JP4007168B2 - エネルギ吸収部材及びその形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エネルギ吸収部材及びその形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のエネルギ吸収部材は、外側円筒体と内側円筒体とを有する2重円筒体からなり、外側円筒体と内側円筒体との間に、多孔質金属からなるエネルギ吸収体が配置され、外側円筒体および内側円筒体とエネルギ吸収体との固定に、接着剤を適用している(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
また、金属ライナーと複合被覆体との固定に、熱硬化型の接着剤を適用しているものもある(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【非特許文献1】
ジェイ.バンハート,エム.エフ.アッシュバイ,エヌ.エー.フレック(J. Banhart, M. F. Ashby, N. A. Fleck),メタルフォームズ アンド ポーラスメタル ストラクチャーズ(Metal Foams and Porous Metal Structures),(ドイツ),エムアイティー フェアラーク(MIT Verlag),1999年,p.313−316
【特許文献1】
特表2000−504810号公報(第4図)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、非特許文献1に記載の方法においては、外側円筒体および内側円筒体とエネルギ吸収体との界面の全面にわたり、接着剤が適用されるため、材料費が増加して、生産コストを上昇させる問題を有している。
【0006】
特許文献2に記載の方法においては、接着剤を硬化するための熱処理工程を追加する必要があり、作業工数および設備費用が増加して、生産コストを上昇させる問題を有している。
【0007】
本発明は、上記従来技術に伴う課題を解決するためになされたものであり、生産コストに優れたエネルギ吸収部材及びその形成方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、
外周に貫通穴が形成された内側中空体と、前記内側中空体が挿入される外側中空体と、前記内側中空体と前記外側中空体との間に配置され、前記内側中空体と前記外側中空体の双方に接する多孔質金属からなるエネルギ吸収体と、前記外側中空体と前記エネルギ吸収体との間に配置される熱硬化型の接着剤とを有する2重中空体を、
縮管することによって、前記外側中空体および前記エネルギ吸収体を変形させ、
前記外側中空体の変形による発熱によって、前記接着剤を硬化させ、前記外側中空体と前記エネルギ吸収体とを固定し、
前記エネルギ吸収体の変形によって、前記エネルギ吸収体を構成する前記多孔質金属を前記貫通穴と嵌合するように突出させ、前記エネルギ吸収体と前記内側中空体とを固定する
ことを特徴とするエネルギ吸収部材の形成方法である。
【0009】
上記目的を達成するための請求項11に記載の発明は、請求項1〜10のいずれか1項に記載のエネルギ吸収部材の形成方法を用いて形成されたことを特徴とするエネルギ吸収部材である。
【0010】
【発明の効果】
上記のように構成した本発明は以下の効果を奏する。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、接着剤は、エネルギ吸収体と内側中空体との固定に適用されないため、材料費を低減することができる。また、接着剤を用いる外側中空体とエネルギ吸収体の固定は、エネルギ吸収体と内側中空体を固定する際に、同時に実行される。つまり、接着剤を硬化するための追加の工程は不要であり、作業工数および設備費用が増加しない。したがって、生産コストに優れたエネルギ吸収部材の形成方法を提供することができる。
【0012】
請求項11に記載の発明によれば、生産コストに優れたエネルギ吸収部材を提供することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の実施の形態に係るエネルギ吸収部材の構成を説明するための分解図である。
【0014】
本発明の実施の形態に係るエネルギ吸収部材は、2重中空体を縮管することによって形成され、例えば、車体の衝撃作用部位に用いられ、衝突時等におけるエネルギを吸収して衝撃力を緩和する。2重中空体は、内側中空体11と、エネルギ吸収体13と、外側中空体14と、接着剤(不図示)とを有する。
【0015】
内側中空体11は、円筒状であり、外周に貫通穴12が形成されている。貫通穴12は、内側中空体11とエネルギ吸収体13とを固定するために使用される。
【0016】
エネルギ吸収体13は、多孔質金属からなる円筒体であり、内側中空体11と外側中空体14との間に配置され、内側中空体11と外側中空体14の双方に接する。多孔質金属は、例えば、発泡アルミニウムであり、エネルギ吸収体13は、発泡アルミニウムを刳り貫くことで形成することができる。
【0017】
エネルギ吸収体13は、外側中空体14と内側中空体11とにより区切られる空間内部の少なくとも一部に設けることも可能である。また、エネルギ吸収体13の材質は、発泡アルミニウムに限定されず、優れたエネルギ吸収性を有するその他の発泡金属を適用することも可能である。
【0018】
外側中空体14は、円筒状であり、内側中空体11が挿入されるエネルギ吸収体13が、内部に配置されて、エネルギ吸収体13と接する。
【0019】
接着剤は、熱硬化型であり、エネルギ吸収体13と外側中空体14とを固定するために使用される。接着剤は、例えば、エネルギ吸収体13の外周面の一部あるいは全面に塗布され、当該エネルギ吸収体13を外側中空体14に挿入することで、エネルギ吸収体13と外側中空体14との間に配置される。接着剤は、エネルギ吸収体13と内側中空体11との固定に適用されないため、材料費が低減され、生産コストは上昇しない。
【0020】
したがって、上記構成を有する2重中空体を縮管する場合、外側中空体14およびエネルギ吸収体13は、変形する。その際に、外側中空体14の変形による発熱によって、接着剤が硬化し、外側中空体14とエネルギ吸収体13とが固定される。また、エネルギ吸収体13の変形によって、エネルギ吸収体13を構成する多孔質金属が、貫通穴12と嵌合するように突出し、エネルギ吸収体13と内側中空体11とが固定される。
【0021】
つまり、接着剤を用いる外側中空体とエネルギ吸収体の固定は、エネルギ吸収体と内側中空体を固定する際に、同時に実行される。したがって、接着剤を硬化するための工程は不要であり、作業工数および設備費用が増加しないため、生産コストは上昇しない。
【0022】
以上のように、本実施の形態においては、生産コストに優れたエネルギ吸収部材及びその形成方法を提供することができる。
【0023】
なお、2重中空体の縮管は、スピニング法を適用することが、生産効率の点で好ましい。特に、2重中空体が円筒状である場合、2重中空体を回転させて、ローラを押し付けて塑性加工する方式が、好ましい。
【0024】
また、接着剤は、本硬化を引き起こす硬化温度と仮硬化(プレゲル化)を引き起こす擬似硬化温度を有する二段階の熱硬化履歴を有することも可能である。この場合、接着剤は、外側中空体の変形による発熱によって、擬似硬化温度に達する。擬似硬化温度は、硬化温度より低いため、外側中空体の変形による発熱は、少量しか必要としない。したがって、2重中空体を縮管するための操作条件の自由度が増す。
【0025】
なお、外側中空体の変形による発熱によって、外側中空体とエネルギ吸収体とは、仮固定される。したがって、接着剤を本硬化させて、外側中空体とエネルギ吸収体とを最終固定するための工程に達するまで、外側中空体とエネルギ吸収体とを所定の位置に安定的に保つことが容易である。
【0026】
二段階の熱硬化履歴を有する接着剤は、優れた擬似硬化性と貯蔵安定性をバランス良く有するエポキシ樹脂系組成物によって構成することが可能である。エポキシ樹脂系組成物は、例えば、エポキシ樹脂100重量部に対して、基本粒径5μ未満の粉末状(メタ)アクリレート重合体Aと、基本粒径5〜100μの粉末状(メタ)アクリレート重合体Bとを、A/B=1/9〜9/1の重量比率範囲内で混合したものを、10〜100重量部添加することによって調製することができる。なお、(メタ)アクリレート重合体Bの基本粒径は、20〜50μであることがさらに好ましい。
【0027】
また、二段階の熱硬化履歴を有する接着剤の擬似硬化温度は、接着剤に使用されるエポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤の組合せにより適当に設定できる。例えば、アミン系硬化剤を用いる場合、擬似硬化温度が60℃以上、かつ硬化温度が150℃以上である接着剤を得ることができる。
【0028】
一方、車体の製造工程には、電着塗料等の塗料を車体に被覆して形成される塗膜を焼き付ける工程を含んでいる。したがって、エネルギ吸収部材を、車体の衝撃作用部位に用い、かつ、例えば、電着塗料を焼き付けするため温度と、接着剤の硬化温度とを同一とする場合、電着塗料を焼き付けするための工程において、接着剤を本硬化させて、外側中空体とエネルギ吸収体とを最終固定することができる。したがって、接着剤を本硬化するための工程を追加する必要はない。
【0029】
図2は、本発明の実施の形態に係るエネルギ吸収部材の形成方法を説明するための斜視図である。
【0030】
なお、2重中空体10の縮管は、ローラ30,31を押し付けて塑性加工するスピニング法が適用される。スピニング法に適用されるローラ数は、3個であるが、図の簡略化のために1個を省略して示している。ローラ30,31の送り速度は、1mm/sである。なお、縮管量が過大であると、2重中空体10に割れが生じるため、必要に応じ、縮管を複数回に分けて、目標の寸法を達成することが好ましく、本実施例においては、加工繰り返しは、3パスである。
【0031】
2重中空体10の内側中空体は、引張強度が490MPa、板厚が1.0mm、直径が40mm、全長が500mmである円筒状鋼管からなる。内側中空体の外側に配置されるエネルギ吸収体は、発泡アルミニウムからなる円筒体であり、内側中空体の外周寸法と略同一となる寸法を有しかつ中心軸が略一致している。なお、内側中空体の貫通穴は、30mmの直径を有し、発泡アルミニウムの平均セルサイズの6倍である。
【0032】
エネルギ吸収体の外側に配置される外側中空体14は、引張強度が490MPa、板厚が1.6mm、直径が80mm、全長が500mmである円筒状鋼管からなる。外側中空体とエネルギ吸収体との間に配置される接着剤は、擬似硬化温度が60℃以上、かつ硬化温度が150℃以上である二段階の熱硬化履歴を有する。
【0033】
まず、2重中空体10の表面を構成する外側中空体14の外周に、機械油を潤滑材として塗布して、回転治具20,21の間に、2重中空体10をセットした。次に、2重中空体10を回転させて、ローラ30,31を押し付けながら矢印方行に移動させて塑性加工させることによって、2重中空体10を縮管した。
【0034】
この縮管の際、外側中空体14およびエネルギ吸収体が変形した。そして、外側中空体14の変形による発熱によって、外側中空体14の温度は、接着剤の擬似硬化温度を越える70℃に達し、接着剤を仮硬化させ、外側中空体14とエネルギ吸収体とを仮固定した。
【0035】
一方、エネルギ吸収体の変形によって、エネルギ吸収体を構成する発泡アルミニウムは、内側中空体の貫通穴を経由して内側中空体の内部に突出し、発泡アルミニウムは、貫通穴と嵌合した。その結果、エネルギ吸収体と内側中空体とが固定された。
【0036】
次に、2重中空体10に対して、電着塗装により被覆された塗膜の焼き付け条件に対応する硬化条件(170℃で20分間)で、熱処理を施した。その結果、外側中空体14とエネルギ吸収体との間に配置されている接着剤は、本硬化し、外側中空体14とエネルギ吸収体とを最終固定した。
【0037】
得られたエネルギ吸収部材においては、接着剤によって外側中空体14とエネルギ吸収体とが良好に固定され、かつ、内側中空体の貫通穴から突出した多孔質金属と貫通穴とが確実に嵌合することによって、エネルギ吸収体と内側中空体とが、強固に固定されていた。
【0038】
図3は、内側中空体の貫通穴のサイズSを変更した場合における、外側中空体の縮管量とエネルギ吸収体を構成する多孔質金属の突出長さとの関係を示しているグラフである。
【0039】
貫通穴のサイズSは、エネルギ吸収体を構成する多孔質金属の平均セルサイズによって規格化している。外側中空体の縮管量は、縮管の前後における、外側中空体の外周と内側中空体の外周との間の距離の減少率である。多孔質金属の突出長さは、内側中空体の貫通穴を経由して、内側中空体の内部に突出している部位の長さである。なお、エネルギ吸収体として、平均セルサイズが5mmかつ密度が0.24g/cm3である発泡アルミニウムを使用した。
【0040】
図に示されるように、貫通穴のサイズSが、多孔質金属の平均セルサイズの2倍である場合、多孔質金属の突出長さは小さく、また、外側中空体の縮管量を大きくしても、多孔質金属の突出長さは顕著に増加しない。そのため、エネルギ吸収体と内側中空体とを確実に固定することが困難である。
【0041】
一方、貫通穴のサイズSを大きくするに従い、多孔質金属の突出長さは増加し、また、外側中空体の縮管量が大きくなるに伴なって、多孔質金属の突出長さは顕著に増加する。
【0042】
特に、貫通穴のサイズSが、多孔質金属の平均セルサイズの4倍である場合、エネルギ吸収体と内側中空体とを安定して確実に固定することできた。なお、貫通穴のサイズSが、多孔質金属の平均セルサイズの10倍を越える場合、外側中空体の縮管の際の圧下量と、発多孔質金属の突出長さとは、略一致した。
【0043】
したがって、貫通穴は、多孔質金属の平均セルサイズの4倍以上である等価半径を有することが好ましい。この場合、多孔質金属が貫通穴と確実に嵌合するように突出するため、エネルギ吸収体と内側中空体との固定品質が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態に係るエネルギ吸収部材の構成を説明するための分解図である。
【図2】 本発明の実施の形態に係るエネルギ吸収部材の形成方法を説明するための斜視図である。
【図3】 内側中空体の貫通穴のサイズを変更した場合における、外側中空体の縮管量とエネルギ吸収体を構成する多孔質金属の突出長さとの関係を示しているグラフである。
【符号の説明】
10…2重中空体、
11…内側中空体、
12…貫通孔、
13…エネルギ吸収体、
14…外側中空体、
20,21…回転治具、
30,31…ローラ。
Claims (11)
- 外周に貫通穴が形成された内側中空体と、前記内側中空体が挿入される外側中空体と、前記内側中空体と前記外側中空体との間に配置され、前記内側中空体と前記外側中空体の双方に接する多孔質金属からなるエネルギ吸収体と、前記外側中空体と前記エネルギ吸収体との間に配置される熱硬化型の接着剤とを有する2重中空体を、
縮管することによって、前記外側中空体および前記エネルギ吸収体を変形させ、
前記外側中空体の変形による発熱によって、前記接着剤を硬化させ、前記外側中空体と前記エネルギ吸収体とを固定し、
前記エネルギ吸収体の変形によって、前記エネルギ吸収体を構成する前記多孔質金属を前記貫通穴と嵌合するように突出させ、前記エネルギ吸収体と前記内側中空体とを固定する
ことを特徴とするエネルギ吸収部材の形成方法。 - 前記2重中空体は、スピニング法によって縮管されることを特徴とする請求項1に記載のエネルギ吸収部材の形成方法。
- 前記2重中空体は、円筒状であり、
前記スピニング法は、回転している前記2重中空体に押し付けて、前記2重中空体を塑性加工するためのローラを用いることを特徴とする請求項2に記載のエネルギ吸収部材の形成方法。 - 前記貫通穴は、前記多孔質金属の平均セルサイズの4倍以上である等価半径を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のエネルギ吸収部材の形成方法。
- 前記接着剤は、仮硬化を引き起こす擬似硬化温度を有し、前記外側中空体の変形による発熱によって、前記擬似硬化温度に達することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のエネルギ吸収部材の形成方法。
- 前記接着剤は、液状エポキシ樹脂および加熱活性型硬化剤を含んでおり、擬似硬化温度が60℃以上、かつ硬化温度が150℃以上であることを特徴とする請求項5に記載のエネルギ吸収部材の形成方法。
- 前記2重中空体は、円筒状であり、前記2重中空体を回転させて、ローラを押し付けて塑性加工するスピニング法によって縮管され、
前記接着剤は、液状エポキシ樹脂および加熱活性型硬化剤を含んでおり、擬似硬化温度が60℃以上、かつ硬化温度が150℃以上であり、
前記ローラの送り速度は、1mm/s以上であることを特徴とする請求項1に記載のエネルギ吸収部材の形成方法。 - 前記エネルギ吸収部材は、車体の衝撃作用部位に用いられることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のエネルギ吸収部材の形成方法。
- 前記エネルギ吸収部材は、車体の衝撃作用部位に用いられ、
前記車体に被覆された塗膜を焼き付けする際に、前記接着剤を本硬化させて、外側中空体とエネルギ吸収体とを最終固定することを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載のエネルギ吸収部材の形成方法。 - 前記多孔質金属は、発泡金属からなることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のエネルギ吸収部材の形成方法。
- 請求項1〜10のいずれか1項に記載のエネルギ吸収部材の形成方法を用いて形成されたことを特徴とするエネルギ吸収部材。
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