JP4013820B2 - パイプラインの形状計測評価方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、パイプライン中を走行して管内の検査を行う管内検査装置(以下、検査ピグと呼ぶ)を用いてパイプラインの敷設形状を計測し、その計測結果に基づいてパイプラインの敷設状態を評価するパイプラインの形状計測評価方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
長距離パイプラインにおいては、施工後の地理、環境状況等の変化に伴い、初期の施工時の位置から微妙な変化が生じる場合がある。これらは、短期間でのパイプラインの破損劣化に結びつくものではないが、長期的には、パイプラインを構成する各要素に不要な応力等が印加されることになるため、パイプラインの線形状(パイプラインを構成する配管の中心の軌跡の形状)を計測し、その線形状の計測結果に基づいて敷設状態を評価することは、パイプラインの維持管理において非常に重要である。また、地震等の災害が生じた場合には、パイプラインの線形状が大きく変化する可能性があり、この点からもパイプライン線形状計測及ぶ評価は重要である。
【0003】
パイプラインでも地表に露出しているもの等は比較的簡易に線形状の計測を行うことが可能であるが、地下、海底に埋設されているパイプラインに関しては、地表から正確な線形状を計測することは不可能であり、従来、管内検査ピグを利用した線形計測技術の開発が行われている。
【0004】
管内検査ピグによるパイプライン線形状計測においては、パイプラインを走行する際のピグの絶対位置又は、相対位置の変化を計測することにより線形計測を行うが、ピグ本体はパイプライン配管(金属管)内部に配置されるため、外部からの信号(地磁気や外部からの電磁気、電磁波信号等)を検出して、計測を行うことは困難であり、自律位置計測システムが必要となる。そこで、ピグ本体内部にジャイロユニットを配置することにより走行時の地球座標に対するジャイロ(ピグ本体)の姿勢を計測し、ピグ本体の走行による移動距離とジャイロの姿勢から地球座標に対する位置を算出する方法が開発されていた(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
その際、従来のジャイロを用いた線形計測では、ピグ本体はパイプラインに対して常に一定の姿勢である、すなわちピグ本体の方向とパイプラインの中心軸とが常に平行であると考え、ジャイロの計測姿勢から求められる地球座標に対するピグ本体の方向とパイプライン内面に接触させたローラ式距離計等により計測されるピグ本体の移動距離からパイプラインの線形を求めている。
【0006】
なお、[発明が解決しようとする課題]の欄において、本出願人の未公開先行出願について説明するが、その出願番号をここに記載しておく。すなわち、特願2003−075901号(未公開出願1)である。
【0007】
【特許文献1】
特許第2851657号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、実際のパイプライン内のピグ走行においては、ピグ本体のパイプライン配管に対する姿勢が変化しており、特に、ベンド部を通過する際には一時的に大きく姿勢が変化するので、算出線形に誤差を生じる。ピグ本体の姿勢変化による計測誤差は、その後の算出線形の方向のズレとなり、累積し、特に長距離の計測では、累積誤差は非常に大きくなる。
【0009】
これに対して、ジャイロ(ピグ本体)のパイプライン配管内での姿勢を計測し補正を行う方法が考えられている。例えば、ピグ本体外周に光波距離計や超音波距離計あるいは渦流方式の距離計を設置し、管内面までの距離を計測することにより管内でのピグ本体の姿勢を計測し、補正を行う方法である。
【0010】
また、出願人は、前記非公開文献1において、管内でのピグ本体の姿勢を確実に安定して計測するために、ピグ本体と管内面との距離を計測する距離計測手段として、ピグ本体の円周方向に等間隔に3つ以上複数配置されたセンサを1組としたものを、ピグ本体の走行方向に所定間隔を開けて2組以上配置したセンサユニットを有し、パイプラインの内面と常に接触を維持する機構を備えた接触式距離計測装置を用いる方法を提案している。
【0011】
しかしながら、このようにしてジャイロ(ピグ本体)のパイプライン配管内での姿勢を計測し補正を行うことにより、パイプラインの線形状を精度良く計測したとしても、その計測結果からパイプラインの敷設状態を評価した際に、適切でない評価を行った場合が時々あった。例えば、配管の敷設状態に異常がなくとも異常があると評価してしまう場合である。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、パイプライン配管内を走行する検査ピグを用いてパイプラインの形状を計測し、その計測結果に基づいてパイプラインの敷設状態を適切に評価することができるパイプラインの形状計測評価方法を提供することを目的とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
発明者は、パイプラインの敷設状態を適切に評価することができない場合があることについて種々検討した結果、以下のような知見を得た。
【0014】
すなわち、実際のパイプラインの施工においては、事前に準備、加工された既知の形状、長さの配管を組合せ、予定された敷設経路に配管を敷設する。この時、配管同士は溶接あるいはフランジにより接合されるが、実際の現場施工においては、接合部において配管同士の中心軸を完全に一致させることは不可能であり、接合部において中心軸方向のズレ、すなわち曲がりが発生することになる。この曲がりは接合部における不整合であり、配管自体に変形、応力が発生しているものではないが、これまでのジャイロピグを用いた線形計測では、計測された線形状を評価する際に、接合部における不整合については考慮していないため、配管の敷設状態に異常がなくとも異常があると評価してしまうことがあるということである。
【0015】
そこで、本発明は、上記の知見に基づいて、前記課題を解決するために以下の特徴を有するものである。
【0016】
[1]パイプライン配管内を走行する検査ピグを用いて当該パイプラインの線形状を計測し、その計測結果に基づいて当該パイプラインの敷設状態を評価するパイプラインの形状計測評価方法であって、パイプラインを構成する配管間の接合部を検出する配管接合部検出手段を備えた検査ピグを用いて、パイプラインを構成する配管毎について線形状を計測し、その配管毎の線形状の計測結果と過去の配管毎の線形状を比較し、その間の変化が所定の範囲内であれば、当該パイプラインの敷設状態は異常が無いと評価することを特徴とするパイプラインの形状計測評価方法。
【0017】
[2]前記[1]に記載のパイプラインの形状計測評価方法において、配管毎の線形状の計測結果から各配管の曲率を算出し、算出された各配管の曲率と過去の各配管の曲率を比較し、その間の変化が所定の範囲内であれば、当該パイプラインの敷設状態は異常が無いと評価することを特徴とするパイプラインの形状計測評価方法。
【0018】
[3]前記[1]又は[2]に記載のパイプラインの形状計測評価方法において、各配管の両端部での配管中心軸の方向を算出することにより、各配管の振れ角(両端部の中心軸線のなす角度)を算出し、算出された各配管の振れ角と過去の各配管の振れ角を比較し、その間の変化が所定の範囲内であれば、当該パイプラインの敷設状態は異常が無いと評価することを特徴とするパイプラインの形状計測評価方法。
【0019】
[4]前記[1]から[3]のうちのいずれかに記載のパイプラインの形状計測評価方法において、パイプラインを構成する配管毎の線形状の計測を任意の期間をおいて複数回行い、複数回の計測結果の変化から各配管に掛かる応力を推定して当該パイプラインの敷設状態を評価することを特徴とするパイプラインの形状計測評価方法。
【0020】
[5]前記[1]から[4]のうちのいずれかに記載のパイプラインの形状計測評価方法において、検査ピグは、ピグ本体内部に固定された3軸ジャイロセンサユニットと、ピグ本体のパイプライン配管内での走行距離を計測する走行距離計測手段と、ピグ本体のパイプライン配管に対する姿勢を計測する姿勢計測手段とを備えていることを特徴とするパイプラインの形状計測評価方法。
【0021】
[6]前記[5]に記載のパイプラインの形状計測評価方法において、前記姿勢計測手段は、ピグ本体とパイプラインの内面との距離を計測する距離計測手段であって、ピグ本体の円周方向に等間隔に3つ以上複数配置されたセンサを1組としたものを、ピグ本体の走行方向に所定間隔を開けて2組以上配置したセンサユニットを有し、パイプラインの内面と常に接触を維持する機構を備えた接触式距離計測装置であることを特徴とするパイプラインの形状計測評価方法。
【0022】
[7]前記[6]に記載のパイプラインの形状計測評価方法において、前記接触式距離計測装置は、一端がピグ本体の外面に設置された回転軸に接続されたロッド(アーム)と、ロッド(アーム)の他端が常にピグ本体の半径方向(パイプライン内面に向かう方向)に広がるように、当該ロッド(アーム)に力を印加する機構と、当該ロッド(アーム)の前記回転軸周りの回転角を計測する機構を有することを特徴とするパイプラインの形状計測評価方法。
【0023】
[8]前記[6]又は[7]に記載のパイプラインの形状計測評価方法において、前記配管接合部検出手段は、前記接触式距離計測装置の出力に基づいてパイプラインの配管継ぎ目を検出する機能を有していることを特徴とするパイプラインの形状計測評価方法。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態において用いるパイプラインの検査ピグの概要を示す図である。
【0025】
ピグ本体1の外周部にはシールカップ3が配置されており、ピグ本体1が配管内に挿入されると、シールカップの3外周は配管内面と密着し、シールカップ3前後の配管内の差圧によりピグ本体1に駆動力が発生し、配管内を走行する。シールカップはピグ本体1の前後2ヶ所に設置されているが、これはシールカップが1ヶ所では走行時のシールカップ3の変形等により配管内面との間に空隙が生じ、走行に支障が出る可能性があるので、これを防止するためである。
【0026】
ピグ本体1の外部には、走行距離計測手段17,18が配置されている。走行距離計測手段17,18は本体外面に回転軸を有し、他端に車輪を有するロッドであり、ロッド先端の車輪が常に配管内面と接触する機構を有している。先端部の車輪は配管内の走行に伴って回転するので、車輪の回転数を計測すれば、車輪の外周長からピグ本体1の走行距離を算出できる。
【0027】
この実施の形態においては、走行距離計測手段17,18は対向する位置に2個設置しているが、これは、パイプラインのベンド部の通過時には車輪の配管円周方向の接触位置により(配管ベンドの外側か内側かにより)計測される距離が異なるので、異なる走行距離を平均化し、ピグ本体の走行距離を算出するためである。より精度を向上させるためには走行距離計測手段の数を増やすことも可能である。走行距離計測手段の計測値はケーブル22を介して本体2内に設置される信号処理・記録装置19に伝送され、記録される。
【0028】
ピグ本体1内のバッテリ20は、走行距離計測手段17,17への電源を供給するとともに、ケーブル22を介して、ピグ本体2に設置される機器への電源を供給する。
【0029】
ピグ本体2は連結部21を介して本体1と接続されており、本体1が駆動されると連動して配管内を走行する。ここで、本体1と2は分離されているが、これはパイプラインのベンド部の通過性を確保する(本体筐体の配管内面への接触を避ける)ためであり、配管の内径とベンドの曲率から決まる条件が許せば、ピグ本体を1つとすることも可能である。
【0030】
ピグ本体2内には3軸ジャイロセンサユニット4が、ジャイロユニットの計測軸の1軸とピグ本体の中心軸とが平行となるように配置され、走行時にジャイロユニットとピグ本体2との相対位置関係がずれない様に固定されている。ピグ本体2の外周には、前後方向(走行方向)2ヶ所にそれぞれ、円周方向に等分された方向に6方向距離計測手段5〜10、11〜16が設置されている。
【0031】
図2に、ピグ本体のパイプライン配管に対する姿勢を計測する姿勢計測手段として用いるための距離計測手段の詳細を示す。図2において、30はロッド、31は接触用車輪、32は電磁誘導式スリーブセンサ、33はセンサとロッドを接続するリンケージ、34はロッドの回転軸を示す。
【0032】
図2(a)は、距離測定手段5〜10を前方から見た概要図である。図に示されるように、距離測定手段5〜10は、ピグ本体2の円周方向に60°おきに配設されており、そのロッド30の先端に設けられた接触用車輪31が、パイプライン内周面に接触するようになっている。
【0033】
図2(b)に、個々の距離測定手段の機構部の概要を示す。距離計測手段はロッド30先端に、配管内面と接触させるための接触用車輪31を有し、ピグ本体側の回転軸34を中心に回転するようになっている。また、ロッド30の一端にはリンケージ33が接続され、ロッド30の回転は、リンケージ33を介して電磁誘導式スリーブセンサ32のセンサロッド32aに接続されている。
【0034】
パイプライン内面との距離が変化し、ロッド30が回転軸34を中心に回転すると、リンケージ33により回転運動が直線運動に変換され、センサロッド32aが電磁誘導式スリーブセンサ32のセンサスリーブ内を移動する。この結果距離の変化(ロッド角度の変化)に応じて電磁誘導式スリーブセンサ32の出力が変化し、電磁誘導式スリーブセンサ32の出力値からロッド30の回転角度を算出することが可能となる。
【0035】
図示を省略しているが、ロッド30にはスプリング等により常にパイプライン内周面方向に広がるように力が印加されており、この印加される力は、パイプライン内で本体2の位置を保持するためにも使用されている。
【0036】
そして、パイプラインを構成する配管間の接合部(溶接部)には内面ビードが形成されているので、距離計測手段がパイプライン内面との距離を測定する時に、内面ビード通過時に測定距離に急激な変化が検出される。特に同じ位置に設けられた距離計測手段の計測結果が同時に1〜2mmのオーダで減少した場合には、配管の溶接部における内面の凸部(ビード部)を通過したと判断することが可能である。よって、この変化を検出することにより、配管間の接合部を検出することができる。図5に、距離計側手段による距離測定値の変化を示す。図中、パルス状に変化しているのが溶接線(ビード部)に相当する部分であり、これにより容易に溶接線を検知することができる。
【0037】
3軸ジャイロセンサユニット4、走行距離計測手段17,18、距離計測手段5〜16の各計測データは信号処理・記録装置19に入力される。この実施の形態においては、信号処理・記録装置19に、データを一定周期で記録保存し、ピグ本体の走行終了後に保存データを読み出し、保存データからパイプラインの線形算出を行っているが、信号処理装置によりリアルタイムに線形の算出を行って、記録装置に線形のデータを記録することも可能である。
【0038】
以下、上記の検査ピグを用いてパイプラインの線形計測を行う際の原理を、図3、図4を用いて説明する。図3に示す例では、ピグ本体進行方向の間隔Lの位置A点及びB点のそれぞれにおいて、円周方向の直交する4方向に計8つの距離計測手段を備えているものとし、ジャイロ本体(ピグ本体)の進行方向中心軸をZ軸、進行方向と直交する断面方向内の距離計測手段の計測方向をそれぞれX軸、Y軸とする。
【0039】
そして、各距離計測手段により得られる配管内面までの計測距離を、それぞれXA1、XA2、YA1、YA2、XB1、XB2、YB1、YB2とする。また、各距離計測手段はピグ本体のZ軸(中心軸)から等距離には位置されているものとする。ここで、配管の長手方向(中心軸)をz軸、配管断面の垂直方向をy軸、水平方向をx軸とする。そして、簡単のためにX軸とx軸、Y軸とy軸の方向は一致しているものとする(一致していない場合は、配管についてX軸方向にx軸を、Y軸方向にy軸をとればよい)。
【0040】
図3(a)に示すように、走行中に計測される距離計測手段の距離計測結果がすべて等しい計測値となる場合(XA1=XA2=YA1=YA2=XB1=XB2=YB1=YB2)には、ピグ本体のZ軸と配管z軸とが一致し、ピグ本体が配管の中央を走行している場合であると判断することができる。
【0041】
また、各断面(A断面及びB断面)における4つの距離計測結果が異なる場合には、A点断面あるいはB点断面のピグ本体のZ軸と配管のz軸とはずれていると判断できるが、図3(b)に示すように、A点及びB点の同一方向距離計測手段の距離計測結果が等しい(XA1=XA2、YA1=YA2、XB1=XB2、YB1=YB2)場合には、ピグ本体のZ軸とz軸は平行であり、ピグ全体が配管内で偏芯していると判断することができる。
【0042】
図3(c)に示すように、対向するX軸方向の距離計測結果が等しく(XA1=XA1、XB1=XB2)、Y軸方向の距離計測結果が異なる場合(YA1≠YA2、YB1≠YB2、YA1≠YB1、YA2≠YB2)には、ピグ本体のX軸周りにピグ本体が回転した状態であると判断でき、その際の回転角度αx(Z軸とz軸との角度)は以下の式で表される。
【0043】
αx=tan-1((A、B点におけるピグ中心の配管中心からのずれ)/(A−B点間隔))=tan-1((YA1−YB1)/L)=tan-1((YA2-YB2)/L)
この時、ピグ本体はピグ本体の中心軸(Z軸)と配管の中心軸(z軸)がX軸を中心に角度αxの角度で傾斜(回転)した姿勢で配管内を走行していることになる。ピグ本体の走行を配管の座標(xyz軸座標)から見るとピグ本体はz軸に沿って移動しているが、ピグ本体(3軸ジャイロセンサユニット)の座標(XYZ軸座標)から見るとZ軸のみではなく、Y軸方向にも移動していることになる。
【0044】
この時のピグ本体のZY座標における移動距離は、z軸(管)に沿ったピグ本体の移動距離から算出することができる。また、ピグ本体のジャイロは絶対座標系(地球座標)に対する自分の座標系の方向を計測できるので、ジャイロの計測結果と、ピグ本体の姿勢(傾斜)の計測結果と組み合わせると、ピグ本体(ジャイロ)が地球座標に対してその方向に移動したかが分かり、移動距離と組み合わせることによって、地球座標におけるピグ本体の移動軌跡、すなわちパイプライン線形を算出することができる。
【0045】
また、対向するY軸方向の距離計測結果が等しく(YA1=YA2、YB1=YB2)、X軸方向の距離計測結果が異なる場合(XA1≠XA2、XB1≠XB2、XA1≠XB1、XA2≠XB2)には、ピグ本体のY軸周りにピグ本体が回転した状態であると判断でき、その際の回転角度αy(Z軸とz軸との角度)は以下の式で表される。
【0046】
αy=tan-1((A、B点におけるピグ中心の配管中心からのずれ)/(A−B点間隔))=tan-1((XA1−XB1)/L)=tan-1((XA2−XB2)/L)
実際のピグの走行においては、ピグ本体の中心軸(Z軸)と配管の中心軸(z軸)とは、XY平面の任意の軸を中心に傾斜(回転)する可能性がある。その場合、X軸、Y軸方向の対になる距離計測結果がすべて異なることになる。そして、この計測結果からX軸及びY軸周りの傾斜αx、αyを求めることにより、ピグ本体の傾斜を求めることができる。また、この時のZ軸とz軸とのなす角α自体は、以下の式で表される。
【0047】
α=tan-1((A、B点におけるピグ中心の配管中心からのずれ)/(A−B点間隔))=tan-1(((YA1−YB1) 2 +(XA1−XB1)2)-1/2/L)
この実施の形態においては、ピグ本体2の円周上に配置された6個×2組の距離計測手段を用いているが、この場合には、A点又はB点における直交座標系(XYZ座標系)を定め、6点の計測結果からピグ中心とパイプライン中心との位置関係を求めてやればよい。
【0048】
図2では、配管内面までの距離計測手段はピグ本体の外周に直交する4方向に設置しているが、円周方向に等間隔に3つ以上配置すればピグ本体中心軸の配管中心軸に対する角度を算出することができる。
【0049】
図2に示されるような距離計測手段により、ピグ本体の中心線とパイプラインの中心線の角度のずれを計測する方法を図4に示す。
【0050】
第1のロッドの長さをL1、第2のロッドの長さをL2、第1のロッドと第2のロッドのピグ本体側回転軸間距離をL0とし、ピグ本体(中心軸)に対するそれぞれのロッドの角度をθ1、θ2とする。この時第1のロッド及び第2のロッドの先端の車輪がそれぞれ配管内面に接触しているとすると、2つの車輪の中心軸を結ぶ直線は配管の内面に平行となり、ピグ本体に対する各車輪の位置が分かればピグ本体に対する配管の角度を知ることができる。
【0051】
ピグ本体中心軸と配管内面の角度(ピグ本体の配管中心軸に対する回転角度)θ3は以下の式で表される。
θ3=tan-1(h3/L3)
L3=L0−L1cos(θ1)+L2cos(θ2)
h3=L2sin(θ2)−L1sin(θ1)
同様に、第3のロッド、第4のロッドに関しても、ピグ本体の配管中心軸に対する回転角度を算出することができる。
【0052】
ここでは、ピグ本体の回転面と配管内面までの距離計測手段とは同一平面にあるものとしているが、距離計測手段を円周方向に等間隔に3つ以上配置することによりピグ本体の配管に対する姿勢を算出することができる。
【0053】
上記のようにして、ピグ本体の配管に対する姿勢を算出し、それに基づいて補正を行うことにより、パイプラインの線形状を精度よく測定することができる。
【0054】
そして、同時に配管間の接合部を検出することにより、パイプラインを構成する配管毎の線形状を計測することができる。
【0055】
上記の方法により計測したパイプライン線形の例を図6に示す。実際のパイプラインの線形形状は直交3軸の座標で与えられるが、図は簡易的に走行距離(水平面内の変位距離)と深度の関係を示したものである。図6(b)は、図6(a)の一部を拡大した図である。
【0056】
図に示したものは、パイプライン敷設上では一定深度に敷設された直線とされる部分であるが、実際に計測された形状では、深度方向の変位が発生した複雑な曲線となっている。図6では走行距離と深度との関係を示したが、水平面内の形状を見た場合も、同様に直線からの変位が発生している。
【0057】
図6中のマークで示した部分が、検出された溶接線を示し、溶接線により区切られる部分がパイプラインを構成する1本1本の配管を示す。
【0058】
図中に示すように、配管同士の溶接部において線形状の屈曲が生じていることが判別できる。これは実施工時に、配管の軸線同士を完全に一致させることができないために生じた屈曲である。また、溶接線で区切られる配管1本に関しても、配管毎に異なる湾曲を有していることが判別できる。
【0059】
実際のパイプラインの形状は図に示したように接合部での屈曲と配管自体の湾曲の連続となっている。その敷設状態を評価する際に、全体の曲率を求めたのでは、接合部の屈曲の影響を含めたものとなるが、接合部での屈曲自体は施工により発生したものであり、配管に対して直接応力を発生させるものではないため、過剰な曲率の評価となる。そこで、このような接合部の屈曲を考慮して、配管1本毎の曲率を算出して評価することにより、パイプラインの敷設状態を適切に評価することが可能となる。
【0060】
図7に、図6に示した直線部分の線形状に基づいて配管毎の曲率を算出した結果を示す。曲率の算出は、計測された配管の3次元線形座標データ列から細かく(配管の部分部分毎に)算出することも可能であるが、ここでは、図8に示すように配管1本の3次元座標データ列から近似曲線を求め、その近似曲線の曲率を求めている。実際の配管においては、配管1本の中で曲率や湾曲方向が複雑に変化することはほとんど無いので、近似曲線により、配管1本毎の曲率を求めることで十分評価はできると考えられる。
【0061】
この例では、曲率から求められる各配管の曲率半径は1km以上であり、各配管の敷設状態の評価としては、ほぼ直線であり異常の無いものと判断できる。
【0062】
なお、ここでは3次元的な湾曲形状をしている配管の曲率を求めているが、水平面内、及び鉛直面内(配管の始点と終点を含む鉛直面)での配管形状から水平方向及び鉛直方向の曲率を別々に求め、評価することも可能であり、この場合、水平方向及び鉛直方向の曲率から施工状態における配管の変形方向を判別し、変形の原因(地盤沈下等)を推定することも可能となる。
【0063】
また、配管両端部の軸線の3次元座標内での方向を求めれば、接合部における屈曲に関して、配管同士のなす角度を算出することが可能である。配管端部の軸線方向は、配管端部の任意幅の3次元座標列データを直線で近似することにより容易に求めることが可能である。
【0064】
また、ベンド部に関して、上記の直線部の場合と同様に線形状を計測し、その線形状からベンド部の曲率を求めることが可能である。
【0065】
特にベンド部に関しては、ベンド入口部及び出口部の配管の軸線方向を求めることにより、ベンドの振れ角を算出し、配管加工時の、あるいは施工時のベンド振れ角からのズレを算出し、ベンド部に変形や応力集中が生じていないかを簡易に判断することが可能となる。
【0066】
図9に、水平ベンド部の水平面内での形状計測結果の例を示す。図に示した計測形状から求められるベンドの振れ角は44°である。このベンド部は、施工上は45°の振れ角を有するベンドであり約1°の誤差があるが、これはベンドの加工上は許容範囲(±2°)内であり、ベンド部分が大きく変形していないことが確認できる。
【0067】
そして、上記のような線形状の計測と曲率の算出を、一定期間(例えば3〜4年)毎に行い、それを比較することにより、パイプライン埋設部の地盤沈下、変位に伴うパイプライン線形の変化を検出し、発生している応力を推定することも可能となる。
【0068】
なお、距離計測手段として上記の実施の形態のように接触式距離計測装置を用いるのが好適であるが、光波距離計や超音波距離計あるいは渦流方式の距離計を用いることでもよい。
【0069】
【発明の効果】
本発明によれば、パイプラインを構成する配管毎について線形状を計測しているので、パイプラインの配管間の接合部における不整合がある場合でも、パイプラインの敷設状態を適切に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態において用いる検査ピグの概要を示す図である。
【図2】距離計測手段の詳細を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態におけるパイプラインの線形計測の原理を示す図である。
【図4】検査ピグの中心軸とパイプラインの中心軸軸のずれを算出する方法を示す図である。
【図5】配管と配管の溶接部の検出方法を説明する図である。
【図6】本発明の実施の形態において、直線部で計測した配管毎の線形状の例を示す図である。
【図7】図6の配管毎の線形状から配管毎の曲率を算出した図である。
【図8】配管毎の線形状から配管毎の曲率を算出する際に、線形状を曲線で近似する方法の例を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態において、水平ベンド部での形状計測結果の例を示す図である。
【符号の説明】
1、2…ピグ本体(筐体)、3…シールカップ、4…3軸ジャイロセンサユニット、5〜16…距離計測手段、17、18…走行距離計測手段、19…信号処理・記録装置、20…バッテリ、21…連結部、22…ケーブル、30…ロッド、31…接触用車輪、32…電磁誘導式スリーブセンサ、33…リンケージ、34…ロッドの回転軸
Claims (8)
- パイプライン配管内を走行する検査ピグを用いて当該パイプラインの線形状を計測し、その計測結果に基づいて当該パイプラインの敷設状態を評価するパイプラインの形状計測評価方法であって、パイプラインを構成する配管間の接合部を検出する配管接合部検出手段を備えた検査ピグを用いて、パイプラインを構成する配管毎について線形状を計測し、その配管毎の線形状の計測結果と過去の配管毎の線形状を比較し、その間の変化が所定の範囲内であれば、当該パイプラインの敷設状態は異常が無いと評価することを特徴とするパイプラインの形状計測評価方法。
- 請求項1に記載のパイプラインの形状計測評価方法において、配管毎の線形状の計測結果から各配管の曲率を算出し、算出された各配管の曲率と過去の各配管の曲率を比較し、その間の変化が所定の範囲内であれば、当該パイプラインの敷設状態は異常が無いと評価することを特徴とするパイプラインの形状計測評価方法。
- 請求項1又は請求項2に記載のパイプラインの形状計測評価方法において、各配管の両端部での配管中心軸の方向を算出することにより、各配管の振れ角(両端部の中心軸線のなす角度)を算出し、算出された各配管の振れ角と過去の各配管の振れ角を比較し、その間の変化が所定の範囲内であれば、当該パイプラインの敷設状態は異常が無いと評価することを特徴とするパイプラインの形状計測評価方法。
- 請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載のパイプラインの形状計測評価方法において、パイプラインを構成する配管毎の線形状の計測を任意の期間をおいて複数回行い、複数回の計測結果の変化から各配管に掛かる応力を推定して当該パイプラインの敷設状態を評価することを特徴とするパイプラインの形状計測評価方法。
- 請求項1から請求項4のうちのいずれか1項に記載のパイプラインの形状計測評価方法において、検査ピグは、ピグ本体内部に固定された3軸ジャイロセンサユニットと、ピグ本体のパイプライン配管内での走行距離を計測する走行距離計測手段と、ピグ本体のパイプライン配管に対する姿勢を計測する姿勢計測手段とを備えていることを特徴とするパイプラインの形状計測評価方法。
- 請求項5に記載のパイプラインの形状計測評価方法において、前記姿勢計測手段は、ピグ本体とパイプラインの内面との距離を計測する距離計測手段であって、ピグ本体の円周方向に等間隔に3つ以上複数配置されたセンサを1組としたものを、ピグ本体の走行方向に所定間隔を開けて2組以上配置したセンサユニットを有し、パイプラインの内面と常に接触を維持する機構を備えた接触式距離計測装置であることを特徴とするパイプラインの形状計測評価方法。
- 請求項6に記載のパイプラインの形状計測評価方法において、前記接触式距離計測装置は、一端がピグ本体の外面に設置された回転軸に接続されたロッド(アーム)と、ロッド(アーム)の他端が常にピグ本体の半径方向(パイプライン内面に向かう方向)に広がるように、当該ロッド(アーム)に力を印加する機構と、当該ロッド(アーム)の前記回転軸周りの回転角を計測する機構を有することを特徴とするパイプラインの形状計測評価方法。
- 請求項6又は請求項7に記載のパイプラインの形状計測評価方法において、前記配管接合部検出手段は、前記接触式距離計測装置の出力に基づいてパイプラインの配管継ぎ目を検出する機能を有していることを特徴とするパイプラインの形状計測評価方法。
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