JP4021690B2 - 高速通信用高分散光ファイバ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ファイバ通信システムに関し、特に、高速で高出力の通信で機能するシステム設計のための、光ファイバの分散値の範囲を規定することに関する。
【0002】
【従来の技術】
光ファイバの損失を補償する光増幅器が出現してから、光ファイバ通信システムの伝送がチャンネルあたり10Gb/s以上に達するかどうかは、大部分が色分散によって制約されている。色分散によって信号スペクトルの異なる部分はシステムの遠端に異なった時間に届く。情報を搬送する光信号は、有限の(波長内に広がる)帯域幅を有している。もしこれらの波長が光ファイバを進む途中で異なる速度で伝搬すれば、そのパルスは分散してしまうであろう。色分散の主な原因は、材料分散や、シリカに対する屈折率の変動、すべての低損失伝送光ファイバの基本原料である。しかし、光ファイバの色分散は、導波路分散を用いることによって調整可能である。導波路分散の大きさは、材料分散と同じくらい、あるいはそれ以上のこともあるからである。
【0003】
分散は波長分割多重方式(WDM)のシステムにおいて特に有害である。なぜなら、多重信号を受け入れるのに必要な光の帯域幅は単チャネルのシステムよりも広いからである。Cバンド/Lバンド用に設計されたシステムは、1530〜1600nmの送信能力を必要とする。現在はそれよりも広い帯域幅のシステムさえ考えられており、将来はおそらく市販されるようになるであろう。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
信号の分散の問題を解決するために、分散補償が可能となる以前に、分散シフトファイバ(DSF)と呼ばれる低損失ファイバが発明された。しかし、波長分割多重方式(WDM)の伝送では、DSFの4波混合(FWM)による非直線ひずみの欠点から免れられない。中程度の分散量を有する光ファイバでは、FWMの影響を減らすために、非ゼロ分散シフトファイバ(NZDSF:non-zero dispersion shifted fiber)が発明された。このようなファイバは、標準的なアンシフト・ファイバ(STD:standard unshifted fiber)と同様、チャネルあたり10Gb/s以上の適正な分散補償を要する。しかし、NZDSFはSTDファイバより低分散補償で済む。それは、NZDSFはSTDファイバの3分の1から4分の1の分散値しか有していないからである。(1550nmのNZDSFの分散値が4ps/(nm−km)程度に対して、STDファイバの分散値は、17ps/(nm−km)程度である。)
【0005】
高速システム(チャネルあたり40Gb/s以上、または、短パルスで10Gb/s、すなわち、15ps以下のパルス幅)では、伝送ファイバの高分散の影響で、同一チャネルから隣接するパルスを各スパン内でオーバーラップさせるほどパルスを著しく広げてしまう。従来の技術思想では、非直線による信号ひずみを生ずるパルス・オーバーラップをなくすように示唆されるだろう。しかし、パルス・オーバーラップが存在しても信号が伝送される可能性が発見された。この形態(regime)は、疑似線形伝送(psedo-linear transmission)と呼ばれる。たとえ疑似線形伝送が伝送中にパルス・オーバーラップを許容するとしても、パルス間の非直線の相互作用は伝送での制限要因である。パルスの歪みは高速システムの光ファイバの分散から予想される結果なのである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
発明者は、生来の光ファイバの分散が、疑似線形形態においては、従来技術によって伝送される信号とは完全に異なる方法で作用することを発見した。驚くべきことに、疑似線形形態を用いると、高分散値のファイバにおいても光パルスは実際には小さな歪みで伝送される。20ps/(nm−km)より大きい分散値のファイバの使用は、従来の設計原理に基づいた高速システムに適するとは考えられなかったあろう。しかし、我々は、例えば20ps/(nm−km)よりも高い分散値のファイバが、信号の高出力レベルで、アイ・クロージャ・ペナルティを減少させるという点で、システムのパフォーマンスを向上させることを発見した。当該形態、そして本発明が適用できる形態における光パルスは、疑似線形モード伝送(PLMT)と称され、当該技術分野で既に知られ、受け入れられるようになってきている。本発明の目的を実現するためには、1.25〜1.65μmの波長の光パルスを用いて、10%〜50%のデューティ・サイクル(パルス幅/パルス間隔)で、15ps以下のパルス幅で、少なくとも10Gb/sの伝送ビット・レートというのが限定要件である。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の高容量で広帯域幅を有する光伝送システムは、レーザ源、モジュレータ、マルチプレクサ、長距離光ファイバ、レシーバ、増幅器、デマルチプレクサ、そして、主として分散補償手段からなる。本発明に影響を与えるこれらシステムの要素、伝送される情報の特徴は、下記に述べる。
【0008】
ソース
高速データ・ソースは10Gb/s以上で1.25〜1.65μmの波長のパルス・モードにおいて作動する、既知の設計のヘテロ構造のレーザからなる。WDMシステムでは、多重波長と多重ソースが各チャネルに一つずつ使用される。
【0009】
ビット・レート
最新の技術のシステムは、10Gb/s以上で機能する。従来の標準ビット・レートは、4X倍でビット・レートを増加させるので、高生産性システムでは10、40、160、・・・Gb/sで動作する。既存の光ファイバ伝送の多くは、10Gb/sよりも小さいビット・レートでしか機能しない。一般に、これらのシステムでは比較的高分散のファイバ、すなわち、NZDSFやSTDファイバを使用する。しかし、このファイバを具備し高速(40Gb/s以上)で動作するシステムは、非効率的である。PLMTシステムの出現で、これらのファイバを使用した効率的な高速の伝送は提供されたが、分散特性という観点からの伝送ファイバの最適化は達成されていない。
【0010】
パルス特性
本発明による推奨デューティ・サイクルは、10〜50%である。デューティ・サイクルDはパルス幅Tとパルス間隔Tに関連し、
D=T/T
という関係になる。
システムのビット・レートBは、パルス間隔Tに関連し、
B=1/T
という関係を満たす。
そしてデューティ・サイクルDは次のように表すことが可能である。
D=T
パルス幅Tは、出力の半値全幅のパルス幅として定義される。
【0011】
デューティ・サイクルは、システムの関連情報の密度を最大値で確立し、システム利用のメリットを表す数字として用いられることが可能である。低デューティ・サイクルでの使用は、短パルスが関連するチャネル間隔をより広く要求するので、帯域幅を浪費してしまう。本発明の原理の利点を生かすには、少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%のデューティ・サイクルが推奨される。
【0012】
かなり低いデューティ・サイクル、すなわち10%を下回るデューティ・サイクルは、極めて短いパルスの伝送が分散補償に必要な要件を軽減するとして、近年注目されている。それは、ある場合に、単独の分散補償手段がシステムのどの場所にも設置することを可能とする。これは、アクセスが送信側か受信側のどちらかで制限されるようなシステムにおいては重要かもしれない。しかし、今述べたように、それは多くの応用例で設計上の検討を覆す程の帯域幅を浪費する。例えば、2psのパルス幅を使用する40Gb/sシステムでは、上述の基準よりも低い、たったの8%のデューティ・サイクルしか有さない。
【0013】
チャネルあたり160Gb/sのシステムでは、パルス幅は減少する。40Gb/sシステムにおいて極めて短いとみなされるパルス幅でも、160Gb/sにおいては比較的長いと考えられる。本発明の推奨するデューティ・サイクルを用いる160Gb/sシステムにも高分散の規定が適用される。すなわち、推奨デューティ・サイクルは40Gb/sと比較して160Gb/sでもほとんど同じである。160Gb/sシステムにおいて、最小デューティ・サイクル10%での使用では0.625psの推奨パルス幅ということになる。最小デューティ・サイクル20%では1.25psのパルス幅になる。任意の高速信号用の推奨パルス幅は、ビット・レートを変数Bとすると、
0.1<TB<0.5
と表せる。
【0014】
マルチプレクサ/デマルチプレクサ
ここで述べたシステムに有用なマルチプレクサとデマルチプレクサは、標準的なものなので詳細な説明は割愛する。しかし、極めて高容量のシステムの特性、本発明の好ましい応用例では、マルチプレクサおよびデマルチプレクサは多数のチャネル、すなわち10個以上のチャネルで作動する。より一般的には、極めて高容量のシステムはCバンド、Lバンドの両方において10個以上のチャネルで、つまり合わせて少なくとも20個のチャネルで作動する。チャネルあたりのビット・レートが増加するにつれて、全システムの大容量を維持しながらも、チャネルの数は減少する。
【0015】
増幅器
また、本発明に使用される増幅器は典型な標準エルビウム増幅器である。これらは伝送パスに従って望ましいファイバに組み入れられる。そして、エルビウムをドープしたファイバの端部に光グレーティング部分を有することもある。そして、ファイバは、0.98nmポンプ源に接続している。
【0016】
パルス・パワー
高容量システムは一般に、伝送手段の非線形の特性のために、何らかの形でひずみを処理するようなシステム設計が必要とされるほど大きなひずみを引き起こしてしまうと考えられている。多様な条件を考慮すると、通常、量的な定義は相対的なものとなる。けれども本発明によって設計され構築されたシステムは、−6〜12dBmの範囲の基準となる時間平均出力レベルを有するだろう。
【0017】
実施例
本発明の原理を明らかにするために、多数の異なる分散値を有するファイバにおけるパルス伝送についてシュミレーションの測定を行った。これらの測定結果を座標にプロットしたのが図1である。測定された特性はdBにおけるアイ・クロージャ・ペナルティで、光ファイバでの非直線と分散の影響によるパルス劣化の標準的な指標である。使用されたファイバの長さは80km、波長は1.55μm、ビット・レートは160Gb/sであった。データは20%と33%の二種類のデューティ・サイクルで作成された。20%デューティ・サイクルのデータは実線の曲線で、33%デューティ・サイクルのデータは破線の曲線で表されている。それぞれに対応するパルス幅は、1.25psと2.1psである。これらのパルス幅は、上述の推奨されるものに比べて低く、パルスの詳細において4X倍で増加するビット・レートとしての変化を表している。しかし、20%と33%のデューティ・サイクルはPLMTでは典型的なものである。40Gb/sのシステムでパルス幅がそれぞれ5psと8.3psでの実験結果も質的には類似すると予測できる。アイ・クロージャはパルス歪みの単位であり、本質的には、1と0ビット間の識別範囲を表している。図1のデータから、実際に分散が増加するにつれ、システムの性能が向上しているのは明らかである。この特異な動きは完全に従来技術と反するものである。極めて高分散、すなわち50ps/nmよりも大きい場合、アイ・クロージャ・ペナルティはかなり低く、ほとんど横ばいである。分散sに対するペナルティpのdp/ds曲線の傾斜が0.2よりも小さい場合に、この形態で機能すれば、ファイバの分散特性はシステム設計において無視できる。高分散レベルでは分散補償手段の設計の必要条件は、より厳しくなる。しかし、分散補償ツールの進化によって高分散レベルで機能する費用対効果の高いシステム設計が可能になると期待されている。
【0018】
図2A〜Dは、次表のような異なる分散値のアイ・クロージャ・ペナルティを表した線図である。
Figure 0004021690
【0019】
アイ・クロージャ・ペナルティの低さが、システムの性能のよさに対応する。2dBのペナルティは一般に、最新のシステム設計で上限値と考えられる。図2は、最適な伝送が、両方のデューティ・サイクルで伝送ファイバ分散値の最高値で生ずることを明確に示している。
【0020】
図1の曲線を再び参照すると、比較的高い分散値を有するファイバの使用の利点の開示は、プラス・マイナス両方の分散値を含むことが明白である。伝送目的で、例えば10km以上の距離で、マイナスの分散値を有する光ファイバを使用することはまれなことである。よって、本発明はPLMTシステム用の光ファイバの使用、伝送に適する長さで、−5ps/(nm−km)以下の分散値、好ましくは−8ps/(nm−km)以下の分散値のファイバの使用を意図するものである。
【0021】
伝送に用いられる光ファイバは、所定の長さ以上の光ファイバに必要とされる中継器の数を制限するために、極めて低い損失を有する。ファイバの長さは10km以上のものがよく知られている。分散補償や比較的性能の低いシステムに用いられる短いファイバと区別するために、一般に、少なくとも1kmの長さのファイバが伝送ファイバとみなされる。
【0022】
本発明には付加的なさまざまな変形が可能である。当該技術が提案された原理やそれと同等のものに基本的に立脚していれば、この明細書の詳細な教義から逸脱していても、当然のことながら上述された本発明の範囲内であると思慮する。
【0023】
特許請求の範囲の発明の要件の後に括弧で記載した番号がある場合は、本発明の一実施例の対応関係を示すものであって、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、PLMTのアイ・クロージャ・ペナルティとして表したファイバ分散対パルス歪みをプロットした線図である。
【図2】図2は、異なる4段階の光ファイバ分散値に対応するアイの線図である。

Claims (4)

  1. 光信号伝送システムであって、
    (a)デジタルパルスのソースであって、該パルスが、
    (i)少なくとも10Gb/sのビットレートB、
    (ii)1.25〜1.65μmの波長、
    (iii)15ps以下のパルス、及び
    (iv)20%〜50%のデューティサイクル
    を有するデジタルパルスのソース、並びに
    (b)前記デジタルパルスのソースを所定長の光ファイバに接続する手段であって、該所定長の光ファイバは少なくとも1kmの長さがある、手段
    からなり、
    該所定長の光ファイバが50ps/(nm−km)より大きい分散値又は−50ps/(nm−km)未満の分散値を有することを特徴とする光信号伝送システム。
  2. 前記ビットレートBと前記パルスが、0.2<TB<0.5の関係にあることを特徴とする請求項1記載の光信号伝送システム。
  3. 所定長の光ファイバを介して光デジタルパルスの形式で情報を伝送する方法であって、
    (a)デジタルパルスのソースを提供するステップであって、該パルスが
    (i)少なくとも10Gb/sのビットレートB、
    (ii)1.25〜1.65μmの波長、
    (iii)15ps以下のパルス、及び
    (iv)20%〜50%のデューティサイクル
    を有する、ステップ、並びに
    (b)前記デジタルパルスを少なくとも1kmの長さの光ファイバに沿って伝送するステップ
    からなり、
    該光ファイバが50ps/(nm−km)より大きい分散値又は−50ps/(nm−km)未満の分散値を有することを特徴とする方法。
  4. 前記ビットレートBとパルスが、0.2<TB<0.5の関係にあることを特徴とする請求項3記載の方法。
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