JP4036924B2 - 複合型レンズ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は複数のレンズを接合した複合型レンズに関し、特にガラスレンズと樹脂レンズを貼り合わせた複合型レンズに関する。
【0002】
【従来の技術】
カメラ等の光学系に用いられるレンズのように、鏡筒内に内装されたレンズの周面での反射を防止するために、墨を塗布することが行われている。このような技術は近年のこの種の光学系で多く用いられている貼り合わせレンズにおいても同様である。この貼り合わせにより構成される複合型レンズとして一般的なものとして、非球面レンズがある。図5はその一例を示す断面図である。ガラスで形成されたレンズ31の一部に、樹脂成形されたレンズ32を接合している。この接合には、ガラスと樹脂の界面の接合を高めるために、ガラスにシランカップリング剤34を塗布し、このシランカップリング剤34を無機物と有機物の界面に介在させることによって、樹脂−シランカップリング剤−無機物の結合を形成し、ガラスレンズ31と樹脂レンズ32の一体化を実現している。そして、このように接合された非球面レンズの周面を含むレンズの非有効面に、光吸収膜として墨を塗布した墨膜33を形成してレンズを完成させている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来のレンズでは、ガラスレンズ31と樹脂レンズ32との間に水分等が侵入して接合が劣化され、貼り合わせたレンズが脱落されることがないように、シランカップリング剤34はガラスレンズ31の周辺部にまで塗布することが行われるため、シランカップリング剤34の一部はガラスレンズ31の周面にまで存在することになる。このシランカップリング剤34はその外面に塗布される墨膜33との界面での密着性が低いため、この界面が白光りする状態となり、同図の矢線で示すように、ガラスレンズ31の周面の内面に投射される光を高い反射率で反射してしまう。このため、このレンズをレンズ鏡筒内に組み込んでレンズ光学系を構成したときには、レンズ周面に向けて入射される光が鏡筒内に向けて反射される異常反射が発生し、フレアやゴーストを発生する原因となる。
【0004】
本発明の目的は、このような接合構造のレンズの周面での光反射を抑制した複合型レンズを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ガラスレンズと樹脂レンズとをガラスレンズの有効面ないし非有効面にわたって形成したシランカップリング剤で接合した複合型レンズの非有効面に塗布形成する光吸収膜は、少なくとも前記ガラスレンズの非有効面とシランカップリング剤との間に介在された第1の光吸収膜を備える。また、前記光吸収膜は、少なくとも前記樹脂レンズの非有効面に密接した状態で形成されている第2の光吸収膜を備える。前記第2の光吸収膜は前記樹脂レンズの非有効面と前記シランカップリング剤の表面上に形成されていてもよい。本発明の複合型レンズは、例えば、前記ガラスレンズは球面レンズであり、前記樹脂レンズは前記ガラスレンズの球面領域に一体形成され、レンズ全体として非球面レンズとして構成される。
【0006】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1は本発明をカメラ用のズームレンズに適用した実施形態であり、図示を省略したレンズ鏡筒の前側から第1凹レンズ1、第1凸レンズ2、第2凸レンズ3、第3凸レンズ4、第2凹レンズ5、第4凸レンズ6、第3凹レンズ7、第5凸レンズ8、第4凹レンズ9が配設され、第3凸レンズ4と第2凹レンズ5、及び第4凸レンズ6と第3凹レンズ7はそれぞれ貼り合わせレンズとして構成される。また、前記レンズ1,2、レンズ3,4,5、レンズ6,7,8,9がそれぞれレンズ群を構成し、結果として3群9枚構成の広角レンズとして構成されている。そして、前記第1凹レンズ1は、非球面レンズとして構成されており、ガラスレンズ11と樹脂レンズ12を貼合わせて接合した複合型レンズとして構成されている。
【0007】
図2は前記第1凹レンズ1の拡大断面図である。前面が緩やかな凸面で、後面が凹状球面に形成されたガラスレンズ11と、このガラスレンズ11の後面の凹状球面に貼り合わせにより接合された非球面な樹脂レンズ12とで構成され、これらガラスレンズと樹脂レンズとはシランカップリング剤14により接合されている。ここで、前記ガラスレンズ11は、レンズ非有効面、すなわちレンズ後面の前記凹状球面111の周辺部112から周面113にわたる領域の面に、光吸収膜としての墨がガラスレンズ面に密接した状態に塗布形成された第1の墨膜13が形成されており、前記シランカップリング剤14はこの第1の墨膜13の表面上に形成されている。また、前記樹脂レンズ12はその表面に所要のコーティング膜15が形成されているが、この樹脂レンズ12の周面121を含む前記レンズ非有効面112,113に相当する領域の前記シランカップリング剤14の膜の表面上に、さらに墨を塗布して第2の墨膜16が形成されている。
【0008】
このようなレンズの製造方法としては、例えば、図3(a)のように、ガラスレンズ11の前記した周面113と後面の周辺部112の非有効面に直接手塗りにより墨を塗布して第1の墨膜13を形成する。そして、200℃、2Hr程度の熱処理を行うことにより、墨膜が硬化され、洗浄によっても墨が落ちなくなる。その上で、図3(b)のように、ガラスレンズ12を後面を上にしてスピナーSP上に置き、ガラスレンズ11を高速回転させると共に、ガラスレンズ11の後面上にシランカップリング剤を滴下し、遠心力によってガラスレンズの後面の有効面と非有効面を含む全面にシランカップリング剤を塗布し、加熱硬化する。そして、図3(c)のように、前記ガラスレンズ11を非球面に形成された型17内に設置し、この型17とガラスレンズ11との間に液状の紫外線硬化型樹脂を注入して硬化させ、ガラスレンズ11と一体の樹脂レンズ12を成形する。その後、樹脂レンズ12の表面に真空蒸着法等により反射防止膜等のコーティング膜15を形成し、しかる上で、図3(d)のように、再び手塗りにより樹脂レンズ12の周面からガラスレンズ11の周面のシランカップリング剤14の膜の表面にかけて墨を塗布し、前記と同様の熱処理を行って第2の墨膜16を形成する。
【0009】
このように構成された第1凹レンズ1は、図1に示したレンズ構成のズームレンズとして図外の鏡筒内に組み立てられるが、その組み立て位置がズームレンズのレンズ光学系の最前に位置されているため、同図に矢線で示すように、レンズ光軸に対して大きな角度でレンズ面に光が入射され易く、したがって入射光がレンズの周面にまで入射され易い状態にある。しかしながら、前記第1凹レンズ1のガラスレンズ11は、その周面113とシランカップリング剤14との間に第1の墨膜13が介在されているため、従来のようにシランカップリング剤14の表面上に墨膜13が存在することによって生じる両者の界面がレンズ内方からの光反射面になることが回避でき、レンズの非有効面であるレンズ周面に入射された光はこの第1の墨膜13によって吸収され、周面で反射される光量を顕著に低減する。これにより、鏡筒内に向けて反射される光量を格段に低減し、フレアやゴースト等の撮影品質を劣化させる要因が除去される。
【0010】
また、図2に示したレンズの構成では、シランカップリング剤14を塗布した上に、再び墨を塗布して第2の墨膜16を形成し、この第2の墨膜16によって樹脂レンズ12の周面からガラスレンズ11の周面のシランカップリング剤14の表面を覆って隠しているため、周面及び周辺部に墨が塗布されている従来のレンズと同じ外観を呈するようになり、レンズ単品を商品化するような場合に、シランカップリング剤14が露呈された状態のレンズよりも、レンズとしての商品の見栄えを向上し、商品価値を高める上で有効となる。なお、この場合にはシランカップリング剤14の表面上に第2の墨膜16が存在するため、両者の界面がレンズ内方にむけの光反射面となり得るが、この内側には第1の墨膜13が存在しているために、この界面での光反射が問題になることはない。
【0011】
ここで、前記した第2の墨膜16は、樹脂レンズの周面ないし非有効面を覆うように、およびシランカップリング剤が露呈されることがないように塗布されるものであるので、シランカップリング剤14の塗布状態に応じて塗布範囲を任意に設定することが可能である。例えば、図4(a)にその一部を示すレンズの場合には、シランカップリング剤14は、ガラスレンズ11の後面の周辺部112にまでしか塗布されておらず、ガラスレンズ11の周面113には塗布されていないので、第2の墨膜16はガラスレンズ11の周面113には塗布されていない。この構成ではシランカップリング剤14の塗布面積が低減でき、その塗布量が低減されて低コスト化に有利となる。
【0012】
また、レンズ単独で商品化することなく、レンズ鏡筒に組み込んでレンズ光学系を構成した状態で商品化する複合型レンズの場合のように、レンズ単体での外観上の見栄えを考慮することがないレンズの場合には、第2の墨膜16は図4(b)のように、樹脂レンズ12の周面121を覆うように塗布すれば足り、シランカップリング剤14を覆い隠すための面への第2の墨膜16の塗布形成は不要となる。このようにすれば、シランカップリング剤14の塗布量と共に第2の墨膜16の塗布量も低減され、さらに低コスト化に有利となる。
【0013】
ここで、本発明は前記した非球面レンズに限られるものではなく、ガラスレンズと樹脂レンズとをシランカップリング剤により接合し、かつ少なくともガラスレンズの非有効面に光吸収膜として墨膜を塗布形成する構成の複合型レンズであれば、本発明を同様に適用でき、レンズ鏡筒内におけるレンズ非有効面での光反射を防止し、かつレンズ単品の外観上の見栄えを改善して商品価値を高めることが可能となる。
【0014】
【発明の効果】
以上説明したように本発明は、ガラスレンズと樹脂レンズとをガラスレンズの有効面ないし非有効面にわたって形成したシランカップリング剤で接合した複合型レンズの、少なくともガラスレンズの非有効面とシランカップリング剤との間に第1の光吸収膜が介在されているので、このガラスレンズの非有効面においてシランカップリング剤と第1の光吸収膜との剥離が防止でき、シランカップリング剤と光吸収膜との界面における光反射を防止し、レンズ鏡筒内に内装したレンズ光学系の鏡筒内での異常反射によるフレアやゴーストの発生を防止した信頼性の高いレンズ光学系を構成することが可能となる。また、樹脂レンズの非有効面やシランカップリング剤の表面に第2の光吸収膜としての黒色の墨膜を塗布形成することにより、レンズの外観上の見栄えを高め、レンズの商品価値を高めることも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の複合型レンズが適用されたレンズ光学系の一例の断面図である。
【図2】図1の複合型レンズの拡大断面図である。
【図3】本発明の複合型レンズの製造方法を工程順に示す模式図である。
【図4】本発明の複合型レンズの他の例の要部を示す断面図である。
【図5】従来の複合型レンズの一例の断面図である。
【符号の説明】
1 第1の凹レンズ(複合型レンズ)
11 ガラスレンズ
12 樹脂レンズ
13 第1の墨膜
14 シランカップリング剤
15 コーティング膜
16 第2の墨膜
Claims (5)
- ガラスレンズと樹脂レンズとを前記ガラスレンズの有効面ないし非有効面にわたって形成したシランカップリング剤で接合して一体化するとともに、前記各レンズの非有効面に光吸収膜を有する複合型レンズにおいて、前記光吸収膜は少なくとも前記ガラスレンズの非有効面と前記シランカップリング剤の間に介在された第1の光吸収膜を備えていることを特徴とする複合型レンズ。
- 前記光吸収膜は少なくとも前記樹脂レンズの非有効面に密接した状態で形成されている第2の光吸収膜を備えている請求項1に記載の複合型レンズ。
- 前記第2の光吸収膜は前記樹脂レンズの非有効面と前記シランカップリング剤の表面上に形成されている請求項2に記載の複合型レンズ。
- 前記ガラスレンズは球面レンズであり、前記樹脂レンズは前記ガラスレンズの球面領域に一体的に形成され、レンズ全体として非球面レンズとして構成される請求項1ないし3のいずれかに記載の複合型レンズ。
- 光吸収膜は黒色の墨の塗布膜である請求項1ないし4のいずれかに記載の複合型レンズ。
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