JP4017550B2 - 遮光用浮体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は遮光用浮体に係り、湖沼、池等の閉水域におけるアオコの大量発生による富栄養化の防止を目的とし、水面下に遮光領域を有効に形成させるために、水面に浮遊させて使用する遮光用浮体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、湖沼、池、貯水池等(以下、総称して池等と呼ぶ)では、アオコ等の浮遊藻類の異常繁殖により、水が富栄養化し、水質が汚染されるという問題が顕在化している。そこで、水中でのアオコ等の発生を抑えるための技術が種々開発されている。たとえばアオコは水中に届く太陽光等を遮断し、光合成作用を抑制すれば、その繁殖を抑えられることが知られている。この知見を利用したものとして、水面下に遮光領域を形成するために、各種形状の遮光用浮体を水面に浮遊させる技術が提案されている(たとえば特許文献1参照)。
【0003】
一方、水面を覆うことを目的する技術としては、他技術分野において種々の発明が開示されている。たとえば、ボイラ設備等の水循環系における水槽の水中への酸素の溶解を防止するために、水面(液面)を遮蔽する技術がある(特許文献2、特許文献3参照)。この特許文献2に開示された技術では、水槽水面に鍔付きの球状の浮力体を多数浮遊させ、隣接する球状浮力体および各球状体の鍔同士の重なり部分により水面を覆うようになっている。また、特許文献3に開示された技術では、樹脂製の球形浮体を多段をなすように、液面のほぼ全面にわたって密集して浮かべて接触する各球形浮体間に液体の一部や空気を滞留させることにより、遮蔽効果を奏するようになっている。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−263034公報。
【特許文献2】
特開平8−193731号公報。
【特許文献3】
特開2000−168889公報。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、特許文献2、3に記載の技術は、水槽等のように風等の自然条件の影響の受けにくい設備を対象としているため、特許文献3のように軽量の樹脂製の中空球を多段に重ねるような構成としても、中空球等の浮体が強風等によって飛散するような心配はないが、たとえば屋外施設では、水面付近を吹く風の影響により、軽量の樹脂製球状体が飛散してしまい、有効に水面を覆うことができない場合もある。この問題は、特許文献1に記載された扁平板形状の浮力性遮光部材でも指摘されており、扁平な板状部材の場合、飛散しないでも、風波の影響で部材の一部が持ち上がり、板の一部同士が重なり合い、水面全体を有効に覆えなくなるおそれがある。
【0006】
一方、特許文献2に示した球状浮力体では、鍔状の薄板を水面に位置させるために、薄板と球状部分の材質を変えて各部の比重を調整したり、球内部を半分に区画して一方の半球内に重りを収容させ、内部に注水するようになっている。この結果、部材重量が確保できて、上述したような風や波の影響をほとんど受けず、安定して水面を覆うことが可能になる。しかし、個々の部材の加工が面倒で、コストが高くなるため、大量の部材によって広い面積の池等の水面を覆うような場合には適さない。
【0007】
そこで、本発明の目的は上述した従来の技術が有する問題点を解消し、風等の影響を受けずに、池等の水面を確実に覆って太陽光を遮断し、池等の水質汚濁の防止を図れる安価な部材による遮光用浮体を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は中空浮体の表面に複数の貫通孔が形成され、多数水面に浮かべた状態で水面下に位置する前記貫通孔から浸入する水で内部が満たされ、ほぼ水没した状態で水面に浮遊することで、水面近傍に遮光面を形成し、該遮光面下の領域を遮光することを特徴とする。
【0009】
このとき、前記中空浮体は、ポリオレフィン系樹脂成形品とすることが好ましい。
【0010】
前記中空浮体は、外形が球状、あるいは多角錘形状をなすことが好ましい。特に多角錘形状の場合、少なくとも1個の通水孔が底面に形成され、空気孔が他の面のいずれかに形成するか、各頂点を切欠いて開孔を形成するようにすることが好ましい。
【0011】
さらに、前記貫通孔に紐状体を挿通して、該紐状体を介して複数個の球状の中空浮体を連続させ、閉曲線状をなすようにして水面上に浮かべ、その閉曲線で囲まれた水域の水面に多数の中空浮体を撒き出すようにすることが好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の遮光用浮体の一実施の形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、多数個の遮光用浮体を池等に浮かべ、その水面下に遮光領域2を形成した状態を模式的に示した状態説明図である。本発明の遮光用浮体は、図1〜図4に示したように、池等1の水面に浮かぶことで、太陽光を遮光し、その下方の水中に所定面積の遮光領域2を形成するようになっている。図2各図は、遮光用浮体10の外形を示した斜視図を示している。図3各図は遮光用浮体10の断面図を示している。図4は多数の遮光用浮体10を水面に浮かべた状態を、個々の遮光用浮体10を断面で示した模式状態図である。
【0013】
本実施の形態における個々の遮光用浮体10は、図2(a)に示したような外径100mm、肉厚1.8mmの中空球体で、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)製成形品からなる。また、その表面には直径10mmの貫通孔としての通水孔が合計6個形成されている。これら通水孔11は、互いの位置が中心角90°となるように球体面に形成された貫通孔である。たとえば子午方向の一周上に4孔、そのうちの2孔を含む赤道方向の一周上に他の2孔が形成されている。これらの遮光用浮体10は本実施の形態の場合、比重が約0.95である。このため、遮光用浮体10は水面に撒かれた直後にはその全体が水面上に位置するように浮かび、その直後から水面下に位置する通水孔11あるいは球状体がわずかに回転して水面下に位置するようになった通水孔11から水が浸入する。そして図2(b)、図3(a)に示したように、短時間のうちに球体内部がほぼ水に満たされ、球体の頂部10aがわずかに水面上に露出するように、そのほとんどが水没した状態での浮力で浮遊することができる。
【0014】
図4は、多数の遮光用浮体10を水面に浮かべた状態を示しており、同図に示したように、各遮光用浮体10は水中に位置する最大直径部分が互いに接触することで水面付近を覆うため、太陽光等の上部からの光を有効に遮断することができる。同図において左端には、説明のために球体内に注水されていない状態の遮光用浮体10が示されている。このように遮光用浮体10は水面に撒き出された直後に水面に浮いた状態から、水面下に位置する通水孔11からの浸水が始まり、短時間のうちに他の遮光用浮体10と同様な喫水で浮遊することになる。
【0015】
このように、本発明では、遮光用浮体10は、その大部分が水没した状態で浮いているため、水面を掃くように吹く風に対しても、水面上で受風する部分がほとんどないためその影響を受けない。また、風波によって水面が揺動するような場合にも、池の水に対して独立した水で満たされた各遮光用浮体10は水面の揺動に追従しにくく、また水面の揺動に対して位相差を生じながら上下動するので、水面の揺動を減衰させる効果も期待できる。
【0016】
遮光用浮体10の表面に形成する通水孔11は、本実施の形態では6個としたが、遮光用浮体10内への水の浸入が可能であれば、通水孔、空気孔として機能する2個以上の貫通孔であればその個数は限定されない。図3(b)は、球体に形成される通水孔11の1カ所の周囲に肉厚部分12を形成した変形例を示している。この変形例によれば、遮光用浮体10を水面に撒きだした直後に肉厚部分12が水面下(最下位置)にくるので、ただちにその通水孔11から水が浸入する。したがって、この場合には少なくとも空気孔が1個開いていればよい。これら通水孔11にはメッシュ状のフィルタを設けることで小生物の侵入や、ゴミ、泥等の流入によって喫水低下するのを防止することも好ましい。
【0017】
図5は、各遮光用浮体10の通水孔11に浮力を有する樹脂製チェーン等からなる紐状体13を挿通して、複数の遮光用浮体10を数珠繋ぎにして所定延長の仕切フェンスとして使用例を示している。仕切フェンスを所定の閉曲線状として対象水面に浮かべ、その仕切フェンスで仕切られた水域の水面を覆う量の遮光用浮体10を撒き出すことにより、その水域内を完全に覆い尽くすことができ、その範囲での高い遮光効果を得ることができる。
【0018】
図6各図は、他の実施の形態として、外形形状を三角錐とした遮光用浮体20を示している。図6(a)は、一面が一辺100mm、肉厚1.8mmの正三角形パネル22で構成された中空三角錐体を示しており、各面の中央位置にφ10mmの通水孔21が形成されている。図7は、この形状からなる遮光用浮体20を水面に浮かべた状態を、遮光用浮体20を断面で表示した状態説明図である。図8は、この遮光用浮体20で水面を覆った状態を示した平面図である。この形状の遮光用浮体20は、水面に撒きだした直後には、図7の左端に示したように、底面22aが水面についた状態となる。そして底面22aに形成された通水孔21を介してただちに三角錐内部に水が浸入する。内部に完全に水が満たされると、遮光用浮体20は、遮光用浮体20の重心と浮心との位置関係により、三角錐の一頂点23が下端となるように転倒して安定する。このとき各遮光用浮体20は、図8に示したように密集すると、各底面22aの各頂点を挟んだ辺がくさびのように機能して6個の頂点が一点に集まるように辺同士が接し、底面同士が隙間なく接することができるようになる。
【0019】
図6(b)は、この遮光用浮体20の変形例を示した斜視図である。同図に示した三角錐は、同図(a)の通水孔21に代え、各頂点を切欠くことで、各頂点に通水孔機能を有するようにした。この変形例では、水面に撒き出された直後に底面22aの3頂点の切欠部24aから内部に水が浸入することができる。このとき頂点23の切欠部24bは空気孔として機能する。
【0020】
以上に述べた遮光用浮体の立体形状としては、中空球状の他、多角錐形状、立方体、直方体、多角柱、円筒形等、密集して浮かべた時に互いの辺、頂点が重なるように接触して投影水平面を覆うことができる形状であれば、種々の中空立体を採用することができる。また、水面に撒き出す遮光用浮体は、池等の面積に応じてアオコの発生を抑制できるだけの遮光領域2(図1)を確保するのに必要な遮光面積率に応じた数量を投入することが好ましい。
【0021】
また、遮光用浮体の材質としては、比重が1未満の合成樹脂、たとえば低密度ポリエチレン、ポリプロピレンに代表されるポリオレフィン系樹脂が好適であり、これら樹脂をブロー成形等により所定中空立体形状に成形することが好ましい。また、成形形状もたとえば球状のような一体形状でも、半球状として組立工程を有するような等、適宜成形効率を考慮して決定することができる。また、合成樹脂に代えて、耐水性を有する木製合板材組立材、木製チップ成形品等により遮光用浮体を製造することも可能である。
【0022】
【発明の効果】
以上に述べたように、本発明の遮光用浮体によれば、安価な部材を用いることによって、アオコの発生を抑制するために有効な遮光領域を、池等の水面下に確実に形成することができ、必要に応じて池等における養殖生物等への光供給調整を可能にするという効果も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による遮光用浮体の一実施の形態を、池等に浮かべて水面下に遮光領域を形成した状態を示した状態説明図。
【図2】図2に示した遮光用浮体の全体斜視図。
【図3】図1に示した遮光用浮体及び変形例の断面図。
【図4】図1の遮光状態を拡大して示した部分断面図。
【図5】遮光用浮体の使用態様例を示した斜視図。
【図6】遮光用浮体の他の実施の形態を示した斜視図。
【図7】図6に示した遮光用浮体による遮光状態を拡大して示した部分断面図。
【図8】図7の遮光状態を示した平面図。
【符号の説明】
1 池等
10,20 遮光用浮体
11,21 通水孔
13 紐状体
Claims (6)
- 中空浮体の表面に複数の貫通孔が形成され、多数水面に浮かべた状態で水面下に位置する前記貫通孔から浸入する水で内部が満たされ、ほぼ水没した状態で水面に浮遊することで、水面近傍に遮光面を形成し、該遮光面下の領域を遮光することを特徴とする遮光用浮体。
- 前記中空浮体は、ポリオレフィン系樹脂成形品であることを特徴とする請求項1に記載の遮光用浮体。
- 前記中空浮体は、外形が球状をなすことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の遮光用浮体。
- 前記貫通孔に紐状体を挿通して、該紐状体を介して複数個の中空浮体を連続させ、閉曲線状をなすようにして水面上に浮かべることを特徴とする請求項3記載の遮光用浮体。
- 前記中空浮体は、多角錘形状をなし、少なくとも1個の通水孔が底面に形成され、空気孔が他の面のいずれかに形成されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の遮光用浮体。
- 前記中空浮体は、多角錘形状をなし、各頂点が切欠かれた形状からなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の遮光用浮体。
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