JP4015052B2 - 熱風炉用のギッター煉瓦 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱風炉の蓄熱室内に組み込まれるギッター煉瓦に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、熱風炉は、高炉1基に対して3〜4基設置され、蓄熱室と燃焼室と煙突とを備えていて、燃焼と送風を交互に行うことによって高炉に高温空気を連続して供給するものである。
この熱風炉の蓄熱室内には、図7に示すようにその外形が六角柱形状をした耐火煉瓦製のギッター煉瓦1が多数設けられている。即ち、該ギッター煉瓦1には、その横断面形状が図8および図9に示されている○形および六角形のガス孔が、前記耐火煉瓦の軸心方向に複数、いわゆる「蜂の巣状」に形成されており、このような多数のギッター煉瓦1を該煉瓦に設けたガス孔が垂直方向に互いに連通するようにして合計30〜40mの高さに前記蓄熱室内に積み重ねて充填されている。
前記ギッター煉瓦における熱交換率を上げるため、従来から種々の検討がなされており、例えば特開昭62-83413号公報、実用新案登録第2573340号公報に開示されている。
【0003】
前者の特開昭62-83413号公報に開示されている技術の概要は、ギッター煉瓦に形成する各ガス孔を入り口側開口と出口側開口との中心位置が横方向に互いにずれた傾斜孔になる如く形成して前記ガス孔の伝熱面積を増大させ、これにより前記蓄熱室での熱交換が効率よく実施され、その結果、高温度の高炉送風が可能となるものである。
また、前記実用新案登録第2573340号公報に開示されている技術の概要は、ギッター煉瓦の上面、下面、または、胴部に従来のガス孔に直行する横ガス孔を新たに形成するものであり、これにより従来設けている「蜂の巣状」のガス孔に比し、その分、ガス孔の伝熱面積が増し、前記従来技術と同様に、高温度の高炉送風が可能となるものである。
【0004】
【特許文献1】
特開昭62-83413号公報
【特許文献2】
実用新案登録第2573340号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記特開昭62-83413号公報に開示されている技術、即ちギッター煉瓦の軸心方向に複数の傾斜状のガス孔を形成するものは、従来のギッター煉瓦と同一外形且つ平面の形状が同一サイズのガス孔を形成する場合、耐火物の残り厚みが略20mm以下の薄い箇所が生ずる。前記のとおり、ギッター煉瓦は、蓄熱室内で、複数段積み込まれて据付、使用されるものであり、この場合、ギッター煉瓦の製作・据付、使用時に強度不足となり、破損等が頻繁に発生し、実用的な技術ではなかった。
また、前記実用新案登録第2573340号公報に開示されている技術、即ち、ギッター煉瓦の上面、下面、または、胴部に従来のガス孔に直行する横ガス孔を形成する技術内容のものでは、伝熱面積を多く増加させるためには、前記横ガス孔の多数の形成が必要である。この場合、該多数の横ガス孔の形成により、耐火物からなるギッター煉瓦全体の強度が極端に低下する。従って、前記横ガス孔の形成数には、おのずと限度があり、それにより、伝熱面積の大幅なる増加を図ることができなかった。
そこで本発明は、前述のような従来技術の問題点を解決し、簡単な構成で、熱交換率が高く且つ強度が低下せず、製作・据付の容易なるギッター煉瓦を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前述の課題を解決するため、鋭意検討の結果なされたものであり、その要旨とするところは、特許請求の範囲に記載した通りの下記内容である。
(1) 外形が六角柱からなる耐火煉瓦の軸心方向に多数のガス孔が形成された熱風炉用のギッター煉瓦において、
前記ガス孔の横断面形状を、下記(B)式にて規定する無次元の形状係数kが3.8以上7.3以下にすると共に、
前記ガス孔の横断面形状が、該ガス孔の中心に対して、外方向の1 mm以上のR1に続き内方向の1 mm以上のR2を、該内方向のR2に続き外方向のR1を、連続的に繰り返し、前記外方向のR1が6個と内方向のR2が6個とで、該ガス孔の全周を構成してなることを特徴とする熱風炉用のギッター煉瓦。
ここに、k =L/√A・・・・(B)
k:孔の形状によって定まる無次元の形状係数
L:一つのガス孔における周長
A:一つのガス孔における断面積(ガス通過横断面積)
(2)前記ガス孔の横断面形状が、該ガス孔の中心に対して、外方向の1 mm以上のR1に続き直線部を、該直線部に続き内方向の1 mm以上のR2を、該内方向のR2に続き直線部を、該直線部に続き外方向のR1を、連続的に繰り返し、前記外方向のR1が6個と内方向のR2が6個と直線部が12個とで、該ガス孔の全周を構成してなることを特徴とする(1)に記載の熱風炉用のギッター煉瓦。
【0007】
【発明の実施の形態 】
まず、本発明における基本的な考え方について簡単に説明する。本発明の熱風炉ギッター煉瓦等、所謂熱交換器において、その交換熱量の増加には、伝熱面であるガス孔における伝熱面積を増大させることにより達成され、これは、古くから各種の工業分野において幅広く活用されている汎用的な技術である。
しかしながら、本発明においては、前記ギッター煉瓦における交換熱量を増加させるため、その伝熱面積を上記の従来技術の如く、ただ単に増加させる形状のガス孔にしただけでなく、ギッター煉瓦に必要な他の具備要件、即ち、前記のとおり伝熱面積を増加させたガス孔を形成しても、該ギッター煉瓦における強度且つ製作性および据付性を損なうことのない構成について、種々の検討を実施し完成に至ったものである。以下、図面を用いてその詳細について説明する。各図の簡単なる説明は、下記のとおりである。
【0008】
図1は、本発明の熱風炉ギッター煉瓦の第1実施例における横断面図である。
図2は、図1におけるガス孔部の拡大図である。
図3は、本発明の熱風炉ギッター煉瓦の第2実施例におけるガス孔部の拡大図である。
図4は、本発明の熱風炉ギッター煉瓦の第3実施例におけるガス孔部の拡大図である。
図5は本発明の熱風炉ギッター煉瓦の第4実施例におけるガス孔部の拡大図である。
図6はギッター煉瓦におけるガス孔の形状係数と単位長さ当たりの平均圧力損失との相関を示す図である。
図7は、ギッター煉瓦の外形鳥瞰図である。
図8は、ガス孔形状が○孔の従来の熱風炉ギッター煉瓦の横断面図である。
図9は、ガス孔形状が六角の従来の他の熱風炉ギッター煉瓦の横断面図である。
図10は、ガス孔形状が○孔の従来の熱風炉ギッター煉瓦のガス孔部の拡大図である。
図11は、ガス孔形状が六角の従来の熱風炉ギッター煉瓦のガス孔部の拡大図である。
【0009】
ギッター煉瓦に設けるガス孔の形状は、前記のとおり、図8および図9に示しているように○および六角の形状が一般的に使用されてきた。ここで、前記従来の両ガス孔および本発明の種々のガス孔におけるその形状を無次元数で設定・評価するために、ガス孔の形状係数kとして、下記の(B)式で設定した。
k =L/√A・・・(B)
ここに、k:ガス孔の形状によって定まる無次元の形状係数
L:一つのガス孔における周長
A:一つのガス孔における断面積(ガス通過横断面積)
前記設定に引き続き、下記条件によって、種々の試算および検討を実施し本発明の完成に至った。
【0010】
<前提条件>
比較・検討の前提条件としては、図7に示すギッター煉瓦の外形寸法(即ち投影体積)および該煉瓦に設けるガス孔の数を同一に、また本発明例である図2〜図5、従来例である図10および図11に各々示しているように該煉瓦に設けるガス孔の配設ピッチPも各々同一にした。尚、前記図2〜5、および図10、11に図示しているガス孔は、その形状および配置ピッチ等の理解を深めるために代表して3個のガス孔のみを各々図示している。
更に、ギッター煉瓦に、前記各々の形状を有するガス孔を複数個、設ける場合、各々隣接するガス孔において残りの煉瓦厚みTが同じようになるように、ガス孔の数に応じて設定すればよい。
まず、本発明の図2に示すガス孔形状の設定は、同図の右上部に想像線で示している六角形のサイズを図11に実線で示す従来の六角形状のガス孔と同じサイズの六角形とし、該六角形に内接するごとくガス孔形状を設定した。
上記と同じ要領で、本発明の別の孔形である図3〜4のガス孔形の形状を設定した。
【0011】
さらに、前記従来例である図10のガス孔形においても、同図に想像線で示しているように前記従来例図11に示す従来の六角形状のガス孔と同じサイズの六角形に内接するごとく、○形状のガス孔を設定した。
次に、本発明のガス孔の具体的な形状について、説明すると、本発明の図2〜図4においてはいずれもその基本的な考え方は、同じである。
即ち、ガス孔の横断面形状が、該ガス孔の中心に対して、外方向のR1に続き内方向のR2を、該内方向のR2に続き外方向のR1を、連続的に繰り返し、前記外方向のR1が6個と内方向のR2が6個とで、該ガス孔の全周を構成しガス孔形状を設定したものである。
また、本発明の他のガス孔形状を図5に示す。
同図に示すガス孔の形状は、ガス孔の横断面形状が、該ガス孔の中心に対して、外方向のR1に続き直線部を、該直線部に続き内方向のR2を、該内方向のR2に続き直線部を、該直線部に続きを外方向のR1を、連続的に繰り返し、前記外方向のR1が6個と内方向のR2が6個と直線部が12個とで、該ガス孔の全周を構成しガス形状を設定したものである。
【0012】
ここで、前記図10、および図11におけるガス孔の直径Dを従来のギッター煉瓦相当である34mm、また、3つのガス孔の配設ピッチPを55mmとして、図2〜図5、図10、図11における
▲1▼一つのガス孔における周長周長さ:L、
▲2▼一つのガス孔における断面積(ガス通過横断面積):A
を各々算出し、該算出値にもとづいて、下記(B)式で設定される、各々の ガス孔における形状係数を計算した。
その結果を表1に示す。
ここに、k =L/√A・・・(B)
k:孔の形状によって定まる無次元の形状係数
L:一つのガス孔における周長
A:一つのガス孔における断面積(ガス通過横断面積)
【0013】
【表1】
表1から明らかなように、前記形状係数が大きくなると一つのガス孔における周長L所謂、伝熱面積が大きくなる。一方、一つのギッター煉瓦に複数のガス孔を形成後の残りの煉瓦厚みTは、本発明例、従来例のいずれも同じ21mmである。従って、前記本発明のNo1〜No4のガス孔を複数個設けたギッター煉瓦においては、いずれも煉瓦強度を落とすことなく、形状係数の大きいガス孔形を採用することにより従来のガス孔形に比し、熱交換率を大幅に増加させることが明確となった。
続いて、前記の表1に記載の数値をもとに、前記図2〜図5、図10、図11のガス孔に同一および量のガスが流れたとして、その単位長さ当たりの平均圧力損失を計算した結果を図6に示す。
【0014】
即ち、図6は、ギッター煉瓦におけるガス孔の形状係数kと単位長さ当たりの平均圧力損失との相関図を示すものである。同図における単位長さ当たりの平均圧力損失(mmaq/m)で示す適正範囲とは熱風炉に送風するブロワーの送風能力(圧力)から高炉での必要送風圧力を差し引いたものをギッター煉瓦積み高さで割ったものであって、所謂、熱風炉での単位長さ当たりの許容平均圧力損失分である。 一般的にその許容圧力損失は、27.5mmaq/m程度とされている。また、図2〜図5で示されているようにギッターレンガの製作の容易性などからも図5の形状より、大きな形状係数となると、耐火材である材質で本形状を製作する時、耐火材の充填が不均一となるため、好ましくない。以上により本発明の適正なる形状係数の上限の値として7.3を、一方、該形状係数の下限としては、図6の従来の六角形状である3.72を超えるとその効果が生ずるため、3.8とした。
また、前記ガス孔に対する形状係数の更なる望ましい範囲については、製作の容易性より、以下の範囲がより望ましい。即ち前記図4において、該ガス孔の中心に対して、設けられる外方向のR1に続く内方向のR2の部分において、その拡大部である図13のくびれ部を有している、このくびれ部は、該ギッター煉瓦の製作時、成形されたギッター煉瓦を型から容易に抜け易くするために、該くびれ部を有さない形状が好ましい。従って、より好ましい形状係数の範囲としては、3.8以上、前記図3で示した前記くびれ部を有さない形状である5.2以下の範囲である。
【0015】
なお、本発明の形状係数の範囲を有する別の例として、例えば図12に示す☆の形状をしたものがある。同図において、ガス孔に角部を有していると、その製作が難しくまた、据付後の使用により、該角部を起点にして、クラックなどが多発する恐れがあるため、外方向のR1、内方向のR2は、1mm以上のRにするとよい。
また、一つのガス孔において、前記R1、R2の数が、各々6以外、例えば、5とか8個とかになると、本発明が対象としているガス孔を多数有する6角柱の外形をしたギッター煉瓦においては、隣り合うガス孔との残りの煉瓦厚Tが、1個のギッター煉瓦において、全体で、均一とならず、従って、その強度にバラツキが生ずるため、好ましくなく、本発明の前記外R1および内R2の数は、各々6個が適している。
【0016】
一方、本発明の他の実施例として、ギッター煉瓦の長さ方向におけるガス孔の横断面形状の形成の仕方を下記の如くしてもよい。前記ガス孔の一端における横断面形状を前記の如く、図2〜図5、図12とし、各々これに対する多端のガス孔の横断面形状を図11または、図10に示す六角、または○形状に長さ方向で漸進変化するようにその形状を設定する。例えば一つのギッター煉瓦において、一端のガス孔の横断面形状を図2の如くし、それに対する多端の横断面形状を図11に示す六角形にできる。この場合、ギッター煉瓦の製作時、ガス孔用である図示していない中子は、抜け勾配を有するものとなり、その分製作が容易となる。
尚、本発明における前記R1、R2の数値の設定において、R1=R2、R1>R2、R1<R2などが適用可能である。ここで、いずれにおいても作用・効果面での大きな差異はなくいずれを用いてもよいが、製作の容易性からは、R1=R2が、若干他より優位である。
【0017】
【発明の効果】
本発明によれば、簡単な構成で、熱交換率が高く且つ強度が低下せず、製作・据付の容易なるギッター煉瓦を提供することができ、その分蓄熱炉を小さくできるなど、産業上有用な著しい効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の熱風炉ギッター煉瓦の第1実施例における横断面図である。
【図2】図1におけるガス孔部の拡大図である。
【図3】本発明の熱風炉ギッター煉瓦の第2実施例におけるガス孔部の拡大図である。
【図4】本発明の熱風炉ギッター煉瓦の第3実施例におけるガス孔部の拡大図である。
【図5】本発明の熱風炉ギッター煉瓦の第4実施例におけるガス孔部の拡大図である。
【図6】ギッター煉瓦におけるガス孔の形状係数と単位長さ当たりの平均圧力損失との相関を示す図である。
【図7】ギッター煉瓦の外形鳥瞰図である。
【図8】ガス孔形状が○孔の従来の熱風炉ギッター煉瓦の横断面図である。
【図9】ガス孔形状が六角の従来の他の熱風炉ギッター煉瓦の横断面図である。
【図10】ガス孔形状が○孔の従来の熱風炉ギッター煉瓦のガス孔部の拡大図である。
【図11】ガス孔形状が六角の従来の熱風炉ギッター煉瓦のガス孔部の拡大図である。
【図12】本発明の熱風炉ギッター煉瓦の第5実施例におけるガス孔部の拡大図である。
【図13】図3の実施例におけるガス孔部の拡大図である。
【符号の説明】
1・・・ギッター煉瓦、
2・・・ガス孔、
3・・・耐火煉瓦の軸心方向、
4・・・くびれ部
Claims (2)
- 外形が六角柱からなる耐火煉瓦の軸心方向に多数のガス孔が形成された熱風炉用のギッター煉瓦において、
前記ガス孔の横断面形状を、下記(B)式にて規定する無次元の形状係数kが3.8以上7.3以下にすると共に、
前記ガス孔の横断面形状が、該ガス孔の中心に対して、外方向の1 mm以上のR1に続き内方向の1 mm以上のR2を、該内方向のR2に続き外方向のR1を、連続的に繰り返し、前記外方向のR1が6個と内方向のR2が6個とで、該ガス孔の全周を構成してなることを特徴とする熱風炉用のギッター煉瓦。
ここに、k =L/√A・・・・(B)
k:孔の形状によって定まる無次元の形状係数
L:一つのガス孔における周長
A:一つのガス孔における断面積(ガス通過横断面積) - 前記ガス孔の横断面形状が、該ガス孔の中心に対して、外方向の1 mm以上のR1に続き直線部を、該直線部に続き内方向の1 mm以上のR2を、該内方向のR2に続き直線部を、該直線部に続き外方向のR1を、連続的に繰り返し、前記外方向のR1が6個と内方向のR2が6個と直線部が12個とで、該ガス孔の全周を構成してなることを特徴とする請求項1に記載の熱風炉用のギッター煉瓦。
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