JP4024966B2 - アダプティブアレイ基地局 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は移動体通信端末の無線基地局、より具体的にはアンテナコンフィグレーションチェックを自動的に行う機能を備えたアダプティブアレイ基地局に関する。
【0002】
【従来の技術】
移動体通信端末であるPHS端末は、通話料金が安く、しかも小型・軽量であるため、発売当初から多くのユーザを獲得することができた。しかし、携帯電話機の通話料金の引下げや、小型・軽量化が実現したことにより、PHS端末のメリットが薄れ、逆にデメリットがクローズアップされてPHS端末から携帯電話機に切り換えるユーザもでてきている。
【0003】
すなわち、PHS端末は、携帯電話機に比べてクリアな音声通話ができるとともに高速データ通信が可能ありかつ電力消費が少ない等のメリットがあるが、携帯電話機に比べて通話エリアが狭く、呼の途中切断が移動中に発生し易く、また電話がかかりにくい等のデメリットがあった。そこで、PHS端末のこのような問題を解決する次世代PHS基地局として、干渉を抑圧することによってサービスできるエリアを拡大すると同時に、通話品質を改善することができるアダプティブアレイ基地局が開発された。
【0004】
アダプティブアレイ基地局とは、アダプティブビームフォーミング(Adaptive Beam Forming)およびアダプティブヌルスティアリング(Adaptive Null Steering)のアダプティブアレイ技術を搭載した基地局を意味する。ここで、アダプティブビームフォーミングは通信を行う希望PHS端末に対して最大の送信電力で送信することを可能にする機能である。また、アダプティブヌルスティアリングは通信を行わない与干渉PHS端末に対して影響を与えないようにヌル送信する機能である。
【0005】
図3はアダプティブアレイ基地局におけるこれら機能の概略を示した説明図である。図3において、基地局40はアダプティブアレイ基地局であり、基地局50は通常のPHS基地局である。PHS端末PS1はアダプティブアレイ基地局40と通信を行っており、PHS端末PS2は電波500により基地局50と通信を行っている。また、PHS端末PS1とPHS端末PS2は同じ周波数で同一タイムスロットを使用して基地局との通信を行っているものとする。
【0006】
アダプティブアレイ基地局40はPHS端末PS1と通信を行う場合、アダプティブビームフォーミング機能により、希望PHS端末であるPHS端末PS1に対して最大の送信電力になるように電波の吹き方(振幅と位相)を制御する。アダプティブアレイ基地局40はまた、アダプティブヌルスティアリング機能を用いて、与干渉PHS端末であるPHS端末PS2からの上りの干渉(点線520)を抑圧するように電波の振幅と位相を制御する。
【0007】
その結果、アダプティブアレイ基地局40はPHS端末PS1に対して電波400に示すような最大の送信電力で、かつPHS端末PS2に影響を与えないように振幅と位相を制御して電波を吹く。このような電波400でPHS端末と通信を行うことにより、上りと下りの干渉抑圧によってC/I(希望レベルと干渉レベルの比)が改善され、希望PHS端末との通話品質を著しく向上させることができる。また、アダプティブアレイ基地局では、このように干渉抑圧能力があるので、従来のPHS基地局と比較して著しく周波数有効利用率を向上させることができ、その結果、トラヒックキャパシティを向上させることができる。
以上説明したようにアダプティブアレイ基地局では、電波を均等に輻射するのでは無く、アダプティブビームフォーミング機能とアダプティブヌルスティアリング機能により電波の振幅と位相を制御して出力する。これにより、希望PHS端末には最大の送信電力で送信でき、かつ与干渉PHS端末に対してはヌル送信になるように電波に指向性を持たせることができる。
【0008】
このようなアダプティブアレイ基地局において、従来、基地局のアンテナを含んだハードウェアのコンフィグレーションが正常かどうかのチェックは、基地局を設置した際にローカルまたはリモートで基地局にログインして、無線周波数の送受信部のキャリブレーションを実施し、その結果をチェックすることで判断していた。また、個別にアンテナ異常の検出をPHS端末から上りの受信電界強度を統計的に処理することで実施していた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
このように従来のアダプティブアレイ基地局では、自動的にキャリブレーションを実施してその結果をチェックすることができなかったので、運用する際に多くの時間と労力を必要とするという問題があった。また、ハードウェアに異常が発生した場合に、すぐにその箇所を検出して対処することができなかった。さらに、キャリブレーションのチェックも明確な仕様で実施されていなかった。
【0010】
また、アンテナやアンテナケーブルの異常を検出する場合、従来技術ではPHS端末との通話時の上りの受信電界強度を収集して、統計的に処理することが一般的であった。しかし、この方法では、PHS端末の位置によっては各アンテナでの受信電界強度に大きなバラツキが生じることがあり、誤検出の原因となるという問題もあった。
本発明はこのような従来技術の課題を解決し、常に最適なアダプティブアレイ効果を発揮できるアダプティブアレイ基地局を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は上述の課題を解決するために、アダプティブアレイ基地局は、第1のアンテナから第nのアンテナを備え、通信を行う移動体通信端末に対しては最大の送信電力で通信するアダプティブビームフォーミングを行い、通信を行っていない与干渉移動体通信端末に対しては影響を与えないようにするアダプティブヌルスティアリングを行う。アダプティブアレイ基地局は、第1のアンテナから第nのアンテナまで、1本ずつ順番に既知の振幅と位相で微弱な電波を送信し、この電波を送信したアンテナ以外のアンテナでこの送信した電波を受信することで、第1のアンテナから第nの各アンテナにおける無線周波数の送受信部の特性のキャリブレーションを、ハードウェアのコンフィグレーションが正常であるか否かを自動的に判断するアンテナコンフィグレーションチェックプログラムが当該基地局にダウンロードされて他の基地局との同期が確立した後、および夜間のトラヒックの少ない時間帯に制御チャネルの送信を止めて他の基地局とのエアー同期を確認した後、に実施する。そして、この実施したキャリブレーションの結果をチェックし、当該基地局のハードウェアのコンフィグレーションが正常であるか否かを自動的に判断するアンテナコンフィグレーションチェックを行うことで、常に最適なアダプティブアレイ効果を発揮できるようにする。
【0012】
【発明の実施の形態】
次に添付図面を参照して本発明によるアダプティブアレイ基地局の実施の形態を詳細に説明する。
図1を参照すると、本発明によるアダプティブアレイ基地局をデジタル無線通信用アダブティブアレイ基地局であるPHS基地局に適用したときの実施の形態を示す機能ブロック図が示されている。
本実施の形態によるアダブティブアレイ基地局は、設置時も含めて定期的にアンテナを含んだハードウェアのコンフィグレーションをチェックする機能を備えているので、常に最適なアダブティブアレイ効果が期待できる。なお、本明細書において、無線周波数の送受信部の特性をキャリブレーションする機能を利用したハードウェアのコンフィグレーションチェックを、アンテナコンフィグレーションチェックと称している。
【0013】
図1において、本実施の形態によるアダプティブアレイ基地局10は、4つのアンテナANT1〜ANT4を備え、これらアンテナANTが送受信切り替えスイッチ12に接続されている。送受信切り替えスイッチ12は、これらアンテナANT1〜ANT4を時分割で制御して送信と受信との切り替え制御を行っている。送受信切り替えスイッチ12には受信系モジュール14と送信系モジュール22とが接続されている。
【0014】
受信系モジュール14は、各アンテナANT毎に備えた、4つのローノイズ増幅器(LNA)16、ダウンコンバータ(D/C)18、A/Dコンバータ(A/S)20により構成されている。受信系モジュール14はまた、モデム部30に接続され、ローノイズ増幅器16、ダウンコンバータ18およびA/Dコンバータ(A/S)20は、信号経路である送受信切り替えスイッチ12からモデム部30に向かってこの順番で接続されている。
【0015】
送信系モジュール22は、同様に、各アンテナANT毎に備えた、4つのD/Aコンバータ(D/A)24、アッパコンバータ(U/C)26、電力増幅器(P/A)28により構成されている。送信系モジュール22はまた、モデム部30に接続され、D/Aコンバータ24、アッパコンバータ26および電力増幅器28は、信号経路であるモデム部30から送受信系切り替えスイッチ12に向かってこの順番で接続されている。
【0016】
モデム部30は、複数のCPUから構成されており、送受信データの変復調およびデジタル信号処理による位相制御を行なっている。具体的には以下の5つの制御を行う。
1.受信系モジュール14の最終段で変換されたディジタル信号の例えばD/U(Desire/Undesire: 希望波/妨害波)が最大となるように合成し復調する。
2.アンテナANTでの受信の位相を算出して、送信時にはアンテナ端で同等の位相になるように制御する。それによって、通信を行うPHS端末の方向に送信/受信とも指向性を持たせることができる。
3.干渉波と遅延波の到来方向にヌル点を作ることによって抑圧する。
4.n本のアンテナに供給する信号の位相を制御することによって、任意の方向に指向性を持たせてビームを絞って送信することを可能とする。
5.周囲の基地局や通話中、あるいはデータ(通信)のやりとりをしているPHS端末以外のPHS端末に対して、下り方向に与える干渉を減少させる。
このモデム部30は制御部32に接続されている。
【0017】
制御部30は複数のCPUから構成され、アダプティブアレイ基地局10全体の制御を行う。具体的には以下の2つの制御を行う。
1.モデム部30に対して必要なパラメータおよびタイミングを指示し、モデム部30が受信したデータを処理する。また、空中に輻射すべきデータを作成してモデム部30に渡す。さらに、キャリブレーションによって計算された重み付けによる送信出力の制御を指示する。
2.ISDN回線に接続され、これとのインタフェースの処理を実行する。
電源部34は100Vの電源の供給を受け、アダプティブアレイ基地局10に電力を供給する電源部である。なお、モデム部30および制御部32によりデジタル信号処理部が形成される。
【0018】
アダプティブアレイ基地局では、N(Nは2以上の自然数)本のアンテナから受信した受信情報(振幅と位相)を元にして、各アンテナに対しそれぞれ所定の重み付けで送信する。それによって、アダプティブビームフォーミングとアダプティブヌルスティアリングを可能とする。しかしながら、各アンテナとケーブルは例えばアイソレーションや損失等の異なる特性を持つため、デジタル信号処理部から送信系モジュール等の無線周波数(RF)送信部に所定の重み付けで送信をしたとしても、各アンテナ端では必ずしもその期待した重み付けで送信されるわけでは無い。
【0019】
一般的にアダプティブヌルスティアリングはアダプティブビームフォーミングに比べて、より精度の高い振幅および位相の制御を各アンテナで実施することが要求される。したがって、各アンテナと各ケーブル等の特性をキャリブレーションによって認識して、実際の重み付け送信に反映させる必要がある。
【0020】
図1に示したアダプティブアレイ基地局において、アンテナコンフィギュレーションチェックの内容を以下に示す。
1.無線周波数の送受信部のキャリブレーションが成功したかどうかを判断する。
2.基地局の無線周波数受信部、無線周波数送信部、アンテナ、アンテナと基地局本体との接続ケーブルおよびその接続状態が正常かどうか判断する。
【0021】
無線周波数の送受信部のキャリブレーションを実施する場合、n(nは2以上の自然数)本のアンテナからなる基地局であれば、アンテナ0からアンテナn−1迄1本ずつ順番に連続したスロットタイミングで、既知の振幅と位相で微弱な電波を受信スロットで送信する。その時残りのn−1本のアンテナでの受信情報を使って、無線周波数の送受信部の特性のキャリブレーションを実施する。
【0022】
キャリブレーション時の送信ウエイトは以下の点を考慮して行う。すなわち、アンテナ1本から送信された電波を他のアンテナで受信する場合、なるべくC/I(希望レベルと干渉レベルの比)が高いことかつ飽和しないことが肝要である。さもなければキャリブレーションの精度が保証されない。そのため、本キャリブレーションでは数回のキャリブレーションで一番ベストな送信ウエイトを決定し、以後その送信ウエイトでキャリブレーションを実施する。
【0023】
アダプティブアレイ基地局のハードウェアのコンフィグレーションが正常であるか否かを自動的に判断するアンテナコンフィグレーションチェックを行うソフトウェアは、以下の2つの契機でアンテナコンフィギュレーションチェックを実施する。
1.ソフトウェアが基地局の各プロセッサーにダウンロードされて、他の基地局との同期が確立した後で実施する。
2.夜間のトラヒックの少ない時間帯に制御チャネルの送信を止めて、他の基地局とのエアー同期を確認した後に実施する。
【0024】
自動的に実施されたアンテナコンフィギュレーションチェックの結果、何か異常があればネットワークセンタに速やかに結果のレポートを付けて通知する。図2はネットワークセンタを含むPHSシステムの概念図である。図2において、CS−1〜CS−3はアダプティブアレイ基地局であり、これら基地局はISDNインタフェースにより市内交換機LS−1に接続されている。市内交換機LS−1はまた、ネットワークセンタと接続されている市内交換機LS−2に接続されている。例えば、アダプティブアレイ基地局CS−3に何か異常が発生すると、その障害内容を示したレポートとともに、ISDNインタフェースを介してネットワークセンタに通知が行われる。
【0025】
アンテナコンフィギュレーションチェックは以下の5つのステータスで総合判断する。
1.受信電界強度チェックステータス(RSSI Check Status)
2.送信ウエイトステータス(Tx Weights Status)
3.キャルマグニチュードステータス(Cal Magnitude Status)
4.キャルコンシステンシィステータス(Cal Consistency Status)
5.キャルアキュラシーステータス(Cal Accuracy Status)
上記5つのステータスの内1つでもNGであれば、アンテナコンフィギュレーションチェックはNGとなる。
【0026】
以下、上記5つのステータスについて説明する。
「1.受信電界強度チェックステータス」について以下に説明する。
キャリブレーションを実施する際、n本のアンテナで同じ送信ウエイトW01で順に送信し、各アンテナでの受信電界強度を記録する。実際には受信電界強度をマトリックス表示で記録する。なお、アンテナiで送信してアンテナiで受信する受信電界強度は意味を持たないので、マトリックスの対角線の要素は無視する。
【0027】
受信電界強度チェックステータスは以下の方法で判断する。
キャリブレーション時の受信電界強度マトリックスの作成(アンテナが4本の場合)
(1)キャリブレーションをm回実行する(これは受信電界強度の相対差をチェックするために実施する回数である)。
(2)各キャリブレーションで下記のような受信電界強度マトリックスを作成する。
【数1】
Figure 0004024966
【0028】
m回のキャリブレーションの結果、m個の受信電界強度マトリックスができるので、各要素毎にm回分の平均を出す。m回分の受信電界強度マトリックスをRijとすると、
【数2】
Figure 0004024966
となる。
【0029】
受信電界強度チェックステータスの計算を以下に示す。
まず、上記数1および数2において、「*」は送信したアンテナで受信した受信電界強度なので、無視する。
Rijの中で最大値をCalRssiMaxとする。
RijはTx行とRx列からなっている。即ち各i行はアンテナiで送信した時の他の3本のアンテナでの受信電界強度を示す。また、各j列はアンテナjで他の3本のアンテナからの送信を受信した時の受信電界強度を示す。したがって、受信電界強度チェックステータスの各アンテナの送信系/受信系の異常は以下の条件で判断する。
【0030】
アンテナ0の送信系
CalRssiMax−Max(R0j(J≠0))>CalRssiMargin
アンテナ1の送信系
CalRssiMax−Max(R1j(J≠1))>CalRssiMargin
アンテナ2の送信系
CalRssiMax−Max(R2j(J≠2))>CalRssiMargin
アンテナ3の送信系
CalRssiMax−Max(R3j(J≠3))>CalRssiMargin
【0031】
アンテナ0の受信系
CalRssiMax−Max(Ri0(i≠0))>CalRssiMargin
アンテナ1の受信系
CalRssiMax−Max(Ri1(i≠1))>CalRssiMargin
アンテナ2の受信系
CalRssiMax−Max(Ri2(i≠2))>CalRssiMargin
アンテナ3の受信系
Cal RssiMax−Max(Ri3(i≠3))>CalRssiMargin
ここでCal Rssi Marginは、RSSI Check Statusを判断する為の閾値である。上記の式を満足するアンテナiの送信系或いは受信系が異常と判断される。
【0032】
受信電界強度チェックステータスを判断する時に使用する送信ウエイトが高いと、良好なアンテナの受信電界強度が飽和し、異常のあるアンテナでの受信電界強度および異常のあるアンテナで送信した時の他のアンテナでの受信電界強度も十分高くなる。そのため、適切なCalRssiMarginを設定したにもかかわらず、異常検出できない場合がある。
【0033】
したがって、送信ウエイトは適切な値を使用しなければならない。本キャリブレーションでは受信電界強度の目標値をCalTargeRSSIに設定しており、各アンテナで送信した時の他のアンテナでの受信電界強度がCalTargeRSSIになるような送信ウエイトを記録する。その中で最小の送信ウエイトを実際の受信電界強度チェックステータスを計算する時のキャリブレーションで使用する。
【0034】
「2.送信ウエイトステータス」について以下に説明する。
本キャリブレーションでは、前述したように各アンテナで送信した時の他のアンテナでの受信電界強度がCalTargetRSSIになるように各アンテナの送信ウエイトを可変する。このCalTargetRSSIは、キャリブレーションにおいて他のアンテナでの受信電界強度の目標値である。各アンテナでの他のアンテナに対応する送信ウエイトはマトリックス表示で以下のようになる。
【数3】
Figure 0004024966
【0035】
この行列の行は、他のアンテナでの受信電界強度がCalTargetRSSIになるようなアンテナiの送信ウエイトを示している。従って各アンテナに対応する送信のウエイト全て(Wi0、Wi1、Wi2)がMinTxWeightsより小さいか或いは、MaxTxWeightsより大きい場合に、対応するアンテナのTxWeightsStatusがNGと判断される。
ここで、MinTxWeightsは送信ウエイトの最小値として定義されるもので送信ノイズを考慮して決定される。MaxTxWeightsは送信ウエイトの最大値として定義されるものである。
【0036】
「3.キャルマグニチュードステータス」について以下に説明する。
これは、各アンテナのキャリブレーションベクトルの振幅のステータスである。
本キャリブレーションでは、アンテナ0を基準としてアンテナ1,2,3のキャリブレーションベクトルを、アンテナ0のキャリブレーションベクトルの相対ベクトルとして表す。
【0037】
相対キャリブレーションベクトルの振幅としては、アンテナ0のキャリブレーションベクトルの振幅に対する比(変動幅)であるColNomialRatioを定義してステータスを判断する。すなわち、各アンテナのキャリブレーションベクトルをH0 ,H2 ,H3 ,H4 とすると、各振幅が1/ColNomialRatioより小さいかあるいはColNomialRatioより大きい場合、そのアンテナのキャリブレーションベクトルの振幅ステータスがNGと判断される。
【0038】
一般的にアンテナnの受信部が不良の場合は対応するキャリブレーションベクトルの振幅は1/ColNomialRatioより小さくなり、アンテナnの送信部が不良の場合は対応するキャリブレーションベクトルの振幅はColNomialRatioより大きくなる。ステータスとしては、振幅が1/ColNomialRatioより小さい場合Under Range、逆に振幅がColNomialRatioより大きい場合Over Rangeとして記される。したがって本ステータスがUnder RangeかあるいはOver Rangeかによって、無線周波数の送信部と受信部の不良を或る程度特定できる。一般にアンテナおよびアンテナケーブルが不良の場合は、本ステータスはNGとはならない。
【0039】
ColNomialRatioは、ALC(Auto Level Control)によって基地局の送信出力を一定に保つためにアンテナ毎に送信ゲインを制御するが、制御できるダイナミックレンジには限界がある。したがって、この限界を超えて無線周波数の送信部の補正は出来ないので、ColNomialRatioはダイナミックレンジの限界を考慮して決定しなければならない。
【0040】
「4.キャルコンシステンシィステータス」について以下に説明する。
これはキャリブレーションの信頼性(整合性)を示すステータスである。
このステータスでは、キャリブレーションをk回実施して、各々の相関性をチェックする。具体的には、キャリブレーションベクトルH0 、H1 、H2 、H3 の振幅の標準偏差が、各アンテナのキャリブレーションベクトルの振幅の標準偏差であるCalMagStdSpecより大きい場合、あるいは位相の標準偏差が各アンテナのキャリブレーションベクトルの位相の標準偏差であるCalPhaseStdSpecより大きい場合には、それぞれ振幅と位相がスペックアウトしていると判断して、本ステータスとしてはNGとなる。
【0041】
CalMagStdSpecとCalPhaseStdSpecの値は、アダプティブヌルスティアリングによる下りの干渉抑圧能力を考慮して決定される。CalMagStdSpecとCalPhaseStdSpecの値が小さい程、ソフトウェアのアリゴリズムによって下りの干渉抑圧能力を高める余地があることを示す。逆に、ハードウエアの不良でこれらのスペックを満足出来なければ、十分なアダプティブヌルスティアリング効果が無いことを意味する。
【0042】
「5.キャルアキュレイシィステータス」について以下に説明する。
これは、キャリブレーションの精度を示すステータスである。
このステータスでは、テストキャリブレーションをt回実施してキャリブレーションの精度を確認する。テストキャリブレーションとは、任意の2本のアンテナを使って他の1本のターゲットアンテナに対して、アダプティブビームフォーミングとアダプティブヌルスティアリングのそれぞれ異なる2種類の送信方法で送信させ、ターゲットアンテナでの両者の受信電界強度の差をFOM(Figure of Merit)として定義して記録することである。
【0043】
アンテナが4本の場合、このFOMは1回のテストキャリブレーションで12個存在する。t回のテストキャリブレーションで12個のFOMの平均をそれぞれ計算した後で、大きい順に並べ替えて上位4つのFOMの平均が、テストキャリブレーションの結果のFOMのスペックであるCalFomSpecより大きいかどうか確認する。もし、CalFomSpecより小さければキャルアキュレイシィステータスはNGとなる。このCalFomSpecは、キャリブレーションの精度がモビリティ環境下でも下りの干渉抑圧能力を制限する要因にならないようにすることを考慮して決定される。
【0044】
次にアンテナコンフィギュレーションの各ステータスの表示(通知)方法について説明する。
受信電界強度チェックステータスでは、キャリブレーション時の各アンテナでの受信電界強度情報を使って、各アンテナ毎の送信系と受信系についてそれぞれ診断結果を表示する。結果は図4に示すように各アンテナ毎に2ビットずつ計8ビットで表される。
【0045】
送信ウエイトステータスでは、キャリブレーション時に各アンテナで送信するウエイトが予め定められた範囲にあるかどうかを診断する。結果は図5に示すように、各アンテナ毎に2ビットずつ計8ビットで表される。
キャルマグニチュードステータスでは、アンテナ0,1,2,3のキャリブレーションベクトルの振幅の正常性を診断する。したがって、アンテナ1,2,3の相対キャリブレーションベクトル振幅が、▲1▼1/CalNomialRatio〜ColNomialRatioの場合正常、▲2▼1/CalNomialRatioより小さい場合Under RangeとなりNG、▲3▼CalNomialRatioより大きい場合Over RangeとなりNGになる。
結果は図6に示すように、各アンテナ毎に2ビットずつ計8ビットで表される。
【0046】
キャルコンシステンシィステータスではキャリブレーションの整合性の診断結果を示す。結果は図7に示すように、各アンテナの相対キャリブレーションの振幅と位相についてそれぞれビット毎に表示し、計8ビットで表される。
キャルアキュレイシィステータスではキャリブレーションの精度を診断する。t回のテストキャリブレーションの平均FOMがCalFomSpcc以上の場合に正常とする。結果は8ビットで以下のように表される。
Oh(00000000)…OK、1h(00000001)…NG
【0047】
以上、詳細に説明したように本実施の形態によるアダプティブアレイ基地局によれば、ソフトウエアで自動的にアンテナコンフィギュレーションチェックを実施するので、キャリブレーションが正確に機能しているかどうかを確認することができるので、運用するに当たって時間と労力を削減できる。また、アンテナコンフィギュレーションチェックの結果、もし障害や故障等の異常があれば速やかにネットワークセンターにその情報をアップロードできる。それにより適切な処理が速やかに実施可能となる。
【0048】
さらに、初期設置時の工事ミスや部品の不良を速やかに検知できる。また、設置後の経年変化による障害も検知できる。具体的には夜間のトラヒックが少ない時間帯を選んで、一日に1回アンテナコンフィギュレーションチェックを実施することによってより早く検知できる。さらに、アンテナコンフィギュレーションチェックで異常になった場合、基地局の何処に異常があるのか或る程度特定できる。
【0049】
なお、本実施の形態では本発明によるアダプティブアレイ基地局をPHS基地局に適用したが、本発明は特にPHS基地局に限定されるものではなく、例えばPDC(Personal Digital Cellular) やCDMA(Code Division Multiple Access) 等の基地局にも同様に適用可能である。
【0050】
【発明の効果】
このように本発明のアダプティブアレイ基地局によれば、設置時も含めて定期的にアンテナを含んだハードウェアのコンフィグレーションチェックを自動で行うことで、キャリブレーションが正確におこなわれているかどうかをチェックすることが可能である。また、アダプティブアレイ基地局に障害や故障等の異常が発生した場合には、その箇所が通知されるので速やかに対応することができる。したがって、常に最適なアダプティブアレイ効果を発揮できるアダプティブアレイ基地局を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるアダプティブアレイ基地局をPHS基地局に適用したときの実施の形態を示す機能ブロック図。
【図2】PHSシステムのネットワーク構成図。
【図3】アダブティブアレイ基地局におけるアダプティブビームフォーミングとアダプティブヌルスティアリングの説明図。
【図4】電界受信強度チェックステータスにおける各アンテナ毎の送信系と受信系の診断結果。
【図5】送信ウエイトステータスの診断結果。
【図6】キャルマグニチュードステータスの診断結果。
【図7】キャルコンシステンシィステータスの診断結果。
【符号の説明】
10 アダプティブアレイ基地局
12 送受信切り替えスイッチ
14 受信系モジュール
22 送信系モジュール
30 モデム部
32 制御部
34 電源部

Claims (2)

  1. 通信を行う移動体通信端末に対しては最大の送信電力で通信するアダプティブビームフォーミングを行い、通信を行っていない与干渉移動体通信端末に対しては影響を与えないようにするアダプティブヌルスティアリングを行う、第1のアンテナから第nのアンテナを備えたアダプティブアレイ基地局において、
    前記第1のアンテナから第nのアンテナまで、1本ずつ順番に既知の振幅と位相で微弱な電波を送信する送信手段と、
    前記送信手段により電波を送信したアンテナ以外のアンテナでこの送信した電波を受信する受信手段と、
    前記第1のアンテナから第nの各アンテナにおける無線周波数の送受信部の特性のキャリブレーションを実施するキャリブレーション実行手段と、
    前記キャリブレーション実行手段で実施したキャリブレーションの結果をチェックし、当該基地局のハードウェアのコンフィグレーションが正常であるか否かを自動的に判断するアンテナコンフィグレーションチェック手段とを有し、
    前記アンテナコンフィグレーションチェック手段は、アンテナコンフィグレーションチェックを、
    前記ハードウェアのコンフィグレーションが正常であるか否かを自動的に判断するアンテナコンフィグレーションチェックプログラムが当該基地局にダウンロードされて他の基地局との同期が確立した後、
    および夜間のトラヒックの少ない時間帯に制御チャネルの送信を止めて他の基地局とのエアー同期を確認した後、
    に自動的に実施し、
    常に最適なアダプティブアレイ効果を発揮できるようにすることを特徴とするアダプティブアレイ基地局。
  2. 請求項に記載のアダプティブアレイ基地局において、前記自動的に実施されたアンテナコンフィグレーションチェックの結果、異常が検出された場合にはその異常内容を記したレポートを付けてネットワークセンタに通知することを特徴とするアダプティブアレイ基地局。
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