JP4007657B2

JP4007657B2 - ゴルフクラブヘッド

Info

Publication number: JP4007657B2
Application number: JP32712297A
Authority: JP
Inventors: 良司樋口; 克幸相澤; 孝清大田原; 重信山浦
Original assignee: Mizuno Corp
Current assignee: Mizuno Corp
Priority date: 1997-11-11
Filing date: 1997-11-11
Publication date: 2007-11-14
Anticipated expiration: 2017-11-11
Also published as: JPH11137735A

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゴルフクラブヘッドに関するものであり、更に詳細には物理蒸着法又は化学蒸着法により硬質皮膜層を形成してなるゴルフクラブヘッドに関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
従来より、反発性能の向上、傷つきや摩耗等に対する耐久性の向上を目的として、ヘッド表面に物理蒸着法又は化学蒸着法により硬質皮膜層を施したゴルフクラブヘッドが知られている。例えば実開平３−７６１号には、金属材料からなるゴルフクラブヘッドの周面に周期律表第６族又は第５族に属する元素の合金又は化合物をイオンプレーティングしてなる被覆層を形成したゴルフクラブヘッドが開示されている。
【０００３】
又、登録実用新案第３０２８７２６号には、金属素材から形成されたゴルフクラブヘッドの表面に、湿式めっきによって皮膜層を形成し、該皮膜層の上に金属化合物皮膜層を蒸着やイオンプレーティング等の物理蒸着法により形成したゴルフクラブヘッドが開示されている。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来のゴルフクラブヘッドのうち、前記実開平３−７６１号に記載された、ゴルフクラブヘッドの周面にイオンプレーティングによる被覆層を形成してなるゴルフクラブヘッドにおいては、前記イオンプレーティングによる被覆層は、ゴルフクラブヘッド母材中に、前記被覆層を形成するための原子イオンが打ち込まれて形成されるものであるから、一般的な塗装や、メッキによる被覆層に比べて密着性は改善されているが、前記ゴルフクラブヘッド母材の硬さに比べて被覆層を成す周期律表第６族又は第５族に属する元素の合金又は化合物の方が非常に硬く、即ち、前記ヘッド母材と前記被覆層との硬度差が大きいために、ボール衝突時のヘッドの瞬間撓みに前記被覆層が追随できず、繰り返し打球することによる衝撃で、前記ヘッド母材と前記被覆層との界面が容易に剥離してしまうという問題があった。
【０００５】
又、実用新案登録第３０２８７２６号記載のゴルフクラブヘッドにおいては、金属素材からなるゴルフクラブヘッドと物理蒸着法により形成された金属化合物皮膜層との間に、湿式めっき皮膜層を形成しているが、めっきによって形成される皮膜は電気的な吸引力により前記金属素材表面に付着しているに過ぎないため密着性が悪く、繰り返し打球することによる衝撃で前記メッキ皮膜層が前記金属化合物皮膜層を伴って金属素材から容易に剥離してしまうという問題があった。
【０００６】
又、前記メッキ皮膜層を厚く形成した場合には、耐衝撃性が向上するため剥離は少なくなるものの、膜厚が厚くなった分重量が増加するため、重たいゴルフクラブヘッドになってしまい、ゴルフクラブに組み立てた際に、総重量の重い、バランスの悪いゴルフクラブになってしまうという問題があった。
【０００７】
又、前記メッキ皮膜層２を厚く形成し、その分前記メッキ皮膜層２の上に形成される前記金属化合物皮膜層３の膜厚を薄く形成した場合には、重量は重くならないものの、繰り返し打球することにより芝や砂との摩耗で前記金属化合物皮膜層が早く失われてしまい、前記金属化合物皮膜層が有する反発性能や耐久性が発揮されないという問題があった。
【０００８】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記問題点を解決し、飛距離を増大させ、打球時の衝撃による傷や摩耗等に対する耐久性を向上させたゴルフクラブヘッドを提供しようとするものである。
【０００９】
前記目的を達成するために、請求項１の発明は、金属材料よりなるヘッド母材の全体又は一部の表面に、窒化処理により２００μ以下の厚さの窒化層と、該窒化層の表面に物理蒸着法又は化学蒸着法により微小硬度１５００以上の金属化合物からなる硬物皮膜層を形成したゴルフクラブヘッドである。
【００１０】
請求項２の発明は、請求項１のゴルフクラブヘッドにおいて、前記硬質皮膜層は、２〜３０μの厚さであるゴルフクラブヘッドである。
【００１１】
請求項３の発明は、請求項１または２のゴルフクラブヘッドにおいて、前記硬質皮膜層は、Ｔｉ化合物、Ｔａ化合物、Ｃｒ化合物、Ｚｒ化合物、Ｎｂ化合物、Ｈｆ化合物、Ｗ化合物、Ｓｉ化合物、Ｍｏ化合物、Ｖ化合物、Ｂ化合物から選ばれる１種類からなる単層、又は異なる化合物単層の２層以上からなる多重層から形成したゴルフクラブヘッドである。
【００１２】
【発明の実施の形態】
本発明を実施例に基づいて、以下に説明する。図１は、本発明を実施したゴルフクラブヘッド１を示し、該ゴルフクラブヘッド１は、図２に示すようにヘッド母材１ａの表面に窒化層２と、該窒化層２の表面に物理蒸着法又は化学蒸着法により微小硬度１５００以上の金属化合物からなる硬質皮膜層３を形成した構成を有している。
【００１３】
本実施例では、ヘッド母材１ａをＴｉ合金により形成し、その表面から内部に向かって窒化処理を施すことにより厚みが１００ミクロンの窒化層２が形成してある。
前記窒化層２は、微小硬度が９００〜１２００程度である。
前記窒化層２の表面に形成される硬質皮膜層は、イオンプレーティングにより微小硬度１６００〜２１００で厚みが２０ミクロンのＴｉＮ皮膜層３を形成している。
【００１４】
前記構造のゴルフクラブヘッド１を形成する工程を説明する。まず、窒化処理設備において、窒素原子イオンがヘッド母材であるＴｉ合金の表面から内部に向かって打ち込まれ、打ち込まれた部分ではＴｉ合金を構成しているＴｉ原子をはじめとする各種元素原子と窒素原子とが反応してＴｉＮなどの化合物又は強制固溶体となり、Ｔｉ合金と一体化した窒化層２を形成する。
【００１５】
次に、イオンプレーティング設備において、Ｔｉ原子を蒸発イオン化し、窒素ガスの分圧を上昇させて、窒素原子イオンとＴｉ原子イオンとを反応させながら前記窒化層の表面にＴｉＮ層を被覆してゆく。
この場合、ＴｉＮ層の形成は初期においてはＴｉとＮ原子は反応しながら前記窒化層中に打ち込まれ、打ち込みが終了すると次第に前記窒化層の表面に堆積し、微小硬度１６００〜２１００のＴｉＮ皮膜層が形成されることになる。
従って、イオンプレーティングにおいては、ＴｉＮ皮膜層の形成は塗装やめっきのような表面のみの付着ではなく、母材の一部と一体化して形成された窒化層２から外部のＴｉＮ皮膜層３まで化合物あるいは強制固溶体として連続的に一体化して形成されていることになり、窒化層との強力なる密着力を実現できる。
【００１６】
又、Ｔｉ合金製のヘッド母材１ａの表面硬度は、微小硬度２００〜４００程度であったものを前記窒化層を形成することにより９００〜１２００程度まで上昇させることになり、前記ヘッド母材の打球時の撓みが減少するため、繰り返しの打球によっても硬質皮膜層３自身が容易に剥離することがなくなる。
更に、イオンプレーティングによりヘッド母材の一部と一体化して形成された窒化層と硬質皮膜とが一体化したことにより、硬質皮膜の密着性が向上し、硬質皮膜の持つ反発性能を確保し、摩耗等に対する耐久力を充分に発揮させることができる。
【００１７】
前記窒化層２は、厚みを２００μ以下、好ましくは５０〜１００μ程度に形成することが理想的である。厚さが２００μを越えると、窒化処理時間が必要以上に延長され、操業性も悪く、経済的にも好ましくない。
【００１８】
又、前記ＴｉＮ皮膜層３は、厚みを２μ〜３０μとすることが望ましい。厚みが２μ以下では、前記ＴｉＮ皮膜層３が有する反発性能や耐久性が発揮されない。
又、厚みが３０μ以上では、膜厚が厚くなった分重量が増加するため、重いゴルフクラブヘッドになってしまい、ゴルフクラブに組み立てた際に、総重量の重い、バランスの悪いゴルフクラブになってしまう。
【００１９】
前記硬質皮膜層３を形成する金属化合物としては、ＴｉＮから成るＴｉＮ皮膜層に限定されるものではなく、種々の化合物、例えば、ＴｉＣ、ＴｉＣＮ、ＴｉＢ等のＴｉ化合物、ＴａＮ、ＴａＣ、ＴａＢ等のＴａ化合物、ＣｒＮ、ＣｒＣ、ＣｒＢ等のＣｒ化合物、ＺｒＮ、ＺｒＣ、ＺｒＢ等のＺｒ化合物、ＮｂＮ、ＮｂＣ、ＮｂＢ等のＮｂ化合物、ＨｆＮ、ＨｆＣ、ＨｆＢ等のＨｆ化合物、ＷＮ、ＷＣ、ＷＢ等のＷ化合物、ＳｉＮ、ＳｉＣ等のＳｉ化合物、ＭｏＢ等のＭｏ化合物、ＶＮ、ＶＣ、ＶＢ等のＶ化合物、ＢＮ、ＢＣ、ＭｎＢ、ＣｏＢ等のＢ化合物等を用いることができ、これら化合物のうちの１種類からなる単層又は異なる化合物単層の２層以上からなる多重層から形成することができる。
【００２０】
尚、窒化処理されるヘッド母材１ａを形成する金属材料は、Ｔｉ合金に限定されるものではなく、軟鉄、ステンレス等の鋼類、純Ｔｉ、アルミニウム合金、銅合金、ニッケル合金、タングステン合金、アモルファス合金等、あらゆる金属材料に窒化処理が可能である。
窒化処理可能なヘッド母材の材質及び硬質皮膜層を形成する金属化合物の一例を表１に示す。
【００２１】
【表１】

【００２２】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係るゴルフクラブヘッドは、金属材料よりなるヘッド母材の全体又は一部の上面に、窒化処理により２００μ以下の厚さの窒化層と、該窒化層の上面に物理蒸着法又は化学蒸着法により微小硬度１５００以上の金属化合物からなる硬質皮膜層を形成したことによって、ヘッド母材〜窒化層〜硬質皮膜層の間を一体化させ、更に、前記ヘッド母材と硬質皮膜層間にはメッキ層がないため、ヘッドの重量を増加させることなく前記窒化層の表面に形成される硬質皮膜層の膜厚を厚く形成することができるため、芝や砂との摩耗にも充分耐えることができる厚みであり、前記硬質皮膜層が有する反発性能や耐久性が常に安定して発揮されるので、傷つきや摩耗等に対する耐久性に優れた、飛距離の大きいゴルフクラブヘッドとなる。
【００２３】
更に、前記窒化層は、微小硬度が９００〜１２００であり、ヘッド母材の微小硬度２００〜４００に比べてはるかに高い硬度となり、直接ヘッド母材表面に硬質皮膜層を形成した場合と比較して、打球の繰り返しによる母材の撓みの影響を大幅に緩和することができるので、前記硬質皮膜層の撓みが減少し、前記硬質皮膜層の剥離を防ぐことができる。従って、ボールの衝突時に硬質皮膜層の有する反発性能を確保することができ、かつ、摩耗に対する耐久性も良好で、飛距離の大きいゴルフクラブヘッドを得ることができる。
【００２４】
又、前記硬質皮膜層は、その厚みを２〜３０ミクロンに形成したことによって、芝や砂との摩耗で硬質皮膜層が失われにくくなり、前記硬質皮膜層が有する反発性能や耐久性が常に安定して発揮されるので、傷つきや摩耗に対する耐久性にすぐれた飛距離の大きいゴルフクラブとなる。
【００２５】
そして、前記硬質皮膜層は、微小硬度１５００以上のＴｉＣ、ＴｉＣＮ、ＴｉＢ等のＴｉ化合物、ＴａＮ、ＴａＣ、ＴａＢ等のＴａ化合物、ＣｒＮ、ＣｒＣ、ＣｒＢ等のＣｒ化合物、ＺｒＮ、ＺｒＣ、ＺｒＢ等のＺｒ化合物、ＮｂＮ、ＮｂＣ、ＮｂＢ等のＮｂ化合物、ＨｆＮ、ＨｆＣ、ＨｆＢ等のＨｆ化合物、ＷＮ、ＷＣ、ＷＢ等のＷ化合物、ＳｉＮ、ＳｉＣ等のＳｉ化合物、ＭｏＢ等のＭｏ化合物、ＶＮ、ＶＣ、ＶＢ等のＶ化合物、ＢＮ、ＢＣ、ＭｎＢ、ＣｏＢ等のＢ化合物のうち１種類からなる単層又は異なる化合物単層の２層以上からなる多重層から形成することによって、飛距離の大きい、傷つきや摩耗等に対する耐久性に優れた、多種多様の色相、輝度のゴルフクラブヘッドとなる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明を実施したゴルフクラブヘッドの斜視図である。
【図２】図１のゴルフクラブヘッドの一部を拡大した説明図である。
【符号の説明】
１ゴルフクラブヘッド
１ａヘッド母材
２窒化層
３硬質皮膜層

Claims

金属材料よりなるヘッド母材の全体又は一部の表面に、窒化処理により２００μ以下の厚さの窒化層と、該窒化層の表面に物理蒸着法又は化学蒸着法により微小硬度１５００以上の金属化合物からなる硬質皮膜層を形成したことを特徴とするゴルフクラブヘッド。
前記硬質皮膜層は、２〜３０μの厚さであることを特徴とする請求項１記載のゴルフクラブヘッド。
前記硬質皮膜層は、Ｔｉ化合物、Ｔａ化合物、Ｃｒ化合物、Ｚｒ化合物、Ｎｂ化合物、Ｈｆ化合物、Ｗ化合物、Ｓｉ化合物、Ｍｏ化合物、Ｖ化合物、Ｂ化合物のうちの１種類からなる単層、又は異なる化合物単層の２層以上からなる多重層から形成したことを特徴とする請求項１又は２記載のゴルフクラブヘッド。