JP4027684B2 - エンジンの冷却装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンとラジエータとの間で冷却媒体を循環させてエンジンを冷却するエンジンの冷却装置に関し、特に電気的に加熱可能なサーモスタットバルブを備えて上記冷却媒体の循環量を電子制御するエンジンの冷却装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
エンジンとラジエータとの間の冷却媒体(冷却水)の循環量をサーモスタットバルブを用いて制御するエンジンの冷却装置が周知である。このエンジンの冷却装置においては、熱によって膨張可能な部材を用いて構成されるサーモスタットバルブを備え、エンジンの冷却水の温度(冷却水温)に応じて開閉態様が変化する該サーモスタットバルブの開閉動作を通じて、エンジンとラジエータとの間の冷却水の循環量が制御される。
【0003】
また従来は、こうしたエンジンの冷却装置として、例えば特許第2662187号公報に見られるように、上記サーモスタットバルブをヒータによって電気的に加熱することで、冷却水温に応じた開弁量よりも大きな開弁量となるようサーモスタットバルブを電子制御する装置も提案されている。
【0004】
このような冷却装置では、上記冷却水温を目標温度に制御すべく、水温センサにより検出される冷却水温が上記目標温度を超えることに基づいて上記サーモスタットバルブのヒータに対する通電を行うようにしている。これにより、サーモスタットバルブの開弁量が増大され、ひいてはラジエータを通過する冷却水の流量が増加して、目標温度を超えて上昇した冷却水温を速やかに低下させることができるようになる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記冷却装置の場合、冷却水温が目標温度を超えたとき、サーモスタットバルブのヒータに通電を行うことで、目標温度を超えて上昇した冷却水温を低下させることは確かにできる。しかし、このような冷却装置であれ、冷却水温の上昇速度が速い場合には、上記ヒータへの通電を開始したとしても、冷却水温がその許容される温度に達する以前にサーモスタットバルブを開弁させることができない可能性がある。そして、このようにサーモスタットバルブに作動遅れが生じるような場合には、これに起因して冷却水温がその許容される温度に対してオーバーシュートするようになり、エンジン本体や関連部品の熱劣化を早め、信頼性の悪化を招くようになる。
【0006】
また、上記冷却水温が許容温度に対してオーバーシュートする問題を回避するためには、目標温度自体を低温側に設定することも考えられるが、この場合には、エンジンのフリクションの増加や燃費の悪化につながるおそれがある。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、電気的に加熱可能なサーモスタットバルブを備えて冷却媒体の循環量を電子制御するに際して、冷却媒体の温度の過度の上昇を好適に回避することのできるエンジンの冷却装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1記載の発明は、エンジンを冷却する冷却媒体の温度に応じて開弁量が変化し、前記エンジンとラジエータとの間を循環する冷却媒体の循環量を制御するサーモスタットバルブと、該サーモスタットバルブを加熱してその開弁量を更に強制制御する加熱制御手段とを備えて前記冷却媒体の温度を目標温度領域に制御するエンジンの冷却装置において、前記加熱制御手段は、前記冷却媒体の温度の上昇態様を求め、該求めた温度の上昇態様と前記冷却媒体の温度とに基づいて前記サーモスタットバルブに対する加熱を開始するとともに、前記冷却媒体の温度の上昇態様を、同冷却媒体の温度についての所定の周期毎の検出値を用いて算出される温度勾配として認識し、更に前記温度勾配を算出するための所定の周期を前記エンジンの運転条件及び運転環境の少なくとも一方に基づいて可変とすることをその要旨とする。
【0009】
上記構成では、冷却媒体の温度の上昇態様と冷却媒体の温度とに基づいてサーモスタットバルブに対する加熱が開始される。このため、冷却媒体の温度の上昇速度が速いときには、早めにサーモスタットバルブに対する加熱を開始することができ、冷却媒体の温度が目標温度領域を超えて過度に上昇することを回避することができるようになる。
【0010】
また、例えば冷却媒体の温度の上昇速度が遅い場合には加熱開始を遅らせることでフリクションの増加や燃費の悪化を好適に抑制することもできる。このように、冷却媒体の温度の上昇速度が速いほど加熱を開始する冷却媒体の温度を低温側とするなどすることで、状況に応じた適切な温度制御を行うこともできる。
また上記構成では、前記加熱制御手段は、前記冷却媒体の温度の上昇態様を、同冷却媒体の温度についての所定の周期毎の検出値を用いて算出される温度勾配として認識するようにしている。そしてこれにより、冷却媒体の温度の上昇態様を簡易に把握することができるようになる。なお、ここで温度勾配とは、温度の検出値の一階差分値によって得られる値若しくは同差分値と同等の情報を有する値を意味する。換言すれば、温度変化の線形近似値(実際に線形な変化をする場合もこれを「近似」という)を意味する。したがって、これには例えば上記所定の周期だけ時間的に離れた2つの検出値の比なども含まれるものとする。
ところで冷却媒体の温度の上昇態様を、冷却媒体の温度についての所定の周期毎の検出値を用いて算出される温度勾配として認識する場合、この冷却媒体の温度の検出値が量子化されることに起因して、上記温度勾配の精度が上記所定の周期の設定の仕方に依存する。また、冷却媒体の温度を検出する手段が何らかの理由で所定以下の温度変化については信頼性に乏しいものとなることに起因して、上記温度勾配の精度が上記所定の周期の設定の仕方に依存することもある。
例えば水温の検出値が水温センサの出力値をA/D変換することで得られるものである場合、その分解能の範囲で、また、サンプリング周期によって量子化される。したがって、この量子化された検出値を用いて冷却媒体の温度勾配を算出する場合、この算出される温度勾配に付与される量子化誤差は、これを算出するために用いる上記所定の周期に依存する。
そして、この所定の周期に基づいて算出される温度勾配の算出精度は、冷却媒体の上昇速度が遅いほど低くなり、また、温度勾配の算出精度は、所定の周期が長いほど高いものとなる。一方、温度勾配の算出精度を高めるべく所定の周期を長くするほど、算出される温度勾配に基づいてサーモスタットバルブに対する加熱を行うタイミングが遅くなることがある。したがって、実際の冷却媒体の温度の上昇速度が速い場合ほど、冷却媒体の温度の過度の上昇を回避し難くなる。
ここで、上記構成では、温度勾配を算出するための所定の周期を、エンジンの運転条件及び運転環境の少なくとも一方に基づいて可変とする。このエンジンの運転条件や運転環境は冷却媒体の温度の上昇態様の指標となるため、この指標に基づいて所定の周期を適切な値に可変設定することができる。すなわち、上記指標から温度の上昇速度が速いと判断されるほど、所定の周期を短く設定することができる。したがって、上記構成によれば、算出される冷却媒体の温度勾配の精度の確保と温度勾配の算出の迅速化との好適な両立を図ることができる。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記目標温度領域が、前記エンジンの負荷が所定以下となる運転条件下において、前記サーモスタットバルブの前記冷却媒体の温度に応じた開弁量によって制御される同冷却媒体の温度領域に対応して設定されることをその要旨とする。
【0012】
上記構成では、エンジンの負荷が所定以下となる運転条件下において、サーモスタットバルブの冷却媒体の温度に応じた開弁量によって制御される同冷却媒体の温度領域に対応して当該エンジンの冷却装置によって制御される冷却媒体の温度の目標温度領域が設定される。したがって、この運転条件下においては、基本的には、サーモスタットバルブの加熱が行われず、冷却媒体の温度に応じた開弁制御によって冷却媒体の温度が目標温度領域に制御される。
【0013】
しかし、こうした冷却媒体の温度に応じたサーモスタットバルブの開弁制御によっては、冷却媒体の温度が上記目標温度領域を超えて上昇することがある。この点、上記構成では、この所定の運転条件下においても冷却媒体の温度の上昇態様と冷却媒体の温度とに基づいて加熱手段による加熱が開始されるために、冷却媒体の温度が目標温度領域を超えて過度に上昇することを回避することができる。
【0015】
なお、ここで温度勾配とは、温度の検出値の一階差分値によって得られる値若しくは同差分値と同等の情報を有する値を意味する。換言すれば、温度変化の線形近似値(実際に線形な変化をする場合もこれを「近似」という)を意味する。したがって、これには例えば上記所定の周期だけ時間的に離れた2つの検出値の比なども含まれるものとする。
【0021】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記冷却媒体は、前記エンジンの出力軸から供給される動力に基づいて循環されるものであり、前記温度勾配を算出するための所定の周期は、同エンジンの回転速度が速いほど短く設定されることをその要旨とする。
【0022】
冷却媒体の温度の上昇速度は、ラジエータとエンジンとの間を循環する冷却媒体の流速に依存する。そして、冷却媒体がエンジンの出力軸から供給される動力に基づいて循環される場合には、上記冷却媒体の流速は、エンジンの回転速度が速いほど速くなる。
【0023】
この点、上記構成では、エンジンの回転速度が速いほど所定の周期を短くすることで、算出される冷却媒体の温度勾配の精度の確保と温度勾配の算出の迅速化との好適な両立を図ることができる。
【0024】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明において、前記温度勾配を算出するための所定の周期は、同冷却媒体との間で熱交換される媒体の温度が高いほど短く設定されることをその要旨とする。
【0025】
冷却媒体の温度の上昇速度は、この冷却媒体との間で熱交換される媒体の温度が高いほど大きくなる。
この点、上記構成では、冷却媒体との間で熱交換される媒体の温度が高いほど所定の周期を短くすることで、算出される冷却媒体の温度勾配の精度の確保と温度勾配の算出の迅速化との好適な両立を図ることができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかるエンジンの冷却装置を有段の自動変速機の設けられた車両に搭載されるガソリンエンジンの冷却装置に適用した第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0027】
図1に、本実施形態にかかるエンジンの冷却装置の全体構成を示す。本実施形態におけるエンジン2の出力は、トルクコンバータ4を介して遊星歯車機構6に取り込まれ、ここで所定の変速を受ける。これらトルクコンバータ4及び遊星歯車機構6内で用いられる作動油(ATF:Automatic Transmission Fluid)は、ATFウォーマ7に吸入されるとともにここで調温された後、同トルクコンバータ4や遊星歯車機構6に戻される。なお、これらトルクコンバータ4及び、遊星歯車機構6、及びATFウォーマ7を備えて自動変速機が構成されている。
【0028】
一方、本実施形態にかかるエンジンの冷却装置は、エンジン2のシリンダブロックやシリンダヘッドに形成された冷却水配管に冷却水を流通させることで、エンジン2の冷却を行うものである。また、このエンジンの冷却装置では、上記自動変速機にて用いられる作動油の温度の調整をも併せ行う。
【0029】
同図1に示すように、このエンジンの冷却装置においては、エンジン2から流出される冷却水は、出口通路8を介してウォーマ調温通路9、冷却通路10、バイパス通路(メインバイパス通路20、サブバイパス通路22)に流出する。ここで、ウォーマ調温通路9は上記ATFウォーマ7の付近を巡回することで、同ウォーマ調温通路9内の冷却水とATFウォーマ7内の作動油との熱交換を行うものである。これにより、ATFウォーマ7内の作動油の温度が調整される。
【0030】
一方、冷却通路10には、冷却水を冷却するラジエータ12が設けられている。また、上記ラジエータ12を介した冷却通路10内の冷却水とバイパス通路20、22内の冷却水とは、電子制御式の電子サーモスタット30に流入する。そして、この電子サーモスタット30から流出する冷却水は入口通路40を介してエンジン2に供給される。上記入口通路40には、冷却水を強制的に流動させるウォータポンプ42が備えられている。このウォータポンプ42は、エンジン2の動力によって、すなわちエンジン2の出力軸を介して駆動される。
【0031】
ここで、電子サーモスタット30は、ラジエータ12を通過して流入する冷却通路10内の冷却水とバイパス通路20内の冷却水とが上記入口通路40へ流出する流量を制御するものである。図2に、この電子サーモスタット30の構成を示す。
【0032】
この電子サーモスタット30は、上記ラジエータ12を通過して流入する冷却通路10内の冷却水と、メインバイパス通路20を介して流入する冷却水とが上記入口通路40へ流出する流量を制御するワックス式の制御弁(サーモスタットバルブ)を備えている。この制御弁は、温度に応じて圧縮及び膨張するワックスを利用することで、エンジン2の上記シリンダブロック等を循環した冷却水の水温に応じてその弁体が機械的に開閉するものである。更に、この電子サーモスタットは、この制御弁のワックスを電気的に加熱することでその開弁量を電子制御するものである。
【0033】
同図2に示すように、この電子サーモスタット30は、上記冷却通路10と連結する第1入力ポート30a、上記メインバイパス通路20と連結する第2入力ポート30b、上記サブバイパス通路22と連結する第3入力ポート30c、及び、上記入口通路40と連結する出力ポート30dを備えている。そして、上記制御弁の弁体として、第1入力ポート30a及び出力ポート30d間の流路面積を制御する弁体31と、第2入力ポート30b及び出力ポート30d間の流路面積を制御する弁体32を備えている。これら弁体31及び弁体32は、弁軸33に連結されており、これにより、弁体31及び弁体32は一体的に動作する。
【0034】
また、上記制御弁は、上記ワックスの充填された感温部34を備えており、この感温部34内のワックスが膨張することで、上記弁軸33を付勢するようになっている。すなわち、感温部34内のワックスが膨張すると、弁体31が開弁方向に、また弁体32が閉弁方向に付勢される。換言すれば、感温部34内のワックスが膨張することで、冷却通路10及び入口通路40間の流路面積が拡大され、またメインバイパス通路20及び入口通路40間の流路面積が縮小される。そして、弁体31が全開となることで冷却通路10及び入口通路40間の流路面積が最大となったときに、弁体32が閉弁してメインバイパス通路20及び入口通路40間の流路面積が「0」となる。なお、上記弁体31及び弁体32は、スプリング35によって弁体31の閉弁方向へ付勢されている。
【0035】
上記感温部34は、サブバイパス通路22から流入した冷却水の温度に応じて圧縮及び膨張するように配置されている。すなわち、サブバイパス通路22から流入した冷却水がウォータポンプ42へと流出する際に通過する流通通路に接して配置されている。これにより、エンジン2を冷却する冷却水の温度が高いときには、感温部34がサブバイパス通路22からの冷却水によって温められるために、弁体31が開弁し弁体32が閉弁する。一方、エンジン2を冷却する冷却水の温度が低いときには、感温部34がサブバイパス通路22からの冷却水によって冷やされるために、弁体31が閉弁し弁体32が開弁する。
【0036】
この電子サーモスタット30は、更に上記感温部34を電気的に加熱するPTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータ36を備えている。そして、このPTCヒータ36への通電制御によって、サブバイパス通路22からの冷却水の温度に応じた弁体31、32の機械的な開閉制御とは別に、弁体31、32の開閉を電子制御する。
【0037】
なお、本明細書においては、特に断りのない限り、冷却通路10及び入口通路40間の流路面積にかかる弁体31の開閉状態を電子サーモスタット30の開閉状態と定義する。
【0038】
更に、本実施形態にかかるエンジンの冷却装置は、先の図1に示すように、上記エンジン2や、遊星歯車機構6、電子サーモスタット30を制御する電子制御装置50を備えている。この電子制御装置50は、マイクロコンピュータ51と、同マイクロコンピュータ51と外部との間での信号の授受を仲介するインターフェース52とを備えている。ここで、マイクロコンピュータ51は、各種演算を行う中央処理装置(CPU)51aと、同中央処理装置51aにおいて行われる演算プログラム等が格納されるメモリ51bとを備えている。
【0039】
この電子制御装置50においては、各種センサの検出結果がインターフェース52を介してマイクロコンピュータ51に取り込まれ、ここで所定の演算が施された後、上記インターフェース52を介して制御信号が出力される。例えば上記トルクコンバータ4内の作動油の温度を検出するトルクコンバータ油温センサ60の出力等に基づいて所定の演算が施されることで上記遊星歯車機構6が制御される。
【0040】
また、この電子制御装置50では、エンジン2の運転状態に基づいて電子サーモスタット30を制御する。詳しくは、本実施形態では、同図1に示すように、エンジン2の出力軸の回転速度を検出する回転速度センサ61とエンジン2に吸入される空気量を検出するエアフローメータ62とを備えている。そして、図3に示すように、エアフローメータ62の検出値である吸入空気量(エンジン負荷Q)とエンジン2の出力軸の回転速度NEとに基づいて電子サーモスタット30の通電制御を行う。すなわち、本実施形態では、エンジン負荷Q及びエンジン回転速度NEによって定まる所定の運転条件下においては電子サーモスタット30を機械的に制御し、それ以外の運転条件下においては電子サーモスタット30への通電、より具体的にはPTCヒータ36への通電を行うよう設定がなされている。
【0041】
これは、エンジン2のフリクションの低減及び燃費の向上とエンジン2の動力性能の向上との両立を図るべく行われる。すなわち、制御目標とする冷却水の水温領域である目標温度領域を、上記所定の運転条件下においては高めに設定することでエンジン2のフリクションを低減し、ひいては燃費の向上を図る。また、それ以外の運転領域においては電子サーモスタット30への通電を行うことで上記目標温度領域を上記所定の条件下におけるものよりも低めに設定し、エンジン2の動力性能の向上を図る。ここで、通電を行う領域は、エンジン2の負荷Qが所定値以上となる領域とする。そして、この通電を行う所定値は、エンジン回転速度NEによって可変設定する。
【0042】
このように、電子サーモスタット30の通電を行うことで、図4に示すように電子サーモスタット30が開弁するエンジン冷却水温が低温側にシフトする。ちなみに、上記感温部34内のワックスの膨張に基づく電子サーモスタット30の機械的な開弁は、この開弁量が全開及び全閉の間の所定の開度領域Δθとなる冷却水温領域が、上記エンジン2の所定の運転条件下における目標温度領域1となるように設定されている。そして、通電を行うことで、所定の開度領域Δθとなる冷却水温領域が低温側に、すなわち、目標温度領域2にシフトする。
【0043】
ここで、図5に基づいて本実施形態における電子サーモスタット30の通電制御について更に説明する。
図5は、同制御にかかる処理手順を示すフローチャートである。この処理は、上記電子制御装置50のメモリ51b内に格納されたプログラムが中央処理装置51aによって実行されることで行われる。また、この処理は、例えば所定の処理周期で繰り返し実行される。
【0044】
この一連の処理においては、まず、ステップ100において、上記回転速度センサ61及びエアフローメータ62の出力値に基づいたエンジン回転速度NE及びエンジン負荷Qを読み込む。そして、ステップ110において、電子サーモスタットの通電条件が成立したか否かを判断する。この判断は、上記読み込まれたエンジン回転速度NE及びエンジン負荷Qが、先の図3に示した電子サーモスタットの通電領域にあるか否かの判断である。
【0045】
そして、ステップ110において、電子サーモスタットの通電条件が成立していると判断されると、ステップ120において上記PTCヒータ36への通電を行う。一方、ステップ110において、電子サーモスタットの通電条件が成立していないと判断されると、上記PTCヒータ36を非通電状態とする(ステップ130)。なお、これらステップ120、130の後、このフローチャートに示す一連の処理を一旦終了する。
【0046】
このように、エンジン2の運転状態に応じて電子サーモスタット30の通電及び非通電の切替を行うことで、エンジン2のフリクションの低減及び燃費の向上とエンジン2の動力性能の向上との両立を図る。ただし、先の図3に示す電子サーモスタット30の機械的制御領域において、同電子サーモスタット30の機械的な開弁動作では冷却水の冷却が間に合わず、冷却水温が上記目標温度領域1を超えて上昇することがある。これに対し、冷却水温が上記目標温度領域1を超えることで電子サーモスタット30を通電するようにした場合には、冷却水温の過度の上昇を回避できないおそれがあることについては上述したとおりである。
【0047】
そこで本実施形態では、先の図5に示した通電制御に加えて、冷却水の温度勾配と冷却水温とに基づいて通電制御を行う。そして、この冷却水温を検出すべく、本実施形態では、先の図1に示すように、エンジン出口通路8近傍の冷却水温を検出する水温センサ63を備える。なお、この水温センサ63の出力値は、インターフェース52内のA/Dコンバータ52aによって、アナログ値からディジタル値に変換され、このディジタル化された水温THWがマイクロコンピュータ51によって処理される。
【0048】
ここで、本実施形態にかかる冷却水温THWの勾配と冷却水温THWとに基づく通電制御手順について図6に基づいて更に説明する。
図6は、上記通電制御にかかる処理手順を示すフローチャートである。この処理は、上記電子制御装置50のメモリ51b内に格納されたプログラムが中央処理装置51aによって実行されることで行われる。また、この処理は、例えば所定の処理周期で繰り返し実行される。
【0049】
この一連の処理においては、まずステップ200において、上記冷却水温THWを読み込む。そして、ステップ210において、上記ステップ200において上記処理周期毎に読み込まれる冷却水温THWに基づいて上記冷却水の温度勾配としての冷却水温THWの変化量(一階差分値)DLTHWを算出する。この変化量の算出は、上記処理周期毎に読み込まれる冷却水温THWのデータ列を上記電子制御装置50内のメモリ51bにラッチするとともに、これらデータ列の中から上記所定の算出周期Cに対応する2つの値を用いて行う。これは、例えば上記算出周期Cをこの一連の処理の周期に一致させることで、前回読み込まれた値と今回読み込んだ値とを用いて行えばよい。また、例えば算出周期Cを処理周期Tの整数(n)倍と設定して、今回読み込んだ冷却水温THWと、T×n処理周期前に読み込まれた冷却水温THWとを用いて行ってもよい。
【0050】
こうして冷却水温THWの変化量DLTHWが算出されると、ステップ220において、エンジン冷却水温THWが所定の閾値αよりも大きいか否かを判断する。そして、エンジン冷却水温THWが所定の閾値αよりも大きいと判断されると、ステップ230において上記PTCヒータ36を通電する。
【0051】
一方、ステップ220においてエンジン冷却水温THWが所定の閾値α以下であると判断されると、ステップ240に移行する。このステップ240では、エンジン冷却水温THWが所定の閾値βより大きく、且つ上記冷却水温THWの変化量DLTHWが所定の閾値γよりも大きいか否かを判断する。ここで、所定の閾値βは、上記所定の閾値αよりも低温側に設定される。また、上記所定の閾値γは、冷却水温THWが所定の閾値βより大きいときにおいて、変化量DLTHWがこの閾値γより大きいときには通電を開始しなければ冷却水温THWの過度の上昇が避けられない値に設定される。なお、ここで過度の上昇とは、上記目標温度領域1の上限値よりも所定以上高い温度である水温上限値を超えて上昇することとする。
【0052】
そして、ステップ240において、エンジン冷却水温THWが所定の閾値βより大きく、且つ上記冷却水温THWの変化量DLTHWが所定の閾値γよりも大きいと判断されると、上記ステップ230に移行する。これに対し、エンジン冷却水温THWが所定の閾値β以下であるか、上記冷却水温THWの変化量DLTHWが所定の閾値γ以下であると判断されると、上記PTCヒータ36を非通電状態とする(ステップ250)。
【0053】
なお、これらステップ230、250の後、このフローチャートに示す一連の処理を一旦終了する。
図7に、この通電制御に際してのエンジン冷却水温THWの推移を示す。図7(a)に示すように、ケース1では、時刻t2において冷却水温THWが閾値αを超える時刻t2に、上記電子サーモスタット30への通電が開始される。これにより、冷却水温THWは速やかに低下していく。
【0054】
一方、ケース2では冷却水温THWの上昇速度が速いために、冷却水温THWが閾値βを超えるとともに、上記変化量DLTHWが上記閾値γを超える時刻t1に、上記電子サーモスタット30への通電が開始される。これにより、冷却水温THWは上記水温上限値を超えることなく低下していく。
【0055】
これに対し、冷却水温THWが閾値αを超えた場合にのみ通電を行う場合を図7(b)に示す。この場合、冷却水温THWの上昇速度が速いケース2では、冷却水温THWが閾値αを超える時刻t1’(>t1)に通電を開始しても、冷却水温THWが上記水温上限値を超えて上昇することとなる。
【0056】
以上説明した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)冷却水温THWの上昇速度(変化量DLTHW)が閾値γ以下であるときには、冷却水温THWが閾値αより大きいときに電子サーモスタット30の通電を行った。そして、冷却水温THWの上昇速度(変化量DLTHW)が閾値γより大きいときには、冷却水温THWが閾値β(<α)より大きいときに電子サーモスタット30の通電を行った。このため、冷却水温THWの温度の上昇速度が速いときには、(遅いときと比較して)早めに通電を開始することができ、ひいては、冷却水温THWの温度が目標温度領域を超えて過度に上昇することを回避することができるようになる。また、冷却水温THWの上昇速度が遅い場合には(速いときと比較して)通電を遅らせることで燃費の向上を図ることもできる。
【0057】
(2)エンジン負荷Qが所定以上の運転条件下では、同エンジン負荷Qが所定以下の運転条件下におけるよりも冷却水温THWの目標温度領域を低く設定した。これにより、エンジン負荷Qが所定以上の運転条件下においてエンジン2の動力性能を好適に高めることができるとともに、エンジン負荷Qが所定以下の運転条件下においてはエンジン2のフリクションの低減や燃費の向上を図ることもできる。
【0058】
(第2の実施形態)
以下、本発明にかかるエンジンの冷却装置を有段の自動変速機の設けられた車両に搭載されるガソリンエンジンの冷却装置に適用した第2の実施形態について上記第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0059】
上記実施形態では、冷却水温の勾配として、冷却水温THWの所定の算出周期C毎の値を用いて変化量DLTHWを算出した。この場合、この冷却水温THWが実際の冷却水温の量子化されたものであることに起因して、上記変化量DLTHWの精度が上記所定の算出周期Cの設定の仕方に依存することがある。
【0060】
すなわち、上記実施形態の場合、検出される冷却水温THWが水温センサ63の出力値をA/Dコンバータ52aによってディジタル化することで得られるものであるため、この冷却水温THWはA/Dコンバータ52aによって量子化される。そして、この量子化された冷却水温THWを用いて算出される変化量DLTHWに付与される量子化誤差は、これを算出するために用いる上記所定の算出周期Cに依存する。以下、これについて図8を用いて説明する。
【0061】
図8(a)は、実際の冷却水温の推移例を、また、図8(b)は、同実際の水温がA/Dコンバータ52aによって量子化された信号である冷却水温THWの推移を示す。同図8(b)に示すように、この冷却水温THWは、量子化された最小単位(LSB)毎に段階的に変化する。ここで、例えば、ケースaの冷却水温の上昇速度以上ときに上記閾値γよりも大きいと判断する場合、上記所定の算出周期Cをこのケースaにおいて冷却水温THWが量子化された最小単位の2倍だけ変化する時間LT以上に設定する。すなわち、例えば冷却水温THWが量子化された最小単位の2倍だけ変化するのを検出する場合には、上記所定の算出周期Cを上記時間LTに設定する。こうすることで、先の図6に示した一連の処理の処理周期Tを時間LTよりも十分小さくするなら、ケースaの冷却水温の上昇速度以上の上昇速度を検出することができる。
【0062】
ただし、ケースaよりも上昇速度の速いケースbの場合には、算出周期Cとして上記時間LTを用いる際には、冷却水温THWの必要以上(ここでは最小単位の4倍)の変化が検出されることとなる。すなわち、このケースbの場合、上記所定の算出周期Cとして上記時間LTよりも短い時間を採用したとしても冷却水温THWの必要な変化を検出することができる。しかも冷却水温の上昇速度が速いほど冷却水温の過度の上昇が生じやすいために、上記上昇速度の迅速な検出及び制御が望まれる。
【0063】
そこで、本実施形態では、上記冷却水温THWの勾配(変化量DLTHW)を算出する際に用いる上記所定の算出周期Cを、エンジン2の回転速度が速いほど短く設定する。そして、これにより、算出される冷却水の温度勾配の精度の確保と温度勾配の算出の迅速化との好適な両立を図る。すなわち、冷却水温の上昇は、エンジン2とラジエータ12との間で循環する冷却水の流速に依存する。そして、この冷却水の流速は、エンジン2の出力軸から動力を供給される上記ウォータポンプ42の駆動能力に依存している。したがって、この冷却水の流速は、エンジン2の回転速度に略比例したものとなる。このため、エンジン2の回転速度が速いほど算出周期Cを短くすることで、冷却水の温度勾配の精度の確保と温度勾配の算出の迅速化との好適な両立を図ることができる。
【0064】
具体的には、エンジン2の回転速度と算出周期Cとの関係を定めた図9に例示するマップを用いる。このマップにおいては、算出周期Cを、冷却水温THWの勾配(変化量DLTHW)に基づいた通電制御の所望される勾配のうち最小のものにおいて冷却水温THWが量子化の最小単位の2倍だけ変化するのに要する時間の最小値(先の図8のLT)に設定する。なお、このマップの設定に際しては、エンジン2の回転速度に対して予想される冷却水温の上昇態様が参照される。
【0065】
ここで、本実施形態にかかる冷却水温THWの勾配と冷却水温THWとに基づく通電制御手順について図10に基づいて更に説明する。
図10は、上記通電制御にかかる処理手順を示すフローチャートである。この処理は、上記電子制御装置50のメモリ51b内に格納されたプログラムが中央処理装置51aによって実行されることで行われる。また、この処理は、例えば所定の処理周期で繰り返し実行される。
【0066】
この一連の処理においては、まずステップ300において、上記水温センサ63の出力に基づく冷却水温THWと、上記回転速度センサ61の出力に基づく回転速度NEとを読み込む。そして、ステップ310において、読み込まれた回転速度NEに基づいて、先の図9に示すマップから算出周期Cを演算する。
【0067】
そして、ステップ320において、このマップ演算された算出周期Cに基づいて冷却水温THWの変化量(一階差分値)DLTHWを算出する。この変化量の算出は、上記処理周期毎に読み込まれる冷却水温THWのデータ列を上記電子制御装置50内のメモリ51bにラッチするとともに、これらデータ列の中から上記所定の算出周期C毎に対応する2つの値を用いて行う。これは、例えば算出周期Cを処理周期Tの整数(n)倍と設定して、今回読み込んだ冷却水温THWと、T×n処理周期前に読み込まれた冷却水温THWとを用いて行う。
【0068】
こうして変化量DLTHWが算出されると、ステップ330において、先の図6のステップ220と同様、冷却水温THWが所定の閾値αよりも高いか否かを判断する。そして、冷却水温THWが所定の閾値αよりも高い場合には、ステップ340において、先の図6のステップ230と同様の処理を行う。また、冷却水温THWが所定の閾値α以下である場合には、ステップ350において、先の図6のステップ240と同様、エンジン冷却水温THWが所定の閾値βより大きく、且つ上記冷却水温THWの変化量DLTHWが所定の閾値γよりも大きいか否かを判断する。そして、この判断に応じて、先の図6のステップ230、250に対応したステップ340、360の処理を行う。なお、これらステップ340又はステップ360の処理の後、このフローチャートに示す一連の処理を一旦終了する。
【0069】
以上説明した本実施形態によれば、先の第1の実施形態の上記(1)及び(2)の効果に加えて、更に以下の効果が得られるようになる。
(3)上記冷却水温THWの勾配(変化量DLTHW)を算出する際に用いる上記所定の算出周期Cを、エンジン2の回転速度が速いほど短く設定した。これにより、算出される冷却水の温度勾配の精度の確保と温度勾配の算出の迅速化との好適な両立を図ることができる。
【0070】
(第3の実施形態)
以下、本発明にかかるエンジンの冷却装置を有段の自動変速機の設けられた車両に搭載されるガソリンエンジンの冷却装置に適用した第3の実施形態について上記第2の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0071】
上記実施形態では、上記変化量DLTHWの精度が上記所定の算出周期Cの設定の仕方に依存することを考慮して、冷却水温THWの勾配(変化量DLTHW)を算出する際に用いる上記所定の算出周期Cを、エンジン2の回転速度が速いほど短く設定した。
【0072】
これに対し、本実施形態では、更に、冷却水との間で熱交換される媒体としての上記自動変速機の作動油の温度が高いほど、算出周期Cを短く設定する。すなわち、先の図1に示したように、冷却水は、ウォーマ調温通路9を通じてATFウォーマ7内の作動油との間で熱交換がなされる。したがって、このATFウォーマ7内の作動油の温度が高いほど冷却水温は上昇しやすい。そこで、本実施形態では、自動変速機の油温が高いほど算出周期Cを短くすることで、冷却水の温度勾配の精度の確保と温度勾配の算出の迅速化との好適な両立を図る。なお、この自動変速機の作動油の温度としては、上記トルクコンバータ油温センサ60によって検出されるトルクコンバータ4内の油温を用いる。
【0073】
具体的には、エンジン2の回転速度及びトルクコンバータ4内の油温と算出周期Cとの関係を定めた図11に例示すマップを備える。このマップにおいては、算出周期Cを、冷却水温THWの勾配(変化量DLTHW)に基づいた通電制御の所望される勾配のうち最小のものにおいて冷却水温THWが量子化の最小単位の2倍だけ変化するのに要する時間の最小値(先の図8のLT)に設定する。なお、このマップの設定に際しては、エンジン2の回転速度及びトルクコンバータ4内の油温に対して予想される冷却水温の上昇態様が参照される。
【0074】
ここで、本実施形態にかかる冷却水温THWの勾配と冷却水温THWとに基づく通電制御手順について図12に基づいて更に説明する。
図12は、上記通電制御にかかる処理手順を示すフローチャートである。この処理は、上記電子制御装置50のメモリ51b内に格納されたプログラムが中央処理装置51aによって実行されることで行われる。また、この処理は、例えば所定の処理周期で繰り返し実行される。
【0075】
この一連の処理においては、まずステップ400において、上記水温センサ63の出力に基づく冷却水温THWと、上記回転速度センサ61の出力に基づく回転速度NEと、上記トルクコンバータ油温センサ60の出力に基づくトルクコンバータ油温THOとを読み込む。そして、ステップ410において、読み込まれた回転速度NEとトルクコンバータ油温THOとに基づいて、先の図11に示すマップから算出周期Cを演算する。
【0076】
そして、ステップ420において、このマップ演算された算出周期Cに基づいて、先の図10のステップ320同様、冷却水温THWの変化量DLTHWを算出する。更に、ステップ430において、先の図10のステップ330同様、冷却水温THWが所定の閾値αよりも高いか否かを判断する。そして、冷却水温THWが所定の閾値αよりも高い場合には、ステップ440において、先の図10のステップ330と同様の処理を行う。また、冷却水温THWが所定の閾値α以下である場合には、ステップ450において、先の図10のステップ350と同様、エンジン冷却水温THWが所定の閾値βより大きく、且つ上記冷却水温THWの変化量DLTHWが所定の閾値γよりも大きいか否かを判断する。そして、この判断に応じて、先の図10のステップ340、360に対応したステップ440、460の処理を行う。なお、これらステップ440又はステップ460の処理の後、このフローチャートに示す一連の処理を一旦終了する。
【0077】
以上説明した本実施形態によれば、先の第1の実施形態の上記(1)及び(2)の効果、並びに先の第2の実施形態の上記(3)の効果に加えて、更に以下の効果が得られるようになる。
【0078】
(4)上記冷却水温THWの勾配(変化量DLTHW)を算出する際に用いる上記所定の算出周期Cを、トルクコンバータ油温THOが高いほど短く設定した。これにより、算出される冷却水の温度勾配の精度の確保と温度勾配の算出の迅速化とのいっそう好適な両立を図ることができる。
【0079】
なお、本各実施形態は以下のように変更して実施してもよい。
・上記第2及び第3の実施形態では、A/Dコンバータ52aにおけるディジタル化にかかる量子化に起因する上昇速度の検出の遅れに対処したが、これに限らない。例えば、A/Dコンバータ52aのサンプリング周期に起因する上昇速度の検出の遅れや、水温センサ63の出力精度に起因する上昇速度の検出の遅れなどに対処するために上記各実施形態を適用することも有効である。
【0080】
・算出周期Cの設定としては、図9や図11のマップに例示したものに限らない。換言すれば、算出周期Cを、冷却水温THWの勾配(変化量DLTHW)に基づいた通電制御の所望される勾配のうち最小のものにおいて冷却水温THWが量子化の最小単位の2倍だけ変化するのに要する時間の最小値(先の図8のLT)に設定するものに限らない。例えば、冷却水温THWの勾配(変化量DLTHW)に基づいた通電制御の所望される勾配のうち最小のものにおいて冷却水温THWが量子化の最小単位の所定数倍だけ変化するのに要する時間の最小値を算出周期Cとして設定してよい。この所定数は、例えば、A/Dコンバータの量子化の最小単位が小さい場合にあっては、ノイズ等の影響を考慮して冷却水温THWの変化量として信頼性のある変化量に対応して設定するなどしてもよい。
【0081】
・自動変速機の油温の把握については、上記トルクコンバータ内の油温に基づくものに限らない。
・ATFウォーマを備えていなくても、例えば自動変速機で用いる作動油(ATF)を冷却すべく、冷却水を冷却するラジエータに作動油を循環させるなどする場合においても、自動変速機の油温に基づく上記算出周期の可変設定は有効である。
【0082】
・冷却水との間で熱交換される媒体としては、自動変速機の作動油に限らない。
・所定の算出周期C(所定の周期)を可変設定するために用いるパラメータとしては、上記第2及び第3の実施形態で例示したものに限らない。例えばウォータポンプ42がエンジン2から動力が供給されるものでなく、電動式のものである場合には、自動変速機の油温にのみ基づいて上記可変設定を行ってもよい。また、電動式ウォータポンプの駆動力が可変設定される場合には、この駆動力をエンジンの運転状態に関するパラメータとしてこれを用いて算出周期を可変設定してもよい。
【0083】
更に、外気温が高いほど冷却水温が上昇しやすいことを考慮して、この外気温をエンジンの運転環境に関するパラメータとしてこれを用いて算出周期を可変設定してもよい。要は、温度の上昇速度に影響を与えるエンジンの運転状態や運転環境に基づいて算出周期を可変設定すればよい。
【0084】
・本発明の適用可能なエンジンの冷却装置の行う目標温度領域への制御としては、上記各実施形態に例示したものに限られない。例えば特許第266187号公報のように、エンジンの運転状態や運転環境に応じて目標温度が可変設定されるようなエンジンの冷却装置に本発明を適用することもできる。すなわち、この場合、例えばエンジンの運転状態や運転環境に応じて設定される目標温度毎に、同目標温度よりも低い所定の閾値をそれぞれ設定し、冷却水温の上昇勾配が所定値以上であって且つ冷却水温が上記所定の閾値以上であるときに、通電を行うようにしてもよい。これにより、冷却水温が目標温度を過度に超えて上昇することを回避することが、換言すれば、冷却水温を目標温度領域に制御することができるようになる。
【0085】
・エンジンの冷却装置としては、電子サーモスタットの通電制御を、上記エンジン負荷及びエンジン回転速度に基づいて行うものに限らない。エンジンの運転状態やエンジンの運転環境に基づいて通電制御を行うものであればよい。
【0086】
・電子制御装置の構成としては、上記各実施形態で例示したものに限らない。例えば、上記各実施形態で例示した処理をソフトウェア処理する代わりに、この処理を行うためのハードウェアを備えるものであってもよい。
【0087】
・冷却水温の勾配と冷却水温とに基づく通電制御については、上記各実施形態及びその変形例で示したものに限らない。例えば、冷却水温の勾配が大きいほど、通電を開始する冷却水温を略連続的に低下させていってもよい。
【0088】
・冷却水の温度勾配と冷却水温とに基づいて通電制御をする代わりに、冷却水温値の2階差分値に基づいて通電を開始する冷却水温を可変設定するなど、冷却水温の上昇態様に基づいて通電を開始する冷却水温を可変設定するものであってもよい。
【0089】
・電子サーモスタットにおいて、温度に応じて圧縮及び膨張する部材は、ワックスに限らない。換言すれば、機械的な制御弁(サーモスタットバルブ)としては、ワックス式に限らず、ベローズ式等でもよい。
【0090】
・電子サーモスタットは、メインバイパス通路20及びサブバイパス通路22の2つのバイパス通路から冷却水の供給される構成に限らない。
・水温センサ63の配置箇所については、エンジン2を冷却することで暖機される冷却水の温度を検出することのできる範囲で適宜変更してよい。
【0091】
・電子サーモスタットにおいて、温度に応じて圧縮及び膨張する部材を加熱する加熱手段としては、上記PTCヒータに限らない。
・冷却水温の上昇態様と冷却水温とに基づいて制御弁(サーモスタットバルブ)を加熱してその開弁量を更に強制制御する加熱制御手段としては、上記電子制御装置を備えるものに限らない。例えば、冷却水温の上昇態様と冷却水温とに基づいて制御弁(サーモスタットバルブ)を加熱してその開弁量を更に強制制御することに特化した専用の装置であってもよい。
【0092】
・自動変速機の設けられた車両に搭載されるものに限らない。
・上記各実施形態では、ガソリンエンジンの冷却装置に本発明を適用したが、ディーゼルエンジンの冷却装置に適用してもよい。この際、エンジンの負荷を示すパラメータとして吸入空気量に代えてアクセルペダルの踏み込み量等を用いる。
【0093】
・エンジンとラジエータとの間を循環する冷却媒体としては、冷却水に限らず、エンジンを冷却することのできる適宜の流体であればよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかるエンジンの冷却装置を自動変速機の設けられた車両に搭載される装置に適用した第1の実施形態の全体構成を示すブロック図。
【図2】同実施形態における電子サーモスタットの構成を示す断面図。
【図3】同実施形態における電子サーモスタットの制御態様を示す図。
【図4】同実施形態における電子サーモスタットの制御態様を示す図。
【図5】同実施形態における電子サーモスタットの通電制御手順を示すフローチャート。
【図6】同実施形態における電子サーモスタットの通電制御手順を示すフローチャート。
【図7】同実施形態における冷却水温の推移例を示すタイムチャート。
【図8】実際の冷却水温とディジタル化された冷却水温との関係を示す図。
【図9】本発明にかかるエンジンの冷却装置を自動変速機の設けられた車両に搭載される装置に適用した第2の実施形態で用いる制御マップを示す図。
【図10】同実施形態における電子サーモスタットの通電制御手順を示すフローチャート。
【図11】本発明にかかるエンジンの冷却装置を自動変速機の設けられた車両に搭載される装置に適用した第3の実施形態で用いる制御マップを示す図。
【図12】同実施形態における電子サーモスタットの通電制御手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
2…エンジン、4…トルクコンバータ、6…遊星歯車機構、7…ATFウォーマ、8…出口通路、9…ウォーマ調温通路、10…冷却通路、12…ラジエータ、20…メインバイパス通路、22…サブバイパス通路、30…電子サーモスタット、30a…第1入力ポート、30b…第2入力ポート、30c…第3入力ポート、30d…出力ポート、31、32…弁体、33…弁軸、34…感温部、35…スプリング、36…PTCヒータ、40…入口通路、42…ウォータポンプ、50…電子制御装置、51…マイクロコンピュータ、51a…中央処理装置、51b…メモリ、52…インターフェース、52a…A/Dコンバータ、60…トルクコンバータ油温センサ、61…回転速度センサ、62…エアフローメータ、63…水温センサ。

Claims (4)

  1. エンジンを冷却する冷却媒体の温度に応じて開弁量が変化し、前記エンジンとラジエータとの間を循環する冷却媒体の循環量を制御するサーモスタットバルブと、該サーモスタットバルブを加熱してその開弁量を更に強制制御する加熱制御手段とを備えて前記冷却媒体の温度を目標温度領域に制御するエンジンの冷却装置において、
    前記加熱制御手段は、前記冷却媒体の温度の上昇態様を求め、該求めた温度の上昇態様と前記冷却媒体の温度とに基づいて前記サーモスタットバルブに対する加熱を開始するとともに、前記冷却媒体の温度の上昇態様を、同冷却媒体の温度についての所定の周期毎の検出値を用いて算出される温度勾配として認識し、更に前記温度勾配を算出するための所定の周期を前記エンジンの運転条件及び運転環境の少なくとも一方に基づいて可変とする
    ことを特徴とするエンジンの冷却装置。
  2. 前記目標温度領域が、前記エンジンの負荷が所定以下となる運転条件下において、前記サーモスタットバルブの前記冷却媒体の温度に応じた開弁量によって制御される同冷却媒体の温度領域に対応して設定される
    請求項1記載のエンジンの冷却装置
  3. 前記冷却媒体は、前記エンジンの出力軸から供給される動力に基づいて循環されるものであり、前記温度勾配を算出するための所定の周期は、同エンジンの回転速度が速いほど短く設定される
    請求項1又は2に記載のエンジンの冷却装置。
  4. 前記温度勾配を算出するための所定の周期は、同冷却媒体との間で熱交換される媒体の温度が高いほど短く設定される
    請求項1〜3のいずれか1項に記載のエンジンの冷却装置。
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