JP4010844B2 - パイプインパイプ工法及びパイプインパイプ工法実施装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明はパイプインパイプ工法とその工法の実施装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
老朽化した下水道、農業用水道、工業用水道などの既設埋設管の更正工法として、既設埋設管の内部に新設管を挿入して新たな管路を構築する工法は、パイプインパイプ工法として従来から知られている(例えば、特開平7−91567号公報参照)。パイプインパイプ工法は、既設管路の流水を一時的に遮断し、その既設管路に割込み人孔を設けるとともに、その割り込み人孔に設けた開口から新設管を順次接続しながら既設管路内に挿入し、所定数の新設管の挿入が完了すると、割込み人孔を撤去するものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、従来のパイプインパイプ工法は、その施工の開始から終了までの期間において既設管路の流水を全面的に遮断する必要があり、その間は管路の機能が停止するという不便があった。
【0004】
そこで、この発明は流水の遮断時間をできるだけ短時間にして管路の機能を実質的に損なうことなく施工できるパイプインパイプ工法及びその実施装置を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記の課題を解決するために、この発明は、次の(1)の工程を実施したのち、(2)から(5)の工程を順次繰り返し実施して所定数の新設管を既設管路に挿入するようにしたものである。
(1)埋設された既設管路の一部を撤去して割込み人孔を設け、その割込み人孔に既設管路に通じた上流側開口と下流側開口を設け、その上流側開口に制水弁を介して伸縮管を連結するとともに、該割込み人孔に固定した推進ジャッキの伸縮ロッドを上記伸縮管に連結する準備工程、
(2)上記制水弁を閉止した状態で伸縮管と下流側開口との間に新設管を設置する新設管設置工程、
(3)上記推進ジャッキを駆動して該新設管を下流側の既設管路内に挿入するとともに、伸縮管を伸長させ、上記新設管の押込みの完了と同時に該伸縮管を下流側開口に密着せしめる新設管挿入工程、
(4)上記制水弁を開放し該伸縮管を通じて上流側に溜まった水を下流側に放流する放流工程、
(5)上記制水弁を閉止するとともに推進ジャッキを後退させて伸縮管を元の状態に戻す戻し工程。
【0006】
上記のパイプインパイプ工法によると、(1)の準備工程においては流水が遮断されるが、それ以後の(2)から(5)の繰り返し作業時においては、毎回放流工程において放流が行われる。従って、従来の工法に比べ流水遮断時間が大幅に短縮される。
【0007】
なお、上記(1)の準備工程において、割込み人孔の上流側既設管路と下流側既設管路の間に迂回管路を設け、その迂回管路に通水しつつ当該準備工程を実施するようにすれば、流水を遮断すること無く準備工程を実施することができる。
【0008】
また、前記の課題を解決する実施装置として、埋設された既設管路の一部を撤去して設けられた割込み人孔に既設管路に通じた上流側開口と下流側開口を設け、その上流側開口に制水弁を介して伸縮管を連結するとともに、該割込み人孔に固定した推進ジャッキの伸縮ロッドを上記伸縮管に連結し、上記伸縮管の収縮時における伸縮管と下流側開口との間隔を新設管の長さ以上に設定し、上記伸縮管と推進ジャッキの伸縮ストロークを下流側開口に達し得る長さに設定した構成を採用した。なお、上記伸縮管としてテレスコピック形又は蛇腹形のいずれかである構成を採用することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。図1と図2は準備工程を示すものであり、まず図1に示すように、老朽化した下水道等の既設管路1の通水を遮断した状態で割込み人孔2を設けるとともに、割込み人孔2内の既設管路1aを撤去する。割込み人孔2に上流側の既設管路1に連通した上流側開口3及び下流側の既設管路1に連通した下流側開口4を設ける。また、上流側の既設管路1と下流側の既設管路1との間に制御弁5を介在した迂回管路6、及び割込み人孔2と下流側の既設管路1の間に制御弁7を介在した排水管路8をそれぞれ設ける場合がある。
【0010】
次に、図2に示すように、上流側開口3の内側に円筒状の弁箱をもった制水弁9を取付けるとともに、その制水弁9の出口側に伸縮管11を取付ける。伸縮管11の先端部につば板12を介して環状の受け口支持部材13を設ける。また、上流側開口3の両側に推進ジャッキ14の基部を割込み人孔2の側壁を構成する矢板10に固定する。その伸縮ロッド15の先端を上記のつば板12に連結する。
【0011】
上記の伸縮管11は、順次径の異なる円筒部材16(図4参照)を水密及び抜け止めを施して嵌合したテレスコピック形のものであり、その最大径のものを制水弁9の弁箱に固定し、最小径のものに前記のつば板12を設けている。
【0012】
下流側開口4には環状の差し口部材17が取付けられ、後述の新設管20(図3参照)の挿通時において逆流水を阻止するため、その差し口部材17の内周にパッキン18が設けられる。また、その差し口部材17の外周面に後述の取付けボルト27が取付けられる。
【0013】
前記の伸縮管11が最も収縮した図2の状態で、その先端部に設けた受け口支持部材13と上記の差し口部材17(パッキン18を含む)との間の距離Lは、新設管20の全長より大きくなるよう、また、伸縮管11と推進ジャッキ14のストロークは、上記の距離Lと同じかこれより大きくなるように設定される。
【0014】
なお、受け口支持部材13と差し口部材17の間において、割込み人孔2の底面に新設管20用の仮置き台21が設置される。
【0015】
準備工程は以上のようなものであるが、その作業の間、既設管路1の流水は遮断されるか、又は迂回管路6を経て通水される。
【0016】
次に、図3に示した新設管設置工程を実施する。この工程においては、割込み人孔2内に新設管20を吊り降ろし、仮置き台21上に設置する。新設管2にはその胴回りの前後2ヵ所にソリ又は車輪付きバンド等の支持材22が装着される。新設管2の受け口23が前記の受け口支持部材13に対向し、差し口24が差し口部材17に対向する。
【0017】
次に、図4及び図5に示した新設管挿入工程を実施する。この工程においては、推進ジャッキ14を駆動して受け口支持部材13を新設管20の受け口23に挿入し、新設管20を押し進めると同時に伸縮管11を伸長させる。新設管20の差し口24を差し口部材17内から既設管1中に押し込み、受け口23の段部を差し口部材17に押し当てる(図5参照)。なお、パッキン18は新設管20の外周面に摺接する。
【0018】
次に、図6に示した放流工程を実施する。この工程においては、制水弁9を開放して上流側に溜まった流水を放流する。図中白抜き矢印は水の流れを示す。このとき、新設管20の外周面と既設管1とのすき間から割込み人孔2側への逆流する流れはパッキン18の部分で阻止される。
【0019】
次に、図7に示した戻し工程を実施する。この工程においては、制水弁9を閉止したのち、推進ジャッキ14を逆向きに駆動して伸縮管11を元の状態に収縮させる。差し口部材17から露出した新設管20の受け口23に逆流防止装置26が一時的に装着される。下流側既設管1からの万一の逆流に備えるためである。この逆流防止装置26の詳細は後述する。
【0020】
以下、前記の新設管設置工程、新設管挿入工程、放流工程及び戻し工程を繰り返し実施し、先行する新設管20の受け口23に後行する新設管20の差し口24を順次嵌合して所定数挿入する。この間、放流工程での放流だけで対処できない場合は、前述の迂回管路6を開放して、上流側既設管1から下流側既設管1に直接放流する。また、何らかの事情で人孔2内に水が溜まった場合は排水管路8を開放して排水を行う。
【0021】
なお、上記の伸縮管11に代えて、図8に示すような蛇腹管25を用いることができる。
【0022】
以上の説明では、準備工程から戻し工程まで、工程ごとに区切ってその内容を説明しているが、これは説明の便宜上そうしているのであって、このような区切りを常におくことを発明の要件とするものではい。要はこれらの工程で示された一連の作業を経時的に実施することを発明の要件とするものである。
【0023】
次に、図9に基づいて逆流防止装置26について説明する。逆流防止装置26は、前記の差し口部材17の左右の外側面にピン33により揺動自在に取付けられた2本の取付けボルト27、新設管20の受け口23に嵌合される蓋部材28、蓋部材28の内周面に装着されたパッキン29、該蓋部材28の前面に固着された固定バー30とからなる。上記の差し口部材17の内径は受け口23の外径より大であり、受け口23はパッキン18を押し曲げながら差し口部材17内に挿入される。
【0024】
この逆流防止装置26を取付ける際は、予めパッキン18と受け口23の段部との間に、数個の木片34を介在させ、受け口23をその木片34を介して差し口部材17で受けるようにする。蓋部材28を受け口23に嵌合したのち取付けボルト27を固定バー30のボルト穴に挿通してナット32を締め付ける。
【0025】
上記の木片34は、先行する新設管20の受け口23に後行の新設管20の差し口24(図9(b)の一点鎖線参照)を挿入する際、その差し口24が完全に挿入されていない状態で先行する新設管20が押し込まれることを防止するものである。即ち、木片34が無い場合は、差し口24が完全に挿入さないまま先行の新設管20が押し込まれることがありうるが、木片34があると、大きな押し込み力を加えてもその先行の新設管20は押し込まれないので、完全に挿入される。なお、差し口24が完全に挿入されたのちはこの木片34は不要となるので取外される。
【0026】
上記のような3個の木片34に代えて、図9(a)の一点鎖線で示すように、新設管20の胴回りを跨ぐ大きさの下向きコの字形の1個の介在物35を、パッキン18と受け口23の段部の間に差し込むようにしてもよい。
【0027】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、パイプインパイプ工法を実施するに際し、準備工程を除けば、その後の繰り返し作業においては毎回放流工程において上流側の流水を下流側へ放流しながら施工することができるので、管路の機能を実質的に損なうことがないか、又は断水時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】準備工程の断面図
【図2】準備工程の断面図
【図3】新設管設置工程の断面図
【図4】新設管挿入工程の断面図
【図5】新設管挿入工程の断面図
【図6】放流工程の断面図
【図7】戻し工程の断面図
【図8】蛇腹管を用いる場合の断面図
【図9】(a)逆流防止装置の正面図
(b)(a)図のb−b線の断面図
【符号の説明】
1、1a 既設管路
2 割込み人孔
3 上流側開口
4 下流側開口
5 制御弁
6 迂回管路
7 制御弁
8 排水管路
9 制水弁
10 矢板
11 伸縮管
12 つば板
13 受け口支持部材
14 推進ジャッキ
15 伸縮ロッド
16 円筒部材
17 差し口部材
18 パッキン
20 新設管
21 仮置き台
22 支持材
23 受け口
24 差し口
25 蛇腹管
26 逆流防止装置
27 取付けボルト
28 蓋部材
29 パッキン
30 固定バー
32 ナット
33 ピン
34 木片
35 介在物
Claims (4)
- 埋設された既設管路の一部を撤去して割込み人孔を設け、その割込み人孔に既設管路に通じた上流側開口と下流側開口を設け、その上流側開口に制水弁を介して伸縮管を連結するとともに、該割込み人孔に固定した推進ジャッキの伸縮ロッドを上記伸縮管に連結する準備工程、
上記制水弁を閉止した状態で伸縮管と下流側開口との間に新設管を設置する新設管設置工程、
上記推進ジャッキを駆動して該新設管を下流側の既設管路内に挿入するとともに、伸縮管を伸長させ、上記新設管の押込みの完了と同時に該伸縮管を下流側開口に密着せしめる新設管挿入工程、
上記制水弁を開放し該伸縮管を通じて上流側に溜まった水を下流側に放流する放流工程、
上記制水弁を閉止するとともに推進ジャッキを後退させて伸縮管を元の状態に戻す戻し工程、
からなり、上記準備工程を完了したのち、新設管設置工程から戻し工程までを繰り返し実施して所定数の新設管を既設管路に挿入するパイプインパイプ工法。 - 上記割込み人孔の上流側既設管路と下流側既設管路の間に迂回管路を設け、所定の工程においてその迂回管路に通水しつつ当該工程を実施する請求項1に記載のパイプインパイプ工法。
- 埋設された既設管路の一部を撤去して設けられた割込み人孔、その割込み人孔に設けられ既設管路に通じた上流側開口と下流側開口、その上流側開口に制水弁を介して連結された伸縮管、該割込み人孔に固定された推進ジャッキからなり、上記伸縮管の先端部に新設管の受け口を支持する受け口支持部が設けられ、前記推進ジャッキの伸縮ロッドが上記伸縮管に連結され、上記伸縮管の収縮時における伸縮管と下流側開口との間隔が上記新設管の長さ以上に設定され、上記伸縮管と推進ジャッキの伸縮ストロークが下流側開口に達し得る長さに設定されたパイプインパイプ工法実施装置。
- 上記伸縮管がテレスコピック形又は蛇腹形のいずれかである請求項3に記載のバイプインパイプ工法実施装置。
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