを使用することにより解決される。有利には横弾性率は長手方向のストラップの縦弾性率の0.1%より大きく、有利には1%より大きい。
【0007】
特に有利な実施態様においては長手方向のストラップの横弾性率が(延伸した)横方向のストラップの縦弾性率の15%より小さく、有利には8%より小さいことが保証される。更に長手方向のストラップの横弾性率が(延伸した)横方向のストラップの縦弾性率の0.1%より大きく、有利には1%より大きいことが好ましい。
【0008】
早すぎる破壊はおそらく長手方向のストラップと横方向のストラップとの好ましくない相互作用から生じることが判明した。この相互作用への考察は以下の例にもとづき提供される。
【0009】
延伸したポリマーの長手方向のストラップおよび横方向のストラップ(幅12mmおよび常に30mmの間隔を有する)が全接触面にわたり約90°の角度で一緒に溶接されたジオグリッドが使用される。ストラップが延伸されているために、その分子鎖は実質的に長手方向に配向している。この配向の結果として、ストラップは縦方向より横方向に劣った機械的特性(強度、モジュラス、破断点伸び)を有する。
【0010】
引っ張り力を長手方向のストラップにかけると、一定の縦方向の伸びが前記ストラップに生じる。長手方向のストラップが横方向のストラップに結合している所ではこの伸びが横方向の力を生じ、この力が前記横方向のストラップに作用する。記載されるように、厳密にはこの方向で延伸したストラップはあまり強くない。従ってより大きい負荷にさらされると横方向のストラップが裂ける。
【0011】
この裂けはそれ自体ジオグリッドに関して重大な問題を生じない。しかしながら横方向のストラップおよび負荷されたストラップが全接触面にわたり一緒に結合しているために、横方向のストラップの裂けまたは割れは亀裂を生じおよび/または負荷された長手方向のストラップに負荷のピークを生じる。この亀裂は更に負荷された長手方向のストラップの早すぎる破壊を生じる。
【0012】
比較的低い横弾性率を有する横方向のストラップを選択することは、横方向のストラップが長手方向のストラップに溶接されている側面に裂けまたは割れを生じることなく横方向のストラップが長手方向のストラップに沿って変形し、記載された好ましくない効果が生じないことを意味する。
【0013】
本発明によるジオグリッドにおいては、有利には1個以上の長手方向のストラップ(または横方向のストラップ)に長手方向のストラップ(または横方向のストラップ)の比強度の少なくとも90%または更に少なくとも95%の引っ張り力をかけた場合でさえも亀裂または裂けを生じることなく一緒に変形する横方向のストラップ(または長手方向のストラップ)が使用される。この方法で最適な強度のストラップが使用される。
【0014】
ジオグリッドは一般に、有利には80〜100°の角度で一緒に結合した長手方向のストラップおよび横方向のストラップの格子(lattice)から形成される。ストラップのポリマーによりストラップがそれ自体一緒に結合しているジオグリッドが特に有利であり、それというのもこのグリッドはにかわまたは他の接着剤の助けをかりずに比較的容易に製造できるからである。更にストラップのポリマーの一部分のみが溶融するので、ストラップの強度がほとんど変化しない。有利にはポリマーの5〜100μmのみ、または更に5〜30μmのみが溶融する。
【0015】
本発明によるグリッドを形成するきわめて適した結合方法は、ストラップを一方を他のストラップの上面に配置し、一緒に圧縮し、電磁線、例えばレーザーを放射する放射線源を使用して加熱する方法であり、その際放射線に面するストラップが放射線に対して透過性であり、かつストラップが一緒に結合される地点の材料が前記放射線を(高度に)吸収する。
【0016】
この技術がきわめて強い溶接の急速な(例えば10〜20ミリ秒での)製造を可能にすることが判明した。この溶接の強度は使用されるストラップの強度と同じ強さであることができる。言い換えると、同一直線に存在し、この技術を使用して重なり合う(この重なりは、例えばストラップの幅の少なくとも二倍である)地点で一緒に溶接された2つのストラップは単一の連続した処理されていないストラップと(実質的に)同じ強度を有する。
【0017】
前記の放射線の吸収はポリマーそれ自体によるか、またはポリマーに添加される顔料によってもよい。
【0018】
きわめて簡単な実施態様においては、放射線源に向かうストラップは完全に透明な材料からなる。その場合にいくつかの選択性が存在する。例えば放射線源から離れた側のストラップは吸収性材料から構成されていてもよい。選択的に、結合すべきストラップが両方とも透明であり、ストラップの間に吸収性材料の(薄い)層、例えばインク、またはフィルムもしくはシートが備えられている。
【0019】
結合が行われる地点に放射線を吸収する材料が存在し、かつ放射線がこの材料に到達可能であるかぎり、原則的に任意の配置が可能であることが明らかである。
【0020】
他の適当な実施態様は放射線源に向かうストラップが1種以上の成分から構成されている実施態様である。例えば透明なポリエステル(厚さ0.50mm)と顔料が添加されたまたは光学特性が変化したポリエステル(厚さ0.05mm)からなる二成分ストラップ(幅12mm、厚さ0.55mm)を使用してもよい。このストラップは、透明な部分を介して吸収剤部分に放射線が到達可能であるかぎり、ストラップ自体とまたはほかのストラップと種々の方法で結合することができる。
【0021】
多成分ストラップを使用する1つの利点は、このストラップが露出したストラップとしておよび露出していないストラップとして機能できることである。これは製造中に2個以上の異なる材料のための2個以上の供給ラインを備える必要がないことを意味する。
【0022】
2個以上の成分と中間層(シートまたはフィルム)とからなるストラップの吸収性部分の厚さはきわめて小さくてもよい。有利にはこの厚さは5〜100μmである。しかしながらこの厚さを選択する場合に、材料が放射線を吸収する程度を計算しなければならない。その理由から絶対的な下限または上限は存在しない。
【0023】
有利には600〜1600nmの波長を有する放射線を使用する。この範囲に関して多数の頻繁に費用のかからない、かつ信頼できる放射線源が利用できる。この範囲で高い吸収を有する多くの顔料、例えばカーボンブラックが市販されている。
【0024】
本発明によるジオグリッドの製造に使用するためにレーザーがきわめて適している。石英ランプの場合と異なり、レーザーにより放射される放射線を簡単な手段を使用して収束させることができる。更にレーザーは狭い帯域幅(波長窓)を有するので、透明なポリマーによる吸収を完全にまたは実質的に完全に阻止することができる。他方でランプはかなり広いスペクトルを有するので、放射される放射線は常に透明なポリマーにより吸収される波長からなる。多くの場合にこのあまり好ましくない吸収は全放射エネルギーの約35%になる。本発明に関してこの吸収が有利には15%より多くならないことが保証される。
【0025】
ジオグリッドをコード化するために、可視光線の一定部分を吸収し、他を散乱または反射するが、電磁線に透過性である染料を備えた透明なストラップが使用されてもよく、これによりストラップを一方を他のストラップの上面に溶接する。
【0026】
ストラップは有利にはポリアミドおよびポリオレフィンのような熱可塑性ポリマーから構成される。ポリエステル、より有利にはポリエチレンテレフタレートおよびエチレンテレフタル酸部分を含有するコポリマーが特に適している。延伸の程度は2より大きく、7より小さいのが有利であるとみなされる。きわめて適したストラップは、特に欧州特許第711649号明細書に記載されている。
【0027】
本発明は、前記ジオグリッドのほかに、前記ジオグリッドで補強した、堤防、床面、斜面等のような土木工学構造体および建造物に関する。
【0028】
本発明の枠内で、ストラップの用語は、一方の寸法が明らかに2つの他の寸法を支配し、厚さが有利には0.2〜2mmの範囲であり、幅が3〜30mm、有利には5〜15mmの範囲である物体に関する。ストラップの幅は有利にはその厚さの少なくとも5倍である。土木工学構造体に生じる負荷が大きい場合は、ストラップの縦方向の比強度は200MPaを上回り、有利には300MPaを上回ることが好ましい。
【0029】
横弾性率は、(温度21℃および相対大気湿度65%で)ストラップを、滑らかなスチールプレートと、これに平行に配置された幅2mmおよびストラップの幅の数倍の長さを有するスチール平面との間で、厚さ方向に圧縮することにより測定する。この平面は角度30°の仮想の点を有する対称的ウェッジの錐面に位置し、かつこの点を、該平面がウェッジの対称平面に対して垂直になるように平らにする(削る)ことにより得られる。ストラップをウェッジの長手方向がストラップの横方向に相当するように挟持する。横弾性率Etr(GPa)は以下の式から計算することができる。
【0030】
【数1】
【0031】
式中、wは横方向のストラップの幅(m)であり、dは厚さ(m)であり、bはウェッジ底の平面の幅(m、この場合は2mm)である。Stest(挟持されたストラップを有していない測定装置の剛さ)、Stot(測定装置とストラップの接合剛さ)は、750〜2250Nの力-インプレッション曲線の平均勾配により決定される。ウェッジの速度は毎分0.1mmであり、その動きは3000Nの力が達成されるとすぐに中止する。この方法の1つの利点はストラップの厚さ方向のモジュラスが測定値に考慮されることである。
【0032】
ストラップの縦弾性率Elgおよび比強度はISO10319号により測定される。縦弾性率に関して1%割線モジュラスが使用される。
【0033】
モジュラスのほかに、ストラップの亀裂挙動は本発明によるグリッドに使用するための横方向のストラップの適性の有効な指標を提供する。質量700g、直径2mmおよび先端角度60°を有するスチール製円筒形ピンを使用する。このピンを、重ね合わせた3つの同じストラップの上に、ピンが最上部のストラップのほぼ中央に衝突する瞬間のピンの速度が1.5m/sになるような高さから落下させる。貫通の深さは制御装置により一つのストラップの厚さの約2倍まで調節する。次に最上部のストラップの亀裂の長さを測定する。試験を10回実施し、測定した長さの平均をとることにより平均亀裂長さを決定する。60mm未満、有利には40mm未満の平均亀裂長さを有する横方向のストラップが本発明のジオグリッドに使用するためにきわめて適していることが判明した。
【0034】
横方向のストラップと長手方向のストラップが少なくとも2個の溶接帯域により結合点を介して重ね合わせて溶接されているジオグリッドが未公開の国際特許出願PCT/EP97/03057号に記載されていることに注目すべきである。
【0035】
本発明を以下の実施例により詳細に説明する。本発明の範囲が実施例に限定されないことは言うまでもない。
【0036】
例
以下に記載されるストラップを、波長820nmの光線を放射する固体レーザー(OPC-A020-MMM-CSダイオードレーザーアレイ)を用いて重ね合わせて溶接する。溶接装置の光学装置はレーザービームを長さ6mmの1つのラインに成形する。強度の分布はラインの長さにわたり均一である。ラインの幅にわたり強度分布はほぼローレンツ分布に従い、0.3mmの半値全幅(Full Width At Half Maximum)を有する。ラインでのレーザー光線の全出力は15Wである。溶接中にラインを溶接すべき平面を交差して横方向に速度0.023m/sで移動させる。これは走査運動の長さに伸びる幅6mmの連続的溶接を生じる。必要な場合は、全接触面が溶接されるまでこの方法を繰り返す。
【0037】
走査運動は長手方向のストラップに平行に行う。従ってこのストラップが幅12mmである場合に、重ならない2つの走査運動が必要である。
【0038】
以下の表に記載された特性を有する2種類の透明なポリエステルの横方向のストラップ“2cl”(平均亀裂長さ約80mm、比強度636MPa)および“5cl”(平均亀裂長さ約30mm、比強度631MPa)を、前記レーザーを使用してそれぞれ個々に、ブラックポリエステルストラップに、全接触面と交差して角度90°で溶接する。ブラックストラップは、カーボンブラックが添加され、比強度631MPaおよびモジュラス(長手方向)13.8GPaを有するPET(ポリエチレンテレフタレート)から構成される。
【0039】
引っ張り試験器中で、10個のブラックストラップを“2cl”横方向ストラップと、9個のブラックストラップを“5cl”横方向ストラップとそれぞれ溶接し、負荷をかけて破壊した。“2cl”および“5cl”がそれぞれ備えられたブラックストラップの長手方向の強度の平均的減少を以下の表に記載する。Etr/Elgは長手方向のストラップの縦弾性率に対する横方向のストラップの横弾性率を表し、“裂け”は長手方向のブラックストラップが破壊する前に当該の横方向のストラップに裂けが存在したかどうかを示す。
【0040】
これは2clを備えた長手方向のストラップの強度の減少および付随する早すぎる破壊が本発明による構造(5cl)ではほとんど生じないことを示す。
Claims (6)
- 平行にまたは実質的に平行に伸びる延伸したポリマーの長手方向のストラップおよび長手方向のストラップに結合したポリマーの横方向のストラップからなるジオグリッドにおいて、横方向のストラップの横弾性率が長手方向のストラップの縦弾性率の15%より小さいことを特徴とする、ジオグリッド。
- 長手方向のストラップの横弾性率が横方向のストラップの縦弾性率の15%より小さい請求項1記載のジオグリッド。
- 長手方向のストラップと横方向のストラップが一緒に結合する角度が80°〜100°である請求項1または2記載のジオグリッド。
- ポリマーの5〜100μmのみが溶融することによりストラップが一緒に結合されている請求項1から3までのいずれか1項記載のジオグリッド。
- 少なくとも長手方向のストラップがポリエステルまたはエチレンテレフタル酸部分からなるコポリマーから構成される請求項1から4までのいずれか1項記載のジオグリッド。
- 請求項1から5までのいずれか1項記載のジオグリッドで補強された堤防、床面、斜面等のような土木工学構造体。
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