JP4034051B2 - 液晶電気光学装置の作製方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、強誘電性または反強誘電性の液晶材料を用いた複屈折モードの液晶電気光学装置に関する。
【0002】
本発明は、一軸配向した強誘電性または反強誘電性の液晶材料と、硬化した樹脂材料とを有する液晶電気光学装置とその作製方法に関する。
【0003】
本発明は、一軸配向した強誘電性または反強誘電性の液晶材料と、該液晶材料を挟持する基板または該基板上の電極や配向膜の上に設けた硬化した樹脂材料とを有する液晶電気光学装置とその作製方法に関する。
【0004】
本発明は、強誘電性または反強誘電性の液晶材料中に、反応開始剤を含む樹脂を添加し樹脂を硬化させる液晶電気光学装置の作製方法に関する。
【0005】
本発明は、強誘電性または反強誘電性の液晶材料を用いて、基板間隔により該液晶材料がバルク状態において呈するらせん構造が抑制された液晶電気光学装置であって、ドメインの発生を伴わずにスイッチングを行う液晶電気光学装置およびその作製方法に関する。
【0006】
本発明は、強誘電性または反強誘電性の液晶材料を用いて、基板間隔により該液晶材料がバルク状態において呈するらせん構造が抑制された液晶電気光学装置において中間調を得るための構成および方法に関する。
【0007】
本発明は、強誘電性または反強誘電性の液晶材料を用いて、階調が連続的に変化する液晶電気光学装置およびその作製方法に関する。
【0008】
本発明は、強誘電性または反強誘電性の液晶材料を用いたアクティブマトリクス型液晶電気光学装置に関する。
【0009】
【従来の技術】
最近、液晶ディスプレイ装置(LCD)が注目されている。中でも特に、ネマチック液晶を使用したツイステッドネマチック(以下TNという)型やスーパーツイステッドネマチック(以下STNという)型のものが広く知られ、実用化されている。
またネマチック液晶材料を用い、各画素に薄膜トランジスタ(TFT)等のスイッチング素子を設けたアクティブマトリクス型のものが、高速、高コントラスト、多階調表示できるものとして盛んに開発されている。
【0010】
TN型やSTN型の液晶電気光学装置の基本的な構成を次に示す。電極を有する基板上に配向膜を塗布、焼成し、配向処理としてラビングを施して第1の基板とする。同様に電極を有する基板上に配向膜を塗布、焼成し、ラビングを施して第2の基板とする。この第1の基板と第2の基板を電極が対向するように設け、この基板間に液晶を挟持している。
【0011】
両基板と液晶層の接触面では、液晶はラビングによる規制力に従って、ラビングした方向に並んでいる。上下基板では、このラビング方向をTN型では90゜またSTN型では200゜〜290゜に位置するようにずらしている。液晶層の中間付近の液晶分子は、90゜〜290゜に位置する液晶分子の間をエネルギーが一番小さくなるように螺旋状に並んでいる。
【0012】
これら、螺旋状に並んだ液晶分子は両基板間に電圧を印加することにより、液晶分子の誘電異方性により電界方向に平行または垂直に並ぶことで螺旋構造を解く。装置としてはこのように液晶分子が基板面に対して垂直な場合には明状態を、平行な場合には暗状態を示すように透過光量が変化する。また、このような液晶分子の状態は基板間に印加する電圧により連続的に変化し、それに応じて透過光量が変化するため、印加電圧を適当に制御することにより、明(透過)状態と暗(非透過)状態の間の階調、すなわち中間階が得られる。
【0013】
このように中間調が得られるということは、特にカラー化に非常に有効であり液晶の応答速度さえ充分であればフルカラー化にも対応できる。
【0014】
ただし、ネマチック液晶は応答速度が数100m秒と遅く、高速応答が要求される動画等の表示に対しては十分な特性を有していない。
またネマチック液晶は流動性があるため装置を立てかけて使用すると、液晶が装置の下部に溜りセルの下部が膨れたような形になる。こうなると、装置内でセル厚が大きく変化するので、着色や色ムラが生じたり、同じ電圧を印加しても液晶の応答が一様でなかったりする。
【0015】
近年では、装置の大画面化、高速化が望まれているため、上記のようなネマチック液晶の問題は、ますます深刻になっている。
【0016】
他方強誘電性液晶を用いたLCDも開発されている。強誘電性液晶は液晶分子が自発分極を有し、数十μ秒で高速スイッチングできる。この強誘電性液晶を用いてアクティブマトリクス型のLCDとし、より高速な表示ができるものも開発されている。
【0017】
強誘電性液晶または、反強誘電性液晶は自発分極を有しており、応答速度が数〜数100μ秒と高速動作が可能であり、ネマチック液晶に比べて、約3桁以上も高速で応答する。
【0018】
また、強誘電性液晶または、反強誘電性液晶を用いた液晶電気光学装置においては、液晶分子は少なくとも一方の基板面において、配向処理がなされていればその規制力に従って並ぶ。これら液晶分子は一方の基板面から他方の基板面に対して、規則正しく積み重なった層構造を有している。また基板の平行方向に対しても層構造を有している。
【0019】
このような層構造を持っているために強誘電性液晶または、反強誘電性液晶は流動性に乏しく、装置を立てかけた場合など、ネマチック液晶のように液晶が装置の下部に溜ることがなく、セル厚が一定に保たれ均一な表示が可能という利点がある。
【0020】
本来、強誘電性液晶材料が示すSmC* 相においては、液晶材料が有する層の法線(基板にほぼ平行)に対して液晶分子長軸がある傾き角だけ傾いた配向になっており、これがバルク状態では液晶分子が層から層に渡って配向ベクトルの向きが捩じれた螺旋構造となっており、液晶分子が有する自発分極が全体としては相殺されるため強誘電性が発現できなかった。
【0021】
そこで、クラーク等により強誘電性を発現する所謂表面安定化型の液晶電気光学装置が提案された。その基本的構成は電極を有する一対の基板間に強誘電性スメクチック液晶材料を挟持し、前記液晶分子を基板に平行かつ一軸配向せしめ、液晶材料の有する層を基板に対して垂直あるいは傾斜して形成させるものである。この時、前記一対の基板間隔を1μm程度として前記液晶材料がバルク状態で取る螺旋構造を解いている。さらに螺旋構造を解いた結果、液晶分子の取る配向ベクトルの向きが2つの安定な配向状態、即ち双安定な配向状態が得られる。
【0022】
上記のような構成とすると、画素電極に印加する電界の極性を反転させることで、液晶材料の有する自発分極と前記電極により印加された電界との積によるトルクにより上記2つの状態の間で高速応答が可能となる。
【0023】
液晶分子は、両基板間に電圧を印加することにより、液晶分子自身が持つ自発分極の向きを180゜変化(以下反転という)させる。液晶分子は一軸配向方向からある角度だけ変化した向きを有し、電圧の印加により液晶分子の向きが反転し、明(透過)状態から暗(非透過)状態もしくは暗状態から明状態へのスイッチングを行う。
【0024】
これらのネマチック、または強誘電性、反強誘電性の液晶を用いた液晶電気光学装置は、液晶分子の光学異方性を利用するものであるので、両基板の外側に偏光板を有し、電気光学特性を得ている。
【0025】
強誘電性または反強誘電性液晶材料を使用する場合は、2つの安定な状態のどちらかに一方の配向状態を示す方向に片方の偏光板の光軸を合わせ、他方の偏光板はこれと光軸が垂直となるようにする。
【0026】
この液晶分子を一軸配向させる方法として、液晶材料を挟持する基板の液晶材料と接する面に、液晶材料を一軸配向させる配向規制力を有せしめる手段(以下一軸配向手段という)を形成する方法が知られている。代表的にはラビング法が知られている。ラビング法は通常有機高分子等からなる100〜500Åの膜厚の配向膜を、基板の電極を有する表面上に形成し、更に前記配向膜表面を布などにより一方向に擦る処理(ラビング処理)を施し、配向膜に液晶分子を一方向に配列させる一軸配向規制力を有せしめる方法である。基板面や電極面に直接ラビング処理を施すこともある。ラビング法はネマチック液晶を用いたTN型、STN型液晶電気光学装置では広く用いられており、強誘電性液晶でも簡便かつ大面積化も容易な優れた配向方法として多く用いられている。
【0027】
また強誘電性液晶は秩序性が高く層構造を有しているため、一度配向させたら層構造が崩れない限り配向が乱れることはない。従って、ラビング法による配向に限られることはなく、ずり応力法、磁場配向法、温度勾配法等、配向膜を用いない、すなわち初期配向のみを行う配向方法においても、十分に液晶分子を配向させスイッチングを行うことができる。しかしこれらは実験的には利用されることはあるが、液晶材料を配向させるために多大な時間を要し、また大面積の装置の作製するのには向かず実用的でないため、工業的にはあまり用いられていない。
【0028】
また、別の配向方法としてSiO等を基板面に対して斜めに蒸着させて配向させる斜方蒸着法もあるが、量産性に問題があり、また、大面積の基板に対して行う場合、基板上の各点での蒸着角や蒸着方位等の違いが無視できなくなる等の問題が生じる。従って、現在強誘電性液晶電気光学装置においても工業的に広く利用されている配向方法はラビング法である。
【0029】
また、強誘電性液晶または反強誘電性液晶はネマチック液晶と比較して約3桁高速にスイッチングできるため、ONとOFFを表示フレームごとに制御して表示時間により階調表示を行う、いわゆるフレーム階調表示を可能とする。このON・OFF時間をTFTを用いてデジタル値で制御することで多階調のデジタル階調表示を行うことができる。詳細は本出願人の発明になる特願平4−275413号に記載されている。
【0030】
この場合、TFTはアモルファスシリコンTFTを用いてもよいが、強誘電性液晶の高速なスイッチングに対応し、またこのデジタル階調表示において、より高速、多階調、高コントラスト比とするためには、画素への電荷注入がより速やかに行われる必要がある。そのためアモルファスシリコンTFTより約4桁高速で動作しかつ自発分極を十分に反転させるだけの大電流を流し得る結晶性シリコンTFTが使用される。
【0031】
【従来技術の問題点】
強誘電性または反強誘電性の液晶材料を挟持する基板の液晶材料と接する面に一軸配向手段を形成してセルを作製した場合、液晶分子のスイッチングに問題があった。
【0032】
例えばラビング法の場合、液晶材料をセルに注入後徐冷していく過程で、SmA相ではラビング方向と配向ベクトルが平行であったものが、SmC* 相に転移すると、液晶分子が層法線から傾きチルト角を有するようになるため、SmC* 相では液晶分子の配向ベクトルがラビング方向に対して平行でなくなる。これで双安定状態が得られるのであるが、上記ラビング方向は液晶分子の一方の安定状態と他方の安定状態との間にあるので、スイッチングの途中で液晶分子がラビングによる一軸配向規制力の影響を受けることになり、液晶分子のスイッチングを阻害していた。
【0033】
一方、前述したずり応力法、磁場配向法、温度勾配法等の物理的手段による配向法は、実用性には乏しいが、液晶材料の配向後には一軸配向規制力を発するものが存在しないため、スイッチングを阻害するものは無く、良好なスイッチング特性が得られる。
【0034】
したがって液晶材料と接する面に一軸配向手段を形成して液晶分子を配向させた強誘電性液晶電気光学装置においては、ずり応力法、磁場配向法、温度勾配法などにより配向させた液晶電気光学装置に比較して、スイッチング速度が低下したり、スイッチングが十分に行われない等の問題があった。
【0035】
よって、液晶材料を一軸配向させるための規制力は、液晶を基板間に注入し、その後液晶材料を徐冷していく過程で初期配向させるときだけに働き、液晶材料が一軸配向した後は一軸配向規制力を発するものが存在しない構成となることが望まれていた。
【0036】
すなわち、液晶分子が一軸配向した後は、一軸配向手段の配向規制力を実質的に低減または無くしてしまうことが、スイッチング特性が良く、工業的にも生産性が優れた強誘電性液晶電気光学装置を実現するために必要とされていた。
【0037】
また、強誘電性液晶または反強誘電性液晶を用いた液晶電気光学装置において、特に基板間隔を数μmとし、液晶分子の螺旋構造を抑制した構造を有する、いわゆる表面安定化型強誘電性液晶(SSFLC)においては、双安定性を有するがために、得られる光透過の状態は、明か暗の2状態のみで、ネマチック液晶を用いたような中間調は得られなかった。すなわち、液晶分子の状態変化により、透過光量を連続的に変化させることはできなかった。
【0038】
表面安定化型の液晶電気光学装置は、電界の極性を反転させて第一の状態と第二の状態の間をスイッチングさせる場合、飽和電圧以上の電界強度で駆動させる場合は上記2状態間のスイッチングとなる。しかし、電界強度を徐々に変化させると、電界が印加された領域の液晶材料全体の透過光量が一様に変化してスイッチングするのではなく、通常次のようなスイッチングとなる。例えば第一の状態から第二の状態へスイッチングする場合、第一の状態を示している領域の中に第二の配向状態に反転した領域(以下これをドメインとする)が発生し、さらに電界強度を強くしていくとドメインの面積が大きくなって第二の状態へ移っていく。
【0039】
このような性質を利用して、強誘電性液晶または反強誘電性液晶を用いた液晶電気光学装置で中間調を得る方法の一つが、面積階調法である。
【0040】
強誘電性液晶または反強誘電性液晶の液晶分子が反転する過程を偏光顕微鏡下で観察すると、電圧を印加することで、電圧が印加されている特定領域において、明状態領域の中に暗状態領域が、または暗状態領域の中に明状態領域(以下ドメインという)が発生し、さらに電圧を印加していくと各ドメインの面積が広がっていき、特定領域全体として明状態が暗状態に、または暗状態が明状態になっていく。
【0041】
面積階調法は、このような、ドメインの大きさが印加電圧によって微妙に大きさが変わることを利用して、印加電圧を制御することで1画素内における明または暗のドメインの面積を制御し、中間調を得るものである。
【0042】
また、強誘電性液晶または反強誘電性液晶を用いた表面安定型の液晶電気光学装置において、中間調を得るための他の方法として画素分割法がある。これは、複数の小さい画素により1画素を構成し、小さい各画素による明暗の2状態の組み合わせにより、中間調を得るものである。
【0043】
例えば1つの画素を4つの小さい画素により構成した場合、最も暗もしくは最も明な状態は、小さい4画素すべてを暗または明状態にする。また、中間調を得たい場合には、例えば小さい画素の1つを暗状態とし、残りの3つを明状態とすることにより、1つの画素としては、最も明な状態と比較して75%の透過光量となる中間調が得られる。
【0044】
このように、強誘電性液晶または反強誘電性液晶を用いた液晶電気光学装置で中間調を得ようとすると、前述したようなドメインの大きさを制御した面積階調法や複画素で疑似的に表現する画素分割法等によらねばならない。
【0045】
しかし、面積階調法は、強誘電性または反強誘電性液晶の反転は急峻であり、特に、印加電圧値が僅かに変化してもドメインが大きく広がってしまうため、面積階調を実現できる電圧の幅が極めて狭いこと、ヒステリシスがあることから、数mV単位の印加電圧でドメイン面積を制御することは難しい。また、印加電圧を低くすると応答速度が極端に遅くなり、均一な表示ができなくなる。また表示の分解能を高くすることが困難であり、実用的ではなかった。
【0046】
また画素分割法では1画素に複数画素を使用する効率の悪さがあり、1画素を小さくして画素数を増やすにも技術的に限界がある。また、高解像度化にも不向きである。
【0047】
また、強誘電性液晶または反強誘電性液晶を用いた従来の表面安定型の液晶電気光学装置は、高いしきい値電圧を有するため低電圧駆動は望めなかった。
【0048】
また、従来の表面安定型の液晶電気光学装置において、一対の基板に施す配向処理を、両基板で違えることにより液晶材料の配向安定性を単安定とし、電界強度を変化させることで階調表示が行えるとする装置はあった。しかし、この方法でも結局スイッチング時にはドメインを伴った反転となり、前述の双安定型と同様の困難がつきまとうため、階調表示として充分なものではなかった。
【0049】
従って、強誘電性または反強誘電性の液晶材料を用いた液晶電気光学装置において、良好な中間階調表示を行える構成が望まれていた。
【0050】
また、アクティブマトリクス型強誘電性液晶電気光学装置で、フレーム階調方式を行う場合、高速かつ高コントラストな表示を行うためには、信号印可時の強誘電性液晶の液晶分子の反転が極めて短時間で行われ、かつ十分に反転しきること、また反転してからの液晶分子の状態が変化せず一定であること、が必要である。この液晶分子の状態を決定するのは主に、両基板の電極に印加される電圧の大きさである。
【0051】
ところが、装置内には液晶または配向膜からの電荷を持った不純物が存在したり、電圧印加時にその電圧とは逆方向の電圧を発生させる余分な電荷が生じることはよく知られている。これら電荷は、電圧印加に伴い両基板間に挟持された液晶材料内を自由に移動する。これら電荷の多くは移動して配向膜表面に到達するが、本来配向膜は絶縁性であるために電荷はそれ以上は移動せず配向膜と液晶層(液晶材料の層)の間(配向膜液晶界面)に蓄積される形となる。
【0052】
これらの電荷により液晶電気光学装置としては好ましくない問題が発生する。
例えば電極間に印加した電圧を打ち消す作用が生じてしまい、コントラストの減衰をまねいていた。たとえばTFT駆動してパルス電圧を印加した際、パルス印加に対し透過、非透過のスイッチングが急峻でなく一度スイッチングしてから少し遅れてさらにスイッチングが起こる2段階応答や、スイッチング後すぐに減衰が発生したりした。これを解決するためには印加する電圧を自発分極を反転させるのに必要な電圧より大きくする必要があったが十分な対策ではなかった。
【0053】
また、電極間に電圧を印加した際に、液晶層内の電荷量が経時変化するために液晶分子の状態が安定しない。さらに配向膜−液晶界面に蓄積した電荷により電気的に吸着された液晶分子は、液晶層内部の吸着されていない液晶分子よりも状態変化に必要とする電圧が大きいために液晶層内の液晶分子が一斉に状態変化を起こさず、液晶電気光学装置の特性として一番重要な光の透過特性が安定しないという問題が生じるのである。
【0054】
そして液晶電気光学装置としては、表示が不安定となり、また液晶材料の応答速度を十分に生かしきれずに表示速度の低下を余儀無くされ、またコントラストの低下を招いていた。特にフレーム階調表示を行った場合、階調数が限定されてしまった。
【0055】
この問題点を解決すべく、電荷の蓄積を緩和する配向膜材料の選定をしたり、絶縁膜である配向膜の代わりに、電極上にSiOなどを斜方蒸着して液晶分子を配向させる方法があるが、多くの予備実験を必要とするため時間がかかりコスト高になること、また材料的な組合せによりその効果が変化するなど一般的な手法とは言えない。また、液晶を精製して不純物を取り除く方法もあるが、この方法では精製して使える液晶は極僅かであり量産性を考えると大変不向きである。また、電荷移動錯体などを用いて、液晶層内に存在する電荷を吸着させたり、結合させたりしてプラスまたはマイナスの電荷をプラスマイナス0の状態にする(以下キャンセル、または中和するという)方法もあるが、電荷を完全にキャンセルするだけの電荷移動錯体を装置内に測り入れることは困難であり、過剰な電荷移動錯体は前述の電荷と同様に液晶層内を移動することになる。
【0056】
上記のように、液晶層へ印加される電圧変化を引き起こす要因、つまり液晶分子の経時的な状態変化を引き起こし装置の光学特性を不安定にする要因である、液晶層内に存在する電荷をキャンセルするには様々な方法が提案されてはいるが、容易にそして完全にキャンセルすることは困難である。
【0057】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、強誘電性液晶材料を挟持する基板の表面に一軸配向手段を形成する配向方法、特に実用性に優れたラビング法を強誘電性液晶に用いた場合問題となっていた、SmC* 相における、一軸配向規制力の方向と液晶分子が示す2つの安定状態の方向が異なる事による、液晶分子のスイッチングの阻害を解消し、配向規制力が液晶分子のスイッチングを妨げない液晶電気光学装置およびその作製方法を提供することを目的とする。
【0058】
また、本発明は、強誘電性または反強誘電性の液晶材料を用いて、基板間隔により該液晶材料がバルク状態において呈するらせん構造が抑制された液晶電気光学装置であって、ドメインの発生を伴わずに光学的なスイッチングを行う装置およびその作製方法を提供することを他の目的とする。
【0059】
また、本発明は装置の大面積化、高速化の容易な強誘電性液晶または反強誘電性液晶を用いて、ネマチック液晶のような、印加電圧の変化による連続的な階調変化、中間調が容易に実現できる液晶電気光学装置とその作製方法を提供することを他の目的とする。
【0060】
また、本発明は、結晶性シリコンTFTを有するアクティブマトリクス型の強誘電性液晶を用いた液晶電気光学装置において、液晶層内の不所望な電荷による影響を排除して装置の高速化と光学特性の安定化を実現し、高速多階調表示が可能かつ高コントラスト比を有する高性能な液晶電気光学装置を提供することを他の目的とする。
【0061】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記の様々な問題を解決するものである。
本発明の主要な構成は、
相対向する一対の基板間に挟持された、一軸配向した強誘電性または反強誘電性の液晶材料と、
前記一対の基板の少なくとも一方の基板の内側表面に設けられた、樹脂材料よりなる膜または複数の凸部と
を有することを特徴とする液晶電気光学装置である。
【0062】
また、本発明の他の主要な構成は、
相対向する一対の基板と、
前記一対の基板の間に挟持された、螺旋構造が抑制されかつ一軸配向している強誘電性または反強誘電性の液晶材料と、
前記一対の基板に設けられた、前記強誘電性または反強誘電性の液晶材料に対して電圧を印加する電極と、
前記一対の基板の一方または双方に設けられた、前記液晶材料を一軸配向させる一軸配向手段と、
を有する液晶電気光学装置であって、
前記強誘電性または反強誘電性の液晶材料に接する、樹脂材料よりなる膜または複数の凸部を、
前記基板または前記電極または前記一軸配向手段の表面上に有すること
を特徴とする液晶電気光学装置である。
【0063】
また、本発明の他の主要な構成は、
相対向する一対の基板と、
前記一対の基板の間に挟持された、螺旋構造が抑制されかつ一軸配向している強誘電性または反強誘電性の液晶材料と、
前記一対の基板に設けられた、前記強誘電性または反強誘電性の液晶材料に対して電圧を印加する電極と、
前記一対の基板の一方または双方に設けられた、前記液晶材料を一軸配向させる一軸配向手段と、
を有する液晶電気光学装置であって、
該液晶材料に接する面の一部または全部が、樹脂材料よりなる膜または複数の凸部よりなること
を特徴とする液晶電気光学装置である。
【0064】
すなわち、本発明は一軸配向した強誘電性または反強誘電性の液晶材料と、該液晶材料を挟持する面、すなわち該液晶材料を挟持する基板または該基板上の電極や配向膜等の表面との間に、樹脂材料により膜または複数の凸部を設けることを特徴とするものである。
言い換えれば、一軸配向した液晶材料が接する、該液晶材料を挟持する面すなわち基板や基板上の電極や配向膜等の表面の一部または全部に、硬化した樹脂材料よりなる膜や凸部を有することを特徴とするものである。
【0065】
この構成により、スイッチングを高速化でき、さらには配向欠陥を減少させ、また不所望な電荷を除去できる。
さらに、基板間隔により液晶材料がバルク状態において呈するらせん構造が抑制された液晶電気光学装置において、ドメインの発生を伴わないスイッチング(ドメインレススイッチング)が可能となり、ネマチック液晶を用いた液晶電気光学装置のような、電界強度により透過光強度が一様かつ連続的に変化する中間調を得ることができ、さらに駆動電圧の低電圧化を図れるなど、様々な効果が得られる。
以下、本発明の構成について詳述する。
【0066】
〔樹脂膜〕
本発明の他の主要な構成は、
一対の基板間に強誘電性または反強誘電性の液晶材料を挟持し、
前記一対の基板の内側表面の少なくとも一方には、前記強誘電性または反強誘電性の液晶材料を一軸配向させる配向規制力が付与され、
かつ前記配向規制力が付与された表面上に、前記配向規制力を抑制する手段が設けられていること
を特徴とする液晶電気光学装置である。
【0067】
また、本発明の他の主要な構成は、
内側に電極を有する一対の基板間に強誘電性または反強誘電性の液晶材料を挟持した液晶電気光学装置であって、
前記基板のいずれか一方もしくは両方の内側表面に一軸配向手段を有し、
該一軸配向手段上には該一軸配向手段の配向規制力を抑制する手段を有すること
を特徴とする液晶電気光学装置である。
【0068】
また、本発明の他の主要な構成は、
内側に電極を有する一対の基板間に強誘電性または反強誘電性の液晶材料を挟持した液晶電気光学装置であって、
前記基板のいずれか一方もしくは両方の内側表面に一軸配向手段を有し、
少なくとも該一軸配向手段上には樹脂膜を有すること
を特徴とする液晶電気光学装置である。
【0069】
また、本発明の他の主要な構成は、
内側に電極を有する一対の基板間に強誘電性または反強誘電性の液晶材料を挟持した液晶電気光学装置であって、
前記基板のいずれか一方もしくは両方の内側表面に一軸配向手段を有し、
前記液晶材料と前記一軸配向手段とが離隔していること
を特徴とする液晶電気光学装置である。
【0070】
また、本発明の他の主要な構成は、
内側に電極を有する一対の基板間に強誘電性または反強誘電性の液晶材料を挟持した液晶電気光学装置であって、
前記基板のいずれか一方もしくは両方の内側表面に一軸配向手段を有し、
少なくとも該一軸配向手段上には絶縁膜を有すること
を特徴とする液晶電気光学装置である。
【0071】
また、本発明の他の構成は、上記液晶電気光学装置において、
一軸配向手段はラビング処理が施された配向膜であること
を特徴とする液晶電気光学装置である。
【0072】
また、本発明の他の構成は、上記液晶電気光学装置において、
一対の基板の一方に画素電極に接続されたスイッチング素子を有し、
アクティブマトリクス駆動をすること
を特徴とする液晶電気光学装置である。
【0073】
また、本発明の他の主要な構成は、
内側表面の両方に電極と、一方または両方に一軸配向手段を有する一対の基板間に、
強誘電性または反強誘電性の液晶材料と、未硬化樹脂とを混合した混合物を挟持させ、
前記液晶材料を前記配向手段の配向規制力にしたがって一軸配向させた後、
前記未硬化樹脂を硬化させて、前記未硬化樹脂を前記基板表面上に膜状に硬化させること
を特徴とする液晶電気光学装置の作製方法である。
【0074】
また、本発明の他の構成は、上記液晶電気光学装置の作製方法において、
未硬化樹脂は紫外線硬化型樹脂であること
を特徴とする液晶電気光学装置の作製方法である。
【0075】
また、本発明の他の主要な構成は、
内側表面の両方に電極と、一方または両方に一軸配向手段を有する一対の基板間に強誘電性または反強誘電性の液晶材料を挟持し、
前記一軸配向手段上には該一軸配向手段の配向規制力を抑制する手段を有し、
かつ前記液晶材料が前記一軸配向手段の配向規制力に従って配向している液晶電気光学装置において、
前記液晶材料の温度を、室温から前記液晶材料がSmA相またはN* 相を示す温度まで上昇させ、
その温度を一定時間維持してから室温まで冷却すること
を特徴とする液晶電気光学装置の作製方法である。
【0076】
上記本発明について、図1を用いて説明する。図1に示されているのは、上記発明を用いた、単純マトリックス型の液晶電気光学装置の概念図である。図1において、101、102は透光性基板、103、104は画素電極、105は液晶材料等を注入後一定の方向に配列するための一軸配向手段であるラビング処理が施された配向膜、107は強誘電性の液晶材料である。液晶材料107は配向膜105に従って一軸配向している。配向膜105と液晶材料107の間には配向膜の配向規制力を抑制する手段である樹脂膜106が形成されている。また透光性基板101、102の外側面に偏光板109、110が設けられている。
【0077】
この液晶電気光学装置を作製するには、スペーサー108によって基板間隔が決められた、電極103、104、一軸配向手段である配向膜105を有する一組の透光性基板101、102間に挟持された液晶材料が、配向膜105に従って配向した後に、前記配向膜上にその配向規制力を抑制する樹脂膜が形成されればよい。
【0078】
具体的には、電極および配向膜を有する一組の透光性基板間に液晶材料と反応開始剤を添加した未硬化の樹脂との混合物を等方相になるまで加熱して注入し、徐冷して液晶材料を配向膜により一軸配向させる。しかる後に、液晶材料中に混入させた未硬化樹脂を硬化するための手段を施すことにより、前記未硬化樹脂が配向手段上に被膜となって硬化する。
【0079】
この時、液晶材料が配向手段に従って配列した後に樹脂を硬化させるため、硬化前の良好な配向状態を保ったまま、配向膜上に樹脂を薄膜状に硬化させることができる。硬化後の樹脂が液晶材料の配向に悪影響を及ぼすことはない。
【0080】
上記本発明により、スイッチングを高速化でき、また配向欠陥を防ぎ、さらに不所望な電荷を除去することができる。
【0081】
上記本発明において、配向膜は従来のものと同様にポリイミド系等の有機高分子樹脂等からなる膜を基板および電極上に形成しラビング処理する。またラビング条件も従来のものと同様でよい。
【0082】
その他、液晶材料に接する面の表面特性により液晶材料を一軸配向させる配向手段であれば本発明を適用することができる。基板や電極表面に直接ラビング等を施して一軸配向規制力を付与した場合についても同様である。斜方蒸着膜に対しても実施できる。
【0083】
また配向規制力を抑制する手段の樹脂膜106としては高分子樹脂などが使用できる。
【0084】
上記本発明の配向規制力を抑制する手段としての樹脂膜106の材料は、高温状態で液晶材料との混合状態を呈し、温度が低下した状態では液晶材料と分離するものであることが望ましい。また、2枚の基板間に挟持された状態で樹脂を硬化するために未硬化の樹脂には溶媒が含まれていないことが極めて望ましい。さらに、液晶材料と樹脂の分離や液晶材料の配向状態の形成は温度に依存するところが大きいため、樹脂は温度とは別の因子で硬化する方が望ましい。そうした事柄を考慮すると、例えば未硬化樹脂として紫外線硬化型樹脂、硬化手段として紫外線を用いることが好ましい。
【0085】
また、樹脂材料と液晶材料との混合物中の樹脂材料の濃度は任意であるが、20%以下程度が適当である。
【0086】
図1に示す上記本発明の液晶電気光学装置において、液晶材料107は、配向膜の表面にある樹脂膜106によって配向膜105には触れておらず離隔している。したがって液晶材料に対して配向膜の配向規制力が抑制される。
あるいは樹脂膜106が薄くて液晶材料107と配向膜105が部分的に触れていても樹脂膜106の存在によって実質的に配向規制力は抑制されてしまう。上記本発明はこのようにして、一軸配向手段である配向膜により液晶材料を配向させつつ、その後の配向膜の配向規制力を実質的に低減または無効としてしまう。したがって配向膜の配向規制力が液晶分子のスイッチングを妨げてしまうことを防ぐことができる。
【0087】
また、樹脂膜106を形成するために液晶材料中に添加する樹脂材料の濃度を高くする、あるいは配向膜の種類、硬化方法などを制御することにより、2枚の基板間で前記樹脂がカラム状(柱状)に形成される場合もある。ただしこのカラム状の樹脂も液晶材料が配向した後に形成されるため、液晶材料の配向に対する影響はほとんどない。このカラム状樹脂は、表示装置を大面積化する場合等、基板間隔の拡大を防いで一定に保つことができ、層構造の崩れを防ぐことができる。
【0088】
また、上記本発明の液晶電気光学装置は、従来の、樹脂膜を有していない液晶電気光学装置に比較して配向欠陥の発生が少ない。その結果装置としてのコントラスト比を向上させることができる。
【0089】
またこの樹脂膜106に用いた樹脂材料が高い絶縁性を有している場合は絶縁膜となるため、上下電極間の短絡を防止するショート防止膜の機能を有せしめることができる。
【0090】
また、通常の強誘電性液晶を用いた液晶電気光学装置においては、配向不良が発生した場合、液晶材料をIso(等方)相となる温度まで加熱した後、その後液晶相まで冷却する方法により修復していたが、上記本発明においては、一度完成した装置は一軸配向手段の配向規制力が樹脂膜により低減されているため、この方法を用いても配向状態は十分に修復されない。
【0091】
ところが、上記本発明の装置において液晶材料をIsoではなくSmA* 相またはN* 相となるまで加熱し、さらに一定の時間その温度を保つことにより、配向状態が修復されることがわかった。よって本発明の装置において配向状態の不良が発生してもそれを修復することができる。
【0092】
すなわち、上記液晶電気光学装置を液晶材料の種類により下記に示す温度まで上昇させ、その温度で一定時間保持し、その後徐冷する。まず温度として、
(1)Iso-N* -SmA-SmC* -Cryの相系列を有する液晶材料の場合、N* 相もしくはSmA相を示す温度。
(2)Iso-SmA-SmC * -Cryの相系列を有する液晶材料の場合、SmA相を示す温度。
とする。
【0093】
次に、前記装置は数分以上、望ましくは10〜60分間上記に示す温度に保持することが望ましい。
【0094】
上記方法を取ることにより、液晶材料と樹脂材料の混合物を注入、徐冷後、樹脂を硬化させた状態の本発明の装置の配向性を向上させることができ、配向不良が発生していた装置においても良好な配向性を得、コントラスト比を向上させることができる。
【0095】
また、本発明の如く樹脂膜106を形成すると、反応開始剤の開裂や樹脂材料の硬化により液晶材料中の不純物等による不所望な電荷が実質的に消滅する。したがって電極間に電圧を印加すると液晶材料の自発分極の反転時にのみ電流が流れそれ以外の時には余分な電流は流れなくなる。これにより、より安定かつ高速なスイッチングを実現できる。
【0096】
上記本発明の構成は単純マトリックス型の液晶電気光学装置においても有効であるのは勿論、各画素にスイッチング素子を接続したアクティブマトリクス型の装置においても有効である。
【0097】
上記本発明により、液晶材料配向後は、液晶材料に対する一軸配向規制力がなくなる、あるいは低下し、液晶分子のスイッチングの阻害を防止できた。その結果スイッチングを高速化させることができた。また配向欠陥を減少させることができた。また電極間の短絡の発生を防止できた。
【0098】
また一軸配向性が抑制された状態であっても液晶材料の配向性の向上、配向乱れの修復を行うことが可能となった。
【0099】
〔樹脂膜によるドメインレススイッチング〕
また、本発明の他の主要な構成は、
内側に電極を有する一対の基板間に、
電界無印加時において螺旋構造が解かれ、
かつ一軸配向した強誘電性または反強誘電性の液晶材料を挟持し、
前記基板表面には前記液晶材料が接する樹脂膜を有し、
前記電極に印加される電界による前記液晶材料のスイッチングが、ドメインの発生を伴わずに行われること
を特徴とする液晶電気光学装置である。
【0100】
また、本発明の他の主要な構成は、
内側に電極を有する一対の基板間に、電界無印加時において螺旋構造が解かれ、かつ一軸配向した強誘電性または反強誘電性の液晶材料を挟持し、
前記基板表面には前記液晶材料が接する樹脂膜を有し、
前記電極に印加される電界により液晶分子の配向ベクトルの向きが連続的に変化すること
を特徴とする液晶電気光学装置である。
【0101】
また、本発明の他の主要な構成は、
内側に電極を有する一対の基板間に、電界無印加時において螺旋構造が解かれ、かつ一軸配向した強誘電性または反強誘電性の液晶材料を挟持し、
前記一対の基板の少なくとも一方には前記液晶材料を一軸配向させる配向膜を有し、
前記基板表面および配向膜表面には前記液晶材料が接する樹脂膜を有し、
前記電極に印加される電界により液晶分子の配向ベクトルの向きが連続的に変化すること
を特徴とする液晶電気光学装置である。
【0102】
また、本発明の他の主要な構成は、
内側に電極を有する一対の基板間に、電界無印加時において螺旋構造が解かれ、かつ一軸配向した強誘電性または反強誘電性の液晶材料を挟持し、
前記基板の一方には画素電極に接続されたスイッチング素子を有し、
前記一対の基板の少なくとも一方には前記液晶材料を一軸配向させる配向膜を有し、
前記基板表面および配向膜表面には前記液晶材料が接する樹脂膜を有し、
前記電極に印加される電界により液晶分子の配向ベクトルの向きが連続的に変化すること
を特徴とする液晶電気光学装置である。
【0103】
また、本発明の他の主要な構成は、
内側表面の両方に電極と、一方または両方に一軸配向手段を有する一対の基板間に、
モノマー量が重量比で60%以上である未硬化樹脂を強誘電性または反強誘電性の液晶材料に混合させた混合物を挟持させ、
前記液晶材料を前記配向手段の配向規制力にしたがって一軸配向させた後、
前記未硬化樹脂を硬化させて、前記未硬化樹脂を前記基板表面上に膜状に硬化させること
を特徴とする液晶電気光学装置の作製方法である。
【0104】
また、本発明の他の構成は、上記液晶電気光学装置の作製方法において、
未硬化樹脂は紫外線硬化型樹脂であること
を特徴とする液晶電気光学装置の作製方法である。
【0105】
上記本発明は、強誘電性または反強誘電性の液晶材料を用いた液晶電気光学装置において、ドメインの発生を伴わないスイッチング(ドメインレススイッチング)を行うものである。
上記本発明について、図9を用いて説明する。図9に示されているのは、本発明によるアクティブマトリクス駆動型の液晶電気光学装置である。図9において、1101、1102は透光性基板、1103は対向電極、1104は画素電極、1105はスイッチング素子としての薄膜トランジスタ(TFT)、1106は配向膜等の液晶材料を一定の方向に配列するための一軸配向手段、1107は樹脂膜、1108は強誘電性の液晶材料である。液晶材料1108はここでは配向手段1106に従って一軸配向している。透光性基板1101、1102の外側面には、偏光板1109、1110を設けている。
【0106】
上記構成において用いる一軸配向処理法は、従来のものと同様に有機高分子等からなる配向膜をラビング処理したものを用いることが可能である。また、ラビング条件も従来のものと同様に布などを巻いたローラーにより前記配向膜上を一方向に擦る。また配向膜は両側の基板ともに形成しても、一方の基板のみに形成してもよい。その他の一軸配向方法として、磁場配向法、ずり応力法、温度勾配法、斜方蒸着法など、様々な配向方法が使用できる。
【0107】
この液晶電気光学装置を作製するには、スペーサー(図示せず)によって基板間隔が決められた、電極1103、1104を有する一組の透光性基板1101、1102で液晶材料と反応開始剤を添加した未硬化の樹脂との混合物を挟持させ、前記液晶材料を一軸配向させる。しかる後に、液晶材料中に混入させた未硬化樹脂を硬化するための手段を施すことにより、前記未硬化樹脂が液晶材料に接する配向手段や電極の表面に被膜となって硬化し、樹脂膜1107となる。また樹脂は基板間にカラム状に硬化するものもある(図示せず)。
【0108】
この時、液晶材料が配向手段に従って配列した後に樹脂を硬化させるため、硬化前の良好な配向状態を保ったまま、配向膜上に樹脂を薄膜状に硬化させることができる。その結果、硬化後の樹脂が液晶材料の配向に悪影響を及ぼすことはなく、配向欠陥の発生を防ぐことができ、コントラストの低下を防止する。
【0109】
上記の構成において用いる樹脂材料は、高温状態で液晶材料との混合状態を呈し、温度が低下した状態では液晶材料と分離するものであることが望ましい。また、2枚の基板間に挟持された状態で樹脂を硬化するために未硬化の樹脂には溶媒が含まれていないことが極めて望ましい。さらに、液晶材料と樹脂の分離や液晶材料の配向状態の形成は温度に依存するところが大きいため、樹脂は温度とは別の因子で硬化する方が望ましい。そうした事柄を考慮すると、例えば未硬化樹脂として紫外線硬化型樹脂、硬化手段として紫外線を用いることが好ましい。さらに、樹脂は注入のときに分離しにくいように液晶材料との相溶性が高い方が望ましく、樹脂中のモノマー量が重量比で60%以上、望ましくは80%以上であることが望ましい。
【0110】
本発明者らは、基板または基板上の配向膜や電極の上に、強誘電性または反強誘電性の液晶材料が接する樹脂膜を設けることで、ネマチック液晶材料を用いた装置のような、ドメインが発生せず、電界強度により一様に階調が変化するスイッチング状態(ドメインレススイッチング)が得られることを発見した。
【0111】
本来、一軸配向した強誘電性液晶にはSmC* 相において液晶分子が層の法線に対して傾き角一定のまま、層の法線を軸とした円錐の側面上のどの位置にも同じ確率で存在する性質を示し、液晶分子の配向ベクトルの向きは自由である。この状態はゴールドストーンモードと呼ばれている。前述した表面安定化型の装置は、ゴールドストーンモードで分子の取りうる配向ベクトルの向きが特定の2つの向きに限定したスイッチングとなっていると考えられる。
【0112】
この限定を外したスイッチングが実現できれば、液晶材料に対して電界を連続的に変化させて印加した場合、電界が印加されている領域の液晶材料の全てがドメインの発生を伴わずに、一様に電界の強度に応じて透過光量が連続的に変化するスイッチングが可能となると考えられてきた。
【0113】
特に電界強度で階調表示を行う方法は、TN、STN型液晶電気光学装置では既に行われている方法なので、この技術をそのまま応用できる利点がある。
【0114】
強誘電性液晶を使用したセルでもこれまで一部の範囲ではあるが、電界強度を変化させることで任意の領域の透過光量をドメイン発生を伴わずに一様に変化した例の報告がなされていたが、このような装置を生産性良く作製することは困難であった。
【0115】
本発明構成により、電界が印加されている領域全体の液晶材料がドメインの発生を伴わずに、一様に電界の強度に応じて透過光量が連続的に変化するスイッチングが得られた。作製においても、従来の表面安定型の装置とほとんど同様の工程で作製でき、高い生産性を有する。
【0116】
本発明の液晶電気光学装置は、従来の表面安定型の装置とは異なり液晶分子が配向ベクトルの向きを自由に取りうる状態にあると考えられる。これにより、強誘電性または反強誘電性の液晶材料を用いた、基板間隔によって、液晶材料がバルク状態において呈するらせん構造を抑制する構成の液晶電気光学装置のスイッチングを、ドメイン発生を伴わずに、電界が印加される領域全体において一様に変化させることができ、電界変化による高速な中間階調表示を容易に行うことができるようになった。したがって、電界強度による階調表示を極めて高速に行うことが可能となった。
【0117】
上記本発明において樹脂膜は、配向膜や電極の液晶材料に対するアンカリングを緩和する作用を有しているものと考えられる。
【0118】
また、液晶分子の応答性が改善され、液晶材料を駆動した場合従来双安定型ではドメインを伴ったスイッチングのため明暗間の反転状態が2段階となっていたものが1段階で済み、応答の急峻性が大幅に向上した。
【0119】
上記本発明の装置においては、液晶材料が双安定性を有しない。従って、本発明の構成は各画素にスイッチング素子を有するアクティブマトリクス駆動型の装置に特に適している。
【0120】
更に、上記本発明構成ではスイッチング時のしきい値が従来の双安定型の装置に比較して低下した。このため、従来の双安定型の装置に比較して低電圧駆動を行うことが可能となった。
【0121】
上記本発明の装置において、画素部分一面に渡って透過光量が一様に変化する場合の他に、使用する液晶あるいは樹脂材料や樹脂硬化条件等、作製条件によっては透過光量の一様な変化とともに微小な領域におけるドメイン発生(反転)が混在した状態が生じる場合もある。
【0122】
なお、液晶材料中に添加する樹脂材料の濃度等により2枚の基板間で前記樹脂がカラム状(柱状)に形成される場合もある。これは、表示装置を大面積化する場合等、基板間隔を一定に保つ必要がある時に有用な方法となる。
【0123】
また、樹脂硬化後液晶材料をN* 相もしくはSmA相に示す温度まで上昇させ、その温度で10min以上望ましくは10〜30minの間一定に保持し、その後再び室温まで徐冷する。この方法により液晶材料の配向状態をより向上させることが出来る。
【0124】
〔ドメインレススイッチングとフレーム階調〕
また、本発明の他の主要な構成は、
内側に電極を有する一対の基板間に、電界無印加時において螺旋構造が解かれ、かつ一軸配向した強誘電性または反強誘電性の液晶材料を挟持し、
前記基板の一方には画素電極に接続されたスイッチング素子を有し、
前記一対の基板の少なくとも一方には前記液晶材料を一軸配向させる配向膜を有し、
前記基板表面および配向膜表面には前記液晶材料が接する樹脂膜を有し、
前記電極に印加される電界により液晶分子の配向ベクトルの向きが連続的に変化し、
各画素の透過、非透過を複数のフレームで制御してフレーム階調表示を行うこと
を特徴とする液晶電気光学装置である。
【0125】
また、本発明の他の主要な構成は、
内側に電極を有する一対の基板間に、電界無印加時において螺旋構造が解かれ、かつ一軸配向した強誘電性または反強誘電性の液晶材料を挟持し、
前記基板の一方には画素電極に接続されたスイッチング素子を有し、前記基板の少なくとも一方には前記液晶材料を一軸配向させる配向膜を有し、
前記液晶材料が接する前記基板表面および配向膜表面には樹脂膜を有し、
前記電極に印加される電界により液晶分子の配向ベクトルの向きが連続的に変化することにより透過光量を制御し、
かつ各画素の透過、非透過を複数のフレームで制御してフレーム階調表示を行うこと
を特徴とする液晶電気光学装置である。
【0126】
また、本発明の他の構成は、上記液晶電気光学装置において、
1つのフレームをN(2以上の自然数)個の互いに持続時間の異なるサブフレームに分割し、
持続時間が最短のサブフレームの持続時間をT0 としたとき、これらサブフレームの持続時間は、T0 、2T0 、220 、・・・2N 0 のいずれかである表示方法により駆動されること
を特徴とする液晶電気光学装置である。
【0127】
上記本発明は、強誘電性または反強誘電性の液晶材料を用いて各画素にスイッチング素子を設けたアクティブマトリクス駆動型の液晶電気光学装置において、ドメインの発生を伴わないスイッチング(ドメインレススイッチング)を行い、かつフレーム階調表示を行うものである。
【0128】
上記本発明の例を図17を用いて説明する。図17に示されているのは、本発明によるアクティブマトリクス駆動型の液晶電気光学装置である。図17において、2101、2102は透光性基板、2103は対向電極、2104は画素電極、2105はスイッチング素子としての薄膜トランジスタ(TFT)、2106は配向膜等の液晶材料を一定の方向に配列するための一軸配向手段、2107は樹脂膜、2108は強誘電性の液晶材料である。液晶材料2108はここでは配向手段2106に従って一軸配向している。透光性基板2101、2102の外側面には偏光板2109、2110を設けている。
【0129】
上記構成において用いる一軸配向処理法は、従来のものと同様に有機高分子等からなる配向膜をラビング処理したものを用いることが可能である。また、ラビング条件も従来のものと同様に布などを巻いたローラーにより前記配向膜上を一方向に擦る。また配向膜は両側の基板ともに形成しても、一方の基板のみに形成してもよい。その他の一軸配向方法として、磁場配向法、ずり応力法、温度勾配法、斜方蒸着法など、様々な配向方法が使用できる。
【0130】
この液晶電気光学装置を作製するには、スペーサー(図示せず)によって基板間隔が決められた、電極2103、2104を有する一組の透光性基板2101、2102で液晶材料と反応開始剤を添加した未硬化の樹脂との混合物を挟持させ、前記液晶材料を一軸配向させる。しかる後に、液晶材料中に混入させた未硬化樹脂を硬化するための手段を施すことにより、前記未硬化樹脂が液晶材料に接する配向手段や電極の表面に被膜となって硬化し、樹脂膜2107となる。また樹脂は基板間にカラム状に硬化するものもある(図示せず)。
【0131】
この時、液晶材料が配向手段に従って配列した後に樹脂を硬化させるため、硬化前の良好な配向状態を保ったまま、配向膜上に樹脂を薄膜状に硬化させることができる。その結果硬化後の樹脂が液晶材料の配向に悪影響を及ぼすことはなく、配向欠陥の発生を防ぐことができ、コントラストの低下を防止する。
【0132】
上記の構成において用いる樹脂材料は、高温状態で液晶材料との混合状態を呈し、温度が低下した状態では液晶材料と分離するものであることが望ましい。また、2枚の基板間に挟持された状態で樹脂を硬化するために未硬化の樹脂には溶媒が含まれていないことが極めて望ましい。さらに、液晶材料と樹脂の分離や液晶材料の配向状態の形成は温度に依存するところが大きいため、樹脂は温度とは別の因子で硬化する方が望ましい。そうした事柄を考慮すると、例えば未硬化樹脂として紫外線硬化型樹脂、硬化手段として紫外線を用いることが好ましい。さらに、樹脂は注入のときに分離しにくいように液晶材料との相溶性が高い方が望ましく、樹脂中のモノマー量が重量比で60%以上、望ましくは80%以上であることが望ましい。
【0133】
本発明者らは、前記した如く、基板または基板上の配向膜や電極の上に、強誘電性または反強誘電性の液晶材料が接する樹脂膜を設けることで、ネマチック液晶材料を用いた装置のような、ドメインが発生せず、電界強度により一様に階調が変化するスイッチング状態(ドメインレススイッチング)が得られることを発見した。
【0134】
上記本発明構成により、電界が印加されている領域全体の液晶材料がドメインの発生を伴わずに、一様に電界の強度に応じて透過光量が連続的に変化するスイッチングが得られた。作製においても、従来の表面安定型の装置とほとんど同様の工程で作製でき、高い生産性を有する。
【0135】
また、液晶分子の応答性が改善され、液晶材料を駆動した場合従来双安定型ではドメインを伴ったスイッチングのため明暗間の反転状態が2段階となっていたものが1段階で済み、応答の急峻性が大幅に向上した。
【0136】
更に、上記本発明構成ではスイッチング時のしきい値が従来の双安定型の装置に比較して低下した。このため、従来の双安定型の装置に比較して低電圧駆動を行うことが可能となった。
【0137】
また、本発明者らは、液晶材料中に未硬化の樹脂を混入して基板間に注入した後、硬化させることで液晶層(材料)内に存在する液晶の状態を不安定にする不所望な電荷の作用を除去できることを発見した。
【0138】
この作用としては、前記の不所望な電荷を樹脂材料が硬化する際に樹脂中に取り込む、あるいは未硬化樹脂中に一般的に混入されている反応開始剤が液晶材料中に拡散し、樹脂硬化時に開裂して電荷を発生し前記の不所望な電荷がそれに吸着したり、結合したりする、等が考えられる。
【0139】
上記本発明により従来問題となっていた電荷の移動や配向膜液晶界面での電荷の蓄積がなくなる。よって、電極間に対し電圧を印加した時には、急峻に自発分極が反転し、かつ十分に反転しきる。また反転後の表示状態の経時変化も除去できた。また、基板上に吸着される液晶分子がなくなるために電極間の液晶層全体が電圧印加より同時に状態変化を起こすこととなり、より安定な光学特性が得られる。したがって高速かつ高コントラスト比を有する表示が実現できる。
【0140】
本発明構成においては、液晶材料が双安定性を有してないが、アクティブマトリクス駆動を行なうため、液晶材料自体の双安定性は必要ない。またこれによって電界強度により階調表示が可能となっている。したがって、本発明によって、高速かつ高コントラストな階調表示を、フレーム階調による中間調とドメインレススイッチングによる電界による中間調を共に実現することができ、それぞれ独立して用いても良いし、また両者を組み合わせることで非常に高速かつ多階調表示で高画質な液晶電気光学装置とすることもできる。
【0141】
本発明の装置において、画素部分一面に渡って透過光量が一様に変化する場合の他に、使用する液晶あるいは樹脂材料や樹脂硬化条件等、作製条件によっては透過光量の一様な変化とともに微小な領域におけるドメイン発生(反転)が混在した状態が生じる場合もある。
【0142】
また、樹脂硬化後液晶材料をN* 相もしくはSmA相に示す温度まで上昇させ、その温度で10min以上望ましくは10〜30minの間一定に保持し、その後再び室温まで徐冷する。この方法により液晶材料の配向状態をより向上させることが出来る。
【0143】
また、液晶材料中に添加する樹脂材料の濃度等により、2枚の基板間で前記樹脂がカラム状(柱状)に析出し、装置内に点在して形成される場合もある。これは、表示装置を大面積化する場合等、基板間隔を一定に保つ必要がある時に有用な方法となる。
【0144】
このカラム状の樹脂により基板間隔の拡大、減少を防ぎ、また基板の強度を向上させて歪みの発生を防ぐことができ、液晶の層構造の崩れや表示ムラ等の発生を抑え、装置を立てて使用することも可能となった。また配向の乱れも発生させない。よって大面積の強誘電性液晶を用いた液晶電気光学装置を実現できる。
【0145】
この樹脂分離析出後の装置表示部分を基板面から見た場合、カラム状に硬化した樹脂の占める面積の割合は0.1から20%であれば、液晶電気光学装置として十分な性能が得られる。
【0146】
本発明は上記構成により、液晶層内の不所望な電荷を取り除いて高速、高コントラストな強誘電性液晶を用いた液晶電気光学装置を実現し、高品質なフレーム階調を利用したデジタル階調が可能となる。
【0147】
また、電界強度による階調表示も容易に行なうことができ、フレーム階調と合わせて非常に高い階調数で、優れた階調表示を行なうことも可能となる。
【0148】
加えて本発明の液晶電気光学装置は、強誘電性液晶材料が高速にスイッチングする電圧を従来の双安定型の装置と比較して大幅に低電圧化でき、低消費電力化できる。
【0149】
さらに樹脂により基板間隔の拡大を防止し大面積化しても液晶材料の層構造の破壊がない液晶電気光学装置を実現するものである。
【0150】
なお、不所望な電荷の作用を除去する働きは、市販の樹脂においては通常添加されている反応開始剤のみを液晶材料中に混入した後、紫外線等で開裂させても得られた。また樹脂中に添加する反応開始剤量を変化させても、樹脂を樹脂材料(モノマーやオリゴマー)と反応開始剤に分割しておいて、別々に混合しても構わない。
【0151】
〔複数の凸部によるドメインレススイッチング〕
また、本発明の他の主要な構成は、
相対向する一対の基板と、
前記一対の基板の間に挟持された、螺旋構造が抑制されかつ一軸配向している強誘電性または反強誘電性の液晶材料と、
前記一対の基板に設けられた、前記強誘電性または反強誘電性の液晶材料に対して電圧を印加する電極と、
前記強誘電性または反強誘電性の液晶材料が接する表面に設けられた、複数の凸部と、
を有することを特徴とする液晶電気光学装置である。
【0152】
また、本発明の他の主要な構成は、
相対向する一対の基板と、
前記一対の基板の間に挟持された、螺旋構造が抑制されかつ一軸配向している強誘電性または反強誘電性の液晶材料と、
前記一対の基板に設けられた、前記強誘電性または反強誘電性の液晶材料に対して電圧を印加する電極と、
前記強誘電性液晶または反強誘電性液晶が接する表面に設けられた、樹脂材料より構成された複数の凸部と、
を有することを特徴とする液晶電気光学装置である。
【0153】
また、本発明の他の主要な構成は、
相対向する一対の基板と、
前記一対の基板の間に挟持された、螺旋構造が抑制されかつ一軸配向している強誘電性または反強誘電性の液晶材料と、
前記一対の基板に設けられた、前記強誘電性または反強誘電性の液晶材料に対して電圧を印加する電極と、
前記強誘電性または反強誘電性の液晶材料が接する表面に設けられた、樹脂材料より構成された、直径約500nm以下の複数の凸部と、
を有することを特徴とする液晶電気光学装置である。
【0154】
また、本発明の他の主要な構成は、
相対向する一対の透光性基板と、
前記一対の透光性基板の一方の透光性基板の内側表面に設けられたストライプ状の複数の電極と、
前記一対の透光性基板の他方の透光性基板の内側表面に設けられた、前記ストライプ状の複数の電極と直交するストライプ状の複数の電極と、
前記一対の透光性基板の外側表面に設けられた偏光板と、
前記一対の透光性基板の間に挟持された、螺旋構造が抑制されかつ一軸配向している強誘電性または反強誘電性の液晶材料と、
前記強誘電性または反強誘電性の液晶材料が接する表面に設けられた、樹脂材料より構成された複数の凸部と、
を有することを特徴とする液晶電気光学装置である。
【0155】
また、本発明の他の主要な構成は、
相対向する一対の透光性基板と、
前記一対の透光性基板の一方の透光性基板の内側表面に設けられた、複数のスイッチング素子および該スイッチング素子に接続された画素電極と、
前記一対の透光性基板の他方の透光性基板の内側表面に設けられた対向電極と、
前記一対の透光性基板の外側表面に設けられた偏光板と、
前記一対の透光性基板の間に挟持された、螺旋構造が抑制されかつ一軸配向している強誘電性または反強誘電性の液晶材料と、
前記強誘電性または反強誘電性の液晶材料が接する表面に設けられた、樹脂材料より構成された複数の凸部と、
を有することを特徴とする液晶電気光学装置である。
【0156】
また、本発明の他の構成は、上記液晶電気光学装置において、
樹脂材料は、紫外線硬化型であること
を特徴とする液晶電気光学装置である。
【0157】
また、本発明の他の主要な構成は、
内側表面に電極を有する一対の透光性基板間に、強誘電性または反強誘電性の液晶材料と、含有するモノマーの量が40重量%以上である未硬化の樹脂材料との混合物を満たす工程と、
前記未硬化の樹脂材料を前記混合物から析出させる工程と、
前記液晶材料を配向させる工程と、
前記未硬化の樹脂材料を硬化させる工程と、
を有することを特徴とする液晶電気光学装置の作製方法である。
【0158】
また、本発明の他の主要な構成は、
内側表面に電極を有する一対の透光性基板間に、強誘電性または反強誘電性の液晶材料と、含有するモノマーの量が60〜90重量%である未硬化の樹脂材料との混合物を満たす工程と、
前記未硬化の樹脂材料を前記混合物から析出させる工程と、
前記液晶材料を配向させる工程と、
前記未硬化の樹脂材料を硬化させる工程と、
を有することを特徴とする液晶電気光学装置の作製方法である。
【0159】
また、本発明の他の主要な構成は、
内側表面に電極を有する一対の透光性基板間に、強誘電性または反強誘電性の液晶材料と未硬化の樹脂材料との混合物であって、前記未硬化の樹脂材料に含有されるモノマー量が、前記混合物の2.0重量%以上であるものを満たす工程と、
前記未硬化の樹脂材料を前記混合物から析出させる工程と、
前記液晶材料を配向させる工程と、
前記未硬化の樹脂材料を硬化させる工程と、
を有することを特徴とする液晶電気光学装置の作製方法である。
【0160】
また、本発明の他の構成は、上記液晶電気光学装置の作製方法において、
未硬化の樹脂材料は紫外線硬化型であり、
未硬化の樹脂材料を硬化させる工程は紫外線照射であること
を特徴とする液晶電気光学装置の作製方法である。
【0161】
上記本発明の基本的な構成を図21を用いて説明する。
ここでは単純マトリクス型の液晶電気光学装置の例を示す。
電極3112、3113を有する透光性基板3111、3110上に、ここでは液晶分子を一軸配向させるための配向手段3114、3115が、少なくとも一方の基板面上に形成されている。
この基板間隔はスペーサー3118で均一に制御されている。基板間隔は、液晶分子の螺旋構造を抑制するに十分な狭さとなっている。また両基板をシール剤3119で固定している。この基板間に液晶材料3116を挟持させる。液晶材料3116は配向手段3114、3115に従って一軸配向している。
【0162】
一方、液晶材料の表面に接して複数の微細な凸部3117が、ここでは主に配向手段3114、3115上に形成されている。凸部3117は樹脂により構成されている。また、透光性基板の外側表面には偏光板3120、3121を設けている。
配向手段がどちらか一方の基板側のみに形成されている場合、凸部3117は、例えば配向手段3114と透光性基板3111あるいはこの基板上の電極3113上に形成される。また液晶材料に接して一方または双方の基板上に絶縁膜または強誘電体薄膜等を設けた場合、それらの上に凸部3117が形成される。
【0163】
一軸配向方法としては、配向膜を用いたラビング法の他に磁場配向法、ずり応力法、温度勾配法、斜方蒸着方等、様々な方法が使用できる。
【0164】
上記液晶電気光学装置を作製するには、強誘電性液晶または反強誘電性液晶に未硬化の樹脂を混合し、等方相まで加熱してよく混合し、この混合物を、基板間に注入し、再度液晶がSmC* 相(通常は室温)を示すまで冷却する。この過程で液晶は一軸配向手段の配向規制力に従って配向し、偏光顕微鏡下で良好な消光位を確認できる。樹脂は混合物中から液晶分子間または層と層の間に排斥される形で分離析出してくる。ほぼ完全に樹脂が液晶から分離したら硬化させて、液晶に不溶とする。これら樹脂は液晶の配向に伴って排斥され、分離析出した形なので当然液晶の配向を乱すことはない。
【0165】
樹脂硬化後の基板上を、液晶材料を蒸発させた後にSEM(走査型電子顕微鏡)にて観察すると、高さ数10nm程度、直径数10〜数100nm、約500nm以下の、樹脂により構成された複数の微細な凸部が多数確認できる。凸部は全体的に均一に表面上に分散して存在し、部分的に複数の凸部が連なっているところもある。
【0166】
このようにして、液晶材料が接する面、すなわち、基板、透光性基板、配向膜、絶縁膜等の表面上に、複数の微細な凸部を有せしめることができる。
【0167】
そして、このような構成を有する液晶電気光学装置に対し、印加電圧を制御して、ドメインが発生せず、透過光量を連続的に変化するスイッチングが可能になり、中間調を得ることができる。また同一の電圧が印加される領域内、例えば1画素内においては、ほぼ一様な階調が得られる。偏光顕微鏡によりスイッチング状態を観察しても、少なくとも視覚的にはドメインの存在は確認されない。
【0168】
ここで使用する樹脂としては様々なものが利用できる。液晶が熱により層変形を起こすこと、液晶と樹脂を分離しなくてはならないことなどを考えると、熱以外の因子で硬化する樹脂を用いることが望ましい。
例えば紫外線照射により硬化する、紫外線硬化型樹脂は極めて好ましい。
【0169】
また樹脂により構成される微細な凸部を作製するためには、使用する樹脂は低粘度で液晶の配向に沿いやすいものがよく、分子量にもよるが低分子樹脂(以下モノマーという)を多く含んでいるほうが望ましい。
【0170】
通常、樹脂はモノマーとオリゴマー(高分子樹脂)および反応開始剤により構成される。この樹脂を液晶材料に0.1〜20%程度好ましくは1〜10%程度混入する。
【0171】
モノマーの量は、液晶材料と樹脂材料との混合物に対し2重量%以上有するように樹脂材料の組成を構成し、液晶材料に混入することが望ましい。
またモノマーの量は、樹脂材料の40重量%以上、好ましくは60〜90重量%となるように、樹脂材料の組成を構成し、液晶材料に混入することが望ましい。
【0172】
モノマー量が少ないと、形成される凸部の数が少なくなり、ドメインの発生を伴わなずに透過光量が連続的に変化するスイッチングと、ドメインが発生する明暗2状態のスイッチングとが混在、または後者のスイッチングのみとなりやすく、逆にモノマー量が多いと、スイッチングはドメインの発生を伴わない透過光量が連続的に変化するものとなるが、コントラスト比等の光学特性が低下する傾向がある。
また、モノマーはアクリル系のものが好ましい。
【0173】
樹脂の組成をこのようにすることで、作製された液晶電気光学装置は、基板上または基板上の電極、配向膜等の表面上に、高さ数10nm、直径数10〜数100nm、約500nm以下の凸部が形成される。
【0174】
また、基板間に樹脂がカラム状(柱状)に形成される場合もある。これは、両基板を接着して基板間隔定の拡大を防ぐ機能を有し、基板間隔を一定に保つ必要がある時に有用で、基板の大面積化を容易にする。
【0175】
更に、樹脂硬化後液晶材料をN* 層もしくはSmA層を示す温度まで上昇させ、その温度で10分以上望ましくは10〜30分の間一定に保持し、その後再び室温まで冷却すると、液晶材料の配向状態が向上することがある。
【0176】
また、本発明の液晶電気光学装置において、各画素に薄膜トランジスタや薄膜ダイオード等のスイッチング素子を有するアクティブマトリクス駆動型の構成を有せしめることは極めて有効である。
【0177】
上記構成とすることで、強誘電性液晶または反強誘電性液晶を用いた液晶電気光学装置において透過光量の連続的な変化をさせ、中間調を得られるが、その理由としては、前述した配向膜のアンカリング力の低下の他に、以下のように考えることもできる。
【0178】
従来の強誘電性液晶または反強誘電性液晶を用いた液晶電気光学装置におけるスイッチングの様子を偏光顕微鏡下で観察すると、次第に高い電圧を印加することで、明状態の中に暗状態のドメインが、または暗状態の中に明状態のドメインが多数箇所で出現し、次第に各々の面積が大きくなっていく(以下成長するという)ことが分かる。すなわち、強誘電性液晶または反強誘電性液晶のスイッチングは、まず1部分の液晶分子が反転するとそれがきっかけとなり、その液晶分子の周囲に存在する液晶分子が次々に反転してゆく連鎖反応的なスイッチングとなる。
【0179】
一方、本発明の如く基板上に複数の微細な凸部を設けると、これらは、層と層または隣接する液晶分子間に液晶分子の配向を乱さない程度の大きさ、形状で存在している。このような本発明のような凸部があると、一部分の液晶分子が反転して、連鎖反応的に隣合った液晶分子が反転するが、その反転の連鎖は凸部により断じられ、周辺の液晶分子のさらなる反転を誘引しなくなるのではないかと考える。
【0180】
すなわち、これら基板上の凸部は、隣合った液晶分子が連鎖反応的に反転することを防ぎ、その結果液晶分子または極めて微細なドメインが、その周囲の液晶分子の反転を誘引せずに、各々独立して反転していると考えられる。
【0181】
よって、特定領域内例えば1画素領域内において、特定の印加電圧に対し、明状態、暗状態を呈した極微細な領域が特定の割合で現れ、ドメインを発生させずに印加電圧により透過光量が連続的に変化し、中間調が得られると思われる。
【0182】
本発明の液晶電気光学装置のスイッチングを偏光顕微鏡下で観察すると、印加電圧値を変化させることによって、電圧を印加した領域全面が明状態から暗状態へ、または暗状態から明状態へとドメインが発生せず、一様かつ連続的に透過光量が変化するようになったことが確認できた。
【0183】
上記本発明の液晶電気光学装置は、このように電圧印加領域内たとえば1画素内において、印加電圧値にともない透過光量が連続的かつ一様に変化する。したがって、従来の面積階調法や画素分割法に比較して、階調を得るために必要な面積は極めて小さくでき、高分解能、かつ多階調な液晶電気光学装置とすることができる。
【0184】
また上記本発明の液晶電気光学装置は、そのスイッチング特性が特徴的である。
図22に従来の表面安定化型の液晶電気光学装置を±1.5Vの矩形波により駆動した際の光学特性を示す。
【0185】
図22においては、暗(Dark)から明(Bright)へ、または明から暗へスイッチングする際の印加電圧に対する光学特性が、2段階の応答特性を示している。すなわち、スイッチングの開始時点において、まず極めて急峻に光学特性が変化し、その後緩やかに変化してスイッチングを終了する。
【0186】
他方、図23に本発明の液晶電気光学装置を±1.5Vの矩形波により駆動した際の光学特性を示す。
図23においては、スイッチングの開始から終了まで、光学特性が急峻に変化し、図22の如く2段階とはならない。
【0187】
この違いについて考えてみると、図22の従来の液晶電気光学装置における2段階の応答は、始めの急峻な光学特性の変化は、幾つかの箇所において液晶分子または微小なドメインがスイッチングしている状態を示しており、2段階目の緩やかな光学特性の変化は、液晶分子または微小なドメインのスイッチングに従い、連鎖的にその周囲の液晶分子がスイッチングしてドメインが大きくなっていく状態を示しているのではないかと思われる。
【0188】
他方、図23の本発明の液晶電気光学装置における急峻な応答は、全ての領域において液晶分子または微小なドメインがスイッチングしているため、スイッチングの開始から終了まで急峻に光学特性が変化していると思われる。
【0189】
また、このことからわかるように、本発明の液晶電気光学装置は、従来のものと比較して、低電圧においても高速かつ十分なスイッチングが行われるため、駆動電圧の低電圧化が図れる。
【0190】
このように、本発明により、強誘電性液晶または反強誘電性液晶を用いた液晶電気光学装置において、ネマチック液晶のような、印加電圧の変化による連続的な階調変化、中間調が容易に得られるようになった。よって透過光あるいは反射光が高速にスイッチングされ、かつ多階調、高分解能を有する液晶電気光学装置を実現できる。また、大型化も容易である。さらに駆動電圧の低電圧化も図れる。
【0191】
【作用】
本発明は上記したように、強誘電性または反強誘電性の液晶材料を用いた液晶電気光学装置において、基板、電極、配向膜等の表面上に、液晶材料が接する膜や凸部を樹脂材料等により設けることで、従来問題とされていた、スイッチングや中間調表示等の問題を解決するものである。
【0192】
本発明において、スイッチングがドメインの発生を伴うものか、一様に連続的に変化するものとなるかは、液晶材料に混入する、未硬化の樹脂材料に含まれるモノマーの量による。
未硬化の樹脂材料は、低分子(分子量約1000以下)のモノマーと、高分子(分子量約1000以上)のオリゴマー、および反応開始剤で構成されるが、このうちモノマーの量が少ないときは、ドメインの発生が伴うスイッチングとなるが、モノマー量を増加させていくと、各ドメインが広がる領域が小さくなっていき、一方ドメインが発生する領域の数が増えていく。すなわち、この状態においては双安定性(メモリー性)を有している。
【0193】
さらにモノマー量を増加させていくと、ドメインの発生が伴わない、一様かつ連続的なスイッチングとなっていく。この状態では双安定性(メモリー性)はみられない。
特に樹脂材料中のモノマー量が重量比で40%以上、好ましくは60%以上、さらに好ましくは80%以上であれば、ドメインの発生が伴わない、一様かつ連続的なスイッチングを得ることができる。
【0194】
また、樹脂材料中に含まれるオリゴマー量を増加させると、カラム状に硬化した樹脂が増加し、逆にオリゴマー量を減らし、モノマー量が増えると、カラム状に硬化する樹脂の数は少なくなる。
【0195】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施例を示す。
【0196】
【実施例】
〔実施例1〕
本実施例では、図1に示す単純マトリクス型の液晶電気光学装置を作製し各特性の評価を行った。液晶セルの基板101及び102は300×400mm、厚さ1.1mmの青板ガラスであり、該基板上には画素電極103及び104をスパッタ法によりITO(酸化インジュームスズ)により形成し、フォトレジストによりパターニングして作製した。
【0197】
配向膜材料はポリイミド系の樹脂、例えばLQ−5200(日立化成製)、LP−64(東レ製)、RN−305(日産化学製)等であり、ここではLP−64を使用した。配向膜はn−メチル−2−ピロリドン等の溶媒により希釈しスピンコート法により両基板に塗布した。塗布した基板は250〜300℃、ここでは280℃で2. 5時間加熱し溶媒を乾燥させ、塗膜をイミド化し硬化させた。硬化後の膜厚は300Åであった。
【0198】
次に配向膜をラビングする。ラビングは通常の方法で良く、レーヨン、綿等の布が巻いてある直径130mmのローラーで450〜900rpm、ここでは450rpmの回転数で一方向に擦った。ロール押し込み高さは0.1mm、ステージ速度は20mm/secで行った。このようにして配向膜105を形成した。
【0199】
次に該セルの間隔を一定にするためスペーサー108として、一方の基板に直径1. 5μmの真絲球(触媒化成製)を散布した。また他方の基板上には、該2枚の基板を固定するために、シール剤として基板の周辺に2液製のエポキシ系接着剤をスクリーン印刷により印刷塗布し、その後2枚の基板を接着固定した。
【0200】
上記セルには液晶材料107及び未硬化の高分子樹脂の混合物を注入する。液晶材料としてはフェニルピリミジン系の強誘電性液晶を使用した。この液晶は相系列がIso-SmA-SmC*-Cryを取る。相転移温度はIso−SmAが85℃、SmA−SmC* が79℃であった。他にビフェニル系、フェニルナフタレン系など様々な種類の強誘電性液晶材料が使用できる。高分子樹脂としては市販の紫外線硬化型の樹脂を使用した。液晶材料と未硬化高分子樹脂は、重量比で95:5の割合で混合する。該混合物は均一に混ざるようにIso(等方)相になる温度で攪拌した。該混合物の相転移温度は、液晶材料のみの場合より5〜20℃低下した。
【0201】
上記混合物の注入は、液晶セル及び混合体を100℃とし真空下で行った。注入後、液晶セルは2〜20℃/hr、ここでは3℃/hrの割合で徐冷した。
【0202】
この液晶セルの配向状態を、偏光顕微鏡で直交ニコル下で観察したところある回転角で消光位、即ち片方の偏光板に入射した光が、他方の偏光板を透過せず、あたかも光が遮断された状態が得られた。このことは液晶材料が、ユニフォーム配向となっていることを示している。
【0203】
またこの時、消光位の状態から20°程ステージを回して見ると、顕微鏡の視野中に複屈折による光漏れを生じないで、黒状態のままの部分が点在していた。未硬化樹脂は複屈折性を示さないので、この黒状態部分は未硬化樹脂が液晶材料から分離析出しカラム状となったものである。
【0204】
次に上記セル中に注入した混合物中の高分子樹脂を硬化させるため紫外線を照射した。紫外線はセルの両側から基板面に対して垂直な方向で、ほぼ同程度の強度で照射した。このようにすることで、紫外線を一方のみから照射する場合に比較して両基板に形成される樹脂膜の厚さをそろえることができる。配向膜の配向規制力を十分に抑制できないことがあるためである。照射強度は3〜30mW/cm2 、ここでは10mW/cm2 とし、照射時間は0. 5〜5min、ここでは1minとした。
【0205】
紫外線照射後、液晶セルの配向状態を上記と同様に偏光顕微鏡下で観察したが配向状態はほとんど変化しなかった。紫外線照射の配向状態に対する影響は見られなかった。
【0206】
次に上記液晶セルの光学特性を測定した。測定方法は、ハロゲンランプを光源とする偏光顕微鏡において、直交ニコル下で電極間に±30V、5Hzの三角波を液晶セルに印加し、セルの透過光強度をフォトマルチプライヤーで検出するものである。その時測定したコントラスト比は100であり、液晶電気光学装置として十分な特性を有していた。ここではコントラスト比は30V印加時の透過光強度と−30V印加時の透過光強度の比である。一方、樹脂を混入せず液晶材料単体で構成された液晶電気光学装置は、同条件の測定においてコントラスト比80であった。
【0207】
次に、本実施例の液晶電気光学装置において、電流電圧特性を測定した。図2は±30V、5Hzの三角波を本発明構成の液晶セルの一対の電極に印加して印加電圧と電極間の電流をオシロスコープで測定して得られた波形を示す。電流の値は一方の電極に直列に接続した100kΩの抵抗の両端の電圧を測定することによって得ている。図2の波形を模式的に示した図3に示すように、強誘電性液晶材料の有する自発分極が電界の極性変化に伴い反転する際に流れる電流202が急峻に変化しており、応答速度が極めて早いことを示している。またこの電流成分202および画素電極間の容量成分201以外は電流成分はなかった。
【0208】
図4に従来の構造の液晶セル(樹脂を使用していない以外は同条件)において同様に電流電圧特性をオシロスコープにて測定した結果を示す。図4の波形を模式的に示した図5に示すように自発分極の反転する際の電流成分204は、図2の本発明の液晶セルと比較して幅が大きくなっており、このことから応答速度が遅いことがわかる。これは配向膜の配向規制力が自発分極の反転を妨げていることを示唆していると考えられる。また自発分極のスイッチングにやや遅れて現れる電流成分203が表れている。このような余分な電流が流れるため、応答速度やコトンラスト比の低下をまねいてしまった。これは液晶材料中の不純物等による余分な電荷の存在によるものと考えられる。
【0209】
セルの全体を肉眼で見ても、樹脂の存在は全く分からない。
【0210】
配向膜上の樹脂膜の状態をより詳細に見るために上記方法により作製した基板をアルコール洗浄した後に原子間力顕微鏡(AFM)により観察した。結果を図6に示す。比較のため樹脂材料と液晶材料の混合物を注入する前のラビング後の配向膜の観察像を図7に示す。これによれば、厚さ10〜30nmの樹脂膜106が配向膜105の表面のほぼ全体を覆って形成され、ラビング処理による傷も樹脂が被覆していることが分かる。従って、配向膜の配向規制力は著しく抑制されていると考えられる。またこの樹脂膜は透明かつ極めて薄いため、透過光の減衰はほとんどなかった。
【0211】
樹脂硬化後の相転移温度は液晶材料のみの場合と比較して数℃下がる程度であった。ここで、上記セルを液晶材料がSmA相を示す80℃まで上昇させ、10〜60分ここでは20分間前記温度に保持し、その後3℃/hrの割合で徐冷した。すると配向欠陥がさらに改善され、光学特性を測定するとコントラスト比120を得た。
【0212】
ところが、上記樹脂硬化後のセルを等方相を示す86℃に一度加熱し、上記と同様にセルを徐冷すると、液晶材料は部分的に配向が乱れた。このことからも配向膜上の樹脂膜により液晶材料に一軸配向性を付与する配向規制力が抑制されている事がわかる。
【0213】
また電極間のショートはほとんど見られず、配向膜上の樹脂膜がショート防止膜として機能していることがわかった。混入する樹脂材料の量を増やして形成される樹脂膜を厚くすることでショートの防止をより確実にできる。
【0214】
基板101、102の外側面に偏光板109、110を設けた。
【0215】
なお、本実施例では樹脂材料として市販の紫外線硬化型樹脂をそのまま使用したが、樹脂材料全体に対するオリゴマー量を増やして液晶材料と樹脂の相溶性を変化させたり、あるいは配向膜材料の種類やラビング条件を変化させることで、樹脂膜の配向膜上への付着量を制御することが可能である。
【0216】
また、双方の基板において配向膜の種類やラビング密度を異ならせたり、紫外線を一方の側からのみ照射したりして、樹脂の付着量を双方の基板で意図的に異ならせることもできる。
【0217】
〔実施例2〕
本実施例では、本発明をスイッチング素子として結晶性シリコンTFT(薄膜トランジスタ)を各画素に設けたアクティブマトリクス型の液晶電気光学装置に対して実施した例を示す。
【0218】
基板としてコーニング7059ガラス板(300×300mm、厚さ1.1mm)上の酸化珪素膜上に、水素還元雰囲気下で600℃48時間の加熱アニールによりアモルファスシリコン膜を結晶化して形成した移動度100(cm2 /Vs)を有するNチャネル型の結晶性シリコンTFT、ITOで画素電極、クロム/アルミニウムの多層膜で信号電極、走査電極を、640×480画素のマトリクスを構成して設けた。
【0219】
次に対向する基板としてガラス基板上にITOを対向電極として形成した後、この基板のみに配向膜を形成していわゆる片側配向膜とした。配向膜材料はLP−64(東レ製)を使用した。作製方法、作製条件、膜厚、ラビング条件は実施例1と同じである。
【0220】
次に配向膜を形成した側の基板にスペーサーとして直径1. 5μmの真絲球(触媒化成製)を散布した。また他方の基板上に、両基板を固定するために、シール剤として基板の周辺に2液製のエポキシ系接着剤をスクリーン印刷により印刷塗布し、その後2枚の基板を接着固定した。
【0221】
上記セルには液晶材料と未硬化の樹脂の混合物を注入する。液晶材料は相系列がIso-N*-SmA-SmC*-Cry を取る。相転移温度はIso−N* が81℃、N* −SmAが69℃、SmA−SmC* が54℃であった。使用した樹脂および樹脂と液晶材料との混合比は実施例1と同じである。該混合物は均一に混ざるようにIso(等方)相になる温度で攪拌した。該混合物は相転移温度が液晶材料のみの場合より5〜20℃低下した。
【0222】
上記混合物の注入は、液晶セル及び混合体を100℃とし真空下で行った。注入後、液晶セルは2〜20℃/hr、ここでは3℃/hrの割合で徐冷した。
【0223】
この液晶セルの配向状態を、偏光顕微鏡で直交ニコル下で観察したところある回転角で消光位、即ち片方の偏光板に入射した光が、他方の偏光板を透過せず、あたかも光が遮断された状態となりユニフォーム配向となっていた。
【0224】
またこの時、消光位の状態から20°程ステージを回して見ると、顕微鏡の視野中に複屈折による光漏れを生じないで、黒状態のままの部分が点在していた。未硬化樹脂は複屈折性を示さないので、この黒状態部分は未硬化樹脂が液晶材料から分離析出しカラム状となったものである。
【0225】
次に上記セル中に注入した液晶材料中に混合した高分子樹脂を硬化させるため対向基板側から紫外線を照射した。照射強度は3〜30mW/cm2 、ここでは10mW/cm2 とし、照射時間は0. 5〜5min、ここでは1minとした。
【0226】
紫外線照射後、液晶セルの配向状態を上記と同様に偏光顕微鏡下で観察したが配向状態はほとんど変化しなかった。紫外線照射の配向状態に対する影響は見られなかった。
【0227】
基板をアルコール洗浄した後、原子間力顕微鏡(AFM)で双方の基板表面を観察すると、両方の基板表面上に10〜30nmの厚さを有する樹脂膜が形成されていた。
【0228】
次に上記液晶セルの光学特性を測定した。測定した際の電極間電圧及び光学応答を図8に示す。駆動電圧VLCの波形は、電圧14V、パルス幅1μs、フレーム幅16msである。光学応答性は図に示す光透過率TLCのように良好なとなっており、この時のコントラスト比はフレーム終了時で100であった。一方、樹脂を混入せず液晶材料単体で構成された液晶セルは、同条件の測定においてコントラスト比80であった。
【0229】
樹脂硬化後の相転移温度は液晶材料のみの場合と比較して数℃下がる程度であった。ここで、上記本発明構成のセルを液晶材料がN* 相を示す70℃まで上昇させ、10〜60分ここでは20分間前記温度に保持し、その後3℃/hrの割合で室温まで徐冷した。すると配向欠陥がさらに改善され、光学特性を測定するとコントラスト比120を得た。
【0230】
また、同様にして配向改善前の上記本発明構成のセルを液晶材料がSmA相を示す55℃まで上昇させ、20分間前記温度に保持し、その後3℃/hrの割合で室温まで徐冷しても前記したN* 相を示す温度で保持した場合とほぼ同じ程度配向欠陥が改善され、コントラスト比が向上した。
【0231】
ところが、上記樹脂硬化後のセルを等方相となる83℃に一度加熱し、上記と同様にセルを徐冷すると、液晶材料は部分的に配向が乱れた。このことから樹脂硬化後は配向膜上に樹脂膜が形成され、液晶材料に一軸配向性が付与されていない事が分かる。
【0232】
基板の外側面に偏光板を設け、装置を完成させた。
【0233】
〔実施例3〕
まず、本実施例では、図10に示す実験用の1画素のセルを作製し、各特性の評価を行った。液晶セルの基板1111および1112は厚さ1.1mmの青板ガラスであり、該基板上には画素電極1113および1114を作製した。画素電極の大きさは5mm□とした。両方の基板の電極が形成されている面上には配向膜1115を形成した。
【0234】
配向膜材料としてポリイミド系の樹脂、ここではLP−64(東レ製)を用いた。配向膜はn−メチル−2−ピロリドン等の溶媒により希釈し、スピンコート法により塗布した。塗布した基板は250〜300℃、ここでは280℃で2.5時間加熱し溶媒を乾燥させ、塗膜をイミド化し硬化させた。硬化後の膜厚は300Åであった。
【0235】
次に、液晶材料を一軸配向して液晶材料の層を基板に垂直あるいは傾斜して配列させるため、配向膜にラビング法により一軸配向規制力を付与した。ラビングは通常の方法と同様に、レーヨン、綿等の布が巻いてある直径130mmのローラーで450〜900rpm、ここでは450rpmの回転数で一方向に擦った。ロール押し込み高さは0.1mm、ステージ速度は20mm/secで行った。
【0236】
ここでは該セルの間隔を一定にするためスペーサー1118として、一方の基板には直径1. 5μmの真絲球(触媒化成製)を散布した。また、他方の基板上には、該2枚の基板を固定するために、シール剤として基板の周辺に2液製のエポキシ系接着剤をスクリーン印刷により印刷塗布し、その後2枚の基板を接着固定した。
【0237】
上記セルには液晶材料1117及び未硬化の高分子樹脂の混合物を注入した。液晶材料としてフェニルピリミジン系の強誘電性液晶を使用した。相系列はIso-SmA-SmC*-Cryを取った。また、高分子樹脂としては市販の紫外線硬化型の樹脂を使用した。高分子樹脂は、混合体を注入する時の液晶材料との分離を防ぐことを目的として、液晶材料との相溶性が高くなるように、モノマー量が重量比で90%を占めるものを使用した。液晶材料中の未硬化高分子樹脂の濃度としては、樹脂が多量に含まれると上下の基板間に樹脂柱が形成され開口率が低下するため、少量の方が良く、重量比で95:5の割合で混合した。該混合物は均一に混ざるようにIso相になる温度で攪拌した。該混合物はIso相からSmA相への転移点が液晶材料のみの場合より、5℃低下した。
【0238】
上記混合物の注入は、液晶セル及び混合物を、混合物がIso相を示す100℃とし真空下で行った。注入後、液晶セルをSmC* 相まで冷却するが、セルを急速にSmC* 相まで転移させると配向欠陥が多量に発生するので、降温レートとして2〜20℃/hr、ここでは3℃/hrの割合で徐冷した。
【0239】
前記方法で室温までセルを徐冷し、セルの配向状態を、偏光顕微鏡で直交ニコル下で観察した。ステージを回転させたところある回転角で消光位、即ち片方の偏光板に入射した光が、他方の偏光板を透過せず、あたかも光が遮断された状態が得られた。このことは液晶材料が、層内及び層から層にわたって液晶分子の配向ベクトルが同じ方向に配向したユニフォーム配向となっていることを示している。
【0240】
また消光位の状態から20°程ステージを回してみると、顕微鏡の視野中に複屈折による光漏れを生じないで、黒状態のままの部分が点在していた。この部分は樹脂がカラム状に分離析出していることを示している。
【0241】
次に上記液晶材料中に混合した高分子樹脂を硬化させるため紫外線を照射した。光源は定格150WのHg−Xeランプを使用したもので、照射強度が3〜30mW/cm2 、ここでは10mW/cm2 となるような位置にセルを設置し照射した。照射時間は0. 5〜5min、ここでは1minとした。
【0242】
紫外線照射後、液晶セルの配向状態を上記と同様に偏光顕微鏡下で観察したが配向状態はほとんど変化しなかった。紫外線照射の配向状態に対する影響は見られなかった。
【0243】
上記配向状態でのコントラスト比を測定した。測定方法はハロゲンランプを宇光源とする偏光顕微鏡において、直交ニコル下で±30V、5Hzの三角波をセルの電極間に印加し、セルの透過光強度をフォトマルチプライヤーで検出するものである。コントラスト比は120であった。
【0244】
次に、上記セルのスイッチング過程を上記と同じ光学系にて観察した。セルには周波数の低い三角波を印加した。明暗のスイッチングは、従来の強誘電性液晶電気光学装置に見られたドメイン生成を伴うスイッチングとは異なり電界強度に依存して全体の透過光量が一様に変化するスイッチングであった。
【0245】
そこで、コントラスト−電圧特性を測定した。測定方法はまず直流20V印加時にセルを消光位に合わせ、次に一端電圧を0Vとして電圧を20Vまで増加させていったときの透過光強度の変化を示したものである。その結果を図11に示す。本発明のセルの特性値は□プロットで示したが、しきい値が約0.8Vとなった。
【0246】
また、電界方向反転時の液晶材料の応答性を測定した。駆動波形及びコントラストの変化の様子を図12に示す。このとき駆動波形は±3V、5Hzの矩形波であった。本実施例の装置の応答波形1401は矩形波の極性反転後急峻な立ち上がりを示す一段応答になった。
【0247】
更に、液晶材料の応答性の電圧依存性を調べた。駆動波形は矩形波5Hzであった。その結果を図13中の□プロットで示す。本発明のセルでは低電圧領域においても約1msecと速い応答速度を示す。また対数座標において電圧及び応答速度が線型の関係を有している。すなわち、電界強度と応答速度が常に一定の関係にある。これは本実施例のセルがゴールドストーンモードで動作していることを示唆している。
【0248】
次に、電流電圧特性を測定した。図14は±30V、5Hzの三角波を液晶セルに印加しそのときの電極間に流れる電流の値を測定したものである。図に示すように、電極間の容量成分1601及び強誘電性液晶材料の有する自発分極が電界の極性変化に伴い、反転する際に流れる電流1602以外は電流成分はなかった。
【0249】
次に、上記セルのパルスメモリー性を調べた。駆動波形はパルス幅が200μm、フレーム幅が20msであった。パルスメモリー性はほとんど無かった。
【0250】
また、このセルを用い、外部にFETによる駆動回路を接続し、アクティブ駆動を行った場合の電極間電圧および光学応答を図15に示す。駆動波形は、電圧14V、パルス幅1μs、フレーム幅16msである。図15に示すように良好な光学応答性となっており、この時のコントラスト比はフレーム終了時に120であった。
【0251】
また、液晶セルの全体を肉眼でみると、樹脂の存在は全く分からなかった。
【0252】
基板をはがして、液晶をアルコールで洗浄除去した後、基板上に残存する樹脂を走査型電子顕微鏡で観察すると、両基板を固定していたカラム状の樹脂を観察する事が出来た。硬化した樹脂は、樹脂や液晶材料の種類や硬化条件にもよるが、ここでは殆どの場合、側面から見た形が台形または長方形を有し、上面の断面(基板に垂直方向から見た面)が丸みをおびた正方形または長方形あるいは円形、楕円形を有し、全体として台地状をしている。これらの樹脂は、上面の断面の大きさ(円形状の場合は直径)が数μm〜数十μ程度であり、その高さは基板間隔と等しい。高さが太さの1/10程度のものから上面断面の大きさと高さが殆ど等しいサイコロ状のものもある。
【0253】
この樹脂の形状は、液晶材料の相転移系列や徐冷速度等によっても変化する。不定形のものや一軸配向方向に樹脂の長軸ができるものもある。またこのカラム状に硬化した樹脂の存在する間隔は10〜100μm程度であった。
【0254】
更に、表面の樹脂膜の状態をより詳細に見るため、上記方法により作製した基板をアルコール洗浄した後、原子間力顕微鏡(AFM)により観察した。これによれば、配向膜表面に高分子樹脂の被膜が形成されていた。被膜の厚さは作製条件にもよるが、約10〜30nm程度であり、微少な凹凸を有していた。ほとんど樹脂膜がないと思われる部分や50nm程度の厚さを有する部分もあった。
【0255】
また、比較のため樹脂が含まれていない以外は、セル構成及び液晶材料が同じセルについても上記と同様の測定を行った。まず、三角波によるスイッチング過程の観察ではドメインの発生を伴ったスイッチングとなった。また、透過光強度の電圧依存性は図11中○プロットに示すようにしきい値が約2Vであった。また、電界極性反転時の応答は図12の1402に示すように初めの立ち上がりは急峻であったものが途中から緩慢な変化となる、2段階応答を示した。また、応答速度の電圧依存性を調べると、図13中○プロットに示すように3V以下の電圧としたとき応答速度が急に遅くなり電界強度と応答速度の関係は線型ではなかった。
【0256】
また、電流電圧特性を測定すると図16に示すように、電極間の容量成分1801、自発分極が電界極性の変化に伴って反転する時に発生する電流成分1802の他に、余分な電流成分を示すピーク1803が見られた。また電流成分1802は本発明構成の装置と比較してピーク値は下がりかつ幅が広くなり、応答速度が低下していることがわかる。一方、パルスメモリー性は比較的良好であった。
【0257】
〔実施例4〕
ここではスイッチング素子として結晶性シリコンTFTを各画素に設けたアクティブマトリクス駆動型の装置の例を、図9と対応させて示す。
【0258】
基板1102としてコーニング7059ガラス板(300×300mm、厚さ1.1mm)上の酸化珪素膜(図示せず)上に、水素還元雰囲気下で600℃48時間の加熱アニールによりアモルファスシリコン膜を結晶化して形成した移動度100(cm2 /Vs)を有するNチャネル型の結晶性シリコンTFT1105、ITO(酸化インジューム・スズ)で画素電極1104、クロム/アルミニウムの多層膜で信号電極、走査電極を、640×480画素のマトリクスを構成して設けた。
【0259】
次に対向する基板1101として青板ガラス基板上にITOを1200Åスパッタ法により成膜して対向電極を形成した。電極材料としては他にSnO2 (酸化スズ)などが使用できる。また基板材料としてはガラス、石英等の無機性材料やアクリル樹脂、ポリエチレン樹脂等の有機性材料が使用できる。
【0260】
この対向電極を形成した基板のみに配向膜1106を形成していわゆる片側配向とした。配向膜材料としてポリイミド系もしくはポリアミド系の樹脂、または、ポリビニルアルコール等の樹脂を使用できる。ポリイミド系の樹脂としては例えばLQ−5200(日立化成製)、LP−64(東レ製)、RN−305(日産化学製)等であり、ここではLP−64を使用した。配向膜はn−メチル−2−ピロリドン等の溶媒により希釈しスピンコート法により塗布した。塗布した基板は250〜300℃、ここでは280℃で2. 5時間加熱し溶媒を乾燥させ、塗膜をイミド化し硬化させた。硬化後の膜厚は300Åであった。
【0261】
液晶材料を一軸配向して液晶材料の層を基板に垂直あるいは傾斜して配列させるため、配向膜にラビング法により一軸配向規制力を付与した。ラビングは通常の方法と同様に、レーヨン、綿等の布が巻いてある直径130mmのローラーで450〜900rpm、ここでは450rpmの回転数で一方向に擦った。ロール押し込み高さは0.1mm、ステージ速度は20mm/secで行った。
【0262】
基板間隔としては1〜10μm、スペーサ材料としてはシリカまたはアルミナ等が適当である。ここでは該セルの間隔を一定にするためスペーサーとして、配向膜が塗布されている側の基板には直径1. 5μmの真絲球(触媒化成製)(図示せず)を散布した。また、他方の基板上には、該2枚の基板を固定するために、シール剤として基板の周辺に2液製のエポキシ系接着剤をスクリーン印刷により印刷塗布し、その後2枚の基板を接着固定した。
【0263】
上記セルには液晶材料1108及び未硬化の高分子樹脂の混合物を注入した。液晶材料としてフェニルピリミジン系の強誘電性液晶を使用した。相系列はIso-SmA-SmC*-Cryを取った。また、高分子樹脂としては市販の紫外線硬化型の樹脂を使用した。高分子樹脂は、混合体を注入する時の液晶材料との分離を防ぐことを目的として、液晶材料との相溶性が高くなるように、モノマー量が重量比で90%を占めるものを使用した。液晶材料中の未硬化高分子樹脂の濃度としては、樹脂が多量に含まれると上下の基板間に樹脂柱が形成され開口率が低下するため、少量の方が良く、重量比で95:5の割合で混合した。該混合物は均一に混ざるようにIso相になる温度で攪拌した。該混合物はIso相からSmA相への転移点が液晶材料のみの場合より、5℃低下した。
【0264】
上記混合物の注入は、液晶セル及び混合物を、混合物がIso相を示す100℃とし真空下で行った。注入後、液晶セルをSmC* 相まで冷却するが、セルを急速にSmC* 相まで転移させると配向欠陥が多量に発生するので、降温レートとして2〜20℃/hr、ここでは3℃/hrの割合で徐冷した。
【0265】
前記方法で室温までセルを徐冷し、セルの配向状態を、偏光顕微鏡で直交ニコル下で観察した。ステージを回転させたところある回転角で消光位、即ち片方の偏光板に入射した光が、他方の偏光板を透過せず、あたかも光が遮断された状態が得られた。このことは液晶材料が、層内及び層から層にわたって液晶分子の配向ベクトルが同じ方向に配向したユニフォーム配向となっていることを示している。
【0266】
また消光位の状態から20°程ステージを回してみると、顕微鏡の視野中に複屈折による光漏れを生じないで、黒状態のままの部分が点在していた。この部分は樹脂がカラム状に分離析出していることを示している。
【0267】
次に上記液晶材料中に混合した高分子樹脂を硬化させるため紫外線を照射した。光源は定格150WのHg−Xeランプを使用したもので、照射強度が3〜30mW/cm2 、ここでは10mW/cm2 となるような位置にセルを設置し照射した。照射時間は0. 5〜5min、ここでは1minとした。
【0268】
紫外線照射後、液晶セルの配向状態を上記と同様に偏光顕微鏡下で観察したが配向状態はほとんど変化しなかった。紫外線照射の配向状態に対する影響は見られなかった。このときカラム状の樹脂は上下の基板を接着し基板間の距離の拡大を防いでおり、大面積化しても液晶材料の層構造の崩れを防ぐことができる。
【0269】
このようにして作製した装置はコントラスト比が約120を有していた。低周波の三角波を電極間に印加して偏光顕微鏡でスイッチング状態を観察したところ、ドメイン生成を伴わずに電極印加領域が一様に透過光量が変化した。
【0270】
両基板に偏光板1109、1110を貼り、駆動回路を接続して液晶電気光学装置を完成させた。1画面の書換えを1/60秒で行ない、印加電圧の大きさを制御することにより256階調表示を実現できた。
【0271】
上記方法により作製した基板をアルコール洗浄した後、原子間力顕微鏡(AFM)により観察したところ配向膜表面、画素電極表面ともに高分子樹脂の被膜が約10〜30nmの厚さに形成されていた。
【0272】
なお、本実施例においては、画素に接続するスイッチング素子としてNチャネル型の薄膜トランジスタを用いたが、Pチャネル型であっても、あるいはPチャネル型薄膜トランジスタとNチャネル型薄膜トランジスタとを用いて相補型に構成してもよい。またMIMダイオード等の非線型素子を用いた構成としてもよい。
【0273】
〔実施例5〕
本実施例では、スイッチング素子として結晶性シリコンTFTを各画素に設けたアクティブマトリクス駆動型の装置を作製し、かつフレーム階調表示を行った例を示す。構成は図17と対応させている。
【0274】
基板2102としてコーニング7059ガラス板(300×300mm、厚さ1.1mm)上の酸化珪素膜(図示せず)上に、水素還元雰囲気下で600℃48時間の加熱アニールによりアモルファスシリコン膜を結晶化して形成した移動度100(cm2 /Vs)を有するNチャネル型の結晶性シリコンTFT2105、ITO(酸化インジューム・スズ)で画素電極2104、クロム/アルミニウムの多層膜で信号電極、走査電極を、640×480画素のマトリクスを構成して設けた。
【0275】
次に対向する基板2101として青板ガラス基板上にITOを1200Åスパッタ法により成膜して対向電極を形成した。電極材料としては他に他にSnO2 (酸化スズ)などが使用できる。また基板材料としてはガラス、石英等の無機性材料やアクリル樹脂、ポリエチレン樹脂等の有機性材料が使用できる。
【0276】
この対向電極を形成した基板のみに配向膜2106を形成していわゆる片側配向とした。配向膜材料としてポリイミド系もしくはポリアミド系の樹脂、または、ポリビニルアルコール等の樹脂を使用できる。ポリイミド系の樹脂としては例えばLQ−5200(日立化成製)、LP−64(東レ製)、RN−305(日産化学製)等であり、ここではLP−64を使用した。配向膜はn−メチル−2−ピロリドン等の溶媒により希釈しスピンコート法により塗布した。塗布した基板は250〜300℃、ここでは280℃で2. 5時間加熱し溶媒を乾燥させ、塗膜をイミド化し硬化させた。硬化後の膜厚は300Åであった。
【0277】
液晶材料を一軸配向して液晶材料の層を基板に垂直あるいは傾斜して配列させるため、配向膜にラビング法により一軸配向規制力を付与した。ラビングは通常の方法と同様に、レーヨン、綿等の布が巻いてある直径130mmのローラーで450〜900rpm、ここでは450rpmの回転数で一方向に擦った。ロール押し込み高さは0.1mm、ステージ速度は20mm/secで行った。
【0278】
基板間隔としては1〜10μm、スペーサ材料としてはシリカまたはアルミナ等が適当である。ここでは該セルの間隔を一定にするためスペーサーとして、配向膜が塗布されている側の基板には直径1. 5μmの真絲球(触媒化成製)(図示せず)を散布した。また、他方の基板上には、該2枚の基板を固定するために、シール剤として基板の周辺に2液製のエポキシ系接着剤をスクリーン印刷により印刷塗布し、その後2枚の基板を接着固定した。
【0279】
上記セルには液晶材料2108及び未硬化の高分子樹脂の混合物を注入した。液晶材料としてフェニルピリミジン系の強誘電性液晶を使用した。相系列はIso-SmA-SmC*-Cryを取った。また、高分子樹脂としては市販の紫外線硬化型の樹脂を使用した。高分子樹脂は、混合体を注入する時の液晶材料との分離を防ぐことを目的として、液晶材料との相溶性が高くなるように、モノマー量が重量比で90%を占めるものを使用した。液晶材料中の未硬化高分子樹脂の濃度としては、樹脂が多量に含まれると上下の基板間に樹脂柱が形成され開口率が低下するため、少量の方が良く、重量比で95:5の割合で混合した。該混合物は均一に混ざるようにIso相になる温度で攪拌した。該混合物はIso相からSmA相への転移点が液晶材料のみの場合より、5℃低下した。
【0280】
上記混合物の注入は、液晶セル及び混合物を、混合物がIso相を示す100℃とし真空下で行った。注入後、液晶セルをSmC* 相まで冷却するが、セルを急速にSmC* 相まで転移させると配向欠陥が多量に発生するので、降温レートとして2〜20℃/hr、ここでは3℃/hrの割合で徐冷した。
【0281】
前記方法で室温までセルを徐冷し、セルの配向状態を、偏光顕微鏡で直交ニコル下で観察した。ステージを回転させたところある回転角で消光位、即ち片方の偏光板に入射した光が、他方の偏光板を透過せず、あたかも光が遮断された状態が得られた。このことは液晶材料が、層内及び層から層にわたって液晶分子の配向ベクトルが同じ方向に配向したユニフォーム配向となっていることを示している。
【0282】
また消光位の状態から20°程ステージを回してみると、顕微鏡の視野中に複屈折による光漏れを生じないで、黒状態のままの部分が点在していた。この部分は樹脂がカラム状に分離析出していることを示している。
【0283】
次に上記液晶材料中に混合した高分子樹脂を硬化させるため紫外線を照射した。光源は定格150WのHg−Xeランプを使用したもので、照射強度が3〜30mW/cm2 、ここでは10mW/cm2 となるような位置にセルを設置し照射した。照射時間は0. 5〜5min、ここでは1minとした。
【0284】
紫外線照射後、液晶セルの配向状態を上記と同様に偏光顕微鏡下で観察したが配向状態はほとんど変化しなかった。紫外線照射の配向状態に対する影響は見られなかった。このときカラム状の樹脂は上下の基板を接着し基板間の距離の拡大を防いでおり、大面積化しても液晶材料の層構造の崩れを防ぐことができる。
【0285】
このようにして作製した装置はコントラスト比が約120を有していた。低周波の三角波を電極間に印加して偏光顕微鏡でスイッチング状態を観察したところ、ドメイン生成を伴わずに電極印加領域が一様に透過光量が変化した。
【0286】
また液晶セルの電極部分を肉眼で見る際には樹脂の存在は全くわからない。これらの結果から、表示部の面積を樹脂材料が占める割合は0.1〜20%程度であれば従来の装置と比較して遜色のないものとすることができる。
【0287】
このようにして、均一な電極間距離を有するセルを作製することができた。完成したセルを垂直にしても表示ムラ等は全く認識できなかった。基板の変形等が生じることもなく、使用した強誘電性液晶の層構造が壊れることもなかった。
【0288】
また基板をアルコール洗浄した後、原子間力顕微鏡(AFM)により観察したところ配向膜表面、画素電極表面ともに高分子樹脂の被膜が約10〜30nmの厚さに形成されていた。
【0289】
この液晶電気光学装置において、両基板に偏光板2109、2110を貼り、デジタル階調駆動で32階調の表示を行った。図18に、ここで用いた表示方法における、1つの画素について注目した、ゲート電圧VG 、ドレイン電圧VD 、画素電圧VLC、画素の透過率TLCの変化を示す。まず、図18に示したように1フレームを5つのサブフレームによって構成する。各サブフレームの持続時間を第1フレームは0.5msec、第2サブフレームは8msec、第3サブフレームは1msec、第4サブフレームは4msec、第5サブフレームは2msecとし(図18では各サブフレーム間を等間隔で表している)、1フレームは15.5msecとした。すなわち第1フレームの持続時間を最短持続時間T0 とすると、第2サブフレームは16T0 、以下2T0 、8T0 、4T0 となり、これら5つのサブフレームの持続時間の組み合わせで32階調が表示できる。
【0290】
1サブフレーム内において、まず走査線にゲート電圧VG として矩形パルス信号を印加して1ライン(横640個)の画素のTFTのゲート電極をONにする。一方各TFTのドレイン電極に接続された信号線には、正または負のいずれかの状態を示すパルス列がドレイン電圧VD として印加される。このパルス列にはサブフレーム間隔中の総走査数ここでは480個の情報が含まれており、各情報は各ラインの走査に同期している。480ライン全ての走査を行って全画素のONまたはOFFの状態を決定し、1サブフレームを終了する。前述のごとく各サブフレームの間隔は異なり、その間各画素は、画素電位VLCが自然放電によって除々に0に近づいていっているのにかかわらず、透過率TLCは一定に保たれONまたはOFFの状態を維持する。本実施例においては、この間の透過率TLCは極めて安定し、経時変化等はなかった。
【0291】
このようにしてすべてのサブフレームを終了したときに、1フレーム内での階調表示がデジタルで実現できる。各TFTのゲート電極に印加する走査信号のパルス幅は2μsecとし、パルスの波高は−15V、ドレイン電極に印加するデータ信号は±10Vとした。この装置では表示のムラ、チラツキ等は全く現れず、32階調でコントラスト比120を得た。
【0292】
ここでドレイン電極に印加するデータ信号を±5Vとしても全く問題なく動作した。
【0293】
また、フレーム数による階調表示を行なわず、1画面の書換えを1/60秒で行ない、電界強度を変化させる、すなわち印加電圧の大きさを制御することによって32階調表示を行なったところ極めて明確な階調表示を得た。
【0294】
また、フレーム数によって16階調、印可電圧によって16階調の表示を行い、256階調の表示を行なうこともできた。
【0295】
なお、本実施例においては、画素に接続するスイッチング素子としてNチャネル型の薄膜トランジスタを用いたが、Pチャネル型であっても、あるいはPチャネル型薄膜トランジスタとNチャネル型薄膜トランジスタとを用いて相補型に構成してもよい。またMIMダイオード等の非線型素子を用いた構成としてもよい。
【0296】
本実施例においては図19に示すような、1つの薄膜トランジスタ(TFT)を1つの画素に用いて、各TFTのゲート電極が接続された走査電極に信号を印加して1ラインのTFTをオンにし、ソースまたはドレイン電極が接続された信号電極により透過、非透過の信号または階調信号を印加して表示を行なう一般的な駆動方式を用いた。
【0297】
本発明はこの方式以外に、例えば図20に示すような、TFTを2つ用いて各画素毎に書換えを行なう駆動方式に対しても有効である。
【0298】
〔実施例6〕
10cm□のガラス基板に電極材料であるインジウム・チン・オキサイド(ITOと省略する)をスパッタ法や蒸着法にて500〜2000Å、本実施例では1000Åの膜厚に成膜し、通常のフォトリソ工程で電極をストライプ状にパターニングした。この基板上にスピンコート法でポリイミドを塗布し、280℃で焼成した。ポリイミドとしては日産化学製RN−305、東レ製LP−64を用いた。ポリイミド膜厚は100〜800Å、本実施例では150Åであった。この基板にラビング処理を施して一軸配向処理を行った。この基板を2枚作製し、一方の基板上には、シリカ粒子である触媒化成製真し球をスペーサーとして散布し、一方の基板上には、エポキシ樹脂製のシール材をスクリーン印刷にて形成した。両基板は電極間距離を約1.5μmとして、ストライプ状の電極が互いに直交するように貼り合わせて、画素数が640×480の単純マトリクス型のセルを形成した。
【0299】
本実施例で使用した液晶材料としては、チッソ社製の強誘電性液晶、CS1014である。この液晶のPsは5.4nC/cm2 であり、相系列はI(等方相)−N(ネマチック相)−A(スメクチックA相)−C* (スメクチックC* 相)である。
【0300】
本実施例で用いた樹脂材料は市販の分子量約150から200程度のアクリル系モノマーと分子量約1500から3000程度のウレタン系オリゴマーを重量比で90:10で混合し、市販の反応開始剤を約3重量%程度混合した(以下未硬化樹脂材料という)。
【0301】
上記液晶材料、未硬化樹脂材料5%を、重量比で95:5で混合し、混合した樹脂が液晶材料中によりよく混合するように、90℃で液晶が等方相を示すまで加熱、攪はんして樹脂を液晶材料中に均一に混合した(以下液晶混合物という)。
【0302】
セルと液晶混合物を90℃に加熱し、前述のセルに注入後2〜20℃/hr、本実施例では2℃/hrで室温まで徐冷した。徐冷後の室温での配向状態を偏光顕微鏡下で観察すると、セル中に点在し柱状となっている樹脂材料は確認できるが基板上の樹脂形状は確認できなかった。しかし液晶材料の配向は樹脂を添加しない液晶材料と同様に、液晶は配向膜のラビング方向に沿って一軸配向となり、良好な消光位が得られていた。
【0303】
このセルに紫外線を、強度3〜30mW/cm2 、照射時間0.5〜5min、本実施例では強度20mW/cm2 で1min、照射して樹脂を硬化させた。紫外線照射後も液晶は配向膜のラビング方向に沿って一軸配向となり、良好な消光位が得られた。
【0304】
このセルの印加電圧変化に伴う透過光量の変化を観察したところ、暗から明また明から暗へ連続的に階調が変化し、明暗の中間調表示が可能できた。ドメインの発生は視覚的には確認できなかった。
【0305】
このセルの両基板を剥離し、200℃のオーブン中で5hr放置し、液晶を揮発させた。その後基板を偏光顕微鏡下で観察し、偏光していないことを確認し、基板上の樹脂形状をSEMで観察した。
【0306】
図24(A)、(B)に、このようにして基板上に形成された微細なパターンを表したSEM写真を示す。図24(B)は図24(A)を拡大したものである。図24に示すように、高さ数10nm、直径数10〜数100nm程度、約500nm以下程度の、樹脂により構成された微細な凸部が多数観察された。凸部は全体的に均一に表面上に分散しており、また部分的に複数の凸部が連なっているところもあった。
【0307】
また、本実施例において、画素数を1920×480とし、赤、青、緑の3色のカラーフィルターを設けて、640×480のフルカラー表示をさせてもよい。256階調であれば、約1670万色の表示が可能である。
【0308】
〔実施例7〕
本実施例における装置の構成および樹脂材料、作製方法、液晶材料と未硬化樹脂材料との混合比は、実施例6と同様とした。ただし本実施例における液晶材料はビフェニル系でPsが20.7nC/cm2 の相系列がI−A−C* を示す強誘電性液晶を用いた。形成されたセルの液晶材料の配向状態を偏光顕微鏡下で観察すると、樹脂を混合していない場合と同様に、配向膜のラビング方向に沿って一軸配向となり、良好な消光位が得られた。
【0309】
このセルの印加電圧変化に伴う透過光量の変化を観察したところ、暗から明また明から暗へ連続的に階調が変化し、明暗の中間調表示が可能となった。ドメインの発生は視覚的には確認できなかった。
【0310】
このセルの両基板を剥離し、280℃のオーブン中で5hr放置し、液晶を揮発させた。その後基板を偏光顕微鏡下で観察し、偏光していないことを確認し、基板上の樹脂形状をSEMで観察した。すると、平均的には高さ約30nm程度、直径約90nm程度の大きさの樹脂により構成された微細な凸部が多数観察された。
【0311】
〔実施例8〕
本実施例における装置の構成および液晶材料、作製方法、液晶材料と未硬化樹脂材料との混合比は実施例6と同様とした。ただし本実施例においては、市販の分子量約100から150程度のアクリル系モノマーと分子量約1000から2000程度のウレタン系オリゴマーを重量比で65:35で混合し、市販の反応開始剤を約3重量%程度混合したものを未硬化樹脂材料として使用した。
【0312】
形成されたセルの液晶材料の配向状態を、偏光顕微鏡下で観察すると、樹脂を混合していない場合と同様に、配向膜のラビング方向に沿って一軸配向となり、良好な消光位が得られた。
【0313】
このセルの印加電圧変化に伴う透過光量の変化を観察したところ、暗から明また明から暗へ連続的に階調が変化し、明暗の中間調表示が可能となった。ドメインの発生は視覚的には確認できなかった。
【0314】
このセルの両基板を剥離し、200℃のオーブン中で5hr放置し、液晶を揮発させた。その後基板を偏光顕微鏡下で観察し、偏光していないことを確認し、基板上の樹脂形状をSEMで観察した。すると平均的には高さ約30nm程度、直径約90nm程度の大きさの樹脂により構成された凸部が多数観察された。
【0315】
〔実施例9〕
本実施例においてはスイッチング素子として結晶性シリコンTFT(薄膜トランジスタ)を各画素に設けたアクティブマトリクス駆動型の液晶電気光学装置の例を示す。
【0316】
基板としてコーニング7059ガラス板(300×300mm、厚さ1.1mm)上の酸化珪素膜上に、水素還元雰囲気下で600℃48時間の加熱アニールによりアモルファスシリコン膜を結晶化して形成した移動度100(cm2 /Vs)を有するNチャネル型の結晶性シリコンTFT、ITO(酸化インジューム・スズ)で画素電極、クロム/アルミニウムの多層膜または表面が陽極酸化されたアルミニウムにより配線を形成し、640×480画素のマトリクスを構成して設けた。
【0317】
次に対向する基板として青板ガラス基板上にITOを1200Åスパッタ法により成膜して対向電極を形成した。電極材料としては他に他にSnO2 (酸化スズ)などが使用できる。また基板材料としてはガラス、石英等の無機性材料やアクリル樹脂、ポリエチレン樹脂等の有機性材料が使用できる。
【0318】
この対向電極を形成した基板のみに配向膜を形成していわゆる片側配向とした。配向膜材料としてポリイミド系もしくはポリアミド系の樹脂、または、ポリビニルアルコール等の樹脂を使用できる。ポリイミド系の樹脂としては例えばLQ−5200(日立化成製)、LP−64(東レ製)、RN−305(日産化学製)等であり、ここではLP−64を使用した。配向膜はn−メチル−2−ピロリドン等の溶媒により希釈しスピンコート法により塗布した。塗布した基板は250〜300℃、ここでは280℃で2. 5時間加熱し溶媒を乾燥させ、塗膜をイミド化し硬化させた。硬化後の膜厚は300Åであった。
【0319】
液晶材料を一軸配向して液晶材料の層を基板に垂直あるいは傾斜して配列させるため、配向膜にラビング法により一軸配向規制力を付与した。ラビングは通常の方法と同様に、レーヨン、綿等の布が巻いてある直径130mmのローラーで450〜900rpm、ここでは450rpmの回転数で一方向に擦った。ロール押し込み高さは0.1mm、ステージ速度は20mm/secで行った。
【0320】
基板間隔としては1〜10μm、スペーサ材料としてはシリカまたはアルミナ等が適当である。ここでは該セルの間隔を一定にするためスペーサーとして、配向膜が塗布されている側の基板には直径1. 5μmの真絲球(触媒化成製)を散布した。また、他方の基板上には、該2枚の基板を固定するために、シール剤として基板の周辺に2液製のエポキシ系接着剤をスクリーン印刷により印刷塗布し、その後2枚の基板を接着固定した。
【0321】
上記セルには液晶材料及び未硬化樹脂材料の混合物を注入した。本実施例で使用した液晶材料としては、チッソ社製の強誘電性液晶、CS1014である。この液晶のPsは5.4nC/cm2 であり、相系列はI(等方相)−N(ネマチック相)−A(スメクチックA相)−C* (スメクチックC* 相)である。
【0322】
本実施例で用いた樹脂材料は市販の分子量約150から200程度のアクリル系モノマーと分子量約1500から3000程度のウレタン系オリゴマーを重量比で90:10で混合し、市販の反応開始剤を約3重量%程度混合した。
【0323】
上記液晶材料と未硬化樹脂材料を重量比で95:5で混合し、混合した樹脂が液晶材料中によりよく混合するように、90℃で液晶が等方相を示すまで加熱、攪はんして樹脂を液晶材料中に均一に混合し、液晶混合物とした。
【0324】
セルと液晶混合物を90℃に加熱し、前述のセルに注入後2〜20℃/hr、本実施例では2℃/hrで室温まで徐冷した。徐冷後の室温での配向状態を偏光顕微鏡下で観察すると、セル中に点在し柱状となっている樹脂材料は確認できるが基板上の樹脂形状は確認できなかった。しかし液晶材料の配向は樹脂を添加しない液晶材料と同様に、液晶は配向膜のラビング方向に沿って一軸配向となり、良好な消光位が得られていた。
【0325】
また消光位の状態から20°程ステージを回してみると、顕微鏡の視野中に複屈折による光漏れを生じないで、黒状態のままの部分が点在していた。この部分は樹脂がカラム状に分離析出していることを示している。
【0326】
このセルに紫外線を、強度3〜30mW/cm2 、照射時間0.5〜5min、本実施例では強度20mW/cm2 で1min、照射して樹脂を硬化させた。紫外線照射後も液晶は配向膜のラビング方向に沿って一軸配向となり、良好な消光位が得られた。このときカラム状の樹脂は上下の基板を接着し基板間の距離の拡大を防いでおり、大面積化しても液晶材料の層構造の崩れを防ぐことができる。
【0327】
このようにして作製したセルに対し、偏光顕微鏡でスイッチング状態を観察したところ、各画素においてドメイン発生を伴わずに透過光量が連続的に変化した。また各画素領域内において階調は一様であった。
【0328】
両基板に偏光板を貼り、駆動回路を接続して液晶電気光学装置を完成させた。1画面の書換えを1/60秒で行ない、印加電圧の大きさを制御することにより256階調表示を実現できた。
【0329】
上記方法により作製した基板をSEMにより観察したところ配向膜表面、画素電極表面ともに、高さが数10nm、直径が数10〜数100nmの微細な凸部が多数確認された。
【0330】
なお、本実施例においては、画素に接続するスイッチング素子としてNチャネル型の薄膜トランジスタを用いたが、Pチャネル型であっても、あるいはPチャネル型薄膜トランジスタとNチャネル型薄膜トランジスタとを用いて相補型に構成してもよい。またMIMダイオード等の薄膜ダイオード、非線型素子を用いた構成としてもよい。
【0331】
また、本実施例において、画素数を1920×480とし、赤、青、緑の3色のカラーフィルターを設けて、640×480のフルカラー表示をさせてもよい。256階調であれば、約1670万色の表示が可能である。
【0332】
『比較例1』
本比較例は、実施例6に示したセルにおいて、未硬化樹脂材料を混入させなかった例を示す。
【0333】
形成されたセルの液晶材料の配向状態を、偏光顕微鏡下で観察すると、配向膜のラビング方向に沿って一軸配向となり、良好な消光位が得られた。
【0334】
このセルの印加電圧変化に伴う透過光量の変化を観察したところ、ドメインが発生する明暗2状態のみのスイッチングが行われ、透過光量が連続的に変化することはなかった。
【0335】
このセルに実施例6と同じ強度20mW/cm2 で1minの紫外線を照射後、印加電圧を変化して透過光量の変化を観察したところ、やはりドメインを伴う明暗2状態のみのスイッチングとなった。
【0336】
『比較例2』
本比較例は、実施例6に示したセルにおいて、樹脂を硬化させなかった例を示す。
実施例6と同様にセルを作製、液晶材料と未硬化樹脂との混合物をセル内に注入した。作製されたセルの液晶材料の配向状態を、偏光顕微鏡下で観察すると、樹脂を混合していない場合と同様に、配向膜のラビング方向に沿って一軸配向となり、良好な消光位が得られた。
【0337】
このセルには紫外線を照射せず、樹脂を硬化させない状態で印加電圧を変化させて透過光量の変化を観察したところ、ドメインが発生する明暗2状態のみのスイッチングが行われ、透過光量が連続的に変化することはなかった。
【0338】
このセルの基板上を、実施例6と同様にSEMで観察したが、実施例6のような樹脂により構成される凸部は観察されなかった。
【0339】
『比較例3』
本比較例においては、実施例6に示したセルにおいて、樹脂材料のモノマーとオリゴマーの混合比を異ならせた例を示す。
本比較例で用いた樹脂材料は市販の分子量約150から200程度のアクリル系モノマーと分子量約1500から3000程度のウレタン系オリゴマーを重量比で10:90で混合し、市販の反応開始剤を約3重量%程度混合して未硬化樹脂材料とした。
作製されたセルの液晶材料の配向状態を、偏光顕微鏡下で観察すると、樹脂を混合していない場合と同様に、配向膜のラビング方向に沿って一軸配向となり、良好な消光位が得られた。
【0340】
このセルに紫外線を、強度3〜30mW/cm2 、照射時間0.5〜5min、本比較例では強度20mW/cm2 で1min、照射して樹脂を硬化させた。紫外線照射後も液晶は配向膜のラビング方向に沿って一軸配向となり、良好な消光位が得られた。
【0341】
このセルの印加電圧変化に伴う透過光量の変化を観察したところ、ドメインが発生する明暗2状態のみのスイッチングが行われ、透過光量が連続的に変化することはなかった。
【0342】
このセルの基板上を、実施例6と同様にSEMで観察したが、実施例6のような凸状はほとんど観察されず、非常にフラットな表面状態であった。
【0343】
【発明の効果】
以上の如く、本発明により、従来問題とされてきた、一軸配向手段の配向規制力による液晶分子のスイッチングの阻害を防ぐことができた。その結果スイッチングを高速化できた。さらに配向欠陥を改善でき、また電極間の絶縁性を向上させてショート防止を図ることもできた。よって液晶電気光学装置としては高速でまた高いコントラスト比を有し、信頼性も高いものとすることができた。単純マトリクス型の装置においてはデューティー比の高い高精細なものとすることができ、アクティブマトリクス型の装置においても高速化、表示の安定化が得られる。
【0344】
また従来とほとんど同じ作製工程によって作製できるため、高い生産性も有する。また配向不良が発生した場合においてもそれを修復できる。
【0345】
また、ドメインの発生を伴わずに電界強度により透過光量を制御できた。したがって強誘電性液晶材料が有する高速応答性を維持したまま、電圧による階調表示制御が容易に実現できた。またしきい値が低下したため、低電圧駆動が可能となった。また、特に低電圧領域における応答速度が極めて高速となった。本発明の液晶電気光学装置は特に各画素にスイッチング素子を設けたアクティブマトリクス駆動を行うことにより、高速かつ多階調の表示を実現できる。
【0346】
また不所望な電荷の移動や配向膜液晶界面での電荷の蓄積がなくなり、強誘電性液晶の液晶分子の急峻な反転や反転後の分子状態の安定性が得られ、より高速かつ安定な光学特性が得られる。したがって強誘電性液晶を用いた液晶電気光学装置を高速かつ高コントラスト比を有する表示が実現できた。
【0347】
特に結晶性シリコン薄膜トランジスタを用いたアクティブマトリクス型の液晶電気光学装置において、強誘電性液晶材料と結晶性シリコン薄膜トランジスタの高速応答性を生かしきって、高速、高コントラストを有する装置とすることができ、フレーム階調を用いた階調表示の階調数とコントラスト比を向上させることができた。
【0348】
また、電界強度による階調表示も容易に行なうことができ、フレーム階調と合わせて非常に高い階調数で、優れた品質の階調表示を行なうことができた。
【0349】
強誘電性液晶材料のスイッチング電圧を従来の双安定型の装置と比較して大幅に低電圧化でき、低消費電力化できた。
【0350】
また、カラム状の樹脂により、配向の乱れを発生させずに基板間隔の拡大、減少を防ぎ、また基板の強度を向上させて液晶セル全体の歪みの発生を防ぐことができ、液晶の層構造の崩れの発生を抑えることができた。よって大面積の強誘電性液晶を用いた液晶電気光学装置実現でき、この装置を立てて使用することも可能となった。
【0351】
以上の如く、本発明により、強誘電性液晶または反強誘電性液晶を用いた液晶電気光学装置において、多階調表示、さらにはフルカラー化を、高い分解能を持たせつつ容易に実現することができるようになった。また、ネマチック液晶を用いた液晶電気光学装置と比較しても、極めて高速であり、かつ大型化が容易な、多階調表示、フルカラー表示の可能な液晶電気光学装置とすることがでた。
【0352】
このように、本発明の液晶電気光学装置は、高速、多階調、高分解能、低電圧駆動かつ大面積なものとすることができ、また作製も容易であり、ハイビジョン等の高画質な映像を表示するディスプレイ装置に適した、極めてすぐれた液晶電気光学装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による液晶電気光学装置の概略図を示す。
【図2】 実施例における本発明による液晶電気光学装置の電流電圧特性のオシロスコープ波形を示す写真。
【図3】 実施例における本発明による液晶電気光学装置の電流電圧特性の模式図を示す。
【図4】 従来の液晶電気光学装置の電流電圧特性のオシロスコープ波形を示す写真。
【図5】 従来の液晶電気光学装置の電流電圧特性の模式図を示す。
【図6】 原子間力顕微鏡により観察した本発明の実施例による液晶電気光学装置の基板表面の薄膜を示す写真。
【図7】 原子間力顕微鏡により観察した本発明の実施例による液晶電気光学装置の液晶材料等注入前の基板表面の薄膜を示す写真。
【図8】 本発明の実施例によるアクティブ駆動型液晶電気光学装置の画素電極間電圧及び光学応答を示す。
【図9】 本発明の液晶電気光学装置の概略図を示す。
【図10】 本発明の実施例による液晶電気光学装置の概略図を示す。
【図11】 本発明の実施例による液晶電気光学装置における透過光強度−電圧特性を示す。
【図12】 本発明の実施例による液晶電気光学装置の電界方向反転時の応答性を示す。
【図13】 本発明の実施例による液晶電気光学装置の応答速度−電圧特性を示す。
【図14】 本発明の実施例による液晶電気光学装置の電流電圧特性を示す。
【図15】 本発明の実施例による液晶電気光学装置においてアクティブ駆動を行った場合の画素電極電圧及び光学応答を示す。
【図16】 従来の構成の液晶電気光学装置の電流電圧特性を示す。
【図17】 本発明の液晶電気光学装置の概略図を示す。
【図18】 実施例における、デジタル階調表示を行う際の印加信号ならびに画素電位と画素の透過率を示す。
【図19】 本発明の実施例で用いた回路を示す。
【図20】 本発明の回路の一例を示す。
【図21】 本発明の液晶電気光学装置の基本的な構成を示す。
【図22】 従来の表面安定化型の液晶電気光学装置を±1.5Vの矩形波により駆動した際の光学特性を示す。
【図23】 本発明の液晶電気光学装置を±1.5Vの矩形波により駆動した際の光学特性を示す。
【図24】 基板上に形成された微細なパターンを表したSEM写真を示す。
【符号の説明】
101、102 基板
103、104 電極
105 配向膜
106 樹脂膜
107 液晶材料
108 スペーサー
109、110 偏光板
201 画素電極間に流れる電流の容量成分
202 液晶材料の有する自発分極による反転電流
203 余分な電流成分
204 液晶材料の有する自発分極による反転電流
1101、1102 基板
1103 対向電極
1104 画素電極
1105 スイッチング素子
1106 配向膜
1107 樹脂膜
1108 液晶材料
1109、1110 偏光板
1111、1112 基板
1113、1114 電極
1115 配向膜
1116 樹脂膜
1117 液晶材料
1118 スペーサ
1401 実施例における本発明の装置の光学応答波形
1402 実施例における従来の装置の光学応答波形
1601 画素電極間に流れる電流の容量成分
1602 液晶材料の有する自発分極による反転電流
1801 画素電極間に流れる電流の容量成分
1802 液晶材料の有する自発分極による反転電流
1803 余分な電流成分
2101、2102 基板
2103 対向電極
2104 画素電極
2105 スイッチング素子
2106 配向膜
2107 樹脂膜
2108 液晶材料
2109、2110 偏光板
3110、3111 透光性基板
3112、3113 電極
3114、3115 配向手段
3116 液晶材料
3117 凸部
3118 スペーサー
3119 シール剤
3120、3121 偏光板

Claims (7)

  1. 配向膜を有し、反強誘電性液晶のらせん構造を抑制する基板間隔である一対の基板間に、反強誘電性液晶と、未硬化の紫外線硬化樹脂とを混合した混合物を注入し、
    前記反強誘電性液晶を前記配向膜の配向方向に従って配向させた後、紫外線を照射して前記未硬化の紫外線硬化樹脂を硬化する液晶電気光学装置の作製方法であって、
    前記未硬化の紫外線硬化樹脂は前記混合物の20重量%以下で含まれていることを特徴とする液晶電気光学装置の作製方法。
  2. 配向膜を有し、反強誘電性液晶のらせん構造を抑制する基板間隔である一対の基板間に、等方相状態の反強誘電性液晶と、未硬化の紫外線硬化樹脂とを混合した混合物を注入し、
    前記反強誘電性液晶がSmC * を呈するまで冷却し、
    前記反強誘電性液晶を前記配向膜の配向方向に従って配向させた後、紫外線を照射して前記未硬化の紫外線硬化樹脂を硬化する液晶電気光学装置の作製方法であって、
    前記未硬化の紫外線硬化樹脂は前記混合物の20重量%以下で含まれていることを特徴とする液晶電気光学装置の作製方法。
  3. 請求項において、前記冷却により、前記混合物から前記未硬化の紫外線硬化樹脂を析出することを特徴とする液晶電気光学装置の作製方法。
  4. 請求項からのいずれか一において、前記未硬化の紫外線硬化樹脂はモノマーを60重量%以上含有していることを特徴とする液晶電気光学装置の作製方法。
  5. 請求項において、前記モノマーはアクリル系モノマーを有することを特徴とする液晶電気光学装置の作製方法。
  6. 請求項からのいずれか一において、前記未硬化の紫外線硬化樹脂は配向膜上に膜状に硬化されることを特徴とする液晶電気光学装置の作製方法。
  7. 請求項からのいずれか一において、前記未硬化の紫外線硬化樹脂は配向膜上に複数の凸部を有して硬化されることを特徴とする液晶電気光学装置の作製方法。
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