JP4005791B2 - 掘削用ノズル装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ウォータージェットにより岩盤(土砂、礫、玉石など)を破砕する掘削機の一部であって、ウォータージェットを噴射するノズル部から成る掘削用ノズル装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、トンネル掘削やボーリング工事等で土砂、礫、玉石などの岩盤を破砕する際にカッタービットなどの刃物部を回転させると共に高圧のウォータージェットを噴射させて破砕効率を向上させた掘削機が広く利用されている。
【0003】
このような掘削機のウォータージェットを噴射するノズル部から成る掘削用ノズル装置は、通常ウォータージェットを噴射するための小径のノズル孔を有するノズルチップと、ウォータージェットを通過させるための小径の貫通穴を有したノズルチップを保護するためのノズルキャップとで構成されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
土中で高圧のウォータージェットを掘削機のノズル部から高速噴射させると、ノズル部出口周辺は破砕された土砂、礫、玉石等の成分を含んだ泥水で満たされる。このとき、ノズル部を構成するノズルキャップの出口付近は、ウォータージェットが高速噴射されるために負圧の空間が形成される。土中は一定の圧力下にあるので、この負圧の空間に泥水中の土砂、礫、玉石等の成分が引き込まれてしまう現象が起こる。
【0005】
その結果、ノズルキャップの出口表面に対して激しく土砂成分等が衝突し、しかも、土砂成分等が貫通穴へ逆流してしまうため、極めて短時間にノズルキャップの出口表面及び貫通穴が摩耗(壊食)し、頻繁にノズルキャップを交換しなければならないという問題が生じていた。
【0006】
さらに、ノズルキャップの摩耗の進行が激しいときには、ノズルチップまでもが土砂成分等の衝突の影響を受けて早期に摩耗してしまうこともあり、問題が深刻になる場合もあった。
【0007】
本発明は、斯かる実情に鑑み、ウォータージェットが高速噴射されてもノズル部の出口付近が負圧になり難く、ウォータージェットが通過するノズル部の穴の内部に土砂成分等が逆流するのを防止できる掘削用ノズル装置を提供することを目的とする。さらに、このノズル部が長寿命となる掘削用ノズル装置を提供することも本発明の別の目的である。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、ウォータージェットにより土砂、礫、玉石などを破砕する掘削機の一部であって、ウォータージェットを噴射するノズル部から成る掘削用ノズル装置において、前記ノズル部が、ウォータージェットを噴射するためのノズル孔を有するノズルチップと、該ノズルチップの少なくとも先端部を覆うと共に、ウォータージェットを通過させるための貫通穴を有するノズルキャップと、該ノズルキャップの先端部に予め定められた軸方向長さで延在し、ウォータージェットを通過させるための軸方向通路を有する筒状チップと、で同軸上に構成されており、前記ノズル孔の直径より前記軸方向通路の直径及び前記貫通穴の直径が共に大であり、かつ、該軸方向通路の直径より前記貫通孔の直径が大であり、 前記軸方向通路の直径が前記ノズル孔の直径の1.5〜3倍であり、前記筒状チップの軸方向長さが前記ノズル孔の直径の20〜30倍であることを特徴とするものである。
【0009】
本発明におけるノズルチップとは、高圧水が供給される配管等に接続してノズル孔からウォータージェットを噴射できる構造のもの全てを意味しており、ウォータージェットの圧力に耐え得る強度を有し、かつ土中環境下で使用可能なものであれば何れのものでも良い。
【0010】
また、本発明におけるノズルキャップとは、ノズルチップの少なくとも先端を覆うことが可能な構造であり、ウォータージェットが通過できる貫通孔を有しているもの全てを意味しており、ウォータージェットの圧力に耐え得る強度を有し、かつ土中環境下で使用可能なものであれば何れのものでも良い。
【0011】
一方、本発明における筒状チップとは、ノズルキャップの先端部に取り付けることができる構造であり、軸方向長さを有し、ウォータージェットが通過できる軸方向通路を有したもの全てを意味しており、ウォータージェットの圧力に耐え得る強度を有し、かつ土中環境下で使用可能なものであれば何れのものでも良い。
【0012】
さて、高圧水を高速(音速)で円筒状の部材(例えば配管など)の内部に一方から噴流させると、この噴流が真空を発生させて高圧水を巻き込み、円筒状部材の内部を通過する高圧水が噴流方向に常に引っ張られるような流れ(いわゆるエジェクタ作用)を生じることが知られている。
【0013】
このエジェクタ作用を得ることができるか否かは、一般に、円筒状部材の軸方向長さ、内径等によって決まる。特に、軸方向長さは掘削機用ノズル装置においてエジェクタ作用を得るためには非常に重要であり、従来用いられているような掘削機用ノズル装置では軸方向長さが短いので、このエジェクタ作用を得ることは期待できない。
【0014】
つまり、従来のノズル装置では、高圧水がノズルチップに供給されると、ノズルチップのノズル孔とノズルキャップの貫通穴を通って岩盤(土砂、礫、玉石等)へ向かってウォータージェットが噴射されるが、ノズルチップとノズルキャップの軸方向長さが十分でないため、エジェクタ作用を得ることができない。よって、ウォータージェットの噴射によりノズルキャップ出口付近が負圧になると破砕された土砂成分等がノズルキャップの貫通穴へ逆流して、ノズルキャップ出口表面や貫通穴内面が土砂成分等の激しい衝突により早期摩耗を生じてしまう。
【0015】
本発明は、このエジェクタ作用をウォータージェットを用いた掘削機の掘削用ノズル装置へ応用したものであり、具体的には、ノズル孔を有するノズルチップと、貫通穴を有するノズルキャップと、予め定められた軸方向長さで軸方向通路を有する筒状チップの三つの部分で構成されている。
【0016】
本発明では、従来のノズル装置に比べて、新たに筒状チップを備え、該筒状チップが予め定められた軸方向長さの軸方向通路を有しているため、エジェクタ作用を得ることができる。つまり、高圧水がノズルチップに供給されると、ノズル孔からノズルキャップの貫通穴及び筒状チップの軸方向通路を順に通って岩盤に向かってウォータージェットが噴射されるが、このとき筒状チップが予め定められた軸方向長さを有しているのでエジェクタ作用が働き、ウォータージェットは常に噴射方向に引っ張られるような流れが発生するのである。
【0017】
このようにエジェクタ作用により強制的な噴射方向への流れが発生するため、ウォータージェットの噴射により筒状チップ出口付近が負圧に成り難い。たとえ負圧の空間が形成されたとしても、エジェクタ作用により土砂成分等が軸方向通路内に逆流するのを防ぐことができる。言い換えると、エジェクタ作用によって生じたウォータージェットの流れが土砂成分等の逆流を阻止するのである。よって、土砂成分等の逆流による摩耗(壊食)を極力抑えることができ、ノズル部(筒状チップ、ノズルキャップ、ノズルチップ)の長寿命化が達成できる。
【0018】
また、ノズル部が3つの部材で構成されているから、各部材、即ちノズルチップ、ノズルキャップ、及び、筒状チップを複数用意しておけば、あらゆる掘削条件にも適宜組み合わせて対応できるため、掘削機の効率向上にも効果がある。
【0019】
尚、本発明において、前記3つの部材、即ちノズルチップ、ノズルキャップ及び筒状キャップは、それぞれが一体型で構成されていても、分割型であっても良く、ノズル部を組み立てる際の都合によって適宜変更可能である。
【0020】
本発明は、前記ノズル孔の直径より前記軸方向通路の直径及び前記貫通穴の直径が共に大であることを特徴とするものである。
【0021】
掘削機を用いて土砂等の岩盤を掘削する際に、岩盤強度等の条件によってウォータージェットのノズルの穴を変更する場合がある。この場合、通常ノズルチップを交換して穴の大きさを変更するが、ノズルキャップの貫通穴の直径及び筒状チップの軸方向通路がノズルチップのノズル孔の直径より小さいと、組立誤差によって貫通穴とノズル孔とが一致しない状態で組み立てられる可能性がある。つまり、穴がふさがれた状態でノズル部が組み立てられる可能性があり、この状態で使用すると非常に危険である。
【0022】
しかしながら、本発明の構成であれば、ノズル孔の直径より前記軸方向通路の直径及び前記貫通穴の直径が共に大であるから、組立誤差があっても穴がふさがれることがないので、安全に掘削作業を進めることができる。
【0023】
より好ましくは、ノズル孔の直径より軸方向通路の直径が大であり、かつ、軸方向通路の直径より貫通穴の直径が大であるのが良い。ノズル孔と貫通穴の組立ミスを防止できることに加えて、筒状チップの軸方向通路内におけるエジェクタ作用の効果が高いからである。
【0024】
また、本発明によれば、掘削条件に合わせてノズル孔の直径を大きくしたい場合でも、ノズル孔の直径が貫通穴の直径と同一程度迄であればノズルチップのみを交換するだけで良いのでコストも低く抑えられる。もちろん、筒状チップが予め定められた軸方向長さを有しているため、エジェクタ作用は維持できる。
【0025】
さらに、本発明におけるノズル装置では、筒状チップの軸方向通路の直径がノズル孔の直径の1.5〜10倍であり、かつ、筒状チップの軸方向長さが、前記ノズル孔の直径の10〜100倍となる構成にするのが良い。効果的にエジェクタ作用を得ることができることに加えて、このエジェクタ作用によりウォータージェットが噴射方向に強制的に流れてウォータージェットの噴射直進性が増し、土砂等の掘削性能が向上するからである。
【0026】
より望ましくは、筒状チップの軸方向通路の直径が、ノズル孔の直径の1.5〜3倍であり、かつ、筒状チップの軸方向長さが、ノズル孔の直径の20〜30倍となるようにするのが良い。最も効果的にエジェクタ作用を得ることができるばかりでなく、このエジェクタ作用によりウォータージェットが噴射方向に強制的に流れてウォータージェットの噴射直進性がさらに増し、土砂等の掘削性能がより向上するからである。
【0027】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の掘削用ノズル装置において、前記筒状チップが耐摩耗性材料から成ることを特徴としている。
【0028】
ウォータージェットを噴射しながら掘削を行っている間、エジェクタ作用により土砂等のノズル内への逆流は防止できるが、筒状チップ出口表面は実際少なからず土砂等の衝突を受けている。そのため、本発明のように、例えばタングステンカーバイドやセラミック等の耐摩耗性材料で筒状チップを製作すると、エジェクタ作用と相乗効果により筒状チップの寿命を格段に延ばすことができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図示例と共に説明する。図1は、本発明の第一実施形態の縦断面図を示している。本実施形態における掘削用ノズル装置のノズル部は、ノズル孔2を有するノズルチップ1と、貫通穴4を有するノズルキャップ3と、軸方向通路6を有する超硬合金製の筒状チップ5とで構成されている。詳細に説明すると、円筒状のノズルチップ1の先端部には、その先端部全体を覆うように筒状のノズルキャップ3が同軸上に挿入されており、ノズルキャップ3の先端部には予め定められた軸方向長さの円筒状の筒状チップ5が同軸上に内挿されてノズル部を構成している。また、ノズルキャップ3と筒状チップ5の挿入部には固定の目的で、ロウ付がされている。
【0030】
このように構成されたノズル部を高圧水供給配管であるノズルアダプタ8に取り付けて、通路9から高圧水を供給すれば、高圧水はノズル孔2、貫通穴4、軸方向通路6の順で通過し、ハウジング7の噴射孔11から図中の矢印の向きにウォータージェットを噴射して土中の土砂、礫、玉石などを破砕するのである。
【0031】
また、このノズル部はノズルキャップ3の外周面にあるネジ部によってノズルアダプタ8と螺合されており、O−リング10がノズルチップ1とノズルアダプタ8との軸方向空間に嵌め込まれて高圧水の漏れをシールしている。
【0032】
本実施形態において、ノズル孔2、貫通穴4、及び、軸方向通路6の直径寸法の関係は、ノズル孔2<軸方向通路6<貫通穴4となっている。さらに、軸方向通路6の直径寸法は、ノズル孔2の直径の1.5〜3倍であり、筒状チップ5の軸方向長さはノズル孔2の直径の20〜30倍である。
【0033】
この寸法関係を有しているため、高圧水が通路9から供給されると、エジェクタ作用により、噴射されるウォータージェットは常に図中の矢印の向きに流れが維持されるのである。従って、噴射孔11周辺にある破砕された土砂成分等が筒状チップ5の軸方向通路6内に逆流することがなく、筒状チップ5の摩耗を大幅に低減でき、長寿命化が達成できる。
【0034】
また、本実施形態のように、筒状チップ5を耐摩耗性が高い超硬合金で製作することにより、エジェクタ効果との相乗効果によって格段に寿命を延ばすことができる。
【0035】
図2は本発明における第二実施形態を示す縦断面図である。本実施形態における特徴は、第一実施形態でノズル部を構成する3つの部材(ノズルチップ、ノズルキャップ、筒状チップ)を一体型にした点にある。即ち、ノズル部が、ノズル孔202と軸方向通路206とを有する円筒状のノズルチップ201のみで構成されているということである。このノズルチップ201はエジェクタ作用を得るために、軸方向通路206の直径寸法はノズル孔202の直径の1.5〜3倍であり、軸方向長さはノズル孔202の直径の20〜30倍となっていて、しかも、耐摩耗性の高い超硬合金で製作されている。
【0036】
また、ノズルチップ201は外周面のネジ部でノズルアダプタ208と螺合されており、O−リング210がノズルチップとノズルアダプタ8との軸方向空間に嵌め込まれて高圧水の漏れをシールしている。
【0037】
このノズルチップ201を高圧水供給配管であるノズルアダプタ208に取り付けて、通路209から高圧水を供給すれば、高圧水はノズル孔202、軸方向通路206の順に通過し、ハウジング207の噴射孔211から図中の矢印の向きにウォータージェットを噴射して土中の土砂、礫、玉石などが破砕される。
【0038】
このとき、エジェクタ作用により噴射されるウォータージェットは常に図中の矢印の向きに流れが維持される。従って、噴射孔211周辺にある破砕された土砂成分等がノズルチップ201の軸方向通路206及びノズル孔202内に逆流することがなく、ノズルチップ201の摩耗を大幅に低減でき、長寿命化が達成できる。
【0039】
また、本実施形態のように、ノズルチップ201は耐摩耗性の高い超硬合金で製作されているので、エジェクタ効果との相乗効果により、格段に寿命を延ばすことができる。
【0040】
さらに、本実施形態のようにノズルチップ201を一体型とすることにより、掘削条件に合わせてノズル部を交換するときには、いたって簡単に交換作業が行える利点がある。
【0041】
本発明の掘削用ノズル装置は、ウォータージェットを用いて掘削を行うあらゆる掘削機に使用可能である。つまり、ウォータージェットのみで掘削する場合に限らず、カッタービットとウォータージェットを併用して掘削する掘削機等にも使用することができる。また、本発明の掘削用ノズル装置を、スイベルジョイントと組み合わせて回転させながら使用しても良い。
【0042】
尚、本発明の掘削用ノズル装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0043】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明に係る掘削用ノズル装置によれば、エジェクタ作用を得ることにより、ウォータージェットが高速噴射されてもノズル部の出口付近が負圧になり難い。特に、エジェクタ作用により、ウォータージェットが通過するノズル部の穴の内部に土砂成分等が逆流するのを防止できる。そのため、ノズル部の長寿命化が図れ、ノズル部の交換頻度を大幅に低減できるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一実施形態を示す縦断面図である。
【図2】本発明の第二実施形態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1,201:ノズルチップ
2,202:ノズル孔
3:ノズルキャップ
4:貫通穴
5:筒状チップ
6,206:軸方向通路
Claims (2)
- ウォータージェットにより土砂、礫、玉石などを破砕する掘削機の一部であって、ウォータージェットを噴射するノズル部から成る掘削用ノズル装置において、
前記ノズル部が、
ウォータージェットを噴射するためのノズル孔を有するノズルチップと、
該ノズルチップの少なくとも先端部を覆うと共に、ウォータージェットを通過させるための貫通穴を有するノズルキャップと、
該ノズルキャップの先端部に予め定められた軸方向長さで延在し、ウォータージェットを通過させるための軸方向通路を有する筒状チップと、
で同軸上に構成されており、
前記ノズル孔の直径より前記軸方向通路の直径及び前記貫通穴の直径が共に大であり、かつ、該軸方向通路の直径より前記貫通孔の直径が大であり、
前記軸方向通路の直径が前記ノズル孔の直径の1.5〜3倍であり、前記筒状チップの軸方向長さが前記ノズル孔の直径の20〜30倍であることを特徴とする掘削用ノズル装置。 - 前記筒状チップが耐摩耗性材料から成ることを特徴とする請求項1に記載の掘削用ノズル装置。
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