JP4008154B2 - 木質セメント板及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、主として建築物に使用される木質セメント板及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
木質セメント板は、通常、セメント系無機材料と木片等の木質材料とを主な原料として湿式法、乾式法又は半乾式法によって製造される。
このような木質セメント板の強度を向上させることを目的として、熱可塑性樹脂であるアクリル樹脂のエマルジョンで木片をコーティングする方法(特開平8-319145号)、あるいは原料混合物にイソシアネート化合物を添加し、加熱硬化させる方法(特開平8-268743号)が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前者のように熱可塑性樹脂のみを使用した方法では、得られる木質セメント板の強度は顕著には向上せず、寸法安定性も十分とはいい難かった。また、後者のようにエポキシ樹脂のみを使用した方法では、得られる木質セメント板が脆くなり、外力によって割れ等が発生し易くなるという問題があり、更には、所望の強度を得るためにはかなりの量のエポキシ樹脂が必要であるが、エポキシ樹脂は高価なため、原料コストが高くなるという問題があった。
【0004】
したがって、本発明の課題は、高い強度を有するとともに、寸法安定性に優れ、同時に靱性も備えた木質セメント板及びその製造方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために、セメント系無機材料、木質材料、架橋型熱可塑性樹脂及びエポキシ樹脂を含有する硬化物からなることを特徴とする木質セメント板を提供するものである。該木質セメント板は、セメント系無機材料、木質材料、架橋型熱可塑性樹脂エマルジョン及びエポキシ樹脂の初期縮合物を含有する成形材料をフォーミングしてマットにし、該マットを水分存在下で圧締して一次硬化せしめ、該一次硬化マットを常温養生又はオートクレーブ養生することにより製造するのが好ましい。
【0006】
本発明において使用するエポキシ樹脂の硬化物は、その高い架橋密度により木質セメント板に高硬度及び高強度を与え、更には寸法安定性も向上させる。また、本発明において使用する架橋型熱可塑性樹脂は、硬化させるとエポキシ樹脂と架橋及び/又は自己架橋するが、該エポキシ樹脂の硬化物よりは架橋密度が低く、硬化後もなお可撓性を有するため、得られる木質セメント板に靱性を与える。なお、架橋型でない熱可塑性樹脂には全く架橋が存在しないため、このような非架橋型の熱可塑性樹脂を使用した場合には、エポキシ樹脂を添加しても木質セメント板の耐熱性や硬度、強度が低下してしまう。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
〔セメント系無機材料〕
本発明に用いられるセメント系無機材料としては、ポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント、アルミナセメント等のセメント類;シリカ粉、ケイ砂、ケイ石粉、水ガラス、シリカヒューム、シラスバルーン、パーライト、マイカ、ケイ藻土、ドロマイト等のケイ酸含有物質と上記セメント類とを混合した混合物;二水石膏、半水石膏、無水石膏、消石灰、生石灰等の活性石灰含有物質と上記ケイ酸含有物質との混合物等が例示される。
上記セメント系無機材料の中でも、セメント類とケイ酸含有物質との混合物が好ましく、セメント類とケイ酸含有物質との混合比(重量比)は1:2〜6:1であるのが好ましい。
【0008】
〔木質材料〕
本発明に用いられる木質材料としては、木粉、木毛、木片、木質繊維、木質パルプ、木質繊維束、ストランド等があるが、該木質材料には竹繊維、麻繊維、バカス、モミガラ、稲わら等のリグノセルロースを主成分とする材料を混合してもよい。好ましい木質材料としては、巾0.5 〜2.0 mm、長さ1〜20mm、アスペクト比(長さ/厚み)20〜30の木片や、直径0.1 〜2.0 mm、長さ2〜35mmの分枝及び/又は彎曲及び/又は折曲した木質繊維束がある。上記木質材料は、絶乾状態に換算して通常セメント系無機材料に対して5〜50重量%程度混合される。
【0009】
〔架橋型熱可塑性樹脂〕
本発明に用いられる架橋型熱可塑性樹脂としては、メチロール基、アルコキシメチル基、カルボキシル基、エポキシ基、ヒドロキシル基、アミド基、アミノ基等の架橋可能な官能基の1種又は2種以上を導入したアクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂などの熱可塑性樹脂がある。ここで、架橋型熱可塑性樹脂とは、架橋後も可撓性が残っている程度の架橋密度(官能基密度)を有する熱可塑性樹脂をいうものとする。
【0010】
該架橋型熱可塑性樹脂の種類には、(1) 相互反応可能な官能基を導入したもの、(2) エポキシ樹脂と反応可能な官能基を導入したもの、(3) 相互反応及びエポキシ樹脂との反応が可能な官能基を導入したもの、並びに(4) 相互反応可能な官能基及びエポキシ樹脂と反応可能な官能基の両者を導入したものがある。上記架橋型熱可塑性樹脂(1) によれば、自己架橋が可能であり、上記架橋型熱可塑性樹脂(2) によれば、エポキシ樹脂との架橋が可能であり、上記架橋型熱可塑性樹脂(3),(4) によれば、自己架橋及びエポキシ樹脂との架橋の両方が可能である。
なお、該架橋型熱可塑性樹脂は、通常エマルジョン型として使用されるが、溶剤型として使用されてもよい。
【0011】
〔エポキシ樹脂〕
本発明に用いられるエポキシ樹脂は、多価フェノールとエピクロルヒドリンとの重縮合によって得られる。該多価フェノールとしては、通常ビスフェノール類、特にビスフェノールAが使用され、本発明でもかかるビスフェノールA型エポキシ樹脂を使用するのが好ましい。
該エポキシ樹脂は、多価フェノールとエピクロルヒドリンとの初期縮合物の形で用いられ、該初期縮合物は末端にエポキシ基を有する。
【0012】
〔その他の成分〕
本発明の木質セメント板の成形材料には、上記以外の成分として、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸カリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、ギ酸カルシウム、酢酸カルシウム、アクリル酸カルシウム、水ガラス等のセメント硬化剤、バーミキュライト、ベントナイト等の鉱物粉末、ロウ、ワックス、パラフィン、シリコン、界面活性剤等の防水財や撥水剤、発泡性熱可塑性プラスチックビーズ、プラスチック発泡体等が添加されてもよい。なお、これらの例示は本発明を限定するものではない。
【0013】
〔木質セメント板の組成〕
本発明における木質セメント板の組成は、セメント系無機材料50〜70重量%、木質材料20〜40重量%、架橋型熱可塑性樹脂1〜9重量%及びエポキシ樹脂9〜1重量%(各々固形分)であるのが好ましい。架橋型熱可塑性樹脂が1重量%未満、あるいはエポキシ樹脂が1重量%未満では本発明の効果が十分に得られず、一方、架橋型熱可塑性樹脂が9重量%を超えると、木質セメント板の耐水性、吸水寸法安定性が低下し、エポキシ樹脂が9重量%を超えると、木質セメント板の靱性が低下する。
【0014】
〔木質セメント板の製造〕
次に、本発明の木質セメント板の好ましい製造方法を説明する。本発明の木質セメント板は、半乾式法又は乾式法によって製造するのが好ましい。
半乾式法の場合は、まず、上記セメント系無機材料、木質材料、架橋型熱可塑性樹脂エマルジョン及びエポキシ樹脂の初期縮合物、そして所望によりその他の成分を含有する混合物に水を添加混合し、得られた成形材料を板(搬送板、基板等)上に散布してマットをフォーミングする。一方、乾式法の場合は、まず、上記セメント系無機材料、木質材料、架橋型熱可塑性樹脂エマルジョン及びエポキシ樹脂の初期縮合物、そして所望によりその他の成分を含有する成形材料を板上に散布してマットをフォーミングし、該マットに水を添加する。いずれの方法においても、水は該マットの水分含有率が15〜50重量%となるように添加するのが好ましい。
なお、目的とする木質セメント板の表面に凹凸模様を付する場合には、成形材料を散布する上記板の型面に該凹凸模様に対応した凹凸模様を形成しておけばよい。
【0015】
以上のようにしてマットがフォーミングされたら、該マットを基板とともに圧締して加熱状態下で一次硬化せしめる。該一次硬化において適用される温度は通常50〜80℃であり、圧締圧は通常2〜5MPa である。
【0016】
この一次硬化工程において該エポキシ樹脂は硬化するが、該架橋型熱可塑性樹脂として上記架橋型熱可塑性樹脂(2),(3),(4) を使用した場合には、該架橋型熱可塑性樹脂の一部又は全部は該エポキシ樹脂と相互に架橋する。例えば、該架橋型熱可塑性樹脂の架橋可能な官能基がメチロール基である場合には、以下の反応により両者は架橋する。
【化1】
このように架橋型熱可塑性樹脂とエポキシ樹脂とが相互に架橋すると、得られる木質セメント板は極めて強固で靱性の高いものとなる。
【0017】
上記一次硬化後、得られた一次硬化マットは脱型した上で常温養生又はオートクレーブ養生する。常温養生は、通常常温で2〜4日間行われ、オートクレーブ養生は、通常85%RH以上の湿度、150 〜180 ℃の温度で10〜18時間行われる。
該架橋型熱可塑性樹脂として上記架橋型熱可塑性樹脂(1) を使用した場合、あるいは該架橋型熱可塑性樹脂として上記架橋型熱可塑性樹脂(3),(4) を使用し、該架橋型熱可塑性樹脂(3),(4) に未だ相互反応可能な官能基が残存している場合には、該架橋型熱可塑性樹脂は該オートクレーブ養生工程において自己架橋する。
【0018】
本発明の木質セメント板は、上記以外の方法により製造することもできる。例えば、エポキシ樹脂は養生工程後に含浸させてもよい。すなわち、セメント系無機材料、木質材料及び架橋型熱可塑性樹脂エマルジョン、そして所望によりその他の成分を含有する成形材料をフォーミングしてマットにし、該マットを水分存在下で圧締して一次硬化せしめ、該一次硬化マットを常温養生又はオートクレーブ養生した後、得られた二次硬化マットにエポキシ樹脂の初期縮合物を含浸せしめ、加熱硬化させてもよい。このようなエポキシ樹脂の含浸は、例えば減圧注入法によって行うことができる。
【0019】
以上説明した製造方法によって、二層構造又は三層構造の木質セメント板を製造することもできる。二層構造の場合には、例えば、まず粒子径の細かい木質材料を混合した成形材料を基板上に散布し、次いでその上に粒子径の大きい木質材料を混合した成形材料を散布して二層構造のマットをフォーミングし、該マットを圧締・加熱して上記粒子径の細かい木質材料を混合した成形材料によって緻密構造の表層部を形成し、上記粒子径の大きい木質材料を混合した成形材料によって粗構造の裏層部を形成する。
【0020】
三層構造の場合には、例えば、粒子径の細かい木質材料を混合した成形材料、次いで粒子径の大きい木質材料を混合した成形材料の上に更に粒子径の細かい木質材料を混合した成形材料を散布して三層構造のマットをフォーミングし、該マットを圧締・加熱して該粒子径の大きい木質材料を混合した成形材料からなる層を芯層部とし、その上下の粒子径の細かい木質材料を混合した成形材料からなる層を表裏層部とする。また、上記二層構造のマットを、粒子径の大きい木質材料を混合した成形材料からなる層相互が接触するように二枚積層して圧締・加熱してもよい。
【0021】
このようにして得られる木質セメント板は、架橋密度の高いエポキシ樹脂によって高硬度及び高強度、更には寸法安定性が付与されるとともに、エポキシ樹脂と架橋及び/又は自己架橋するものの、硬化後もなお可撓性を有する架橋型熱可塑性樹脂によって靱性が付与される。
なお、本発明では、高価なエポキシ樹脂だけでなく、架橋型熱可塑性樹脂を併用しているため、エポキシ樹脂のみを使用した木質セメント板と比較して原料コストの低下を図ることもできる。また、該架橋型熱可塑性樹脂がエポキシ樹脂の硬化剤として作用するため、2液タイプ(硬化剤混合型)のエポキシ樹脂の場合であっても、別途硬化剤を使用する必要はない。
【0022】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0023】
〔実施例1〜5,比較例1〜5〕
普通ポルトランドセメント26.7重量部、シリカヒューム5.3 重量部、フライアッシュ21.3重量部、ケイ酸ソーダ1.1 重量部、木フレーク35.6重量部並びに表1に示す量の架橋型熱可塑性樹脂のエマルジョン及びエポキシ樹脂の初期縮合物からなる混合物に対して、43重量%(対固形分)の水を添加し、攪拌して均一化した。得られた成形材料を搬送板上に散布してマットをフォーミングし、該マットを該搬送板とともに圧締し、50℃で12時間一次硬化せしめた後、圧締状態を解き、165 ℃で10時間オートクレーブ養生した。
【0024】
なお、該架橋型熱可塑性樹脂のエマルジョンとしては、メチルメタクリレート50重量%、ブチルアクリレート44重量%、N−メチロールアクリルアミド5重量%及びアクリル酸1重量%を共重合させた共重合樹脂エマルジョン(固形分50%)を使用し、エポキシ樹脂の初期縮合物としては、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとを重縮合させたビスフェノール化合物であって、分子量が約400 のものを使用した。
【0025】
【表1】
【0026】
得られた木質セメント板について、曲げ強度、ヤング率及び吸水線膨張率をJIS A5905に準拠して測定した。結果を表2に示す。
なお、架橋型熱可塑性樹脂及びエポキシ樹脂を使用した木質セメント板においては、該架橋型熱可塑性樹脂のメチロール基は、該エポキシ樹脂のエポキシ基と反応するとともに、メチロール基相互でも反応するため、該架橋型熱可塑性樹脂はエポキシ樹脂と架橋しているとともに、自己架橋もしていると考えられる。
【0027】
【表2】
【0028】
表2に示すように、架橋型熱可塑性樹脂及びエポキシ樹脂の両者を使用した木質セメント板は、曲げ強度、弾性及び吸水寸法安定性のバランスが取れている。
【0029】
【発明の効果】
本発明によれば、高い強度を有するとともに、寸法安定性に優れ、同時に靱性も備えた木質セメント板が得られる。
Claims (2)
- 固形分対比で、セメント系無機材料を50〜70重量%と、木質材料を20〜40重量%と、架橋型熱可塑性樹脂を1〜9重量%と、エポキシ樹脂を9〜1重量%とを含有する硬化物からなることを特徴とする木質セメント板。
- 固形分対比で、セメント系無機材料を50〜70重量%と、木質材料を20〜40重量%と、架橋型熱可塑性樹脂を1〜9重量%とする架橋型熱可塑性樹脂エマルジョンと、エポキシ樹脂を9〜1重量%とするエポキシ樹脂の初期縮合物とを含有する成形材料をフォーミングしてマットにする工程と、
上記マットを水分存在下で、温度50〜80℃、圧締圧2〜5 MPa で圧締して一次硬化する工程と、
上記一次硬化により得られたマットを2〜4日間常温養生する、又は、85% RH 以上の湿度、150〜180℃の温度で10〜18時間オートクレーブ養生する工程と、
を有することを特徴とする木質セメント板の製造方法。
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