JP4024596B2 - 光学機器用反射鏡およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、人工衛星に搭載する光学機器用反射鏡およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、人工衛星に搭載する観測用光学機器に対する性能要求が厳しくなっており、特に温度変化に伴って光学部品に発生する熱変形を極力小さくすることが求められている。その要求に応える光学機器用反射鏡を実現しようとする場合、熱膨張率が1×10−7/℃以下の所謂ゼロ膨張ガラスで反射鏡を作成する方法がある。しかしながら、ガラスは比重が大きい上に強度や剛性が小さいため、そのガラスによって、特に大型の反射鏡を製作しようとする場合、軽量で且つ衛星の打ち上げに耐えられるものを設計することは非常に困難である。
【0003】
そこで、軽量で且つ衛星の打ち上げに耐えられる反射鏡を製作するには、多孔質のセラミックや繊維強化プラスチックなどの軽量で且つ強度・剛性の高い材料を用いることが考えられる。しかしながら、それらの材料で製作した反射鏡では、前記ゼロ膨張ガラスで製作した反射鏡よりも熱変形を小さくすることができない。
【0004】
図10は米国特許第5,208,704号明細書に記載された従来の光学機器用反射鏡を示す斜視図である。
図において、10はセラミック繊維の成型体からなって多くの空孔を有する基材、20はその基材10上に設けられて滑らか面を形成するシーリング層であり、このシーリング層20上にはガラス層30と反射膜層40と保護膜50が順次積層され、これによって光学機器用反射鏡が構成されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来の光学機器用反射鏡は以上のように構成されているので、軽量で高剛性のセラミック繊維成形体を基材としていることにより、反射鏡全体の軽量・高剛性化を図ることはできるが、しかし、熱変形の観点では、ゼロ膨張ガラスを基材とした反射鏡に比して熱変形が大きく、性能低下を余儀なくされるという課題があった。
【0006】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、軽量かつ高剛性で、しかも熱変形し難い光学機器用反射鏡を得ることを目的とする。
【0007】
また、この発明は、鏡面の温度上昇を抑制でき、湿度変化に伴う変形を防止することができる光学機器用反射鏡を得ることを目的とする。
【0008】
さらに、この発明は、金属反射膜を容易に形成できてコスト低減を図ることができる光学機器用反射鏡を得ることを目的とする。
【0009】
さらに、この発明は、軽量かつ高剛性で、熱変形し難く、しかも滑らかな鏡面の金属反射膜を形成することができる光学機器用反射鏡の製造方法を得ることを目的とする。
【0010】
さらに、この発明は、滑らかな鏡面の金属反射膜を容易かつ安価に形成することができる光学機器用反射鏡の製造方法を得ることを目的とする。
【0011】
さらに、この発明は、基材の複合材料や金属膜層が特性とするばらつきに左右されることなく、確実に熱膨張率の絶対値を1×10−7/℃以下で、熱変形が小さな反射鏡を得ることができる光学機器用反射鏡の製造方法を得ることを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る光学機器用反射鏡は、熱膨張率が負の複合材料からなる基材と、この基材の表面を覆って鏡面を形成する熱膨張率が正で厚さが100μm以下の金属反射膜とからなり、基材の熱変形と金属反射膜の熱変形とが釣り合って反射鏡全体の熱膨張率の絶対値が1×10-7/℃以下となるように構成したものである。
【0013】
この発明に係る光学機器用反射鏡は、複合材料が炭素繊維強化炭素を含んでいるものである。
【0014】
この発明に係る光学機器用反射鏡は、金属反射膜がニッケルあるいはクロムからなっているものである。
【0015】
この発明に係る光学機器用反射鏡の製造方法は、熱膨張率が負の複合材料からなる基材を所望の鏡面形状に形成する基材成形工程と、基材上に金属膜層を形成する金属膜層形成工程と、基材上の金属膜層を鏡面仕上げして厚さが100μm以下の金属反射膜を形成する金属反射膜形成工程とを備えたものである。
【0016】
この発明に係る光学機器用反射鏡の製造方法は、金属膜層形成工程が、電解メッキと無電解メッキのいずれかの工程、または電解メッキと無電解メッキの組み合わせ工程からなるものである。
【0017】
この発明に係る光学機器用反射鏡の製造方法は、金属反射膜形成工程において、反射鏡全体の熱膨張率の絶対値が1×10−7/℃以下となるように金属膜層の厚さを調整するものである。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の一形態を説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による光学機器用反射鏡を示す斜視図、図2は図1の断面図である。
図において、1は熱膨張率が負の複合材料からなる基材、2はその基材1の表面(両面)に形成された金属反射膜であり、この金属反射膜2は、熱膨張率が正の金属膜からなって鏡面を形成するものである。
【0019】
前記基材1の複合材料としては、例えばピッチ系炭素繊維XN80(Nippon Graphite Fiber社製)を強化繊維とし、シアネートエステル樹脂EX1515(Bryte Technologies社製)を母材とした炭素繊維強化プラスチックを用いることができる。ここで、前記ピッチ系炭素繊維XN80は繊維長手方向の熱膨張率が−1.6×10−6/℃の負の値となるので、前記炭素繊維強化プラスチック中における繊維の堆積含有率を60%とすれば、前記炭素繊維強化プラスチックの熱膨張率は凡そ−1.0×10−6/℃となって負の値をとる。
【0020】
そこで、図1において、基材1の厚さ、弾性率、熱膨張率を、それぞれts、Es、αsとし、金属反射膜2の厚さ、弾性率、熱膨張率を、それぞれtr、Er、αrとすれば、反射鏡全体の熱膨張率αTは式(1)の式で求めることができる。
αT=αstsEs+2αrtrEr
/tsEs+2trEr ・・・(1)
ここで、式(1)の式中、基材1の熱膨張率αs以外の変数は全て正であるので、式(1)の式においてtrとErの値を適当にとれば、基材1の熱変形と金属反射膜2の熱変形を釣り合わせて、反射鏡全体の熱膨張率αTをゼロに近い値とすることができる。例えば、前記金属反射膜2の材質をニッケルとすることにより、この場合、Es=209GPa、αs=1.0×10−6/℃、Er=207GPa、αr=15.0×10−6/℃となるので、例えばts=15mm、tr=100μmとすることで、αTをほぼゼロに近い値にすることができる。
【0021】
以上説明した実施の形態1によれば、熱膨張率が負の炭素繊維強化プラスチック(複合材料)を基材1とし、この基材1の表面に熱膨張率が正のニッケルからなる金属反射膜2を形成し、前記基材1の熱変形と前記金属反射膜2の熱変形を釣り合わせて反射鏡全体の熱膨張率の絶対値が1.0×10−7/℃以下となるように光学機器用反射鏡を構成することができる。このため、温度変化に伴う反射鏡の熱変形を極めて小さく抑えることができ、環境温度が変化しても、上記構成の反射鏡を有する光学機器の性能が劣化するようなことがないという効果がある。また、上述のように、熱膨張率が負の炭素繊維強化プラスチックで形成された基材1は、従来の反射鏡基材であるガラスや金属あるいはセラミックなどと比較して強度・剛性が高く且つ軽量であり、このため、反射鏡全体の軽量化が図れるという効果がある。
【0022】
なお、上記実施の形態1において、基材1の複合材料は炭素繊維強化プラスチックに特定されるものではなく、その他の例えばアラミド繊維強化プラスチックなど、要するに熱膨張率が負の複合材料であれば如何なるものでもよい。
【0023】
実施の形態2.
図3はこの発明の実施の形態2による光学機器用反射鏡を示す斜視図、図4は図3の断面図であり、図1および図2と同一部分には同一符号を付して重複説明を省略する。
この実施の形態2では、熱膨張率が負の炭素繊維強化炭素によって基材1を形成したものである。ここで、基材1の炭素繊維強化炭素の強化繊維として、例えばピッチ系炭素繊維XN80(Nippon Graphite Fiber社製)を用い、炭素繊維強化炭素における繊維の堆積含有率を30〜60%程度にすると、基材1の熱膨張率は負の値となるので、上記実施の形態1の場合と同様の方法によって、反射鏡全体の熱膨張率がゼロに近い値となるように調整することができる。
【0024】
以上のように実施の形態2では、熱膨張率が負の炭素繊維強化炭素によって反射鏡の基材1を形成するように構成したので、炭素繊維強化炭素の母材である炭素によって、樹脂よりも高い熱伝導率を得ることができ、上記実施の形態1のように炭素繊維強化プラスチックを基材1とする反射鏡に較べて、基材1の熱伝導率を高くすることができる。これに加え、強化繊維を、繊維方向の熱伝導率が600W/mKであるYS95A(Nippon Graphite Fiber社製)のような高熱伝導炭素繊維とすれば、基材1の熱伝導率がさらに高くなり、190W/mKの熱伝導率を有するアルミニウムのような金属材料と比較しても遜色のない熱伝導率値となる。このため、反射鏡が高強度の光に晒されるような場合であっても、入射光で発生する熱が反射鏡内部に速やかに拡散することによって、反射鏡方面の温度上昇を低く抑えることができ、このため、鏡面の焼き付きが起こり難いという効果を期待できる。また、炭素繊維強化炭素は、炭素繊維強化プラスチックと比較すると、空気中の水分を吸収して変形する割合が小さいので、湿度変化に伴って鏡面が変形することがないという効果がある。
【0025】
実施の形態3.
図5はこの発明の実施の形態3による光学機器用反射鏡を示す斜視図、図6は図5の断面図であり、図1から図4と同一部分には同一符号を付して重複説明を省略する。
この実施の形態3では、熱膨張率が負の複合材料で基材1を形成し、この基材1の表面にニッケルまたはクロムのメッキを施して金属反射膜2を形成することで光学機器用反射鏡を構成したものである。
【0026】
この実施の形態3による基材1の複合材料としては、上記実施の形態1の場合と同様に、例えば、ピッチ系炭素繊維XN80(Nippon Graphite Fiber社製)を強化繊維とし、シアネートエステル樹脂EX1515(Bryte Technologies社製)を母材とした炭素繊維強化プラスチックを用いることにより、基材1の熱膨張率が負の値となるので、上記実施の形態1と同様の方法により、反射鏡全体の熱膨張率がゼロに近い値となるように調整することができる。
【0027】
以上説明した実施の形態3では、熱膨張率が負の複合材料からなる基材1の表面にニッケルまたはクロムの金属反射膜2を形成するように構成したので、基材1上に金属反射膜2をメッキによって容易かつ安価に形成できると共に、その金属反射膜2を機械加工によって容易に鏡面仕上げすることができ、このため、所望形状の反射鏡面を容易かつ安価に形成できるという効果がある。
【0028】
実施の形態4.
図7はこの発明の実施の形態4による光学機器用反射鏡の製造方法を説明するための工程図であり、図1から図6と同一または相当部分には同一符号を付して光学機器用反射鏡の製造方法を説明する。
まず、図7(a)に示すように、熱膨張率が負の複合材料からなる基材1を所望の鏡面形状に形成する(基材成形工程)。この基材成形工程において、基材1は、炭素繊維強化プラスチックを適当な成形型で硬化成形することにより所望形状に製作したり、あるいは大きめに成形した炭素繊維強化炭素を機械加工などで製作してもよい。
【0029】
次いで、図7(b)に示すように、基材1の表裏両面に、メッキや溶射あるいは蒸着等によって金属膜層2aを形成する(金属膜形成工程)。この金属膜形成工程では、鏡面の熱膨張率がゼロに近い値となるような金属反射膜2(図7(c)参照)の厚さtrを上記式(1)の式で求めておき、その厚さtrよりも前記金属膜層2aを厚く形成する。その後、前記金属膜層2aを研磨などの機械加工で切削することにより、図7(c)に示すように層厚さtrとなるように表面が滑らかな鏡面に仕上げられた金属反射膜2を形成する(反射膜形成工程)。
【0030】
ここで、一般に複合材料からなる基材1の表面には、強化繊維と母材との混じり合いによる凹凸のパターンが発生するため、前記複合材料の表面に薄い金属膜層を形成しても凹凸のパターンが残って、反射鏡面として使用することができない。また、前記複合材料の表面を機械加工によって滑らかな鏡面に仕上げようとしても、機械加工時に強化繊維が表面から脱落するなどして、滑らかな鏡面を得ることは困難である。
【0031】
その点、上記実施の形態4では、金属膜層形成工程において、基材1の表裏両面に、鏡面仕上げ後の金属反射膜2の厚さtr(図7(c)参照)よりも層厚が厚い金属膜層2aを形成しておき、この金属膜層2aを次の反射膜形成工程で鏡面仕上げするプロセスとするように構成したので、金属膜層2a形成前の基材1の複合材料表面に凹凸のパターンが生じていても、滑らかな反射鏡面を容易に得ることができるという効果がある。
【0032】
実施の形態5.
図8はこの発明の実施の形態5による光学機器用反射鏡の製造方法を説明するための工程図であり、図7と同一または相当部分には同一符号を付して光学機器用反射鏡の製造方法を説明する。
まず、図8(a)に示すように、熱膨張率が負の複合材料からなる基材1を所望の鏡面形状に形成する(基材成形工程)。次いで、図8(b)に示すように、基材1の表裏両面にメッキを施して金属膜層2aを形成する(金属膜形成工程)。
【0033】
その金属膜形成工程において、基材1が繊維強化プラスチックのような電気伝導性に乏しい材料の場合には、無電解メッキによって所望の厚さの金属膜層2aを形成するか、または無電解メッキによって数μmのメッキ層を形成した後、電解メッキによって前記メッキ層を所望の厚さまで成長させる。また、基材1が炭素繊維強化炭素のような電気伝導性が高い材料の場合には、最初から電解メッキによって金属膜層2aを形成することが可能である。
【0034】
そして、前記金属膜層形成工程後に、上記実施の形態4の場合と同様に、前記金属膜層(メッキ層)2aを研磨などの機械加工で切削することにより、図8(c)に示すように層厚さtrとなるように表面が滑らかな鏡面に仕上げられた金属反射膜2を形成する(反射膜形成工程)。
【0035】
以上説明した実施の形態5によれば、複合材料からなる基材1の表裏両面にメッキを施して金属膜層2aを形成するように構成したので、安価なメッキによって金属膜層2aを容易に形成することができ、その金属膜層2aを機械加工によって削るだけで表面が滑らかな鏡面を容易かつ安価に形成できるという効果がある。また、上述のようなメッキによる金属反射膜2は複合材料の基材1との密着強度が高くなるという効果がある。さらに、金属膜層2aを形成できる反射鏡の大きさは、メッキを行うためのメッキ槽の大きさで決まるので、大きなメッキ槽を用意することにより、大口径の反射鏡であっても比較的容易に製造することができるという効果がある。
【0036】
実施の形態6.
図9はこの発明の実施の形態6による光学機器用反射鏡の製造方法を説明するための工程図であり、図7および図8と同一または相当部分には同一符号を付して光学機器用反射鏡の製造方法を説明する。
まず、図9(a)に示すように、熱膨張率が負の複合材料からなる基材1を所望の鏡面形状に形成する(基材成形工程)。次いで、図9(b)に示すように、基材1の表裏両面に金属膜層2aを形成する(金属膜形成工程)。次いで、上記式(1)の式から求められる値trよりも若干薄くなるように金属膜層2aを機械加工で削り込むことで表面が滑らかな鏡面に仕上げられた金属反射膜2を形成する(金属膜層形成工程)。この後、鏡面の熱膨張率を実際に測定し、その測定結果の値が所望の値よりも大きければ、前記金属反射膜2を再度機械加工してtrの調整と熱膨張率の測定を行う。この機械加工によるtrの調整と熱膨張率の測定を行う過程を、鏡面の熱膨張率が1.0×10−7/℃の所望値となるまで繰り返す。
【0037】
以上説明した実施の形態6の製造方法によれば、反射鏡の熱膨張率を実際に測定しながら金属反射膜の厚さを調整できるので、基材1の複合材料や金属膜層2aの特性であるところのばらつきに左右されることなく、確実に熱膨張率の絶対値が1.0×10−7/℃以下で、熱変形が小さな反射鏡を製造することができるという効果がある。
【0038】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、熱膨張率が負の複合材料からなる基材と、この基材の表面を覆って鏡面を形成する熱膨張率が正で厚さが100μm以下の金属反射膜とからなり、基材の熱変形と金属反射膜の熱変形とが釣り合って反射鏡全体の熱膨張率の絶対値が1×10-7/℃以下となるように構成したので、温度変化に伴う反射鏡の熱変形を極めて小さく抑えることができ、環境温度が変化しても、上記構成の反射鏡を有する光学機器の性能が劣化するようなことがないという効果がある。また、上述のように、熱膨張率が負の複合材料からなる基材は、従来の反射鏡基材であるガラスや金属あるいはセラミックなどと比較して強度・剛性が高く且つ軽量であり、このため、反射鏡全体の軽量化が図れるという効果がある。
【0039】
この発明によれば、基材が炭素繊維強化炭素を含む複合材料からなるように構成したので、複合材料の母材の熱伝導率が大きく、吸湿し難い炭素からなることによって、鏡面温度が上昇し難く、湿度変化に伴って変形することのない複合材料の鏡面を形成することができるという効果がある。
【0040】
この発明によれば、ニッケルあるいはクロムによって金属膜層を形成するように構成したので、安価なメッキによって金属反射膜を容易に形成することができるという効果がある。
【0041】
この発明によれば、熱膨張率が負の複合材料からなる基材を所望の鏡面形状に形成する基材成形工程と、基材上に金属膜層を形成する金属膜層形成工程と、基材上の金属膜層を鏡面仕上げして厚さが100μm以下の金属反射膜を形成する金属反射膜形成工程とを備えたプロセスとなるように構成したので、複合材料の基材上に厚めの金属膜層を形成した後、この金属膜層を機械加工によって所望の厚さに切削することで滑らかな鏡面の金属反射膜を形成することができ、このため、滑らか鏡面の光学機器用反射鏡を容易に製造することができるという効果がある。
【0042】
この発明によれば、金属膜層形成工程が、電解メッキと無電解メッキのいずれかの工程、または電解メッキと無電解メッキの組み合わせ工程からなるように構成したので、安価なメッキによって金属膜層を容易に形成することができ、その金属膜層を機械加工によって削るだけで表面が滑らかな鏡面を容易かつ安価に形成できるという効果がある。また、上述のようなメッキによる金属反射膜は複合材料の基材との密着強度が高くなるという効果がある。さらに、金属膜層を形成できる反射鏡の大きさは、メッキを行うためのメッキ槽の大きさで決まるので、大きなメッキ槽を用意することにより、大口径の反射鏡であっても比較的容易に製造することができるという効果がある。
【0043】
この発明によれば、金属反射膜形成工程において、反射鏡全体の熱膨張率の絶対値が1×10−7/℃以下となるように金属膜層の厚さを調整するように構成したので、基材の複合材料や金属膜層の特性であるばらつきに左右されることなく、確実に熱膨張率の絶対値が1.0×10−7/℃以下で、熱変形が小さな反射鏡を製造することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1による光学機器用反射鏡を示す斜視図である。
【図2】 図1の断面図である。
【図3】 この発明の実施の形態2による光学機器用反射鏡を示す斜視図である。図3の断面図である。
【図4】 図3の断面図である。
【図5】 この発明の実施の形態3による光学機器用反射鏡を示す斜視図である。
【図6】 図5の断面図である。
【図7】 この発明の実施の形態4による光学機器用反射鏡の製造方法を説明するための工程図である。
【図8】 この発明の実施の形態5による光学機器用反射鏡の製造方法を説明するための工程図である。
【図9】 この発明の実施の形態6による光学機器用反射鏡の製造方法を説明するための工程図である。
【図10】 従来の光学機器用反射鏡を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 基材、2 金属反射膜、2a 金属膜層。
Claims (6)
- 熱膨張率が負の複合材料からなる基材と、この基材の表面を覆って鏡面を形成する熱膨張率が正で厚さが100μm以下の金属反射膜とからなり、前記基材の熱変形と前記金属反射膜の熱変形とが釣り合って反射鏡全体の熱膨張率の絶対値が1×10-7/℃以下となるように構成した光学機器用反射鏡。
- 基材は、炭素繊維強化炭素を含む複合材料からなっていることを特徴とする請求項1記載の光学機器用反射鏡。
- 金属反射膜はニッケルあるいはクロムからなっていることを特徴とする請求項1記載の光学機器用反射鏡。
- 熱膨張率が負の複合材料からなる基材を所望の鏡面形状に形成する基材成形工程と、前記基材上に金属膜層を形成する金属膜層形成工程と、前記基材上の金属膜層を鏡面仕上げして厚さが100μm以下の金属反射膜を形成する金属反射膜形成工程とを備えた光学機器用反射鏡の製造方法。
- 金属膜層形成工程は、電解メッキと無電解メッキのいずれかの工程、または電解メッキと無電解メッキの組み合わせ工程からなることを特徴とする請求項4記載の光学機器用反射鏡の製造方法。
- 金属反射膜形成工程において、反射鏡全体の熱膨張率の絶対値が1×10-7/℃以下となるように金属膜層の厚さを調整することを特徴とする請求項4または請求項5記載の光学機器用反射鏡の製造方法。
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