JP4025440B2 - 電子鍵盤楽器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ギター等の弦楽器の音色を出力可能な電子鍵盤楽器に係り、特に、弦楽器特有のコード、演奏パターンを実際の弦楽器の音色に対し忠実に、且つ、リアルタイムで発音させることのできる電子鍵盤楽器に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、音楽の分野で多く使用される電子鍵盤楽器は、鍵盤操作によって各種楽器の音色を発生させることができる。例えば、鍵盤操作によりトランペット等の管楽器の音色や、弦楽器、ピアノ等の音色を擬似的に再現することができるので、ライブ演奏時やスタジオ演奏時にて極めて有用である。
【0003】
このような電子鍵盤楽器は、各鍵盤操作にそれぞれの楽器の音階が割り当てられるので、例えば、ギターの音色が設定され、鍵盤にて「C2」(Cの音階で、第2オクターブを意味する)を押鍵すると、この音階のギターの音色が出力されることになる。従って、鍵盤操作にてギターの音色を擬似的に再現することができる。
【0004】
ところで、弦楽器としてギターを例にとると、実際の演奏では6本の弦を1弦づつ個々に操作することよりも、むしろコードを演奏することが頻繁に行われる。ここで、電子鍵盤楽器にてコードを演奏する場合には、例えば、「Cメジャ」の入力は図12符号a,b,cに示す「C,E,G」を同時に押鍵することによりコード音を発音させる。
【0005】
しかしながら、実際のギターを使用してコードを演奏する場合には、図13の○印に示す位置でギターのフレットを押さえることが多く、これを電子鍵盤楽器の鍵盤に対応させると、図14の○印に示すようになり、図12の場合と比較してコードとしては一致しているものの、コードを構成するそれぞれの音階が相違するので、実際に聴者の耳に聞こえる音色が異なったものとなる。つまり、電子鍵盤楽器でギターの音色のコードを演奏して得られる音色は、実際のギターを使用してコードを演奏したときの音色を忠実に再現していないことになる。
従って、図14に示した音階を電子鍵盤楽器の鍵盤上で押鍵すればよいことになるが、実際にはこれらの音階に対応する鍵を片手で押鍵することは無理であり、実際のギターのコードに対応する音階を発音させることはできない。
【0006】
また、実際のギターでは、ストローク演奏やカッティング演奏等の、弦楽器特有の演奏方法があり、同一のコードであっても演奏方法の違いにより、発音する音色が異なったものとなる。例えば、ダウンストローク演奏は、ギターの6本の弦を第6弦(最も太い弦)から第1弦(最も細い弦)に向けて弦振動させる奏法であり、アップストローク演奏は、ダウンストロークとは反対に第1弦から第6弦に向けて弦振動させる奏法であり、同一コードであっても奏法の相違により、耳に聞こえる音色は異なったものとなる。
従って、電子鍵盤楽器においても、このようなダウンストローク、アップストローク等の各種演奏方法に対応した音色を発生させることが望まれるが、従来における電子鍵盤楽器では、このような機能は備えられていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記したように、従来における電子鍵盤楽器においては、ギター等の弦楽器の音色を擬似的に生成して発音させることができるものの、コード演奏時には、実際の弦楽器特有のコードパターンに対応した音色を発生させることができず、また、弦楽器特有の演奏方法にて得られる音色を発生させることができないという欠点があった。
【0008】
この発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、弦楽器特有のコードの音色、演奏方法にて楽音信号をリアルタイム出力させることのできる電子鍵盤楽器を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本願請求項1に記載の発明は、鍵盤を有し、該鍵盤を操作することにより弦楽器の音色を出力可能な電子鍵盤楽器において、
前記弦楽器のコードと、前記鍵盤の4鍵以上の押鍵データとを対応させて記憶するコードデータ記憶手段と、
前記弦楽器のコードの演奏動作パターンを記憶する演奏動作パターン記憶手段と、
前記鍵盤にて4鍵以上が同時に押鍵された際には、この押鍵データに対応するコードデータを前記コードデータ記憶手段より読み出し、読み出されたコードデータを一時的に記憶する一時記憶手段と、
前記演奏動作パターン記憶手段に記憶されている演奏動作パターンから、所望のパターンを選択し、且つ、4鍵以上が同時に押鍵された際には、この押鍵データに対応するコードを前記コードデータ記憶手段から読み取り、このコードデータを前記選択した演奏動作パターンで発音する処理を実行し、4鍵以上が同時に押鍵された後、3鍵以下の鍵が押鍵された際には、前記一時記憶手段に記憶されたコードデータを単音として発音する処理を実行する演奏イベント実行手段と、を具備したことが特徴である。
【0012】
また、請求項5に記載の発明は、前記演奏動作パターンは、ダウンストローク、アップストローク、カッティングダウン、または、カッティングアップから選択されることを特徴とする。
【0014】
そして、請求項1に記載した発明では、4鍵以上の押鍵データが入力されると、この押鍵データに対応して記憶されたコードデータが一時記憶手段にて記憶され、引き続いてこの4鍵の押鍵データを1鍵づつ個々に演奏した場合には、これに対応するコードの単音が出力される。従って、コード演奏のみならず、弦楽器個々の音色、いわゆるアルペジオ演奏を片手による簡単な操作で実施することができるようになる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明が適用された電子鍵盤楽器の一実施形態の構成を示すブロック図であり、同図に示すように、この電子鍵盤楽器は、鍵盤1と、CPU2と、RAM3と、ROM4と、音源回路5及びMIDI出力回路6と、から構成され、ギター等の弦楽器のコード、演奏パターンを忠実に再現し、且つ、リアルタイムにて発音させることができるものである。
【0017】
CPU2は、鍵盤1にて入力される押鍵データを取り込む鍵盤入力処理部21と、この鍵盤入力処理部21にて読み取られた押鍵データに対応付けられたコードデータを、コードデータ記憶部31(後述)から読み取る処理を実行するコード入力処理部22と、各種の演奏イベントを実行する演奏イベント実行処理部23と、音源制御処理部24、及びMIDI制御処理部25から構成されている。
【0018】
RAM3は、鍵盤1で入力された押鍵データと、この押鍵データに対応付けられるコードデータとを記憶するコードデータ記憶部31と、演奏する楽音のテンポに対応する一定周期のタイミング信号を発生するタイミングカウンタ32と、入力された押鍵データを一時的に記憶する一時記憶部33と、押鍵された鍵の番号を記憶する押鍵データ記憶部34を具備している。
ROM4は、コードデータ記憶部31に記憶された各コードデータのフレットポジションデータを記憶するフレットテーブル41と、各種演奏動作パターンが記憶される演奏動作パターン記憶部42と、開放弦データ記憶部43を具備している。
【0019】
開放弦データ記憶部43は、ギターに設置される6本の弦を開放したとき(即ち、フレットを押さえないとき)の音階を記憶するものであり、例えば、以下の表1に示す如くのデータが記憶される。
【0020】
【表1】
【0021】
また、フレットテーブル41には、予めギター演奏時に指定するコードに対応するフレットのポジションデータが、例えば、表2に示すように各コードに対応して記憶される。
【0022】
【表2】
【0023】
表2において、例えば、「C」に示す「3,3,2,0,1,0」は図13の○で示すフレットの位置を示している。
演奏動作パターン記憶部42は、各種の奏法に対応するイベント処理データが記憶されており、ここでは、以下に示す7通りの演奏動作パターンが記憶されている。
【0024】
(1)ダウンストローク
ギターの弦を第6弦から第1弦に向けて弦振動させる奏法であり、コードに対応するフレットテーブルを参照して、ストロークに合った時間差を付けながら、ノートオンメッセージを発行する処理である。例えば、Cメジャのコードをダウンストロークで発音させる場合には、「G2」、「C3」、「E3」、「G3」、「C4」、「E4」の音階を微小時間(実際のギターをピックにてストロークする際の、各弦を弾く時間差程度)づつ遅らせて発音させる。
(2)アップストローク
ダウンストロークとは反対に、ギターの弦を第1弦から第6弦に向けて弦振動させる奏法であり、ダウンストロークとは逆の順序でノートオンメッセージを発行する。これにより、実際のギターを使用してアップストローク演奏した如くの音色を得ることができる。
【0025】
(3)カッティングダウン
カッティング奏法とは、ストロークにより発行されたノートオンメッセージを即時に停止させる処理であり、実際のギターではストローク奏法にて弦振動を発生させた後、即時に手で6弦を押さえ、振動を停止させる処理に対応する。
カッティングダウンは、前記したダウンストロークのノートオンメッセージを発行した後、即時に全ての弦のノートオンメッセージを停止させる処理であり、例えば、Cメジャのコードをカッティングダウンで演奏する場合には、「G2」、「C3」、「E3」、「G3」、「C4」、「E4」の音階を微小時間遅延させて発音させた後、即時に全ての音階の発音を停止させる。
【0026】
(4)カッティングアップ
カッティングダウンとは反対に、アップストロークにて発行されたノートオンメッセージを発音後、即時に停止させる処理である。
(5)1弦〜6弦の演奏
表2に示したフレットテーブルを参照し、指定された弦のノートオンメッセージを発行する処理であり、各弦を単音として発音させることができる。また、指定された弦が現在発音状態とされている場合には、一旦この発音を停止させた後、再度発音させる処理を行う。
【0027】
(6)指定弦のミュート
指定された弦の発音を停止させるする処理であり、発音開始から所定時間経過後に発音を停止させる処理、及び、発音開始後この発音を継続させ、次回この弦に対して新たなノートオンメッセージが発生した場合に、前回の発音を停止させる処理を行う。
(7)全弦ミュート
全ての弦(1弦〜6弦)の発音を停止させる処理である。
【0028】
次に、上記のように構成された電子鍵盤楽器を用いて、ギターの音色を発生させる処理の実施例を以下に示す実施例1〜実施例4に基づいて説明する。
<実施例1>
実施例1では、鍵盤1で入力される押鍵データと、ギターのコードとを対応させ、且つ、演奏動作パターンを1つ設定して(ここでは、一例としてダウンストロークを選択する)、あたかも実際のギターでコード演奏をする如くの音色を発生させる処理を実行する。
【0029】
例えば、「Cメジャ」のコードを発音させる場合においては、一般的にギターでは図13に示す如くのフレット押さえることが多く、従って、第6弦(最も太い弦)から第1弦(最も細い弦)に向けて、「G2」、「C3」、「E3」、「G3」、「C4」、「E4」の音階が発音されることになる(ここで、「E2」とは、第2オクターブのEの音階を示す)。しかし、鍵盤1上でこれら全ての鍵を片手で同時に押鍵することは事実上不可能であるから、ここでは、この「Cメジャ」のコードに対して「C2,E2,G2」の3鍵を対応させ(図12に示すa,b,c参照)、この3鍵を押鍵することにより「Cメジャ」コードを発音させる。そして、このような構成によれば、奏者は片手で押鍵できる程度の簡単な鍵盤操作でギター特有のコード音をダウンストロークにて発音させることができる。
【0030】
以下、この具体的な動作手順を図2,図3に示すフローチャートを参照しながら説明すると、まず、奏者が鍵盤1にて所望の鍵を押鍵すると、CPU2の鍵盤入力処理部21では、鍵盤の入力状態を認識し(ステップST1)、押鍵された鍵の番号を押鍵データ記憶部34に記憶する(ステップST2)。
次いで、コード入力処理部22では、鍵盤の状態に変化が発生しているかどうかを確認し(ステップST3)、この場合は変化が発生しているので(ステップST3でYES)、押鍵データ記憶部34に記憶された押鍵データが、コードデータ記憶部31に登録されているかどうかを解析する(ステップST4)。例えば、押鍵した鍵が「C,E,G」であり、この押鍵データに対して「Cメジャ」のコードが対応付けられている場合には、入力されたコードは「Cメジャ」であることが決定される(ステップST5でYES)。
【0031】
その後、演奏イベント実行処理部23では、フレットテーブル41を参照し、「Cメジャ」に対するフレットポジションデータが「3,3,2,0,1,0」であることを認識する(表2参照)。そして、開放弦データ記憶部43に記憶された開放弦データ(表1参照)を基準とし、フレットポジションデータに記述された数値分だけ、シフトさせた音階を求める。
【0032】
例えば、「Cメジャ」のコードの場合には、第6弦の開放弦の音階が「E2」でフレットが「3」であるから、「E2」を+3シフトさせて「G2」となり、第5弦は「A2」が+3シフトして「C3」となり、同様に、第4弦は「D3」が+2シフトして「E3」となり、第3弦は開放弦のままであるから「G3」となり、第2弦は「B3」が+1シフトして「C3」となり、第1弦は開放弦のままであるから「E4」となる。これにより、G2、C3、E3、G3、C4、E4の、6個の音階データが得られることになる。
【0033】
また、上記したように、この実施例1では演奏動作パターンがダウンストロークに設定されているので、演奏イベント実行処理部23は、演奏動作パターン記憶部42から、ダウンストローク演奏に係るイベントデータを読み取り、このイベントデータに従って、上記の6個の音階データを発音させるべく処理を行い、音源回路5にノートオンメッセージを出力する。
以下、図11に示すフローチャートを参照しながら、ダウンストローク演奏処理の手順について説明する。まず、鍵盤入力処理部21にてコードの変更が確認されると(ステップST61)、1弦〜6弦の全ボイスをノートオフ処理する(ステップST62)。即ち、1弦〜6弦による発音処理を停止する。次いで、「弦番号」を「6」に設定し(ステップST63)、この弦が発音中であるかどうかが確認され、発音中である場合にはこの弦番号に対応するボイスをノートオフ処理する(ステップST64,ST65)。つまり、第6弦のが発音中である場合にはこの発音を停止させる。
【0034】
そして、フレットテーブル41よりフレットポジションが得られると、このポジションに対するノートナンバーが決定され(ステップST66,ST67)、更に発音時のベロシティが決定されて(ステップST68)、発音処理が実行される(ステップST69)。引き続き、「弦番号」を「5」として、同様の処理が実行されるが(ステップST70,ST71)、ステップST68におけるベロシティ値は、弦番号が小さくなるにつれてベロシティ値が小さくなるように設定されているので、第6弦から第1弦に向けて徐々に発音タイミングが遅れて出力される。これにより、あたかも実際のギターで所望のコードをダウンストローク演奏で演奏した如くの音色を得ることができる。
また、上記の操作に引き続いて新たな押鍵データが入力された場合には、前回の発音を停止させた後、新たな押鍵データに対するコードデータをダウンストロークで発音させる。
【0035】
このようにして、奏者は、片手で押鍵できる程度の簡単な鍵盤操作にて、ギターのコードに忠実な発音データを、所望の演奏動作パターン(この場合は、ダウンストローク)にて出力させることができるようになる。なお、演奏動作パターンは、任意に設定することができるので、予めアップストロークに設定すれば、アップストローク演奏による音色を発生させることができる。
【0036】
<実施例2>
実施例1では、予め設定した1つの演奏動作パターン(例えば、ダウンストローク)に限定したコード演奏を可能にする方法について述べたが、実施例2では、RAM3に搭載されたタイミングカウンタ32より出力される一定時間間隔のタイミング信号に対し、どのタイミングで鍵盤1が押鍵されたかを判断して演奏動作パターンを変化させることにより、多用な演奏パターンを指定することができる。
【0037】
ここでは、演奏する楽音の1拍を96の間隔に分割し、このうち0〜47までの時間を前半部分とし、48〜95までの時間を後半部分とし、前半部分にて押鍵データが入力された場合には、演奏動作パターンとしてダウンストロークを選択し、後半部分にて押鍵データが入力された場合には、演奏動作パターンとしてアップストロークを選択するように構成する。これにより、押鍵するタイミングを適宜変更することにより、同一のコードであっても、ダウンストロークまたはアップストロークの何れかの奏法を選択することができる。
【0038】
以下、この具体的な動作を手順を図4、図5に示すフローチャートを参照しながら説明すると、まず、前記した実施例1と同様に、鍵盤1の入力状態が認識され、押鍵された鍵の番号が押鍵データ記憶部34に記憶される。次いで、演奏イベント実行処理部23では、演奏する楽音の1拍を96分割した時間間隔でタイミングカウンタ32におけるカウント値をインクリメントさせる。即ち、タイミングカウンタ32は、1拍を96分割した時間間隔でタイミング信号を出力することになる(図4のステップST11)。その後、このカウント値が96になった時点でカウント値を0にクリアする処理を実行する(ステップST12〜ST14)。
【0039】
また、鍵盤1において押鍵データが入力されるので(図5のステップST15でYES)、押鍵データ記憶部34に記憶されたデータに対応するコードデータがコードデータ記憶部31に記憶されているかどうかが確認され(ステップST16)、対応するコードデータが存在する場合には(ステップST17でYES)、タイミングカウンタ32における現在のカウント値を読み取る(ステップST18)。そして、このカウント値が前半(即ち、0〜47)の場合には、演奏動作パターンとしてダウンストロークを選択し(ステップST19)、一方、後半(即ち、48〜95)の場合には、演奏動作パターンとしてアップストロークを選択し(ステップST20)、選択された演奏動作パターンで、コードデータ記憶部31から読み取ったコードデータを発音させる処理を実行する。
【0040】
このような構成によれば、押鍵するタイミングを変更することにより、ダウンストロークまたはアップストロークのいずれかの演奏動作パターンを選択してコードを発音させることができるので、多様な形態の演奏が可能となる。例えば、同一の押鍵データを1拍中に2度入力すれば、一方がダウンストローク、他方がアップストロークにて発音されるので、ギター伴奏を発音させる場合等において極めて効果的である。
なお、上記では2つの演奏動作パターンとしてダウンストロークとアップストロークとを選択したが、本発明はこれに限定されるものではなく、演奏動作パターンとしてカッティング処理等を設定してもよい。また、上記では、1拍を2つの時間帯域(前半部分と後半部分)とに分割してそれぞれに、演奏動作パターンを割り当てるようにしたが、3分割以上とし、3種以上の演奏動作パターンを割り当てても良い。
【0041】
<実施例3>
上記した実施例1,2では、主としてコード演奏を目的としていたが、実施例3では、設定したコードを構成する各音階を個々に演奏する奏法、いわゆるアルペジオ演奏を可能にする。また、上記の実施例1,2では、コードデータ記憶部31においてコードデータに対応付ける押鍵データの、鍵の数は限定していなかったが、ここでは、鍵の数を4鍵に限定する。例えば、「Cメジャ」というコードに対応させる押鍵データとしては、「C2,E2,G2,C3」の4鍵のデータを使用する。更に、フレットテーブル41では、表2に示したように、6弦(場合により5弦)の音階が設定されているが、この実施例3では、第1弦〜第3弦の3本の弦と、第4弦〜第6弦から選択される1本の弦の、合計4本の弦に対応する音階のみが選択される。
【0042】
以下、実施例3の動作手順を、図6、図7に示すフローチャートを参照しながら説明する。奏者が鍵盤1を押鍵すると、CPU2の鍵盤入力処理部21で、入力された鍵の番号が認識され、押鍵データ記憶部34に記憶される(ステップST21、ST22)。次いで、コード入力処理部22では、押鍵されている鍵盤数が4以上であるかどうかが判断され(ステップST23)、最初の入力では4つの鍵が入力されるので(ステップST23でYES)、この4つの鍵のうち、音階の高い順から第1鍵、第2鍵、第3鍵、及び第4鍵として一時記憶部33に記憶させる。そして、演奏イベント実行処理部23では、この押鍵データに対応するコードデータがコードデータ記憶部31に記憶されているかどうかを判断し(図7のステップST33〜ST35)、対応するコードが存在する場合には(ステップST35でYES)、予め設定した演奏動作パターンでコードを発音させる処理を実行する。
【0043】
例えば、「Cメジャ」のコード入力として鍵盤1の「C2,E2,G2,C3」を押鍵すると、これに対応して、表1に示す開放弦データ及び表2に示すフレットテーブルより、第1弦〜第4弦はE4、C3、G3、E3となり、この4つの和音がコード出力として発音されることになる。また、前記したように、押鍵データは、音階の高い順から第1鍵〜第4鍵として記憶されるので、この場合は、鍵盤の「C3」に対してギター弦の「E4」が対応し、「G2」に対して「C3」が対応し、同様に、「E2」に対して「G3」、「C2」に対して「E3」が対応付けられる。
【0044】
従って、次回奏者が3鍵以下の鍵盤を押鍵すると(ステップST23でNO)、コード出力を行わず、押鍵された鍵に対応付けられた音階を単音として発音する。即ち、押鍵された鍵が第1鍵である場合には、これに対応付けられる第1弦の音階を発音させ(ステップST25、ST26)、第2鍵の場合には第2弦の音色を発音させ(ステップST27、ST28)、第3鍵の場合には第3弦の音色を発音させ(ステップST29、ST30)、第4鍵の場合には第4弦〜第6弦のいずれか1つの音色を発音させる(ステップST31、ST32)。
【0045】
これを前記の「Cメジャ」のコードで説明すると、奏者が鍵盤1にて「C3」を押鍵すると、ギター音の「E4」が発音され、「G2」を押鍵すると、ギター音の「C3」が発音され、「E2」を押鍵すると、ギター音の「G3」が発音され、「C2」を押鍵すると、ギター音の「E3」が発音される。従って、奏者は4鍵を押鍵することによりコードを発音させた後、これら4つの鍵を個々に押鍵することにより、コードを構成する音階を単音で発音させることができるようになる。これにより、アルペジオの演奏を容易に行うことができるようになる。そして、引き続き新たな4鍵の押鍵データが入力された場合には、一時記憶部33に記憶されたデータが新たに入力されたコードデータに書き換えられる。
【0046】
なお、上記の例では、4つの押鍵データに対して、ギターの第1弦〜第4弦に対応させたコードまたは単音を発生させる例について説明したが、本発明では第1弦〜第3弦以外の弦は、第4弦に限定されるものではなく、第4弦〜第6弦から任意のものを設定する。例えば、第6弦を選択した場合には、「Cメジャ」のコードは、第1〜第3弦が「E4」,「C3」,「G3」となり、第6弦が「G2」となり、この4音が発音されることになる。
このようにして、実施例3では、鍵盤1で4つの押鍵データを入力すると、この押鍵データに対応するコードが演奏され、次いで、この4つの押鍵データを個々に演奏すると、このコードデータが単音として発音されることになるので、片手による操作でコード演奏のみならず単音演奏をも行うことができ、アルペジオ演奏等には極めて有用である。
【0047】
<実施例4>
上記の実施例1〜実施例3では、片手による操作でギターの音色のコード演奏またはアルペジオ演奏を実行する例について説明したが、実施例4では、両手を使用し、左手による操作領域でコードを入力し、右手による操作領域で演奏動作パターンを入力するようにし、あたかも実際のギター操作と同様に各種ギター奏法による音色を発生させるものである。
【0048】
図8は、鍵盤1を2つの領域に区分した様子を示す説明図であり、鍵盤1の左端の「C」の音階から2オクターブ上の領域をコード入力領域1aとし、これよりも高い音階の領域を演奏動作パターン入力領域1bとしている。また、演奏動作パターン入力領域1bは、各種の演奏動作を設定するものであり、ここでは、「C」に第6弦、「D」に第5弦、「E」に第4弦、「F」に第3弦、「G」に第2弦、「A」に第1弦をそれぞれ割り当て、更に、「C#」にダウンストローク、「D#」にカッティングダウン、「G#」にカッティングアップ、そして、「A#」にアップストロークをそれぞれ割り当てている。
【0049】
以下、図9、図10に示すフローチャートを参照しながら、実施例4の動作について説明すると、奏者が鍵盤1のコード入力領域1aでコードに対応する押鍵データを入力し、更に、演奏動作パターン入力領域1bで所望の動作パターンに対応する鍵を押鍵すると、鍵盤入力処理部21でこれらの押鍵データが読み取られ(ステップST41)、押鍵データ記憶部34に記憶される(ステップST42)。そして、入力された押鍵データに対応するコードデータがコードデータ記憶部31に記憶されているかどうかが確認され(図10のステップST50、ST51)、対応するコードデータが存在する場合には、このコードデータを一時記憶部33に記憶させ、更に、演奏動作パターン入力領域1bで指定されている演奏動作パターンを演奏動作パターン記憶部42から読み出して、これに対応した発音処理を実行する。
【0050】
いま、演奏動作パターン入力領域1bで、第6弦〜第1弦に対応する鍵「C,D,E,F,G,A」が押鍵されたときには(ステップST44でYES)、第6弦〜第1弦に設定された音階を単音として発音する処理を実行する(ステップST45)。また、演奏動作パターン入力領域1bで、ダウンストロークまたはアップストロークに対応する鍵「C#,A#」が入力された場合には(ステップST46でYES)、ダウンストロークまたはアップストロークによる動作パターンによる発音処理を行い(ステップST47)、更に、カッティングストロークに対応する鍵「D#,G#」が入力された場合には(ステップST48でYES)、カッティングストローク(カッティングダウン、カッティングアップ)による動作パターンで発音処理を実行する(ステップST49)。
【0051】
例えば、奏者がコード入力領域1aで「C,E,G」を押鍵し、この押鍵データが「Cメジャ」のコードに対応している場合には、6個の弦に対し、第6弦から順に「G2,C3,E3,G3,C4,E4」が割り当てられることになるので、第6弦〜第1弦に対応する鍵を押鍵することにより、これらの単音を個々に発音させることができる。
【0052】
このようにして、実施例4では、左手でコード指定を行い、右手で各種の演奏動作パターンを指定してギターの音色を発音させることができるので、実際のギター演奏に対応した操作が可能となり、操作性が良くライブ演奏やスタジオ演奏等においては極めて有用である。また、上記では、左手でコード演奏、右手で演奏動作パターンを指定する方式としたが、これを反対とする構成とすることもできる。即ち、左利きのギター奏者は通常右利きの人とは反対に、右手でコードを指定し、左手で弦を弾くので、鍵盤1の割当を左右反対にすることにより、左利きの奏者に対応させることができる。
また、上記した実施形態では、弦楽器としてギターを例に説明したが、本発明はギターに限定されるものではなく、バイオリン、ウクレレ、マンドリン、三味線等の他の弦楽器にも適用することができる。
【0053】
【発明の効果】
以上説明したように、本願発明では、奏者が4鍵以上の押鍵データを入力すると、これに対応したコードデータが指定され、引き続きこの4鍵を個々に押鍵すると、コードデータが単音として発音されることになるので、コードのみならず音色の出力も可能となり、いわゆるアルペジオの演奏が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る電子鍵盤楽器の構成を示すブロック図である。
【図2】実施例1における鍵盤入力処理の手順を示すフローチャートである。
【図3】実施例1におけるコード入力処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】実施例2におけるタイミングカウンターの処理手順を示すフローチャートである。
【図5】実施例2におけるコード入力処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】実施例3における鍵盤入力処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】実施例3におけるコード入力処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】実施例4に係り、鍵盤をコード入力領域と、演奏動作パターン入力領域とに分割した様子を示す説明図である。
【図9】実施例4における鍵盤入力処理の手順を示すフローチャートである。
【図10】実施例4におけるコード入力処理の手順を示すフローチャートである。
【図11】ダウンストロークの処理手順を示すフローチャートである。
【図12】鍵盤の「Cメジャ」コードを示す説明図である。
【図13】実際のギターで「Cメジャ」コードを押さえる際のフレットポジションを示す説明図である。
【図14】ギターの「Cメジャ」コードの音階に対応する鍵盤位置を示す説明図である。
【符号の説明】
1 鍵盤
1a コード入力領域
1b 演奏動作パターン入力領域
2 CPU
3 RAM
4 ROM
5 音源回路
6 MIDI出力回路
21 鍵盤入力処理部
22 コード入力処理部
23 演奏イベント実行処理部
31 コードデータ記憶部
32 タイミングカウンタ
33 一時記憶部
34 押鍵データ記憶部
41 フレットテーブル
42 演奏動作パターン記憶部
43 開放弦データ記憶部
Claims (2)
- 鍵盤を有し、該鍵盤を操作することにより弦楽器の音色を出力可能な電子鍵盤楽器において、
前記弦楽器のコードと、前記鍵盤の4鍵以上の押鍵データとを対応させて記憶するコードデータ記憶手段と、
前記弦楽器のコードの演奏動作パターンを記憶する演奏動作パターン記憶手段と、
前記鍵盤にて4鍵以上が同時に押鍵された際には、この押鍵データに対応するコードデータを前記コードデータ記憶手段より読み出し、読み出されたコードデータを一時的に記憶する一時記憶手段と、
前記演奏動作パターン記憶手段に記憶されている演奏動作パターンから、所望のパターンを選択し、且つ、4鍵以上が同時に押鍵された際には、この押鍵データに対応するコードを前記コードデータ記憶手段から読み取り、このコードデータを前記選択した演奏動作パターンで発音する処理を実行し、4鍵以上が同時に押鍵された後、3鍵以下の鍵が押鍵された際には、前記一時記憶手段に記憶されたコードデータを単音として発音する処理を実行する演奏イベント実行手段と、を具備したことを特徴とする電子鍵盤楽器。 - 前記演奏動作パターンは、ダウンストローク、アップストローク、カッティングダウン、または、カッティングアップから選択されることを特徴とする請求項1に記載の電子鍵盤楽器。
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