JP4007681B2 - 翼付採血針 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、採血または薬液注入などのために用いられる、翼付採血針に関する。
【0002】
【従来の技術】
翼付採血針は、臨床検査のための採血時に、いわゆるルアーアダプター(後述)と組み合わせて真空採血にしばしば利用される。図2に示すように、翼付採血針10は、血管穿刺用の刃先を有する針管2、該針管の基端部を支持するとともに翼を有する針管支持部3、ルアー雌型部4、および、該針管支持部3と該ルアー雌型部4とをつなぐフレキシブルチューブ5からなるものである。この翼付採血針は、フラッシュバック(採血時、採血針が血管に入った直後に血液が採血針の基端部側に流出してくること)の確認が容易であることや、針管とルアー雌型部がフレキシブルチューブを介して繋がれているために真空採血に慣れていない採血者でも安心して真空採血できること、また採血に引き続いてルアー雌型部とルアーアダプターを切りはなした後、ルアー雌型部にシリンジを接続し直して、例えば、胃のレントゲン検査のための薬液を注入することができるなどの利点がある。
【0003】
典型的な真空採血システムは、特開昭62−227316号公報に記載されているが、システムの基本的な構成は、
1)図3に示した、有底の管状容器22の開放端を針穴シール性、且つガスバリヤー性を備えた栓体21で気密に封止し、内部を陰圧に保った真空採血管20
2)図4に示した、1本の金属製針管からなり、両末端に針先31、32を有し、栓体刺通側に雄ネジ部34を併設したハブ33を有する真空採血針30
3)図5に示した、上記ハブ33に併設した雄ねじに螺合する雌ネジを設けた採血針保持孔41を有し、上記真空採血管20を内腔42に挿入可能な真空採血用ホルダー40からなっている。
【0004】
上記の翼付採血針10を用いる場合は、図4に示したような両端に刃先を有する真空採血針に替えて、図6に示すようなルアーアダプター50を用いる。ルアーアダプター50には、血管穿刺用の針先31がなく、代りにルアー雄型部52が設けられている。また栓体刺通側針管には弾性鞘体54が被せられている。採血にあたっては、ルアーアダプター50の雄ねじ部53を前記ホルダー40の採血針保持孔41にネジ止めし、翼付採血針のルアー雌型部4と接続する。次いで、翼付採血針の針管2の血管への穿刺が正しく行われたら、採血管20をホルダー40内に挿入し、ルアーアダプター50の針先51に栓体21を押し込むと、針先51が栓体21を貫通し、採血管側と血管側の気圧差に応じて血液が採血管に流入するようになっている。両側の気圧差がなくなれば、血液の流入は止むので、採血管をホルダーから抜き取れば、採血作業は終る。そして、引続き、薬液を血管内に注入する場合は、翼付採血針を血管に留置したまま、ルアーアダプター50とホルダー40の組み立て体を翼付採血針のルアー雌型部4から抜き取り、代りに薬液を充填したシリンジをルアー雌型部4に接続して、薬液を注入する。すべての作業が終了すれば、翼付採血針を血管から抜去する。
【0005】
ところで、翼付採血針を真空採血システムに利用し、薬液注入も併せて実施する本方式で問題となっているのは、採血終了後、ルアーアダプターとホルダーの組立体を翼付採血針と分離したときに、翼付採血針のルアー雌型部4から血液がしばしば漏出することである。手技に熟練していると、完全に分離する前にフレキシブルチューブ5を折り曲げて、血流を遮断することも可能ではあるが、多数の採血、薬液注入を連続して行ううちには、操作上のミスから、血液が漏出してしまうことも多々ある。このようなことがあると、被採血者の服を汚したり、感染の原因となったりする。
【0006】
翼付採血針の従来例として、図7に示すようなルアー雌型部4を封止する栓7を設けたものが知られている。しかしながら、このような栓7では、完全に封止が完了する前に血液漏れが起こるのは避けられないし、手指が血液で汚染されることも避けられない。
【0007】
また、本発明でいう翼付採血針とは異なるが、長期留置用カテーテルの分野では、カテーテル開口部の血液漏れを防ぐ手段として、図8(イ)に示すような、弾性ゴム製のダイヤフラム61および押し子62からなる弁構造60が知られている。図8(ロ)に示したルアー雄型部63が挿入されると、図8(ハ)に示すように、押し子62が鈍角円錐形状のダイヤフラム61をより小さな角度の円錐形状に変形させる。すると、押し子62に設けられた開口62aを通じて、流路が開くというものである。ルアー雄型部63を抜去すると、ダイヤフラム61は元の形に復元し、流路は再び閉ざされる。しかしながら、このような構造は、使い捨ての翼付採血針に応用するには、複雑であり、コスト高にもつながる。
【0008】
また、翼付採血針を真空採血に用いるにあたっては、前述の血液漏出の問題に加えて、今一つの問題点がある。それは、フレキシブルチューブ内に含まれる0.2〜0.3mL程度の空気が、血液の流入開始とともに真空採血管内に吸引されてしまい、結果として実際に採血管内に収集できる血液量が減少してしまうことである。これは、採血量が10mL近い生化学検査用の真空採血管では、さほど問題とはならないが、1〜2mL程度の少量採血用の採血管では、規定採血量に占める採血ロスの割合は、20〜30%にもなり、決して無視できない量である。さらに、これらの少量採血用の採血管には、凝固機能検査、血沈検査、血液学検査等のように抗凝固剤と血液の混合比に正確さを要求されるものが多く、このことも翼付採血針を利用した真空採血法の普及を阻む大きな要因となっている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、請求項1記載の発明の目的は、翼付採血針を用いて、採血終了後、ルアーアダプターとホルダーの組立体を翼付採血針と分離したときに、翼付採血針のルアー雌型部からの血液漏出を簡単に防止し得る翼付採血針を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1記載の翼付採血針(以下、本発明1という)は、血管穿刺用の刃先を有する針管、該針管の基端部を支持するとともに翼を有する針管支持部、ルアー雌型部、および、該針管支持部と該ルアー雌型部とをつなぐフレキシブルチューブからなる翼付採血針において、ルアー雌型部内部に血液漏れを防止する弁構造が設けられたことを特徴とする。
【0011】
上記翼付採血針は、上記弁構造が、ルアー雄型部の挿入、抜去操作によって、開閉するものであることを特徴とする翼付採血針である。
【0013】
【作用】
本発明1の翼付採血針には、上記のように、ルアー雌型部内部に血流を制御する弁構造が設けられている。従来は、翼付採血針、血液漏れ防止弾性鞘体を有するルアーアダプター、および採血ホルダーの三つの部品をすべて組み立てた後でなければ、血管に穿刺することはできなかったが、本発明1および2の翼付採血針は、それ自体に血液漏れを防止する弁構造があるので、翼付採血針のみを血管に穿刺し、留置することができる。従って、採血を終えた後、薬液注入操作に移る場合も、ルアーアダプター、および採血ホルダーを翼付採血針側から外したときの血液漏れを心配する必要がなく、落ち着いて、薬液を充填したシリンジに付け替えることができる。そして、ルアー雌型部内部の弁構造は、挿入されたシリンジのルアー雄型部によって開くので、薬液の注入を行うことができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1を参照して本発明1の翼付採血針1の一例を説明する。本発明1の翼付採血針1は、図1(イ)に示すように、血管穿刺用の刃先を有する針管2、該針管2の基端部を支持するとともに翼を有する針管支持部3、ルアー雌型部4、および、該針管支持部3と該ルアー雌型部4とをつなぐフレキシブルチューブ5からなる翼付採血針1において、ルアー雌型部4内部に血液漏れを防止する弁構造6が設けられている。
【0016】
図1(ロ)および図1(ハ)は、図1(イ)のルアー雌型部4を拡大して示す模式的な断面図であり、図1(ロ)は弁構造6が閉鎖している状態を示し、図1(ハ)はルアーアダプターのルアー雄型部によって弁構造6が開放している状態を示している。上記弁構造6は、ルアーアダプターのルアー雄型部52の挿入、抜去操作によって開閉する切れ込み部6bを有する弾性体6aからなっている。
【0017】
本発明1に関わる翼付採血針の構成部材の材質は、従来公知のものを使用すればよく、特に制限されるものではない。切れ込み部を有する弾性体は、ゴム弾性を有する材質、例えば、架橋した天然ゴムや合成ゴム、あるいは熱可塑性エラストマー等が好ましいが、可逆的に開閉を繰り返し得る柔軟性を有する熱可塑性樹脂、例えば軟質塩化ビニルやエチレン酢酸ビニル樹脂、フタロセンのようなモノサイト型触媒によって得られるオレフィン・α−オレフィン共重合樹脂等、あるいは熱可塑性樹脂と熱可塑性エラストマーの複合物等を用いてもよい。
【0018】
上記切れ込み部6bを有する弾性体6aにおける、該切れ込み部6bの形状は、ルアーアダプターのルアー雄型部の挿入、抜去操作によって開閉する形状であれば、特に限定されないが、例えば、十文字、一文字などが挙げられる。
【0019】
本発明1の翼付採血針の使用方法の一例としては、採血にあたっては、翼付採血針の針管2を血管へ穿刺する。穿刺が正しく行われたら、真空採血用ホルダー40に取り付けられたルアーアダプター50のルアー雄型部52を翼付採血針のルアー雌型部4に挿入し、ルアー雄型部52で弁構造6の切れ込み部6bを押しつけることにより、切れ込み部6bを開き、血液をルアーアダプター50内に導く(図1(ハ))。次いで、採血管20をホルダー40内に挿入し、ルアーアダプター50の針先51に栓体21を押し込んで、針先51で栓体21を貫通せしめ、採血管側と血管側の気圧差に応じて血液を採血管に流入させる。両側の気圧差がなくなれば、血液の流入は止むので、採血管をホルダーから抜き取り、採血作業を終える。
【0020】
そして、引続き、薬液を血管内に注入する場合は、翼付採血針を血管に留置したまま、ルアー雄型部52を翼付採血針のルアー雌型部4から抜き取ることにより、弁構造6の切れ込み部6bを閉じ(図1(ロ))、代りに薬液を充填したシリンジを翼付採血針のルアー雌型部4に挿入し、シリンジのルアー雄型部で弁構造6の切れ込み部6bを押しつけることにより、切れ込み部6bを開き、薬液を針管2を通して血管内に注入する。すべての作業が終了すれば、翼付採血針を血管から抜去する。
【0021】
本発明1に関わる翼付採血針の各部サイズは、従来公知のものでよく、特に制限されるものではない。
【0022】
本発明1に関わる翼付採血針の構成部材の成形加工は、従来公知の方法を利用すればよく、特に制限されるものではない。上記の例では、弁構造はルアー雌型部にはめ込まれたものとなっているが、全体を一体成形してもよいことは言うまでもない。
【0031】
【発明の効果】
本発明1の翼付採血針の構成は、上述の通りであり、本発明1の翼付採血針を用いると、採血終了後、ルアーアダプターとホルダーの組立体を翼付採血針と分離したときに、翼付採血針のルアー雌型部からの血液漏出を簡単に防止し得る。従って、採血と薬液注入の連続操作が、ことさら熟練を要することもなく、安全に、且つ非常にスムーズに行えるようになるため、真空採血システムの普及自体にも一層の拍車がかかるものと期待される。
【0032】
また、本発明1の翼付採血針においては、弁構造が、ルアー雄型部の挿入、抜去操作によって、開閉するものであるので、簡便な弁構造となり、製造コストも安い。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明1の翼付採血針の一例を示す図であり、図1(イ)は、側面図、図1(ロ)および図1(ハ)は、図1(イ)のルアー雌型部を拡大して示す模式的な断面図であり、図1(ロ)は弁構造が閉鎖している状態を示し、図1(ハ)はルアー雄型部によって弁構造が開放している状態を示している。
【図2】 従来の翼付採血針を示す側面図。
【図3】 真空採血管を示す断面図。
【図4】 真空採血針を示す側面図。
【図5】 真空採血用ホルダーを示す断面図。
【図6】 ルアーアダプターを示す側面図。
【図7】 従来の翼付採血針の例を示す側面図。
【図8】 長期留置用カテーテルにおける、カテーテル開口部の血液漏れを防ぐ手段を示す断面図。
【符号の説明】
1 翼付採血針
2 針管
3 針管支持部
4 ルアー雌型部
5 フレキシブルチューブ
6 弁構造
6a 弾性体
6b 切れ込み部
8 栓体刺通用針管
20 真空採血管
30 真空採血針
40 真空採血用ホルダー
50 ルアーアダプター
52 ルアー雄型部
Claims (1)
- 血管穿刺用の刃先を有する針管、該針管の基端部を支持するとともに翼を有する針管支持部、ルアー雌型部、および、該針管支持部と該ルアー雌型部とをつなぐフレキシブルチューブからなる翼付採血針において、ルアー雌型部内部に血液漏れを防止する弁構造が設けられており、弁構造が、切れ込み部を有する弾性体からなり、ルアー雄型部の挿入、抜去操作によって、開閉するものであることを特徴とする翼付採血針。
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