JP2006118971A - パイプラインの形状計測評価方法及びその装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 重力鉛直偏差による重力誤差を極力抑え、長距離の測定でも十分な精度を確保することの可能なパイプラインの形状計測評価方法及びその装置を提供する。
【解決手段】 ピグ本体を静止状態として静止状態における加速度計の加速度データを取得し、その加速度データから重力方向を求め、この重力方向と地上の現在地点における緯度とから、パイプラインの線形形状の計測を開始する際に必要なピグ本体の初期姿勢角を算出し、この初期姿勢角を、加速度データから求められる重力方向と地球を密度一様な楕円体と仮定した場合の重力方向との偏差に基づく補正角によって補正し、その補正後の初期姿勢角を用いてパイプラインの線形形状を求める。
【選択図】 図2
【解決手段】 ピグ本体を静止状態として静止状態における加速度計の加速度データを取得し、その加速度データから重力方向を求め、この重力方向と地上の現在地点における緯度とから、パイプラインの線形形状の計測を開始する際に必要なピグ本体の初期姿勢角を算出し、この初期姿勢角を、加速度データから求められる重力方向と地球を密度一様な楕円体と仮定した場合の重力方向との偏差に基づく補正角によって補正し、その補正後の初期姿勢角を用いてパイプラインの線形形状を求める。
【選択図】 図2
Description
ガス導管等の埋設パイプラインの管内検査ピグによる検査・評価に関するものであり、特に、パイプラインの敷設形状を高精度で計測する検査ピグによるパイプライン形状計測評価方法及びその装置に関するものである。
長距離パイプラインにおいては、施工後の地理、環境状況等の変化に伴い、初期の施工時の位置から微妙な変化が生じる場合がある。これらは、短期間でのパイプラインの破損劣化に結びつくものではないが、長期的には、パイプラインを構成する各要素に不要な応力等が印加されることになるため、パイプラインの線形形状(パイプラインを構成する配管の中心の軌跡の形状)を計測、把握することは、パイプラインの維持管理において非常に重要である。また、地震などの災害が生じた場合には、パイプラインの線形形状が大きく変化する可能性があり、この点からもパイプライン線形形状計測は重要である。
パイプラインでも地表や共同溝等内で露出してるものに関しては測量等を行うことにより比較的簡易に線形形状の計測を行うことが可能であるが、地下、海底に埋設されているパイプラインに関しては、外部から正確な線形形状を計測することは不可能であり、従来より管内検査ピグを利用した線形計測技術の開発が行われている。
管内検査ピグによるパイプライン線形形状計測においては、パイプラインを走行する際のピグの絶対位置或いは、相対位置の変化を計測することにより線形計測を行うが、ピグ本体はパイプライン配管(金属管)内部に配置されるため、外部からの信号(地磁気や外部からの電磁気、電磁波信号等)を検出して、計測を行うことは困難であり、自律位置計測システムが必要となる。これに対して、従来からピグ本体内部にジャイロユニットを配置することにより走行時の地球座標に対するジャイロ(ピグ本体)の姿勢を計測し、ピグ本体の走行による移動距離とジャイロの姿勢から地球座標に対する位置を算出する方法が開発されていた(例えば特許文献1参照)。
特許第2851657号公報
ところで、実際に故障修正などのためにパイプラインの位置を特定して掘り起こすなどの作業を行う場合、測量手段による測量データで現在位置を把握し、その現在位置に基づいて、上記特許文献1のような計測技術で得られたピグ走行による計測データに基づく形状計測結果(地図データ)を参照してパイプラインの位置を特定している。測量手段には、一般的にはGPSが用いられており、このGPSでは、地球上のある地点における重力を考えるとき、地球を密度一様な楕円と仮定し、その地点における接平面に垂直な方向を重力方向(重力軸)として位置データを算出している。
ここで、特許文献1の技術では、ピグ本体の初期姿勢を算出する方法について特に言及されていないが、一般に広く知られた方法として、静止状態で加速度計から得られた加速度から求める方法を採用しているとすると、この技術により得られた形状計測結果を参照して実際のパイプラインの位置を特定しようとした場合、以下に示すような問題が生じていた。
すなわち、加速度計から求められる初期姿勢角における座標系と、実際にパイプラインの位置を特定する際に用いるGPS等の測量手段で用いる座標系とでは、異なる重力方向を基準とした座標系を用いているため、重力鉛直偏差による重力誤差が生じ、位置特定の際に不都合が生じていた。この点について以下に説明する。
地球上のある地点における重力を考える時、地球を密度一様な楕円と仮定した場合の重力方向と、実際の重力方向とは一致しておらず、図5に示すように、仮定楕円による重力方向(D軸)は、実際の重力方向(D’軸)に対して傾斜している。これは、地球の密度は、実際には海溝・山脈、鉱脈等によって一様でないことから、その影響により少しずれているものである。このように楕円仮定の重力方向と、実際の重力方向とは異なり、たとえば東京近辺では20秒ほどずれていることが知られている。なお、重力に垂直な面がその地点での水平面(NE面)であることから、N軸(南北方向)、E軸(東西方向)もずれている。図6にD軸、N軸及びE軸を示している。
ここで、上述したようにピグ本体の初期姿勢を加速度データから求める場合には、地球を密度一様な楕円と仮定した場合の重力方向(D軸)ではなく、実際の重力方向であるD’軸を重力軸とし、それに直角なN軸、E軸よりなる座標系で求められている。一方、実際にパイプラインの位置を特定する際の測量データにおいては、地球を密度一様な楕円と仮定した場合の重力方向(D軸)を重力軸とした座標系を用いている。ここで重力誤差が生じ、この誤差が影響して位置特定に際し不都合が生じてしまっていた。
このような重力誤差の問題は、比較的短距離(たとえば5km以下)もしくは短時間(たとえば1時間以下)の計測においては、誤差の累積程度が少ないことからさほど問題とならないが、より長距離(たとえば数十km)もしくは長時間(たとえば数時間)の場合には、誤差が累積し、これまで以上に小さい誤差要因までが影響を及ぼし、精度が悪化してしまう。
本発明は、上記のような点に鑑みなされたもので、重力鉛直偏差による重力誤差を極力抑え、長距離の測定でも十分な精度を確保することの可能なパイプラインの形状計測評価方法及びその装置を提供することを目的とする。
本発明に係るパイプラインの形状計測評価方法は、加速度計及び角速度計を有するセンサユニットを装着したピグ本体をパイプライン内を走行させ、センサユニット内の各計測計から得られたデータその他の情報に基づいてパイプラインの線形形状を計測するパイプラインの形状計測評価方法であって、ピグ本体を静止状態として静止状態における加速度計の加速度データを取得し、その加速度データから重力方向を求め、この重力方向と地上の現在地点における緯度とから、パイプラインの線形形状の計測を開始する際に必要なピグ本体の初期姿勢角を算出し、この初期姿勢角を、加速度データから求められる重力方向と地球を密度一様な楕円体と仮定した場合の重力方向との偏差に基づく補正角によって補正し、その補正後の初期姿勢角を用いてパイプラインの線形形状を求めるものである。
また、本発明に係るパイプラインの形状計測評価方法は、加速度データと緯度とから算出した初期姿勢角を初期値としてその値を変更しながらパイプラインの線形形状の計測計算を繰り返し行い、この計算によって得られたパイプライン上の評価地点における位置情報と、この評価地点において実際にGPSにより測定して得た位置情報とを比較して、差が最も少なくなったときの角度変更量を補正角としたものである。
また、本発明に係るパイプラインの形状計測評価方法は、補正角が、加速度データから求められる重力方向を重力軸とし、その重力軸に対する水平面における南北軸及び東西軸よりなる直交座標系の3軸と、地球を密度一様な楕円体と仮定した場合の重力方向を重力軸とし、その重力軸に対する水平面における南北軸及び東西軸よりなる直交座標系の3軸とのなす角であるものである。
また、本発明に係るパイプライン形状計測評価装置は、加速度計及び角速度計を有するセンサユニットを装着したピグ本体をパイプライン内を走行させ、センサユニット内の各計測計から得られたデータその他の情報に基づいてパイプラインの線形形状を計測する計測処理手段を備えたパイプライン形状計測評価装置であって、ピグ本体を静止状態として静止状態における加速度計の加速度データを取得し、その加速度データから重力方向を求め、この重力方向と地上の現在地点における緯度とから、計測処理手段で線形形状計測を開始する際に必要なピグ本体の初期姿勢角を算出する初期姿勢角算出手段と、初期姿勢角算出手段で算出した初期姿勢角を、加速度データから求められる重力方向と地球を密度一様な楕円体と仮定した場合の重力方向との偏差に基づく補正角で補正する初期姿勢角補正手段とを備え、計測処理手段は、補正後の初期姿勢角を用いてパイプラインの線形形状を求めるものである。
本発明に係るパイプライン形状計測評価装置は、加速度データと緯度とから算出した初期姿勢角を初期値としてその値を変更しながらパイプラインの線形形状の計測計算を繰り返し行い、この計算によって得られたパイプライン上の評価地点における位置情報と、この評価地点において実際にGPSにより測定して得た位置情報とを比較して、差が最も少なくなったときの角度変更量を補正角としたものである。
また、本発明に係るパイプライン形状計測評価装置は、補正角が、加速度データから求められる重力方向を重力軸とし、その重力軸に対する水平面における南北軸及び東西軸よりなる直交座標系の3軸と、地球を密度一様な楕円体と仮定した場合の重力方向を重力軸とし、その重力軸に対する水平面における南北軸及び東西軸よりなる直交座標系の3軸とのなす角であるものである。
また、本発明に係るパイプライン形状計測評価装置は、角速度計が3軸ジャイロ、加速度計は3軸加速度計であるものである。
以上説明したように、本発明によれば、初期姿勢角を、加速度データから求められる重力方向と地球を密度一様な楕円体と仮定した場合の重力方向との偏差に基づく補正角で補正した上で、その補正後の初期姿勢角を用いて線形形状計測を行うようにしたので、線形形状計測結果と、GPSなどの測量手段による位置計測結果との位置誤差を抑えることができる。よって、長距離もしくは長時間のピグ走行で得られた走行測定データから線形形状計測を行う場合でも、誤差累積による精度低下を抑えて高精度な計測結果を得ることが可能となる。
本発明の実施の形態を図1を用いて説明する。図1は、本発明の形態において用いるパイプラインの検査ピグの概要を示す図である。
ピグ本体1の外周部にはシールカップ3が配置されており、ピグ本体1が配管内に装入されると、シールカップ3の外周は配管内面と密着し、シールカップ3前後の配管内の差圧によりピグ本体1に駆動力が発生し、配管内を走行する。シールカップ3はピグ本体1の前後2カ所に設置されているが、これはシールカップ3が1カ所では走行時のシールカップ3の変形等により配管内面との間に空隙が生じ、走行に支障が出る可能性があるので、これを防止するためである。
ピグ本体1の外周部にはシールカップ3が配置されており、ピグ本体1が配管内に装入されると、シールカップ3の外周は配管内面と密着し、シールカップ3前後の配管内の差圧によりピグ本体1に駆動力が発生し、配管内を走行する。シールカップ3はピグ本体1の前後2カ所に設置されているが、これはシールカップ3が1カ所では走行時のシールカップ3の変形等により配管内面との間に空隙が生じ、走行に支障が出る可能性があるので、これを防止するためである。
ピグ本体1の外部には、走行距離計測手段17,18が配置されている。走行距離計測手段17,18は本体外面に回転軸を有し、多端に車輪を有するロッドであり、ロッド先端の車輪が常に配管内面と接触する機構を有している。先端部の車輪は配管内の走行に伴って回転するので、車輪の回転数を計測すれば、車輪の外周長からピグ本体1の走行距離を算出できる。
この実施の形態においては、走行距離計測手段17,18は対向する位置に2個設置しているが、これは、パイプラインのベンド部の通過時には車輪の配管円周方向の接触位置により(配管ベンドの外側か内側により)計測される距離が異なるので、異なる走行距離を平均化し、ピグ本体の走行距離を算出するためである。より精度を向上させるためには走行距離計測手段の数を増やすことも可能である。走行距離計測手段の計測値はケーブル22を介して本体2に設置される信号処理・記録装置19に伝送され、記録される。
ピグ本体1内のバッテリ20は、走行距離計測手段17,18への電源を供給するとともに、ケーブル22を介して、ピグ本体2に設置される機器への電源を供給する。
ピグ本体2は連結部21を介して本体1と接続されており、本体1が駆動されると連動して配管内を走行する。ここで、本体1と2は分離されているが、これはパイプラインのベンド部の通過性を確保する(本体筐体の配管内面への接触を避ける)ためであり、配管の内径とベンドの曲率から決まる条件が許せば、ピグ本体を1つとすることも可能である。
ピグ本体2内には、3軸ジャイロ(角速度計)と3次元加速度計とがそれらの計測軸が一致するようにして一体化されたセンサユニット4が、その計測軸とピグ本体の中心軸とが平行となるように設置され、走行時にセンサユニット4とピグ本体2との相対位置がずれないように固定されている。ピグ本体2の外周には、前後方向(走行方向)2カ所にそれぞれ、円周方向に等分された方向に6方向距離計測手段5〜10、11〜16が設置されている。
距離計測手段5〜10、11〜16は、配管の中心軸方向と、センサユニット4が積載されたピグ本体2の中心軸方向とのズレを算出するために必要な距離計測手段であり、ピグ筐体から配管内面までの距離を測定するためのものである。ここで、距離計測手段5〜10、11〜16は、配管内面に接触する接触用車輪が先端に設けられたロットを有している。該ロットは、ピグ本体側に設けられた図示紙面に垂直な方向に延びる回転軸を中心に回転するもので、配管内面の凹凸形状に応じてロットが回転軸を中心に回転し、その回転角度から、ピグ筐体から配管内面までの距離が測定できるようになっている。かかる構成の距離計測手段5〜10により、ピグ本体2の前部の配管中心軸からのズレを算出し、距離計測手段11〜16により、ピグ本体2の後部の配管中心軸からのズレを算出する。前部と後部のズレから、配管中心軸とピグ本体2の中心軸のズレが算出され、後述のパイプラインの線形評価に際し、ピグ本体2の配管内での姿勢変化による誤差補正が可能となっている。
センサユニット4、走行距離計測手段17,18、距離計測手段5〜16の各計測データは信号処理・記録装置19に入力される。この実施の形態においては、信号処理・記録装置19に、データを一定周期で記録保存し、ピグ本体2の走行終了後に保存データを読み出し、保存データからパイプラインの線形算出を行っているが、信号処理装置によりリアルタイムに線形計測を行って、記録装置19に線形のデータを記録することも可能である。
このように構成されたパイプラインの形状計測評価装置においては、まず、ピグ搭載の全ての機器を起動し、各計測手段(センサユニット4、距離計測手段5〜10,11〜16、走行距離計測手段17,18)による計測を開始させてデータ記録を開始する。その後、例えば約30分間、静止状態(移動、振動の極力無い状態)を保ち、静止状態における計測データを取得する。そして、ピグ本体1及びピグ本体2をパイプラインに挿入する。これにより、ピグ本体1及びピグ本体2は、パイプライン内を通過する流体圧力によって走行を開始する。ピグ本体2内では、静止状態で記録開始が指示されてから終点に到着し、パイプラインから取り出されてデータ記録が停止されるまでの間、所定のサンプリングタイム(例えば200Hz)で計測が行われる。そして、各計測手段により得られた計測データは、順次、信号処理・記録装置19に記録される。
以上のようにしてピグ本体2を静止状態として得られた計測データ(以下、静止計測データという)と、ピグ本体2を走行させて得られた計測データ(以下、走行計測データという)とに基づき、パイプラインの形状計測処理を行う。この形状計測処理は、パソコンなどのコンピュータで構成されるデータ処理装置で行われるもので、記録装置19を接続することによりデータ処理装置内で処理が行われるようになっている。データ処理装置内には、予めパイプラインの形状計測処理を行うプログラムがインストールされており、このプログラムと、CPUとによって本発明の初期姿勢角算出手段、初期姿勢角補正手段及び計測処理手段が構成される。
ここで、本発明は、重力鉛直偏差に起因した重力誤差を補正することを目的としたもので、以下に詳述する形状計測処理において用いる初期姿勢角に対して適切な補正角を設定することで重力誤差を補正しようとするものである。以下、補正値の算出手順に先立って、まず、パイプラインの形状計測処理について説明する。なお、このパイプラインの形状計測処理は、データ処理装置においてパイプラインの形状計測処理を行うプログラムが起動され、所定のパラメータ(タイムチャート及び緯度)が入力された後に開始される。なお、タイムチャートとは、静止状態において記録開始されてからピグ走行終了して記録終了されるまでの間において記録装置19内に時系列に記憶されている計測データのうち、どの部分が静止状態における静止計測データで、どの部分が走行計測データかを特定するためのものである。
図2は、パイプラインの形状計測処理の流れを示したフローチャートである。
データ処理装置では、まず、静止状態で得られた静止計測データのうち3次元加速度計から得られた加速度データから重力方向を求め、この重力方向と外部から入力された緯度とに基づいて加速度計が装着されたピグ本体2の初期姿勢角(α、β、γ)を算出する。静止状態で得られた加速度は、地上のその計測地点における重力加速度に相当し、この重力加速度から重力方向が求められる。なお、ここで算出される初期姿勢角は、上述したように実測の重力方向であるD’軸(図6参照)を重力軸とし、その重力軸に対する水平面における南北軸(N軸)及び東西軸(E軸)よりなる実測直交座標系の3軸に対する角度である。
データ処理装置では、まず、静止状態で得られた静止計測データのうち3次元加速度計から得られた加速度データから重力方向を求め、この重力方向と外部から入力された緯度とに基づいて加速度計が装着されたピグ本体2の初期姿勢角(α、β、γ)を算出する。静止状態で得られた加速度は、地上のその計測地点における重力加速度に相当し、この重力加速度から重力方向が求められる。なお、ここで算出される初期姿勢角は、上述したように実測の重力方向であるD’軸(図6参照)を重力軸とし、その重力軸に対する水平面における南北軸(N軸)及び東西軸(E軸)よりなる実測直交座標系の3軸に対する角度である。
そして、この初期姿勢角と、予めGPSにより計測したパイプラインの始点(初期位置)の座標と、記録装置19内に記憶されたサンプリングタイム毎の角速度データによる姿勢変化角(Δα、Δβ、Δγ)及び走行距離データとから通過座標を順次算出する。これによりパイプラインの線形形状データが得られる。すなわち、初期姿勢角に対して、サンプリングタイム毎の姿勢変化角(Δα、Δβ、Δγ)を累積してピグ本体2の姿勢(進行方向)を順次更新するとともに、その各姿勢で進んだ距離を走行距離計測手段17,18から得られた走行距離データに基づいて順次更新することで通過座標を順次算出し、パイプラインの線形を得る。ここで、3軸ジャイロから得られた角速度に基づく姿勢変化角は、ジャイロ本体に設定されたZ軸(たとえばピグ筐体進行方向)、X軸(たとえば進行方向に垂直な面上の一方向)、Y軸(たとえばZ、Xと垂直な方向)とのなす角であるため、これを先に求めた初期姿勢角に基づいて上記実測直交座標系とのなす角に変換した上で進行方向の更新演算を行う。
なお、この通過座標算出の際には各種補正も行う。各種補正として、まず、サンプリングタイム毎に得られた角速度データには、ピグ本体2の移動による角速度の他に地球の自転による自転角速度変化分も含まれているので、この変化分による補正を行う。この地球自転角速度による補正は、予めGPSにより地球自転角速度に起因する補正量を求めておき、その補正量に基づいて行う。また、他の補正としては、ピグ本体2の配管内での姿勢変化による誤差補正である。これらの補正には、従来公知の方法を用いることができる。
以上の処理により、パイプラインの線形形状が得られる。続いて、このようにして得られた線形形状の始点又は終点を、参照点(GPS計測値)に合わせる始点終点合わせ処理(図2参照)を行う。本例では上述したように初期位置として始点をGPS計測値に合わせているため、ここでは、初期位置として与えていない終点側をGPS計測値にあわせる処理を行うことになる。具体的には、始点を中心として水平面上で全線形状を回転、収縮させて終点をGPS計測値に一致させるものである。以上の処理により最終的な線形形状データが得られる。なお、終点を初期位置としてもよく、この場合、始点終点合わせ処理の際には始点側をGPS計測値にあわせる処理を行うことになる。
図3(a)は、ピグの実際の走行ルート(すなわちパイプラインの線形状)を示した図、図3(b)は、図3(a)の走行ルートにピグ本体を走行させて得た走行計測データによって得られた線形形状における測量評価点の計測結果(位置情報)と、同測量評価点でのGPSによる計測結果(位置情報)との誤差説明図である。
ここで、走行ルートは、この例では全長4kmで、走行ルートのほぼ中間地点に測量評価点を設けている。測量評価点においてGPSによる位置情報と計測処理結果に基づく位置情報とを比較すると、図3(b)に示すように1mの誤差が生じている。この位置誤差の原因の一つが、従来技術で説明したように重力鉛直偏差である。すなわち、上述の形状計測処理において静止状態で得られた加速度データに基づき求められた初期姿勢角は、重力方向として実測の重力軸(図中のD’軸)を用いて求められたものであるのに対し、線形形状計測処理において使用される地球自転角速度による補正量や初期位置座標は、重力方向としてD軸を用いて求められている。この重力方向の偏差が位置誤差となって表れてくる。なお、この測量評価点を本例では走行ルートの中間地点に設けているが、これに限られたものではない。
ここで、走行ルートは、この例では全長4kmで、走行ルートのほぼ中間地点に測量評価点を設けている。測量評価点においてGPSによる位置情報と計測処理結果に基づく位置情報とを比較すると、図3(b)に示すように1mの誤差が生じている。この位置誤差の原因の一つが、従来技術で説明したように重力鉛直偏差である。すなわち、上述の形状計測処理において静止状態で得られた加速度データに基づき求められた初期姿勢角は、重力方向として実測の重力軸(図中のD’軸)を用いて求められたものであるのに対し、線形形状計測処理において使用される地球自転角速度による補正量や初期位置座標は、重力方向としてD軸を用いて求められている。この重力方向の偏差が位置誤差となって表れてくる。なお、この測量評価点を本例では走行ルートの中間地点に設けているが、これに限られたものではない。
初期姿勢にて誤差が生じ、姿勢更新時にも誤差が累積していくため、図4に示すように走行距離が10kmを超えるような長距離になってくると短距離では目立たなかった誤差が顕著化し、精度が悪化する。図4では、全長12kmで、走行ルートの中間地点に設けた測量評価点において位置誤差が6mとなった。
そこで、本発明では、上述したようにD’軸とD軸との傾斜角に起因する重力誤差を初期姿勢角に対して適切な補正角を設定することで補正し、その補正初期姿勢角を用いて上述した形状計測処理を行うことにより、位置誤差を抑え精度の高い線形形状計測結果を得ようとするものである。以下、補正角の算出手順について説明する。
この補正角の算出手順の概要を述べると、静止時加速度データと緯度とから算出した初期姿勢角を初期値としてその値を変更しながらパイプラインの線形形状計測計算を繰り返し行い、この線形形状計測計算によって得られた、パイプライン上の測量評価地点における位置情報と、測量評価地点を実際にGPSにより測定して得た位置情報とを繰り返し比較し、差が最も少なくなるときのその角度変更量を補正角とするものである。なお、この補正角算出の際には、記録装置19に既に記録された走行測定データを用いて行う。
ここで、重力鉛直偏差による誤差は、実測重力方向(D’軸)と正規楕円体に基づく正規重力方向(D軸)との差であり、現在地点が例えば東京である場合、この誤差は角度にして20秒であることが知られている。よって、本例ではこの20秒の角度を参考に、補正角を(c0、c1、c2)と仮決めし、D’軸を基準とした初期姿勢角(α、β、γ)に加算した姿勢角(α+c0、β+c1、γ+c2)を補正初期姿勢角として上述のパイプラインの線形計測計算を行う。なお、(c0、c1、c2)は、20秒の角度を3方向に分けたもので、具体的にはc0=15,c1=15,c2=0である。
そして、補正角(c0、c1、c2)を変更することによって補正初期姿勢角(α+c0、β+c1、γ+c2)を変更しながら線形形状計測計算を繰り返し行い、この計算によって得られた、測量評価地点における位置情報(ピグ実測位置情報)と、GPSによる測量位置情報とを繰り返し比較し、差が最も小さくなったときの(c’0、c’1、c’2)を補正角とする。
以上のようにして求めた補正角によって補正した補正初期姿勢角を用いて上述した形状計測処理を行うことにより、位置誤差が抑えられた精度の高い線形形状計測結果を得ることができる。
また、一旦求めた補正角を、現在地点(緯度)における補正角として形状計測評価装置内に保持しておくことにより、例えば、同じ緯度地点を始点とした別のパイプラインの線形形状計測を行う場合に、補正角の算出処理を省略することが可能である。
このように本実施の形態によれば、初期姿勢角に対して適切な補正角を設定することで重力誤差を補正した上で、その補正後の初期姿勢角を用いて形状計測計算を行うので、線形形状計測結果と、GPSなどの測量手段による位置計測結果との位置誤差を抑えることができる。よって、長距離もしくは長時間のピグ走行で得られた走行測定データから線形形状を行う場合でも、誤差累積による精度低下を抑えることができ、高精度な計測結果を得ることができる。このため、測量手段により測定した現在位置情報を元に形状計測結果を参照してパイプラインの位置特定を行う場合に、位置誤差によって位置特定が困難になるといった不都合を解消できる。
ここで、図4の例で、始点において約20秒(N軸周り15秒、E軸周り15秒)の角度補正で初期姿勢角を補正して形状計測処理を行った結果、評価点での誤差が約2.5mとなり、全長12kmに対して誤差2.5mであることから1/2000以下の精度が可能となった。
なお、本実施の形態では、加速度計とジャイロとが一体になったセンサユニットを用いたが、加速度計とジャイロとが分離されていてもよく、また、それぞれがピグ本体1内に搭載されていてもよい。また、本例では、ピグ本体2に搭載した加速度計から初期姿勢を求めるようにしたが、ピグに非搭載の姿勢計測装置(実測重力を用いた姿勢計測装置)にて求め、演算時にその値を与えるようにしてもよい。
また、本例では加速度計に3次元加速度計を用いており、地球の重力加速度(静的加速度)の計測にも対応できるようになっている。
また、本例では角速度計と加速度計をピグ本体2に固定したが、ピグの走行方向を更新する目的に対し、ピグ本体2に対する姿勢更新毎の相対位置が十分な精度で得られていれば、特に固定しなくても良い。
また、楕円仮定の重力方向と実際の重力方向との誤差が、例えば東京では角度にして約20秒であると説明したが、これは国土地理院から提供されているデータを参考にしたものである。なお、国土地理院のデータに頼らず計測地点での重力方向を計測する方法としては、高精度傾斜計を使用する方法があり、この方法で得られたデータを参考に補正角を仮決めするようにしてもよい。
なお、本実施の形態では、補正角を算出するに際し、全走行ルートの形状計測結果から補正角を確定したが、短い区間の形状計測結果から補正角を確定し、その後、その補正角に基づく補正初期姿勢角を用いて全走行ルートの再計算を行うようにしてもよい。
2 ピグ本体、4 センサユニット。
Claims (7)
- 加速度計及び角速度計を有するセンサユニットを装着したピグ本体をパイプライン内を走行させ、前記センサユニット内の各計測計から得られたデータその他の情報に基づいてパイプラインの線形形状を計測するパイプラインの形状計測評価方法であって、
前記ピグ本体を静止状態として静止状態における前記加速度計の加速度データを取得し、その加速度データから重力方向を求め、この重力方向と地上の現在地点における緯度とから、パイプラインの線形形状の計測を開始する際に必要なピグ本体の初期姿勢角を算出し、この初期姿勢角を、前記加速度データから求められる前記重力方向と地球を密度一様な楕円体と仮定した場合の重力方向との偏差に基づく補正角によって補正し、その補正後の初期姿勢角を用いてパイプラインの線形形状を求めることを特徴とするパイプラインの形状計測評価方法。 - 前記加速度データと前記緯度とから算出した前記初期姿勢角を初期値としてその値を変更しながら前記パイプラインの線形形状の計測計算を繰り返し行い、この計算によって得られたパイプライン上の評価地点における位置情報と、前記評価地点において実際にGPSにより測定して得た位置情報とを比較して、差が最も少なくなったときの角度変更量を前記補正角とすることを特徴とする請求項1記載のパイプラインの形状計測評価方法。
- 前記補正角は、前記加速度データから求められる重力方向を重力軸とし、その重力軸に対する水平面における南北軸及び東西軸よりなる直交座標系の3軸と、地球を密度一様な楕円体と仮定した場合の重力方向を重力軸とし、その重力軸に対する水平面における南北軸及び東西軸よりなる直交座標系の3軸とのなす角であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のパイプラインの形状計測評価方法。
- 加速度計及び角速度計を有するセンサユニットを装着したピグ本体をパイプライン内を走行させ、前記センサユニット内の各計測計から得られたデータその他の情報に基づいてパイプラインの線形形状を計測する計測処理手段を備えたパイプライン形状計測評価装置であって、
前記ピグ本体を静止状態として静止状態における前記加速度計の加速度データを取得し、その加速度データから重力方向を求め、この重力方向と地上の現在地点における緯度とから、前記計測処理手段で線形形状計測を開始する際に必要なピグ本体の初期姿勢角を算出する初期姿勢角算出手段と、
該初期姿勢角算出手段で算出した初期姿勢角を、前記加速度データから求められる前記重力方向と地球を密度一様な楕円体と仮定した場合の重力方向との偏差に基づく補正角で補正する初期姿勢角補正手段とを備え、
前記計測処理手段は、補正後の初期姿勢角を用いてパイプラインの線形形状を求めることを特徴とするパイプライン形状計測評価装置。 - 前記加速度データと前記緯度とから算出した前記初期姿勢角を初期値としてその値を変更しながら前記パイプラインの線形形状の計測計算を繰り返し行い、この計算によって得られたパイプライン上の評価地点における位置情報と、前記評価地点において実際にGPSにより測定して得た位置情報とを比較して、差が最も少なくなったときの角度変更量を前記補正角とすることを特徴とする請求項4記載のパイプライン形状計測評価装置。
- 前記補正角は、前記加速度データから求められる重力方向を重力軸とし、その重力軸に対する水平面における南北軸及び東西軸よりなる直交座標系の3軸と、地球を密度一様な楕円体と仮定した場合の重力方向を重力軸とし、その重力軸に対する水平面における南北軸及び東西軸よりなる直交座標系の3軸とのなす角であることを特徴とする請求項4又は請求項5記載のパイプライン形状計測評価装置。
- 前記角速度計は3軸ジャイロ、前記加速度計は3軸加速度計であることを特徴とする請求項4乃至請求項6の何れかに記載のパイプライン形状計測評価装置。
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