JP4002944B2 - スパイラル式熱交換器 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明はスパイラル式熱交換器に関し、1枚以上の帯状伝熱板を互いに所定の間隔をあけて渦巻き状に多数巻回して構成したスパイラル式熱交換器に関する。更に詳しくは、少なくとも一面がフッ素樹脂フィルムでラミネートされた帯状伝熱板を渦巻き状に巻回して構成するのに最適なスパイラル式熱交換器に関する。
【0002】
【従来の技術】
スパイラル式熱交換器1は一般に図1に示すように、2枚の長尺帯状伝熱板2、2’を所定の間隔をあけて渦巻き状に多数巻回したもので、流体の一方Aは外周から内心へ、他方Bは内心から外周へ、それぞれ完全な対向流となって流れるようになっている。そしてその帯状伝熱板の開口端縁3の封止方法は、次のようになっている。
1.図1に示すように、帯状伝熱板2、2’の開口端縁3は、A、B両流路とも上下方向に開放され、円盤状ガスケット4で両側の蓋状フランジ5を締め付けることによって、A、B2つの流体を封止する構成になっている。
2.図2(イ)に示すように、帯状伝熱板2の開口端縁3はA、B両流路の一方を、どちらか一方ずつ上下交互に溶接6で封止し、他の一方は開放された構成になっている。
3.図2(ロ)に示すように、帯状伝熱板2のA、Bいずれか1方の流路のみ上下開口端縁3を溶接6で封止し、他方は上下開口端縁3とも開放された構成になっている。
4.図2(ハ)に示すように、帯状伝熱板2の開口端縁3は、A、B両流路とも上下開口端縁3を溶接6で完全に封止された構成になっている。
【0003】
而して、円盤状ガスケット4によらず上下の開口端縁3を溶接6で封止する(イ)、(ロ)、(ハ)の構成においては、溶接によって帯状伝熱板2の幅に誤差を生じるばかりでなく、封止部分に溶接不良が生じ易い欠点があった。
即ち、図3に示すように長尺で薄い帯状伝熱板2の開口端縁3と、厚いシール材7とを巻回して溶接6で完全に接合することは甚だ困難であり、更に溶接部分や溶接部付近は本質的に腐食されやすく、又運転中の温度の変化で生じる歪みや、膨張や収縮の繰り返しによって生じる疲労から、腐食や破壊を生じやすく、装置全体が使用できなくなる恐れがある。即ち、溶接は帯状伝熱板2の肉厚が薄くなるほどその難度が倍加し、使用中の応力で破壊される危険が大となるため、伝熱効率が低下しても肉厚が厚いステンレス鋼板を使う必要があった。
【0004】
更に帯状伝熱板2に所定の間隔を維持させるためのスペーサーとして図4(イ)に示すスタッドピン8、又は(ロ)に示すフラットバー9を溶接接合しなければならないために、たとえば肉厚が3mm以上のステンレス鋼板を必要としていた。
また、A、B両流路とも上下両開口端縁が溶接されない図1の構成においては、円盤状ガスケット4を介して蓋状フランジ5と外胴10に設けた外胴フランジ11間で締め付け、介在する円盤状ガスケット4を突き合わせ圧縮することによって、当接する帯状伝熱板2の開口端縁3から洩れないようにしたものであるが、帯状伝熱板2の開口端縁3が当接し、円盤状ガスケット4を圧縮している部分から洩れが生じるので、蓋状フランジ5との外胴11との締め付けに強い力を要し、この締め付け力のために蓋状フランジ5の少くとも一部が撓んで帯状伝熱板2と蓋状フランジ5との間に隙間ができ、隣接するA、B両流路間で短絡が発生し、流体同士が、混ざり合うことがあった。従って、従来から上記対策として種々の発明考案がなされている。
【0005】
即ち、長尺の帯状伝熱板2を渦巻き状に多数巻回して、開口端縁3を蓋状フランジ5で軸方向に円盤状ガスケット4を圧縮して洩れを封じるようにする構成であるから、その帯状伝熱板2の幅の不揃いが開口端縁3の不揃いとなって円盤状ガスケット4との間に隙間が生じても洩れないように、帯状伝熱板2を渦巻き状に巻回した開口端縁3と蓋状フランジ5との間に軟質の円盤状ガスケットを用いた実開昭62−136768号公報、蓋状フランジ5と帯状伝熱板2の開口端縁3とが当接する円盤状ガスケット4の間に外周シール部より内側に凹部を設けたライニング材を設けることによってより耐熱、耐食性を増すようにした実開昭62−136768号を改良した実公平6−16302号公報、蓋状フランジ5の側にクッション性の円盤状ガスケットを配し、その上に耐熱、耐食性のある薄い金属板を備え、この金属板が帯状伝熱板2の開口端縁3を封止するようにした特開平8−291982号公報がある。又特開昭63−140290号公報では、帯状伝熱板の両方の開口端縁まで全体に凹凸模様を設けている。
【0006】
しかし乍ら、これら従来のスパイラル式熱交換器においては、長尺帯状伝熱板2の全長に亘ってその幅の裁断が極めて精密に行わなければならないことは当然であって、前記裁断幅の不揃い、及び(また)溶接によって生じた不揃いが開口端縁3の不揃いとなり、円盤状ガスケット4が当接するこの部分から洩れを生じていた。この不揃いを修正するには高度の加工技術を必要としている。
【0007】
更に、蓋状フランジ5と外胴フランジ11とを軸方向に強力に締め付けると、蓋状フランジ5が撓んで帯状伝熱板2との間に隙間を生じる。また帯状伝熱板2が薄い場合、軸方向(締め付け方向)に帯状伝熱板2が座屈して一挙に強度が無くなり、その部分から洩れを生じる原因となる。このように従来のものはどちらにしても洩れを生じ易いものであった。
【0008】
即ち、従来は何れも帯状伝熱板2の軸方向の不揃いを、蓋状フランジ5上に設けた部材を、軟質にしたり、凹部を設けたり、或いはクッションを設けるなどして、軸方向の締め付け力を分散することによって解決しようとしたものである。
従って、従来のスパイラル式熱交換器は精密に裁断された比較的厚い帯状伝熱板と、硬いガスケットが使用されていた。
而して厚い帯状伝熱板を使用することは、該帯状伝熱板に熱伝導率の悪いステンレス鋼を使用した場合、伝導効率を低下させることになる。
【0009】
更に帯状伝熱板の全体に碗状、畝状、その他の凹凸を設けて伝熱効率を上げることは、帯状伝熱板2の幅に引張りや伸縮を生じ、これが軸方向の不揃いとなるばかりでなく、同時に軸方向の強度が低下して座屈しやすくなっていた。
【0010】
更に、従来のスパイラル式熱交換器では、各帯状伝熱板の間隔を維持するために図4(イ)に示す多数のスタッドピン8又は同図(ロ)に示すフラットバー9等を帯状伝熱板2に溶接する必要があった。而して該スタッドピン8、フラットバー9等を溶接した帯状伝熱板2の溶接部分や溶接部付近は特に腐食され易いという大きな欠点があり、またその表面に耐熱性、耐食性の塗料等で被覆することは甚だ困難であった。更にフッ素樹脂フィルムで被覆することができなかった。
【0011】
異なる手段として図5に示すように帯状伝熱板にシール材7を溶接しないで、帯状伝熱板2の開口端縁3を広い面積で重ねてからロー付け12によって封止する方法がある。而して通常ロー付けにおいては、複雑な部材をロー付けする場合は精密な拘束が必要とされ、しかもこれら全部を加熱する炉のなかに持ち込んで処理するものである。このスパイラル式熱交換器におけるロー付け12は、立体的で更に難度が高くかつ歪み易く、接合された後の端縁3の幅を揃えることは困難である。
【0012】
従って、従来、少なくとも帯状伝熱板の表面にガラス、ほうろう、フッ素樹脂フィルム、その他耐熱性、耐食性合成樹脂をライニング又はコーティングしたスパイラル式熱交換器は見当たらない。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
上記したように、従来のスパイラル式熱交換器にあっては、2枚の長尺の帯状伝熱板を多数巻回した帯状伝熱板の開口端縁を、円盤状ガスケットを介して軸方向に締め付けて洩れを封じるようになしたものであるから、該開口端縁の不揃いによって、円盤状ガスケットとの接触部から洩れが生じる欠点があった。
【0014】
また帯状伝熱板の間隔を保持するために帯状伝熱板の表面にスタッドピン、又はフラットバーを溶接固定しなければならないために、帯状伝熱板の厚さが3mm以上必要であった。さらに、これによって帯状伝熱板の表面を合成樹脂層等で被覆することが困難となるため、耐熱性、耐食性、及び更にクリーンな熱交換器を要する場合は、高価なチタン、ハステロイ等の金属を使用しなければならなかった。
【0015】
この発明の課題は、帯状伝熱板を渦巻き状に多数巻回した軸方向の開口端縁において、その幅に不揃いがあっても容易にこれを気密に封止して一体化することである。そして熱交換率がよい薄い帯状伝熱板、例えば(厚さ1〜2mm)が使用できるようにすることである。
【0016】
さらに、帯状伝熱板の軸方向の一部に碗状、畝状、その他の凹凸を設けて伝熱効率を上げ偏流を修正し、必要に応じて帯状伝熱板の間隔を規定することである。また、溶接不良や残留応力、溶接歪みの無い、組み立て構造のスパイラル式熱交換器を提供することである。加えて、運転中帯状伝熱板に軸方向の伸縮があっても、これを吸収して洩れないスパイラル式熱交換器を提供することである。
更に、流体の流路が合成樹脂、好ましくはフッ素樹脂フィルムの被覆で構成されたスパイラル式熱交換器を提供することである。
即ち、フッ素樹脂フィルムでラミネートされたピンホールが無い長尺の伝熱板を好適に使用して且つガスケットからの洩れを生じないスパイラル式熱交換器を提供することである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成すために、この発明では渦巻き状に巻回する帯状伝熱板の開口端縁の間と円盤状蓋材の間に紐状中空ガスケットを配設する。該開口端縁の形態としては図15に示すようにL字状のものが好ましい。
そしてこの外胴フランジと蓋状フランジを結合してから、即ち組み立てを終了してから、前記紐状中空ガスケットの中空部の中へポンプでオイル等の流体を圧入し、必要に応じてこの流体を凝固させ、前記中空部を少なくとも直径と軸方向に拡張させ、帯状伝熱板を蓋材と側面から圧迫してこれらを気密に封止するようにしたものである。
【0018】
また、前記紐状中空ガスケットの中空部に別途チューブを挿入し、このチューブの中にポンプで前記オイル、グリス、樹脂等を圧入することによって前記中空部を拡張させるものである。
【0019】
この発明に於いて、紐状中空ガスケットとしては耐熱性、耐食性、耐油性、耐久性に優れた合成ゴムを使用することが好ましい。
オイル材として油圧油、ポリクロロトリフルオロエチレン(CTFE)、シリコンオイル、ポリエチレングリコール化合物結合体、ゴム材としてエチレン−プロピレンゴム(EPDM)、アクリルゴム(ACM)、ヒドリンゴム(CO、ECO)、フッ素ゴム(FKM)又は(FPM)が提示できる。また前記ゴムはニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(HR)等の外側をフッ素樹脂フィルムで覆ってもよい。また、触媒で凝固する流体として、例えばポリエステル、エポキシ、シリコン、アクリル等の樹脂がある。
【0020】
この発明では被覆材としてフッ素樹脂に限定されず、必要に応じて、シリコン樹脂、ポリアミド、その他耐熱及び耐食性、耐通気性に優れた合成樹脂のシートやフィルムを伝熱板にラミネートするか、又は塗布ライニングしたものを使用できる。フッ素樹脂としてはPFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、ETFE(エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体)、シリコン樹脂等を例示でき、シリコンゴムとしてはVMQ(メチルビニルシリコンゴム)、FVMQ(フルオロシリコンゴム)、ポリアミドとしては、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミド66等が例示できる。
また、帯状伝熱板もステンレス鋼板に限定されず、メッキ鋼板、アルミニウム板、非鉄金属板、その他のものが適宜、適用できることはいうまでもない。
【0021】
【発明の作用及び構成】
このスパイラル式熱交換器では、紐状中空ガスケットの中空部に流体を圧入することによって、紐状中空ガスケットを少なくとも軸方向と直径方向に拡張せしめ、帯状伝熱板のL字状開口端縁を帯状伝熱板の軸方向と側面から気密に封止することを特徴の一つとしており、従来の突き合わせで軸方向からの無理な締め付けによって生じる蓋状フランジの撓みや、円盤状ガスケットから生じる洩れを防止している。加えてフッ素樹脂フィルムで覆われたスパイラル式熱交換器の開発に成功したものである。
【0022】
この発明は、その一つの態様としてフッ素樹脂で被覆された帯状伝熱板を側面から気密に封止する構成も含まれ、帯状伝熱板の端面の金属を露出せず、且つフッ素樹脂に傷を与えることなくスパイラル式熱交換器を組み立てることができる。
更に、紐状中空ガスケットの少なくとも表面要部をフッ素樹脂で覆うことによって、流体の接触する流通路がすべてフッ素樹脂で被覆されたスパイラル式熱交換器が提供される。
【0023】
【実施例】
以下、この発明を添付説明図に示した好適な一実施例について説明する。尚、同一構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【実施例1】
この実施例1の特徴は、少なくとも1本の紐状中空ガスケットを含む複数の紐状ガスケットが、蓋フランジ内で渦巻き状に巻回されて円盤状蓋材に構成され、前記紐状中空ガスケットが液圧によって少なくとも軸方向と直径方向に拡張し、その間に挟まれた帯状伝熱板を蓋材と側面から気密に封止されることである。
以下この発明のスパイラル式熱交換器を図示した実施例に基づいて説明する。
図15(イ)に示すように、帯状伝熱板2の開口端縁にL字状のガスケット受け部32が設けられる。そして図15(ロ)に示すように、このL字状のガスケット受け部32に、紐状中空ガスケット13を受け止めて収容したことを特徴とするものである。
紐状中空ガスケット13、13’は帯状伝熱板2のL字状開口端縁のガスケット受け部32で側面から挟まれ、円盤状蓋材で軸方向に挟まれる。この伝熱板2、2’は所定の間隔をあけて渦巻き状に巻回され、A、B2つの流路が構成される。Cは紐状中空ガスケット13、13’の中空部である。
図6に示すこのL字状のガスケット受け部32と、紐状中空ガスケット13、円盤状蓋体14及び又は蓋状フランジ5が一体となってスパイラル式熱交換器の端面開口部が気密に封止される。
【0024】
この帯状伝熱板2、2’は、耐熱、耐食性に優れた薄いステンレス鋼板が用いられる。紐状中空ガスケット13、13’は高温、耐油性のニトリルゴム(NBR)で構成され、その中空部Cに空気と置換されたシリコンオイルが加圧液として充填されるようになっている。また必要に応じて紐状中空ガスケット13、13’には繊維、金属コード等タイヤコードに相当する補強材15が用いられている。
【0025】
スパイラル式熱交換器1を組み立て、蓋状フランジ5に設けた注入口16からシリコンオイルを注入、空気と置換して紐状中空ガスケット13、13’に充填させてから所定の圧力に加圧する。この圧力で該紐状中空ガスケット13、13’を円盤状蓋材14の直径方向に拡張すると同時に、帯状伝熱板2、2’を軸方向と側面から強力に挟み付けて気密に固定することができる。図中17は必要に応じて設けることができる蓄圧室である。蓄圧室17は紐状中空ガスケット13、13’の中空部Cと連通してその液圧を、バネ18とピストン19で常に一定に維持することができる。
更に、蓄圧室17を負圧にすることで容易にこのスパイラル式熱交換器が解体できる。
【0026】
【実施例2】
この実施例2は、帯状伝熱板の少なくとも一面にフッ素樹脂フィルムをラミネートしたもので、これに対応する紐状中空ガスケットの表面にもフッ素樹脂をライニングする。
図7に示すように、帯状伝熱板2上にフッ素樹脂PFAフィルムaと、帯状伝熱板2’上にフッ素樹脂PFAフィルムa’がライニングされ、そして紐状中空ガスケット13’の外面にはフッ素樹脂PFAで被覆したライニング層bが設けられ、流路B、Bが構成されている。
帯状伝熱板2、2’の反対面は紐状中空ガスケット13、13’があってそれぞれ流路A、Aが構成されている。
その他の構成及び使用方法は実施例1と同様である。
【0027】
【実施例3】
この実施例3は、図8に示すように図7の紐状中空ガスケット13、13’の中空部Cにゴムチューブ20を挿入したことを特徴とするものである。
ゴムチューブ20としてはシリコンゴム、フッ素ゴム等が好ましい。そして紐状中空ガスケット13、13’、ライニング層a、a’、b及びチューブ20に、それぞれに最適の素材を適用することができる。紐状中空ガスケット13、13’には必要に応じてスリット21を設けてチューブ20を挿入し易く、又は紐状中空ガスケット13の製作がし易いようにすることができる。
【0028】
【実施例4】
この実施例4は帯状伝熱板2を挟む紐状中空ガスケット13及び(又は)13’の中空部C或いはチューブ20に化学反応で凝固固化する流体を圧入したことを特徴とするものである。この際、固化する際に、あまり収縮しないものが望ましい。
この例では流体としては、ポリエステル樹脂モノマーと触媒を混合したものである。
【0029】
【実施例5】
この実施例5は図9に示すように、帯状伝熱板2を挟む紐状中空ガスケット13のどちらか一方を、紐状ソリッドガスケット23としたことを特徴とするものである。紐状ソリッドガスケット23の中には、必要に応じて硬質で屈曲が可能な屈曲部材(アルミ等)24が挿入され、紐状中空ガスケット13と共に円盤状蓋体14として構成されている。その表面は必要に応じて共にフッ素樹脂(PFA)で被覆される。そして紐状中空ガスケット13を拡張し実施例1〜4と同様、気密に封止される。
【0030】
この際、紐状ソリッドガスケット23は円盤状蓋体14と一体に作成されてもよく、又別途紐状に作成されたものを円盤状蓋体14に接着しても良い。屈曲部材24は紐状中空ガスケット13が拡張した際に紐状ソリッドガスケット23が所定の位置に所定の形状間隔を維持するのに適したもので、適した位置に設けられることが望ましい。
【0031】
【実施例6】
この実施例6は帯状伝熱板2を挟む紐状中空ガスケット13のどちらか一方を紐状スペーサー25としたことを特徴とするものである。
紐状スペーサー25は図10(イ)に示すように、紐状ガスケットの軸方向に多数の流体通路孔26が設けられ、図10(ロ)に示すように並列された紐状中空ガスケット13の直径方向の圧力を受けながら同時に流体の流通路を軸方向に向けるようになっている。該紐状スペーサー25は上述した直径方向の圧力に潰れないで且つ巻回し易いもの、例えばアルミニウム、銅等の軟らかな金属を母材とし、これに流体通路孔26が設けられ、鍍金、塗装その他必要な処理がなされたものが好ましい。
【0032】
この実施例のものは、図11のように円盤状蓋材14との間に空間27が設けられる。即ち一方の流体Aが外筒10の入口から渦巻き状に流れて内心に向かい、他方Bは空間27から軸方向に流入し渦巻き流となって外周出口から流出される。また、図12のように空間27、27’を両方に設けると、一方の流体Aは渦巻き状に、他方の流体Bは軸方向の流れになって交差する。
この場合紐状中空ガスケット13と紐状スペーサー25とは円盤状拘束材28を構成する。
【0033】
【実施例7】
この実施例7は図13(イ)に示すように、紐状スペーサーとして円盤状蓋材とを一体にして円盤状拘束部材29としたことを特徴とするものである。
円盤状拘束部材29には、軸方向に多数の流体通路孔26が設けられた凸条部30が渦巻き状に構成され、同時に渦巻き状の凹溝31が形成される。
図13(ロ)に示すように、帯状伝熱板2、2’は凹溝31の両側面に接して巻回され、その間には紐状中空ガスケット13が設けられている。
【0034】
【実施例8】
この実施例8は図14(イ)に示すように、プレート2の開口端縁3にL字状のガスケット受け部32を設ける。
図14(ロ)に示すように、このL字状のガスケット受け部32に、紐状中空ガスケット13を受け止めて収容したことを特徴とするものである。このL字状のガスケット受け部32と円盤状蓋材14及び又は蓋状フランジ5とで、一体にして円盤状拘束材28、或いは円盤状拘束部材29とすることができる。
【0035】
【実施例9】
この実施例9は図15(イ)に示すように、帯状伝熱板2の開口端縁3の端から、紐状中空ガスケット13のスペース33を空けて、帯状伝熱板2の両側に交互に椀状突起34、椀状凹陥部35を設ける。
図15(ロ)に示すように、このスペース33に紐状中空ガスケット13を受け止めることを特徴とするものである。これによって、L字状のガスケット受け部32では曲げ難い渦巻き状の巻回成形が容易になる。
【0036】
【実施例10】
この実施例10は図16に示すように、帯状伝熱板2の開口端縁3に設けた椀状突起34、椀状凹陥部35と紐状中空ガスケット13の間にフラットバー36を設置したことを特徴とするものである。このフラットバー36が紐状中空ガスケット13をバックアップすることによって、スパイラル式熱交換器の内部が減圧されて一部真空状態になってもこれを保持することができる。このフラットバー36は、フラットバーを所定の渦巻き状に巻回して作成しても良いが、フラットバーと同じものを、円盤から所定の渦巻き状に溶断して切り抜いて作成した切り抜き板としても良い。
【0037】
【実施例11】
この実施例11は図17に示すように、帯状伝熱板の胴部の任意の位置に軸方向に対して傾斜した畝状突起37と畝状凹陥38を設けた帯状伝熱板2と、傾斜方向を伝熱板2と異ならせた畝状突起37’と畝状凹陥38’を設けた帯状伝熱板2とを交互に重ね合わせて巻回したことを特徴とするものである。この畝状突起37と畝状凹陥38、畝状突起37’と畝状凹陥38’とで帯状伝熱板2、2’を所定の間隔に保持することができる。更に帯状伝熱板の間を流れる流体を乱流により撹拌して伝熱効率を上げることができる。またこの際、表面積が実質的に増加し、伝熱効率を増加する。然して帯状伝熱板に設けられる前記畝状突起と畝状凹陥の幅は、図18に示すように帯状伝熱板の全幅ではなく一部である。
具体的には、帯状伝熱板の幅1000mmのとき、前記畝状突起と畝状凹陥は、両方の開口端縁から450mmずつ離れた帯状伝熱板2の央部に設けられ、幅100mm、角度は30度である。
【0038】
尚、上記では紐状中空ガスケットを拡張する方法として、流体を圧入して圧力を保持する、流体を圧入してこれを凝固させる等の手段を例示したが、これらに限定されることなく開口端縁に設けられたL字状のガスケット受け部の紐状中空ガスケットを拡張して帯状伝熱板を固定するスパイラル式熱交換器は本発明に全て包含される。
更に、この発明の紐状中空ガスケットと、紐状ソリッドガスケット又は紐状スペーサーとの組み合わせだけでなく、従来の溶接、ロー付け等と組み合わせても良い。また紐状スペーサー等も実施例に限定されない。また全体の形式としても、図1の対向流式だけでなく、図11、図12の交差式及びこれらの組み合わせが適用できる。
また、バックアップのフラットバーはL字状のガスケット受け部にも適用できる。
椀状突起と椀状凹陥、及び畝状突起と畝状凹陥は実施例に限定せず、形状、角度、高さは勿論、軸方向の長さ、数も自由に且つ多数配設できる。
【0039】
【発明の効果】
この発明によると、以下に列挙する種々の効果が得られる。
(1)スタッドピンの溶接や、帯状伝熱板を軸方向に突き合わせで無理に締め付ける必要がないので、従来の1/2以下の薄い帯状伝熱板が使用でき、伝熱効率の高いスパイラル式熱交換器が提供できる。
(2)帯状伝熱板が側面から密封されるので、軟らかなフッ素樹脂フィルム等の耐熱、耐食性に優れた機能性樹脂を帯状伝熱板にライニングして用いることができ、用途が拡大する。
(3)帯状伝熱板にフッ素樹脂フィルムやシートをラミネートし、紐状中空ガスケトの外面にフッ素樹脂をライニングすることによって、流路の全てがフッ素樹脂で構成されているスパイラル式熱交換器が提供できる。
(4)所定の間隔に相当するサイズの紐状中空ガスケットを使用することによって、従来必要であったスペーサー、スタッドボルト、フラットバー等を要せず構造が簡単になり廉価になる。
(5)紐状中空ガスケトの中空部に充填した液を加圧するだけで、帯状伝熱板の開口端縁と蓋状フランジが気密に封止される。又は減圧すると開放されて分解し易くメンテナンスが容易になる。
(6)帯状伝熱板に任意のパターンで突起、凹陥や、畝状突起や畝状凹陥を設けることができる。
(7)紐状中空ガスケットとソリッドガスケット或いは紐状スペーサーとを交互に配設して安定した円盤状蓋体や拘束材を構成することができる。
(8)短い畝状突起と畝状凹陥が互いに交差接触して、帯状伝熱板間の所定の間隔を保持すると同時に、流体の流れを撹拌することは勿論、表面積の増加によって伝熱効率を増加する。
(9)L字状への加工に比して、椀状突起、椀状凹陥、及び短い畝状突起と畝状凹陥は巻回加工がし易く製造が容易になる。
【0040】
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は従来のスパイラル式熱交換器の一部を削除した縦断面図である。
【図2】 図2の(イ)は従来の例で、流路の上下を交互に溶接で封止した説明図である。
図2の(ロ)は従来の例で、一方の流路のみを溶接で封止した説明図である。
図2の(ハ)は従来の例で、両流路の上下を溶接で封止した説明図である。
【図3】 図3は従来の例で、帯状伝熱板をシール材に溶接した説明図である。
【図4】 図4の(イ)は、従来の例で、帯状伝熱板にスタッドピンを付けた要部拡大縦断面図である。
図4の(ロ)は、従来の例で、帯状伝熱板にフラットバーを付けた要部拡大縦断面図である。
【図5】 図5は従来の他の例で、開口端縁をロー付けした端縁を示す要部拡大縦断面図である。
【図6】 図6は、この発明の一実施例を示す要部拡大縦断面図である。
【図7】 図7は、この発明の他の実施例を示す要部拡大縦断面図である。
【図8】 図8は、この発明の他の実施例を示す要部拡大縦断面図である。
【図9】 図9はこの発明の他の実施例を示す要部拡大縦断面図である。
【図10】 図10はこの発明の他の実施例を示すもので、(イ)は紐状スペーサーの説明図であり、また(ロ)は他の実施例の要部拡大縦断面図である。
【図11】 図11はこの発明の他の構造の一例を示すもので、一部を切除した縦断面図である。
【図12】 図12はこの発明の他の構造の他の一例を示すもので、一部を切除した縦断面図である。
【図13】 図13この発明の他の実施例を示すもので、(イ)は円盤状拘束部材の説明図であり、(ロ)は(イ)に帯状伝熱板と紐状中空ガスケットを組み付けた例の要部拡大縦断面図である。
【図14】 図14はこの発明の実施例1を示すもので、(イ)はL字状のガスケット受け部の説明図であり、(ロ)は(イ)に帯状伝熱板と紐状中空ガスケットを組み付けた例の要部拡大縦断面図である。
【図15】 図15はこの発明の他の実施例を示すもので、(イ)は開口端縁に椀状突起と椀状凹陥部を設けた説明図であり、(ロ)は(イ)に帯状伝熱板と紐状中空ガスケットを組み付けた例の要部拡大縦断面図である。
【図16】 図16はこの発明の他の実施例を示すもので、図16の(ロ)にフラットバーを設けた例の要部拡大縦断面図である。
【図17】 図17はこの発明の他の実施例を示すもので、(イ)は帯状伝熱板2、帯状伝熱板2’の一部に畝状突起と畝状凹陥を設けた説明図である。(ロ)はこれを重ねた状態を示す平面図である。
【0033】
【符号の説明】
A.流路
B.流路
C.中空部
a.ライニング層
b.ガスケットのライニング層
1.スパイラル式熱交換器
2.帯状伝熱板
2’帯状伝熱板
3.開口端縁
4.円盤状ガスケット
5.蓋状フランジ
6.溶接
7.シール材
8.スタッドピン
9.フラットバー
10.外胴
11.外胴フランジ
12.ロー付け
13.紐状中空ガスケット
13’流路がBの紐状中空ガスケット
14.円盤状蓋体
15.補強材
16.注入口
17.蓄圧室
18.バネ
19.ピストン
20.チューブ
21.スリット
23.紐状ソリッドガスケット
24.屈曲部材
25.紐状スペーサー
26.流体通路孔
27.空間
27’他の空間
28.円盤状拘束材
29.円盤状拘束部材
30.凸条部
31.凹溝
32.L字状のガスケット受け部
33.椀状凸起
34.椀状凹陥
35.フラットバー
36.畝状突起
37.畝状凹陥

Claims (3)

  1. 蓋体を有し、一枚以上の帯状伝熱板を所定の間隔をあけて渦巻状に巻回してなるスパイラル式熱交換器であって、前記帯状伝熱板の開口端縁をL字状に構成し、このL字状開口端縁の少なくとも一部に、流体の圧力で拡張する紐状中空ガスケットを配設、該紐状中空ガスケットを拡張することによって、蓋材と帯状伝熱板の開口端縁とを軸方向及び直径方向へ同時に気密に締結するようにしたことを特徴とするスパイラル式熱交換器。
  2. 蓋体を有し、一枚以上の帯状伝熱板を所定の間隔をあけて渦巻状に巻回してなるスパイラル式熱交換器であって、開口端縁の少なくとも一部に、流体の圧力で拡張する紐状中空ガスケットを配設し、この配設される紐状中空ガスケットのスペースを空けて、該帯状伝熱板の両側に椀状突起と椀状凹陥部を設け、前記スペースに紐状中空ガスケットを配設するようになしたことを特徴とするスパイラル式熱交換機。
  3. 蓋体を有し、一枚以上の帯状伝熱板を所定の間隔をあけて渦巻状に巻回してなるスパイラル式熱交換器であって、前記渦巻状の帯状伝熱板の所定の間隔部分を凹溝と凸状部で円盤状蓋材を構成、該凸状部には軸方向に渦巻状に多数の通孔が設けられ、或は多数の通孔が設けられた紐状スペーサーを巻回して円盤状蓋材の凸状部のように構成し、円盤状蓋材の凹溝の両側面に帯状伝熱板の開口端縁を挿入、その間に紐状中空ガスケットを設けたことを特徴とするスパイラル式熱交換器。
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