JP4031609B2 - 廃棄プラスチックのリサイクル方法 - Google Patents

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  • Separation, Recovery Or Treatment Of Waste Materials Containing Plastics (AREA)
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、雑多な種類から構成される家庭から回収された使用済みの廃棄プラスチックを用いて、高い歩留で、プラスチック製品、化学品、および燃料として、リサイクルする方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、その他のプラスチックは、成形性と耐久性に優れていることから、容器、包装、家電品の外枠、おもちゃ、その他の多岐にわたる用途に用いられている。しかし、その結果、プラスチック廃棄物としても大量に廃棄されている。廃棄物として発生するプラスチックは、型抜きの残り屑や成形時の切り残り等の加工工程から発生する廃棄プラスチック(以下、屑プラスチックと称す)と、容器包装プラスチックや製品プラスチックが使用後に廃棄される使用済みの回収プラスチック(以下、使用済みプラスチックと称す)が存在する。
【0003】
大量のプラスチック廃棄物が発生することは、種々の社会問題を引き起こしており、特に、環境や資源上の問題は社会的に重要な項目である。つまり、これらの廃棄プラスチックを、廃棄物として焼却する場合は、焼却炉の燃焼温度が上がりすぎて、焼却炉を損傷したり、燃焼時に有害な塩化水素ガスやダイオキシンを発生したりする問題がある。また、使用済みプラスチックは、埋立処分されることが多く、この場合には、大量廃棄による処分場寿命短縮の問題以外に、プラスチックは腐敗しないため、長期間土壌が固化せず、埋立完了後に土地が利用しづらいなどの問題があった。
【0004】
したがって、廃棄プラスチックを有効に資源としてリサイクルすることは、前述の環境問題点を解決するとともに、省エネルギーと省資源の観点からも有利であることから、種々の方法が実施されてきていた。例えば、廃棄プラスチックを再びプラスチックに戻すマテリアルリサイクルの方法については、ポリエチレンテレフタレートのビンをプラスチックや繊維の原料にする方法がある。また、化学リサイクルの場合には、ガス化や油化する方法、コークス炉で化学原料とする方法、製鉄高炉にて還元剤として利用する方法が行われている。さらに、燃料へのリサイクルについては、ポリ塩化ビニルを除去した後に、圧縮成形して製造する粒状化物をボイラーや工業炉の燃料として利用する方法が一般的である。
【0005】
まず、廃棄プラスチックをマテリアルリサイクルする方法としては、廃棄プラスチックから異物を除去した後、リサイクル製品の製造に適したプラスチック成分を選別して、これを細かく破砕してフレーク状とし、繊維や成形品の原料とする方法が行われている。マテリアルリサイクルでは、異物の混入があると製品の品位が低下したり、製品の製造装置に故障を生じたりするため、高い精度で異物を除去している。
【0006】
また、廃棄プラスチックを化学原料や燃料にリサイクルするためには、化学原料、もしくは、燃料としての形状を整える必要がある。そのために、廃棄プラスチックに混在する異物を分離した後に、破砕して粒状化することが一般的である。この粒状化処理の方法としては、例えば、特開平8−99318号公報に記載されるように、廃棄プラスチックを再利用に適正なサイズに破砕して、これを圧縮成形して、粒状のプラスチックを製造することが一般に行われている。
【0007】
一般に、廃棄プラスチックから製造された、化学原料用や燃料用の粒状化物は、5〜40mmの直径の円柱の形状をしたものであり、異物と灰分の混入率は5〜15%であることが望ましい物である。異物と灰分の混入率が高いと、化学プラントでの残渣量が多くなったり、燃焼炉のアッシュ量が多くなる問題があり、異物と灰分の少ない廃棄プラスチックの粒状化物を製造することが行われている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
前述したように、廃棄プラスチックのリサイクルは、環境と資源の問題に対応する重要な方法である。しかし、廃棄プラスチック、特に、家庭から回収された使用済みプラスチックには、空き缶や空き瓶等の形で、鉄、アルミ、ガラスが混在しており、また、土砂、その他の無機質の異物や水分も混在している。廃棄プラスチックをリサイクル原料とするためには、混在する異物物の効率的な処置が、重要な技術課題であった。最近、盛んに行われてきている、家庭から回収された使用済みプラスチックのリサイクルでは、異物の除去は特に重要である。
【0009】
このように、廃棄プラスチック中の異物除去の対策は重要であることから、従来からも、種々の方法が採用されている。特に、家庭などから回収された使用済みの廃棄プラスチックでは、異物の混入が多いことから、色々な方法で異物除去が行われている。まず、廃棄家電やフライパンのような大型の異物を手選別工程で除去した後に、小型の異物除去の機械選別を行うことが一般的である。機械的な異物除去方法としては、特開平9−313966号公報に記載されるような各種の機械を組み合わせる方法が発明されており、この方法およびこれに類する方法は、異物除去に対して有効な技術である。
【0010】
家庭などから回収された使用済みプラスチックを原料として、製造するプラスチックの破砕物(フレーク)や粒状化物の純度を高めて、リサイクルに適切な品位とするためには、特に、複雑な選別工程が必要であった。つまり、高純度のプラスチックリサイクル原料を製造する操業を指向する場合は、異物を排除するために、磁力選別、渦電流式の金属分離機、風力選別、振動篩、その他の異物分離装置を多段に並べて異物分離をすることが行われる。
【0011】
ところが、これらの機械選別工程では、廃棄プラスチックと異物を容易に完全分離できない問題があった。つまり、従来技術では、各異物除去装置で分離された異物に混合して、廃棄プラスチックの一部が製品搬送のルートから排出されていた。例えば、磁力選別工程では、鉄質量の3〜10%程度のプラスチックが混在しており、また、渦電流式の金属分離機では、アルミなどとともに、金属質量の5〜10%程度のプラスチックが混在して排出される。金属以外の異物の除去に用いられる風力選別や振動篩などの装置では、異物中へのプラスチックの混在率が更に高く、少ない場合でも異物に対して30質量%程度、多い場合は70質量%ものプラスチックが混在して排出されている。
【0012】
金属の異物に混入した廃棄プラスチックは、磁力選別機や金属分離機を用いて、再分離することにより、廃棄プラスチック処理工程に戻すことが可能である。しかし、風力選別や振動篩などの装置で分離された非金属の無機異物に混入した廃棄プラスチックを再分離することは非常に困難である。つまり、廃棄プラスチックから製造する高純度のプラスチックリサイクル原料を製造する際に発生する非金属の無機異物に混入した廃棄プラスチックを利用する方法は十分に確立されていなかった。その結果、この無機異物に混入した廃棄プラスチックの利用は困難であり、産業廃棄物として、処分場に埋め立てたり、ゴミ焼却炉で焼却処分されたりしており、有効利用されていなかった問題があった。
【0013】
このように、異物の混入の多い家庭から回収された使用済みプラスチックから、純度の高いプラスチックリサイクル原料を製造する際には、異物とともに排出されるプラスチックが多く、プラスチック歩留が低くなる問題を抱えていた。例えば、家庭から回収された使用済みプラスチックから製造する化学原料用の粒状化物では、15〜30%のプラスチックが歩留落ちすることもある。
【0014】
更に、マテリアルリサイクルや化学向けのリサイクルでは、利用方法によっては、プラスチックであっても、リサイクルできない種類があるため、フレーク段階でプラスチック種類の選別することから、プラスチックの残渣も多く発生する。例えば、パネル等のプラスチックの押し出し成形品を製造する場合は、家庭から回収された使用済みプラスチックの内、ポリエチレンとポリプロピレンを中心に分離して、成形加工品を製造する製造する。この際に、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレートやポリスチレンは排除されて、残渣となる。その結果、この方法においては、家庭から回収された使用済みプラスチックの40〜60%しか、製品としてリサイクルされない問題があった。
【0015】
以上に説明したように、廃棄プラスチック、特に、家庭から回収された使用済みプラスチックから、プラスチック成形加工品や化学原料用や燃料用のプラスチック粒状化物を製造する際には、製品の歩留が悪い問題があった。その結果、廃棄プラスチックのリサイクルを拡大しても、相当量が廃棄物として残る問題があった。従って、廃棄プラスチックをリサイクルする際に、利用されない部分のプラスチックを効率的に利用する新しい技術が求められている。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(1)から()の通りである。
(1)一部もしくは全部が家庭から回収された使用済みプラスチックである廃棄プラスチックを原料として、当該原料よりもフィルム状および発泡質プラスチックの比率が高い集合と原料よりも平均厚みが0.3mm以上の厚手プラスチックの比率が高い集合に分離して、当該フィルム状および発泡質プラスチックの比率が高い集合を粉砕して、リサイクル利用するとともに、当該厚手プラスチックの比率が高い集合を粉砕して、石炭と混合してコークス炉にて乾留することを特徴とする廃棄プラスチックのリサイクル方法、
(2)破砕された厚手プラスチックの比率が高い集合を磁力選別機および渦電流式金属分離機のいずれかもしくは両方を用いて金属異物を除去した後に、石炭と混合してコークス炉にて乾留することを特徴とする(1)記載の廃棄プラスチックのリサイクル方法、
(3)一部もしくは全部が家庭から回収された使用済みプラスチックである廃棄プラスチックを粉砕した後に、原料よりもフィルム状および発泡質プラスチックの比率が高い集合と原料よりも平均厚みが0.3mm以上の厚手プラスチックの比率が高い集合に分離して、当該フィルム状および発泡質プラスチックの比率が高い集合をリサイクル利用するとともに、当該厚手プラスチックの比率が高い集合を石炭と混合してコークス炉にて乾留することを特徴とする廃棄プラスチックのリサイクル方法、
(4)破砕された一部もしくは全部が家庭から回収された使用済みプラスチックである廃棄プラスチックから、磁力選別機および渦電流式金属分離機のいずれかもしくは両方を用いて金属異物を除去した後に、原料よりもフィルム状および発泡質プラスチックの比率が高い集合と原料よりも平均厚みが0.3mm以上の厚手プラスチックの比率が高い集合に分離することを特徴とする(3)記載の廃棄プラスチックのリサイクル方法、
(5)分離した後の原料よりも平均厚みが0.3mm以上の厚手プラスチックの比率の高い集合を粉砕して、石炭と混合してコークス炉にて乾留することを特徴とする(3)記載の廃棄プラスチックのリサイクル方法、
(6)分離後の原料よりも平均厚みが0.3mm以上の厚手プラスチックの比率の高い集合から、磁力選別機および渦電流式金属分離機のいずれかもしくは両方を用いて金属製の異物を分離して、石炭と混合してコークス炉にて乾留することを特徴とする(3)記載の廃棄プラスチックのリサイクル方法、
(7)分離された原料よりもフィルム状および発泡質プラスチックの比率が高い集合中のフィルム状および発泡質プラスチックの比率が容積換算で85%以上であることを特徴とする(1)又は(3)記載の廃棄プラスチックのリサイクル方法、
(8)分離された原料よりもフィルム状および発泡質プラスチックの比率が高い集合を破砕した後に、圧縮成形装置で粒状化物を製造して、これを化学原料もしくは燃料として、リサイクル利用することを特徴とする(1)又は(3)記載の廃棄プラスチックのリサイクル方法である。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明による廃棄プラスチックのリサイクル方法を説明する。本発明において扱う廃棄プラスチックは、一般廃棄物プラスチックを含む雑多なものである。本発明は、廃棄プラスチックをリサイクルするための事前処理方法と利用しづらい残渣の混合している廃棄プラスチックの有効利用を行う方法であり、これを図1と図2を用いて説明する。
【0018】
第一の方法では、図1の設備を用いて、廃棄プラスチックを処理する。まず、受け入れた廃棄プラスチックの梱包を解き、プラスチック受け入れコンベア1にて、風力分離装置2に供給する。廃棄プラスチックの分離を良くするためには、事前に袋などを壊しておく方が良い。なお、図1では、使用済みプラスチックの分離装置として、風力分離装置を用いたが、振動盤を用いて軽質分と重質分を分離する装置や振動篩装置などでも、同等の機能を発揮することが可能である。
【0019】
風力分離装置2において、重量に対して表面積の大きいフィルム状および発泡質のプラスチック(軽量プラスチック)と、厚く比表面積の小さいプラスチック(厚手プラスチック)とに分離する。なお、以降、分離後の軽量プラスチック中心の集合を軽質分離分、また、厚手プラスチック中心の集合を重質分離分と称する。軽量プラスチックとしては、プラスチックラップ、包装袋、発泡スチロール類、食品トレー、商品袋等がある。また、厚手プラスチックは、プラスチック玩具、パーソナルコンピューターのケース、CDケース、プラスチックボトル、その他がある。
【0020】
家庭から回収された使用済みプラスチックは、回収方法や回収地域の人口構成の差により、そのフィルム系や厚手のプラスチック構成比率が異なる特徴があるため、風力分離装置2での風速を調整することにより、以降に説明する下流工程の廃棄プラスチック処理に有利なように、軽質分離分に混合する厚手プラスチックや異物の比率、重質分離分に混合する軽量プラスチックの比率を調整する。
【0021】
分離後の軽質分離分には、異物の混入がきわめて少ない。この理由は、廃棄プラスチック中の異物としては、金属片、ガラス、土砂、陶器屑等のプラスチックと比較すると比重の大きい物が多いため、これらの異物は、重質分離分に混入するからである。
【0022】
軽質分離分は、軽量プラスチック搬送コンベア3にて、軽量プラスチック破砕機4に送られて、細かく破砕される。プラスチック製品へのリサイクルに用いる場合は、ここで製造されたフレークをプラスチックの射出成形機等で製造する原料とする。化学原料もしくは燃料にリサイクルする際は、破砕の後に、押し出し型の圧縮成形機5を用いて、プラスチック粒状化物を製造する。プラスチック粒状化物は、100℃程度の温度で排出されるため、粒状化物冷却コンベア6で、冷却されながら、搬送されて、粒状化物貯蔵ホッパー7に保管される。
【0023】
廃棄プラスチックリサイクルにとって、混在する無機異物の比率が重要な要件である。つまり、混在する無機異物の比率が高い場合は、プラスチック破砕機の切断刃の磨耗が大きく、リサイクルのための費用が高くなるなどの問題がある。また、プラスチック製品にリサイクルする場合は、無機異物が品質上の欠陥となり、良質の廃棄プラスチックリサイクル品を製造できない問題があった。本発明者らは、廃棄プラスチックリサイクルのためには、混在する無機異物の質量比率が3%以下とすると、以上の問題が生じないことを解明した。
【0024】
そこで、本発明者らは、家庭から回収された使用済みプラスチックを用いて、種々の実験を繰り返した。その結果、一般的に、家庭から回収された使用済みプラスチックは、軽量プラスチックを容積換算で、50〜80%含むことを解明した。また、この使用済みプラスチックの内、最も軽量プラスチックの比率が少ないものを用いても、分離装置により、得られた軽質分離分中の軽量プラスチックの容積比率が85%以上であれば、異物の混入が質量換算で、1〜3%となることを解明した。従って、家庭から回収された使用済みプラスチックを用いる場合は、分離後の軽質分離分に含まれる軽量プラスチックの比率は、85容積%以上であることが望ましい。
【0025】
一方、重質分離分は、異物の混入が多いため、厚手プラスチック搬送コンベア8上で磁力選別機9にて、また、厚手プラスチック搬送コンベア8の後に渦電流金属分離器10にて、金属製の異物を除去する。金属製の異物の混入率が低い場合は、これらの異物選別装置を使用しない場合もある。厚手プラスチック破砕機11で、厚手プラスチックを主体とする重質分離分を細かく破砕する。得られる破砕後のプラスチックの嵩比重を大きくするために、ここで、プラスチックの厚みは、0.3mm以上であることが必要である。また、廃棄プラスチックの場合は、破砕後のサイズが小さい方が嵩比重の大きいプラスチックを得られ、後述する理由により、コークス炉で使用することができるものとなる。
【0026】
ここで得られた重質分離分は、質量換算で、プラスチックが60〜90%であり、かつ、異物および灰分が10から40%である。これを厚手プラスチック貯蔵ホッパー12に備蓄する。破砕された厚手プラスチックを粉砕された石炭と混合して、コークス炉の炭化室に入れる。当該重質分離分と石炭は、15〜20時間、最高で1100℃の高温で乾留されて、水素とメタンを多く含むコークス炉ガス、タール等の油化物、コークスに分離され、これらを燃料や化学原料として、有効利用する。
【0027】
コークス炉で無機異物を比較的多く含む廃棄プラスチックを利用することは、他のリサイクル方法に対して優位である。コークス炉では、高温の密閉室内で石炭とプラスチックを乾留する。生成物としては、水素とメタンを主体とするコークス炉ガス、重質の炭化水素から構成される油化物、および、炭素とアッシュ分から構成されるコークスがある。廃棄プラスチックに混在する無機異物と灰分は、コークスのアッシュ分に吸収されることから、上記の異物混入率であれば、残渣が単独の状態で存在しない。その結果、残渣のハンドリングや廃棄の問題が生じない。
【0028】
また、コークスは製鉄高炉等の精錬炉や溶解炉で利用される際に、燃え残りのアッシュ分は溶融スラグの形態で、炉から排出される。溶融スラグは固化して、砂や石の形態となり、土木材料などに利用できることから、残渣起因の廃棄物の発生を極めて少なくすることが可能となる。
【0029】
コークス炉で廃棄プラスチックを有効に乾留するには、まず、プラスチックの嵩比重が大きいことが重要な条件である。廃棄プラスチックをコークス炉で使用する場合は、プラスチックの嵩比重が小さい場合は、コークス炉の炭化室の内部で、プラスチック部分の空隙が大きくなる問題が生じる。その結果、プラスチックが存在する部分のコークス密度が小さくなることから、この部分のコークス強度が低下し、かつ、粉の比率が高くなる。特に、廃棄プラスチック破砕物の嵩比重が、0.3以下の場合はこの傾向が大きい。
【0030】
従って、廃棄プラスチック破砕物の嵩比重を0.3以上とする必要があるが、廃棄プラスチック破砕物は、嵩比重が低い傾向があり、ひどい場合は、嵩比重が0.1以下のこともある。そこで、前述したように、嵩比重を大きくする方法としては、比較的厚いプラスチックを用いることが望ましく、これを粉砕して、コークス炉で使用することが重要である。
【0031】
家庭から回収された使用済みプラスチックは、袋やラップ等のフィルム系のものと、おもちゃやケース類等の厚手のものとに分けられる。この内、フィルム系のプラスチックは厚みが0.1mm以下であり、これは破砕しても嵩比重を0.3以上とすることが困難である。一方、厚手プラスチックは一般に、0.3〜2mm程度の厚みがあり、この厚手プラスチックを平均サイズが10mm以下程度までの破砕加工を行えば、コークス炉で有効な嵩比重である0.3以上の状態とすることができる。この理由から、コークス炉で乾留することにより、リサイクル使用するプラスチックの集合体の平均厚みとしては、0.3mm以上であることが重要な要件である。ちなみに、使用済みプラスチックには、厚み0.1〜0.3mmの範囲の比率が少ないことも、厚手のプラスチックの制約条件を平均厚み0.3mm以上とした理由である。
【0032】
ここで、重質分離分から金属製の異物を排除するのは以下の理由である。まず、金属製の異物は鋭い破断面を有するものが多く、これを分離しない場合は、金属製異物がコークス炉のベルトコンベアを切断する問題がある。また、特に、鉄はコークス炉内で溶融して、コークス炉のレンガを破損する問題がある。つまり、鉄はコークス炉内で、炭素分を吸収して、融点の低いセメンタイト(Fe3C)を形成して、1100℃程度の温度で溶融する。その結果、溶融したセメンタイトがレンガを侵食しする。つまり、家庭から回収された使用済みプラスチックの金属製異物の混入比率が高い場合は、磁力選別機や渦電流式金属分離装置を用いて、これらの金属製異物を排除することが有効な方法である。
【0033】
第二の方法として、原料の使用済みプラスチックに、異物の混入が多かったり、使用済みプラスチックの形状がさまざまであったりする場合は、図2に示されるような分離工程の前に、使用済みプラスチックの破砕をする装置を用いることがある。家庭から回収された使用済みプラスチックは、袋詰めや圧縮梱包された状態でリサイクル加工工場へ送られてくることもあるため、そのような場合は、図2に示される装置を用いることは、有効である。
【0034】
使用済みプラスチックは、プラスチック受け入れコンベア1で、原料プラスチック破砕機13に送られ、ここで破砕される。原料プラスチック破砕機13は粗破砕を目的とするものであり、破砕後のプラスチックのサイズとしては、分離効率を良好とする範囲、フィルム系のもので150mm以下、その他のもので50mm以下、とすることが望ましい。破砕処理以後のプラスチックは、風力分離装置2を用いて、軽質分離分と重質分離分に分ける。分級の程度は風量の調整等で行うが、軽質分離分と重質分離分の求められる性状は図1に示された設備での操業と同等である。
【0035】
軽質分離分は、そのまま、次工程であるプラスチック加工工程に送られることもあるが、図2の設備では、圧縮成形機5にて、粒状化物として成形して、粒状化物貯蔵ホッパー7に備蓄する。圧縮成形機5での成形に対して、原料プラスチック破砕機13での破砕が不十分であれば、圧縮成形機5の前段に、二次破砕機を設置して、適正なサイズまでプラスチックを破砕することもある。
【0036】
重質分離分は、厚手プラスチック搬送コンベア8にて、磁力選別機9と渦電流金属分離器10を用いて、金属異物を除去する。図2の例では、原料プラスチック破砕機13での破砕が十分である場合の設備を示したが、破砕が不十分である場合は、厚手プラスチックを再度破砕する。処理後の厚手プラスチックは、厚手プラスチック貯蔵ホッパー12に備蓄される。破砕機10での破砕サイズは図1を用いて説明した範囲と同等である。
【0043】
【実施例】
本発明を用いて行った操業での家庭から回収されたプラスチックを分別・破砕処理して、リサイクルした結果を表1に示す。実施例では、図1の装置を用いて、本発明の操業を行った結果を示す。比較例では、廃棄プラスチックの破砕と分別のみを行う従来法による操業の例を示す。なお、廃棄プラスチックの再利用先は、実施例ではプラスチック油化装置とコークス炉であり、また、比較例ではプラスチック油化装置である。
【0044】
【表1】
Figure 0004031609
【0045】
比較例の操業では、原料の使用済みプラスチックの異物混入比率が11.1%であった。処理を行った後のプラスチック油化装置で利用できたプラスチック中への異物混入は2.5%であり、利用されたプラスチックは原料に対して78.3%であった。製品外として、異物が8.6%あり、また、プラスチックも10.6%存在していた。つまり、異物を除去するために、10.6%のプラスチックが歩留落ちしていた。プラスチック油化装置で利用できたプラスチックが原料中プラスチックに対する比率に換算すると、88.1%の歩留であった。
【0046】
一方、実施例では、比較例と同一の原料の使用済みプラスチックを用いたが、異物混入比率が11.3%であった。処理を行った後のプラスチック油化装置で利用できたプラスチック中への異物混入は1.5%であり、利用されたプラスチックは原料に対して72.7%であった。厚手プラスチックとして、コークス炉で有効利用されたプラスチックは13.7%であり、異物混入は3.7%であった。金属異物とともに排出されて、プラスチック油化装置でもコークス炉でも利用できなかったプラスチックは、2.3%と極めて少なかった。その結果、プラスチック油化装置とコークス炉で利用できたプラスチックは原料に対して86.4%であった。プラスチック油化装置で利用できたプラスチックが原料中プラスチックに対する比率に換算すると、97.4%と高い歩留であり、比較例に対して、約9%歩留が向上した。
【0047】
この実施例に示されるように、本発明に基づく操業を行うことにより、従来法に対して高い歩留で使用済みプラスチックをリサイクル利用することができる。その結果、廃棄物処分する残渣量も大幅に低減することができる効果も得られた。
【0048】
【発明の効果】
本発明によれば、廃棄プラスチックをリサイクル際に発生する異物混入の多い部分を有効に、かつ、経済的に、リサイクルすることが可能である。特に、混在する異物の多い家庭から回収される使用済みプラスチックのリサイクルに有効な手段である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に基づく、使用済みプラスチックのリサイクル事前処理装置の全体図であり、軽質と厚手のプラスチックの分離前にプラスチックの破砕を行わない設備フローの例を示す図である。
【図2】 本発明に基づく、使用済みプラスチックのリサイクル事前処理装置の全体図であり、軽質と厚手のプラスチックの分離前にプラスチックの破砕を行う設備フローの例を示す図である
【符号の説明】
1 プラスチック受け入れコンベア
2 風力分離装置
3 軽量プラスチック搬送コンベア
4 軽量プラスチック破砕機
5 圧縮成形機
6 粒状化物冷却コンベア
7 粒状化物貯蔵ホッパー
8 厚手プラスチック搬送コンベア
9 磁力選別機
10 渦電流金属分離器
11 厚手プラスチック破砕機
12 厚手プラスチック貯蔵ホッパー
13 原料プラスチック破砕機
14 破砕済みプラスチック搬送コンベア

Claims (8)

  1. 一部もしくは全部が家庭から回収された使用済みプラスチックである廃棄プラスチックを原料として、当該原料よりもフィルム状および発泡質プラスチックの比率が高い集合と原料よりも平均厚みが0.3mm以上の厚手プラスチックの比率が高い集合に分離して、当該フィルム状および発泡質プラスチックの比率が高い集合を粉砕して、リサイクル利用するとともに、当該厚手プラスチックの比率が高い集合を粉砕して、石炭と混合してコークス炉にて乾留することを特徴とする廃棄プラスチックのリサイクル方法。
  2. 破砕された厚手プラスチックの比率が高い集合を磁力選別機および渦電流式金属分離機のいずれかもしくは両方を用いて金属異物を除去した後に、石炭と混合してコークス炉にて乾留することを特徴とする請求項1記載の廃棄プラスチックのリサイクル方法。
  3. 一部もしくは全部が家庭から回収された使用済みプラスチックである廃棄プラスチックを粉砕した後に、原料よりもフィルム状および発泡質プラスチックの比率が高い集合と原料よりも平均厚みが0.3mm以上の厚手プラスチックの比率が高い集合に分離して、当該フィルム状および発泡質プラスチックの比率が高い集合をリサイクル利用するとともに、当該厚手プラスチックの比率が高い集合を石炭と混合してコークス炉にて乾留することを特徴とする廃棄プラスチックのリサイクル方法。
  4. 破砕された一部もしくは全部が家庭から回収された使用済みプラスチックである廃棄プラスチックから、磁力選別機および渦電流式金属分離機のいずれかもしくは両方を用いて金属異物を除去した後に、原料よりもフィルム状および発泡質プラスチックの比率が高い集合と原料よりも平均厚みが0.3mm以上の厚手プラスチックの比率が高い集合に分離することを特徴とする請求項3記載の廃棄プラスチックのリサイクル方法。
  5. 分離した後の原料よりも平均厚みが0.3mm以上の厚手プラスチックの比率の高い集合を粉砕して、石炭と混合してコークス炉にて乾留することを特徴とする請求項3記載の廃棄プラスチックのリサイクル方法。
  6. 分離後の原料よりも平均厚みが0.3mm以上の厚手プラスチックの比率の高い集合から、磁力選別機および渦電流式金属分離機のいずれかもしくは両方を用いて金属製の異物を分離して、石炭と混合してコークス炉にて乾留することを特徴とする請求項3記載の廃棄プラスチックのリサイクル方法。
  7. 分離された原料よりもフィルム状および発泡質プラスチックの比率が高い集合中のフィルム状および発泡質プラスチックの比率が容積換算で85%以上であることを特徴とする請求項1又は3記載の廃棄プラスチックのリサイクル方法。
  8. 分離された原料よりもフィルム状および発泡質プラスチックの比率が高い集合を破砕した後に、圧縮成形装置で粒状化物を製造して、これを化学原料もしくは燃料として、リサイクル利用することを特徴とする請求項1又は3記載の廃棄プラスチックのリサイクル方法。
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