本発明は、電子写真装置内で帯電部材として用いられる電子写真用導電性部材、それを用いた電子写真装置及びプロセスカートリッジに関するものである。
従来、電子写真用導電性部材は、弾性体の上にコーティング層を設けているものが多い。このコーティング層の組成や厚さや表面形状を最適化することで、電気特性を制御して、トナーや外添剤が付着するのを防ぎ、弾性体から滲み出してくる物質による被帯電体汚染を防ぐことができる。その結果、電子写真装置に組み込んだ時に、良好な画像が得られる(例えば、特許文献1参照。)。
しかし、滲み出しによる被帯電体汚染を防ぐ場合には、コーティング層にある程度の膜厚が必要となる。そのため、塗布法によりコーティング層を設ける工程が煩雑となる、膜厚ムラにより、画像不良が起る等の課題がある(例えば、特許文献2参照。)。
これらの課題を解決するべく、弾性体の最表面を高架橋化処理することで、コーティングをしなくても、コーティングで得られる特性を満たす手法も考えられている。このような従来技術の例として、導電性支持体の外周にハロゲン基を有するポリマーを主体とした導電性弾性体を設け、その最表面が高架橋化されている電子写真用導電性部材がある。その実際の構成として、エピクロルヒドリンゴムに紫外線照射を施したものが挙げられる(例えば、特許文献3参照。)。
また、弾性体の主成分としてエピクロルヒドリンゴムを用いた場合には、エピクロルヒドリンゴムを架橋したり、エネルギー線照射したりした場合に発生する塩化水素が被帯電体汚染の原因となる。この塩化水素を捕捉する材料として、鉛丹や酸化マグネシウム、酸化カルシウム、ハイドロタルサイト等がある(例えば、特許文献4参照。)。しかし、鉛丹は鉛化合物であるので環境汚染の観点から使用しないのが望ましい。またその他の材料は、以下に述べるような原因で滲み出しの原因となってしまうので、使用するのは好ましくない。
特開平8−160716号公報
特開平9−218564号公報
特開平8−292640号公報
特開平10−221927号公報
上記従来例でハロゲン基を有するポリマーを主体としたゴム組成物に含有される無機化合物は、(1)塩化水素を捕捉できる、(2)無機化合物に含まれる金属元素が塩化物になった場合の溶解度が低い、(3)分散性が良い、(4)組成物の分子運動性を低下させることができる、という4つの条件の幾つかを満たしていなかったため、以下のような欠点があった。
ハロゲン基を有するポリマーの一つであるエピクロルヒドリンゴムを架橋したり、エネルギー線照射したりした場合には、塩化水素が発生する。この塩化水素は、そのものが被帯電体を汚染する。それに加え、導電性弾性体のゴムやその他有機配合剤の結合を切断し低分子量化する。この副生成物である低分子量成分も被帯電体を汚染する原因となる。そのため、塩化水素と高い確率で反応する無機化合物を添加する必要がある。前記従来例で充填剤、加硫促進助剤として用いられている、炭酸カルシウム、酸化亜鉛は、以下のような反応で塩化水素と効率良く反応することができる。よって、塩化水素の捕捉剤としての役割も同時に果たしていた。
CaCO3+2HCl→CaCl2+H2O+CO2
ZnO+2HCl→ZnCl2+H2O
しかし、ここで生成された塩化カルシウム、塩化亜鉛は水への溶解度が高い。そのため、高温多湿環境に長期間放置した場合に吸湿してしまい、塩化カルシウム、塩化亜鉛が潮解した液体が被帯電体に付着し、画像不良の原因となる。
また、弾性体は含有する無機化合物により分子運動性が変化し、分子運動性が高いと副生成物がブリードしやすい傾向にある。本発明の目的であるブリードやブルームによる画像不良を無くすためには、分子運動性を制御する必要もある。分散性が悪く、その充填剤が擬似架橋点とならず、組成物の分子運動性が制御できないような無機化合物を用いた場合には、組成物中の低分子量成分が外部に移行して、被帯電体汚染の原因となってしまう。
このように、本発明の目的は、導電性弾性体から表面に移行する低分子量成分や、液状の付着物を無くし、良好な画像が得られる電子写真用導電性部材を提供することである。
また、本発明の他の目的は、良好な画像を安定して形成可能な電子写真装置、及びプロセスカートリッジを提供することである。
上記目的を達成するため、本発明の、
電子写真装置内で帯電部材として用いられる電子写真用導電性部材であって、
導電性支持体及び該導電性支持体の外周に形成された導電性弾性体を具備し、該導電性弾性体がハロゲン基を有するポリマーを架橋させたものを含有し、該ハロゲン基が塩素である電子写真用導電性部材において、
該導電性弾性体が、該ポリマーと塩化物の溶解度(本発明では、20℃における水100gに対する溶解度を「溶解度」と定義する。)が30g以下である金属元素(本発明では、周期表における金属元素、遷移金属元素と、ゲルマニウム、ケイ素、アンチモン等の半金属元素を含め「金属元素」と定義する。)を含む無機化合物と酸化亜鉛とを含有する組成物を用い、該組成物中の該ポリマーを架橋させることによって形成されたものであり、
該無機化合物が、疎水化処理されたシリカ、疎水化処理された酸化チタン、疎水化処理されたベントナイト又は疎水化処理されたカオリンであり、かつ、
該導電性弾性体の最表面が、該導電性弾性体の内部に比べて高架橋化されている
ことを特徴とする電子写真用導電性部材
を用いる。
この構成とすることで、最表面を高架橋化するだけで良いという作製の簡略化と、ブリードやブルームが無いという非汚染性を両立できる。
また、その導電性弾性体中に、塩化物の溶解度が30g以上である金属元素が、導電性弾性体の全質量の10質量%以下であれば、その金属元素がハロゲン化物になり、高温多湿環境に長期間放置しても吸湿することがほとんど無く、導電性弾性体中に含有されている疎水化処理された塩化物の溶解度が30g以下である金属元素を含む無機化合物と塩化水素が反応する確率が高まるため好ましい。
このハロゲン基を有するポリマーのなかで、エピクロルヒドリンゴム、クロロプレンゴム、塩素化ポリエチレン及びクロロスルフォン化ポリエチレンから選ばれる少なくとも1種類のポリマーを用いることで、難燃性を電子写真用導電性部材に付与することができる。
また、ハロゲン基を有するポリマーの中でもエピクロルヒドリンを用いることで、中抵抗の半導電性が容易に得られ、局所的な抵抗値のばらつきが小さい電子写真用導電性部材になる。
疎水化処理は、反応性のものと、非反応性のものがあるが、このうちシランカップリング剤、シリル化剤に代表される反応性のものを用いることで、処理剤自体のブリードやブルームを抑制することができる。
この中でも、特に二重結合を持つ脂肪族官能基を持つシランカップリング剤やシリル化剤は、ポリマーとの架橋点となるので導電性弾性体の分子運動性が低下し、ブリードを抑制するのでより好ましい。
また、エポキシ基を持つシランカップリング剤やシリル化剤は、エポキシ基が以下のような反応で塩化水素を捕捉することができるので、より好ましい。
導電性弾性体に添加される無機化合物として、シリカ、酸化チタン、ベントナイト、カオリンを用いると、これらの化合物は実質的に塩化水素と反応せず、もし塩化ケイ素、塩化チタンとなってもすぐ加水分解する。よって、炭酸カルシウムや酸化亜鉛のように塩化物が吸湿することが無い。これらの化合物は、表面の凹凸や層間に塩化水素を捕捉するため効果があると考えられる。また、これらの無機化合物は擬似架橋点となって分子運動性を低下させる効果も大きいので好適である。
導電性弾性体の最表面から1μmの深さにおけるユニバーサル硬さ値Aと、導電性弾性体の肉厚のうち半分の厚さまで取り除いた面から1μmの深さにおけるユニバーサル硬さ値BがA−B≧0.1N/mm2の関係を満たすことことで、導電性弾性体内部からのブリードやブルームを表面の高架橋層でブロックすることができる。
その高架橋化の手段としては、電子線、紫外線、X線、赤外線やプラズマを照射することで、容易に高架橋層を形成することができるので、本発明に適している。
上記の高架橋化法の中でも、紫外線照射をした場合には、粘着性や動摩擦係数を低下させる効果が他の処理に比べ優れる。そのため、トナーや外添剤が付着することが無く良好な画像が得られやすい。
また上記の他の目的は、上記の電子写真用導電性部材を具備している電子写真装置、及び上記の電子写真用導電性部材と、電子写真感光体と、を一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であるプロセスカートリッジにより達成することができる。
本発明によれば、ハロゲン基を有するポリマーを主体とした導電性弾性体に加熱、架橋、エネルギー線照射等をした場合に発生する、ハロゲン化水素と疎水化された無機化合物が高い確率で反応することで、ゴムやその他有機配合剤の結合が切断され、低分子量化されることが無くなる。また、ハロゲン化水素と無機化合物との反応でできたハロゲン化物が、高温多湿環境に長期間放置された場合に潮解してしまい、被帯電体に付着することも無くなる。また、無機化合物が疎水化されているために、組成物中での分散性が向上して、ハロゲン化水素と反応する確率が高まり、かつ、組成物の分子運動性を低下させることができるので、低分子量成分のブルームやブリードを低減することができる。よって、コーティングに比べ作製が簡単な高架橋化処理をするだけでブルームやブリードが無い電子写真用導電性部材が得られる。この電子写真用導電性部材を用いることで、高温多湿環境に放置された場合も、被帯電体汚染がなく、画像不良のない電子写真装置、更には電子写真感光体と共に一体に支持された電子写真装置本体に着脱自在なプロセスカートリッジを得ることができる。
本発明の電子写真用導電性部材の構造及び形態を例示すれば、図1に示したように、導電性弾性体(弾性層)12を導電性支持体(シャフト)11の外周に形成し、その最表面が高架橋化13された電子写真用導電性部材1を例示することができる。
上記導電性弾性体12としては、従来から電子写真用導電性部材の弾性体として用いられているハロゲン基を有するゴムや熱可塑性エラストマー等で形成することができる。具体的には、エピクロルヒドリンゴム、クロロプレンゴム、塩素化ポリエチレン、クロロスルフォン化ポリエチレン等を用いることができる。これらが共重合される成分の一つとして用いられていても、ポリマーブレンドの1種類として用いられていても良い。共重合、ポリマーブレンドに用いるポリマーとしては、ポリウレタン、ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、イソプレンゴム、エチレン−プロピレンゴム、ポリノルボルネンゴム、汎用のスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマーなどから選ばれる1種あるいは複数種のポリマーを好適に用いることができる。
とりわけ、エピクロルヒドリンゴムを主体としたポリマーでは、エピクロルヒドリン自体に起因した導電性発現機構のため、中抵抗の半導電性が容易に得られる。そのため、導電性粒子を分散することによって抵抗値を調整する材料に比べ、局所的な抵抗値のばらつきが小さくなるので好ましい。
エピクロルヒドリンに、加熱、架橋、紫外線照射、電子線照射、X線照射、プラズマ照射、赤外線照射した場合に発生する塩化水素は、ゴムやその他有機配合剤の結合を切断する。ここで副生成物としてできた、塩化水素や低分子量成分は、ブリードやブルームの原因となる。この時、ゴムに混合して、補強する、増量する、研磨面を平滑にする等の目的で上記導電性弾性体12に添加される充填剤は、多量に添加されることが一般的であり、塩化水素を捕捉する物質として適当である。
しかし、通常用いられている炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト等の無機化合物、つまり、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウム等の金属元素を含む無機化合物は、その金属元素が塩化物になった場合の溶解度が高く、高温多湿環境に放置した場合に吸湿する。このような無機化合物を添加した弾性体は、その外周に厚いコーティング層を設けた場合には問題には起らない。しかし、外周に高架橋化処理をしただけの場合には、一つは弾性体がむき出しになっていること、もう一つは高架橋化処理でさらに塩化水素が発生することによって、無機化合物の塩化物が吸湿してできた液体が表面に染み出やすい。そしてそれが、被帯電体に付着して、画像不良の原因となってしまう。
よって、塩化水素と反応した後も、溶解度が低い無機化合物を添加する必要がある。そのような無機化合物として、シリカ、二酸化チタン、ベントナイト、カオリンが挙げられる。
また、これらの無機化合物はゴムと擬似架橋することで、分子運動性が抑制され、生成した低分子量分がブルームやブリードすることも同時に抑える事ができるので好ましい。
しかし、これらの無機化合物を添加しても、発生した塩化水素と高い確率で反応しなければ、意味を為さず、反応性や分散性が良いものを選ぶ必要がある。そのような効果をもたらすために、表面を疎水化処理した無機化合物が良いことを見いだした。このとき疎水化処理としては、シリコーンオイル等の非反応性の表面処理をした場合には、非反応性であるが故にブルームやブリードしてしまう危険性がある。そこで、シランカップリング剤、シリル化剤などの反応性の処理剤で表面処理し、無機化合物の表面に固定化されていることが好ましい。
このような塩化物の溶解度が低く、反応性の疎水化処理された無機化合物として、シリカとしては、日本アエロジル(株)のAEROSIL R972、R974、R976、RX200、RY200、R202、R805、R812や、日本シリカ工業のNIPSIL SS−10、SS‐15、SS−30P、SS−30X、SS−50、SS−50A、SS−50B、SS−70、SS−72F、SS−115、SS−170X、SS−178B、二酸化チタンとしては日本アエロジル(株)のT805、ケイ酸塩としてはホージュン(株)の精製ベントナイト・ベンゲルSH、白石カルシウム(株)の焼成カオリン・ST−100、ST−301、ST−309、ST−CROWN、アイスバーグK、Engelhard Minerals Corp.のTRANSLINK−37、TRANSLINK−77、TRANSLINK−555、TRANSLINK HF900、TRANSLINK PA100、Kentuchy−Tennessee Clay Co.のAmlok 321、Mercap 100、Mercap200、J.M.HuberのNulok 390、Nucap 290、Nulok 170、Polykap TB、Polykap CS、ハーゲスピグメント(株)の焼成カオリンST−KE等が好適に用いられる。
また、疎水化処理がされていない無機化合物を処理する場合は、下記式(1)で示される公知のシランカップリング剤とシリル化剤を用いることができる。
Xa−Si−Ya−4・・・・式(1)
(上記式(1)中のaは1、2、3の何れか、Xはアルコキシ基、クロル基等の加水分解の可能であり、無機化合物との親和性の高い官能基。Yはビニル基、エポキシ基、スチリル基、メタクリロキシ基、アクリオキシ基、アミノ基、ウレイド基、クロロプロピル基、メルカプト基、スルフィド基、イソシアネート基、アルキル基等のポリマーとの親和性の良い官能基)
シランカップリング剤として、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が例示される。
また、シリル化剤としては、ジメチルジクロロシラン、オクタデシルトリクロロシラン、t−ブチルジメチルクロロシラン、フェニルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、N−トリメチルシリルアセトアミド、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、N−トリメチルシリルイミダゾール、N,N’−ビス(トリメチルシリル)ウレア、N−トリメチルシリル−N,N’−ジフェニルウレア、N,O−ビス(トリメチルシリル)カーバメート、N,O−ビス(トリメチルシリル)サルファメート、トリメチルシリルトリフルオロメタンスルホン酸等が例示される。
この中でも、特に二重結合を持つ脂肪族官能基を持つシランカップリング剤やシリル化剤は、ポリマーとの架橋点となるので導電性弾性体の分子運動性が低下し、ブリードを抑制するのでより好ましい。
このようなシランカップリング剤として、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1、3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が例示される。
また、シリル化剤としては、N−トリメチルシリルアセトアミド、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、N,N’−ビス(トリメチルシリル)ウレア、N−トリメチルシリル−N,N’−ジフェニルウレア等が例示される。
また、特にエポキシ基を持つシランカップリング剤やシリル化剤は塩化水素を捕捉することができるのでより好ましい。
このようなシランカップリング剤として2−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が例示される。
以上に挙げた疎水化された無機化合物がブルーム、ブリード、被帯電体汚染に対して効果がある理由は種々のことが考えられるが、次のようなことが複合して効果を発揮していると推測される。i)疎水化処理によって分散性が良く、塩化水素と効率良く反応する。ii)そこでできた塩化物が潮解しない。iii)層状の構造をしている、比表面積が大きい等の理由で無機化合物の表面が擬似架橋点となり、組成物の分子運動性を低下させることができるので、低分子量成分の移行速度が下がる。iv)シランカップリング剤やシリル化剤の官能基が擬似架橋点となり分子運動性を低下させることができるので、低分子量成分の移行速度が下がる。v)シランカップリング剤やシリル化剤が塩化水素と反応する。
無機化合物へのシランカップリング剤、シリル化剤の処理方法は、乾式処理と湿式処理がある。乾式処理は、攪拌機の中に無機化合物を仕込み、攪拌しながらシランカップリング剤やシリル化剤の部分加水分解液を滴下する方法である。この処理法は、多量の処理に向いているが、処理の均一さに欠ける。湿式処理は、無機化合物をシランカップリング剤やシリル化剤の溶液中で処理し、その後乾燥する。この処理法は、溶液が残るため、その処分をしなければいけないこと、乾燥工程で多量の熱が必要であることなどの問題はあるが、処理が均一に行われるので、本発明に好適である。
塩化物の溶解度の高い金属元素を含む無機化合物、低い金属元素を含む無機化合物問わず、複数種を併用することもできる。その場合には、塩化物の溶解度が30g以上である金属元素が、導電性弾性体中の全質量の10質量%以下であれば、本発明の改善しようとする、高温多湿環境に放置された場合にも、被帯電体に液状の付着物の無い電子写真用導電性部材ができる。
また、本発明の被帯電体汚染を防ぐという効果を失わない範囲で、ゴムの配合剤として一般に用いられる、軟化剤、加工助剤、架橋剤、架橋促進剤、架橋促進助剤、架橋遅延剤、分散剤、発泡剤、滑剤、老化防止剤、オゾン劣化防止剤、酸化防止剤、可塑剤、導電剤等を添加することができる。
架橋剤としては、硫黄、有機含硫黄化合物、有機過酸化物等を、架橋促進剤としては、アルデヒドアンモニア類、アルデヒドアミン類、グアニジン類、チオウレア類、チアゾール類、スルフェンアミド類、チウラム類、ジチオカルバミン酸塩類、キサントゲン酸塩類等を、架橋促進助剤としては、金属酸化物、脂肪酸等を、架橋遅延剤としては、有機酸、ニトロソ化合物、N−シクロヘキシルチオフタルイミド等を、分散剤、発泡剤、滑剤としては、ステアリン酸金属塩、高融点ワックス、低分子量エチレン、ポリエチレングリコール、オクタデシルアミン等を、老化防止剤としては、アミンケトン系、芳香族第二級アミン系、モノフェノール系、ビスフェノール系、ベンゾイミダゾール系、チオカルバミン酸系、チオウレア系老化防止剤等を、酸化防止剤としては、フェノール系、ホスファイト系、チオエーテル系酸化防止剤等を、可塑剤としては、植物油系、鉱物油系可塑剤、フタル酸誘導体、セバシン酸誘導体、アジピン酸誘導体等を例示することができる。
これらのポリマー、充填剤、軟化剤、加工助剤、架橋剤、架橋助剤、架橋促進剤、架橋促進助剤、架橋遅延剤、分散剤、発泡剤、滑剤、老化防止剤、オゾン劣化防止剤、酸化防止剤、可塑剤、導電剤等の混合方法としては、バンバリーミキサーや加圧式ニーダーといった密閉型混合機を使用した方法や、オープンロールのような開放型の混合機を使用した方法などを例示することができる。
ここで、混合した組成物の成型法としては、次のようなものが挙げられるが、これに限定されるものではない。まず、組成物を、押出し機でチューブ状に押出したものを、加硫缶で蒸気加硫する。このチューブを、表面に接着剤を塗布した、SUSやアルミニウムでできた円柱状のシャフトに圧入する。そして、チューブの両端を所望の長さに切断し、そのチューブ表面を研磨する。
被帯電体と接触する電子写真用導電性部材において、トナーや外添剤の付着性や電気特性や被帯電体の汚染性を制御するために、表面処理がされていることが好ましい。従来、表面に弾性体と異なる組成の材料を被覆、塗工等のコーティングをすることが多かった。しかし、作製が簡便である、材料費がいらない等の理由から、本発明では表面を高架橋化処理することを採用している。高架橋処理としては、電子線、紫外線、X線、赤外線、プラズマを照射することが例示できる。コーティングする場合に比べて、高架橋化処理の場合には弾性体がそのまま表面に露出するので、ブリードやブルームがしやすく、新たな課題となるが、本発明に用いる処理方法により解決することができる。
これらの高架橋化処理の中でも、紫外線を照射することが最も好ましい。紫外線を照射することで、所望の電気特性に制御でき、粘着性や動摩擦係数が低下するので、トナーや外添剤が導電性弾性体に付着することが抑制され、良好な画像が得られる。照射条件としては、200nm〜450nmの波長の光を導電性弾性体表面に均一に照射し、光源としては前記波長範囲の紫外線を照射できるものであれば特に限定されないが、例えば、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、エキシマランプ等の公知の光源が使用できる。ランプの規格としては、ランプ出力80W/cm、定格電力4000Wのものを使用するのが好ましい。導電性弾性体は、ランプに近いほど照射効率がよく、回転させながら照射すると均一に表面処理される。照射時間は、ランプの種類、照射距離等によって、最適範囲が異なるが、数秒から数十分の間で、表面の粘着性や動摩擦係数が十分下がり、必要とする電気特性を満たす条件がよい。
このとき、高架橋化された導電性弾性体の最表面から1μmの深さでのユニバーサル硬さ値Aと、導電性弾性体の肉厚のうち半分の厚さまで取り除いた面から1μmの深さでのユニバーサル硬さ値BがA−B≧0.1N/mm2の関係を満たすとよい。ここで、導電性弾性体の肉厚とは、導電性支持体から高架橋化された面までの最短距離を意味する。導電性弾性体の肉厚の半分まで取り除く方法としては、研磨砥石で表面を回転研磨する方法を用いた。測定条件としては、フィッシャーインストルメンツ(株)のH100微小硬度計を用いて、以下の条件で測定した。
表面の硬度が上昇することは、架橋密度が上がることの一つの指針となる。架橋密度が上昇することで低分子量成分が滲み出して来にくくなるのでよい。また、硬度が上昇することは、表面が改質されている一つの指針となり、動摩擦係数が下がるので、トナーや外添剤による汚れを防ぐことにもなる。
また、この導電性弾性体はブリードやブルームを起こさないので、被覆、塗工等のコーティングを表面処理として選択した場合にも被帯電体汚染の無い電子写真用導電性部材が得られる。そのコーティング膜厚は、導電性弾性体と被帯電体の貼り付きがない、所望の抵抗が得られる等の条件を満たせば実質0μmでもよい。
導電性弾性体に占める、塩化物の溶解度が30g以下である金属元素の量は、エネルギー分散型X線分光器(EDS)によって簡便に調べることができる。試料は、導電性弾性体の表面やシャフト近傍はさけ、なるべく中央部から切り出して作製する。切り出した試料は、スパッタリング装置(JFC−1900オートファインコータ、JEOL製)で白金を約10nm蒸着して調製する。その試料を、走査電子顕微鏡で試料全体を観察して、材料の不均一な凝集塊などがない測定位置を決める。そしてまず、その位置の定性分析を行い、どのような金属元素が含まれているかを調べる。このとき、蒸着されている白金を除外するように設定する。その後、そこで決定した金属元素について定量分析を行う。以下に測定条件を示す。
そして、塩化物の溶解度が30g以上である金属元素が、導電性弾性体中の全質量の10質量%以下であれば、本発明の導電性弾性体として、好適である。溶解度が30g以上および30g以下である金属塩化物の例を表4および表5に示す(化学便覧 基礎編II−P162 改訂4版 日本化学会編 丸善 株式会社より抜粋)。チタンやケイ素の塩化物は、水の存在下で加水分解するため、それらの溶解度は存在しない。また、チタンやケイ素の化合物を用いても、化学平衡的に塩化物になることは無く、高温多湿環境に長期間放置した場合に吸湿して、画像不良の原因となることはない。よって、塩化物の溶解度が30g以下の金属元素と同様に扱うことができ、本発明においてはチタンやケイ素を、塩化物の溶解度が30g以下の金属元素であるとみなす。ゴム用の配合剤として用いられる無機化合物のうち、溶解度が30g以上である塩化物が生成されるような、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト等は本発明には好ましくない。
図2に、本発明の電子写真用導電性部材を電子写真装置に適用した例を示す。21は像担持体としての回転ドラム型の電子写真感光体(被帯電体)である。この感光体21は、図中の矢印が示す時計回りに所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動する。感光体21には、例えばロール状の導電性支持体と該支持体上に無機感光材料または有機感光材料を含有する感光層とを少なくとも有する公知の感光体等を採用すればよい。また、感光体21は、感光体表面を所定の極性、電位に帯電させるための電荷注入層を更に有していてもよい。
22は本発明の電子写真用導電性部材を適用した帯電ローラである。帯電装置としては帯電ローラ以外にも公知の手段を利用することができる。帯電ローラ22と帯電ローラ22に帯電バイアスを印加する帯電バイアス印加電源S1とによって帯電手段が構成されている。帯電ローラ22は、感光体21に所定の押圧力で接触させてあり、本例では感光体21の回転に対して順方向に回転駆動する。この帯電ローラ22に対して帯電バイアス印加電源S1から、所定の直流電圧(本例では−1200Vとする)が印加されることで、感光体21の表面が所定の極性電位(本例では暗部電位−600Vとする)に一様に帯電処理される(DC帯電)。このDC帯電のほかにもAC/DC重畳帯電、注入帯電等の公知の帯電法を用いることができる。
23は露光手段である。この露光手段23には公知の手段を利用することができ、例えばレーザービームスキャナー等を好適に例示することができる。
感光体21の帯電処理面に該露光手段23により目的の画像情報に対応した像露光がなされることにより、感光体帯電面の露光明部の電位(本例では明部電位−350Vとする)が選択的に低下(減衰)して感光体21に静電潜像が形成される。
24は反転現像手段である。現像手段24としては公知の手段を利用することができ、例えば本例における現像手段24は、トナーを収容する現像容器の開口部に配設されてトナーを担持搬送するトナー担持体24aと、収容されているトナーを撹拌する撹拌部材24bと、トナー担持体24aのトナーの担持量(トナー層厚)を規制するトナー規制部材24cとを有する構成とされている。現像手段24は、感光体21表面の静電潜像の露光明部に、感光体21の帯電極性と同極性に帯電(本例では現像バイアス−350Vとする)しているトナー(ネガトナー)を選択的に付着させて静電潜像をトナー像として可視化する。現像方式としては特に制限はなく、既存の方法すべてを用いることができる。既存の方法としては、例えば、ジャンピング現像方式、接触現像方式及び磁気ブラシ方式等が存在するが、特にカラー画像を出力する画像形成装置には、トナーの飛散性改善等の目的より、接触現像方式の現像ローラが好ましい。この現像ローラに本発明の電子写真用導電性部材を好適に用いることができる。
25は本発明の電子写真用導電性部材を転写手段として用いた転写ローラである。転写ローラ25は、感光体21に所定の押圧力で接触させて転写ニップ部を形成させてあり、感光体21の回転と順方向に感光体21の回転周速度とほぼ同じ周速度で回転する。また、転写バイアス印加電源S2からトナーの帯電特性とは逆極性の転写電圧が印加される。転写ニップ部に対して不図示の給紙機構部から転写材Pが所定のタイミングで給紙され、その転写材Pの裏面が転写電圧を印加した転写ローラ5により、トナーの帯電極性とは逆極性に帯電されることにより、転写ニップ部において感光体21面側のトナー画像が転写材Pの表面側に静電転写される。
転写ニップ部でトナー画像の転写を受けた転写材Pは感光体面から分離して、不図示のトナー画像定着手段へ導入されて、トナー画像の定着を受けて画像形成物として出力される。両面画像形成モードや多重画像形成モードの場合は、この画像形成物が不図示の再循環搬送機機構に導入されて転写ニップ部へ再導入される。
転写残余トナー等の感光体21上の残留物は、ブレード型等のクリーニング手段26により、感光体上より回収される。
また、画像不良などの観点から、必要な場合には27の前露光手段があるとよい。感光体21に残留電荷が残るような場合には、帯電部材22による一次帯電を行う前に、前露光装置27によって感光体21の残留電荷を除去したほうが良い。また本発明に係る電子写真用導電性部材は、電子写真感光体と共に一体に支持され、電子写真装置本体に着脱自在としたプロセスカートリッジとすることもできる。
以下、実施例、比較例を示して、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記に限定されるものではない。
[実施例1]
エピクロルヒドリンゴム(商品名「エピクロマーCG102」:ダイソー(株)製) 100質量部、充填剤にはシランカップリング剤としてジメチルクロロシランで処理された反応性疎水化処理シリカ(商品名「AEROSIL RX200」:日本アエロジル(株)製) 10質量部、研磨性改善のための補強剤、増量剤としての着色グレードカーボン(商品名「MTカーボンブラック」:カナダcancarb製) 5質量部、酸化亜鉛 5質量部、ステアリン酸亜鉛 1質量部をオープンロールで20分間混練し、更にジベンゾチアゾリルジスルフィド(商品名「ノクセラーDM−P」:大内新興化学(株)製) 1質量部、テトラメチルチウラムモノスルフィド(商品名「ノクセラーTS」:大内新興化学(株)製) 1質量部、加硫剤としてイオウ 1質量部を加えて更に15分間オープンロールで混練した。
これをゴム押出機で、外径15mm、内径5.5mmの円筒形に押出し、250mmの長さに裁断し、加硫缶で、160℃の水蒸気で40分間1次加硫し、導電性弾性体1次加硫チューブを得た。次に直径6mm、長さ256mmの円柱形の導電性支持体(鋼製 表面工業ニッケルメッキ)の円柱面の軸方向中央部231mmにホットメルト接着剤を塗布し、乾燥した。この支持体を前記導電性弾性体1次加硫チューブに挿入し、その後、電気オーブンに入れ160℃で2時間、2次加硫と接着剤硬化を行い、未研磨の導電性部材を得た。この未研磨品のゴム部分の両端を切断し、ゴム部分の長さを231mmとした後、ゴム部分を回転砥石で研磨し、端部直径8.4mm、中央部8.5mmのクラウン形状で表面の十点平均粗さRz6μm、振れ40μmの導電性部材を得た。
この導電性部材に低圧水銀ランプを用いて、254nmのセンサーにおける感度で、紫外線の光量が8000mJ/cm2になるよう上記導電性部材を回転させながら均一に照射し、電子写真用導電性部材を得た。このとき、紫外線により高架橋化された導電性弾性体の最表面から1μmの深さにおけるユニバーサル硬さ値Aと、導電性弾性体の肉厚のうち半分の厚さまで取り除いた面から1μmの深さにおけるユニバーサル硬さ値Bの差A−Bは0.6N/mm2であった。
この電子写真用導電性部材の導電性弾性体内部の、塩化物の溶解度が30g以下である金属元素の質量%を前記の方法で測定したところ、反応性疎水化処理シリカに由来するケイ素を検出し、3.8質量%であった。塩化物の溶解度が30g以上である金属元素は、亜鉛を検出し、その量は4.1質量%であった。
この電子写真用導電性部材を以下の手順で評価した。
i)この電子写真用導電性部材を、導電性支持体の両端に500gずつの荷重をかけて、感光体に当接し、室温40℃湿度95%の恒温恒湿槽に1週間放置した。その電子写真用導電性部材を、恒温恒湿槽から取り出し、感光体の当接部を光学顕微鏡で観察することで液状の金属塩化物の潮解物が付着しているかどうかを確認した。この潮解物は、電子写真装置に組み込み画像を出力した場合に、感光体や電子写真用導電性部材の円周の周期で白い画像不良となるため好ましくない。また、この当接部の潮解物の上にトナーや外添剤が堆積し、黒い画像不良になるため好ましくない。
ii)また、感光体の付着物を乾拭きして取り除いたあと、図2に示す電子写真装置に恒温恒湿槽に放置した感光体と本発明の電子写真用導電性部材を帯電部材として組み込み、室温23℃湿度50%の環境において画像評価を行って、感光体と導電性弾性部材の当接部が画像不良として確認できるかを評価した。滲み出しが金属塩化物の潮解物のみの場合は感光体に付着しても変質させることはない。そのため、付着物を取り除いた後に残る当接部の画像不良は、塩化水素や塩化水素によって切断された低分子量成分によって感光体が変質したことを意味し、塩化水素の捕捉が不充分であったことを示す。
iii)この画像評価を行った電子写真用導電性部材の表面にトナーや外添剤が付着しているかを電子写真装置から取り出し目視評価した。高架橋化による改質が不充分な場合には、導電性弾性体の粘着性のためにトナーや外添剤が付着してしまうため、好ましくない。
これらの評価の結果、液状の付着物、感光体の変質に起因する当接部の画像不良、トナーや外添剤による汚れ共に無かった。以下の実施例、比較例と共に、その材料組成と評価結果をまとめたものを表6、7に示す。また、実施例、比較例の定量分析結果をまとめたものを表8に示す。
[実施例2]
実施例1と同材料組成の導電性部材に、紫外線の光量で500mJ/cm2となるように紫外線を照射したものを実施例2とした。
この電子写真用導電性部材の導電性弾性体内部の、塩化物の溶解度が30g以下である金属元素は、ケイ素を検出し、その量は3.8質量%、塩化物の溶解度が30g以上である金属元素は、亜鉛を検出し、その量は4.1質量%であった。
ユニバーサル硬さ値の差A−Bは0.05N/mm2であった。
液状の付着物はなく、当接部の画像不良はなかった。しかし、紫外線による高架橋化が不十分なために、問題のないレベルではあるが、トナーや外添剤による汚れがやや8000mJ/cm2照射した実施例1に比べ劣った。
[実施例3]
実施例1と同材料組成の導電性部材に、紫外線照射の代わりに、酸素濃度300ppm以下の雰囲気で、150kV、12.5mA、600kGyという条件で電子線を照射したものを実施例3とした。
この電子写真用導電性部材の導電性弾性体内部の、塩化物の溶解度が30g以下である金属元素は、ケイ素を検出し、その量は3.8質量%、塩化物の溶解度が30g以上である金属元素は、亜鉛を検出し、その量は4.1質量%であった。
ユニバーサル硬さ値の差A−Bは1.2N/mm2であった。
電子線は紫外線に比べ、エネルギーが強く、塩化水素の発生が多いため、問題のないレベルではあるが、液状の付着物があり、当接部の画像不良があった。また、電子線は紫外線に比べ粘着性や動摩擦係数の低下が小さいので、トナーや外添剤による汚れがやや紫外線照射した実施例1に比べやや劣った。
[実施例4]
実施例1の材料組成における反応性疎水化処理シリカを抜き、その代わりにポリジメチルシロキサンで処理された非反応性疎水化処理シリカ(商品名「RY200」:日本アエロジル(株)製)10質量部を添加し、同条件で紫外線照射したものを、実施例4とした。
この電子写真用導電性部材の導電性弾性体内部の、塩化物の溶解度が30g以下である金属元素は、非反応性疎水化処理シリカに由来するケイ素を検出し、その量は4.2質量%、塩化物の溶解度が30g以上である金属元素は、亜鉛を検出し、その量は4.7質量%であった。
ユニバーサル硬さ値の差A−Bは0.5N/mm2であった。
疎水化処理として、反応性のシランカップリング剤を用いている実施例1に比べ、非反応性のシリコーンオイルを用いているので、オイル自体が外部に移行しやすい。そのため、問題のないレベルではあるが、液状の付着物があり、当接部の画像不良がやや反応性の疎水化処理をした実施例1に比べやや劣った。トナーや外添剤による汚れは無かった。
[実施例5]
実施例1の材料組成における反応性疎水化処理シリカを抜き、その代わりにジメチルクロロシランで処理された反応性疎水化処理酸化チタン(商品名「T805」:日本アエロジル(株)製)10質量部を添加し、同条件で紫外線照射したものを、実施例5とした。
この電子写真用導電性部材の導電性弾性体内部の、塩化物の溶解度が30g以下である金属元素は、反応性疎水化処理酸化チタンに由来する、チタンとケイ素を検出し、その量は10.8質量%、塩化物の溶解度が30g以上である金属元素は、亜鉛を検出し、その量は6.3質量%であった。
ユニバーサル硬さ値の差A−Bは0.3N/mm2であった。
液状の付着物、当接部の画像不良、トナーや外添剤による汚れ共に無かった。
[実施例6]
実施例1の材料組成における反応性疎水化処理シリカを抜き、その代わりにアルキルトリアルコキシシランにより処理された反応性疎水化処理ベントナイト(商品名「ベンゲルSH」:ホージュン(株)製)を5質量部、MTカーボンを35質量部に増量し、同条件で紫外線紫外線照射したものを、実施例6とした。ベントナイトとは、モンモリロナイトを主成分とする粘土岩の名称である。ここで用いているベンゲルSHはベントナイトを精製している材料なので、実質の主成分はモンモリロナイトである。
この電子写真用導電性部材の導電性弾性体内部の、塩化物の溶解度が30g以下である金属元素は、反応性疎水化処理ベントナイトに由来する、ケイ素とナトリウムを検出し、その量は1.5質量%、塩化物の溶解度が30g以上である金属元素は、亜鉛、マグネシウム、アルミを検出し、その量は4.3質量%であった。
ユニバーサル硬さ値の差A−Bは1.0N/mm2であった。
液状の付着物、当接部の画像不良、トナーや外添剤による汚れ共に無かった。
[実施例7]
実施例6の材料組成における反応性疎水化処理ベントナイトを抜き、その代わりに有機ベントナイト(商品名「ベンゲルN−400」:ホージュン(株)製)をアルキルトリアルコキシシランにより処理したものを5質量部添加し、同条件で紫外線照射したものを、実施例7とした。ここで用いているベンゲルN−400はベントナイトを精製している材料で、実質の主成分はモンモリロナイトである。その精製したベントナイトの層間イオンがナトリウムから4級アンモニウム塩に置換されたものなので、有機ベントナイトと呼ぶ。
この電子写真用導電性部材の導電性弾性体内部の、塩化物の溶解度が30g以下である金属元素は、有機ベントナイトに由来するケイ素を検出し、その量は0.9質量%、塩化物の溶解度が30g以上である金属元素は、亜鉛、マグネシウム、アルミを検出し、その量は6.0質量%であった。
ユニバーサル硬さ値の差A−Bは0.9N/mm2であった。
液状の付着物、当接部の画像不良、トナーや外添剤による汚れ共に無かった。
[実施例8]
実施例6の材料組成における反応性疎水化処理ベントナイトを抜き、その代わりにビニルシランで処理された反応性疎水化処理カオリン(商品名「ハーゲスST−KE」:白石カルシウム(株)製)を5質量部添加し、同条件で紫外線照射したものを、実施例8とした。
この電子写真用導電性部材の導電性弾性体内部の、塩化物の溶解度が30g以下である金属元素は、反応性疎水化処理カオリンに由来するケイ素を検出し、その量は1.1質量%、塩化物の溶解度が30g以上である金属元素は、亜鉛、アルミを検出し、その量は6.8質量%であった。
ユニバーサル硬さ値の差A−Bは0.6N/mm2であった。
液状の付着物、当接部の画像不良、トナーや外添剤による汚れ共に無かった。
[比較例1]
実施例1と同材料組成の導電性部材に、紫外線照射をせず、表面処理を何もしないものを比較例1とした。
この電子写真用導電性部材の導電性弾性体内部の、塩化物の溶解度が30g以下である金属元素は、ケイ素を検出し、その量は3.8質量%、塩化物の溶解度が30g以上である金属元素は、亜鉛を検出し、その量は4.1質量%であった。
ユニバーサル硬さ値の差A−Bは0.0N/mm2であった。
液状の付着物は無かった。しかし、表面の高架橋化処理が無いために、実施例1に比べ粘着性や動摩擦係数が高いので、トナーや外添剤で導電性部材が汚れてしまい、当接後の画像評価は行えなかった。
[比較例2]
実施例1の材料組成における反応性疎水化処理シリカを抜き、その代わりにシリカ(商品名「AEROSIL 200」、日本アエロジル(株)製)10質量部を添加し、同条件で紫外線照射したものを、比較例2とした。
この電子写真用導電性部材の導電性弾性体内部の、塩化物の溶解度が30g以下である金属元素は、シリカに由来するケイ素を検出し、その量は6.1質量%、塩化物の溶解度が30g以上である金属元素は、亜鉛を検出し、その量は5.4質量%であった。
ユニバーサル硬さ値の差A−Bは0.3N/mm2であった。
液状の付着物、トナーや外添剤による汚れ共に無かった。しかし、当接部の変質に起因する画像不良があった。シリカの分散性が悪く、塩化水素と効率よく反応しなかったため、塩化水素がゴムや有機配合剤と反応し、これらの低分子量化されたものが感光体を変質させたためであると考えられる。
[比較例3]
実施例1の材料組成における反応性疎水化処理シリカを抜き、その代わりに炭酸カルシウム(商品名「シルバーW」、白石カルシウム(株)製)30質量部を添加し、同条件で紫外線紫外線照射したものを、比較例3とした。
この電子写真用導電性部材の導電性弾性体内部の、塩化物の溶解度が30g以下である金属元素は、検出されず、塩化物の溶解度が30g以上である金属元素は、亜鉛とカルシウムを検出し、その量は14.3質量%であった。
ユニバーサル硬さ値の差A−Bは0.4N/mm2であった。
当接部の画像不良、トナーや外添剤による汚れは共になかった。しかし、液状の付着物があった。炭酸カルシウムは、発生する塩化水素と効率よく反応することができるが、その副生成物としてできる、塩化カルシウムの溶解度が高いために、これが潮解したためと考えられる。
[比較例4]
実施例6の材料組成における反応性疎水化処理ベントナイトを抜いた組成に、同条件で紫外線照射したものを、比較例4とした。
この電子写真用導電性部材の導電性弾性体内部の、塩化物の溶解度が30g以上である金属元素は、塩化物の溶解度が30g以下である金属元素は、検出されず、亜鉛を検出し、その量は7.1質量%であった。
ユニバーサル硬さ値の差A−Bは1.1N/mm2であった。
液状の付着物、トナーや外添剤による汚れ共に無かった。しかし、当接部の変質に起因する画像不良があった。これは塩化水素をトラップする無機化合物が無いために、塩化水素は、ゴムや有機配合剤と反応し、これらの低分子量化されたものが感光体を変質させたためであると考えられる。
[比較例5]
実施例6の材料組成における反応性疎水化処理ベントナイトを抜き、その代わりに塩酸を捕捉する材料として一般的に用いられている酸化マグネシウム(商品名「ミクロマグ3−150」:協和化学工業(株)製)を5質量部添加し、同条件で紫外線照射したものを、比較例5とした。
この電子写真用導電性部材の導電性弾性体内部の、塩化物の溶解度が30g以下である金属元素は、検出されず、塩化物の溶解度が30g以上である金属元素は、亜鉛とマグネシウムを検出し、その量は12.7質量%であった。
ユニバーサル硬さ値の差A−Bは0.8N/mm2であった。
当接部の画像不良、トナーや外添剤による汚れは共になかった。しかし、液状の付着物があった。酸化マグネシウムは、発生する塩化水素と効率よく反応することができるが、その副生成物としてできる、塩化マグネシウムの溶解度が高いために、これが潮解したためと考えられる。
[比較例6]
実施例6の材料組成における反応性疎水化処理ベントナイトを抜き、その代わりに塩酸を捕捉する材料として一般的に用いられているハイドロタルサイト(商品名「DHT−4A」:協和化学工業(株)製)を5質量部添加し、同条件で紫外線照射したものを、比較例6とした。
この電子写真用導電性部材の導電性弾性体内部の、塩化物の溶解度が30g以下である金属元素は、ハイドロタルサイトに由来するナトリウムを検出し、その量は1.5質量%、塩化物の溶解度が30g以上である金属元素は、亜鉛とマグネシウムとアルミニウムを検出し、その量は12.6質量%であった。
ユニバーサル硬さ値の差A−Bは0.8N/mm2であった。
当接部の画像不良、トナーや外添剤による汚れは共になかった。しかし、液状の付着物があった。ハイドロタルサイトは、Mg4.3Al2(OH)12.6CO3・mH2Oという組成をしていて、発生する塩化水素と効率よく反応することができるが、その副生成物としてできる、塩化マグネシウム、塩化アルミニウムの溶解度が高いために、これが潮解したためと考えられる。
本発明の電子写真用導電性部材の一例を示す概略図である。
本発明の電子写真用導電性部材を用いた電子写真装置の一例を示す概略図である。
符号の説明
11‥‥導電性支持体(シャフト)
12‥‥導電性弾性体(弾性層)
13‥‥高架橋層
21‥‥像担持体(電子写真感光体)
22‥‥帯電部材(帯電ローラ)
23‥‥露光手段
24‥‥現像手段
24a‥‥トナー担持体
24b‥‥撹拌部材
24c‥‥トナー規制部材
25‥‥転写手段
26‥‥クリーニング手段
27‥‥前露光手段
L‥‥レーザー光
S1、S2‥‥バイアス印加電源
P‥‥転写材