JP4034209B2 - ウォークスルー型車両におけるスライド装置の同期ロック解除構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、サブ用スライド装置によるその単独での前後スライドの可能なサブシートを、スライドシートとしてなるメインシート側部への整列一体並置を可能にウォークスルー通路に配設してなるウォークスルー型車両における、メインシート、サブシート間でのスライド装置の同期ロック解除構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
ワンボックス車やRV車等の多目的自動車におけるシートレイアウトとして、たとえば、フロントシート、リヤシート間等での乗員の車内往来を可能とする、いわゆるウォークスルーレイアウトが種々知られている。
【0003】
そして、この種のウォークスルーレイアウトとして、たとえば特開2001−1805号公報等に開示のような、フロントシート、およびリヤのセカンドシート(以下、メインシートと称する)の左右シート間に規定されたセンタスペースを乗員の往来通路となるウォークスルー通路とし、かつ、このウォークスルー通路にサブシートを、前後スライド可能に配した構成が提供されている。
【0004】
前出の公報にもあるように、この種のサブシートにおいては、通常、そのシートバックが前倒し可能に設けられ、その起立状態ではこのサブシートがメインシートにおける増設シートとして、また、その前倒し状態ではその背面がメインシートのアームレストやドリンクスタンド等として、それぞれ利用可能となっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このサブシートをメインシートにおける増設シート、あるいはアームレスト等として並置利用する場合、このサブシートを、そのメインシートの側部に、その整列位置で一体的に連結することが、その安定性等の点において好ましく、さらに、そのメインシートが前後スライドの可能な、いわゆるスライドシートであった場合においては、このメインシートとの一体的なスライドを得ることが、このサブシートの利用性、および操作性等の点においては望ましい。
【0006】
ここで、メインシート側部に対するサブシートの一体的な連結は、たとえば実開昭57−107638号公報等に開示された、いわゆる連結ロック手段等を設けることにより確保可能となる。しかしながら、メインシート、およびサブシートに設けられる各スライド装置(メイン用スライド装置、サブ用スライド装置)は、個別にロック解除操作される別体型のものであるため、これらを一体的にスライドさせるには、この各スライド装置に対する個別のロック解除操作が要求される。
【0007】
つまり、公知の構成においては、メインシート、サブシート間の整列一体並置が得られたとしても、その一体スライド時のロック解除操作は容易でなく、その操作性、および作業性等の低下が避けられない。
【0008】
また、ウォークスルー型車両におけるメインシート(フロントシート、セカンドシート)、およびサブシートのいずれもが、前後方向にスライド可能なスライドシートとしてなる場合、その各シートの利便性、およびサブシートの機能性等を考えれば、上述したような一体スライドだけでなく、メインシート、およびサブシートの個別のスライドが可能であることも同時に要求される。
【0009】
しかしながら、各スライド装置のロック解除動作を同期させる技術は従来になく、ましてや同期したロック解除操作と、個別のロック解除操作を伴う単独スライドとを両立させた構成は従来にはない。従って、このような同期したロック解除操作と単独スライドとの両立の可能な構成を得ることが、メインシート、サブシートを一体スライドさせる際の課題であると考えられる。
【0010】
この発明は、メイン用スライド装置、およびサブ用スライド装置の同期したロック解除操作と、その個別のロック解除操作を伴う単独スライドとの両立を可能とした、ウォークスルー型車両におけるスライド装置の同期ロック解除構造の提供を目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、請求項1に示すこの発明のウォークスルー型車両におけるスライド装置の同期ロック解除構造によれば、メインシート、サブシート間の整列並置時にその略上下方向で整列するメイン側、サブ側の一対の係合片が、そのロック解除操作方向を上下同一方向としたメイン用スライド装置、およびサブ用スライド装置の個別の各ロック解除レバーとの一体回動を可能にそれぞれ設けられている。そして、サブ側係合片に対するメイン側係合片の係合方向を、メイン側ロック解除レバーによるロック解除方向に一致させることにより、メインシート、サブシート間の整列並置時におけるメイン側ロック解除レバーでの各スライド装置の同期ロック解除を可能とするとともに、メイン側、サブ側の一対の係合片のうちのいずれか一方を、他方の乗り越え通過の可能なスルーガイド形状とすることにより、サブシートとの整列位置を含む範囲でのメインシートの単独スライドを確保可能としている。
【0012】
また、この発明の請求項2においては、メイン用、およびサブ用の各ロック解除レバーが、メインシート、サブシート間の整列並置時に同軸延長線上に整列される個別の支持シャフトに、それぞれ一体的に設けられるとともに、この各支持シャフトに一体固着された各リンクアームに対し、メイン側、サブ側の各係合片がそれぞれ取り付けられている。そして、メイン側、サブ側の係合片のうちのいずれか一方が、斜面としてなるスルーガイドをその前後位置に配した略台形体として形成されるとともに、その他方が、この略台形体としてなる一方の係合片の台形面を転動自在なローラとして形成されている。
【0013】
さらに、この発明の請求項3においては、メインシート、サブシートをそれぞれ前後スライド可能に支持するメイン用、サブ用の各スライド装置が、そのロック位置設定基点を車両に対する同一の前後レベルとした、同一ロックピッチを持つラッチロック式のスライドレールとしてそれぞれ形成されている。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながらこの発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
図1、図2に示すように、この発明に係るウォークスルー型車両におけるスライド装置の同期ロック解除構造10においては、その単独での前後スライドの可能なサブシート12が、スライドシートとしてなる車両のメインシート14,16の側部への、その整列一体並置を可能に、乗員の車内往来の可能なウォークスルー通路18に配設されている。そして、メインシート14,16、およびサブシート12の整列並置箇所における、このメインシートのスライド装置(メイン用スライド装置)20(F,S)とサブシートのスライド装置(サブ用スライド装置)22との同期ロック解除を可能に、この発明におけるスライド装置の同期ロック解除構造10は構成されている。
【0016】
図1を見るとわかるように、この実施の形態においては、フロント1列(フロントシート14)、リヤ2列(セカンドシート16、サードシート24)の、いわゆる3列シートを、車両、つまり自動車等におけるシートレイアウトとして例示し、そのフロントシート、およびリヤのセカンドシートをサブシート12の整列並置されるメインシートとした例を、ここでは具体化する。それと同時に、フロントシート14、およびリヤのセカンドシート16の左右のシート14(L,R),16(L,R)間、つまりはその中央にウォークスルー通路18を設けた構成を、この実施の形態におけるウォークスルーレイアウトとして、以下説明する。
【0017】
なお、この種のウォークスルーレイアウト自体は、特開2001−1805号公報等に開示のように周知のものであるため、このウォークスルーレイアウトに対する詳細な説明は、ここでは省略する。
【0018】
上述したように、この発明においては、メインシートとしてなるフロントシート14(L,R)、リヤシートのセカンドシート16(L,R)、およびウォークスルー通路18に配設された、このメインシート側部への整列並置の可能なサブシート12のいずれもが、それぞれのスライド装置、つまりメイン用スライド装置20(F,S)、およびサブ用スライド装置22によりなる、前後スライド可能なスライドシートとして形成されている。
【0019】
ここで、このメイン用スライド装置20(F,S)、およびサブ用スライド装置22の基本構造の概略を、図3をもとに説明する。
【0020】
図3を見るとわかるように、このメイン用、サブ用の各スライド装置20(F,S),22は、シート本体の固定されるランナ26を、床体に固定されたガイドレール28(F,S),30に対し、転動子、たとえばその前後の離反位置に配した左右一対の車輪状ローラ32を介してスライド自在にそれぞれ組み付けることにより、シート本体を、その前後方向にスライド可能に支持するものとして形成されている。
【0021】
なお、ここでいうシート本体とは、メインシート14,16であればそのシートクッション34とシートバック36との組み合わせを、またサブシート12であればそのシートクッション38とシートバック40との組み合わせを、それぞれ意味するものとする(図1、図2参照)。
【0022】
また、この図3の参照符号42は、ランナ26に固定されたシートライザであり、このシートライザへの載置、固定により、シート本体は配設される。なお、このシートライザ42の形状はフロントシート14、セカンドシート16、およびサブシート12に応じて適宜異なる(図2参照)。
【0023】
そして、図3に示すように、ガイドレール28(F,S),30に対するランナ26のスライドを規制可能とするロック手段44(F,S),46が、この発明においては手動のラッチ式としてそれぞれ形成されている。
【0024】
このラッチ式のロック手段44(F,S),46として、たとえば、ラッチプレート48をその垂直昇降可能にランナに配した、いわゆる垂直ラッチ式が例示できる。そこで、この実施の形態においては、垂直ラッチ式のロック手段44(F,S),46による所定のロックピッチ毎でのロックの可能な、いわゆるラッチロック型のスライドレールとして、このメイン用スライド装置20(F,S)、およびサブ用スライド装置22がそれぞれ具体化されている。
【0025】
図3に示すように、たとえば、一連のロック孔50(F,S),52が、ガイドレール28(F,S),30の底壁28a,30aに等間隔毎に形成されるとともに、このロック孔に挿入、係合可能なロック爪48aをその下端に有したラッチプレート48が、ランナ30の切欠き状の配置スペース54内に、その垂直昇降を可能に配設されている。
【0026】
そして、この実施の形態においては、このラッチプレート48が、その支点の枢着された略く字形状の支持アーム56の、ほぼ水平方向に延びた支持片56aに連動可能に連結、支持され、この支持アームに付与されたロックばね、たとえばねじりばね58からの付勢力のもとで、ロック孔50(F,S),52に対するロック爪48aの挿入、係合方向、つまりそのロックオン方向となる下方に、ラッチプレートは付勢されている。
【0027】
このロック手段44(F,S),46を有するスライド装置20(F,S),22においては、ロック孔50(F,S),52に対するロック爪48aの挿入、係合、つまりそのロックオン、言い換えればラッチプレート48のロックオンによって、ガイドレール28(F,S),30に対するランナ26のスライドが規制される。
【0028】
なお、この一連のロック孔50(F,S),52の、その一つ毎の間隔が、ロック手段44(F,S),46のロックピッチとなり、この間隔(ロックピッチ)に応じた距離毎に、メインシート14,16、およびサブシート12の前後位置は段階的に設定可能となる。
【0029】
ここで、このメイン用スライド装置20(F,S)、およびサブ用スライド装置22は、各ロック手段44(F,S),46に対する個別のロック解除操作の可能なロック解除レバー60(F,S),62を、それぞれ有して形成されている(図1、図2参照)。
【0030】
図3、および図4に示すように、このメイン側ロック解除レバー60(F,S)、およびサブ側ロック解除レバー62は、ブラケット(図示しない)等を介してシートライザ42に回動自在に軸支された支持シャフト64,65へのその基端の一体的な固定のもとで、この支持シャフトを中心とした、この支持シャフトとの一体回動を可能に構成、支持され、この構成においては、この支持シャフトに一体的に固定されたリンクアーム66,67の係合ピン68,69を、支持アーム56の係合端56bに係合可能に配することにより、このロック解除レバーとラッチ48との連動化がはかられている。
【0031】
なお、このロック解除レバー60(F,S),62に対しては、通常、リターンばね、たとえば支持シャフト64,65に巻装されたねじりばね(図示しない)等からの付勢力が付与されており、その付勢力のもとで、このロック解除レバーは、図3に示す、ロック手段44(F,S),46のロックオンに対応する位置、つまりはその初期位置に付勢、保持されている。
【0032】
また、この実施の形態においては、ロック解除レバー60(F,S),62の上方回動が、そのロック解除方向としてそれぞれ規定されている。
【0033】
そして、この各スライド装置の支持シャフト64,65は、メインシート14,16とサブシート12との整列並置時に同軸延長線上に整列されるように、それぞれ設けられる。
【0034】
たとえば、このロック解除レバー60(F,S),62を、そのリターンばねの付勢力に抗して上方に回動させると、それに伴うリンクアーム66,67の回動により、その係合ピン68,69が支持アームの係合端56bに係合される。すると、このロック解除レバー60(F,S),62の継続回動による、リンクアーム66,67の回動に伴った支持アーム56の回動により、ラッチ48が上方に引き上げられることで、図5に示すようにこのロック手段44(F,S),46はロックオフされる。
【0035】
そして、ロック解除レバー60(F,S),62に対する操作力を解除すれば、それぞれの付勢力によるロック解除レバー、および支持アーム56の復動により、ロック解除レバーはその初期位置に、また支持アームはそのロック位置に、それぞれ戻される(図3参照)。
【0036】
ここで、図4、および図6を見るとわかるように、この発明においては、メインシート14,16、サブシート12間の整列並置時にその略上下方向で整列するメイン側、サブ側の一対の係合片70,72が、そのロック解除操作方向を上下同一方向としたメイン側、サブ側の個別の各ロック解除レバー60(F,S),62との一体回動を可能に、それぞれ設けられている。
【0037】
この係合片70,72は、いずれも、支持シャフト64,65に一体固着されたリンクアーム74,76を介して取り付けられている。そして、この発明においては、サブ側係合片72に対するメイン側係合片70の係合方向を、メイン側ロック解除レバー60(F,S)によるロック解除方向に一致させることにより、メインシート14,16に対するサブシート12の整列並置時におけるメイン側ロック解除レバーでのメイン用スライド装置20(F,S)とサブ用スライド装置22との同期ロック解除を可能に構成されている。
【0038】
この実施の形態においては、上方回動が、メイン側ロック解除レバー60(F,S)、およびサブ側ロック解除レバー62のロック解除方向として規定されていることから、サブ側係合片72に対するメイン側係合片70の係合方向をメイン側ロック解除レバー60(F,S)によるロック解除方向に一致させるべく、このメイン側係合片が、サブ側係合片72に対しその上方からの係合を可能に、このサブ側係合片の上方位置に配置されている。
【0039】
なお、このメイン側係合片70、およびサブ側係合片72は、いずれも、支持シャフト64,65にその基端の一体固着されたリンクアーム74,76を介してロック解除レバー60(F,S),62との一体回動を可能にそれぞれ連結、支持されるが、この各係合片の適切形状についての詳細は後述する。
【0040】
この構成において、たとえば、サブシート12がメインシート14,16に対する整列位置に設定、ロックされた、いわゆる整列並置時においては、図6(A)に示すように、メイン側係合片70、およびサブ側係合片72は、メイン側係合片を上方とした上下方向での整列位置において整列、係合される。そして、この整列係合状態で、メイン側ロック解除レバー60(F,S)を上方回動させれば、このメイン側ロック解除レバーと一体的に回動する、メイン側係合片70の下方移動により、図6(B)に示すように、サブ側係合片72が下方に回動される。
【0041】
このように、メイン側ロック解除レバー60(F,S)によるロック解除操作に同期して、サブ側係合片72がその対応方向に回動されれば、支持シャフト65を介したリンクアーム67の一体回動により、サブ側スライド装置22のロック解除が得られる。そして、メイン側ロック解除レバー60(F,S)によるロック解除操作であれば、当然、支持シャフト64を介したリンクアーム66の一体回動により、メイン用スライド装置20(F,S)のロック解除が得られるため、この係合片70,72の整列状態においては、このメイン用スライド装置、およびサブ用スライド装置22のロック解除が、メイン側ロック解除レバー60(F,S)によるロック解除操作のもとで同期して行われることになる。
【0042】
なお、メイン側、サブ側の各係合片70,72の非整列状態においては、メイン側ロック解除レバー60(F,S)をロック解除方向に回動操作させても、サブ側係合片に対するメイン側係合片の係合は得られないため、メイン用スライド装置20(F,S)、およびサブ用スライド装置22の同期したロック解除は得られない。逆に言えば、メイン側、サブ側の各係合片70,72の非整列状態、つまりメインシート14,16とサブシート12との非整列位置であれば、このメイン用スライド装置20(F,S)、およびサブ用スライド装置22の同期したロック解除は得られないことから、各設定位置における単独のロック解除操作、および単独スライドが容易に確保可能となる。
【0043】
また、メインシート14,16とサブシート12との整列並置時、つまり図7(A)に示すようなメイン側係合片70とサブ側係合片72との整列時であっても、サブ側ロック解除レバー62によるロック解除操作のもとでは、図7(B)に示すように、サブ側係合片72がそのレバー操作のもとでメイン側係合片70からの離反方向に移動するため、メイン側係合片を伴わないサブ側係合片の単独での移動、つまりメイン用スライド装置20(F,S)のロック解除を伴わないサブ用スライド装置22の単独のロック解除、ひいてはサブシート12の単独スライドが確保可能となる(図1参照)。
【0044】
ところで、サブ側ロック解除レバー62によるサブ用スライド装置22のロック解除時であれば、図7(B)に示すように、そのレバー操作により下方移動したサブ側係合片72が、メイン側係合片70からの下方離反位置に位置するため、メインシート14,16との整列位置を含む範囲での、このメインシートに対するサブシート12の通過は、このメイン側係合片に対するサブ側係合片の通過のもとで確実に保障される(図1参照)。
【0045】
しかしながら、メイン側ロック解除レバー60(F,S)によるメイン用スライド装置20(F,S)のロック解除を伴う、このメインシート14,16のスライド時、たとえばサブシート12との整列位置後方からのスライド時においては、図8(A)に示すように、メイン側ロック解除レバーのロック解除操作のもとで下方移動したメイン側係合片70が、サブ用ロック手段22のロック時におけるロック位置でのサブ側係合片72に衝突、係合するため、メイン側係合片、およびサブ側係合片を単純に設けただけでは、サブシートとの整列位置でのメインシートの通過が、この各係合片の存在によって妨げられる虞がある。
【0046】
そこで、図4、およびたとえば図8に示すように、この発明においては、この発明においては、メイン側、サブ側の一対の係合片70,72のうちのいずれか一方を、他方の乗り越え通過の可能なスルーガイド形状とするものとし、この実施の形態においては、これを受けて、サブ側の係合片72を、斜面としてなるスルーガイド72aをその前後位置に配した略台形体として形成している。そして、この実施の形態においては、メイン側係合片70が、この略台形体としてなるサブ側係合片72の台形面を転動自在なローラとして形成されている。
【0047】
このような構成において、たとえば、サブ用スライド装置22のロックのもとで停止しているサブシート12との整列位置を、メインシート14,16が通過する際に、図8(A)に示すように、メイン側係合片(ローラ)70がサブ側係合片(略台形体)72のスルーガイド72aに当接すると、ロック解除操作のもとで固定的に保持されたメイン側係合片に対し、サブ側係合片は、リターンばねの付勢力のもとで弾性的に付勢、保持されているにすぎないため、メイン側係合片の進行に伴って、サブ側係合片は、図8(B)に示すように、その下方に弾性的に押し込まれる。
【0048】
このサブ側係合片72の下方移動のもとで、このサブ側係合片に対するメイン側係合片70の整列、つまりはサブシート12との整列位置における、このサブシートに対するメインシート14,16の整列が保障される。そして、このサブシート12に対するメインシート14,16のスライドを、さらに継続し、メイン側係合片70がサブ側係合片72を乗り越えれば、図8(C)に示すように、サブ側係合片に対するメイン側係合片の通過、つまりメインシートの、サブシートとの整列位置の通過が完了し、このサブ側係合片は、その付勢力のもとでその初期位置に復帰される。
【0049】
つまり、この構成によれば、サブ用スライド装置22の瞬間的なロック解除はともなわれるものの、サブシート12に対するメインシート14,16の単独スライド、特にその整列位置を含む範囲での単独スライドが容易に確保可能となる。
【0050】
上記のように、この発明のウォークスルー型車両におけるスライド装置の同期ロック解除構造10によれば、メイン用スライド装置20(F,S)とサブ用スライド装置22との同期したロック解除が、メインシート14,16とサブシート12との整列並置時におけるメイン側ロック解除レバー60(F,S)でのロックオフ操作のもとで適切に確保可能となっている。
【0051】
つまり、メインシート14,16とサブシート18との整列一体並置時であれば、メイン側ロック解除レバー60(F,S)のみでのロック解除操作のもとで、その一体的なスライドが得られるため、この一体スライド時における操作性、作業性の向上がこの発明によれば確実に得られる。
【0052】
また、この発明においては、メイン側ロック解除レバー60(F,S)のレバー操作をサブ用スライド装置22に伝達する一対の係合片70,72が、サブ側係合片72に対するメイン側係合片70の乗り越えを可能に形成されているため、サブシートとの整列位置を含む範囲でのメインシート14,16の単独スライドが、この一対の係合片の存在によっても妨げられることなく得られる。
【0053】
従って、この発明によれば、メイン用スライド装置20(F,S)、およびサブ用スライド装置22の同期したロック解除操作と、その個別のロック解除操作を伴う単独スライドとの両立が十分に確保可能となる。
【0054】
そして、この発明の構成においては、上下整列の可能な一対の係合片70,72を、メイン側ロック解除レバー60(F,S)、およびサブ側ロック解除レバー62との一体回動を可能にそれぞれ設ければ足りるため、その構成の複雑化が確実に防止可能となる。
【0055】
なお、このメインシート14,16とサブシート12との整列一体並置を得る連結手段としては、たとえば実開昭57−107638号公報等に開示された、いわゆる連結ロック手段等が例示できる。
【0056】
ここで、この発明の実施の形態においては、メイン側、サブ側のロック解除レバー60(F,S),62のロック解除操作方向が上方として具体化されているが、これに限定されず、たとえばその下方を、ロック解除レバーのロック解除操作方向としてもよい。この場合、メイン側係止片70はサブ側係止片72の下方から係合されるように、その下部位置に配設される。
【0057】
また、この実施の形態においては、メイン側係合片70をローラとして、また、サブ側係合片72を略台形体として、それぞれ具体化しているが、サブ側係合片に対するメイン側係合片の乗り越えを容易とする構成であれば足りるため、必ずしもこれに限定されるものではない。しかしながら、サブ側係合片72を、スルーガイド72aを有する略台形体とし、またメイン側係合片70をローラとすれば、構成の複雑化を伴うことなく、円滑な乗り越えが容易に確保可能となる。
【0058】
なお、この実施の形態においては、サブ側係合片72を略台形体として、またメイン側係合片70をローラとして、それぞれ具体化しているが、これとは逆に、サブ側係合片としてローラを、またメイン側係合片として略台形体をそれぞれ設ける構成としてもよい。
【0059】
ところで、上述したこの発明の実施の形態においては、メイン用スライド装置20(F,S)、およびサブ用スライド装置22のいずれもが、ラッチ式ロック手段44(F,S),46による所定ロックピッチ毎でのロックの可能な、ラッチロック式の構成として具体化されているが、このような構成においては、図9に示すように、ラッチ式ロック手段のロックピッチ、つまり一連のロック孔50(F,S),52のロックピッチP1を同一ピッチのものとして、メイン用スライド装置20(F,S)、およびサブ用スライド装置22をそれぞれ形成し、そのロック位置設定基点P2を、車両に対する同一の前後レベルとすることが好ましい。
【0060】
図9に示すように、このロック位置設定基点P2は、車両の前後方向における任意の位置として設定、規定することができる。そして、たとえば、このロック位置設定基点P2上にいずれかのロック孔50(F),52を合わせてメイン用スライド装置のガイドレール28(F)、およびサブ用スライド装置のガイドレール30をそれぞれ配置すれば、フロントシート14のメイン用スライド装置20(F)、およびこのサブ用スライド装置22間でのロック位置の完全位置、つまり完全同期化がはかられる。
【0061】
また、サブ用スライド装置のガイドレール30に設けられたロック孔52のいずれかを、ロック位置設定基点P2′として規定し、このロック位置設定基点P2′上にいずれかのロック孔50(S),52を合わせてメイン用スライド装置のガイドレール28(S)、およびサブ用スライド装置のガイドレール30をそれぞれ配置すれば、このセカンドシート16のメイン用スライド装置20(S)、およびサブ用スライド装置22間でのロック位置の完全同期化がはかられる。
【0062】
このように、メイン用スライド装置20(F,S)、およびサブ用スライド装置22間でのロック位置の完全同期化をはかれば、メインシート14,16とサブシート12との間でのそのロック位置のバラツキは生じない。つまり、メインシート14,16、およびサブシート12のいずれの前後位置であっても、その整列一体並置が得られるため、メインシート14,16、およびサブシート12の一体スライド、および同期ロック解除を確保可能とした場合におけるその適応性能が確実に向上される。
【0063】
また、図1、および図2を見るとわかるように、この実施の形態においては、サブシート12が、サブ用スライド装置22を一体備えた、いわゆる1本レール構造として具体化されているが、これに限定されず、たとえば従来通りの、いわゆる2本レール構造としてもよい。
【0064】
なお、この実施の形態においては、左右のメインシート14(L,R),16(L,R)間にウォークスルー通路18を規定、設定した場合の例を具体的に示しているが、このようなセンタ通路に限定されず、たとえば、左右のメインシート外方側部にウォークスルー通路を規定、設定した、いわゆるサイド通路の構成、この発明を応用してもよい。
【0065】
上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、この発明を何等限定するものでなく、この発明の技術範囲内で変形、改造等の施されたものも全てこの発明に包含されることはいうまでもない。
【0066】
【発明の効果】
上記のように、この発明に係るウォークスルー型車両におけるスライド装置の同期ロック解除構造によれば、メイン用スライド装置とサブ用スライド装置との同期したロック解除が、メインシートとサブシートとの整列並置時におけるメイン側ロック解除レバーでのロックオフ操作のもとで適切に確保可能となっているため、一体スライド時における操作性、作業性の向上が確実に得られる。
【0067】
そして、メイン側ロック解除レバーのレバー操作をサブ用スライド装置に伝達する一対の係合片が、サブ側係合片に対するメイン側係合片の乗り越えを可能に形成されているため、サブシートとの整列位置を含む範囲でのメインシートの単独スライドが、この一対の係合片の存在によっても妨げられることなく得られる。
【0068】
従って、この発明によれば、メイン用スライド装置、およびサブ用スライド装置の同期したロック解除操作と、その個別のロック解除操作を伴う単独スライドとの両立が十分に確保可能となる。
【0069】
そして、この発明の構成においては、上下整列の可能な一対の係合片を、メイン側ロック解除レバー、およびサブ側ロック解除レバーとの一体回動を可能にそれぞれ設ければ足りるため、その構成の複雑化が確実に防止可能となる。
【0070】
また、メイン側、サブ側の係合片のうちのいずれか一方を略台形体として、またその他方をローラとして、それぞれ形成するこの発明の請求項2の構成によれば、構成の複雑化を伴うことなく、円滑な乗り越えが容易に確保可能となる。
【0071】
さらに、メイン用スライド装置、およびサブ用スライド装置のロックピッチを同一ピッチのものとし、そのロック位置設定基点を車両に対する同一の前後レベルとすることで、各スライド装置のロック位置の完全同期化をはかる、この発明の請求項3の構成によれば、メインシートとサブシートとの間でのそのロック位置のバラツキが防止できるため、メインシート、およびサブシートの整列一体並置、および一体スライドを可能とした場合におけるその適応性能が確実に向上される。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係るウォークスルー型車両におけるスライド装置の同期ロック解除構造を示す、シートレイアウトの概略平面図である。
【図2】ウォークスルー型車両におけるメインシート、およびサブシートの概略斜視図である。
【図3】スライド装置の一例を示す、一部破断の、ロック状態でのその概略側面図である。
【図4】スライド装置の同期ロック解除構造を示す、一部破断の概略部分斜視図である。
【図5】ロック解除状態での、スライド装置の概略側面図である。
【図6】スライド装置の同期ロック解除構造での、同期作動時のその動作を示す、ロック時、ロック解除時での各作動図である。
【図7】スライド装置の同期ロック解除構造での、非同期作動時のその動作を示す、ロック時、ロック解除時での各作動図である。
【図8】スライド装置の同期ロック解除構造での、単独スライド時でのその動作を示す、通過前、整列時、および通過後での各作動図である。
【図9】ガイドレールの配置例を示す、その概略的な部分平面図である。
【符号の説明】
10 ウォークスルー型車両におけるスライド装置の同期ロック解除構造
12 サブシート
14 メインシート(フロントシート)
16 メインシート(リヤのセカンドシート)
20 メイン用スライド装置
22 サブ用スライド装置
60,62 ロック解除レバー
70,72 係合片
Claims (3)
- サブ用スライド装置によるその単独での前後スライドの可能なサブシートを、スライドシートとしてなるメインシート側部への整列一体並置を可能に、ウォークスルー通路に配設してなるウォークスルー型車両におけるものであり、
メインシート、サブシート間の整列並置時にその略上下方向で整列するメイン側、サブ側の一対の係合片が、そのロック解除操作方向を上下同一方向としたメイン用スライド装置、およびサブ用スライド装置の個別の各ロック解除レバーとの一体回動を可能にそれぞれ設けられ、
サブ側係合片に対するメイン側係合片の係合方向を、メイン側ロック解除レバーによるロック解除方向に一致させることにより、メインシート、サブシート間の整列並置時におけるメイン側ロック解除レバーでの各スライド装置の同期ロック解除を可能とするとともに、メイン側、サブ側の一対の係合片のうちのいずれか一方を、他方の乗り越え通過の可能なスルーガイド形状とすることにより、サブシートとの整列位置を含む範囲でのメインシートの単独スライドを確保可能としたウォークスルー型車両におけるスライド装置の同期ロック解除構造。 - メイン用、およびサブ用の各ロック解除レバーが、メインシート、サブシート間の整列並置時に同軸延長線上に整列される個別の支持シャフトに、それぞれ一体的に設けられるとともに、この各支持シャフトに一体固着された各リンクアームに対し、メイン側、サブ側の各係合片がそれぞれ取り付けられ、
メイン側、サブ側の係合片のうちのいずれか一方が、斜面としてなるスルーガイドをその前後位置に配した略台形体として形成されるとともに、その他方が、この略台形体としてなる一方の係合片の台形面を転動自在なローラとして形成された請求項1記載のウォークスルー型車両におけるスライド装置の同期ロック解除構造。 - メインシート、サブシートをそれぞれ前後スライド可能に支持するメイン用、サブ用の各スライド装置が、そのロック位置設定基点を車両に対する同一の前後レベルとした、同一ロックピッチを持つラッチロック式のスライドレールとしてそれぞれ形成された請求項1または2記載のウォークスルー型車両におけるスライド装置の同期ロック解除構造。
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