JP4028468B2 - 薄膜圧電共振器 - Google Patents

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Description

本発明は、薄膜圧電共振器に関し、特に、高周波回路のフィルタ、発振器に用いられる。
無線通信技術の発達、新方式への移行に伴い、複数の送受信システムに対応する通信装置の需要が益々高まっている。加えて、移動体無線端末の高性能化、高機能化に伴い、部品点数が大幅に増加しており、部品の小型化、モジュール化の重要性が高まっている。無線回路中の受動部品の中では、特にフィルタ回路の占める割合が大きいため、無線回路を小型化し、部品点数を削減するためには、フィルタの小型化、モジュール化が必須である。
従来用いられてきたフィルタとしては、誘電体フィルタ、SAW(Surface Acoustic Wave)フィルタ、LCフィルタなどが挙げられる。近年、薄膜バルク弾性波共振器(薄膜圧電共振器ともいう)を利用したフィルタが、小型化・モジュール化に最も有望であると考えられている。このタイプのフィルタは、圧電体振動の共振現象を利用しているため、近接して配置しても電磁波のように干渉することはなく、誘電体フィルタやLCフィルタに比べて小型化し易い。また、無線通信に使用する帯域が高周波化していることから、表面波を利用しているSAWフィルタではサブミクロンレベルの微細加工が必要になり、安価に作製することが難しくなってきている。
一方、薄膜圧電共振器を利用したフィルタは圧電体の厚み縦振動を利用しているため、圧電体の厚みを薄くすれば動作帯域の高周波化が容易に実現でき、平面方向には1μmレベルの加工寸法で充分なので、高周波化に伴う製造コストの上昇を招かない。また、薄膜圧電共振器を作製する基板は、SAWフィルタのように圧電性基板である必要がなく、半導体であるSi基板やGaAs基板上にも作製でき、LSIのチップとモノリシックにフィルタを作りこむことも可能である。
このような薄膜圧電共振器においては、励振した弾性振動のエネルギを閉じ込めるため、共振部分の上部および下部は空気層に接していることが望ましい。共振子を構成する圧電体や電極の音響インピーダンスと空気の音響インピーダンスが数桁も異なるため、弾性振動が界面で効率的に反射されて、弾性波のエネルギが共振部分に閉じ込められるためである。上部の空気層は自然に構成されるので、どのように下部の空気層を形成するかが薄膜圧電共振器のプロセスのポイントとなる。
下部の空気層を形成して、中空構造の共振器を作製するプロセスは何種類か知られている。
従来知られている第1の方法は、共振器を作成後、基板の裏側からエッチングを行って共振器下部の空気層を作成する方法である(例えば、非特許文献1参照)。この方法によれば、Si(100)基板上にエッチング停止層としてシリコン窒化膜を既知のCVD法などにより作成する。次に、Al電極膜をスパッタ法などにより作成し、リソグラフィーおよびRIEを用いてAl電極膜をパターニングし、Al電極を形成する。次に、AlN圧電膜を作成し、リソグラフィーおよびRIEによりパターニングする。その上にAl上部電極を作成し、リソグラフィーおよびRIEによりパターニングする。続いて、基板の下面側からSiを異方性エッチングしてビアホールを形成する。このようにして共振子部分の上下が空気層に接した薄膜圧電共振器を作成することができる。
上記の構造の最大の問題点は、基板の下面側から異方性エッチングによりビアホールを形成しなければならない点にある。ビアホールを作成するにはフッ酸を含む強酸中で長いエッチング時間を要する。また、薄膜圧電共振器では共振子の寸法を数十μmと小さくできる利点があるが、角度を付けた異方性エッチングにより作成したビアホールを使用すると、ビアホールのために素子寸法が大きくなってしまうという問題点がある。さらに、LSIチップとモノリシックに作製することが不可能である。
従来知られている第2の方法は、SiO系の犠牲層の上に共振子を作成し、最後に選択エッチングにより犠牲層を除去する方法である(例えば、特許文献1参照)。この方法は、まず、Si基板上に異方性エッチングにより窪みを形成する。さらに窪みの表面を熱酸化して次の工程で形成するガラスのドーピング成分のSi基板中への拡散を防ぐ。次に,基板上に犠牲層(例えばリンをドープしたシリケートガラス、PSG)を形成する。その表面をSi基板面までCMPを用いて研磨する。その上に下部電極、圧電膜、上部電極を順次堆積する。次に犠牲層に達するまで穴をあけて、フッ酸を使用した選択エッチングにより犠牲層を除去しキャビティを形成する。このプロセスにより薄膜共振器が完成する。
上記のプロセスの問題点は、犠牲層除去にフッ酸を使用せざるを得ないことである。フッ酸は酸化作用を伴う激しい酸であり、AuとPtを除く全ての金属を溶解する。したがって、犠牲層エッチング時に電極や圧電膜などに剥がれなどが生じやすいという問題点がある。また、CMPで平坦化した表面上に共振器を作らなければならないため、基板から配向性を引き継いで結晶性の良好なAlN膜を形成することができない。
従来知られている第3の方法は、基板に凸型に形成した犠牲層の上部に共振子を作成し、最後に選択エッチングにより犠牲層を除去する方法である(例えば、特許文献2参照)。この方法は、まず、基板を掘り込まずに犠牲層を形成し、その上に順に下部電極、圧電体、上部電極と順次積層し、最後に犠牲層をエッチングにより除去する。この方法は、CMPで平坦化する必要がないため製造工程が簡略化でき、さらに基板上に配向した犠牲層を形成しておけば、下部電極や圧電体も配向させることが可能になるという点で他の方法より優れている。
"Film Bulk Acoustic Wave Resonator Technology", S. V. Krishnaswany , J. Rosenbaum , S. Horwitz , C. Vale and R. A. Moore, Ultrasonic Symposium 1990, p529-536 特開2000―69594公報 米国特許第606,0818号明細書
上で述べたように、始めに基板上に凸型の犠牲層を形成し、電極、および圧電体からなる共振器を形成後、犠牲層をエッチング除去して中空構造(キャビティ)を作製する方法は、圧電体の配向性を向上させ、製造プロセスを簡略化するという観点からは有利な構造であるが、キャビティの段差部が共振特性に悪影響を及ぼすという問題点がある。キャビティ段差部の上に形成される不完全な圧電体の振動や、段差部での振動の横方向モードの反射・吸収がQ値の低下を誘起する原因となる。
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであり、凸型キャビティ構造に特有の共振特性劣化を回避することのできる薄膜圧電共振器を提供することを目的とする。
本発明の一態様による薄膜圧電共振器は、平坦な表面をもつ基板と、前記基板表面と略平行に空洞を介して対向する平坦部と、前記平坦部を支持する如く前記基板表面まで下降し前記基板表面並びに前記平坦部とともに実質的に前記空洞を形成する傾斜部とを有する圧電体膜と、前記平坦部の前記空洞側表面に設けられた下部電極と、前記平坦部の前記空洞側表面とは反対側の略平行な表面に設けられ、前記下部電極と前記平坦部を介して向かい合う上部電極とを備え、前記圧電体膜の前記下部電極および前記上部電極が向かい合う領域は前記平坦部内に制限されており、前記向かい合う領域の端は前記平坦部および前記傾斜部間の境から1μm以上離れていることを特徴とする。
なお、前記圧電体膜が窒化アルミニウムであってもよい。
なお、前記下部電極が前記平坦部に設けられる面積は、前記上部電極が前記平坦部に設けられる面積よりも大きくてもよい。
なお、前記下部電極と接していない前記圧電体膜の前記平坦部下には、前記基板表面上に設けられた非晶質金属層が存在してもよい。
本発明によれば、凸型キャビティ構造に特有の共振特性劣化を回避することができる。
本発明者らは、凸型キャビティ(空洞)構造を有する薄膜圧電共振器の構造について、実験・理論両面から詳細な検討を行なった。その結果、キャビティ、及び上下電極の大きさ、大小関係を最適化すれば、高いQ値をもち、スプリアス振動の影響が少ない共振器が得られることを見出した。
以下、本発明の原理について詳述する。
まず発明者らは、凸型キャビティ構造を有する薄膜圧電共振器の電極構造について詳細に検討を行なった。基板に掘り込んだ凹みに犠牲層を形成する従来の方法や、裏面から基板をエッチングして中空構造を形成した共振器においては、下部電極はキャビティ全面を越えて広がっている従来の構造を採用すると、構造的に最も強度が強く、またキャビティの内側で圧電体膜の段差が形成されないため、共振特性にも不要なスプリアス振動が発生しないとされている。しかしながら、この構造では少なくとも電極の一辺において、上下電極が対向する領域がキャビティを超えて外に伸び、キャビティ外で並列寄生容量を形成してしまう。
一方、凸型キャビティ構造の共振器においては、上下電極の対向部が圧電体膜の斜面の段差部にかかると、結晶性やモフォロジーの悪い段差部の圧電体膜が誘起した不完全な圧電振動がスプリアスを誘起し、さらに反共振点のQ値が劣化することを発明者らは実験的に見出した。従って、凸型キャビティ構造を採用する場合には、上下電極の対向領域がキャビティ内部に収まるような構造にする必要がある。このような構造は、上述のように構造的には強度が弱いとされているが、圧電体膜や上下電極の応力を最適設計すれば、実用上十分高い歩留まりを得ることが可能である。
また、キャビティ内で圧電体膜に段差があっても、凸型キャビティ構造においては圧電体膜の斜面での振動の吸収が効率的に行なわれるので、不要なスプリアス振動の原因とはならないことを発明者らは初めて見出した。なお、振動の吸収に伴うQ値の低下は、電極サイズが膜厚に比べて同程度である場合には極めて重大な問題となるが、実用上用いる電極サイズではほとんど無視できる。
さらに発明者らは、上下電極の対向部を圧電体膜の斜面の上端からどの程度離さなければならないか、という問題について理論的・実験的に検討を行なった。電極の端部が圧電体膜の斜面上端に接触している場合、反共振のQ値が低下し、加えて反共振周波数付近に大きなスプリアス振動が観測される。このような現象は、電極端部を圧電体膜の斜面から離すに連れて抑制され、少なくとも1μm以上間隔を設ければ、十分小さい挿入損失を得るために必要な共振特性が得られることが見出された。有限要素法を用いたシミュレーションで解析したところ、何らかのエバネセントな弾性振動が電極から周辺に放射されており、電極と圧電体膜の斜面上端が近接している場合、振動の横モードが低次の強い共振を起こしたり、振動が圧電体膜の斜面に吸収されたりするため、Q値の現象やスプリアスが増大することが明らかになった。したがって、距離を離せば放射された振動は減衰し、特性に影響を及ぼさない。
また、本来、高域遮断型分散関係を持つAlN(窒化アルミニウム)が、薄膜圧電共振器を低域遮断型分散関係を持つ圧電体のように振舞うことを本発明者らは初めて見出した。以上のような実験的・理論的考察をもとに、本発明者らは本発明をなすに至ったものである。
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による薄膜圧電共振器の構成を図1乃至図2に示す。図1は第1実施形態による薄膜圧電共振器の断面図であり、図2は第1実施形態による薄膜圧電共振器の平面図である。
この第1実施形態による薄膜圧電共振器1は、平坦な表面をもつ基板2と、基板2の表面と略平行に空洞(キャビティ)12を介して対向する平坦部8aと、この平坦部8aを支持するように基板2の表面まで下降し基板2の表面並びに平坦部8aとともに実質的に空洞12を形成する傾斜部8bとを有する圧電体膜8と、平坦部8aの空洞側表面に設けられた下部電極6と、平坦部8aの空洞側表面とは反対側の略平行な表面に設けられ、下部電極6と平坦部8aを介して向かい合う上部電極10とを備えている。
空洞12は、本体部12aと、出口部12bとを有している。空洞12の本体部12aは、圧電体膜8の平坦部8a、傾斜部8bと基板2の表面とによって実質的に形成される。空洞12の出口部12bは本体部12aと外部を接続する孔であり、本実施形態による薄膜圧電共振器1の側部に設けられている。そして、この出口部12cは、本実施形態による薄膜圧電共振器1を製造する際に用いられる、空洞12を形成するための犠牲層を外部に排出するための孔として使用される。
また、下部電極6と上部電極10の圧電体膜8を介して向かい合う領域14は、圧電体膜8の平坦部8a内に位置するように構成されている。そして、向かい合う領域14の端は、圧電体膜8の平坦部8aと傾斜部8bの境から所定の距離x離れているように構成されている。この所定の距離xは、1μm以上であることが好ましく、3μm以上であることが更に好ましい。
次に、本実施形態の薄膜圧電共振器1の製造工程を図3乃至図5を参照して説明する。図3乃至図5は、第1実施形態の薄膜圧電共振器1の製造工程断面図である。
まず、図3に示すように、最表面に酸化膜が形成されたSi基板2上にRF(Radio Frequency)マグネトロンスパッタ法により膜厚1μmのMo(モリブデン)からなる犠牲層4を形成し、リソグラフィーおよび弗化物系ガスを使用したケミカルドライエッチング(CDE)を用いて犠牲層4をパターニングする。
次に、図4に示すように、RFマグネトロンスパッタ法により膜厚0.05μmのTaAlからなる非晶質下地層(図示せず)、および膜厚0.2μmのAl(アルミニウム)からなる膜を順に形成し、リソグラフィーおよびフッ化物系ガスを使用したRIE(Reactive Ion Etching)を用いて、Alからなる膜および非晶質下地層をパターニングし、下部電極6を形成した。続いて、反応性RFマグネトロンスパッタ法により膜厚1.2μmのAlNからなる膜を形成した後、リソグラフィーおよび塩化物系ガスを使用したRIEによりAlNからなる膜をパターニングし、圧電体膜8を形成した。さらにRFマグネトロンスパッタ法によりAlからなる膜を形成し、リソグラフィーおよびRIEによりAlからなる膜をパターニングし、上部電極10を形成した(図4参照)。
次に、図5に示すように、Moからなる犠牲層4を基板2上に露出した部分(図2の出口部12bに対応する部分)から、70℃に熱した50%過酸化水素水を使用して選択エッチングを行い、下部電極6、圧電体膜8、上部電極10からなる共振器の下部に空洞12を作成した。過酸化水素水を使用した選択エッチングにより、犠牲層4は全て溶解したが、上部電極10および下部電極6や圧電体膜8には全く損傷がなく、剥がれなども認められなかった。
以上のプロセスにより作成した薄膜圧電共振器の中で、電極と空洞の大小関係が図2で模式的に示される薄膜圧電共振器の周波数特性の評価を行なった。なお、上下電極が向かい合う領域14の端と、圧電体膜8の平坦部8aと傾斜部8bの境との距離x(図2参照)は3μmであった。評価はベクトルネットワークアナライザ(HP8510C)を用いて行なった。その結果、共振周波数がおよそ1.9GHz、電気機械結合定数は6.4%、共振のQ値は850、反共振のQ値は750と極めて良好な共振特性を示した。また、スプリアス振動もほとんど観測されなかった。
(第1比較例)
次に、第1比較例として、図6に示すように、上下電極6、10の向かい合う領域14が空洞12の外部まで伸びている薄膜圧電共振器を作成し、その共振特性について調べた。この比較例の薄膜圧電共振器の製造プロセスは、第1実施形態で説明したプロセスと同一である。図6において、上下電極6、10が向かい合う領域14は空洞12の外部まで伸びている。図6から分かるように、圧電体膜8の傾斜部8bに上下電極6、10が向かい合う領域14が存在するため、不完全な圧電性をもつAlNからなる圧電体膜8が励起した圧電振動が、Q値の劣化、スプリアスの増大など特性に悪影響を及ぼす。この共振器の周波数特性を評価したところ、結合定数、および共振周波数はそれぞれ6.4%、800であり、第1実施形態とほとんど変わらなかったが、反共振のQ値は270と大幅に減少しており、さらに反共振点を中心に強いスプリアス振動が観測された。
(第2比較例)
次に、第2比較例として、図7に示すように、上下電極6、10の向かい合う領域14が圧電体膜8の平坦部8aと傾斜部8bの境と接触している薄膜圧電共振器を作成し、その共振特性について調べた。この比較例の薄膜圧電共振器の製造プロセスは、第1実施形態で説明したプロセスと同一である。図7から分かるように、上下電極6、10共に電極端部が、圧電体膜8の平坦部8aと傾斜部8bの境とほぼ重なっている。このような構造では、電極端部から放射された振動が十分減衰せずに不完全なAlNからなる圧電体膜8の傾斜部8aに吸収されるため、Q値が減少する。この共振器の周波数特性を評価したところ、結合定数、および共振周波数は第1実施形態とほとんど変わらなかったが、反共振のQ値は400と大きく減少しており、さらに反共振点を中心にスプリアス振動が観測された。
以上説明したように、本実施形態によれば、凸型キャビティ構造に特有の共振特性劣化を回避することができる。
また、本実施形態においては、圧電体膜8にAlNを用いている。AlNは周波数低下型閉じ込め型圧電材料であるため、電極起因のスプリアスは共振周波数以下であり、フィルタ特性に及ぼす影響を最小限にできる。また、電極外部での定在波は、凸型キャビティ構造では上述の通り生じにくいため、共振と反共振の間のスプリアスも非常に小さい。さらに、AlNであれば現状のLSIプロセスで用いている通常のプロセスで作製することができ、実用上特に価値が高い。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態による薄膜圧電共振器を図8を参照して説明する。この実施形態による薄膜圧電共振器は、第1実施形態による薄膜圧電共振器において、基板2上に非晶質金属層5が形成された構成となっている。
基板2上に非晶質金属層5を形成した理由は、良好な結晶性を有する圧電体膜8を形成するためである。そこで、本実施形態においては、薄膜圧電共振器に使用されている圧電体膜8のc軸配向性向上の手段として、非晶質金属層の上に作成される圧電体膜、電極層、犠牲層などが晶癖面で高配向成長を生じる性質を利用する所にある。
本発明者らは、基板からのエピタキシャル成長技術を使用しないで、AlNやZnOなどの六方晶圧電膜が高配向成長する条件について広範囲に理論的および実験的な検討を重ねた結果、基板と圧電体膜の間に非晶質金属層を挟むことで、圧電体膜の配向性が飛躍的に改善することを見出した。
非晶質金属層5を、例えば多結晶金属層に比較すると、多結晶金属の表面は種々の方位を持つ結晶面から構成され、かつ結晶粒に依存した凹凸などが存在することが多いのに対し、非晶質金属層は表面が均一な非晶質で形成されており平坦で一様であるため、AlNやZnOなどの六方晶結晶の持つ本来の晶癖面であるc面に配向して成長しやすく、配向性が向上したものと考えられる。
また、基板表面の下地層や犠牲層として従来使用されるSiOなどの非晶質絶縁層を用いた場合と比較すると、一般に非晶質金属層の表面エネルギが非晶質絶縁層のそれよりも大きく、その上に成長する結晶が層状成長して表面のエネルギを下げようとする性質があるため、さらに配向性が向上するものと考えられる。
なお、圧電体膜8が良好な結晶性を得る必要がある部分は、少なくとも図8の符号16で示す領域に対応する基板2の領域、すなわち、圧電体膜8の平坦部8aから下部電極6と圧電体膜8の平坦部8aが重なる領域を除いた領域下の基板2の領域である。
このような第2実施形態の構造を用いると、空洞12内で下部電極6がある領域とない領域でいずれも圧電体膜8が配向するため、膜強度が向上する。その結果、圧電体膜8の段差部で亀裂が生じたり、中空構造が陥没したりするなどの破壊モードがより発生しにくくなり、安定に中空構造が製造可能な膜応力のマージンが高まり、歩留まりがさらに向上する。また、AlないしAl合金を犠牲層として用いる場合には、犠牲層のエッチャントとして非酸化性の酸を用いることができ、圧電体膜や電極を溶解することがなく、極めて安定な製造プロセスが構築できるので、産業上極めて有用である。
次に、本実施形態による薄膜圧電共振器の製造方法を図8を参照して説明する。まず、図8に示すように、 Si基板2の表面に、例えば、TaとAlの合金からなる非晶質金属層5を形成する。その後、非晶質金属層5上に、RFマグネトロンスパッタ法により膜厚1μmのAlからなる犠牲層(図示せず)を作成し、リソグラフィーおよび塩化物系ガスを使用した反応性イオンエッチング(RIE)により犠牲層のパターニングを行った。
次に、RFマグネトロンスパッタ法により膜厚0.2μmのMoからなる膜を形成し、リソグラフィーおよびフッ化物系ガスを使用したにRIEによりMoからなる膜をパターニングし、下部電極6を形成した。
次に、反応性RFマグネトロンスパッタ法により膜厚1.2μmのAlNからなる膜を形成し、、リソグラフィーおよび塩化物系ガスを使用したRIEによりAlNからなる膜をパターニングし、圧電体膜8を形成した。さらに、RFマグネトロンスパッタ法によりMoからなる膜を形成し、リソグラフィーおよびRIEによりMoからなる膜をパターニングし、上部電極10を形成した。
次に、Al犠牲層を基板上に露出した部分(図には示していない)から、10%の濃度の塩酸を使用して選択エッチングを行い、下部電極6、圧電体膜、上部電極10からなる共振器の下部に空洞12を作成した。塩酸を使用した選択エッチングにより、犠牲層は全て溶解したが、上・下部電極6、10、圧電体膜8、および非晶質金属層5には全く損傷がなく、剥がれなども認められなかった。
以上のプロセスにより作成した薄膜圧電共振器の評価を行なった。図8の符号16で示されている領域は、第1実施形態のような配向した犠牲層を用いない共振器に比べてAlNからなる圧電体膜8の配向性が向上しており、さらに損失の少ない共振特性が期待できる。実際、この共振器の周波数特性の評価を行なったところ、結合定数は6.4%、共振のQ値が1200、反共振のQ値が1100と極めて良好な特性を示した。また、不要なスプリアス振動はほとんど観測されなかった。
なお、AlNからなる圧電体膜8の配向性の測定は、X線回折によって行い、配向半地幅が2度以下であった。
この実施形態も第1実施形態と同様に、凸型キャビティ構造に特有の共振特性劣化を回避することができる。
以上説明したように、本発明の各実施形態によれば、Q値が高く、不要なスプリアス振動が最小限に抑制できる。
なお、ここでは圧電体材料としてLSIプロセスに最も適合性が高いAlNを例にとって本発明の各実施形態について説明を行ったが、圧電体としてはPbTiO(チタン酸鉛)、BaTiO(チタン酸バリウム)など、Lamb波の分散関係が高域遮断型である材料ならいずれであってもよく、AlNに限定されるものではない。
また、非晶質金属層としてここではTaとAlの合金を例にとって説明を行ったが、例えばTiBなど、他の材料であってもよい。また、非晶質下地層上に形成する配向した犠牲層材料としては、Al以外にもAu、Mo、Wなどであってもよく、Alと同様配向性が向上する。従って、非晶質金属層、犠牲層材料ともにここに示した材料に限定されるものではない。
本発明の第1実施形態による薄膜圧電共振器の構成を示す断面図。 本発明の第1実施形態による薄膜圧電共振器の構成を示す平面図。 第1実施形態の薄膜圧電共振器の製造工程断面図。 第1実施形態の薄膜圧電共振器の製造工程断面図。 第1実施形態の薄膜圧電共振器の製造工程断面図。 第1実施形態における第1比較例の構成を示す断面図。 第1実施形態における第2比較例の構成を示す断面図 本発明の第2実施形態による薄膜圧電共振器の構成を示す断面図。
符号の説明
2 Si基板
4 犠牲層
5 非晶質金属層
6 下部電極
8 圧電体膜
8a 平坦部
8b 傾斜部
10 上部電極
12 空洞
12a 本体部
12b 出口部
14 上部電極と下部電極の向かい合う領域

Claims (4)

  1. 平坦な表面をもつ基板と、
    前記基板表面と略平行に空洞を介して対向する平坦部と、前記平坦部を支持する如く前記基板表面まで下降し前記基板表面並びに前記平坦部とともに実質的に前記空洞を形成する傾斜部とを有する圧電体膜と、
    前記平坦部の前記空洞側表面に設けられた下部電極と、
    前記平坦部の前記空洞側表面とは反対側の略平行な表面に設けられ、前記下部電極と前記平坦部を介して向かい合う上部電極と
    を備え、
    前記圧電体膜の前記下部電極および前記上部電極が向かい合う領域は前記平坦部内に制限されており、
    前記向かい合う領域の端は前記平坦部および前記傾斜部間の境からμm以上離れていることを特徴とする薄膜圧電共振器。
  2. 前記圧電体膜が窒化アルミニウムであることを特徴とする請求項1記載の薄膜圧電共振器。
  3. 前記下部電極が前記平坦部に設けられる面積は、前記上部電極が前記平坦部に設けられる面積よりも大きいことを特徴とする請求項1または2記載の薄膜圧電共振器。
  4. 前記下部電極と接していない前記圧電体膜の前記平坦部下には、前記基板表面上に設けられた非晶質金属層が存在することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の薄膜圧電共振器。
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