JP4008756B2 - 支持体および空気入りランフラットタイヤ - Google Patents
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Description
本発明はパンクした時、その状態のまま相当の距離を走行し得るようにタイヤの内部に配設される環状の支持体と、当該支持体が内部に配設された空気入りランフラットタイヤに関する。
【従来の技術】
空気入りタイヤでランフラット走行が可能、即ち、パンクしてタイヤ内圧が0kg/cm2になっても、ある程度の距離を安心して走行が可能なタイヤ(以後、ランフラットタイヤと呼ぶ。)として、タイヤの空気室内におけるリムの部分に、金属、合成樹脂製の環状の中子(支持体)を取り付けた中子タイプが知られている。
この中子タイプでは、リムに組み込む回転中子タイプと、リムに取り付けられるタイヤ径方向断面においてランフラット走行時にタイヤのトレッド部を支持する2つの凸部を有する形状(2山形状)の中子タイプが知られている。回転中子タイプは、回転中子を固定するための特殊ホイールが必要とされる点で汎用性に問題がある。一方、2山形状の中子タイプは、従来のリムに取り付けられるため汎用性が高い。
【発明が解決しようとする課題】
ところで、通常、2山形状の中子タイプは、径方向断面において幅方向で左右対称に形成されており、また、2つの凸部(ピーク)の径方向高さも等しく形成されている。しかしながら、車両にタイヤを取り付ける場合には、キャンバー角などによってタイヤの回転軸は路面に対して所定角度傾斜して取り付けられる。この結果、ランフラット走行時に中子の2つの凸部からタイヤに均等に荷重がかからず、一方の凸部に集中して荷重が作用する。したがって、軽量化のために凸部の板厚を薄くすると、集中して荷重が作用する凸部が短期間で破損してランフラット走行可能距離が低下してしまうという不都合があった。
本発明は、上記事実を考慮し、ランフラット走行耐性に優れた支持体および空気入りランフラットタイヤを提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の支持体は、空気入りタイヤの内部に配設され前記空気入りタイヤと共にリムに組み付けられ、ランフラット走行時に荷重を支持可能な環状の支持体であって、前記支持体の径方向断面において、径方向外側に突出した2つの凸部を含む湾曲した線形状とされた支持部と、前記支持部の径方向内側端部と一体化された弾性体であり、リム組み時に当該リムに装着される脚部と、を備え、前記2つの凸部の径方向頂点高さが異なることを特徴とする。
請求項1記載の支持体の作用ついて説明する。
支持体は従来の空気入りタイヤの内部(空気室内)に配設して、空気入りタイヤと共にリムに組み付けることができる。このようにして組み立てられたランフラットタイヤを自動車に装着して走行させると、空気入りタイヤの内圧低下時にタイヤ空気室内に配設された支持体がサイドゴム層に替わって荷重を支持することによって、ランフラット走行が可能となる。
ランフラットタイヤを車両に装着した場合に、キャンバー角によってタイヤの回転軸が路面に対して所定角度傾斜する。この結果、支持体の回転軸も路面に対して所定角度で傾斜した状態となる。しかしながら、支持体の2つの凸部の径方向高さが異なっているため、タイヤの路面側に低い凸部がくるようにタイヤ(支持体)を車両に装着することによってランフラット走行時に2つの凸部がトレッド部を支持した際に2つの凸部からトレッド部に作用する荷重が均等化される。すなわち、ランフラット走行時に2つの凸部に作用する負荷が均等化され、ランフラット走行耐性を向上させることができる。
請求項2に記載の空気入りランフラットタイヤは、一対のビードコア間にわたってトロイド状に形成されたカーカスと、前記カーカスのタイヤ軸方向外側に配置されてタイヤサイド部を構成するサイドゴム層と、前記カーカスのタイヤ径方向外側に配置されてトレッド部を構成するトレッドゴム層とを備え、リムに装着されるタイヤと、前記タイヤの内側に配設され、前記タイヤと共にリムに組み付けられる請求項1記載の支持体と、を備えることを特徴とする。
請求項2に記載の空気入りランフラットタイヤの作用について説明する。
空気入りタイヤの内圧低下時には、タイヤ空気室内に配設された支持体がサイドゴム層に替わってトレッド部を支持することによって、ランフラット走行が可能となる。
ところで、ランフラットタイヤを車両に装着した場合に、キャンバー角によってタイヤの回転軸が路面に対して所定角度傾斜する。この結果、支持体の回転軸も路面に対して所定角度で傾斜した状態となる。しかしながら、支持体の2つの凸部の径方向高さが異なっているため、タイヤの路面側に低い凸部がくるようにタイヤを車両に装着することによってランフラット走行時に2つの凸部がトレッド部を支持した際に2つの凸部からトレッド部に作用する荷重が均等化される。すなわち、ランフラット走行時に2つの凸部に作用する負荷が均等化され、良好なランフラット走行耐性を有する空気入りランフラットタイヤを提供することができる。
【発明の実施の形態】
本発明の一実施形態に係る空気入りランフラットタイヤについて図1〜図8を参照して説明する。
ここで、ランフラットタイヤ10とは、図1に示すように、リム12に空気入りタイヤ14と支持体16を組み付けたものをいう。リム12は、空気入りタイヤ14のサイズに対応した標準リムである。
ここで、標準リムとはJATMA(日本自動車タイヤ協会)のYear Book2002年度版規定のリムであり、標準空気圧とはJATMA(日本自動車タイヤ協会)のYear Book2002年度版の最大負荷能力に対応する空気圧であり、標準荷重とはJATMA(日本自動車タイヤ協会)のYear Book2002年度版の単輪を適用した場合の最大負荷能力に相当する荷重である。
日本以外では、荷重とは下記規格に記載されている適用サイズにおける単輪の最大荷重(最大負荷能力)のことであり、内圧とは下記規格に記載されている単輪の最大荷重(最大負荷能力)に対応する空気圧のことであり、リムとは下記規格に記載されている適用サイズにおける標準リム(または、”Approved Rim" 、”Recommended Rim")のことである。
規格は、タイヤが生産又は使用される地域に有効な産業規格によって決められている。例えば、アメリカ合衆国では、”The Tire and Rim Association Inc. のYear Book ”であり、欧州では”The European Tire and Rim Technical OrganizationのStandards Manual”である。
空気入りタイヤ14は、図1に示すように、一対のビード部18と、両ビード部18に跨がって延びるトロイド状のカーカス20と、カーカス20のクラウン部に位置する複数(本実施形態では2枚)のベルト層22と、ベルト層22の上部に形成されたトレッド部24とを備える。
空気入りタイヤ14の内部に配設される支持体16は、図1に示す断面形状のものがリング状に形成されたものであり、支持部26と、支持部26の両端に加硫成形されたゴム製の脚部28とを備える。
脚部28は、支持体16をリム組み付け時に空気入りタイヤ14の内側でリム12に組み付けられるものであり、高さ(径方向高さ)が25mm〜35mmが好適である。
一方、支持部26は、1枚のプレートを成形することによって図2に示す断面形状としたものであり、径方向外側に凸となる凸部30A、30Bと、その間に形成された径方向内側に凸となる凹部30C、さらには凸部30A、30Bの幅方向(X方向)外側(凹部30Cと反対側)に荷重を支持するサイド部30D、30Eが形成されている。サイド部30D、30Eの径方向内側の端部(リム側端部)には略タイヤ回転軸方向に延在するフランジ部30F、30Gが形成されている。
なお、支持部26は、軽量化のためにSUS、高張力鋼、アルミニウム、あるいは、カーボン、ケプラー、ガラス繊維のいずれか1つあるいはその組み合わせで補強された熱硬化樹脂、熱可塑性樹脂等から形成される。
また、本実施形態では、径方向断面において曲率半径R1の曲面とされた部分を凸部30A、30B(矢印A、Bの領域)、曲率半径R2の曲面とされた部分を凹部30C(矢印Cの領域)、凸部30A、30Bの幅方向外側に位置して径方向に延在する直線形状とされた部分をサイド部30D、30E、サイド部30D、30Eよりもさらに幅方向外側に形成され幅方向外側に延びる直線状とされた部分をフランジ部30F、30Gとする。
なお、支持部26では、凸部30A、30Bのそれぞれ径方向において最も外側の位置(以下、ピークという)P1、P2のフランジ部30F、30Gに対する径方向高さH1、H2が異なるものとされている。具体的には、以下のような寸法が好ましい。
0°≦|θc−θ|≦5°
ここで、θc:タイヤ空気圧低下時(ランフラット走行時)のキャンバー角、
θ=tan-1(H3/L)、
また、H3=H1−H2(H1>H2)、
L:ピークP1、P2間の幅方向距離
である(図2参照)。
このように、本実施形態に係る支持体16では、径方向断面において凸部30A、30Bを結ぶ接線の幅(軸)方向に対する傾斜角度θがランフラット走行時のキャンバー角θcに対して±5°以内とされている。
なお、このように形成されたランフラットタイヤ10は、径方向高さH1である高い方の凸部30Aが車体の外側となるようにして車両に装着される。
このランフラットタイヤ10の作用について説明する。
ランフラットタイヤ10では、空気入りタイヤ14の内圧が低下した場合、空気入りタイヤ14のトレッド部24を支持体16の凸部30A、30Bが支持して走行可能とする(図3参照)。また、この際、路面からの衝撃がトレッド部24、支持体16、リム12を介して車体に伝達されるが、支持体16のリム12と当接する部分にはゴム製の脚部28が設けられているため、路面からの衝撃が緩衝されてランフラット走行時の乗り心地が向上すると共に、路面からの衝撃によって支持体16(支持部26)のサイド部30D、30Eが変形してしまうことを回避できる。
また、ランフラット走行時にトレッド部24に作用する荷重は支持体16の凸部30A、30Bを介して作用する。ここで、トレッド部24が路面と略平行となるのに対して支持体16の回転軸はキャンバー角θcによって路面に対してキャンバー角θcの分だけ傾斜してしまう。この結果、トレッド部24に対して2つの凸部30A、30Bが不均一な圧力で接するおそれがあった。しかし、本実施形態の凸部30A、30Bは、凸部30A、30Bを結ぶ接線の幅方向に対する傾斜角度θ(図2参照)がキャンバー角θcに対して±5°の範囲となるように径方向高さH1、H2を異ならせているため、ランフラット走行時に凸部30A、30Bが略均等な圧力でトレッド部24に接することになる。したがって、いずれの凸部30A、30Bからもほぼ均等な荷重がトレッド部24に作用することになる。すなわち、いずれか一方の凸部に過剰な負荷がかかり、支持体16(凸部)が短期間に破損して走行不能になることを回避できる。したがって、ランフラットタイヤ10の走行耐性を向上させることができる。
(試験例)
上記実施形態の作用を確認するために、以下に示す実施例に係るランフラットタイヤ(以下、単に実施例という)と比較例に係るランフラットタイヤの比較試験(以下、単に比較例という)を行った。
実施例は実施形態で説明したランフラットタイヤと同様の構成であり、205/70R15サイズの空気入りタイヤに支持体を挿入したものを、上記タイヤサイズに対応する標準リム(6J)に組み付けたものである。実施例の各寸法(図2参照)は以下の通りである。
凸部30Aの径方向高さH1…30mm
凸部30Bの径方向高さH2…28mm
ピーク間距離L…65mm
脚部28の径方向高さ…35mm
また、支持体16の金属製の支持部26の板厚は0.7mmである。
一方、比較例は、図4に示すように、凸部30A、30Bの径方向高さHが同一(30mm)である点除いて他の点は全く同じ形状である。なお、図4では、実施形態と同様の構成要素について同一の参照符号している。
このように形成された実施例と比較例に係るランフラットタイヤを乗用車に装着して1つの車輪のみ空気圧ゼロとして100km/hでランフラット走行(1輪)した試験結果を表1に示す。
【表1】
このように、実施例は300km連続走行してもタイヤに破壊を生じなかったが、比較例は300km以内で支持体のタイヤ装着時内側の凸部30B(図3参照)が破損し、走行不能となった。このようにランフラット走行時のキャンバー角に対応するように支持部の2つの凸部の径方向高さに差を設けたことによってランフラット走行耐性が向上することが確認された。
【発明の効果】
以上説明したように本発明の請求項1に係る支持体は、ランフラット走行時にトレッド部を支持する2つの凸部の径方向高さを、ランフラット走行時のキャンバー角に対応させて異ならせたため、トレッド部に対して支持体の2つの凸部が略等しい圧力で接することになる。したがって、ランフラット走行時に2つの凸部に作用する負荷が均等化され、支持体のランフラット走行耐性を向上させることができる。
請求項2に係る空気入りランフラットタイヤでは、ランフラット走行時にトレッド部を支持する2つの凸部の径方向高さを、ランフラット走行時のキャンバー角に対応させて異ならせたため、トレッド部に対して支持体の2つの凸部が略等しい圧力で接することになる。この結果、ランフラット走行時に2つの凸部に均等に荷重が作用してランフラット走行耐性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る空気入りランフラットタイヤのリム装着時の断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る支持体の支持部の正面図である。
【図3】本発明の位置実施形態に係るランフラットタイヤのランフラット走行状態を示す断面図である。
【図4】比較例に係る空気入りランフラットタイヤのリム装着時の断面図である。
【符号の説明】
10…空気入りランフラットタイヤ
12…リム
14…空気入りタイヤ
16…支持体
24…トレッド部
26…支持部
30A、30B…凸部
Claims (2)
- 空気入りタイヤの内部に配設され前記空気入りタイヤと共にリムに組み付けられ、ランフラット走行時に荷重を支持可能な環状の支持体であって、
前記支持体の径方向断面において、径方向外側に突出した2つの凸部を含む湾曲した線形状とされた支持部と、
前記支持部の径方向内側端部と一体化された弾性体であり、リム組み時に当該リムに装着される脚部と、
を備え、前記2つの凸部の径方向頂点高さが異なることを特徴とする支持体。 - 一対のビードコア間にわたってトロイド状に形成されたカーカスと、前記カーカスのタイヤ軸方向外側に配置されてタイヤサイド部を構成するサイドゴム層と、前記カーカスのタイヤ径方向外側に配置されてトレッド部を構成するトレッドゴム層とを備え、リムに装着されるタイヤと、
前記タイヤの内側に配設され、前記タイヤと共にリムに組み付けられる請求項1記載の支持体と、
を備えることを特徴とする空気入りランフラットタイヤ。
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