JP3719157B2 - 楽曲データの表情付け装置及び楽曲データの表情付け方法並びに楽曲データの表情付けプログラム - Google Patents

楽曲データの表情付け装置及び楽曲データの表情付け方法並びに楽曲データの表情付けプログラム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子楽器やコンピュータミュージック等において自動演奏に用いる楽曲データを修正し、自然な感じの演奏を行えるようにする楽曲データの表情付け装置及び楽曲データの表情付け方法並びに楽曲データの表情付けプログラムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、楽曲データには各種のフォーマットがあるが、基本的には各音符に対応して、音高のデータと所定分解能のクロックをタイムベースとする発音タイミングのデータとを音符情報として持っている。また、この他に発音持続時間や音量を指示するデータも持っているが、このうち発音持続時間は、例えばキーオンデータのタイミングデータとキーオフデータのタイミングデータとの差により指示されるもの、あるいは絶対時間で発音タイミングを指示された音高のデータとセットにしたゲートタイムにより指示されるものなどがある。
【0003】
ところで、楽曲データを作成する方法として例えば次のような方法がある。電子楽器やコンピュータの作曲ソフトを用い、所望の音符を選択して五線譜上に順次配置していく方法がある。なお、この方法はクロックを数値で設定しながら音高と音符のデータをスイッチ操作等により一つ一つ入力していく、従来の所謂ステップ入力を簡易化した方法である。また、楽譜認識ソフトで音符を自動認識して作成する方法がある。あるいは、楽器を演奏してその演奏情報を楽曲データに変換してい所謂リアルタイム入力の方法がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように作曲ソフトや楽譜認識ソフトでMIDIデータ化して作成された楽曲データでは、発音持続時間は通常は音符の符長に対応した長さ(例えばデフォルトで符長の数十%)に設定される。また、リアルタイム入力は、鍵盤楽器や管楽器等で入力することが多いが、この場合、発音持続時間は鍵(あるいはキー)の押鍵と離鍵の間隔に設定される。このため、これらの楽曲データでそのまま自動演奏すると、機械的に無表情な演奏になってしまうことが多い。
【0005】
例えば図7のような譜例を考える。これはアルペジオ奏法の典型的な例であるが、上段がふつうの五線譜、下段が上段五線譜をギターの運指に対応するようにTAB表示したものである。また、図7の譜例をそのままMIDIデータ化して、ピアノロール表示すると図9のようになる。図9及び以下のピアノロール表示では、横軸が時間、縦軸が音程に対応しており、この例では、全ての音符の長さすなわちゲートタイム(黒のバー表示部分)が8分3連の長さになっている。
【0006】
なお、この明細書のおいて音名とノードコードの関係は以下のようなものとして説明する。中央C(ト音記号とヘ音記号の中間のC)の音名を「C4」、そのノードコードを「60」とする。そのオクターブ上は“C5=72”、オクターブ下は“C3=58”とする。ただし、この音名とノードコードの関係は本質的なものではなく、本発明は別のケースにも適用できることはいうまでもない。
【0007】
図7の楽譜に基づいてギターやハーブなどでアルペジオの演奏すると、通常は、最初の音であるC5の音を発音させた後、次のG4を発音させるときに、C5の音を止めるようなことは、意図的に効果を狙わない限りは行わない。すなわち、最初のC5の音は、次のG4の発音中、その次のE4の発音中にも発音される。またG4の音は、次のE4の発音中にも発音される。
【0008】
しかし、楽曲データでは図9に示したようなゲートタイムになっているので、音がとぎれとぎれになって、ギターやハープの実際のアルペジオ演奏を再現することができず、不自然な演奏となってしまう。また、鍵盤楽器や管楽器等でリアルタイム入力した場合に、その楽器の音色で自動演奏する場合には、実際の演奏に応じた自動演奏となるが、ギターやハープなどの音色で自動演奏すると上記同様に不自然な演奏となってしまう。
【0009】
なお、上記のような楽曲データでも、発音持続時間や音量等を適宜修正して演奏に表現を付けることは可能であるが、このような演奏表現を加える作業は、曲のどの部分にどのような表現を加えるかをユーザに委ねるとしたら、ユーザは音楽や楽器の特性を熟知している必要が生じる。したがって、幅の広いユーザに簡単に使えるシステムにするためには、機械が判断できる部分は自動的に行った方が良い。
【0010】
本発明は、アルペジオ奏法などの奏法に応じたより自然な自動演奏、楽器に応じたより自然な自動演奏を行えるように、楽曲データを修正して表情付けを行うことを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1の楽曲データの表情付け装置は、音符情報列を含む楽曲データを提供する楽曲データ提供手段と、前記提供された楽曲データの音符情報列から音符情報が周期的に変化する奏法を判別する奏法判別手段と、前記奏法判別手段で判別された奏法の部分の音符情報を該奏法に基づく楽器演奏が再現されるように修正する修正手段と、を備え、前記奏法判別手段は、前記楽曲データを所定長さずつ読み出し、その音符情報中の音高の変化方向が周期的に同じパターンで変化しているかどうかを分析し、音高の変化方向が周期的に同じパターンで変化している場合にはアルペジオ奏法と判断し、前記修正手段は、次の周期の対応する順番までに同じ音程の音符がある場合は、その音符直前まで発音持続時間を延長し、同じ音程の音符がない場合は、次のアルペジオ周期直前まで発音持続時間を延長することを特徴とする。
【0012】
上記のように構成された請求項1の楽曲データの表情付け装置によれば、提供された楽曲データの音符情報列から、音符情報が周期的に変化する奏法が判別される。この周期的に変化する奏法部分は特定のパターンで繰り返して演奏される部分とみなすことができる。したがって、その奏法に基づく楽器演奏が再現されるように修正すると、適切な箇所を補正しながら自然な感じの自動演奏を行うことができる。また、音高の変化方向が周期的に同じパターンで変化している場合にはアルペジオ奏法と判断するので、アルペジオ奏法を高い確度で判別でき、自然な感じのアルペジオ奏法の自動演奏が可能となる。
【0013】
本発明の請求項2の楽曲データの表情付け装置は、請求項1の構成を備え、前記修正手段は、前記楽曲データの音色情報に基づき、その音色に対応する楽器演奏が再現されるように、前記音符情報を修正することを特徴とする。
【0014】
上記のように構成された請求項2の楽曲データの表情付け装置によれば、請求項1と同様な作用効果が得られるとともに、ギターやハープなどの楽器の特徴に応じた自然な感じの自動演奏を行うことができる。
【0015】
本発明の請求項3の楽曲データの表情付け装置は、請求項1の構成を備え、前記奏法判別手段が、前記音符情報が周期的に変化する奏法としてアルペジオ奏法を判別することを特徴とする。
【0016】
上記のように構成された請求項3の楽曲データの表情付け装置によれば、請求項1と同様な作用効果が得られるとともに、自然な感じのアルペジオ奏法の自動演奏が可能となる。
【0019】
本発明の請求項の楽曲データの表情付け装置は、請求項の構成を備え、前記奏法判別手段は、前記音高の音域が極端に違わない、各周期の音符構成が類似することを、アルペジオ奏法の判別の条件とすることを特徴とする。
【0020】
上記のように構成された請求項の楽曲データの表情付け装置によれば、請求項と同様な作用効果が得られるとともに、前記音高の音域が極端に違わない、各周期の音符構成が類似することを、アルペジオ奏法の判別の条件とするので、さらに高い確度でアルペジオ奏法を判別できる。
【0021】
本発明の請求項の楽曲データの表情付け装置は、請求項1の構成を備え、前記修正手段は、前記奏法を判別した部分の音符情報の音長及び/または音量を修正することを特徴とする。
【0022】
上記のように構成された請求項の楽曲データの表情付け装置によれば、請求項1と同様な作用効果が得られるとともに、例えばギターやハープのような撥弦楽器において、音長(ゲートタイム)を修正することにより発音時間が重複する弦による残響発音を実現でき、音量(ベロシティ)を修正することにより、分散して撥弦されるときの音量の違いを表現することができる。したがって、自然な感じの自動演奏が可能となる。
【0023】
本発明の請求項の楽曲データの表情付け装置は、請求項1の構成を備え、前記楽曲データに同時発音に対応する複数の音符情報がある場合には、前記奏法判別手段は、その複数の音符情報の内1音を順次抽出しながら、その1音と次のタイミングの音符情報とに基づいて、音高の変化方向が周期的に同じパターンで変化しているかどうかを分析することを特徴とする。
【0024】
上記のように構成された請求項の楽曲データの表情付け装置によれば、請求項1と同様な作用効果が得られるとともに、同時発音に対応する複数の音符情報の内1つのみ抽出して、周期的に変化する奏法を判別するので、部分的に付加された音があっても周期的な変化を高い確度で判別できる。例えばアルペジオ奏法で小節頭のみにベース音が付加されているような場合でも周期的な変化を判別することができる。
【0025】
本発明の請求項の楽曲データの表情付け装置は、請求項の構成を備え、前記楽曲データに同時発音に対応する複数の音符情報がある場合には、その同時発音の発音数とその平均音程を求め、該発音数及び平均音程と、次のタイミングの同時発音の発音数とその平均音程とから、音高の変化方向が周期的に同じパターンで変化しているかどうかを分析することを特徴とする。
【0026】
上記のように構成された請求項の楽曲データの表情付け装置によれば、請求項と同様な作用効果が得られるとともに、同時発音部分の平均音高情報により、周期的な変化を高い確度で判別できる。
【0027】
本発明の請求項の楽曲データの表情付け装置は、請求項の構成を備え、前記音符情報が周期的に変化する奏法が判別され、かつその周期中に同時発音に対応する複数の音符情報がある場合には、複数の音符情報について、音高の順に発音開始時間をずらせることを特徴とする。
【0028】
上記のように構成された請求項の楽曲データの表情付け装置によれば、請求項と同様な作用効果が得られるとともに、同時発音の複数の音符情報について、音高の順に発音開始時間をずらせるので、例えばギターのカッティング奏法などのように撥弦順に応じた発音開始の微妙なズレを再現することができ、ギターなどの楽器の構造に応じた自然な感じの自動演奏が可能となる。
【0029】
本発明の請求項9の楽曲データの表情付け装置は、音符情報列を含む楽曲データを提供する楽曲データ提供手段と、前記提供された楽曲データの音符情報列から音符情報が周期的に変化する奏法を判別する奏法判別手段と、前記奏法判別手段で判別された奏法の部分の音符情報を該奏法に基づく楽器演奏が再現されるように修正する修正手段と、を備え、前記奏法判別手段は、前記楽曲データを所定長さずつ読み出し、その音符情報中の音高の変化方向が周期的に同じパターンで変化しているかどうかを分析し、音高の変化方向が周期的に同じパターンで変化している場合にはアルペジオ奏法と判断し、前記楽曲データが弦楽器の音符情報を含む楽曲データであって、前記修正手段は、該弦楽器の音符情報のアルペジオ奏法の各周期の和音が変わった箇所に、フィンガーノイズを付加することを特徴とする。
【0030】
上記のように構成された請求項の楽曲データの表情付け装置によれば、請求項と同様な作用効果が得られるとともに、ギターなどの巻弦を有する弦楽器において、和音変化に応じて運指が変化するときに、弦を指が擦るときのフィンガーノイズを再現でき、ギターなどの楽器の構造に応じた自然な感じの自動演奏が可能となる。なお、このようなフィンガーノイズは弦が巻弦である場合に生じ、巻弦を用いるような楽器の音色に適している。
【0031】
本発明の請求項10の楽曲データの表情付け装置は、音符情報列を含む楽曲データを提供する楽曲データ提供手段と、前記提供された楽曲データの音符情報列から音符情報が周期的に変化する奏法を判別する奏法判別手段と、前記奏法判別手段で判別された奏法の部分の音符情報を該奏法に基づく楽器演奏が再現されるように修正する修正手段と、を備え、前記奏法判別手段は、前記楽曲データを所定長さずつ読み出し、その音符情報中の音高の変化方向が周期的に同じパターンで変化しているかどうかを分析し、音高の変化方向が周期的に同じパターンで変化している場合にはアルペジオ奏法と判断し、前記楽曲データが弦楽器の音符情報を含む楽曲データであって、前記修正手段は、該弦楽器の音符情報のアルペジオ奏法の各周期の和音が変わった箇所に、ピッチベンドを付加することを特徴とする。
【0032】
上記のように構成された請求項10の楽曲データの表情付け装置によれば、請求項と同様な作用効果が得られるとともに、和音変化時に弦を押さえたまま運指をスライドさせたときの微妙な音高変化を実現することができる。すなわち、、弦を押さえたまま運指をスライドさせると、弦が振動した状態でフレット位置が変化し、振動する弦のピッチもフレットで規定される2つのピッチ間で瞬間ではあるが連続的に変化するので、これをピッチベンドにより実現することができる。
【0035】
本発明の請求項11の楽曲データの表情付け方法は、音符情報列を含む楽曲データを提供し、前記提供された楽曲データの音符情報列から音符情報が周期的に変化する奏法を判別し、前記判別された奏法の部分の音符情報を該奏法に基づく楽器演奏が再現されるように修正する楽曲データの表情付け方法であって、前記楽曲データを所定長さずつ読み出し、その音符情報中の音高の変化方向が周期的に同じパターンで変化しているかどうかを分析し、音高の変化方向が周期的に同じパターンで変化している場合にはアルペジオ奏法と判断し、次の周期の対応する順番までに同じ音程の音符がある場合は、その音符直前まで発音持続時間を延長し、同じ音程の音符がない場合は、次のアルペジオ周期直前まで発音持続時間を延長することを特徴とする。
【0036】
上記のように構成された請求項11の楽曲データの表情付け方法によれば、請求項1と同様な作用効果が得られる。
【0037】
本発明の請求項12の楽曲データの表情付けプログラムは、音符情報列を含む楽曲データを提供するステップと、前記提供された楽曲データの音符情報列から音符情報が周期的に変化する奏法を判別するステップと、前記楽曲データを所定長さずつ読み出し、その音符情報中の音高の変化方向が周期的に同じパターンで変化しているかどうかを分析し、音高の変化方向が周期的に同じパターンで変化している場合にはアルペジオ奏法と判断するステップと、次の周期の対応する順番までに同じ音程の音符がある場合は、その音符直前まで発音持続時間を延長するステップと、同じ音程の音符がない場合は、次のアルペジオ周期直前まで発音持続時間を延長するステップと、をコンピュータが実行するためのプログラムである。
【0038】
上記のように構成された請求項12の表情付けプログラムをコンピュータが実行することにより、請求項1と同様な作用効果が得られる。
【0039】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。図1は本発明を適用した電子楽器のブロック図であり、CPU1はROM2に格納されている電子楽器制御プログラムに基づいてRAM3のワーキングエリアを使用して電子楽器全体の制御を行う。通常の電子楽器の基本的な機能として、CPU1は検出回路4aから鍵盤等の演奏操作子4の操作イベントを検出してマニュアル演奏の制御を行う。また、演奏操作子4の操作によりリアルタイム入力で楽曲データを入力することもできる。
【0040】
さらに、CPU1は検出回路5aからスイッチ等のパネル操作子5の操作イベントを検出し各種スイッチの操作に応じた処理を行うとともに、表示回路6aを介して表示器等からなるディスプレイ6の制御を行う。これにより、例えばGUI等により、各種スイッチ操作と画面上の選択等により、楽曲データのステップ入力や、作曲ソフトでの楽曲データの作成、あるいは楽曲データの選択、音色の選択など、ユーザによる各種の入力操作が行われる。
【0041】
タイマ7は自動演奏処理等を行うための割込み信号を発生する回路である。音源回路8は、CPU1から設定されるキーコード、音色データ、音量データなどに応じて楽音信号を発生してサウンドシステム9に出力し、サウンドシステム9はD/A変換や増幅等を行ってスピーカーで発音する。
【0042】
記憶手段10はハードディスク装置(HDD)、フロッピィディスク装置(FDD)、CD−ROM装置、光磁気ディスク(MO)装置、デジタル多目的ディスク(DVD)装置等であり、例えばこの記憶手段10から本発明における表情付けプログラムや楽曲データを供給したり、各種データを保存するために用いられる。また、シリアルインターフェース11はMIDIインターフェース等であり、他のMIDI機器との間で各種データの授受を行う。これにより、生の楽曲データや表情付けした楽曲データを他のMIDI機器との間で授受することができる。さらに、ネットワークインターフェース12を介して通信ネットワークに接続し、サーバコンピュータ等から本発明における表情付けプログラムや楽曲データなどの各種データの配信を受けるようにすることもできる。なお、I/O13は外部との間でオーディオ信号等の授受を行う。
【0043】
なお、この実施形態では、表情付けプログラムは実行プログラムの一部として記憶手段10に記憶されており、この実行プログラムがRAM3に展開され、このRAM3内の実行プログラムに基づいて表情付けの処理が行われるものとする。
【0044】
図2は実施形態におけるRAM3の記憶内容を概念的に示す図であり、RAM3には実行プログラムエリア、各種制御に用いるレジスタエリア、修正前の楽曲データを記憶する第1のメモリエリア(1)、修正後の楽曲データを記憶する第2のメモリエリア(2)、及びその他のエリアが設定されている。なお、第1のメモリエリア(1)と第2のメモリエリア(2)の楽曲データのフォーマットは同じであり、楽曲データは、タイミングと楽音イベントの情報が順次記録されている。
【0045】
楽曲データ中のイベントのタイミングのデータは、例えば四分音符あたり24クロックに対応させた所定分解能のクロックをタイムベースとしており、この実施形態ではタイミングのデータは前のイベントからの経過時間である。イベントのデータはノートナンバ、ノートオン、ノートオフ、ベロシティ、プログラムチェンジ(音色)等で構成されており、同じノートナンバで同じプログラムチェンジのイベントのノートオンからノートオフまでの間隔が発音持続時間である。すなわち、発音タイミングを修正する場合はノートオンのタイミングを修正し、発音持続時間を修正する場合はノートオフのタイミングを修正すればよい。また、図2では一つのタイミングに一つのイベントが対応している場合を示しているが、同時発音の場合には1つのタイミングの後に複数のイベントデータが記憶される。なお、この楽曲データのフォーマットは別の形態でもよく、例えばノートナンバとゲートタイムで発音を指示するような場合は、ゲートタイムを修正することで発音持続時間を修正できる。
【0046】
次に、実施形態の動作について第1〜第3実施形態について説明する。なお、第2、第3実施形態と第1実施形態の違いはアルペジオ奏法の判別処理の一部が異なるだけで第2、第3実施形態のアルペジオ周期の検出や修正に係る主な部分は第1実施形態と同様である。
【0047】
(第1実施形態)
図3〜図6はCPU1が実行する実行プログラムの要部フローチャートであり、各フローチャートに基づいてCPU1の制御動作について説明する。図3のメイン処理では、ステップS1で各種フラグやバッファのリセット処理などの初期設定処理を行い、ステップS2でパネル操作子5の操作に応じた各種処理を行う。この処理では、例えばユーザによる楽曲データの選択や修正するかしないかのモードの設定、選択した楽曲データ(トラック)の音色(楽器の種類)の設定等の処理を行う。なお、この実施形態では、ギターの音色が選択された場合について説明するが、ピアノなど他の音色を選択した場合は、後述の修正処理ではその音色に応じた処理を行うものとする。ステップS3では、図4のアルペジオ奏法の判別と楽曲データの修正処理を行い、ステップS4で楽曲データに基づいて自動演奏処理を行ってステップS1に戻る。
【0048】
図4のアルペジオ奏法の判別と楽曲データの修正処理では、ステップS11で、アルペジオ奏法の判別と楽曲データの修正の指示の有無を判定し、指示がなければ元のルーチンに復帰し、指示があればステップS12に進む。ステップS12では、判別対象として選択された楽曲データをRAM3のメモリエリア(1)に読み込み、メモリエリア(1)から楽曲データ中の最初の所定数の音符情報(タイミングとイベント)を読み出して、検索・分析を開始する。実施形態では所定数は6つ(6音符分)とするが、周期性を判定するために次の1音も参照する。
【0049】
次に、ステップS13で、音高(音程)の変化方向(上か下か)に周期性があるか否かを判定する。例えば、図7の譜例の場合、最初の6音符とその次の音符の音程変化は「下下上下下上」となっており、「下下上」の変化に周期性があると判定する。なお、音程変化は上下の変化方向を考慮すればよく、この時点では音程の変化量は考慮しなくてもよい。そして、このような周期性が無ければステップS14で現在選択されている音符情報には「アルペジオ奏法がない」と判別し、ステップS15で、読み出した音符情報(6音符の音符情報)をそのままメモリエリア(2)に書き込み、ステップS102に進む。
【0050】
一方、ステップS13で、周期性があると判定したら、ステップS16で、1周期中に、音高が「上」、「下」に変化するか否かを判定し、判定がNOであればステップS14に進み、判定がYESであれば、ステップS17に進む。この判定は、例えば「上上上上上上」と変化する場合も「上上上」に周期性があると判定できるが、この場合は上昇音形であってアルペジオではないので、「上」、「下」に変化するか否かで、アルペジオであるか否かを判定している。
【0051】
ステップS17では、各周期の音符情報に類似性があるか否かを判定する。すなわち、第1に「余分な休符が含まれていない」という条件、第2に「必要以上に符長の長い音符がない」という条件(デフォルトでは、他の周期との間で同じ順番の音符に比べて2倍未満であるという条件)、第3に「1周期の長さ(合計符長)が大きく変化しないという条件(デフォルトでは、他の周期との間で合計符長が互いに2倍未満であるという条件)、第4に各周期の音域が大きくずれていないという条件(デフォルトでは、1オクターブ未満という条件)の、各条件が満足されているかを判定する。そして、各条件が満足されていれば各周期の音符情報に類似性があると判定し、類似性がないと判定された場合はステップS14に進み、類似性があると判定された場合はステップS18に進む。
【0052】
ステップS18では、現在選択されている音符情報に「アルペジオ奏法がある」と判別し、ステップS19で図5の周期の特定処理を行い、次に、ステップS101で図6の音符情報の修正とメモリエリア(2)への書込処理を行ってステップS102に進む。ステップS102では、楽曲データ(分析していない音符情報)がまだあるか否かを判定し、無ければ元のルーチンに復帰し、まだあればステップS103で、メモリエリア(1)から次の所定数の音符情報を読み出し、ステップS13以降で同様の処理を行う。
【0053】
ここで、この図4のアルペジオ奏法の判別と楽曲データの修正処理では、所定数の音符を単位にアルペジオ奏法の判別を行っているが、この所定数は例えば図3のステップS2でユーザが設定してもよいし、デフォルト(この例では6音符)でアルペジオ奏法が判別されなければ、所定数を8音符、10音符、…のように順次変更して図4の処理を繰り返してもよい。
【0054】
図5の周期の特定処理は、アルペジオ奏法があると判別した所定数の音符情報における周期を特定する処理であり、所定数をmとして示してある。まず、ステップS21で2音符毎の周期があるか判定し、周期があればステップS22で2音符毎の周期と特定して元のルーチンに復帰する。2音符毎の周期がなければ、ステップS23で3音符毎の周期があるか判定し、周期があればステップS24で3音符毎の周期と特定して元のルーチンに復帰する。3音符毎の周期がなければ、音数を順次増やして同様の処理を行い、ステップS25で、m−1音符毎の周期があるか判定し、周期があればステップS26でm−1音符毎の周期と特定して元のルーチンに復帰する。m−1音符毎の周期がなければ、ステップS27でm音符毎の周期と特定して元のルーチンに復帰する。
【0055】
図6の音符情報の修正とメモリエリア(2)への書込処理では、ステップS31で、アルペジオの各周期の音符情報毎に評価を行って音符情報に対して各周期と周期中の順番の設定等を行う。次に、ステップS32で、現在の周期の各音符情報について、次の周期の対応する順番までに同じ音程の音符があるか否かを判定し、同じ音程の音符があればステップS33でその音符直前まで発音持続時間を延長(例えばキーオフの延長)して、ステップS37に進む。そして、次の周期の対応する順番までに同じ音程の音符がなければ、ステップS34で、次の周期の対応する順番の音符は同じ音程か否かを判定し、同じ音程であれば、ステップS35でその音符直前まで発音持続時間を延長して、ステップS37に進み、対応する順番の音符は同じ音程でなければステップS36に進む。なお、ステップS32の判定は、前周期のn番目の音符と同じ音程の音符が後周期n番目の音符より前にある場合を判定しており、ステップS34の判定は、前周期のn番目の音符と後周期n番目の音符とが同じ音程である場合を判定している。
【0056】
次に、ステップS36では、ステップS32、ステップS34で判定がNOとなった音符情報について、次のアルペジオ周期直前まで発音持続時間を延長して、ステップS37に進む。ステップS37では、次の周期があるか否かを判定し、あればステップS32に戻り、次の周期がなければ、ステップS38で、最後の周期の各音符情報はその周期の終了直前まで発音を延長し、修正した各音符情報をメモリエリア(2)に書き込み、元のルーチンに復帰する。
【0057】
次に、以上の処理結果の一例を説明する。図7の譜例の修正前の楽曲データは図9のようになっているが、修正後は図8のようになる。各3連符がアルペジオの一つの周期と判定され、第1〜第3の周期の各音符については、図6のステップS31の判定でYESとなって、ステップS35で、次の周期の対応する順番の同じ音程の音符の直前まで発音持続時間が延長されている。また、第4の周期の各音符については、図6のステップS38で周期の終了直前まで発音持続時間が延長されている。
【0058】
また、図10の譜例の場合、その修正前の楽曲データは図12のようになっているが、修正後は図11のようになる。各3連符がアルペジオの一つの周期と判定され、第1〜第3の各周期の最初の音符については、図6のステップS32の判定でNOとなって、ステップS36で、次のアルペジオ周期直前まで発音持続時間を延長されている。また、第1〜第3の各周期の2番目と3番目の音符については、図6のステップS31の判定でYESとなって、ステップS35で、次の周期の対応する順番の同じ音程の音符の直前まで発音持続時間が延長されている。さらに、第4の周期の各音符については、図6のステップS38で周期の終了直前まで発音持続時間が延長されている。なお、図8及び図11において、同じ音程が連続するとき、前の音符は発音持続時間が次の音符の直前まで延長されていて、図では連続しているように見えるが、この次の音符のタイミングで再度発音(ノートオン)されることはいうまでもない。
【0059】
また、図13の譜例の場合、その修正前の楽曲データは図15のようになっているが、修正後は図14のようになる。各3連符がアルペジオの一つの周期と判定され、第1〜第3の各周期の音符については、図6のステップS32の判定でNOとなって、ステップS36で、次のアルペジオ周期直前まで発音持続時間を延長されている。また、第4の周期の各音符については、図6のステップS38で周期の終了直前まで発音持続時間が延長されている。
【0060】
このように、各周期において、最初の音、次の音、その次の音と同時発音が継続されるので、ギターなどのアルペジオ奏法を再現することができ、自然な自動演奏を行うことができる。
【0061】
また、音色がピアノの場合、発音持続時間を少しだけ延長する。例えば図7の譜例の楽曲データでは図16のように修正する。これにより、ピアノ演奏時には、離鍵タイミングを少しずつ遅らせることにより、発音持続時間を延長してアルペジオ演奏するような場合を、自動演奏において再現することができる。なお、この場合の延長時間は、次の音符の修正前の発音持続時間(ゲートタイム)の半分程度とすればよい。
【0062】
(第2実施形態)
次に、アルペジオ奏法判別の第2実施形態について説明する。この第2実施形態は、例えば図17の譜例に示したように、楽曲データのアルペジオ中にベース音など他の音と同時発音する音符情報が含まれいている場合に有効である。すなわち、複数音を同時発音するようなアルペジオもあり、アルペジオの判別が難しい場合がる。図17の場合は、最初の音符C4とC5が同時であるので、たまたまC4がデータの配列上、C5より先に配置されていれば、C5以降の音符列で第1実施例と同様にアルペジオ周期の検出が可能になるが、たまたまC4の方がC5の後に配置されていると、アルペジオの1周期目を検出することができなくなる。
【0063】
そこで、音符の上下変化の周期を評価する前に、同時発音部を形成している音符の存在を調べ、もし同時発音部を形成している音符があれば、その中から1音のみ抽出して周期の評価を行う。この場合、同時発音部のどの音符から抽出してもよいが、まず最高音から抽出する。そして、次に第1実施形態と同様に音程変化の周期性を評価し、アルペジオ奏法を判別する。もし、音高変化の周期が発見できなかった場合には、同時発音部から抽出する1音を次の音程のものに代えて再度周期性の評価を行う。これを繰り返し、同時発音部の最後の1音を抽出した結果、周期性が発見できなければアルペジオを形成していないと評価する。
【0064】
このように同時発音部の他の音を除去した結果、アルペジオが発見されると、アルペジオを形成していると評価された音符群には、必要に応じて第1実施形態と同様にアルペジオの表情付け(発音持続時間の延長)の処理を行えばよいが、同時発音部から除外された音はアルペジオを支えるベース音である可能性が高い。そこで、同時発音部から除外された音が同時発音部の中の最低音であれば、ベース音としての表示付けを行う。具体的には、音量をやや大きめにするといった修正を行う。
【0065】
図18は第2実施形態に係るフローチャートであり、図3のステップS3のアルペジオ奏法の判別と楽曲データの修正処理に対応している。ステップS41で、アルペジオ奏法の判別と楽曲データの修正の指示の有無を判定し、指示が無ければ元のルーチンに復帰し、指示があればステップS42に進む。ステップS42では、判別対象として選択された楽曲データをRAM3のメモリエリア(1)に読み込み、メモリエリア(1)から楽曲データ中の最初の所定タイミング数の音符情報を読み出し、検索・分析を開始する。すなわち、同時発音部は複数の音符を一つのタイミングと数えて所定タイミング数の音符情報を読み出す。また、この実施形態では所定タイミング数は6つのタイミングとするが、周期性を判定するために次の1つのタイミングも参照する。
【0066】
次に、ステップS43で、所定タイミング数の音符情報から同時発音部を検索し、ステップS44で、同時発音部の複数の音符情報のうち音高の高いものから順に1音符情報を抽出し、同時発音部でない音符情報とセットにする。次にステップS45で音高変化周期の評価の処理を行う。このステップS45の音高変化周期の評価の処理は図4のステップS13,S16と同様な処理である。そして、この音高変化周期の評価の処理で周期性が検出されなければ、ステップS44に戻り、周期性が検出されれば、ステップS46で各周期の音符情報に類似性があるかを判定する。このステップS46の判定処理は、図4のステップS17の処理と同様である。
【0067】
ステップS46で類似性がなければ、ステップS47で現在選択されている音符情報には「アルペジオ奏法がない」と判別し、ステップS48で、読み出した音符情報(6音符の音符情報)をそのままメモリエリア(2)に書き込み、ステップS403に進む。
【0068】
一方、ステップS46で類似性があれば、ステップS49で、現在選択されている音符情報に「アルペジオ奏法がある」と判別し、ステップS401で図5の周期の特定処理を行い、ステップS402で図6の音符情報の修正とメモリエリア(2)への書込処理を行ってステップ403に進む。ステップS403では、楽曲データ(分析していない音符情報)がまだあるか否かを判定し、無ければ元のルーチンに復帰し、まだあればステップS404で、メモリエリア(1)から次の所定タイミング数の音符情報を読み出し、ステップS44以降で同様の処理を行う。
【0069】
なお、この第2実施形態において、図6の音符情報の修正とメモリエリア(2)への書込処理を行う場合、ステップS33,S35において修正する音符情報が同時発音部の内の最低音については発音持続時間の修正と同時に音量(ベロシティ)を少し大きくする処理も行う。
【0070】
以上の処理により、ベース音等があってもアルペジオ奏法を検出でる。また、ベースの音の音量が他の音よりも少し大きくなる。
【0071】
(第3実施形態)
次に、アルペジオ奏法判別の第3実施形態について説明する。この第3実施形態は、例えば図20の譜例に示したように、楽曲データ中で2つのアルペジオが並行に推移してそれが同時発音部を形成している場合に有効である。すなわち、この第3実施形態では、次のようにアルペジオを評価する。まず、音符列を検索して、同時発音部を検出する。次にアルペジオ周期を検出する区間(所定タイミング数)において検出された同時発音部が平均して何音で構成されているかを調べる。例えば図20の例では、全ての同時発音部が2音で構成されているので、平均同時音数は2音と評価される。ここで例えば、小節の最初だけ3音で演奏されていると、検出時間範囲を2拍とした場合、平均は、2.17と求められるが、四捨五入して2と求める。
【0072】
次に、各同時発音部の平均音高情報として平均音程を求める。この際、音数が平均同時音数を上回る同時発音部があれば、図17における同時発音部から1音を抽出したのと同様に、同時発音部から平均同時音数だけ抽出して評価を行う。そして、抽出された各同時発音部(平均同時音数だけの音数で構成された新たな同時発音部)の平均音程(小数も含む)を求め、その音程変化の上下変化の周期性を評価することによってアルペジオの検出を行う。例えば、上記抽出された各同時発音部が図20のようになった場合、1拍の3連符の最初の2音の音程は、72(C5のノートコード)と67(G4のノートコード)であり、その平均音程は69.5となる。同様に中央の2音の平均音程は(67+64)/2=65.5、最後の2音の平均音程は(64+60)/2=62となる。そして、後に続く音符についても同様に平均音程を求め、これらの平均音程に基づいて周期性の判断をする。
【0073】
図19は第3実施形態に係るフローチャートであり、図3のステップS3のアルペジオ奏法の判別と楽曲データの修正処理に対応している。ステップS51で、アルペジオ奏法の判別と楽曲データの修正の指示の有無を判定し、指示が無ければ元のルーチンに復帰し、指示があればステップS52に進む。ステップS52では、判別対象として選択された楽曲データをRAM3のメモリエリア(1)に読み込み、メモリエリア(1)から楽曲データ中の最初の所定タイミング数の音符情報を読み出し、検索・分析を開始する。すなわち、同時発音部は複数の音符を一つのタイミングと数えて所定タイミング数の音符情報を読み出すこと、周期性を判定するために次の1つのタイミングも参照することは、第2実施形態と同様である。
【0074】
次に、ステップS53で、所定タイミング数の音符情報から同時発音部を検索し、ステップS54で平均同時音数を求め、ステップS55に進む。ステップS55では、同時発音部の複数の音符情報のうちから、例えば音高の高いものから順に平均同時音数の音符情報を抽出するとともに、各タイミングにおける平均音程を求める。なお、1音の部分や平均同時音数に満たない場合はそのタイミングの音符情報を全て抽出する。
【0075】
次にステップS56で音高変化周期の評価の処理を行う。このステップS56の音高変化周期の評価の処理は、平均音程について図4のステップS13,S16と同様な処理を行う。そして、この音高変化周期の評価の処理で周期性が検出されなければ、ステップS55に戻り、周期性が検出されれば、ステップS57で各周期の音符情報に類似性があるかを判定する。このステップS57の判定処理は、図4のステップS17の処理と同様である。
【0076】
ステップS57で類似性がなければ、ステップS58で現在選択されている音符情報には「アルペジオ奏法がない」と判別し、ステップS59で、読み出した音符情報(所定タイミング数の音符情報)をそのままメモリエリア(2)に書き込み、ステップS504に進む。
【0077】
一方、ステップS57で類似性があれば、ステップS501で、現在選択されている音符情報に「アルペジオ奏法がある」と判別し、ステップS502で図5の周期の特定処理を行い、ステップS503で図6の音符情報の修正とメモリエリア(2)への書込処理を行ってステップ504に進む。ステップS504では、楽曲データ(分析していない音符情報)がまだあるか否かを判定し、無ければ元のルーチンに復帰し、まだあればステップS505で、メモリエリア(1)から次の所定タイミング数の音符情報を読み出し、ステップS55以降で同様の処理を行う。
【0078】
以上の処理により、図20の譜例の修正前の楽曲データは図22のようになっているが、修正後は図21のようになる。
【0079】
以上の実施形態により、アルペジオ奏法を検出することができるが、ギターの音色の場合、音符情報の修正を次のようにしてもよい。例えば図23(A) あるいは図23(B) の譜例に矢印で示した同時発音部(複数音符がある場合)では、より音程の高い音符の発音開始をギターのピックによる撥弦遅れに相当する時間だけ遅らせるようにする。これにより、ギターの構造(弦の配置)や奏法を再現することができる。
【0080】
また、図23(B) の▲1▼で示したハンマリングオンの部分、▲2▼で示したプリングオフの部分にそれぞれハンマリングオンのノイズ、プリングオフのノイズを付加するようにしてもよい。このハンマリングオンの部分とプリングオフの部分は、ギターの音色の場合に、音符情報の音程から、同一弦で1音または半音だけ音程変化する箇所として検出することができる。
【0081】
また、音色がギターなどのように、巻弦を有し、弦を押さえる位置で弦の振動部分の長さを代えることで音程を変化させる弦楽器の場合、検出されたアルペジオ奏法の部分で和音変化があるとき、和音変化の直前の音と直後の音の間に、例えば「キュイン」という音のフィンガーノイズを付加するようにしてもよい。この場合、例えばギターの音色であれば、第3弦〜第6弦のように巻弦に対応する音符情報の部分に付加する。また、ハ長調や、イ短調の場合は開放弦を使いやすいので、これらの調ではフィンガーノイズは少な目にする。さらに、ハイポジションの運指の場合はフィンガーノイズを発生しやすくする。
【0082】
また、音色がギターなどのように、巻弦を有し、弦を押さえる位置で弦の振動部分の長さを代えることで音程を変化させる弦楽器の場合、検出されたアルペジオ奏法の部分で和音変化があるとき、和音変化の直前の音に対して直後の音の音程まで、ピッチベンドを付加するようにしてもよい。
【0083】
さらに、実施形態により、楽曲データから周期性を有する部分を検出することができるが、これによりカッティング奏法の部分を判別し、このカッティング奏法の部分の楽譜情報に対して、発音持続時間(ゲートタイム)を短くするとよい。さらに、発音タイミングを音高順に(低い方から高い方へ、または高い方から低い方へ)ずらせるとよい。これにより、実際のギターのカッティング奏法の演奏を再現することができる。
【0084】
また、アルペジオ奏法の1周期中において、発音順に応じて音量を制御するようにしてもよい。例えば、音量(ベロシティ)のデフォルトを64(ベロシティは0〜127)とし、1番目の音のベロシティを32増加させてベロシティ=96とし、2番目の音のベロシティを8減少させてベロシティ=56とし、3番面の音のベロシティを4減少させてベロシティ=60とするなどしてもよい。これにより、アルペジオ奏法の周期の最初に多いアクセントや、弦を弾く指の力の変化等を再現することができる。
【0085】
なお、楽曲データは複数パート構成でよいことはいうまでもない。その場合、複数パートのそれぞれに対して独立的に本発明の処理が施せるようにしてもよいし、あるいはパートに対して本発明の処理を施した場合に、他のパートの対応する位置も連動して編集されるようにしてもよい。
【0086】
以上の実施形態では電子楽器を例に説明したが、パーソナルコンピュータとソフトウエアで構成した場合にも適用することもできる。また、音源装置、シーケンサ、エフェクタなどそれぞれが別体の装置であって、MIDIあるいは各種ネットワーク等の通信手段を用いて各装置を接続するようなものであってもよい。
【0087】
楽曲データのフォーマットは、実施形態のようにイベントの発生時刻を1つ前のイベントからの時間で表した「イベント+相対時間」の形式の他に、イベントの発生時刻を曲や小節内における絶対時間で表した「イベント+絶対時間」、音符の音高と符長あるいは休符と休符長でイベントのタイミングを表した「音高(休符)+符長」、自動演奏(再生機能)の最小分解能毎にメモリの領域を確保し、イベントの発生する時刻に対応するメモリ領域に演奏イベントを記憶した「ベタ方式」等、どのような形式でもよい。
【0088】
また、前記実施形態では、制御プログラムは記憶手段10のハードディスクに記録されている場合について説明したが、特に電子楽器等の場合ROM2に記録しておいてもよい。さらに、フロッピディスク、CD−ROM、MOディスク等の記憶手段10を使うようにしてもよい。このようにすると、制御プログラムの新規インストールや追加あるいはバージョンアップ等が容易に行える。また、フロッピディスク、磁気ディスク(MO)等に制御プログラムを記録しておいて、RAM3あるいはハードディスクに供給するようにしてもよい。
【0089】
【発明の効果】
請求項1の楽曲データの表情付け装置によれば、提供された楽曲データの音符情報列から、音符情報が周期的に変化する奏法が判別される。この周期的に変化する奏法部分は特定のパターンで繰り返して演奏される部分とみなすことができる。したがって、その奏法に基づく楽器演奏が再現されるように適切な箇所を補正しながら自然な感じの自動演奏を行うことができ、また、音高の変化方向が周期的に同じパターンで変化している場合にはアルペジオ奏法と判断するので、アルペジオ奏法を高い確度で判別でき、さらに、次の周期の対応する順番までに同じ音程の音符がある場合は、その音符直前まで発音持続時間を延長し、同じ音程の音符がない場合は、次のアルペジオ周期直前まで発音持続時間を延長するので、自然な感じのアルペジオ奏法の自動演奏が可能となる。
【0090】
請求項2の楽曲データの表情付け装置によれば、請求項1と同様な効果が得られるとともに、ギターやハープなどの楽器の特徴に応じた自然な感じの自動演奏を行うことができる。
【0091】
請求項3の楽曲データの表情付け装置によれば、請求項1と同様な効果が得られるとともに、自然な感じのアルペジオ奏法の自動演奏が可能となる。
【0093】
請求項の楽曲データの表情付け装置によれば、請求項と同様な効果が得られるとともに、前記音高の音域が極端に違わない、各周期の音符構成が類似することを、アルペジオ奏法の判別の条件とするので、さらに高い確度でアルペジオ奏法を判別できる。
【0094】
請求項の楽曲データの表情付け装置によれば、請求項1と同様な効果が得られるとともに、例えばギターやハープのような撥弦楽器において、音長(ゲートタイム)を修正することにより発音時間が重複する弦による残響発音を実現でき、音量(ベロシティ)を修正することにより、分散して撥弦されるときの音量の違いを表現することができる。したがって、自然な感じの自動演奏が可能となる。
【0095】
請求項の楽曲データの表情付け装置によれば、請求項1と同様な効果が得られるとともに、同時発音に対応する複数の音符情報の内1つのみ抽出して、周期的に変化する奏法を判別するので、部分的に付加された音があっても周期的な変化を高い確度で判別できる。例えばアルペジオ奏法で小節頭のみにベース音が付加されているような場合でも周期的な変化を判別することができる。
【0096】
請求項の楽曲データの表情付け装置によれば、請求項と同様な効果が得られるとともに、同時発音部分の平均音高情報により、周期的な変化を高い確度で判別できる。
【0097】
請求項の楽曲データの表情付け装置によれば、請求項と同様な効果が得られるとともに、同時発音の複数の音符情報について、音高の順に発音開始時間をずらせるので、例えばギターのカッティング奏法などのように撥弦順に応じた発音開始の微妙なズレを再現することができ、ギターなどの楽器の構造に応じた自然な感じの自動演奏が可能となる。
【0098】
請求項の楽曲データの表情付け装置によれば、請求項と同様な効果が得られるとともに、ギターなどの巻弦を有する弦楽器において、和音変化に応じて運指が変化するときに、弦を指が擦るときのフィンガーノイズを再現でき、ギターなどの楽器の構造に応じた自然な感じの自動演奏が可能となる。なお、このようなフィンガーノイズは弦が巻弦である場合に生じ、巻弦を用いるような楽器の音色に適している。
【0099】
請求項10の楽曲データの表情付け装置によれば、請求項と同様な効果が得られるとともに、和音変化時に弦を押さえたまま運指をスライドさせたときの微妙な音高変化を実現することができる。すなわち、、弦を押さえたまま運指をスライドさせると、弦が振動した状態でフレット位置が変化し、振動する弦のピッチもフレットで規定される2つのピッチ間で瞬間ではあるが連続的に変化するので、これをピッチベンドにより実現することができる。
【0101】
請求項11の楽曲データの表情付け方法によれば、請求項1と同様な効果が得られる。
【0102】
請求項12の表情付けプログラムをコンピュータが実行することにより、請求項1と同様な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した電子楽器のブロック図である。
【図2】本発明の実施形態におけるRAMの記憶内容を概念的に示す図である。
【図3】本発明の実施形態におけるメイン処理のフローチャートである。
【図4】第1実施形態におけるアルペジオ奏法の判別と楽曲データの修正処理のフローチャートである。
【図5】実施形態における周期の特定処理のフローチャートである。
【図6】実施形態における音符情報の修正とメモリエリア(2)への書込処理のフローチャートである。
【図7】実施形態におけるアルペジオの譜例を示す図である。
【図8】実施形態における図7の譜例の修正後の楽曲データを示す図である。
【図9】実施形態における図7の譜例の修正前の楽曲データを示す図である。
【図10】実施形態におけるアルペジオの第2の譜例を示す図である。
【図11】実施形態における図10の譜例の修正後の楽曲データを示す図である。
【図12】実施形態における図10の譜例の修正前の楽曲データを示す図である。
【図13】実施形態におけるアルペジオの第3の譜例を示す図である。
【図14】実施形態における図13の譜例の修正後の楽曲データを示す図である。
【図15】実施形態における図13の譜例の修正前の楽曲データを示す図である。
【図16】実施形態における図13の譜例のピアノ音色の場合の修正後の楽曲データを示す図である。
【図17】実施形態におけるアルペジオの第4の譜例を示す図である。
【図18】第2実施形態におけるアルペジオ奏法の判別と楽曲データの修正処理のフローチャートである。
【図19】第3実施形態におけるアルペジオ奏法の判別と楽曲データの修正処理のフローチャートである。
【図20】実施形態におけるアルペジオの第5の譜例を示す図である。
【図21】実施形態における図20の譜例の修正後の楽曲データを示す図である。
【図22】実施形態における図20の譜例の修正前の楽曲データを示す図である。
【図23】実施形態におけるアルペジオの第6の譜例を示す図である。
【符号の説明】
1…CPU、2…ROM、3…RAM、10…記憶手段

Claims (12)

  1. 音符情報列を含む楽曲データを提供する楽曲データ提供手段と、
    前記提供された楽曲データの音符情報列から音符情報が周期的に変化する奏法を判別する奏法判別手段と、
    前記奏法判別手段で判別された奏法の部分の音符情報を該奏法に基づく楽器演奏が再現されるように修正する修正手段と、
    を備え
    前記奏法判別手段は、前記楽曲データを所定長さずつ読み出し、その音符情報中の音高の変化方向が周期的に同じパターンで変化しているかどうかを分析し、音高の変化方向が周期的に同じパターンで変化している場合にはアルペジオ奏法と判断し、
    前記修正手段は、次の周期の対応する順番までに同じ音程の音符がある場合は、その音符直前まで発音持続時間を延長し、同じ音程の音符がない場合は、次のアルペジオ周期直前まで発音持続時間を延長する
    ことを特徴とする楽曲データの表情付け装置。
  2. 前記修正手段は、前記楽曲データの音色情報に基づき、その音色に対応する楽器演奏が再現されるように、前記音符情報を修正することを特徴とする請求項1記載の楽曲データの表情付け装置。
  3. 前記奏法判別手段が、前記音符情報が周期的に変化する奏法としてアルペジオ奏法を判別することを特徴とする請求項1記載の楽曲データの表情付け装置。
  4. 前記奏法判別手段は、前記音高の音域が極端に違わない、各周期の音符構成が類似することを、アルペジオ奏法の判別の条件とすることを特徴とする請求項1記載の楽曲データの表情付け装置。
  5. 前記修正手段は、前記奏法を判別した部分の音符情報の音長及び/または音量を修正することを特徴とする請求項記載の楽曲データの表情付け装置。
  6. 前記楽曲データに同時発音に対応する複数の音符情報がある場合には、前記奏法判別手段は、その複数の音符情報の内1音を順次抽出しながら、その1音と次のタイミングの音符情報とに基づいて、音高の変化方向が周期的に同じパターンで変化しているかどうかを分析することを特徴とする請求項1記載の楽曲データの表情付け装置。
  7. 前記楽曲データに同時発音に対応する複数の音符情報がある場合には、その同時発音の発音数とその平均音程を求め、該発音数及び平均音程と、次のタイミングの同時発音の発音数とその平均音程とから、音高の変化方向が周期的に同じパターンで変化しているかどうかを分析することを特徴とする請求項記載の楽曲データの表情付け装置。
  8. 前記音符情報が周期的に変化する奏法が判別され、かつその周期中に同時発音に対応する複数の音符情報がある場合には、複数の音符情報について、音高の順に発音開始時間をずらせることを特徴とする請求項記載の楽曲データの表情付け装置。
  9. 音符情報列を含む楽曲データを提供する楽曲データ提供手段と、
    前記提供された楽曲データの音符情報列から音符情報が周期的に変化する奏法を判別する奏法判別手段と、
    前記奏法判別手段で判別された奏法の部分の音符情報を該奏法に基づく楽器演奏が再現されるように修正する修正手段と、
    を備え、
    前記奏法判別手段は、前記楽曲データを所定長さずつ読み出し、その音符情報中の音高の変化方向が周期的に同じパターンで変化しているかどうかを分析し、音高の変化方向が周期的に同じパターンで変化している場合にはアルペジオ奏法と判断し、
    前記楽曲データが弦楽器の音符情報を含む楽曲データであって、前記修正手段は、該弦楽器の音符情報のアルペジオ奏法の各周期の和音が変わった箇所に、フィンガーノイズを付加することを特徴とする楽曲データの表情付け装置。
  10. 音符情報列を含む楽曲データを提供する楽曲データ提供手段と、
    前記提供された楽曲データの音符情報列から音符情報が周期的に変化する奏法を判別す る奏法判別手段と、
    前記奏法判別手段で判別された奏法の部分の音符情報を該奏法に基づく楽器演奏が再現されるように修正する修正手段と、
    を備え、
    前記奏法判別手段は、前記楽曲データを所定長さずつ読み出し、その音符情報中の音高の変化方向が周期的に同じパターンで変化しているかどうかを分析し、音高の変化方向が周期的に同じパターンで変化している場合にはアルペジオ奏法と判断し、
    前記楽曲データが弦楽器の音符情報を含む楽曲データであって、前記修正手段は、該弦楽器の音符情報のアルペジオ奏法の各周期の和音が変わった箇所に、ピッチベンドを付加することを特徴とする楽曲データの表情付け装置。
  11. 音符情報列を含む楽曲データを提供し、
    前記提供された楽曲データの音符情報列から音符情報が周期的に変化する奏法を判別し、
    前記判別された奏法の部分の音符情報を該奏法に基づく楽器演奏が再現されるように修正する楽曲データの表情付け方法であって、
    前記楽曲データを所定長さずつ読み出し、その音符情報中の音高の変化方向が周期的に同じパターンで変化しているかどうかを分析し、音高の変化方向が周期的に同じパターンで変化している場合にはアルペジオ奏法と判断し、
    次の周期の対応する順番までに同じ音程の音符がある場合は、その音符直前まで発音持続時間を延長し、同じ音程の音符がない場合は、次のアルペジオ周期直前まで発音持続時間を延長する
    ことを特徴とする楽曲データの表情付け方法
  12. 音符情報列を含む楽曲データを提供するステップと、
    前記提供された楽曲データの音符情報列から音符情報が周期的に変化する奏法を判別するステップと、
    前記楽曲データを所定長さずつ読み出し、その音符情報中の音高の変化方向が周期的に同じパターンで変化しているかどうかを分析し、音高の変化方向が周期的に同じパターンで変化している場合にはアルペジオ奏法と判断するステップと、
    次の周期の対応する順番までに同じ音程の音符がある場合は、その音符直前まで発音持続時間を延長するステップと、
    同じ音程の音符がない場合は、次のアルペジオ周期直前まで発音持続時間を延長するステップと、
    をコンピュータが実行するための楽曲データの表情付けプログラム
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