JP4002122B2 - 健康診断薬及びそれを用いた健康診断装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自宅のトイレ等において健康状態を簡便に検査することができる健康診断薬及びそれを用いた健康診断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、人の健康状態を検査するためには、定期検診、人間ドック等の設備・機関があり、そこで身体の一部、又は身体の複数箇所について診断してもらい、病気の早期発見、健康の確認、普段の生活で注意すべきアドバイスを受けること等により、それ以降の生活にその結果を生かすことができるようになっている。
【0003】
しかしながら、このような従来の健康状態を検査する方法にあっては、いずれの方法を選ぶにしても、必ず人が病院等の診療機関に行かなければならないと共に、検査結果はすぐに得られず、長い間待たされてしまうという問題がある。
【0004】
たとえ、検診用の車両が会社や学校等に来て、人が診療機関に行かなくても済んだとしても、その検査結果について長い間待たされるという点においては同じである。そして、検査結果について長い間待たされている間に、もし病気があった場合にはその病気は進行し、人はその病気の進行に対して何の対策も講じることができないという問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような状況下、従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明は、人体が毎日の食事から摂取した食物が最終的に消化、栄養吸収された後の排泄物から、人がわざわざ病院等の診療機関に行かなくても日常の生活の中で検査を行うことが可能となると共に、その場で即時に簡易に検査結果を知ることができることにより病気の早期発見や回復過程の状態を容易に知ることができる健康診断薬及びそれを用いた健康診断装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
<1> 被検液に添加されて該被検液上に膜を形成するようにして使用され、両親媒性のα−ヘリックス・ポリペプチドと、該両親媒性のα−ヘリックス・ポリペプチドに結合し該被検物中に含まれる疾病マーカーを特異的に捕捉する捕捉構造体とを有してなることを特徴とする健康診断薬である。
<2> 両親媒性である前記<1>に記載の健康診断薬である。
<3> 捕捉構造体が棒状体の一端に結合された前記<1>又は<2>に記載の健康診断薬である。
<4> 捕捉構造体が棒状体の周側面に結合された前記<1>から<3>のいずれかに記載の健康診断薬である。
<5> 捕捉が物理吸着及び化学吸着のいずれかである前記<1>から<4>のいずれかに記載の健康診断薬である。
<6> 棒状体が、らせん状有機分子である前記<1>から<5>のいずれかに記載の健康診断薬である。
<7> らせん状有機分子がα−ヘリックス・ポリペプチド、DNA及びアミロースのいずれかである前記<6>に記載の健康診断薬である。
<8> 棒状体の長さが810nm以下である前記<1>から<7>のいずれかに記載の健康診断薬である。
<9> 構造性発色を示す前記<8>に記載の健康診断薬である。
<10> 捕捉構造体が疾病マーカーに親性がある前記<1>から<9>のいずれかに記載の健康診断薬である。
<11> 疾病マーカーが、尿中、血液、大便、リンパ液及びその他の体液から選ばれる少なくとも1種に存在する前記<1>から<10>のいずれかに記載の健康診断薬である。
<12> 疾病マーカーが、該疾病マーカーと共に存在する物質である前記<1>から<11>のいずれかに記載の健康診断薬である。
<13> 疾病マーカーを捕捉すると構造性発色する前記<1>から<12>のいずれかに記載の健康診断薬である。
<14> 疾病マーカーを捕捉すると沈殿する前記<1>から<12>のいずれかに項記載の健康診断薬である。
<15> 疾病マーカーを捕捉するとゲル化する前記<1>から<12>のいずれかに記載の健康診断薬である。
<16> 長さが810nm以下である両親媒性のα−ヘリックス・ポリペプチドと、該両親媒性のα−ヘリックス・ポリペプチドに結合し該被検物中に含まれる疾病マーカーを特異的に捕捉する捕捉構造体とを有し、かつ、膜状に配向させることにより構造性発色を示す健康診断薬と、該健康診断薬と試料とを接触させるための添加手段と、疾病マーカーを捕捉した前記膜状健康診断薬の構造性発色による波長変化を測定する発色波長測定手段とを備えた健康診断装置である。
<17> 前記健康診断薬が更に両親媒性であり、前記添加手段が該健康診断薬を油相と共に、水性の試料に添加して健康診断薬と試料とを接触させる添加手段である前記<16>に記載の健康診断装置である。
<18> 棒状体と、該棒状体に結合し被検液中に含まれる疾病マーカーを特異的に捕捉する捕捉構造体とを有し、かつ、両親媒性である健康診断薬を水晶発振子又は表面弾性波(SAW)素子に膜状に付着結合させてなるバイオセンサーと、該バイオセンサーに疾病マーカーが捕捉された際の質量変化又は粘弾性変化を周波数として発振する発振回路と、該発振回路から発振された前記振動の周波数を計測する周波数カウンターとを備えたことを特徴とする健康診断装置である。
<19> 前記健康診断薬を水晶発振子又は表面弾性波(SAW)素子に単分子膜状に付着させた前記<18>に記載の健康診断装置である。
<20> 前記健康診断薬を水晶発振子又は表面弾性波(SAW)素子に二分子膜状に付着させた前記<18>に記載の健康診断装置である。
【0007】
本発明の健康診断薬は、被検物に添加されて使用され、棒状体と、該棒状体に結合し該被検液中に含まれる疾病マーカーを特異的に捕捉する捕捉構造体とを有してなる。
【0008】
前記健康診断薬は、被検物に添加されて使用され、棒状体と、該棒状体に結合し該被検液中に含まれる疾病マーカーを特異的に捕捉する捕捉構造体とを有し、これにより、人がわざわざ病院等の診療機関に行かなくても日常の生活の中で検査を行うことが可能となると共に、その場で即時に簡易に検査結果を知ることができることにより病気の早期発見や回復過程の状態を容易に知ることができる。
【0009】
本発明の健康診断装置の第一の態様は、長さが810nm以下である棒状体と、該棒状体に結合し被検液中に含まれる疾病マーカーを特異的に捕捉する捕捉構造体とを有し、かつ、膜状に配向させることにより構造性発色を示す健康診断薬と、該健康診断薬と試料とを接触させるための添加手段と、
疾病マーカーを捕捉した前記膜状健康診断薬の構造性発色による波長の変化を測定する発色波長測定手段とを備えている。
【0010】
前記膜状に配向させた健康診断薬は、モルフォ蝶翅の鱗粉の発色基本原理である多層薄膜干渉理論に基づく構造性発色を示す。前記膜状健康診断薬の捕捉構造体が疾病マーカーを特異的に捕捉した際の屈折率又は長さの変化による構造性発色に基づく波長変化を測定することにより、疾病マーカーの存在を検査することができる。
【0011】
本発明の健康診断装置の第二の態様は、棒状体と、該棒状体に結合し被検液中に含まれる疾病マーカーを特異的に捕捉する捕捉構造体とを有し、かつ、両親媒性である健康診断薬を水晶発振子又は表面弾性波(SAW)素子に膜状に付着結合させてなるバイオセンサーと、該バイオセンサーに疾病マーカーが捕捉された際の質量変化又は粘弾性変化を周波数として発振する発振回路と、該発振回路から発振された前記振動の周波数を計測する周波数カウンターとを備えている。
これにより、前記バイオセンサーを構成する健康診断薬の捕捉構造体が疾病マーカーを特異的に捕捉した際の質量変化又は粘弾性変化を周波数として高感度に短時間で検出できるものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明の健康診断薬10は、図1に一例として示したように、被検物に添加されて使用され、棒状体1と、該棒状体1に結合し該被検液中に含まれる疾病マーカーを特異的に捕捉する捕捉構造体2とを有する。なお、図1では、捕捉構造体2は棒状体1の一端に結合されているが、棒状体1の周側面に結合させることもでき、この場合、棒状体の周側面に複数の捕捉構造体を結合させることも可能である。
【0013】
<棒状体>
前記棒状体としては、棒状であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、棒状無機物、棒状有機物のいずれであってもよいが、棒状有機物であるのが好ましい。
前記棒状有機物としては、例えば、生体高分子、多糖類などが挙げられる。
前記生体高分子としては、例えば、繊維状蛋白、α−ヘリックス・ポリペプチド、核酸(DNA、RNA)などが好適に挙げられる。該繊維状蛋白としては、例えば、α−ケラチン、ミオシン、エピダーミン、フィブリノゲン、トロポマイシン、絹フィブロイン等のα−ヘリックス構造を有するものが挙げられる。
【0014】
前記多糖類としては、例えば、アミロースなどが好適に挙げられる。
前記棒状有機物の中でも、安定に棒状を維持することができ、また、目的に応じて内部に他の物質をインターカレートさせることができる点で、分子がらせん構造を有するらせん状有機分子が好ましく、該らせん状有機分子には、上述したものの内、α−ヘリックス・ポリペプチド、DNA、アミロースなどが該当する。
【0015】
〔α−ヘリックス・ポリペプチド〕
前記α−ヘリックス・ポリペプチドは、ポリペプチドの二次構造の一つであり、アミノ酸3.6残基ごとに1回転(1らせんを形成)し、4番目ごとのアミノ酸のイミド基(−NH−)とカルボニル基(−CO−)との間に螺旋軸とほぼ平行な水素結合を作り、7アミノ酸を一単位として繰り返すことによりエネルギー的に安定な構造を有している。
【0016】
前記α−ヘリックス・ポリペプチドのらせん方向としては、特に制限はなく、右巻きであってもよいし、左巻きであってもよい。なお、天然には安定性の点から前記らせん方向が右巻きのものしか存在しない。
【0017】
前記α−ヘリックス・ポリペプチドを形成するアミノ酸としては、α−ヘリックス構造を形成可能であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、該α−ヘリックス構造を形成し易いものが好ましく、このようなアミノ酸としては、例えば、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、アルギニン(Arg)、リジン(Lys)、ヒスチジン(His)、アスパラギン(Asn)、グルタミン(Gln)、セリン(Ser)、スレオニン(Thr)、アラニン(Ala)、バリン(Val)、ロイシン(Leu)、イソロイシン(Ile)、システイン(Cys)、メチオニン(Met)、チロシン(Tyr)、フェニルアラニン(Phe)、トリプトファン(Trp)などが好適に挙げられる。これらは、1種単独で使用されてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0018】
前記α−ヘリックス・ポリペプチドの親性としては、前記アミノ酸を適宜選択することにより、親水性、疎水性、両親媒性のいずれにも変え得るが、前記親水性とする場合、前記アミノ酸としては、セリン(Ser)、スレオニン(Thr)、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、アルギニン(Arg)、リジン(Lys)、アスパラギン(Asn)、グルタミン(Gln)などが好適に挙げられ、前記疎水性とする場合、前記アミノ酸としては、フェニルアラニン(Phe)、トリプトファン(Trp)、イソロイシン(Ile)、チロシン(Tyr)、メチオニン(Met)、ロイシン(Leu)、バリン(Val)などが挙げられる。
【0019】
また、前記α−ヘリックス・ポリペプチドにおいては、該α−ヘリックスを形成する前記アミノ酸における、ペプチド結合を構成しないカルボキシル基を、エステル化することにより疎水性にすることができ、一方、該エステル化されたカルボキシル基を加水分解することにより親水性にすることができる。
【0020】
前記アミノ酸としては、L−アミノ酸、D−アミノ酸、これらの側鎖部分が修飾された誘導体などのいずれであってもよい。
【0021】
前記α−ヘリックス・ポリペプチドにおけるアミノ酸の結合個数(重合度)としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、10〜5000であるのが好ましい。
【0022】
前記結合個数(重合度)が、10未満であると、ポリアミノ酸が安定なα−ヘリックスを形成できなくなることがあり、5000を超えると、垂直配向させることが困難となることがある。
【0023】
前記α−ヘリックス・ポリペプチドの具体例としては、例えば、ポリ(γ−メチル−L−グルタメート)、ポリ(γ−エチル−L−グルタメート)、ポリ(γ−ベンジル−L−グルタメート)、ポリ(L−グルタミン酸−γ−ベンジル)、ポリ(n−ヘキシル−L−グルタメート)等のポリグルタミン酸誘導体、ポリ(β−ベンジル−L−アスパルテート)等のポリアスパラギン酸誘導体、ポリ(L−ロイシン)、ポリ(L−アラニン)、ポリ(L−メチオニン)、ポリ(L−フェニルアラニン)、ポリ(L−リジン)−ポリ(γ−メチル−L−グルタメート)などのポリペプチド、が好適に挙げられる。
【0024】
前記α−ヘリックス・ポリペプチドとしては、市販のものであってもよいし、公知文献等に記載の方法に準じて適宜合成乃至調製したものであってもよい。
【0025】
前記α−ヘリックス・ポリペプチドの合成の一例として、ブロックコポリペプチド〔ポリ(L−リジン)25−ポリ(γ−メチル−L−グルタメート)60〕PLLZ25−PMLG60の合成をここで示すと次の通りである。即ち、ブロックコポリペプチド〔ポリ(L−リジン)25−ポリ(γ−メチル−L−グルタメート)60〕PLLZ25−PMLG60は、下記式で示したように、n−ヘキシルアミンを開始剤として用い、Nε−カルボベンゾキシ L−リジン Nα−カルボキシ酸無水物(LLZ−NCA)の重合を行い、続けてγ−メチル L−グルタメート N−カルボキシ酸無水物(MLG−NCA)の重合を行うことにより合成することができる。
【0026】
【化1】
【0027】
前記α−ヘリックス・ポリペプチドの合成は、上記方法に限られず、遺伝子工学的方法により合成することもできる。具体的には、前記目的とするポリペプチドをコードするDNAを組み込んだ発現ベクターにより宿主細胞を形質転換し、この形質転換体を培養すること等により製造することができる。
【0028】
前記発現ベクターとしては、例えば、プラスミドベクター、ファージベクター、プラスミドとファージとのキメラベクター、などが挙げられる。
【0029】
前記宿主細胞としては、大腸菌、枯草菌等の原核微生物、酵母菌等の真核微生物、動物細胞などが挙げられる。
【0030】
また、前記α−ヘリックス・ポリペプチドは、α−ケラチン、ミオシン、エピダーミン、フィブリノゲン、トロポマイシン、絹フィブロイン等の天然の繊維状蛋白からそのα−ヘリックス構造部分を切り出すことにより調製してもよい。
【0031】
〔DNA〕
前記DNAは、1本鎖DNAであってもよいが、安定に棒状を維持することができ、内部に他の物質をインターカレートできる等の点で2本鎖DNAであるのが好ましい。
【0032】
前記2本鎖DNAは、一つの中心軸の回りに、右巻きらせん状の2本のポリヌクレオチド鎖が互いに逆方向に延びた状態で位置して形成された2重らせん構造を有する。
【0033】
前記ポリヌクレオチド鎖は、アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)及びシトシン(C)の4種類の核酸塩基で形成されており、前記ポリヌクレオチド鎖において前記核酸塩基は、中心軸に対して垂直な平面内で互いに内側に突出した形で存在して、いわゆるワトソン−クリック型塩基対を形成し、アデニンに対してはチミンが、グアニンに対してはシトシンが、それぞれ特異的に水素結合している。その結果、前記2本鎖DNAにおいては、2本のポリペプチド鎖が互いに相補的に結合している。
【0034】
前記DNAは、公知のPCR(Polymerase Chain Reaction)法、LCR(Ligase chain Reaction)法、3SR(Self−sustained Sequence Replication)法、SDA(Strand Displacement Amplification)法等により調製することができるが、これらの中でもPCR法が好適である。
【0035】
また、前記DNAは、天然の遺伝子から制限酵素により酵素的に直接切り出して調製してもよいし、遺伝子クローニング法により調製してもよいし、化学合成法により調製してもよい。
【0036】
前記遺伝子クローニング法の場合、例えば、正常核酸を増幅したものをプラスミドベクター、ファージベクター、プラスミドとファージとのキメラベクター等から選択されるベクターに組み込み、大腸菌、枯草菌等の原核微生物、酵母等の真核微生物、動物細胞などから選択される増殖可能な任意の宿主に導入することにより前記DNAを大量に調製することができる。
【0037】
前記化学合成法としては、例えば、トリエステル法、亜リン酸法などのような、液相法又は不溶性の担体を使った固相合成法などが挙げられる。前記化学合成法の場合、公知の自動合成機等を用い、1本鎖のDNAを大量に調製した後、アニーリングを行うことにより、2本鎖DNAを調製することができる。
【0038】
〔アミロース〕
前記アミロースは、高等植物の貯蔵のためのホモ多糖類であるデンプンを構成するD−グルコースがα−1,4結合で直鎖状につながったらせん構造を有する多糖である。
前記アミロースの分子量としては、数平均分子量で、数千〜15万程度が好ましい。
前記アミロースは、市販のものであってもよいし、公知の方法に従って適宜調製したものであってもよい。
なお、前記アミロースは、その一部にアミロペクチンが含まれていても構わない。
【0039】
前記棒状体の長さとしては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、構造性発色を生じさせる観点からは、810nm以下であるのが好ましく、10nm〜810nmであるのがより好ましい。
【0040】
前記棒状体の径としては、特に制限はないが、前記α−ヘリックス・ポリペプチドの場合には0.8〜2.0nm程度である。
【0041】
前記棒状体は、その全部が疎水性又は親水性であってもよく、また、その一部が疎水性又は親水性であり、他の部分が該一部と逆の親性を示す両親媒性であってもよい。前記棒状体が前記両親媒性であると、油相−水相界面での配向、油層又は水相中での分散、等が容易である点で有利である。
【0042】
前記両親媒性の棒状体の場合、疎水性を示す部分及び親水性を示す部分の数としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。また、この場合、疎水性を示す部分と親水性を示す部分とが交互に位置していてもよいし、いずれかの部分が棒状体の一端部にのみ位置していてもよい。
【0043】
<捕捉構造体>
前記捕捉構造体としては、前記疾病マーカー(捕捉対象物)を捕捉することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記捕捉の態様としては、特に制限はないが、物理吸着、化学吸着などが挙げられる。これらは、例えば、水素結合、分子間力(ファン・デル・ワールス力)、配位結合、イオン結合、共有結合などにより形成され得る。
【0044】
前記捕捉構造体の具体例としては、例えば、包接化合物(以下「ホスト」と称することがある)、抗体、核酸、ホルモンレセプター、レクチン、生理活性物質受容体などが好適に挙げられる。これらの中でも、任意の配線を容易に形成することができる点で、核酸が好ましく、1本鎖DNA又は1本鎖RNAがより好ましい。
【0045】
なお、これらの捕捉構造体の疾病マーカー(捕捉対象物)としては、前記包接化合物の場合にはゲスト(包接される成分)であり、前記抗体の場合には抗原であり、前記核酸の場合には核酸、チューブリン、キチン等であり、前記ホルモンレセプターの場合にはホルモンであり、前記レクチンの場合には糖等であり、前記生理活性物質受容体の場合には生理活性物質である。
【0046】
〔包接化合物〕
前記包接化合物としては、分子認識能(ホスト−ゲスト結合能)を有する限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、筒状(一次元)の空洞を有するもの、層状(二次元)の空洞を有するもの、かご状(三次元)の空洞を有するもの、などが好適に挙げられる。
【0047】
前記筒状(一次元)の空洞を有する包接化合物としては、例えば、尿素、チオ尿素、デオキシコール酸、ジニトロジフェニル、ジオキシトリフェニルメタン、トリフェニルメタン、メチルナフタリン、スピロクロマン、PHTP(ペルヒドロトリフェニレン)、セルロース、アミロース、シクロデキストリン(但し、溶液中では前記空洞がかご状)、フェニルホウ酸などが挙げられる。
【0048】
前記尿素の捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、n−パラフィン誘導体などが挙げられる。
【0049】
前記チオ尿素の捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、分岐状又は環状の炭化水素などが挙げられる。
【0050】
前記デオキシコール酸の捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、パラフィン類、脂肪酸、芳香族化合物などが挙げられる。
【0051】
前記ジニトロジフェニルの捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、ジフェニル誘導体などが挙げられる。
【0052】
前記ジオキシトリフェニルメタンの捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、パラフィン類、n−アルケン類、スクアレンなどが挙げられる。
【0053】
前記トリフェニルメタンの捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、パラフィン類などが挙げられる。
【0054】
前記メチルナフタリンの捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、C16までのn−パラフィン類、分岐状パラフィン類などが挙げられる。
【0055】
前記スピロクロマンの捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、パラフィン類などが挙げられる。
【0056】
前記PHTP(ペルヒドロトリフェニレン)の捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、クロロホルム、ベンゼン、各種高分子物質などが挙げられる。
【0057】
前記セルロースの捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、H2O、パラフィン類、CCl4、色素、ヨウ素などが挙げられる。
【0058】
前記アミロースの捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、脂肪酸、ヨウ素などが挙げられる。
【0059】
前記シクロデキストリンは、デンプンのアミラーゼによる分解で生成する環状のデキストリンであり、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリンの3種が知られている。本発明においては、前記シクロデキストリンとして、これらの水酸基の一部を他の官能基、例えば、アルキル基、アリル基、アルコキシ基、アミド基、スルホン酸基などに変えたシクロデキストリン誘導体も含まれる。
【0060】
前記シクロデキストリンの捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、チモール、オイゲノール、レゾルシン、エチレングリコールモノフェニルエーテル、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン等のフェノール誘導体、サリチル酸、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル等の安息香酸誘導体及びそのエステル、コレステロール等のステロイド、アスコルビン酸、レチノール、トコフェロール等のビタミン、リモネン等の炭化水素類、イソチオシアン酸アリル、ソルビン酸、ヨウ素分子、メチルオレンジ、コンゴーレッド、2−p−トルイジニルナフタレン−6−スルホン酸カリウム塩(TNS)などが挙げられる。
【0061】
前記フェニルホウ酸の捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、ブドウ糖等が挙げられる。
【0062】
前記層状(二次元)の包接化合物としては、例えば、粘土鉱物、グラファイト、スメクタイト、モンモリロナイト、ゼオライトなどが挙げられる。
【0063】
前記粘土鉱物の捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、親水性物質、極性化合物などが挙げられる。
【0064】
前記グラファイトの捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、O、HSO4 −、ハロゲン、ハロゲン化物、アルカリ金属などが挙げられる。
【0065】
前記モンモリロナイトの捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、ブルシン、コデイン、o−フェニレンジアミン、ベンジジン、ピペリジン、アデニン、グイアニン及びこれらのリポシドなどが挙げられる。
【0066】
前記ゼオライトの捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、H2Oなどが挙げられる。
【0067】
前記かご状(三次元)の包接化合物としては、例えば、ヒドロキノン、気体水化物、トリ−o−チモチド、オキシフラバン、ジシアノアンミンニッケル、クリプタンド、カリックスアレン、クラウン化合物などが挙げられる。
【0068】
前記ヒドロキノンの捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、HCl、SO2、アセチレン、希ガス元素などが挙げられる。
【0069】
前記気体水化物の捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、ハロゲン、希ガス元素、低級炭化水素などが挙げられる。
【0070】
前記トリ−o−チモチドの捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、シクロヘキサン、ベンゼン、クロロホルムなどが挙げられる。
【0071】
前記オキシフラバンの捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、有機塩基などが挙げられる。
【0072】
前記ジシアノアンミンニッケルの捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、ベンゼン、フェノールなどが挙げられる。
【0073】
前記クリプタンドの捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、NH4+、各種金属イオンなどが挙げられる。
【0074】
前記カリックスアレンは、フェノールとホルムアルデヒドとから適当な条件で合成されるフェノール単位をメチレン基で結合した環状オリゴマーであり、4〜8核体が知られている。これらの内、p−t−ブチルカリックスアレン(n=4)の捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、クロロホルム、ベンゼン、トルエンなどが挙げられる。p−t−ブチルカリックスアレン(n=5)の捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、イソプロピルアルコール、アセトンなどが挙げられる。p−t−ブチルカリックスアレン(n=6)の捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、クロロホルム、メタノールなどが挙げられる。p−t−ブチルカリックスアレン(n=7)の捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、クロロホルムなどが挙げられる。
【0075】
前記クラウン化合物としては、電子供与性のドナー原子として酸素を持つクラウンエーテルのみではなく、そのアナログとして窒素、硫黄などのドナー原子を環構造構成原子として持つ大環状化合物を含み、また、クリプタンドを代表する2個以上の環よりなる複環式クラウン化合物も含まれ、例えば、シクロヘキシル−12−クラウン−4、ジベンゾ−14−クラウン−4、t−ブチルベンゾ−15−クラウン−5、ジベンゾ−18−クラウン−6、ジシクロヘキシル−18−クラウン−6、18−クラウン−6、トリベンゾ−18−クラウン−6、テトラベンゾ−24−クラウン−8、ジベンゾ−26−クラウン−6などが挙げられる。
【0076】
前記クラウン化合物の捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、Li,Na、K等のアルカリ金属、Mg、Ca等のアルカリ土類金属などの各種金属イオン、NH4+、アルキルアンモニウムイオン、グアニジウムイオン、芳香族ジアゾニウムイオンなどが挙げられ、該クラウン化合物はこれらと錯体を形成する。また、該クラウン化合物の捕捉対象(前記ゲスト)としては、これら以外にも、酸性度が比較的大きいC−H(アセトニトリル、マロンニトリル、アジポニトリルなど)、N−H(アニリン、アミノ安息香酸、アミド、スルファミド誘導体など)、O−H(フェノール、酢酸誘導体など)ユニットを有する極性有機化合物などが挙げられ、該クラウン化合物はこれらと錯体を形成する。
【0077】
前記包接化合物の空洞の大きさ(径)としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選定することができるが、安定した分子認識能(ホスト−ゲスト結合能)を発揮し得る観点からは0.1nm〜2.0nmであるのが好ましい。
【0078】
前記包接化合物(ホスト)と前記ゲストとの混合比率(モル比)としては、該包接化合物の種類、該ゲストの種類などによって異なり一概には規定できないが、通常、包接化合物:ゲスト成分=1:0.1〜1:10であり、包接化合物:ゲスト成分=1:0.3〜1:3が好ましい。
【0079】
〔抗体〕
前記標的抗原と特異的に結合する抗体とは、前記標的抗原と特異的に抗原抗体反応を生じるものを意味し、多クローン性抗体であっても、単クローン性抗体であってもよく、更にはIgG、IgM、IgE、IgGのFab’、Fab、F(ab’)2なども使用することができる。
【0080】
前記抗体は、その由来を特に限定されるものではなく、また、抗体は常法により得ることができる。例えば、村松繁、他編、実験生物学講座14、免疫生物学、丸善株式会社、昭和60年、日本生化学会編、続生化学実験講座5、免疫生化学研究法、東京化学同人、1986年、日本生化学会編、新生化学実験講座12、分子免疫学III、抗原・抗体・補体、東京化学同人、1992年などに記載の方法に準じて調製することができる。
【0081】
具体的には、ウマ、ウシ、ヒツジ、ウサギ、ヤギ、ラット、マウスなどの哺乳動物等に抗原を投与し、免疫して得られる抗血清、腹水液をそのまま、あるいは従来公知の方法、例えば硫酸アンモニウム沈殿法などの塩析、セファデックスなどによるゲル濾過法、イオン交換クロマトグラフィー法、電気泳動法、透析、限外濾過法、アフィニティ・クロマトグラフィー法、高速液体クロマトグラフィー法などにより精製して用いることができる。
【0082】
また、抗原などで免疫した哺乳動物など(例えばマウス)の脾臓細胞と骨髄腫細胞(ミエローマ細胞)からハイブリッド細胞(ハイブリドーマ)を得て、モノクローナル抗体を作成し、これを特定成分と特異的に結合しうる物質として使用したり、例えば、特定成分が特異抗体などの場合そのモノクローナル抗体を修飾し、模擬特定成分として使用すると特異性がより向上するなどの点から好ましい。
【0083】
前記モノクローナル抗体は、ケラー及びミルシュタイン(Kohler,G.&Milstein,C.,Nature,256,495,(1975))などにより開示されたマウスミエローマ細胞を用いての細胞融合技術を利用して得られたモノクローナル抗体であってもよい。前記モノクローナル抗体は公知のものあるいは市販されているもののうちから選んで用いることもできる。
また、抗体は遺伝子組換え技術により作製することもできる。これら抗体はIgG、IgM、IgA、IgE、IgDといった各分画を用いることができる。またこれら酵素をトリプシン、パパイン、ペプシンなどの酵素により処理して、Fab、Fab’、F(ab’)2といった抗体フラグメントにして使用してもよい。さらにこれら抗体は単一で使用しても、複数の抗体を組み合わせて使用してもよい。
【0084】
また、前記抗体と特異的に抗原抗体反応を生じる標的抗原としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、血漿蛋白、リポ蛋白、糖蛋白、ポリペプチド、脂質、多糖類、リポ多糖類、核酸及び薬物から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これらの中でも血漿蛋白、腫瘍マーカー、アポ蛋白、ウイルス抗原、自己抗体、凝固・線溶因子、ホルモン、血中薬物、又はHLA抗原であることが好ましい。この標的抗原は、前記のような個々の目的における検出の最終的な標的である抗原である必要はなく、検出の最終的な標的である抗原と共に存在する抗原であってもよい。
【0085】
前記血漿蛋白としては、例えば、免疫グロブリン(IgG、IgA、IgM、IgD、IgE等)、補体成分(C3,C4,C5,C1q等)、CRP、α1−アンチトリプシン、α1−マイクログロブリン、β2−マイクログロブリン、ハプトグロビン、トランスフェリン、セルロプラスミン、フェリチンなどが挙げられる。
【0086】
前記腫瘍マーカーとしては、例えば、α−フェトプロテイン(AFP)、癌胎児性抗原(CEA)、CA19−9、CA125、CA15−3、SCC抗原、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)、PIVKA−II、γ−セミノプロテイン、TPA、エラスターゼI、神経特異エノラーゼ(NSE)、免疫抑制酸性蛋白(IAP)などが挙げられる。
【0087】
前記アポ蛋白としては、例えば、アポA−I、アポA−II、アポB、アポC−II、アポC−III、アポEなどが挙げられる。
【0088】
前記ウイルス抗原としては、例えば、B型肝炎ウイルス(HBV)関連抗原、C型肝炎ウイルス(HVC)関連抗原、HTLV−I、HIV、狂犬病ウイルス、インフルエンザウイルス、風疹ウイルスなどが挙げられる。
前記HCV関連抗原としては、例えば、HCVc100−3リコビナント抗原、pHCV−31リコビナント抗原、pHCV−34リコビナント抗原などが挙げられ、それらの混合物が好ましく使用できる。前記HIV関連抗原としては、ウイルス表面抗原などが挙げられ、例えば、HIV−I env.gp41リコビナント抗原、HIV−I env.gp120リコビナント抗原、HIV−I gag.p24リコビナント抗原、HIV−II env.p36リコビナント抗原などが挙げられる。
また、ウイルス以外の感染症としては、MRSA、ASO、トキソプラズマ、マイコプラズマ、STDなどが挙げられる。
【0089】
前記自己抗体としては、例えば、抗マイクロゾーム抗体、抗サイログロブリン抗体、抗核抗体、リュウマチ因子、抗ミトコンドリア抗体、ミエリン抗体などが挙げられる。
【0090】
前記凝固・線溶因子としては、例えば、フィブリノゲン、フィブリン分解産物(FDP)、プラスミノゲン、α2−プラスミンインヒビター、アンチトロンビンIII、β−トロンボグロブリン、第VIII因子、プロテインC、プロテインSなどが挙げられる。
【0091】
前記ホルモンとしては、例えば、下垂体ホルモン(LH、FSH、GH、ACTH、TSH、プロラクチン)、甲状腺ホルモン(T3、T4、サイログロブリン)、カルシトニン、副甲状腺ホルモン(PTH)、副腎皮質ホルモン(アルドステロン、コルチゾール)、性腺ホルモン(hCG、エストロゲン、テストステロン、hPL)、膵・消化管ホルモン(インスリン、C−ペプチド、グルカゴン、ガストリン)、その他(レニン、アンジオテンシンI,II、エンケファリン、エリスロポエチン)などが挙げられる。
【0092】
前記血中薬物としては、例えば、カルバマゼピン、プリミドン、バルプロ酸等の抗てんかん薬、ジゴキシン、キニジン、ジギトキシン、テオフィリン等の循環器疾患薬、ゲンタマイシン、カナマイシン、ストレプトマイシン等の抗生物質などが挙げられる。
【0093】
このような標的抗原を含む検体としては、例えば、細菌、ウイルス等の病原体、生体から分離された血液、唾液、組織病片等、或いは糞尿等の排泄物が挙げられる。更に、出生前診断を行う場合は、羊水中に存在する胎児の細胞や、試験管内での分裂卵細胞の一部を検体とすることもできる。また、これらの検体は直接、又は必要に応じて遠心分離操作等により沈渣として濃縮した後、例えば、酵素処理、熱処理、界面活性剤処理、超音波処理、或いはこれらの組み合わせ等による細胞破壊処理を予め施したものを使用することができる。
【0094】
また、本発明で使用される抗原は、遺伝子組換え法で産生されたもの、あるいは遺伝子組換えにより配列決定された遺伝子配列やペプチド配列を基に化学合成などされたものであることもできる。例えば遺伝子組換え技術を適用し、天然のウイルスや細胞から分子クローニングにより得られたDNA配列あるいは既に知られたゲノム配列から、酵素などを用いたり、化学合成により得られたDNA配列又は修飾DNA配列を、微生物あるいは動物、植物、昆虫などで発現させて得られたリコビナント抗原や、それらの情報を利用し液相法や固相法として知られたペプチド化学合成法により得られたペプチド又は改変ペプチドである。ペプチドの固相合成法は、一般的には自動ペプチド合成装置により好適に行うことができる。
【0095】
また、人体が毎日の食事から摂取した食物が最終的に消化、栄養吸収された後の排泄物である尿中、血液、大便、リンパ液及びその他の体液から選ばれる少なくとも1種に存在する疾病マーカーが好適である。この疾病マーカーは、検出の最終的な標的物質である必要はなく、検出の最終的な標的物質と共に存在する物質であってもよい。
【0096】
前記尿中に含まれる疾病マーカーとしては、例えば、タンパク質、尿糖、尿素、尿酸、ウロビリノーゲン、バニルマンデル酸、ヒドロキシインドール酢酸、ウロポルフィリン、コプロポルフィリン、カルシウム、ナトリウム、カリウム、塩素、リン、クレアチニン、アミラーゼ、ヒドロキシコルチコステロイド、ケトステロイド、アドレナリン、ノルアドレナリン、pH、比重などが挙げられる。
【0097】
前記血中に含まれる疾病マーカーとしては、例えば、タンパク質、アルブミン、糖、Na,K,Cl等の電解質、尿酸、コレステロール、中性脂肪、血漿蛋白、腫瘍マーカー、アポ蛋白、ウイルス、自己抗体、凝固・線溶因子、ホルモン、血中薬物、HLA抗原などが挙げられる。
【0098】
前記大便に含まれる疾病マーカーとしては、例えば、タンパク質、ビリルビン、ウロビリノーゲン、血液などが挙げられる。
【0099】
そして、得られる疾病マーカー認識能を有する捕捉構造体を前記棒状体と結合させることにより本発明の健康診断薬が得られる。
前記結合方法は、前記捕捉構造体と前記棒状体とに応じて適宜選択することができるが、エステル結合やアミド結合等の共有結合を利用する方法、タンパク質をアビジン標識し、ビオチン化した捕捉構造体と結合させる方法、タンパク質をストレプトアビジン標識し、ビオチン化した捕捉構造体と結合させる方法等の公知の方法が使用できる。
【0100】
前記共有結合法としては、ペプチド法、ジアゾ法、アルキル化法、臭化シアン活性化法、架橋試薬による結合法、ユギ(Ugi)反応を利用した固定化法、チオール・ジスルフィド交換反応を利用した固定化法、シッフ塩基形成法、キレート結合法、トシルクロリド法、生化学的特異結合法などが挙げられるが、好ましくは共有結合などのより安定した結合には、チオール基とマレイミド基の反応、ピリジルジスルフィド基とチオール基の反応、アミノ基とアルデヒド基の反応などを利用して行うことができ、公知の方法あるいは当該分野の当業者が容易になしうる方法、さらにはそれらを修飾した方法の中から適宜選択して適用できる。これらのなかでも、より安定した結合を形成できる化学的結合剤・架橋剤などが使用される。
【0101】
このような化学的結合剤・架橋剤としては、カルボジイミド、イソシアネート、ジアゾ化合物、ベンゾキノン、アルデヒド、過ヨウ素酸、マレイミド化合物、ピリジルジスルフィド化合物などが挙げられる。好ましい試薬としては、例えばグルタルアルデヒド、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソチオシアネート、N,N'−ポリメチレンビスヨードアセトアミド、N,N'−エチレンビスマレイミド、エチレングリコールビススクシニミジルスクシネート、ビスジアゾベンジジン、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、スクシンイミジル 3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、N−スクシンイミジル 4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)、N−スルホスクシンイミジル 4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート、N−スクシンイミジル (4−ヨードアセチル)アミノベンゾエート、N−スクシンイミジル 4−(1−マレイミドフェニル)ブチレート、イミノチオラン、S−アセチルメルカプトコハク酸無水物、メチル−3−(4'−ジチオピリジル)プロピオンイミデート、メチル−4−メルカプトブチリルイミデート、メチル−3−メルカプトプロピオンイミデート、N−スクシンイミジル−S−アセチルメルカプトアセテートなどが挙げられる。
【0102】
<健康診断薬>
前記健康診断薬は、前記捕捉構造体に前記捕捉対象物が捕捉されることにより、健康診断薬の光の屈折率、透過率、質量、粘弾性、などの性質が変化するため、この変化を検出することにより、捕捉対象物の検出に利用することができる。前記検出方法は、目的に合わせて適宜選択することができるが、例えば、肉眼により色の変化を観察する、分光光度計により波長の変化を検出する、水晶発振子や表面弾性波(SAW)素子等の周波数の発振を周波数カウンターにより検出する等の方法により、行うことができる。
【0103】
前記健康診断薬は単体でも用いることができるが、単体で用いる場合には、捕捉対象物を含む溶媒の表面や、前記溶媒と前記溶媒とは逆の親性を有する液体との境界に、単層状又は複層状に配向させて用いることが波長の変化を検出し易い点で好ましい。
また、例えば、ラングミュア・ブロジェット(LB)法などにより垂直配向させて基板上に単分子膜、二分子膜等の膜状に形成して用いることもできる。
【0104】
本発明の健康診断薬は、図1に示したように、被検物に添加されて使用され、棒状体1と、該棒状体1に結合し該被検液中に含まれる疾病マーカーを特異的に捕捉する捕捉構造体2とを有するものであり、この健康診断薬は単体でも用いることができるが、ラングミュア・ブロジェット(LB)法などにより垂直配向させて基板上に単分子膜、二分子膜等の膜状に形成して用いることが好ましい。
【0105】
本発明の健康診断薬は、視認性、識別性等の観点からは構造性発色を示し得るのが好ましい。
前記構造性発色は、モルフォ蝶翅の鱗粉の発色基本原理である多層薄膜干渉理論に基づき、前記膜に電場、磁場、温度、光(例えば自然光、赤外線光、紫外線光)などの外部刺激を与えたときに、該膜の厚みとその屈折率に応じて特定波長の光が反射する結果、該膜の表面で生ずる発色であり、前記外部刺激によりカメレオンの表皮のようにその色調が任意に制御され得る。
【0106】
ここで、前記構造性発色の原理について下記に示す。
図2及び図3に示すように、前記棒状体の膜に光が照射された際に該膜による干渉光の波長(λ)は、下記(1)に示す条件で強められ、下記(2)に示す条件で弱められる。
【数1】
【0107】
前記式(1)及び前記式(2)において、λは、干渉光の波長(nm)を意味し、αは、前記膜への光の入射角(度)を意味し、tは、単一の膜の厚み(nm)を意味し、lは、膜の数を意味し、nは、膜の屈折率を意味し、mは、1以上の整数を意味する。
【0108】
前記単一の膜の厚みとしては、810nm以下であるのが好ましく、10nm〜810nmであるのがより好ましい。
前記厚みを適宜変更することにより、前記構造性発色の色(波長)を変化させることができる。
【0109】
前記膜は、単分子膜であってもよいし、該単分子膜による積層膜であってもよい。
前記単分子膜又はそれによる前記積層膜は、例えば、ラングミュア−ブロジェット法(LB法)に従って形成することができ、その際、公知のLB膜形成装置(例えば、日本レーザー&エレクトロニクス・ラボラトリーズ社製のNL−LB400NK−MWCなどが好適に挙げられる)を使用することができる。
【0110】
前記単分子膜の形成は、例えば、親油性(疎水性)若しくは両親媒性の前記棒状体を水面上(水相上)に浮かした状態で、又は、親水性若しくは両親媒性の前記棒状体を油面上(油相上)に浮かした状態で、即ち図4に示すように、棒状体1を配向させた状態で押出部材60を用いて基板50上に形成することができる。この操作を繰り返すことにより、基板50上に該単分子膜を任意の数だけ積層した前記積層膜を形成することができる。なお、前記単分子膜又は前記積層膜が基板50に固定されていると、該単分子膜又は積層膜による構造性発色が安定して発現される点で好ましい。
【0111】
このとき、基板50としては、特に制限はなく、目的に応じてその材質、形状、大きさ等を適宜選択することができるが、その表面は、適宜、棒状体1が付着乃至結合し易くする目的で予め表面処理を行っておくのが好ましく、例えば、棒状体1(例えばα−ヘリックス・ポリペプチド)が親水性である場合には、オクタデシル・トリメチルシロキサンなどを用いた親水化処理等の表面処理を予め行っておくのが好ましい。
【0112】
なお、両親媒性の棒状体の単分子膜を形成する際に、該棒状体を油相又は水相上に浮かべた状態としては、図5に示す通り、前記水相又は油相上で、棒状体1の親油性部(疎水性部)1a同士が互いに隣接して配向し、親水性部1b同士が互いに隣接して配向している。
【0113】
以上は前記棒状体が単分子膜の平面方向に配向(横に寝た状態)した単分子膜又はそれによる積層膜の例であるが、該棒状体が単分子膜の厚み方向に配向(立設した状態)した単分子膜は、例えば、以下のようにして形成することができる。即ち、図6に示すように、まず、両親媒性の棒状体1(α−ヘリックス・ポリペプチド)を水面上(水相上)に浮かした状態(横に寝た状態)で、該水(水相)のpHを12程度のアルカリ性にする。すると、棒状体1(α−ヘリックス・ポリペプチド)における親水性部1bが、そのα−ヘリックス構造が解けてランダムな構造をとる。このとき、棒状体1(α−ヘリックス・ポリペプチド)における親油性部(疎水性部)1aはα−ヘリックス構造を維持したままである。次に、該水(水相)のpHを5程度の酸性にする。すると、棒状体1(α−ヘリックス・ポリペプチド)における親水性部1bが、再びα−ヘリックス構造をとるようになる。このとき、棒状体1(α−ヘリックス・ポリペプチド)に対し、該棒状体1(α−ヘリックス・ポリペプチド)に当接させた押圧部材をその側面からエアーの圧力で押すと、該棒状体1は該水(水相)に対し立設した状態のままその親水性部1bが水相中でその水面と略直交する方向に向かってα−ヘリックス構造をとるようになる。そして、図4を用いて上述したように、棒状体1(α−ヘリックス・ポリペプチド)を配向させた状態で押出部材60を用いて基板50上に押し出すことにより基板50上に単分子膜を形成することができる。この操作を繰り返すことにより、基板50上に該単分子膜を任意の数だけ積層した前記積層膜を形成することができる。
【0114】
前記構造性発色を示す単層膜又は積層膜を得ることができる前記健康診断薬としては、例えば、両親媒性である健康診断薬が挙げられ、棒状体が、αへリックス・ポリペプチドである両親媒性の健康診断薬が好ましい。
【0115】
本発明の健康診断薬は、疾病マーカーを捕捉すると沈殿又はゲル化するものであってもよい。
【0116】
本発明の健康診断薬の使用方法は、特に制限されないが、必要に応じて前処理された被検物を含む検体に前記健康診断薬を添加し、この健康診断薬の捕捉構造体が疾病マーカーを特異的に捕捉することによる構造性発色の色調の変化、又は波長変化を測定することにより検体中に疾病マーカーが存在することを迅速かつ高感度に検査することができる。
【0117】
また、前記健康診断薬を紙、プラスチック等の基材に固定し、この基材を被検液に浸すことによる構造性発色の色調の変化、又は波長変化を測定することができる。なお、本発明の健康診断薬は、安定な乳液のまま廃液などに添加し色調の変化、又は波長変化を測定することが好ましい。
【0118】
血液の場合は、採血後、遠心分離した血清を検体として用いることができる。また、大便の場合は、所定量の生理食塩水で希釈し、必要に応じてろ過したものを検体として用いることができる。
【0119】
具体的には、自宅の洋式トイレにおいて、便器に排泄した尿に膜状に配向させた健康診断薬を所定量添加した際の構造性発色による色調の変化を肉眼で確認することができる。この場合、健康診断薬の捕捉構造体として、棒状体に捕捉構造体としてクラウンエーテル化合物を結合したものを用いると尿中のNa、K、Cl、P、Ca等の電解質の存在を確認することができる。
【0120】
また、健康診断薬の捕捉構造体として、棒状体に捕捉構造体としてシクロデキストリンを結合したものを用いると、尿中の糖、タンパク質などの存在を確認することができる。
【0121】
また、健康診断薬の捕捉構造体として、棒状体に捕捉構造体として抗ヒトアルブミン抗体を結合したものを用いると、尿中のアルブミン量を測定することができる。
【0122】
また、健康診断薬の捕捉構造体として、棒状体に捕捉構造体として血漿蛋白、腫瘍マーカー、アポ蛋白、ウイルス、自己抗体、凝固・線溶因子、ホルモン、血中薬物、又はHLA抗原に対する抗体を結合させたものを用いると、これら血中の微量成分を精密に測定することができる。
【0123】
なお、本発明の健康診断薬は、毎日決まった時間に測定を行い、一定期間における検査結果の経過を確認することにより、健康状態を正確に把握できるものである。
【0124】
<健康診断装置>
本発明の第1の態様に係る健康診断装置は、長さが810nm以下である棒状体と、該棒状体に結合し被検液中に含まれる疾病マーカーを特異的に捕捉する捕捉構造体とを有し、かつ、膜状に配向させることにより構造性発色を示す健康診断薬と、該健康診断薬と試料とを接触させるための添加手段と、
疾病マーカーを捕捉した前記膜状健康診断薬の構造性発色による波長の変化を測定する発色波長測定手段とを備える。
【0125】
前記試料としては、疾病マーカーを含むか否かの検査対象となっているものであれば特に制限はなく、例えば血液、尿などの検体が挙げられる。
前記添加手段としては、一定量の健康診断薬を試料に添加する手段又は、一定量の試料を健康診断薬に添加する手段であれば、特に制限はないが、前記健康診断薬の量は、膜状に配向させることにより構造性発色を検出し易い量に設定することが好ましい。
【0126】
前記健康診断装置の好ましい態様のひとつとしては、前記健康診断薬が更に両親媒性であり、前記添加手段が、該健康診断薬を油相と共に、水性の試料に添加して健康診断薬と試料とを接触させる添加手段である健康診断装置である。
【0127】
この場合、健康診断薬が両親媒性であるため、油相と水相との界面で健康診断薬が垂直配向して膜状となり、構造性発色による波長の変化が測定し易い点で好ましい。
【0128】
本発明の第二の態様に係る健康診断装置は、前記本発明の健康診断薬を水晶発振子又は表面弾性波(SAW)素子に膜状に付着結合させてなるバイオセンサーと、該バイオセンサーを構成する健康診断薬の捕捉結合体に疾病マーカーが結合した際の質量変化又は粘弾性変化を周波数として発振する発振回路と、該発振回路から発振された前記振動の周波数を計測する周波数カウンターとを備えたものである。
【0129】
この場合、健康診断薬を水晶発振子又は表面弾性波(SAW)素子に対し単分子膜状に付着結合させるか、又は二分子膜状に付着結合させることが好ましい。また、周波数カウンターとしては、水晶発振子又は表面弾性波(SAW)素子からの周波数を正確に測定できるものであれば特に限定されない。
【0130】
前記水晶発振子は、薄い水晶板の表面と裏面とに金属電極を蒸着したものである。この水晶発振子20の一例を図7に示す。図7Aが平面図、図7Bが正面図である。水晶板21の表面に電極12が、裏面に電極14が蒸着されている。電極12、14からは左側に電極が伸びており、その左端の部分を図示省略したクリップ型のリード線を接続して、図示を省略している交流電源に接続する。ここで、電極12、14の間に交流電界を印加すると逆圧電効果により、水晶板21は一定周期の振動を発生する。
【0131】
前記水晶発振子20の表面には図示を省略しているが、健康診断薬膜が付着結合されている。この健康診断薬膜の捕捉結合体が疾病マーカーを捕捉し、該捕捉した疾病マーカーの質量だけ水晶発振子20の表面の質量が変化するため、共振周波数が変化する。
【0132】
ここで、厚み方向に垂直な平面に平行な振動をする水晶発振子20の表面に被覆した健康診断薬膜の質量変化と共振周波数の変化量には、下記式(3)の関係があり、質量変化を共振周波数の変化量で検出することができる。例えば、9MHzの共振周波数の振動子では(面積約0.5cm2)1μgの質量増加により、400Hzの周波数低下を得ることができる。
ΔF=−2.3×106(F2・ΔW/A) (3)但し、Fは水晶発振子の共振周波数(MHz)を意味し、ΔFは質量変化による共振周波数の変化量(Hz)を意味し、ΔWは膜の質量変化(g)を意味し、Aは膜の表面積(cm2)を意味する。
【0133】
図8に健康診断装置の一例を示す。水晶発振子20(表面に健康診断薬10が膜状に結合されている)は水晶発振子取付アームに取り付けられ恒温ヒートブロック23中の溶液に浸されている。恒温ヒートブロック23は溶液の温度を一定に保つためのものである。溶液は攪拌機(スターラー)24により攪拌される。また、サンプルインジェクション25は溶液中に計測すべき試料を注入する。発振回路26は、水晶発振子20の電極12、14に交流電界を印加して水晶発振子20を発振させる。発振回路26の発振周波数はカウンター27によりカウントされ、コンピュータ28により解析され、試料中の疾病マーカーの質量が表示される。
【0134】
このように、健康診断薬の捕捉結合体に疾病マーカーが特異的に捕捉されることにより、前記健康診断薬の質量が変化し、この質量変化を水晶発振子がとらえて周波数に変換するので、この周波数変化を周波数カウンターで測定することにより、特異的に疾病マーカーの存在の有無を検査することができる。
また、予め既知量の疾病マーカーを用いて検量線を作成することにより、試料中の検出又は定量すべき疾病マーカー濃度を検出又は定量することができる。
【0135】
次に、前記表面弾性波(SAW)素子とは、固体の表面に一対の櫛形電極を設け、電気信号を表面弾性波(固体表面を伝わる音波、超音波)に変換して、対向する電極まで伝達し、再び電気信号として出力する素子であり、刺激に対応して特定の周波数の信号を取り出すことができる。圧電効果を示すタンクル酸リチウム、ニオブ酸リチウムなどの強誘電体や、水晶、酸化亜鉛薄膜などが材料とされる。
【0136】
前記SAWは、媒質の表面に沿って伝搬し、媒質内部では指数関数的に減少する弾性波である。SAWは伝搬エネルギーが媒質表面に集中するので、媒質表面の変化を敏感に検出することができ、水晶発振子と同様に表面の質量変化により、SAW伝搬速度が変化する。一般に、SAW伝搬速度は発振回路を用いて発振周波数の変化として測定されている。発振周波数の変化は次式で与えられる。
Δf=(k1 +k2)f2hρ−k2f2h[(4μ/Vr 2)(λ+μ/λ+2μ)]
但し、k1 ,k2 は定数を意味し、hは固定化した膜の厚さを意味し、ρは膜の密度を意味し、λ,μは膜のLame定数を意味し、VrはSAW伝搬速度を意味する。
【0137】
図9は表面弾性波(SAW)素子の要部構成の一例を示す模式平面図である。この図9において、このSAW素子センサ30は、STカットの水晶製の共振周波数90MHzを持つSAW素子に、金電極38とその両端に櫛型電極36、及び点線で示した表面波伝播領域37に健康診断薬からなる膜(図示せず)を形成してあり、各櫛型電極36から高周波増幅器35を経て周波数カウンター39に接続され、試料中の疾病マーカーの質量が表示されるように構成されている。
【0138】
前記健康診断薬の捕捉結合体により試料中の疾病マーカーが特異的に捕捉されることにより、前記健康診断薬の質量又は粘弾性が変化し、この質量変化又は粘弾性変化を表面弾性波(SAW)素子がとらえ周波数に変換するので、この周波数変化を周波数カウンターで測定することにより、特異的に疾病マーカーの存在の有無を検査することができる。
【0139】
また、予め既知量の疾病マーカーを用いて検量線を作成することにより、試料中の検出又は定量すべき疾病マーカーを検出又は定量することができる。
【0140】
前記バイオセンサーを構成する水晶発振子又は表面弾性波(SAW)素子の電極上に健康診断薬を化学的に結合・固定する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができる。例えば、共有結合などの化学的結合により行うことができる。
【0141】
前記共有結合法としては、特に制限はなく、上記健康診断薬における捕捉結合体と棒状体との結合に用いたものと同じものを適宜選択して用いることができる。
具体的には、前記健康診断薬の末端にチオール基を導入したものを合成し、その溶液中に水晶発振子又は表面弾性波(SAW)素子を一定時間浸漬・反応させる。次いで該溶液から健康診断薬が化学的に結合・固定したバイオセンサーを取り出し、乾燥させる方法などが挙げられる。このチオール基としてはS−トリチル−3−メルカプトプロピルオキシ−β−シアノエチル−N,N−ジイソプロピルアミノホスホルアミダイドなどが包含され、該健康診断薬の末端へのチオール基の導入はホスホルアミダイド法により行うことができる。
【0142】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0143】
(実施例1)
下記式で示されるフェニルホウ酸(FB)を開始剤として用い、γ−メチル−L−グルタミン−N−カルボキシ酸無水物の重合を行い、下記式で示した分子認識能を有するFBを分子鎖末端に配したポリペプチド(PMG−FB)を調製した。
【0144】
【化2】
【化3】
このポリペプチドを用いて、テフロン(R)製トラフに形成したn−ヘキサン/水界面にPMG−FBのDMF溶液を展開し単分子膜を形成した。
【0145】
得られたPMG−FB分子の主鎖二次構造を石英板に累積したLB膜の円二色(CD)スペクトル測定により評価した結果、分子膜中でPMG−FB分子はα−ヘリックス構造をとっていることが確認できた。
【0146】
このポリペプチドを乳化分散させた健康診断薬を用いて、ブドウ糖水溶液を添加し、構造性発色による波長の変化を分光光度計を用いて測定したところ、ポリペプチドに、フェニルホウ酸(FB)を結合させてない健康診断薬に比べて顕著な波長の変化が見られた。
【0147】
(実施例2)
n−ヘキシルアミンを開始剤として用い、Nε−カルボベンゾキシ L−リジン Nα−カルボキシ酸無水物(LLZ−NCA)の重合を行い、続けてγ−メチル L−グルタメート N−カルボキシ酸無水物(MLG−NCA)の重合を行うことによりPLLZ部の重合度が2000、PMLG部の重合度が600のブロックコポリペプチドPLLZ2000−PMLG600を調製した。その後、PMLGセグメントを部分的に加水分解してL−グルタミン酸(LGA)とすることでα−ヘリックスコポリペプチドPLLZ250−P(MLG420/LGA180)を調製した。
このα−ヘリックスコポリペプチドにアビジンを導入し、ビオチンで標識したヒトアルブミン抗体とをビオチン−アビジン結合を介して結合させて健康診断薬を調製した。
【0148】
次に、該健康診断薬を水面上(水相上)に浮かした状態(横に寝た状態)で、該水(水相)のpHを12程度のアルカリ性にする。すると、該健康診断薬における親水性部が、そのα−ヘリックス構造が解けてランダムな構造をとる。このとき、該健康診断薬における疎水性部はα−ヘリックス構造を維持したままである。次に、該水(水相)のpHを5程度の酸性にする。すると、該健康診断薬における親水性部が、再びα−ヘリックス構造をとるようになる。このとき、該健康診断薬に対し、該健康診断薬に当接させた押圧部材をその側面からエアーの圧力で押すと、該健康診断薬は該水(水相)に対し立設した状態のままその親水性部が水相中でその水面と略直交する方向に向かってα−ヘリックス構造をとるようになる。そして、上述したように、該健康診断薬を配向させた状態で押出部材を用いて基板(板状体)上に押し出すことにより基板(板状体)上に該健康診断薬を立設させた単分子膜を形成することができる。なお、この操作は、L−B膜形成装置(日本レーザー&エレクトロニクス・ラボラトリー社製、NL−LB400NK−MWC)を使用して行った。この単分子膜の厚みを算出すると約16nmであった。
【0149】
得られた健康診断薬からなる単分子膜を形成した基板を、試験法による蛋白定性試験で陽性となった尿検体中に配置し、構造性発色による波長の変化を分光光度計を用いて測定したところ、α−ヘリックスコポリペプチドに上記ヒトアルブミン抗体を結合させてない健康診断薬に比べて顕著な波長の変化が見られた。
【0150】
(実施例3)
実施例2において、基板(板状体)上に健康診断薬が立設した単分子膜を構造単位とし、これを2層積層することにより、健康診断薬が二分子膜状に立設した基板を調製した。この基板を、試験法による蛋白定性試験で陽性となった尿検体中に配置し、構造性発色による波長の変化を分光光度計を用いて測定したところ、α−ヘリックスコポリペプチドに、上記ヒトアルブミン抗体を結合させてない健康診断薬に比べて顕著な波長の変化が見られた。
【0151】
(実施例4)
水晶発振子(ATカット、面積0.5cm2、基本周波数9MHz)に面積0.2cm2の金電極及び金メッキを施したリード線を取り付けたものを水晶発振子電極として用いた。
前記水晶発振子電極をアミノプロピルトリエトキシシラン(チッソ社製)を用い、この1体積%水溶液に室温で1時間浸漬した後、純水中で20kHzの超音波を30分間照射することによって洗浄し、余分なアミノプロピルトリエトキシシランを除去した。次に、水晶発振子電極を110℃の温度下で20分間加熱処理することによってアミノプロピルトリエトキシシランと水晶発振子の表面との間に共有結合を形成させた。
【0152】
次に、この水晶発振子を1体積%のグルタールアルデヒド水溶液に1時間浸漬することにより、グルタールアルデヒドとアミノプロピルトリエトキシシランとの間に共有結合を形成した後、水晶発振子を純水中で20kHzの超音波を30分間照射することによって洗浄し、余分なグルタールアルデヒドを除去した。
この水晶発振子電極を実施例2で作製した健康診断薬を含む100mlのpH7.2のリン酸緩衝液中に2時間浸漬した。これにより健康診断薬がグルタールアルデヒドを介して水晶発振子に固定された。未反応の健康診断薬は、pH7.2のリン酸緩衝液で洗浄することにより除去した。
【0153】
次に、作製した水晶発振子を図8に示した健康診断装置に取り付け、試験法による蛋白定性試験で陽性の尿検体及び陰性の尿検体中に配置し、10分間の周波数変化量を調べた。1分間以内に発振周波数の変化量がほぼ飽和になった。
その結果、試験法による蛋白定性試験が陰性の尿検体に比べて蛋白定性試験が陽性の尿検体は明らかな発振周波数の低下が見られた。
【0154】
(実施例5)
実施例4において、水晶発振子の代わりに図9に示したSTカットの発振周波数が10.3MHzの表面弾性波(SAW)素子を用いた以外は、実施例3と同様にして健康診断装置を組み立てた。
試験法による蛋白定性試験で陽性の尿検体及び陰性の尿検体中に配置し、10分間の周波数変化量を調べた。1分間以内に発振周波数の変化量がほぼ飽和になった。
その結果、試験法による蛋白定性試験が陰性の尿検体に比べて蛋白定性試験が陽性の尿検体は明らかな発振周波数の低下が見られた。
【0155】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、家庭のトイレなどにおいて、使用後直ちに自分の健康状態を判断することができるので、わざわざ診療機関に出向かなくても日常生活の中で簡便かつ迅速に検査を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の一実施例に係る健康診断薬の模式図である。
【図2】図2は、構造性発色の原理を説明する説明図である。
【図3】図3は、同模式図である。
【図4】図4は、本発明の機能性分子による単分子膜の形成を示す概略説明図である。
【図5】図5は、両親媒性の機能性分子が水(水相)上で配向している状態の一例を示す概略説明図である。
【図6】図6は、両親媒性の機能性分子を水(水相)上で立設させる方法の一例を示す概略説明図である。
【図7】図7は、水晶発振子の一例を示し、図7Aは平面図、図7Bは正面図である。
【図8】図8は、健康診断装置の一例を示す概略図である。
【図9】図9は、表面弾性波(SAW)素子を示す模式平面図である。
【符号の説明】
1 棒状体
2 捕捉構造体
10 健康診断薬
Claims (20)
- 被検液に添加されて該被検液上に膜を形成するようにして使用され、両親媒性のα−ヘリックス・ポリペプチドと、該両親媒性のα−ヘリックス・ポリペプチドに結合し該被検物中に含まれる疾病マーカーを特異的に捕捉する捕捉構造体とを有してなることを特徴とする健康診断薬。
- 両親媒性である請求項1に記載の健康診断薬。
- 捕捉構造体が棒状体の一端に結合された請求項1又は2に記載の健康診断薬。
- 捕捉構造体が棒状体の周側面に結合された請求項1から3のいずれかに記載の健康診断薬。
- 捕捉が物理吸着及び化学吸着のいずれかである請求項1から4のいずれかに記載の健康診断薬。
- 棒状体が、らせん状有機分子である請求項1から5のいずれかに記載の健康診断薬。
- らせん状有機分子がα−ヘリックス・ポリペプチド、DNA及びアミロースのいずれかである請求項6に記載の健康診断薬。
- 棒状体の長さが810nm以下である請求項1から7のいずれかに記載の健康診断薬。
- 構造性発色を示す請求項8に記載の健康診断薬。
- 捕捉構造体が疾病マーカーに親性がある請求項1から9のいずれかに記載の健康診断薬。
- 疾病マーカーが、尿中、血液、大便、リンパ液及びその他の体液から選ばれる少なくとも1種に存在する請求項1から10のいずれかに記載の健康診断薬。
- 疾病マーカーが、該疾病マーカーと共に存在する物質である請求項1から11のいずれかに記載の健康診断薬。
- 疾病マーカーを捕捉すると構造性発色する請求項1から12のいずれかに記載の健康診断薬。
- 疾病マーカーを捕捉すると沈殿する請求項1から12のいずれかに項記載の健康診断薬。
- 疾病マーカーを捕捉するとゲル化する請求項1から12のいずれかに記載の健康診断薬。
- 長さが810nm以下である両親媒性のα−ヘリックス・ポリペプチドと、該両親媒性のα−ヘリックス・ポリペプチドに結合し該被検物中に含まれる疾病マーカーを特異的に捕捉する捕捉構造体とを有し、かつ、膜状に配向させることにより構造性発色を示す健康診断薬と、該健康診断薬と試料とを接触させるための添加手段と、疾病マーカーを捕捉した前記膜状健康診断薬の構造性発色による波長変化を測定する発色波長測定手段とを備えた健康診断装置。
- 前記健康診断薬が更に両親媒性であり、前記添加手段が該健康診断薬を油相と共に、水性の試料に添加して健康診断薬と試料とを接触させる添加手段である請求項16に記載の健康診断装置。
- 棒状体と、該棒状体に結合し被検液中に含まれる疾病マーカーを特異的に捕捉する捕捉構造体とを有し、かつ、両親媒性である健康診断薬を水晶発振子又は表面弾性波(SAW)素子に膜状に付着結合させてなるバイオセンサーと、該バイオセンサーに疾病マーカーが捕捉された際の質量変化又は粘弾性変化を周波数として発振する発振回路と、該発振回路から発振された前記振動の周波数を計測する周波数カウンターとを備えたことを特徴とする健康診断装置。
- 前記健康診断薬を水晶発振子又は表面弾性波(SAW)素子に単分子膜状に付着させた請求項18に記載の健康診断装置。
- 前記健康診断薬を水晶発振子又は表面弾性波(SAW)素子に二分子膜状に付着させた請求項18に記載の健康診断装置。
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