JP4023225B2 - 回転しごき加工用熱延鋼板およびその製造方法ならびに自動車用部品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車、産業機械等の軸対称形状の部品に適用可能な回転しごき加工用熱延鋼板およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、自動車等の駆動系部品の中で、クラッチ、ハブ、キャリア等の軸対称形状の部品は、極めて複雑な形状を有している。従来、これらの部品は、鋳造、鍛造、もしくはプレス等により成形した部品、又は棒鋼を切削加工した部品等を、個別成形して電子ビーム溶接で接合することにより製造されていた。そのため、部品点数および製造工程が多くなり、膨大な在庫管理コストおよび製造コストを要していた。
【0003】
近年、このような軸対称形状の部品に対し、製造コストの低減を狙って、鋼板からの一体成形が行われるようになって来ている。特に、ドライブプレート一体型リングギア等、比較的簡単な形状の部品においては、プレス成形による製造が積極的に行われている。
【0004】
例えば、特開平09-137248号公報には、鋼板としての機械的性質の低下を招くことなく、摺動性を向上させた、成形性に優れる熱延鋼板とその製造方法が提案されている。これは、鋼板の組織が再結晶フェライト相であって、かつ鋼板表層部におけるフェライト相の平均結晶粒径を10μm未満、鋼板内部のフェライト相の平均結晶粒径を10μm以上とする。また、この熱延鋼板を、粗圧延で得られたシートバーを表面温度(Ar3点+50〜200℃)から(Ar3点−20〜300℃)まで、0.1 秒以内で強制冷却し、引き続き仕上げ圧延を5秒以内に開始し、圧延終了温度:Ar3点〜(Ar3点+100℃)の450〜600℃で巻き取ることにより製造するというものである。
【0005】
特開平09-125195号公報には、低炭素鋼における加工性の優れた熱延鋼板とその製造方法が提案されている。これは、低炭素鋼をAr3 点以下750℃の温度域で仕上圧延を終了した後、600〜750℃の温度域で巻き取り、中心層と表層における(222)面強度の比を2以内とすることを特徴とする加工性の優れた熱延鋼板とその製造方法というものである。
【0006】
また、特開平07-242988号公報には、平均ランクフォード値(平均r値)が1.1以上で、各方向のr値の異方性を示すΔrが0.1以下の深絞り性に優れた加工用熱延鋼板が提案されている。これは、3次元集合組織解析を行った場合、板厚中心部のX線相対強度の最大値が3以下であり、表層部において{112}〈111〉および{110}〈100〉のX線相対強度が2以上であり両者の差が3以下であることを特徴とする深絞り性に優れ異方性の小さい加工用熱延鋼板というものである。
【0007】
特開平09-176742号公報には、熱延時に集合組織を制御して熱延鋼板の異方性ならびに強度−延性バランスを向上させる製造方法が提案されている。これは、スラブを熱延する際に、必要に応じ、粗圧延後、先行の粗圧延材に接合して、Ar3変態点+100℃以下、Ar3変態点以上の温度で合計圧下率が50%以上の圧延を、潤滑を施して行うことを特徴とする成形性の面内異方性の小さい加工用熱延鋼板の製造方法というものである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
最近では、回転しごき加工技術の進歩により、従来は成形困難であった、板厚を部分的に厚く、又は薄くする成形、またそれらを複数施すような極めて複雑な部品に対して、一体成形化が可能となりつつある。このような加工においては、極めて加工度が高く、極限に近い変形能が要求される。また、軸対称の形状、即ち回転体の部品では、真円度等について高い寸法精度が要求される。
【0009】
しかしながら、上記の従来技術はこれらの要求に対して答えることが困難である。特に、回転しごき加工のように強度の加工における局部延性が求められ、さらに、かじりを防止し、製品の真円度等の寸法精度の厳しい用途に対しては、十分満足できる従来技術はなかった。
【0010】
例えば、特開平09-137248号公報記載の技術は、プレス加工におけるプレス型と材料の摺動性の向上については記載されているが、しごき加工については記載されていない。
【0011】
特開平09-125195号公報記載の技術は、均一伸びの向上について記載されているが、そのためには熱延の仕上温度をAr3以下とする必要がある。しかし、このような変態点以下の圧延は、強い集合組織を形成するため、面内異方性の増加が避けられないという問題がある。
【0012】
特開平07-242988号公報記載の技術は、3次元集合組織解析による個々の結晶方位の集積度について規定しているが、いずれも深絞り性(r値)とその面内異方性に関するものであり、しごき加工については記載されていない。
【0013】
特開平09-176742号公報記載の技術は、熱延において潤滑を施す圧延を、合計圧下率が50%以上となるよう行うというもので、このような潤滑圧延は、潤滑用の特別な設備を必要とし、また、操業上も潤滑条件の調整を必要とする。従って、通常の熱延の設備および操業では実施困難である。
【0014】
本発明は以上の問題点を解決し、優れた回転しごき加工特性を有し、自動車、産業機械等の軸対称形状の部品の寸法精度を向上させることが可能な、回転しごき加工用熱延鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記の課題は次の発明により解決される。その発明は、化学成分が、質量%で、C:0.02〜0.10%、Si:1.0%以下(0.3%以上を除く)、Mn:0.1〜2.5%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、sol.Al:0.01〜0.10%、N:0.006%以下で、残部鉄及び不可避不純物からなり、ミクロ組織が、フェライト相と、パーライト、ベイナイト、およびマルテンサイトの内1種以上の第2相とからなり、フェライト相の平均粒径d(μm)およびC量 [C](%)が下記の式(1)を満たし、第2相の平均粒径が5μm以下、第2相の体積率が3〜30%、かつn値の面内異方性Δnが|Δn|≦0.015であることを特徴とする回転しごき加工用熱延鋼板である。なお、本発明の熱延鋼板では、化学成分は、さらに、質量%で、Cr:0.2%以下含有させてもよい。
【0016】
d≦21.5-150[C] (1)
この発明は、n値の面内異方性が小さい熱延鋼板を製造するため、特に化学成分および組織に着目して詳細な検討を行った結果なされた。検討の過程で、フェライト相と分散した第2相からなる組織とすることにより、分散した第2相がフェライト相の塑性変形に影響を及ぼし、加工硬化指数n値の面内異方性|Δn|が低減されることを見出した。この知見に基づき、フェライト相および第2相の平均粒径および第2相体積率を規定することにより、優れた回転しごき加工特性、および優れた寸法精度を同時に達成することに成功した。
【0017】
以下、発明の個々の限定理由について説明する。
【0018】
C:0.02〜0.10%
Cは、パーライト、ベイナイト、およびマルテンサイトの内1種以上の第2相を形成し、しごき加工時の型への凝着(型かじり)を抑制するための重要な元素である。C量が0.02%未満では、第2相の体積率が3%未満となり、上記の効果が得られない。一方、C量が0.10%を超えると、第2相の体積率が30%を超えるとともに、第2相が互いに連結して第2相の平均粒径を増加させる。そのため、しごき加工時に割れが生じやすくなり、加工性を損なう。従って、C量を0.02〜0.10%とする。
【0019】
Si: 1.0%以下
Siは、フェライト相の生成を促進し、第2相の体積率を低減するとともに、第2相の平均粒径を減少させる。一方、Si量が1.0%を超えると、過度の強度上昇により延性が劣化し、しごき加工性も劣化する。従って、Si量を1.0%以下とする。
【0020】
Mn: 0.1〜2.5%
Mnは、熱延時の延性を阻害するSをMnSとして固定して、無害化する元素である。この効果は、Mn量が0.1%以下では得られない。一方、Mn量が2.5%を超えるような大量添加は、バンド組織を形成するとともに、強度の著しい上昇により延性が低下し、しごき加工性が劣化する。従って、Mn量は0.1〜2.5%とする。
【0021】
P: 0.05%以下
Pは、Siと同様に、フェライト相の生成を促進し、第2相の体積率を低減するとともに、第2相の平均粒径も減少させる元素である。しかし、P量が0.05%を超えると、Pの偏析に起因したバンド組織が顕著となり、延性が低下するためしごき加工性が劣化する。従って、P量を0.05%以下とする。
【0022】
S: 0.01%以下
Sは、微細なMnSを析出することにより局部延性を低下させる。そのためS量が0.01%を超えると、しごき加工性を大幅に劣化させる。従って、S量を0.01%以下とする。
【0023】
sol.Al: 0.01〜0.10%
Alは脱酸剤として酸化物系の介在物を低減し、局部延性を向上させる重要な元素である。sol.Alが0.01%未満ではその効果が得られず、一方、0.10%を超えると効果が飽和する。従って、sol.Al量を0.01〜0.10%の範囲内とする。
【0024】
N: 0.006%以下
Nは、不純物として含有され、AlとAl Nを形成して局部延性を低下させる。N量が0.006%を超えると、Al Nの生成が顕著となり、しごき加工性を大幅に劣化させる。従って、N量を0.006%以下とする。
【0025】
なお、以上の説明において、残部は鉄及び不可避不純物である。
【0026】
次に、ミクロ組織について説明する。
【0027】
フェライト相の平均粒径d: 式(1) d≦21.5-150[C]
フェライト相の平均粒径は、第2相の分散状況に大きく影響する。C量の増加に伴い、第2相の粒径および体積率も増加する。そのため、第2相同士の間隔が狭くなり、場合によっては相互に連結して第2相の粒径の増加を招く。そこで、C量の増加に伴い、第2相を均一微細に分散させるため、フェライト粒界の面積を増加させる必要がある。それは、第2相の生成サイトを増やすこと、即ちフェライト粒の細粒化により可能であり、検討の結果、フェライト相の平均粒径が満たすべき条件として、上記の不等式が得られた。従って、フェライト相の平均粒径d(μm)とC量[C](%)を上記式(1)を満たす範囲内とする。
【0028】
第2相の平均粒径:5μm以下
第2相の平均粒径は、しごき加工の際のボイドの生成に大きく影響する。平均粒径が5μmを超えると、第2相とフェライト相の界面における応力集中が著しくなり、しごき加工の際にボイドを生成し、割れの原因となる。従って、第2相の平均粒径を5μm以下とする。
【0029】
第2相の体積率:3〜30%
第2相は、しごき加工の際の型への凝着を抑制するという重要な役割を有するが、体積率が3%未満では、その効果が十分得られない。一方、第2相の体積率が30%を超えると、第2相同士が連結して粒径が増加するため、しごき加工の際、ボイドが生成しやすくなる。また、分散した第2相についても相互の間隔が狭くなっており、生成したボイド同士が連結しやすくなるので、やはり割れの原因となる。従って、第2相の体積率を3〜30%の範囲内とする。
【0030】
加工硬化指数n値の面内異方性については、次のようになる。
【0031】
n値の面内異方性Δn:|Δn|≦0.015
n値の面内異方性Δnの絶対値|Δn|を小さくすることにより、回転対称形状の部品を、周方向に均一に成形することができる。軸対称の部品では、高い真円度が要求される場合が多いが、しごき加工においては、加工硬化挙動の周方向での差異により加工量が変動するので、寸法精度が低下する。検討の結果、加工硬化指数の面内異方性の絶対値|Δn|が0.015以上となると、真円度の劣化が顕著となる。従って、|Δn|を0.015未満とする。
【0032】
なお、n値の面内異方性Δnは次の式で表される。
【0033】
Δn=(n0+n90)-2n45 (2)
ここで、n0、n45、n90は、圧延方向に対しそれぞれ0゜、45°、90°方向のn値を表す。また、各方向のn値は、測定歪み5%および10%の2点法により測定すればよい。
【0034】
上述の熱延鋼板を得ることが可能な製造方法の発明は、次のようになる。その発明は、上述の発明の化学成分からなる鋼を仕上圧延温度(Ar3-10℃)以上で熱間圧延後、20℃/秒を超える冷却速度で630℃以下の温度まで一次冷却を行い、その後二次冷却を行い、600℃以下で巻取ることにより、ミクロ組織を請求項1記載のミクロ組織に制御することを特徴とする回転しごき加工用熱延鋼板の製造方法である。
【0035】
この発明は、上記の発明の熱延鋼板を得ることが可能な製造条件について検討した結果なされたものであり、以下、その詳細について説明する。
【0036】
仕上圧延温度:(Ar3-10℃)以上
仕上圧延においては、仕上温度が低いほど圧延後のフェライト相の生成が促進され、第2相が細粒化する。しかし、仕上温度が(Ar3-10)℃未満に低下すると、圧延中にフェライト変態が進行する。そのため、フェライト相が加工組織となり、局部延性が低下するとともに、n値の異方性が増加する。従って、仕上圧延温度を(Ar3-10℃)以上とする。
【0037】
熱間圧延後の冷却速度:20℃/秒超
熱間圧延後は、微細に分散した第2相を得るため、急速冷却を行う。冷却速度が20℃/秒以下であると、オーステナイトの過冷度が小さいため、初析フェライトがMnおよびPの偏析に対応して析出する。MnおよびPの偏析は圧延により層状となっており、第2相のパーライトも初析フェライトの間に層状に生成する。そのため、第2相の粒径が大幅に増加することになり、しごき加工の際は、フェライト界面のボイドの生成を助長し、しごき加工特性を著しく劣化させる。従って、熱間圧延後の冷却速度を20℃/秒超とする。
【0038】
また、熱間圧延後の冷却速度を120℃/秒以上とすることにより、フェライト粒がさらに微細化し、第2相もさらに微細に分散するので、極めて優れたしごき加工特性が得られる。なお、冷却速度の上限は特に規定しないが、工業的には2000℃/秒程度が限度である。また、熱間圧延後の冷却を仕上げ圧延後0.1秒を超え1.0秒未満に開始することにより結晶粒が微細化するため、しごき加工特性の向上に効果的である。
【0039】
一次冷却終了温度:630℃以下
一次冷却は巻取温度まで行ってもよいが、巻取温度制御のためには少し高めの温度で急冷を終了し、冷却速度の比較的遅い二次冷却を行うことができる。この一次冷却終了温度が630℃より高いと、その後の徐冷中に前述と同様、フェライト相と第2相パーライトが層状に生成し、しごき加工特性を著しく劣化させる。従って、一次冷却終了温度は630℃以下とする。なお、二次冷却は、巻取温度の制御が可能である限り、冷却速度については特に制限はなく、徐冷でも急冷でもよい。
【0040】
巻取温度:600℃以下
巻取温度は、第2相の種類および形態に大きく影響を与える。巻取温度が600℃を超えると、第2相として生成するパーライトが、微細に分散せずに粗大化するため、しごき加工時にボイドを生成し、割れの原因となる。それと同時に、パーライトのラメラー間隔が広くなることも、ボイドの生成を助長し、割れの原因となる。一方、巻取温度を500℃以下とすることにより、第2相の分散がさらに均一化し、極めて優れたしごき加工特性が得られる。従って、巻取温度を600℃以下、好ましくは500℃以下とする。なお、巻取温度の下限は、特に規定しないが、あまり低温になると熱延コイルの形状が劣化するので、200℃以上とすることが好ましい。
【0041】
また、これらの熱延鋼板からなる自動車用部品の発明は、上述の回転しごき加工用熱延鋼板により製造された軸対称形状を有する自動車用部品である。上述の発明に係る熱延鋼板またはその製造方法により製造された熱延鋼板は、優れた回転しごき加工性を有するため、自動車、産業機械等の軸対称形状の部品に適しており、とくにクラッチ、ハブ、キャリア等の自動車等の駆動系部品に好適である。
【0042】
本発明に係る自動車部品は、前述の回転しごき加工用熱延鋼板により製造されるので、回転しごき加工による一体成形化が可能となることから、製造コストの低廉化が図られるとともに、高い真円度等の優れた寸法精度を有している。
【0043】
【発明の実施の形態】
本発明に係る熱延鋼板の好ましい製造条件について説明する。
【0044】
この発明に用いる鋼は、上述の成分および機械的特性とする他は、金属組織が前述の第2相体積率および平均粒径の分散状態となるものであればよい。その他の化学成分については、目的に応じて、通常添加される範囲内でB,Cr,Cu,Ni,Mo,Ti,Nb,W,V,Zr等の各種元素を添加してもよい。例えば、Crは、後述の[実施例]で示すように、0.2%以下の範囲で含有させてもよい。また、製造過程でSn,Pb等の各種元素が不純物として混入する場合があるが、このような不純物も本発明の効果に特に影響を及ぼすものではない。なお、本発明の熱延鋼板の成分調製には、転炉あるいは電気炉のどちらでも使用可能である。
【0045】
上記のように成分調製された鋼を、造塊−分塊圧延または連続鋳造によりスラブとする。このスラブについて熱間圧延を行うが、その際、スラブ加熱温度は、スケール発生による表面状態の劣化を避けるためには1280℃以下とすることが好ましい。また、熱間圧延時に粗圧延を省略して仕上圧延を行ってもよく、連続鋳造スラブをそのまま又は温度低下を抑制する目的で保熱しつつ圧延する直送圧延を行ってもよい。
【0046】
なお、仕上圧延においては、仕上温度確保のため、熱間圧延中にバーヒータ等の加熱手段により圧延材の加熱を行ってもよい。さらに、第2相の球状化あるいは硬度低減のため、巻取後にコイルを徐冷カバー等の手段で保温してもよい。
【0047】
熱間圧延後に必要に応じて焼鈍を行ってもよく、その場合、箱焼鈍、連続焼鈍のいずれでもよい。その後、必要に応じて調質圧延を行う。この調質圧延については焼入れには影響を及ぼさないことから、その条件に対して特に制限はない。
【0048】
【実施例】
[実施例1]
表1に示す化学成分を有する鋼A〜Gの連続鋳造スラブを1250℃に加熱し、仕上温度870℃で熱間圧延を終了し、30℃/秒で即急冷後、一次冷却終了温度580℃、巻取温度:550℃として、その後、酸洗-調質圧延を施し6.0mmの鋼板を製造した。
【0049】
【表1】
【0050】
これらの鋼板からサンプルを採取し、引張試験およびフェライト平均粒径(df)、第2相体積率(Vf)ならびに第2相の平均粒径(ds)の測定および回転しごき加工を実施した。それぞれの試験・測定の方法および条件について以下に示す。
【0051】
▲1▼ 引張試験
JIS5号サイズの引張試験片を圧延方向に対し90°の方向から採取し、試験を行った。また、n値の異方性(△n)については、圧延方向に対し、0°、45°、90°の3方向から引張試験片を採取し、5%-10%歪みでの2点法によるn値測定を行い調査した。
【0052】
▲2▼ フェライト平均粒径(df)、第2相体積率(Vf)と平均粒径(ds)
サンプルの板厚断面を研磨・腐食後、走査型電子顕微鏡にてミクロ組織を撮影し、0.01mm2の範囲でフェライト平均粒径(df)、第2相体積率(Vf)および第2相の平均粒径(ds)の測定を行った。
【0053】
▲2▼ 回転しごき加工
図1に示すように、ブランク径200mmφのサンプルを成形型に取り付け、主軸を回転させ、ロールを押し付けて成形型に沿って成形を行った。成形体の内径は、100mmφとした。初期板厚は6.0mmであるが、しごき成形により4.0mmまで減少する条件にて実施した。潤滑は、マシン油を用いた。ロール先端R=2mmとし、ロール送り速度=200mm/minとした。評価は、加工面の割れとかじりの有無、および寸法精度として真円度(7/100以下を良好とする)で行った。
【0054】
以上の測定結果より得られた、引張特性、フェライト平均粒径(df)、第2相体積率(Vf)、第2相の平均粒径(ds)および回転しごき加工性の結果を表2に示す。
【0055】
【表2】
【0056】
表2では、鋼板A〜Cは発明例であり、本発明範囲である、フェライト平均粒径df≦21.5-150C、第2相の体積率が3%〜30%、第2相の平均粒径5μm以下、△n≦±0.015を満足する。鋼板D〜Gは比較例で、鋼板DはCが低く、鋼EはCとSが高く第2相の体積率も30%を超えている。鋼FはSiとPが高く、鋼GはMnとNが高く第2相平均粒径も5μmを超えており、いずれも本発明の範囲外である。
【0057】
この表2より、発明例A〜Cでは、しごき加工試験において、いずれもクラック、かじり等の発生が無く、かつ、寸法精度にも優れ、良好な加工性が得られることが確認できた。また、発明例A〜Cは、比較例D〜Gに比べて同じ強度レベルの場合、局部伸び(L.EL)において約5%向上しており、優れた極限変形能を有することが確認された。
【0058】
[実施例2]
前記表1に示す鋼A,Cの連続鋳造スラブを1250℃に加熱し、表3に示す条件にて板厚6.0mmの熱延鋼板とし、その後、酸洗−調質圧延を施した。
【0059】
【表3】
【0060】
これらの鋼板からサンプルを採取し、引張試験およびフェライト平均粒径(df)、第2相体積率(Vf)ならびに第2相の平均粒径(ds)の測定および回転しごき加工を実施した。それぞれの試験・測定の方法および条件について以下に示す。
【0061】
▲1▼ 引張試験
JIS5号サイズの引張試験片を圧延方向に対し90°の方向から採取し、試験を行った。また、n値の異方性(△n)については、圧延方向に対し、0°、45°、90°の3方向から引張試験片を採取し、5%-10%歪みでのn値測定を行い調査した。
【0062】
▲2▼ フェライト平均粒径(df)、第2相体積率(Vf)および第2相の平均粒径(ds)
サンプルの板厚断面を研磨・腐食後、走査型電子顕微鏡にてミクロ組織を撮影し、0.01mm2の範囲でフェライト平均粒径(df)、第2相体積率(Vf)および第2相の平均粒径(ds)の測定を行った。
【0063】
▲2▼ 回転しごき加工
図1に示すように、ブランク径200mmφのサンプルを成形型に取り付け、主軸を回転させ、ロールを押し付けて成形型に沿って成形を行った。成形体の内径は、100mmφとした。初期板厚は6.0mmであるが、しごき成形により4.0mmまで減少する条件にて実施した。潤滑は、マシン油を用いた。ロール先端R=2とし、ロール送り速度は、1)通常:200mm/min、2)高速:400mm/minの2条件とした。評価は、加工面の割れとかじりの有無、および寸法精度として真円度(7/100以下)で行った。
【0064】
以上の測定結果より得られた、引張特性、△n値、フェライト平均粒径(df)、第2相体積率(Vf)、第2相の平均粒径(ds)および回転しごき加工性の結果を表3に併せて示す。
【0065】
表3より、No.1,2,5,6は本発明範囲内で、フェライト平均粒径がdf≦21.5-150Cを満足し、第2相の体積率が3%〜30%で、第2相の平均粒径が5μm以下、△n≦±0.015の発明例であり、良好なしごき加工性および優れた寸法精度が得られることが確認された。
【0066】
一方、No.3,4,7,8は比較例で、No.3は局部伸び(L.EL)が低く、フェライト平均粒径が大きいため、しごき加工表面で割れが発生した。また、△nが大きく、真円度が劣り、寸法精度不良となった。No.4は、フェライト平均粒径および第2相粒径が大きくなり、しごき加工表面で割れが発生した。No.7は、局部伸び(L.EL)が低く、フェライト平均粒径および第2相の平均粒径が大きくなり、しごき加工表面で割れが発生した。また、No.7は、△nが大きく、真円度が劣り、寸法精度不良となった。No.8は、局部伸び(L.EL)が低く、フェライト平均粒径が大きく、また、第2相の体積率が30%を超えると同時に第2相の平均粒径が5μmを超えている。そのため、しごき加工面から割れが発生した。
【0067】
【発明の効果】
この発明は、しごき加工性および加工後の寸法精度の向上を図るに当たって、化学成分の制御および製造条件の制御により、フェライト平均粒径、第2相の体積率、第2相の平均粒径を制御することで、強加工時のボイドの発生を抑制し、また、n値の異方性を低減することで、周方向での加工の変動が抑制することができる。その結果、極めて優れた回転しごき加工性と優れた寸法精度を有する熱延鋼板の提供が可能となる。このような熱延鋼板を用いることにより、キャリアやハブに代表される軸対称回転体の複雑形状部品を一体成形することができ、その結果、製造工程を省略して低コストで部品等を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】回転しごき加工の例を示す図。
Claims (5)
- 化学成分が、質量%で、C:0.02〜0.10%、Si:1.0%以下(0.3%以上を除く)、Mn:0.1〜2.5%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、sol.Al:0.01〜0.10%、N:0.006%以下で、残部鉄及び不可避不純物からなり、ミクロ組織が、フェライト相と、パーライト、ベイナイト、およびマルテンサイトの内1種以上の第2相とからなり、フェライト相の平均粒径d(μm)およびC量 [C](%)が下記の式を満たし、第2相の平均粒径が5μm以下、第2相の体積率が3〜30%、かつn値の面内異方性Δnが|Δn|≦0.015であることを特徴とする回転しごき加工用熱延鋼板。
d≦21.5−150[C] - 上記化学成分が、さらに、質量%で、Cr:0.2%以下含有する請求項1に記載の回転しごき加工性に優れた熱延鋼板。
- 請求項1または請求項2に記載の化学成分からなる鋼を仕上圧延温度(Ar3−10℃)以上で熱間圧延後、20℃/秒を超える冷却速度で630℃以下の温度まで一次冷却を行い、その後二次冷却を行い、600℃以下で巻取ることにより、ミクロ組織を請求項1記載のミクロ組織に制御することを特徴とする回転しごき加工用熱延鋼板の製造方法。
- 一次冷却の冷却速度を120℃/秒を超える冷却速度とすることを特徴とする請求項3に記載の回転しごき加工用熱延鋼板の製造方法。
- 請求項1または請求項2に記載された、または請求項3または請求項4に記載の回転しごき加工用熱延鋼板の製造方法により製造された、回転しごき加工用熱延鋼板からなる軸対称形状を有する自動車用部品。
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