JP4023025B2 - 無線通信装置及び無線通信装置の送信電力制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、送信アンテナより送信される電波信号の送信電力レベルを初期設定した後に、検出した実際の送信電力レベルを所定範囲内に維持するように自動電力制御を行う無線通信装置及び無線通信装置の送信電力制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
このような無線通信装置としては、例えば、自動車電話装置や携帯電話装置などがある。図3は、従来の自動車電話装置の送信系部分の電気的構成を示す機能ブロック図である。変調器1は、デジタル化された送信信号を、例えばQPSK(Quadrature Phade Shift Keying) などの信号形態に変調し、その変調信号を可変ゲインアンプ2に出力するようになっている。CPU(マイクロコンピュータ)3は、電源投入後に基地局から送信された電波信号を図示しない受信系回路によって受信すると、その受信レベルに応じて規格により定められている送信電力レベルを決定するようになっている。
【0003】
ここで、図4は、CPU3の制御内容を示すフローチャートである。CPU3は、決定した送信電力レベルに応じた可変ゲインアンプ2の増幅量(増幅率)に相当するデータをメモリ4から読み出すと(ステップS1)、D/Aコンバータ5を介して可変ゲインアンプ2に出力するようになっている(ステップS2)。
【0004】
可変ゲインアンプ2は、D/Aコンバータ5より与えられるアナログ制御量に応じた増幅量で変調器1より与えられる変調信号を、後段のパワーアンプ6に出力する。パワーアンプ6は、固定値で設定されている増幅量で信号を増幅すると、カプラ(方向性結合器)7を介してアンテナ8に増幅した信号を出力し、アンテナ8は電波信号を外部に送信するようになっている。ここまでが、初期設定と称するフェイズである。
【0005】
電波信号がアンテナ8より外部に送信されると、その送信電力の数分の1は、カプラ7を介して検波器9に与えられるようになっている。検波器9は、送信信号を整流及び平滑して直流レベルに変換し、A/Dコンバータ10を介してCPU3に出力するようになっている。
【0006】
すると、CPU3は、A/Dコンバータ10より与えられた検波レベルを参照すると(ステップS3)実際の送信電力値と前記初期設定を行った送信電力値とを比較し(ステップS4)、実際の送信電力値が初期設定値に近付くように(規格で定められた所定範囲内に収束するように。図5参照)可変ゲインアンプ2の増幅量を調整するフィードバック制御を行うようになっている(ステップS5,S6)。以上の初期設定以降のフェイズが自動電力制御(APC:Auto Power Control)と称するものである。
【0007】
ところが、図6に示すように、可変ゲインアンプの増幅量は、周囲温度によって大きく変動することが避けられず、このような温度特性に応じて送信電力レベルも大きく変動してしまうという問題がある。特に、電源投入直後であり、自動電力制御におけるフィードバック制御が開始される以前の初期電力設定においては、この温度特性による影響が顕著に反映して送信電力レベルが不安定となる傾向にある。
【0008】
そこで、可変ゲインアンプ2の温度特性による影響を排除をするため、図7に示すように、可変ゲインアンプ2を、減衰量が可変である可変減衰器11と固定増幅量のアンプ12とのセットに置き換えた構成も考えられている。可変減衰器11の減衰量(減衰率)は、温度によって殆ど変動することがないので、その減衰量を制御して送信電力を調整することで送信電力レベルを安定させることができる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、変調器1は、常に一定レベルで出力を行っているので(例えば0〜−20dBm 程度,図8▲1▼参照)、図7に示す構成では、送信電力レベルの設定が比較的大である場合には可変減衰器11の減衰量を小さく設定することになる。そして、可変減衰器11からの出力信号は所定増幅量のパワーアンプ6により増幅されるので、自然界に存在するバックグラウンドノイズ(ノイズフロア,図8▲2▼参照)に対する出力ピークレベルの比は、変調器1の出力における状態を略そのまま維持する。従って、送信電力のC/N比(Carrier to Noise ratio)も比較的大きくなる(図8▲3▼参照)。
【0010】
しかしながら、送信電力レベルの設定が逆に比較的小である場合には、可変減衰器11の減衰量を大きく設定する必要がある。すると、その時点でノイズフロアに対して出力ピークレベルが相対的に低下する(図8▲4▼参照)。従って、パワーアンプ6により増幅された送信出力レベルのC/N比が小さくなってしまうという問題が生じてしまう(図8▲5▼参照)。
【0011】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、温度変化に対する送信電力レベルの変動を抑制すると共に、送信電力レベルが比較的小さい場合におけるC/N比の劣化をも極力防止することができる無線通信装置及び無線通信装置の送信電力制御方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の無線通信装置によれば、制御手段は、送信電力レベルを初期設定する際には、可変増幅器の増幅率を最大にセットした上で、可変減衰器の減衰率を調整することで設定を行い、自動電力制御においては、可変減衰器の減衰率を最小にセットした上で可変増幅器の増幅率のみを調整することで送信電力レベルを所定範囲内に維持するように制御する。
【0013】
また、請求項3記載の無線通信装置の送信電力制御方法によれば、初期設定行程においては、可変増幅器の増幅率を最大にセットした上で、可変減衰器の減衰率を調整することで設定を行い、自動電力制御行程においては、可変減衰器の減衰率を最小にセットした上で、可変増幅器の増幅率のみを調整することで送信電力レベルを所定範囲内に維持するように制御する。
【0014】
即ち、初期電力の設定時には、制御手段は、可変増幅器の増幅率を最大にする。すると、図6に示すように、可変増幅器の増幅率(ゲイン)の温度特性はフラットになるので、温度特性の影響を排除することができる。その状態で、温度特性の良好な可変減衰器のみを用いて送信電力の設定を行うことにより、送信電力レベルを安定させることができる。
【0015】
そして、その後の自動電力制御においては、制御手段は、可変減衰器の減衰率を最小にセットした上で可変増幅器の増幅率のみを調整して送信電力レベルを所定範囲内に維持するように制御する。即ち、自動電力制御では、フィードバック制御が行われることで、温度により可変増幅器の増幅率が多少変動したとしても、送信電力レベルを所定範囲内に維持するように制御するのは比較的容易である。また、可変減衰器の減衰率を最小とすることで、C/N比を悪化させることもない。従って、総じて送信電力制御を良好に行うことができる。
【0016】
請求項2記載の無線通信装置によれば、制御手段は、初期設定後に実際の送信電力レベルを検出し、可変増幅器の増幅率及び可変減衰器の減衰率を夫々低下させながら送信電力レベルを調整し、可変減衰器の減衰率が最小になった時点で自動電力制御を開始する。
【0017】
また、請求項4記載の無線通信装置の送信電力制御方法によれば、初期設定行程後に実際の送信電力レベルを検出し、可変増幅器の増幅率及び可変減衰器の減衰率を夫々低下させながら送信電力レベルの調整を行い、可変減衰器の減衰率が最小になった時点で自動電力制御行程に移行するための中間制御行程を行う。
【0018】
従って、制御手段が、初期設定のフェイズから自動電力制御のフェイズに移行する間に、可変減衰器の減衰率が最小になるまで、可変増幅器の増幅率及び可変減衰器の減衰率を夫々低下させて行く中間制御を行うことによって、送信電力を所定の範囲に維持しつつ両フェイズ間の移行をスムーズに行うことができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施例について図1及び図2を参照して説明する。尚、図3と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、以下異なる部分についてのみ説明する。電気的構成を示す図1において、本実施例では、変調器1と可変ゲインアンプ(可変増幅器)2との間に、減衰量が可変である可変減衰器21を配置している。この可変減衰器21の減衰量は、CPU3に代わるCPU(制御手段)22から、D/Aコンバータ23を介して与えられる制御量に応じて設定されるようになっている。
【0020】
尚、D/Aコンバータ23は、D/Aコンバータ5に代わって配置されるものであり、アナログ信号出力を、可変ゲインアンプ2と可変減衰器21との何れか一方に選択的に出力するマルチプレクサの機能をも備えている。また、夫々に出力されるアナログ信号レベルは、次回にCPU22より新たな制御量が与えられるまで図示しないサンプルホールド回路により保持されるようになっている。その他の構成は図3と同様である。
【0021】
次に、本実施例の作用について図2をも参照して説明する。CPU22は、前述したCPU3と同様に、電源投入後に基地局から送信された電波信号を図示しない受信系回路によって受信すると、その受信レベルに応じて規格により定められている送信電力レベルを決定する。それから、可変ゲインアンプ2の増幅量(ゲイン)を最大にするようにセットし(ステップS11)、メモリ4から送信電力レベルに応じた可変減衰器21の減衰量を読み出して(ステップS12)、D/Aコンバータ23を介して可変減衰器21に設定する(ステップS13)。ここまでが、初期設定行程に対応する。
【0022】
次に、CPU22は、A/Dコンバータ10を介して、アンテナ8より実際に外部に送信されている電波信号の送信電力の一部について検波器9が検波した電圧を測定する(ステップS14)。そして、その測定した電圧に基づいて実際の送信電力が初期設定した電力(目標電力)以上であるか否かを判断する(ステップS15)。
【0023】
ステップS15において、実際の送信電力が初期設定電力以上であれば、CPU22は、可変ゲインアンプ2の増幅量をより小さくするように設定し(ステップS16)、また、実際の送信電力が初期設定電力未満であれば、可変減衰器21の減衰量をより小さく設定する(ステップS17)。
【0024】
ステップS16,S17の次は、可変減衰器21の減衰量が最小となったか否かを判断し(ステップS18)、まだ最小となっていなければステップS14に移行して、再度検波器9が検波した電圧を測定する。即ち、可変減衰器21の減衰量が最小となり、CPU22がステップS18で「YES」と判断するまでは、ステップS14〜S18のループを周り、可変ゲインアンプ2の増幅量または可変減衰器21の減衰量を少しずつ低下させながら、実際の送信電力値を調整する。尚、以上のステップS14〜S18が中間制御行程に相当する。
【0025】
そして、可変減衰器21の減衰量が最小となり、CPU22がステップS18で「YES」と判断すると、図4と同様に、ステップS3〜S6の自動電力制御行程へと移行する。この場合の自動電力制御行程では、可変減衰器21の減衰量が最小の状態で、実質的に可変ゲインアンプ2の増幅量のみを調整して実際の送信電力が規格で設定された許容範囲(所定範囲)内に維持されるように制御が行われる。
【0026】
以上のように本実施例によれば、CPU22は、初期設定行程においては、可変ゲインアンプ2の増幅量を最大にセットした上で可変減衰器21の減衰量を調整することで設定を行い、自動電力制御行程においては、可変減衰器21の減衰量を最小にセットした上で可変ゲインアンプ2の増幅量のみを調整して送信電力レベルを規格で定められた許容範囲内に維持するようにした。
【0027】
従って、初期電力の設定時には、可変ゲインアンプ2の増幅量を最大にすることでアンプ2の温度特性がフラットになるので、温度特性の影響を排除することができる。そして、温度特性の良好な可変減衰器21のみを用いて送信電力の設定を行うことで、送信電力レベルを安定させることができる。
【0028】
また、その後の自動電力制御行程では、可変減衰器21の減衰量を最小にセットした上で可変ゲインアンプ2の増幅量のみを調整して送信電力レベルを所定範囲内に維持するように制御するので、当該行程では可変減衰器21は実質的に作用せず、送信電力が比較的小さい場合でもC/N比を悪化させることがない。従って、例えば、携帯電話装置などに適用した場合には、自局の発呼,着呼や通話等を良好に行い得ることは勿論のこと、自局のノイズフロアを低く押さえることは近接する他局への妨害波を低減することになり、その結果、電話システム全体を安定的に動作させることができる。
【0029】
更に、本実施例によれば、CPU22は、初期設定行程と自動電力制御行程との間に、実際の送信電力レベルを検出し、可変減衰器21の減衰量が最小になるまで可変ゲインアンプ2の増幅量及び可変減衰器21の減衰量を夫々低下させながら送信電力レベルを設定する中間制御行程を行うことによって、送信電力を所定の範囲内に維持しつつ初期設定行程から自動電力制御行程への移行をスムーズに行うことができる。
【0030】
本発明は上記し且つ図面に記載した実施例にのみ限定されるものではなく、要旨を変更しない範囲で適宜変形または拡張して実施することが可能である。例えば、自動車電話装置や携帯電話装置などに限ることなく、初期電力を設定した後に自動電力制御を行うような無線通信装置であれば適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例における電気的構成を示す機能ブロック図
【図2】CPUの制御内容を示すフローチャート
【図3】従来技術を示す図1相当図(その1)
【図4】図2相当図
【図5】実際に電波信号を送信する場合の出力電力特性を示す図
【図6】可変ゲインアンプの温度特性を示す図
【図7】図1相当図(その2)
【図8】送信電力と自然界のノイズフロアとの関係を示す図
【符号の説明】
2は可変ゲインアンプ(可変増幅器)、8はアンテナ(送信アンテナ)、21は可変減衰器、22はCPU(制御手段)を示す。
Claims (4)
- 送信アンテナより送信される電波信号の送信電力レベルを初期設定した後に実際の送信電力レベルを検出し、検出した送信電力レベルを所定範囲内に維持するように自動電力制御を行う制御手段を備えてなる無線通信装置において、
入力信号レベルの減衰率が可変に構成される可変減衰器と、
この可変減衰器からの出力信号レベルを増幅する増幅率が可変に構成される可変増幅器とを備え、
前記制御手段は、前記送信電力レベルを初期設定する際には、前記可変増幅器の増幅率を最大にセットした上で、前記可変減衰器の減衰率を調整することで設定を行い、
前記自動電力制御においては、前記可変減衰器の減衰率を最小にセットした上で前記可変増幅器の増幅率のみを調整することで送信電力レベルを所定範囲内に維持するように制御することを特徴とする無線通信装置。 - 前記制御手段は、前記初期設定後に実際の送信電力レベルを検出して、前記可変増幅器の増幅率及び前記可変減衰器の減衰率を夫々低下させながら送信電力レベルを調整し、前記可変減衰器の減衰率が最小になった時点で前記自動電力制御を開始することを特徴とする請求項1記載の無線通信装置。
- 送信アンテナより送信される電波信号の送信電力レベルを初期設定する初期設定行程と、その初期設定行程後に実際の送信電力レベルを検出し、検出した送信電力レベルを所定範囲内に維持するように制御する自動電力制御行程とを行う無線通信装置の送信電力レベルを設定する方法において、
入力信号レベルの減衰率が可変に構成される可変減衰器と、
この可変減衰器からの出力信号レベルを増幅する増幅率が可変に構成される可変増幅器とを用いて、
前記初期設定行程においては、前記可変増幅器の増幅率を最大にセットした上で、前記可変減衰器の減衰率を調整することで設定を行い、
前記自動電力制御行程においては、前記可変減衰器の減衰率を最小にセットした上で、前記可変増幅器の増幅率のみを調整することで送信電力レベルを所定範囲内に維持するように制御することを特徴とする無線通信装置の送信電力制御方法。 - 前記初期設定行程後に、実際の送信電力レベルを検出し、前記可変増幅器の増幅率及び前記可変減衰器の減衰率を夫々低下させながら送信電力レベルの調整を行い、前記可変減衰器の減衰率が最小になった時点で前記自動電力制御行程に移行するための中間制御行程を行うことを特徴とする請求項3記載の無線通信装置の送信電力制御方法。
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