JP4024822B2 - 磁気エンコーダおよびこれを具備する車輪用軸受 - Google Patents
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このような従来例は、回転軸に嵌合された歯付ローターをナックルに取付られた回転検出センサで感知検出する構造を持ち、使われている軸受にはその側部に独立して設けられたシール装置によって水分あるいは異物の侵入から守られる。
また、特許文献2には、軸方向の寸法を小さくし、回転部材と固定部材との間の密閉度を良好にし、容易に取り付け可能にすることを目的として、回転部材と固定部材との間がシールされ、この回転部材に回転ディスクが取り付けられ、その回転ディスクに多極化されたコーダが取り付けられたコーダ内蔵密閉構造としたものが示されている。使用するコーダは、磁性粒子を添加したエラストマーからなるものが用いられ、このコーダの側面を固定部材の側面とほぼ同一平面としたシール手段とされている。
さらに磁性粉体や磁性粒子の含有する弾性部材やエラストマー製のコーダは、例えば車輪回転検出のための回転検出装置を有したベアリングシールにおいて、回転検出装置の装着スペースを削減せしめ、かつ感知性能を飛躍的に向上させるために、そこに使用するスリンガーの軸方向で近接かつ相対した部位に感知センサを配置しなければならない。しかしこの場合、車両走行中に回転側のベアリングシール表面と固定側の感知センサ表面の間隙に、砂粒などの異物粒子が侵入し噛み込まれると、弾性部材やエラストマー製のコーダ表面は摩耗などによる激しい損傷が認められることがあった。
この発明の他の目的は、部品点数を増やすことなく、コンパクトな構成で回転検出が行え、かつ回転検出のための磁気エンコーダの耐久性に優れた車輪用軸受を提供することである。
この発明の磁気エンコーダの製造方法は、金属製の環状部材と、この環状部材に周方向に沿って設けられかつ周方向に多極に磁化した磁性部材とを備えた磁気エンコーダを製造する方法であって、前記環状部材が円筒部とこの円筒部の一端から外径側へ延びる立板部とでなる断面L字状であり、前記立板部が外または内向きの溝部を有する溝形であり、前記磁性部材の製造過程として、バインダーとなる合成樹脂成分の粉体と磁性粉体との粉体同士の乾式混合分散による粉体塗料を用い、この粉体塗料を、前記環状部材の立板部の前記溝部内に盛り込んで焼き付けることで、塗料被膜からなる磁性部材とすることを特徴とする。
また、磁性粉体を高含有した合成樹脂製の磁性部材の表面硬度は、従来の磁性粉体の含有する弾性部材やエラストマー製のコーダに比べて硬い。そのため、車輪回転検出のための回転検出装置に応用した場合に、車両走行中に回転側の磁性部材の表面と固定側の磁気センサの表面の間隙に、砂粒などの粒子が噛み込まれても、磁性部材の摩耗損傷が生じ難く、従来の弾性体製としたものに比べて、摩耗の大幅な低減効果がある。
さらに、この磁性部材の製造では、エラストマーとは全く別の高分子物質に分類される合成樹脂(プラストマー) をバインダーとするため、加熱・加圧保持する加硫工程が不必要になる。このためエラストマーをバインダーに利用する場合に比べて、圧倒的に生産工程が簡略化できる。
この構成の車輪用軸受によると、シール装置の構成要素を磁気エンコーダとしたため、部品点数を増やすことなく、車輪の回転を検出することができる。車輪用軸受は、一般に路面の環境下にさらされた状態となり、磁気エンコーダとこれに対面させる磁気センサとの間に砂粒等の粒子が噛み込むことがあるが、この噛み込みに対して、次のように保護される。
すなわち、磁性粉体を高含有した合成樹脂製のコーダである磁性部材の表面硬度は、従来の磁性粉体の含有する弾性部材やエラストマー製のコーダに比べて硬い。そのため、車輪回転検出のための磁気エンコーダを有した軸受シール装置において、車両走行中に回転側の軸受シール装置の表面と固定側の磁気センサの表面との間隙に、砂粒などの粒子が噛み込まれても、磁性部材表面の摩耗損傷に大幅な低減効果がある。
この発明の車輪用軸受は、内方部材および外方部材と、これら内外の部材間に収容される複列の転動体と、前記内外の部材間の端部環状空間を密封するシール装置とを備える車輪用軸受において、この発明の磁気エンコーダを前記シール装置の構成要素としたため、部品点数を増やすことなく、コンパクトな構成で回転検出が行え、しかも回転検出のための磁気エンコーダの耐久性に優れたものとなる。
この発明の磁気エンコーダの製造方法は、金属製の環状部材と、この環状部材に周方向に沿って設けられかつ周方向に多極に磁化した磁性部材とを備えた磁気エンコーダを製造する方法であって、前記環状部材が円筒部とこの円筒部の一端から外径側へ延びる立板部とでなる断面L字状であり、前記立板部が外または内向きの溝部を有する溝形であり、前記磁性部材の製造過程として、バインダーとなる合成樹脂成分の粉体と磁性粉体との粉体同士の乾式混合分散による粉体塗料を用い、この粉体塗料を、前記環状部材の立板部の前記溝部内に盛り込んで焼き付けることで、塗料被膜からなる磁性部材としたため、安定したセンシングの得られる磁力を確保しながら薄肉化できて、磁気エンコーダのコンパクト化が図れ、また耐摩耗性が優れたものとなる。しかも、コーダ部分となる磁性部材の製造においても、従来のエラストマーや弾性部材のコーダ使用のものに比べて、生産工程を大幅に簡略することができる。
塗料は、塗膜形成要素と、塗膜形成助要素からなる。塗膜形成要素は、塗膜形成主要素と、これに必要に応じて設けられる塗膜形成副要素、および顔料とを含む。
塗膜形成主要素は、塗膜の主体となる成分であり、多くの場合、有機高分子である。
塗膜形成副要素は、塗膜の形成を助け、性能を向上させる目的で加える物質を言う。これには、可塑剤、乾燥剤、硬化剤、分散剤、皮張り防止剤、増粘剤、平坦化剤、たれ防止剤、防黴剤、紫外線吸収剤などがある。
顔料は、塗膜を着色し不透明性を与え、塗膜の機械的な性質を補強するために用いる。
粉体塗料は、塗膜形成助用途としての溶剤を含まない塗料のことである。粉体塗料は、より詳しくは、塗膜形成主要素、塗膜形成副要素、および顔料のいずれもが粉体で溶剤や希釈剤などの揮発成分としての塗膜成形助要素を含まない塗料のことである。
なお、「無溶剤塗料」と呼ばれるものもあるが、これは塗膜形成主要素自体が液状で、溶剤を必要としない塗料のことであり、上記の粉体塗料とは異なる。
磁性部材14は、磁性粉体の混入した合成樹脂塗料からなるため、次に示すように、安定したセンシングの得られる磁力を確保しながら薄肉化できて、磁気エンコーダ10のコンパクト化が図れるうえ、耐摩耗性に優れ、また生産性にも優れたものとなる。
また、磁性粉体や磁性粒子の含有する塗料被膜製の磁性部材14の製造では、たとえば岩波理化学辞典・第4版((株)岩波書店刊行)に記載されているように、明らかにエラストマーとは全く別の高分子物質に分類される合成樹脂(プラストマー) をバインダーとするため、加熱・加圧保持する加硫工程が不必要になる。このためエラストマーをバインダーに利用する場合に比べて、圧倒的に生産工程が簡略化できる。磁性部材14となる塗料被膜の形成は一般的な塗工方法でよく、エラストマーやプラストマーでの賦形のための射出成形や圧縮成形等で用いる金型は不要になり、型などの摩耗による損傷問題や成形上の負荷の問題は完全に回避できる。
さらに磁性粉体や磁性粒子を高含有した塗料被膜製の磁性部材14の表面硬度は、従来の磁性粉体や磁性粒子の含有する弾性部材やエラストマー製のコーダに比べて硬い。そのため、車輪回転検出のための回転検出装置20に応用した場合に、車両走行中に回転側の磁性部材14の表面と固定側の磁気センサ15の表面の間隙に、砂粒などの粒子が噛み込まれても、磁性部材14の摩耗損傷が生じ難く、従来の弾性体製としたものに比べて、摩耗の大幅な低減効果がある。
外方部材2は、軸受外輪からなり、懸架装置におけるナックル等からなるハウジング(図示せず)に取付けられる。転動体3は各列毎に保持器4で保持されている。
シール装置5の詳細を説明すると、内方部材1と外方部材2に各々取付けられた第1および第2の金属板製の環状部材11,12を有する。これら環状部材11,12は、各々内方部材1および外方部材2に圧入状態に嵌合させることで取付けられている。両環状部材11,12は、各々円筒部11a,12aと立板部11b,12bとでなる断面L字状に形成されて互いに対向する。
第1の環状部材11は、内方部材1および外方部材2のうちの回転側の部材である内方部材1に嵌合され、スリンガとなる。第1の環状部材11は、磁気エンコーダ10における環状部材である。この磁気エンコーダ10における磁性部材14に対面して、同図のように磁気センサ15を配置することにより、車輪回転速度の検出用の回転検出装置20が構成される。
磁気エンコーダ10は、シール装置5の構成要素としたため、部品点数を増やすことなく、車輪の回転を検出することができる。車輪用軸受は、一般に路面の環境下にさらされた状態となり、磁気エンコーダ10とこれに対面させる磁気センサとの間に砂粒等の粒子が噛み込むことがあるが、上記のように磁気エンコーダ10の磁性部材14は合成樹脂塗料からなるものであって硬質であるため、磁性部材14の表面の摩耗損傷は従来の弾性体性のものに比べて大幅に低減される。また、車輪用軸受5における軸受端部の空間は、周辺に等速ジョイント7や軸受支持部材(図示せず)があって限られた狭い空間となるが、磁気エンコーダ10の磁性部材14が上記のように薄肉化できるため、回転検出装置20の配置が容易になる。
内外の部材1,2間のシールについては、第2の環状部材12に設けられた各シールリップ16a〜16cの摺接と、第2の環状部材12の円筒部12aに第1の環状部材11の立板部11bの先端が僅かな径方向隙間で対峙することで構成されるラビリンスシール17とで得られる。
また、磁気エンコーダ10を軸受のシール装置5の構成要素とする場合等において、磁性部材14を、前記各実施形態とは逆に軸受に対して内向きに設けても良い。その場合、環状部材11は非磁性体製のものとすることが好ましい。
2…外方部材
1A…内方部材
2A…外方部材
3…転動体
5…シール装置
10…磁気エンコーダ
11…環状部材
14…磁性部材
15…磁気センサ
20…回転検出装置
Claims (4)
- 金属製の環状部材と、この環状部材に周方向に沿って設けられかつ周方向に多極に磁化した磁性部材とを備えた磁気エンコーダにおいて、
前記環状部材が円筒部とこの円筒部の一端から外径側へ延びる立板部とでなる断面L字状であり、前記立板部が外または内向きの溝部を有する溝形に形成され、前記磁性部材が、バインダーとなる合成樹脂成分の粉体と磁性粉体との粉体同士の乾式混合分散による粉体塗料からなり、かつこの粉体塗料を、前記環状部材の立板部の前記溝部内に盛り込んで焼き付けた塗料被膜であることを特徴とする磁気エンコーダ。 - 請求項1において、前記粉体塗料は、塗膜形成主要素、塗膜形成副要素、および顔料のいずれもが粉体で溶剤や希釈剤などの揮発成分としての塗膜成形助要素を含まない塗料である磁気エンコーダ。
- 内方部材および外方部材と、これら内外の部材間に収容される複列の転動体と、前記内外の部材間の端部環状空間を密封するシール装置とを備える車輪用軸受において、請求項1または請求項2に記載の磁気エンコーダが、前記シール装置の構成要素となるものとした車輪用軸受。
- 金属製の環状部材と、この環状部材に周方向に沿って設けられかつ周方向に多極に磁化した磁性部材とを備えた磁気エンコーダを製造する方法であって、
前記環状部材が円筒部とこの円筒部の一端から外径側へ延びる立板部とでなる断面L字状であり、前記立板部が外または内向きの溝部を有する溝形であり、前記磁性部材の製造過程として、バインダーとなる合成樹脂成分の粉体と磁性粉体との粉体同士の乾式混合分散による粉体塗料を用い、この粉体塗料を、前記環状部材の立板部の前記溝部内に盛り込んで焼き付けることで、塗料被膜からなる磁性部材とすることを特徴とする磁気エンコーダ。
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