JP4005727B2 - 電動機の制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電動機及びその制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、多分野にわたって使用されている同期電動機は、固定子のスロット内に巻かれた巻線に流れる電流によって形成される磁界と回転子の回転が、同期して回転するように制御されることを特徴としている。
【0003】
従来の同期電動機のうち、回転子が永久磁石ではなく高透磁率材料で形成されており、隣接する磁極間にほぼ絶縁された複数の磁路を有する例えば図13に示されるような回転子の断面構造をもつ同期電動機を同期電動機1と呼ぶことにする。
【0004】
図13に示されるように同期電動機1の回転子2にはモータ軸4の他に複数のスリット3が設けられており、このスリット3が磁路形成のもととなっている。なお、図中回転子の周りに存在する8つの円は固定子巻線に通電する電流を模式的に示したものである。このうち、円内に×印がある巻線は紙面に対して手前から向こう側に電流を通電することを示し、円内に黒丸印がある巻線は紙面に対して向こう側から手前に電流を通電することを示している。図中dと書かれた破線の方向をd軸と呼び、qと書かれた破線の方向をq軸と呼ぶ。同期電動機1を回転させる原理については公知であるのでここでは簡単な説明のみを行う。同期電動機1を回転させるためには、d軸方向に通電して右ネジの法則によって回転子2を磁化させるためのd軸電流Idと、q軸方向にフレミング左手の法則により回転方向に回転力を発生させるq軸電流Iqとをベクトル合成された合成電流Ioとして通電する。したがって、合成電流Ioは実際にはq軸方向からd軸方向に、ベクトル合成の際にq軸電流Iqと合成電流Ioとの間の角度だけずれた位置の巻線に通電されて力を発生していることになる。以上が、同期電動機1を回転させる原理についての簡単な説明である。
【0005】
同期電動機1を回転させる際に通電している電流は合成電流Ioのみであることは前述したが、同期電動機1の回転を制御するためには、ベクトル合成される前のd軸電流Idとq軸電流Iqをそれぞれ制御しなければならない。その方法について図14を用いて以下に述べる。図14は同期電動機1の主に電流制御に関する部分の説明を行うためのブロック図である。なお、図14は主に電流制御に関する部分のみを示したものであり、実際の同期電動機1の制御においては速度制御、位置制御といった部分のブロック図も存在する。まず、d軸電流指令値Idcomはトルク指令値に関わらず、一定値であると仮定する。すなわち、図15に示されるように横軸に示されるトルク指令値Tcomに対して縦軸に示されるd軸電流指令値Idcomは一定の値をとっている。位置検出器等から位置データXmesを受け取ると、まず微分手段13では位置データを時間微分し速度データVmesに変換する。比較器6では速度データVmesと速度指令値Vcomの差をとり、トルク指令値Tcomを生成する。トルク指令値Tcomには速度ゲイン7が乗じられてq軸電流指令値Iqcomが生成される。したがってq軸電流指令値Iqcomはトルク指令値に正比例している。すなわち、図16に示されるように横軸に示されるトルク指令値Tcomに対して、縦軸に示されるq軸電流指令値Iqcomは定数を乗ずるだけのため正比例の関係になっている。
【0006】
以上のようにしてそれぞれd軸電流指令値Idcomとq軸電流指令値Iqcomが生成されたわけであるが、これらはこの後位置データXmesをもとにしてsin分配手段10においてsin分配される。すなわち、位置データによってわかる現在の電気角のsinをとり、その値をd軸電流指令値Idcom又はq軸電流指令値Iqcomに乗じ、それによって各電流値のsin成分を求めるということが行われるのである。ただし、この際、一般的にd軸電流はq軸電流に対して電気角で90度ずれているのでd軸電流指令値Idcomのsin分配の際には電気角を90度減じた値で計算する必要がある。このようにしてそれぞれsin分配された値は加算器11で加えられ電流指令値Icomを生成する。
【0007】
さらに、三相分配手段12において、求められた電流指令値Icomと位置データをもとにU、V、W各相の電流指令値Iucom、Ivcom、Iwcomを求める。以上のように、同期電動機1ではトルク指令値Tcomをもとに生成されるq軸電流指令値Iqcomと通常一定値をとるd軸電流指令値Idcomとがそれぞれ独立して制御されており、最終的にそれらが加えられるという形が取られている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
同期電動機1の制御を行う際にd軸電流Idとq軸電流Iqをそれぞれ制御していることは前項で述べたが、その際には図17に示すような関係になることが理想的である。図17は各電流及び電圧をベクトル表示した場合の位相及び振幅の関係を示す模式図である。図17中でIdはd軸電流のベクトル表示、Iqはq軸電流のベクトル表示、Ioは合成電流のベクトル表示である。前述の通り、d軸電流Idとq軸電流Iqは90度の位相差を持っており、それらのベクトル和が合成電流Ioとなっている。
【0009】
ところで、前述した各電流が電動機の例えばU相といったある一相における関係を示しているとすれば、その相における電圧をVoとした場合、Voはベクトル表示した場合に図17のようにIqと同位相であることが理想的である。このような場合には電圧Voに対して回転力を発生するq軸電流Iqを通電したい位相にそのまま通電することができる。したがって、この場合の力率はcos(θ1)となる。しかし、これはあくまで理想的な場合であって、実際の場合は図18に示されるような形になる。
【0010】
図18は図17の場合と同様に電流及び電圧をベクトル表示した場合の位相及び振幅の関係を示す模式図である。一般に巻線に電流を通電すると右ネジの法則に従った方向に磁束が発生し、その磁束が回転して巻線を貫く磁束が変化すると巻線の端子間に誘起電圧が発生することは知られており、その誘起電圧は
V=n×(dφ/dt)
という式にしたがって発生する。ただし、ここでVは誘起電圧、nは巻線の巻数、φは磁束、したがってdφ/dtは磁束の時間微分すなわち磁束の変化量である。
【0011】
同期電動機1の場合もそのことは同様であり、d軸電流Id及びq軸電流Iqの両者についてそれぞれ誘起電圧Vd及びVqが発生する。ただし、同期電動機1ではスリットを設けて磁路を確保することによってφd方向に比べてφq方向の磁気抵抗が大きくなっているので、q軸電流Iqによってφq方向に発生しようとする磁束は、φd方向に比べると小さい。
【0012】
ここで、前述のようにq軸電流Iqによる誘起電圧が0であって、図17のようになることが理想であるが、実際にはわずかにφq方向にも磁束は発生し、誘起電圧は電流に対して90度の位相で発生するので、Vd及びVqは図18に示すようなベクトルになる。なお、このように磁気抵抗を大きくして磁束がφq方向に発生しないようにしているにもかかわらず、いくらかは磁束が発生してしまうことを磁束の漏れと呼ぶ。
【0013】
以上のように図18に示す通り磁束の漏れによってVqが発生するため、合成電圧VoはVdとVqのベクトル和より図18に示すようなベクトルになってしまう。この時、IqとVo間の角度をθ2とすると、この場合の力率はcos(θ1+θ2)になってしまい、力率が低下することになる。さらに、図17の場合に比べるとVqによって合成した誘起電圧Voが大きくなっているために、それだけ回転数が上昇していった場合の電圧飽和が起こりやすくなってしまい、高速域での特性が悪化してしまう。ここで、電圧飽和とは誘起電圧の発生によって同期電動機の端子間電圧が上昇して電源電圧とほぼ等しくなり、電流を注入できなくなってしまうことを言う。
【0014】
以上のことより、本発明が解決しようとする課題は、磁束の漏れによって力率が低下し、更に高回転域での特性が悪化するという問題に対して、どのような手段を講じれば良いかという点にある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
前述の課題を解決するために本発明にかかる電動機の制御装置は、三相交流巻線を備える固定子と、隣接する各磁極間に磁気的に絶縁された複数の磁路を有する回転子と、前記回転子内に配置され前記複数の磁路によって形成される磁路の方向に対して垂直な方向に磁束の方向が向くように配置された永久磁石と、を有し固定子側から見た回転子の磁気抵抗が回転子の回転位置により異なる構造の電動機を制御する電動機の制御装置であって、通電する電流を回転子の磁極方向に磁束を発生させるd軸電流成分と、回転子の磁極と垂直方向に磁束を発生させるq軸電流成分と、に分割した場合に、前記電動機の回転方向に関わらず、前記q軸電流成分の正負は変化せずに、前記d軸電流成分の正負を変化させることによって前記電動機の回転方向を決定し、前記電動機の挙動を制御することを特徴とする。
【0016】
【実施の形態】
以下、本発明にかかる好適な実施形態を図面にしたがって説明する。図1、図2、図3、図4、図5、図6、図7、図8、図9、図10、図11及び図12は本発明における各実施形態である。なお、従来技術を示す図13、図14、図15、図16、図17、図18及び図19と同一番号にて示されている構成要素についての機能、作用は同一であるので説明を省略する。
【0017】
図1は図13と同様に同期電動機1の構造を示す図である。図1において従来技術を示す図13と異なる部分は、回転子2内に永久磁石5が配置されていることである。永久磁石5は図1に示すように磁極の方向がスリットによって形成される磁路と垂直になっている。これは、φq方向に磁束を発生させるためである。
【0018】
前述の通り、磁束の漏れというものは現実に存在し、q軸電流Iqが図1の向きに通電された場合、それは、図1においてq軸に対して垂直方向であり、方向は右ねじの法則に従っている。したがって、永久磁石5を図1のようにN極及びS極が来るように配置すれば永久磁石5による磁束は、磁束の漏れであるq軸電流Iqによって発生する磁束と全く逆の方向になり、低減または相殺することが可能になる。その詳細について、図4及び図5を用いて説明する。図4及び図5は従来技術を示す図17及び図18と同様に各電流及び電圧をベクトル表示した場合の位相及び振幅の関係を示す模式図である。d軸電流Id、q軸電流Iq、合成電流Io、そしてVd及びVqが図18の場合と同様であったとして、そこに、q軸電流Iqによって発生する磁束と反対方向である永久磁石5による磁束が回転することによって発生する誘起電圧Vmagが加わると、
|Vmag|<|Vq|
の場合は図4のようなベクトルの関係になる。
【0019】
図4からもわかるようにVqを低減する方向にVmagが発生するため、Vq方向の誘起電圧は低減し、前述した磁束の漏れも低減したことになる。図4においては、合成電圧Voは図のようなベクトルになるため、力率はcos(θ1+θ3)になり、θ2>θ3であるから、図18の場合と比べてかなり力率が改善されたことになる。さらに、VmagとVqの関係次第では、図5のように
|Vmag|=|Vq|
となると、磁束の漏れが完全に相殺されてθ3=0となるため、Vd=Voとなって力率がcos(θ1)と理想的な図17の場合と同等にすることもできる。
【0020】
また、場合によっては図6のように、
|Vmag|>|Vq|
である場合も考えられる。この場合は、力率がcos(θ4)となって、θ1>θ4であるので力率は向上するが、Vdとq軸電流Iqが同位相でないため発生トルクが低下してしまう。したがって、誘起電圧Vmagができるだけ図5の場合に近づくように永久磁石5を選定する必要がある。
【0021】
永久磁石5の選定の一環として回転子2内への永久磁石5の配置の方法も、図1のような場合の他に例えば図2の様な場合も考えられ、図1と比べると図2のような場合の方がより効果的であり、永久磁石の磁束を効率的に利用できると言うことができる。ただし、図2のような場合では図1の場合と比べると磁石の数が増加しているため、コストアップが予想される。したがって、永久磁石5の配置場所及び数についてはその用途によって様々なものが考えられる。また、永久磁石5による磁束の漏れが発生しないように図1の場合には、モータ軸4は非磁性材料を使用することが望ましい。さらに、図1における永久磁石5とモータ軸4との間隔及び図2における隣り合う永久磁石5同士の間隔はいずれも小さければ小さいほど効果的である。また、本発明ではいずれも4極の同期電動機1についての説明を行っているが、2極の同期電動機1の場合には、例えば図3のような形状になる。図3はモータ軸4が存在しない模式的な書き方をしているが、実際にはモータ軸4は存在する。
【0022】
次に、図7、図8、図9、図10、図19、図11及び図12を用いてd軸電流Id及びq軸電流Iqの制御方法について述べる。まず、前述した通り永久磁石5は磁極がφq方向になるように配置するが、永久磁石5の磁束の向きは変わらないので、従来のようにトルク指令値Tcomの正負によってq軸電流Iqの正負を変えると、q軸電流Iqによって発生する磁束の方向も逆になるので、磁束漏れの低減でなく、逆に磁束の漏れを増加させる方向に磁束が発生してしまい、力率は更に低下し、高回転域の特性も更に低下する場合が存在する。これでは、電動機として非常に問題があるため、従来の図15及び図16の様にd軸電流Idが一定で、トルク指令値の正負によってq軸電流Iqの正負を変えるような制御は行うことができない。
【0023】
そこで、本発明においては例えば図7及び図8に示すようなd軸電流Id及びq軸電流Iqの制御を行うことによって、上記問題を解決することができる。
【0024】
図7及び図8は、従来技術を示す図15及び図16と同様にトルク指令値Tcomに対するd軸電流指令値Idcom又はq軸電流指令値Iqcomを示した図の一例である。まず、前述の通りトルク指令値Tcomの正負によってq軸電流指令値Iqcomの正負を変えるわけにはいかないので、図8に示すようにIqcomは常に正の値とする。しかし、このままではトルク指令値Tcomの正負によって発生トルクの正負を反転させることはできない。本発明における制御においては、発生トルクの正負反転をd軸電流指令値Idcomの反転によって行う。すなわち、従来技術においてd軸電流指令値Idcomは常に一方向のみの一定値であったが、トルク指令値Tcomの正負にあわせてd軸電流指令値Idcomの正負も反転することによって、回転子2を磁化する磁束の方向を反転させる。
【0025】
同期電動機1が発生する力は前述の通りフレミング左手の法則によって決まっていたため、磁束の方向が反転すれば発生する力の方向も反転する。
【0026】
以上のことにより、トルク指令値Tcomの反転によって発生トルクを反転させるためには、d軸電流Idを反転させればよいことになる。そうであれば、q軸電流指令値Iqcomは常に正であって更にトルク指令値Tcomに比例した発生トルクを得るためにトルク指令値Tcomとq軸電流指令値Iqcomが比例した形であって、d軸電流指令値をトルク指令値Tcomの正負によって反転させるような、例えば図9と図10に示すようなd軸電流指令値Idcom及びq軸電流指令値Iqcomとすれば良いように思われる。
【0027】
しかし、このような指令値であるとトルク指令値Tcomがゼロ付近で挙動が不安定になるという欠点がある。
【0028】
そのことについて、以下に図19及び図11を用いて説明する。図19及び図11は図1と同様に回転子2と巻線に通電される電流を示した模式図であるが、巻線を示す円内に印がないものは電流が通電される方向が変化することを示す。同期電動機1の制御においてd軸電流Idとq軸電流Iqをそれぞれ独立に制御はするが、実際に通電する電流はそれらの合成電流Ioであることは前述した。つまり、例えば従来のように図15と図16の様にd軸電流指令値Idcom及びq軸電流指令値Iqcomを制御した場合、図15のようにd軸電流Idは一定値であり、図19に示されるように通電される。なお、d軸電流Id及びq軸電流Iqについて、図1に示される方向に通電された場合に、両者とも正の電流値であると仮定する。このような場合に、トルク指令値Tcomが正の最大値から負の最大値に変化していく際の合成電流Ioを通電する位相について以下に述べる。まず、トルク指令値Tcomが最大の場合には図16よりq軸電流指令値Iqcomも最大になるので、合成電流Ioの×印はIo1で示される付近に来る。そこから、トルク指令値Tcomを次第に減少させていくと、q軸電流指令値Iqcomも次第に減少していくので、合成電流の×印はIo1からIo2、Io3と移っていき、トルク指令値Tcomが負に変わるとIo4、Io5、Io6と移っていく。したがって、従来のようにd軸電流Idが一定でq軸電流Iqがトルク指令値Tcomに比例して変化する場合は、合成電流Ioはトルク指令値が不連続的な変化をしない限り、連続的に安定して、その位相が変化する事がわかる。
【0029】
一方、本発明においてd軸電流指令値Idcomとq軸電流指令値Iqcomを図9及び図10の様に変化させた場合を考える。まず、q軸電流指令値Iqcomはトルク指令値Tcomに比例するものの常に正であるので、図11のように通電される。この場合もトルク指令値Tcomを正の最大値から負の最大値まで変化していく際の合成電流Ioを通電する位相について述べる。
【0030】
まず、トルク指令値が正の最大値である場合は、前述した従来の場合と同様に合成電流の×印はIo1付近に来る。そこから、トルク指令値Tcomを減少させていった場合の経過もトルク指令値Tcom=0までは、従来の場合と同様である。しかし、トルク指令値Tcomが正から負に変わった瞬間にd軸電流指令値Idcomの正負が反転するため、合成電流Ioの×印はIo3付近から急にIo7付近に移る。
【0031】
そこから、トルク指令値Tcomを負の最大値まで減少させていくと合成電流Ioの×印はIo8、Io9と移っていく。このように、合成電流Ioを通電する位相がトルク指令値ゼロ付近で不連続に変化すると、特に停止時の電動機1の挙動が不安定になる。なぜなら、トルク指令値が仮に0であっても実際には細かいノイズ等がトルク指令値に重畳するため、それに反応して制御を行うと瞬間的に電流を通電する位相が変化するために、ある一相における通電電流だけを考えた場合、パルス状に近い指令値がノイズ的に正負に発生することになる。電流指令値が発生されても実際の通電電流がそれに追従しようとするときに遅れが発生することは公知であるので、これが原因で同期電動機1が発振したり暴走状態になったりする可能性がある。したがって、d軸電流指令値Idcomとq軸電流指令値Iqcomを図9及び図10のように変化させることは、特にトルク指令値Tcomがゼロ付近での挙動が不安定になるという理由から行うべきではないと考えられる。
【0032】
そこで考えられるのが、図7及び図8に示されるようなトルク指令値Tcomに対するd軸電流指令値Idcom及びq軸電流指令値Iqcomの波形である。この場合においてもq軸電流指令値Iqcomが常に正であって、d軸電流指令値Idcomがトルク指令値Tcomによって正負を入れ替えるという形は図9及び図10の場合と変わらないが、d軸電流指令値Idcomがあるトルク指令値Tcom1以下の場合にはトルク指令値Tcomに比例した形で、トルク指令値TcomがTcom1以上の場合には一定値となっている。また、q軸電流指令値Iqcomはd軸電流指令値Idcomの場合とは逆に、トルク指令値TcomがTcom1以下の場合には一定値で、Tcom1以上の場合にはトルク指令値Tcomに比例する形を取っている。
【0033】
このような場合には、巻線に通電される電流は図9及び図10の場合とは異なってくる。このことについてトルク指令値Tcomを正の最大値から負の最大値まで変化させた場合の巻線に通電される電流の変化を見てみる。図11において、まず、トルク指令値Tcomが正の最大値の場合はd軸電流指令値Idcomが一定値で、q軸電流指令値Iqcomは最大値であるので、合成電流Ioの×印はIo1付近にある。そこからトルク指令値Tcomが減少していくと次第にIo1付近からIo2付近へと移動して行く。
【0034】
しかし、トルク指令値TcomがTcom1以下になるとq軸電流指令値Iqcomは一定値になり、d軸電流指令値Idcomが減少し始めるので、合成電流Ioの×印はIo2付近から再びIo1付近まで戻り始める。更にトルク指令値Tcomが減少して負の値になると、合成電流Ioの×印はIo1付近からIo9付近へと移り、Io8付近へと近づいていく。更にトルク指令値Tcomが減少して−Tcom1以下になると、再びd軸電流指令値Idcomが一定でq軸電流指令値Iqcomが増加し始めるので、合成電流Ioの×印はIo8付近からIo9付近に戻ってくる。以上のように、図7及び図8の場合においては合成電流Ioが通電される巻線が連続的に変化し、かつq軸電流Iqの通電方向も一定に保たれるので、本発明においてはこのようにd軸電流Id及びq軸電流Iqを制御する必要がある。ただし、この図7及び図8に示したのはあくまでも一例であって、q軸電流Iqの通電方向が常に一定であって、更に合成電流Ioを通電する巻線が連続的に変化するという両条件を満たしていれば、d軸電流指令値Idcom及びq軸電流指令値Iqcomの波形には様々な変形例が考えられる。
【0035】
以上のようにd軸電流指令値Idcom及びq軸電流指令値Iqcomを制御する具体的な方法について図12を用いて説明する。図12は従来技術を示す図14と同様に、同期電動機1の主に電流制御に関する部分の説明を行うためのブロック図であり、図14と同一の記号にて示される部分はその作用、動作は同一であるので説明を省略する。
【0036】
図12においては、d軸電流演算手段8及びq軸電流演算手段9が挿入されている。d軸電流演算手段8及びq軸電流演算手段9は、それぞれd軸電流指令値Idcom又はq軸電流指令値Iqcomを受け取りつつ、同時にトルク指令値Tcomも受け取って、あらかじめ持っているトルク指令値のしきい値Tcom1とトルク指令値Tcomとの比較を行いながら、例えば図7及び図8に示すようなd軸電流指令値Idcom又はq軸電流指令値Iqcomを生成し、それぞれが生成した演算後d軸電流指令値Idcom2及び演算後q軸電流指令値Iqcom2をsin分配手段10に送出する。
【0037】
なお、その他の動作は従来技術と同様であるので説明を省略する。
【0038】
【発明の効果】
以上のように本発明における電動機の制御装置によれば、まず、電動機の回転子内に回転子の磁路とは垂直方向にその磁極が向くように永久磁石を配置し、さらに、q軸電流の通電方向が常に一定で合成電流Ioを通電する巻線が連続的に変化するようにd軸電流指令値及びq軸電流指令値を制御することによって、q軸電流による磁束の漏れが低減され、それによって力率を上昇させ、高回転域での特性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明における電動機の回転子の一例を示す断面図である。
【図2】 本発明における電動機の回転子の一例を示す断面図である。
【図3】 本発明における電動機の回転子の一例を示す断面図である。
【図4】 本発明における電動機の各電流及び電圧をベクトル表示した場合の位相及び振幅の関係を示す模式図である。
【図5】 本発明における電動機の各電流及び電圧をベクトル表示した場合の位相及び振幅の関係を示す模式図である。
【図6】 本発明における電動機の各電流及び電圧をベクトル表示した場合の位相及び振幅の関係を示す模式図である。
【図7】 本発明におけるトルク指令値Tcomに対するd軸電流指令値Idcomを示した図の一例である。
【図8】 本発明におけるトルク指令値Tcomに対するq軸電流指令値Iqcomを示した図の一例である。
【図9】 本発明におけるトルク指令値Tcomに対するd軸電流指令値Idcomを示した図の一例である。
【図10】 本発明におけるトルク指令値Tcomに対するq軸電流指令値Iqcomを示した図の一例である。
【図11】 本発明における回転子2と巻線に通電される電流を示した模式図である。
【図12】 本発明における同期電動機1の主に電流制御に関する部分の説明を行うためのブロック図である。
【図13】 従来における電動機の回転子の一例を示す断面図である。
【図14】 従来における同期電動機1の主に電流制御に関する部分の説明を行うためのブロック図である。
【図15】 従来におけるトルク指令値Tcomに対するd軸電流指令値Idcomを示した図の一例である。
【図16】 従来におけるトルク指令値Tcomに対するq軸電流指令値Iqcomを示した図の一例である。
【図17】 従来における電動機の各電流及び電圧をベクトル表示した場合の位相及び振幅の関係を示す模式図である。
【図18】 従来における電動機の各電流及び電圧をベクトル表示した場合の位相及び振幅の関係を示す模式図である。
【図19】 従来における回転子2と巻線に通電される電流を示した模式図である。
【符号の説明】
1 同期電動機、2 回転子、3 スリット、4 モータ軸、5 永久磁石、6 比較器、7 速度ゲイン、8 d軸電流演算手段、9 q軸電流演算手段、10 sin分配手段、11 加算器、12 三相分配手段、13 微分手段。
Claims (1)
- 三相交流巻線を備える固定子と、隣接する各磁極間に磁気的に絶縁された複数の磁路を有する回転子と、前記回転子内に配置され前記複数の磁路によって形成される磁路の方向に対して垂直な方向に磁束の方向が向くように配置された永久磁石と、を有し固定子側から見た回転子の磁気抵抗が回転子の回転位置により異なる構造の電動機を制御する電動機の制御装置であって、
通電する電流を回転子の磁極方向に磁束を発生させるd軸電流成分と、回転子の磁極と垂直方向に磁束を発生させるq軸電流成分と、に分割した場合に、前記電動機の回転方向に関わらず、前記q軸電流成分の正負は変化せずに、前記d軸電流成分の正負を変化させることによって前記電動機の回転方向を決定し、前記電動機の挙動を制御することを特徴とする電動機の制御装置。
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1998
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