JP3803787B2 - 発色測定センサー及びそれを用いた検査装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、構造性発色による発色を検知できる発色測定センサー及びそれを用いた検査装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
生体内において、振動現象は刺激の受容・伝達の際におこるパルス的な信号などにみられるが、これは生命活動を維持するための重要な現象の一つである。このような振動現象は、平衡から遠く離れた非平衡状態において形成される散逸構造としても興味深く、そのメカニズムを物理化学的に理解することを目的として種々の人工膜系においても考察されている。
【0003】
また、パルス的な応答を引き起こすイオンチャンネルなどの膜タンパク質において、機能発現はタンパク質の構造及び配向が重要であると考えられる。
【0004】
一方、近年、蛋白質を用いたバイオセンサーが種々研究開発されているが、いずれも感度、操作性、価格などの点で十分なものではなく、更なる改良が望まれていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような状況下、従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、数多くの標的物質の検出を効率よくかつ高感度に行うことができる構造性発色による発色を検知できる発色測定センサー及びそれを用いた検査装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。
<1> α−ヘリックス・ポリペプチド、DNA及びアミロースのいずれかを有する捕捉体の単分子層を積層してなる積層膜を基材に有することを特徴とする発色測定センサーである。
<2> α−ヘリックス・ポリペプチド、DNA及びアミロースのいずれかと、該α−ヘリックス・ポリペプチド、DNA及びアミロースのいずれかに結合し、標的物質を特異的に捕捉する捕捉構造体とを有する捕捉体の単分子層を積層してなる積層膜を基材に有することを特徴とする発色測定センサーである。
<3> α−ヘリックス・ポリペプチド、DNA及びアミロースのいずれかの長さが810nm以下である前記<1>から<2>のいずれかに記載の発色測定センサー。
<4> 単分子層を積層してなる積層膜による干渉光が、下記数式(1)の条件で強められ、下記数式(2)の条件で弱められる前記<1>から<3>のいずれかに記載の発色測定センサーである。
【数2】
但し、前記数式(1)及び数式(2)において、λは、干渉光の波長(nm)を示し、αは、膜への光の入射角(度)を示し、tは、膜の厚み(nm)を示し、lは、膜の積層数を示し、nは、膜の屈折率を示し、mは、1以上の整数を示す。
<5> 前記<1>から<4>のいずれかに記載の発色測定センサーと、該発色測定センサーに標的物質が付着又は捕捉された際の構造性発色による該発色測定センサーの発色波長変化又は色調変化を測定する色測定手段とを備えたことを特徴とする検査装置である。
<6> 標的物質が、タンパク質、脂質、糖、核酸及びこれらの複合体から選択
<7> 標的物質が、香料、麻酔薬、悪臭物質、芳香剤、医薬品、食品成分、ステロイドホルモン、色素及び苦味物質から選択される少なくとも1種である前記<5>又は<6>に記載の検査装置である。
【0007】
本発明の発色測定センサーは、両親媒性の棒状体を有する捕捉体を基材に膜状に付着結合させたものであり、この膜部分に標的物質が吸着されたことによる屈折率又は膜厚の変化に基づく構造性発色を該発色測定センサーの発色波長変化又は色調変化として検出するものである。
【0008】
また、本発明の発色測定センサーは、両親媒性の棒状体と、該棒状体に結合し、標的物質を特異的に捕捉する捕捉構造体とを有する捕捉体を基材に膜状に付着結合させたものであり、捕捉構造体が標的物質を捕捉したことによる屈折率又は膜厚の変化に基づく構造性発色を該発色測定センサーの発色波長変化又は色調変化として高感度に検出するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について更に詳しく説明する。第一発明に係る発色測定センサーを構成する捕捉体10は、図1に示したように、α−ヘリックス・ポリペプチド、DNA及びアミロースのいずれか1を有する。第二発明に係る発色測定センサーを構成する捕捉体は、図2に示したように、α−ヘリックス・ポリペプチド、DNA及びアミロースのいずれか1と、該α−ヘリックス・ポリペプチド、DNA及びアミロースのいずれかに結合し、捕捉対象物を特異的に捕捉する捕捉構造体2とを有する。なお、図1,2において、α−ヘリックス・ポリペプチド、DNA及びアミロースのいずれかの一端が疎水性部1a、他端が親水性部1bである。
【0013】
〔α−ヘリックス・ポリペプチド〕
前記α−ヘリックス・ポリペプチドは、ポリペプチドの二次構造の一つであり、アミノ酸3.6残基ごとに1回転(1らせんを形成)し、4番目ごとのアミノ酸のイミド基(−NH−)とカルボニル基(−CO−)との間に螺旋軸とほぼ平行な水素結合を作り、7アミノ酸を一単位として繰り返すことによりエネルギー的に安定な構造を有している。
【0014】
前記α−ヘリックス・ポリペプチドのらせん方向としては、特に制限はなく、右巻きであってもよいし、左巻きであってもよい。なお、天然には安定性の点から前記らせん方向が右巻きのものしか存在しない。
【0015】
前記α−ヘリックス・ポリペプチドを形成するアミノ酸としては、α−ヘリックス構造を形成可能であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、該α−ヘリックス構造を形成し易いものが好ましく、このようなアミノ酸としては、例えば、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、アルギニン(Arg)、リジン(Lys)、ヒスチジン(His)、アスパラギン(Asn)、グルタミン(Gln)、セリン(Ser)、スレオニン(Thr)、アラニン(Ala)、バリン(Val)、ロイシン(Leu)、イソロイシン(Ile)、システイン(Cys)、メチオニン(Met)、チロシン(Tyr)、フェニルアラニン(Phe)、トリプトファン(Trp)などが好適に挙げられる。これらは、1種単独で使用されてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0016】
前記α−ヘリックス・ポリペプチドの親性としては、前記アミノ酸を適宜選択することにより、親水性、疎水性、両親媒性のいずれにも変え得るが、前記親水性とする場合、前記アミノ酸としては、セリン(Ser)、スレオニン(Thr)、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、アルギニン(Arg)、リジン(Lys)、アスパラギン(Asn)、グルタミン(Gln)などが好適に挙げられ、前記疎水性とする場合、前記アミノ酸としては、フェニルアラニン(Phe)、トリプトファン(Trp)、イソロイシン(Ile)、チロシン(Tyr)、メチオニン(Met)、ロイシン(Leu)、バリン(Val)などが挙げられる。
【0017】
また、前記α−ヘリックス・ポリペプチドにおいては、該α−ヘリックスを形成する前記アミノ酸における、ペプチド結合を構成しないカルボキシル基を、エステル化することにより疎水性にすることができ、一方、該エステル化されたカルボキシル基を加水分解することにより親水性にすることができる。
【0018】
前記アミノ酸としては、L−アミノ酸、D−アミノ酸、これらの側鎖部分が修飾された誘導体などのいずれであってもよい。
【0019】
前記α−ヘリックス・ポリペプチドにおけるアミノ酸の結合個数(重合度)としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、10〜5000であるのが好ましい。
前記結合個数(重合度)が、10未満であると、ポリアミノ酸が安定なα−ヘリックスを形成できなくなることがあり、5000を超えると、垂直配向させることが困難となることがある。
【0020】
前記α−ヘリックス・ポリペプチドの具体例としては、例えば、ポリ(γ−メチル−L−グルタメート)、ポリ(γ−エチル−L−グルタメート)、ポリ(γ−ベンジル−L−グルタメート)、ポリ(L−グルタミン酸−γ−ベンジル)、ポリ(n−ヘキシル−L−グルタメート)等のポリグルタミン酸誘導体、ポリ(β−ベンジル−L−アスパルテート)等のポリアスパラギン酸誘導体、ポリ(L−ロイシン)、ポリ(L−アラニン)、ポリ(L−メチオニン)、ポリ(L−フェニルアラニン)、ポリ(L−リジン)−ポリ(γ−メチル−L−グルタメート)などのポリペプチド、が好適に挙げられる。
【0021】
前記α−ヘリックス・ポリペプチドとしては、市販のものであってもよいし、公知文献等に記載の方法に準じて適宜合成乃至調製したものであってもよい。
【0022】
前記α−ヘリックス・ポリペプチドの合成の一例として、ブロックコポリペプチド〔ポリ(L−リジン)25−ポリ(γ−メチル−L−グルタメート)60〕PLLZ25−PMLG60の合成をここで示すと次の通りである。即ち、ブロックコポリペプチド〔ポリ(L−リジン)25−ポリ(γ−メチル−L−グルタメート)60〕PLLZ25−PMLG60は、下記式で示したように、n−ヘキシルアミンを開始剤として用い、Nε−カルボベンゾキシ L−リジン Nα−カルボキシ酸無水物(LLZ−NCA)の重合を行い、続けてγ−メチル L−グルタメート N−カルボキシ酸無水物(MLG−NCA)の重合を行うことにより合成することができる。
【0023】
【化1】
【0024】
前記α−ヘリックス・ポリペプチドの合成は、上記方法に限られず、遺伝子工学的方法により合成することもできる。具体的には、前記目的とするポリペプチドをコードするDNAを組み込んだ発現ベクターにより宿主細胞を形質転換し、この形質転換体を培養すること等により製造することができる。
前記発現ベクターとしては、例えば、プラスミドベクター、ファージベクター、プラスミドとファージとのキメラベクター、などが挙げられる。
前記宿主細胞としては、大腸菌、枯草菌等の原核微生物、酵母菌等の真核微生物、動物細胞などが挙げられる。
【0025】
また、前記α−ヘリックス・ポリペプチドは、α−ケラチン、ミオシン、エピダーミン、フィブリノゲン、トロポマイシン、絹フィブロイン等の天然の繊維状蛋白からそのα−ヘリックス構造部分を切り出すことにより調製してもよい。
【0026】
〔DNA〕
前記DNAは、1本鎖DNAであってもよいが、安定に棒状を維持することができ、内部に他の物質をインターカレートできる等の点で2本鎖DNAであるのが好ましい。
前記2本鎖DNAは、一つの中心軸の回りに、右巻きらせん状の2本のポリヌクレオチド鎖が互いに逆方向に延びた状態で位置して形成された2重らせん構造を有する。
前記ポリヌクレオチド鎖は、アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)及びシトシン(C)の4種類の核酸塩基で形成されており、前記ポリヌクレオチド鎖において前記核酸塩基は、中心軸に対して垂直な平面内で互いに内側に突出した形で存在して、いわゆるワトソン−クリック型塩基対を形成し、アデニンに対してはチミンが、グアニンに対してはシトシンが、それぞれ特異的に水素結合している。その結果、前記2本鎖DNAにおいては、2本のポリペプチド鎖が互いに相補的に結合している。
【0027】
前記DNAは、公知のPCR(Polymerase Chain Reaction)法、LCR(Ligase chain Reaction)法、3SR(Self−sustained Sequence Replication)法、SDA(Strand Displacement Amplification)法等により調製することができるが、これらの中でもPCR法が好適である。
【0028】
また、前記DNAは、天然の遺伝子から制限酵素により酵素的に直接切り出して調製してもよいし、遺伝子クローニング法により調製してもよいし、化学合成法により調製してもよい。
【0029】
前記遺伝子クローニング法の場合、例えば、正常核酸を増幅したものをプラスミドベクター、ファージベクター、プラスミドとファージとのキメラベクター等から選択されるベクターに組み込み、大腸菌、枯草菌等の原核微生物、酵母等の真核微生物、動物細胞などから選択される増殖可能な任意の宿主に導入することにより前記DNAを大量に調製することができる。
【0030】
前記化学合成法としては、例えば、トリエステル法、亜リン酸法などのような、液相法又は不溶性の担体を使った固相合成法などが挙げられる。前記化学合成法の場合、公知の自動合成機等を用い、1本鎖のDNAを大量に調製した後、アニーリングを行うことにより、2本鎖DNAを調製することができる。
【0031】
〔アミロース〕
前記アミロースは、高等植物の貯蔵のためのホモ多糖類であるデンプンを構成するD−グルコースがα−1,4結合で直鎖状につながったらせん構造を有する多糖である。
前記アミロースの分子量としては、数平均分子量で、数千〜15万程度が好ましい。
前記アミロースは、市販のものであってもよいし、公知の方法に従って適宜調製したものであってもよい。
なお、前記アミロースは、その一部にアミロペクチンが含まれていても構わない。
【0032】
前記α−ヘリックス・ポリペプチド、DNA及びアミロースのいずれかの長さとしては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、構造性発色を生じさせる観点からは、810nm以下であるのが好ましく、10nm〜810nmであるのがより好ましい。
【0033】
前記α−ヘリックス・ポリペプチド、DNA及びアミロースのいずれかの径としては、特に制限はないが、前記α−ヘリックス・ポリペプチドの場合には0.8〜2.0nm程度である。
【0034】
前記α−ヘリックス・ポリペプチド、DNA及びアミロースのいずれかは、その全部が疎水性又は親水性であってもよく、また、その一部が疎水性又は親水性であり、他の部分が該一部と逆の親性を示す両親媒性であってもよい。前記α−ヘリックス・ポリペプチド、DNA及びアミロースのいずれかが前記両親媒性であると、油相−水相界面での配向、油層又は水相中での分散、等が容易である点で有利である。
【0035】
前記α−ヘリックス・ポリペプチド、DNA及びアミロースのいずれかの場合、疎水性を示す部分及び親水性を示す部分の数としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。また、この場合、疎水性を示す部分と親水性を示す部分とが交互に位置していてもよいし、いずれかの部分がα−ヘリックス・ポリペプチド、DNA及びアミロースのいずれかの一端部にのみ位置していてもよい。ここで、前記α−ヘリックス・ポリペプチド、DNA及びアミロースのいずれかの一例を図1に示す。図1において、α−ヘリックス・ポリペプチド、DNA及びアミロースのいずれか1は、その一端側に疎水性部1aを、他端側に親水性部1bを有する。
【0036】
前記α−ヘリックス・ポリペプチド、DNA及びアミロースのいずれかは、視認性、識別性等の観点からは構造性発色を示し得るのが好ましい。前記構造性発色は、モルフォ蝶翅の鱗粉の発色基本原理である多層薄膜干渉理論に基づき、前記膜に電場、磁場、温度、光(例えば自然光、赤外線光、紫外線光)などの外部刺激を与えたときに、該膜の厚みとその屈折率に応じて特定波長の光が反射する結果、該膜の表面で生ずる発色であり、前記外部刺激によりカメレオンの表皮のようにその色調が任意に制御され得る。
【0037】
ここで、前記構造性発色の原理について下記に示す。
図3及び図4に示すように、前記棒状体の膜に光が照射された際に該膜による干渉光の波長(λ)は、下記(1)に示す条件で強められ、下記(2)に示す条件で弱められる。
【0038】
【数3】
【0039】
前記式(1)及び前記式(2)において、λは、干渉光の波長(nm)を意味し、αは、前記膜への光の入射角(度)を意味し、tは、膜の厚み(nm)を意味し、lは、膜の数を意味し、nは、膜の屈折率を意味し、mは、1以上の整数を意味する。
【0040】
前記膜の厚みとしては、810nm以下であるのが好ましく、10nm〜810nmであるのがより好ましい。
前記厚みを適宜変更することにより、前記構造性発色の色(波長)を変化させることができる。
【0041】
前記膜は、単分子膜であってもよいし、該単分子膜による積層膜であってもよい。
前記単分子膜又はそれによる前記積層膜は、例えば、ラングミュア−ブロジェット法(LB法)に従って形成することができ、その際、公知のLB膜形成装置(例えば、日本レーザー&エレクトロニクス・ラボラトリーズ社製のNL−LB400NK−MWCなどが好適に挙げられる)を使用することができる。
【0042】
前記単分子膜の形成は、例えば、親油性(疎水性)若しくは両親媒性の前記α−ヘリックス・ポリペプチド、DNA及びアミロースのいずれかを水面上(水相上)に浮かした状態で、又は、親水性若しくは両親媒性の前記α−ヘリックス・ポリペプチド、DNA及びアミロースのいずれかを油面上(油相上)に浮かした状態で、即ち図5に示すように、α−ヘリックス・ポリペプチド、DNA及びアミロースのいずれか1を配向させた状態で押出部材60を用いて基板50上に形成することができる。この操作を繰り返すことにより、基板50上に該単分子膜を任意の数だけ積層した前記積層膜を形成することができる。なお、前記単分子膜又は前記積層膜が基板50に固定されていると、該単分子膜又は積層膜による構造性発色が安定して発現される点で好ましい。
【0043】
このとき、基板50としては、特に制限はなく、目的に応じてその材質、形状、大きさ等を適宜選択することができるが、その表面は、適宜、α−ヘリックス・ポリペプチド、DNA及びアミロースのいずれか1が付着乃至結合し易くする目的で予め表面処理を行っておくのが好ましく、例えばα−ヘリックス・ポリペプチド1が親水性である場合には、オクタデシル・トリメチルシロキサンなどを用いた親水化処理等の表面処理を予め行っておくのが好ましい。
【0044】
なお、α−ヘリックス・ポリペプチド、DNA及びアミロースのいずれかの単分子膜を形成する際に、該α−ヘリックス・ポリペプチド、DNA及びアミロースのいずれかを油相又は水相上に浮かべた状態としては、図6に示す通り、前記水相又は油相上で、α−ヘリックス・ポリペプチド、DNA及びアミロースのいずれか1の親油性部(疎水性部)1a同士が互いに隣接して配向し、親水性部1b同士が互いに隣接して配向している。
【0045】
以上は前記α−ヘリックス・ポリペプチド、DNA及びアミロースのいずれかが単分子膜の平面方向に配向(横に寝た状態)した単分子膜又はそれによる積層膜の例であるが、該α−ヘリックス・ポリペプチド、DNA及びアミロースのいずれかが単分子膜の厚み方向に配向(立設した状態)した単分子膜は、例えば、以下のようにして形成することができる。即ち、図7に示すように、まず、α−ヘリックス・ポリペプチド1を水面上(水相上)に浮かした状態(横に寝た状態)で、該水(水相)のpHを12程度のアルカリ性にする。すると、α−ヘリックス・ポリペプチド1における親水性部1bが、そのα−ヘリックス構造が解けてランダムな構造をとる。このとき、α−ヘリックス・ポリペプチド1における親油性部(疎水性部)1aはα−ヘリックス構造を維持したままである。次に、該水(水相)のpHを5程度の酸性にする。すると、α−ヘリックス・ポリペプチド1における親水性部1bが、再びα−ヘリックス構造をとるようになる。このとき、α−ヘリックス・ポリペプチド1に対し、該α−ヘリックス・ポリペプチド1に当接させた押圧部材をその側面からエアーの圧力で押すと、該棒状体1は該水(水相)に対し立設した状態のままその親水性部1bが水相中でその水面と略直交する方向に向かってα−ヘリックス構造をとるようになる。そして、図5を用いて上述したように、α−ヘリックス・ポリペプチド1を配向させた状態で押出部材60を用いて基板50上に押し出すことにより基板50上に単分子膜を形成することができる。この操作を繰り返すことにより、基板50上に該単分子膜を任意の数だけ積層した前記積層膜を形成することができる。
【0046】
<捕捉構造体>
前記捕捉構造体としては、前記捕捉対象体を捕捉することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0047】
前記捕捉の態様としては、特に制限はないが、物理吸着、化学吸着などが挙げられる。これらは、例えば、水素結合、分子間力(ファン・デル・ワールス力)、配位結合、イオン結合、共有結合などにより形成され得る。
【0048】
前記捕捉構造体の具体例としては、例えば、包接化合物(以下「ホスト」と称することがある)、抗体、核酸、ホルモンレセプター、レクチン、生理活性物質受容体などが好適に挙げられる。これらの中でも、任意の配線を容易に形成することができる点で、核酸が好ましく、1本鎖DNA、RNAがより好ましい。
【0049】
なお、これらの捕捉構造体の捕捉対象としては、前記包接化合物の場合にはゲスト(包接される成分)であり、前記抗体の場合には抗原であり、前記核酸の場合には核酸、チューブリン、キチン等であり、前記ホルモンレセプターの場合にはホルモンであり、前記レクチンの場合には糖等であり、前記生理活性物質受容体の場合には生理活性物質である。
【0050】
〔包接化合物〕
前記包接化合物としては、分子認識能(ホスト−ゲスト結合能)を有する限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、筒状(一次元)の空洞を有するもの、層状(二次元)の空洞を有するもの、かご状(三次元)の空洞を有するもの、などが好適に挙げられる。
【0051】
前記筒状(一次元)の空洞を有する包接化合物としては、例えば、尿素、チオ尿素、デオキシコール酸、ジニトロジフェニル、ジオキシトリフェニルメタン、トリフェニルメタン、メチルナフタリン、スピロクロマン、PHTP(ペルヒドロトリフェニレン)、セルロース、アミロース、シクロデキストリン(但し、溶液中では前記空洞がかご状)、フェニルホウ酸などが挙げられる。
【0052】
前記尿素の捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、n−パラフィン誘導体などが挙げられる。
【0053】
前記チオ尿素の捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、分岐状又は環状の炭化水素などが挙げられる。
【0054】
前記デオキシコール酸の捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、パラフィン類、脂肪酸、芳香族化合物などが挙げられる。
【0055】
前記ジニトロジフェニルの捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、ジフェニル誘導体などが挙げられる。
【0056】
前記ジオキシトリフェニルメタンの捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、パラフィン類、n−アルケン類、スクアレンなどが挙げられる。
【0057】
前記トリフェニルメタンの捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、パラフィン類などが挙げられる。
【0058】
前記メチルナフタリンの捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、C16までのn−パラフィン類、分岐状パラフィン類などが挙げられる。
【0059】
前記スピロクロマンの捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、パラフィン類などが挙げられる。
【0060】
前記PHTP(ペルヒドロトリフェニレン)の捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、クロロホルム、ベンゼン、各種高分子物質などが挙げられる。
【0061】
前記セルロースの捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、H2O、パラフィン類、CCl4、色素、ヨウ素などが挙げられる。
【0062】
前記アミロースの捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、脂肪酸、ヨウ素などが挙げられる。
【0063】
前記シクロデキストリンは、デンプンのアミラーゼによる分解で生成する環状のデキストリンであり、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリンの3種が知られている。本発明においては、前記シクロデキストリンとして、これらの水酸基の一部を他の官能基、例えば、アルキル基、アリル基、アルコキシ基、アミド基、スルホン酸基などに変えたシクロデキストリン誘導体も含まれる。
【0064】
前記シクロデキストリンの捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、チモール、オイゲノール、レゾルシン、エチレングリコールモノフェニルエーテル、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン等のフェノール誘導体、サリチル酸、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル等の安息香酸誘導体及びそのエステル、コレステロール等のステロイド、アスコルビン酸、レチノール、トコフェロール等のビタミン、リモネン等の炭化水素類、イソチオシアン酸アリル、ソルビン酸、ヨウ素分子、メチルオレンジ、コンゴーレッド、2−p−トルイジニルナフタレン−6−スルホン酸カリウム塩(TNS)などが挙げられる。
【0065】
前記フェニルホウ酸の捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、ブドウ糖等が挙げられる。
【0066】
前記層状(二次元)の包接化合物としては、例えば、粘土鉱物、グラファイト、スメクタイト、モンモリロナイト、ゼオライトなどが挙げられる。
【0067】
前記粘土鉱物の捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、親水性物質、極性化合物などが挙げられる。
【0068】
前記グラファイトの捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、O、HSO4 −、ハロゲン、ハロゲン化物、アルカリ金属などが挙げられる。
【0069】
前記モンモリロナイトの捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、ブルシン、コデイン、o−フェニレンジアミン、ベンジジン、ピペリジン、アデニン、グイアニン及びこれらのリポシドなどが挙げられる。
【0070】
前記ゼオライトの捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、H2Oなどが挙げられる。
【0071】
前記かご状(三次元)の包接化合物としては、例えば、ヒドロキノン、気体水化物、トリ−o−チモチド、オキシフラバン、ジシアノアンミンニッケル、クリプタンド、カリックスアレン、クラウン化合物などが挙げられる。
【0072】
前記ヒドロキノンの捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、HCl、SO2、アセチレン、希ガス元素などが挙げられる。
【0073】
前記気体水化物の捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、ハロゲン、希ガス元素、低級炭化水素などが挙げられる。
【0074】
前記トリ−o−チモチドの捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、シクロヘキサン、ベンゼン、クロロホルムなどが挙げられる。
【0075】
前記オキシフラバンの捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、有機塩基などが挙げられる。
【0076】
前記ジシアノアンミンニッケルの捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、ベンゼン、フェノールなどが挙げられる。
【0077】
前記クリプタンドの捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、NH4+、各種金属イオンなどが挙げられる。
【0078】
前記カリックスアレンは、フェノールとホルムアルデヒドとから適当な条件で合成されるフェノール単位をメチレン基で結合した環状オリゴマーであり、4〜8核体が知られている。これらの内、p−t−ブチルカリックスアレン(n=4)の捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、クロロホルム、ベンゼン、トルエンなどが挙げられる。p−t−ブチルカリックスアレン(n=5)の捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、イソプロピルアルコール、アセトンなどが挙げられる。p−t−ブチルカリックスアレン(n=6)の捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、クロロホルム、メタノールなどが挙げられる。p−t−ブチルカリックスアレン(n=7)の捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、クロロホルムなどが挙げられる。
【0079】
前記クラウン化合物としては、電子供与性のドナー原子として酸素を持つクラウンエーテルのみではなく、そのアナログとして窒素、硫黄などのドナー原子を環構造構成原子として持つ大環状化合物を含み、また、クリプタンドを代表する2個以上の環よりなる複環式クラウン化合物も含まれ、例えば、シクロヘキシル−12−クラウン−4、ジベンゾ−14−クラウン−4、t−ブチルベンゾ−15−クラウン−5、ジベンゾ−18−クラウン−6、ジシクロヘキシル−18−クラウン−6、18−クラウン−6、トリベンゾ−18−クラウン−6、テトラベンゾ−24−クラウン−8、ジベンゾ−26−クラウン−6などが挙げられる。
【0080】
前記クラウン化合物の捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、Li,Na、K等のアルカリ金属、Mg、Ca等のアルカリ土類金属などの各種金属イオン、NH4+、アルキルアンモニウムイオン、グアニジウムイオン、芳香族ジアゾニウムイオンなどが挙げられ、該クラウン化合物はこれらと錯体を形成する。また、該クラウン化合物の捕捉対象(前記ゲスト)としては、これら以外にも、酸性度が比較的大きいC−H(アセトニトリル、マロンニトリル、アジポニトリルなど)、N−H(アニリン、アミノ安息香酸、アミド、スルファミド誘導体など)、O−H(フェノール、酢酸誘導体など)ユニットを有する極性有機化合物などが挙げられ、該クラウン化合物はこれらと錯体を形成する。
【0081】
前記包接化合物の空洞の大きさ(径)としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選定することができるが、安定した分子認識能(ホスト−ゲスト結合能)を発揮し得る観点からは0.1nm〜2.0nmであるのが好ましい。
【0082】
前記包接化合物(ホスト)と前記ゲストとの混合比率(モル比)としては、該包接化合物の種類、該ゲストの種類などによって異なり一概には規定できないが、通常、包接化合物:ゲスト成分=1:0.1〜1:10であり、包接化合物:ゲスト成分=1:0.3〜1:3が好ましい。
【0083】
〔抗体〕
前記抗体としては、標的抗原(捕捉対象物)と特異的に抗原抗体反応を生じるものであれば特に制限されず、多クローン性抗体であっても、単クローン性抗体であってもよく、更にはIgG、IgM、IgE、IgGのFab’、Fab、F(ab’)2なども使用することができる。
【0084】
前記標的抗原としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、血漿蛋白、腫瘍マーカー、アポ蛋白、ウイルス、自己抗体、凝固・線溶因子、ホルモン、血中薬物、HLA抗原などが挙げられる。
【0085】
前記標的抗原としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、血漿蛋白、腫瘍マーカー、アポ蛋白、ウイルス、自己抗体、凝固・線溶因子、ホルモン、血中薬物、HLA抗原などが挙げられる。
【0086】
前記血漿蛋白としては、例えば、免疫グロブリン(IgG,IgA,IgM,IgD,IgE)、補体成分(C3,C4,C5,C1q)、CRP、α1−アンチトリプシン、α1−マイクログロブリン、β2−マイクログロブリン、ハプトグロビン、トランスフェリン、セルロプラスミン、フェリチンなどが挙げられる。
【0087】
前記腫瘍マーカーとしては、例えば、α−フェトプロテイン(AFP)、癌胎児性抗原(CEA)、CA19−9、CA125、CA15−3、SCC抗原、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)、PIVKA−II、γ−セミノプロテイン、TPA、エラスターゼI、神経特異エノラーゼ(NSE)、免疫抑制酸性蛋白(IAP)などが挙げられる。
【0088】
前記アポ蛋白としては、例えば、アポA−I、アポA−II、アポB、アポC−II、アポC−III、アポEなどが挙げられる。
【0089】
前記ウイルス抗原としては、例えば、B型肝炎ウイルス(HBV)関連抗原、C型肝炎ウイルス(HVC)関連抗原、HTLV−I、HIV、狂犬病ウイルス、インフルエンザウイルス、風疹ウイルスなどが挙げられる。
前記HCV関連抗原としては、例えば、HCVc100−3リコビナント抗原、pHCV−31リコビナント抗原、pHCV−34リコビナント抗原などが挙げられ、それらの混合物が好ましく使用できる。前記HIV関連抗原としては、ウイルス表面抗原などが挙げられ、例えば、HIV−I env.gp41リコビナント抗原、HIV−I env.gp120リコビナント抗原、HIV−I gag.p24リコビナント抗原、HIV−II env.p36リコビナント抗原などが挙げられる。
また、ウイルス以外の感染症としては、MRSA、ASO、トキソプラズマ、マイコプラズマ、STDなどが挙げられる。
【0090】
前記自己抗体としては、例えば、抗マイクロゾーム抗体、抗サイログロブリン抗体、抗核抗体、リュウマチ因子、抗ミトコンドリア抗体、ミエリン抗体などが挙げられる。
【0091】
前記凝固・線溶因子としては、例えば、フィブリノゲン、フィブリン分解産物(FDP)、プラスミノゲン、α2−プラスミンインヒビター、アンチトロンビンIII、β−トロンボグロブリン、第VIII因子、プロテインC、プロテインSなどが挙げられる。
【0092】
前記ホルモンとしては、例えば、下垂体ホルモン(LH、FSH、GH、ACTH、TSH、プロラクチン)、甲状腺ホルモン(T3、T4、サイログロブリン)、カルシトニン、副甲状腺ホルモン(PTH)、副腎皮質ホルモン(アルドステロン、コルチゾール)、性腺ホルモン(hCG、エストロゲン、テストステロン、hPL)、膵・消化管ホルモン(インスリン、C−ペプチド、グルカゴン、ガストリン)、その他(レニン、アンジオテンシンI,II、エンケファリン、エリスロポエチン)などが挙げられる。
【0093】
前記血中薬物としては、例えば、カルバマゼピン、プリミドン、バルプロ酸等の抗てんかん薬、ジゴキシン、キニジン、ジギトキシン、テオフィリン等の循環器疾患薬、ゲンタマイシン、カナマイシン、ストレプトマイシン等の抗生物質などが挙げられる。
【0094】
このような標的抗原を含む検体としては、例えば、細菌、ウイルス等の病原体、生体から分離された血液、唾液、組織病片等、或いは糞尿等の排泄物が挙げられる。更に、出生前診断を行う場合は、羊水中に存在する胎児の細胞や、試験管内での分裂卵細胞の一部を検体とすることもできる。また、これらの検体は直接、又は必要に応じて遠心分離操作等により沈渣として濃縮した後、例えば、酵素処理、熱処理、界面活性剤処理、超音波処理、或いはこれらの組み合わせ等による細胞破壊処理を予め施したものを使用することができる。
【0095】
<標的物質>
前記標的物質は、特に制限されず目的に応じて適宜選択することができるが、タンパク質、脂質、糖、核酸及びこれらの複合体から選択される少なくとも1種であることが好ましく、例えば、香料、麻酔薬、悪臭物質、芳香剤、医薬品、食品成分、ステロイドホルモン、色素及び苦味物質から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0096】
前記香料としては、例えば、ビャクダン、ちょうじ、ぢんこう、きゃら、だいういきょう、にゅうこう、けいひ、じゃこう、りゅうぜんこうなどが挙げられる。
【0097】
前記麻酔薬としては、例えば、メタノール、エタノール、アセトン、1−プロパノール、ブタノン、1−ブタノール、ジエチルエーテル、パラアルデヒド、ベンジルアルコール、クロロホルム、1−ヘキサノール、ハロエタン、メトキシフルラン、1−オクタノール、ペンタン、1−ノナノール、ヘキサン、1−デカノールなどが挙げられる。
【0098】
前記悪臭物質としては、例えば、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、イソプロピルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン等のアミン類、酢酸エチル、安息香酸エチル、クロル酢酸エチル、アクリル酸メチル等のエステル類、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸等のカルボン酸類、MIBK、MEK、シクロヘキサノン、アセトン、アセトフェノン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族などが挙げられる。
【0099】
前記色素としては、例えば、カロテノイド系色素、フラボノイド系色素、アントシアニン系色素、アントラキノン系色素、ベタシアニン系色素、ジケトン系色素、アザフィロン系色素、ポルフィリン系色素などが挙げられる。
【0100】
前記ステロイドホルモンとしては、例えば、アルドステロン、アンドロステンジオン、コルチコステロン、コルチゾール、プロゲステロン、テストステロンなどが挙げられる。
【0101】
前記苦味物質としては、例えば、ストリキニーネ、キニーネ、ニコチン、フェニルチオウレア、パパペリン、カフェイン、ナリンギン、オクタアセチルショ糖などが挙げられる。
【0102】
ここで、前記α−ヘリックス・ポリペプチド、DNA及びアミロースのいずれかと、捕捉構造体2とを結合させた状態の一例を図2に示す。図2において、捕捉体10は、そのα−ヘリックス・ポリペプチド、DNA及びアミロースのいずれか1の一端側に疎水性部1aを、他端側に親水性部1bを有すると共に、捕捉構造体2をα−ヘリックス・ポリペプチド、DNA及びアミロースのいずれか1の一端に結合させている。図示を省略しているが、捕捉構造体2はα−ヘリックス・ポリペプチド、DNA及びアミロースのいずれか1の周側面に複数個結合させることもできる。
【0103】
前記結合方法としては、前記捕捉構造体と前記棒状体とに応じて適宜選択することができるが、エステル結合やアミド結合等の共有結合を利用する方法、タンパク質をアビジン標識し、ビオチン化した捕捉構造体と結合させる方法、タンパク質をストレプトアビジン標識し、ビオチン化した捕捉構造体と結合させる方法等の公知の方法が使用できる。
【0104】
前記共有結合法としては、ペプチド法、ジアゾ法、アルキル化法、臭化シアン活性化法、架橋試薬による結合法、ユギ(Ugi)反応を利用した固定化法、チオール・ジスルフィド交換反応を利用した固定化法、シッフ塩基形成法、キレート結合法、トシルクロリド法、生化学的特異結合法などが挙げられるが、好ましくは共有結合などのより安定した結合には、チオール基とマレイミド基の反応、ピリジルジスルフィド基とチオール基の反応、アミノ基とアルデヒド基の反応などを利用して行うことができ、公知の方法あるいは当該分野の当業者が容易になしうる方法、さらにはそれらを修飾した方法の中から適宜選択して適用できる。これらのなかでも、より安定した結合を形成できる化学的結合剤・架橋剤などが使用される。
【0105】
このような化学的結合剤・架橋剤としては、カルボジイミド、イソシアネート、ジアゾ化合物、ベンゾキノン、アルデヒド、過ヨウ素酸、マレイミド化合物、ピリジルジスルフィド化合物などが挙げられる。好ましい試薬としては、例えばグルタルアルデヒド、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソチオシアネート、N,N’−ポリメチレンビスヨードアセトアミド、N,N’−エチレンビスマレイミド、エチレングリコールビススクシニミジルスクシネート、ビスジアゾベンジジン、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、スクシンイミジル 3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、N−スクシンイミジル 4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)、N−スルホスクシンイミジル 4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート、N−スクシンイミジル (4−ヨードアセチル)アミノベンゾエート、N−スクシンイミジル 4−(1−マレイミドフェニル)ブチレート、イミノチオラン、S−アセチルメルカプトコハク酸無水物、メチル−3−(4’−ジチオピリジル)プロピオンイミデート、メチル−4−メルカプトブチリルイミデート、メチル−3−メルカプトプロピオンイミデート、N−スクシンイミジル−S−アセチルメルカプトアセテートなどが挙げられる。
【0106】
そして、得られる捕捉体を基材に膜状に結合させることにより、本発明の発色測定センサーが得られる。
【0107】
<発色測定センサー>前記第一発明に係る発色測定センサーは、図1に示したα−ヘリックス・ポリペプチド、DNA及びアミロースのいずれか1を有する捕捉体10を基材に膜状に付着結合させたものである。前記第二発明に係る発色測定センサーは、図2に示したα−ヘリックス・ポリペプチド、DNA及びアミロースのいずれか1と、該α−ヘリックス・ポリペプチド、DNA及びアミロースのいずれか1に結合し、標的物質を特異的に捕捉する捕捉構造体2とを有する捕捉体10を基材に膜状に付着結合させたものである。この場合、膜状は単分子膜状であってもよく、又は単分子膜の積層膜であっても構わない。
【0108】
また、捕捉体が両親媒性であるため、油相と水相との界面で捕捉体が垂直配向して膜状となり、構造性発色による波長の変化が測定し易い点で好ましい。
【0109】
ここで、前記基材としては、特に制限されず、金蒸着基板、シリコン基板、ガラス基板などを用いることができる。
【0110】
前記発色測定センサーを構成する捕捉体を基板に膜状に付着結合させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができる。例えば、ラングミュア・ブロジェット(LB)法、共有結合などの化学的結合により行うことができる。
【0111】
前記共有結合法としては、特に制限はなく、上記捕捉結合体と棒状体との結合に用いたものと同じものを適宜選択して用いることができる。
【0112】
<検査装置>
本発明の検査装置は、前記発色測定センサーと、該発色測定センサーに標的物質が付着又は捕捉された際の構造性発色による該発色測定センサーの発色波長変化又は色調変化を測定する色測定手段とを備えたものである。かかる検査装置の一例を図8に示す。なお、図8中8は、発色測定センサーが結合される基材である。
この場合、色測定手段としては、構造性発色による波長変化又は色調変化を測定することができるものであれば特に制限されず、例えば分光光度計、肉眼などによることができる。
【0113】
前記発色測定センサーの単分子膜又は単分子膜を積層した積層膜に対し、標的物質が付着するか、或いは膜状に形成された発色測定センサーの捕捉構造体に標的物質が特異的に捕捉結合することにより、膜の屈折率又は長さが変化し、前記構造性発色により波長又は色調が変化するので、この波長変化又は色調変化を色測定手段、例えば分光光度計で測定することにより、特異的に標的物質の存在の有無を検査することができる。
【0114】
また、予め既知量の標的物質を用いて検量線を作成することにより、試料中の検出又は定量すべき標的物質濃度を検出又は定量することができる。
【0115】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0116】
(実施例1)
α−ヘリックス・ポリペプチドの単分子膜を基板上に形成し、更に該単分子膜上に同じ単分子膜を積層して積層膜を形成し、本発明の発色測定センサーを作製した。
この発色測定センサーにおいては、後述のように構造性発色を示し、また、標的物質を捕捉することにより、色調変化が確認された。
【0117】
前記α−ヘリックス・ポリペプチドとしては、グルタミン酸のカルボキシル基の水素原子をn−ヘキシル基で置換したものをモノマーユニットとするポリ(n−ヘキシル L−グルタメート(以下「PHeLG」と表記することがある))を使用した。該PHeLGは、ベンジルアミンを重合開始剤として用いたL−グルタミン酸・γ−メチルエステルの重合反応により得られ、その重合度は1H−NMR測定によると114であった。前記基板は、オクタデシル・トリメトキシシラン(東京化成工業社製)を用いて表面処理したシリコン基板(信越化学工業社製)を使用した。前記単分子膜は、L−B膜形成装置(日本レーザー&エレクトロニクス・ラボラトリー社製、NL−LB400NK−MWC)を使用して形成した。なお。前記PHeLGにおいて、α−ヘリックスの螺旋のピッチは0.15(nm/アミノ酸残基)であり、α−ヘリックスの直径は1.5(nm)であった。
【0118】
この単分子膜を120積層した積層膜について、FT−IRスペクトルを測定したところ、4つのピークが得られた。1つは、側鎖のC=O基に基づく1738cm−1のピークである。もう1つは、α−ヘリックス構造中のアミド基Iに基づく1656cm−1の強いピークである。もう1つは、β−構造中のアミド基Iに基づく1626cm−1の小さく弱いピークである。最後の1つは、α−ヘリックス構造中のアミド基IIに基づく1551cm−1のピークである。このFT−IRスペクトルの測定結果から、前記PHeLG分子は前記単分子膜中でα−ヘリックス構造を維持していることが確認された。
【0119】
前記PHeLGによる単分子膜は、該PHeLGによる単分子膜20層を積層した時の厚みが32mmであったので、1層当たりの厚みを算出すると1.6nmであった。
【0120】
次に、この単分子膜が40〜50層積層された積層膜は、茶色の構造性発色を示し、該単分子膜が60〜70層積層した積層膜は、暗青色(ダークブルー、濃青色)を示し、該単分子膜を80〜100層積層した積層膜は、明青色(ライトブルー、薄青色)を示し、該単分子膜を120層付近まで積層した積層膜は、黄色を示し、該単分子膜を160層まで積層した積層膜は、赤紫色を示すことが確認された。
【0121】
単分子膜を60〜70層積層した発色測定センサーに標的物質としてβ−ヨノン(匂い物質)のエタノール溶液を添加したところ、色調が暗青色(ダークブルー、濃青色から、明青色(ライトブルー、薄青色)に変化した。
【0122】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、香料、麻酔薬、悪臭物質、芳香剤、医薬品、食品成分、ステロイドホルモン、色素、苦味物質等の幅広い標的物質を高感度に簡易かつ確実に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る捕捉体の模式図である。
【図2】別の捕捉体の模式図である。
【図3】構造性発色の原理を説明する説明図である。
【図4】同模式図である。
【図5】本発明の機能性分子による単分子膜の形成を示す概略説明図である。
【図6】両親媒性の機能性分子が水(水相)上で配向している状態の一例を示す概略説明図である。
【図7】両親媒性の機能性分子を水(水相)上で立設させる方法の一例を示す概略説明図である。
【図8】本発明の検査装置の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
1 棒状体
2 捕捉構造体
10 捕捉体
Claims (7)
- α−ヘリックス・ポリペプチド、DNA及びアミロースのいずれかを有する捕捉体の単分子層を積層してなる積層膜を基材に有することを特徴とする発色測定センサー。
- α−ヘリックス・ポリペプチド、DNA及びアミロースのいずれかと、該α−ヘリックス・ポリペプチド、DNA及びアミロースのいずれかに結合し、標的物質を特異的に捕捉する捕捉構造体とを有する捕捉体の単分子層を積層してなる積層膜を基材に有することを特徴とする発色測定センサー。
- α−ヘリックス・ポリペプチド、DNA及びアミロースのいずれかの長さが810nm以下である請求項1から2のいずれかに記載の発色測定センサー。
- 単分子層を積層してなる積層膜による干渉光が、下記数式(1)の条件で強められ、下記数式(2)の条件で弱められる請求項1から3のいずれかに記載の発色測定センサー。
- 請求項1から4のいずれかに記載の発色測定センサーと、該発色測定センサーに標的物質が付着又は捕捉された際の構造性発色による該発色測定センサーの発色波長変化又は色調変化を測定する色測定手段とを備えたことを特徴とする検査装置。
- 標的物質が、タンパク質、脂質、糖、核酸及びこれらの複合体から選択される少なくとも1種である請求項5に記載の検査装置。
- 標的物質が、香料、麻酔薬、悪臭物質、芳香剤、医薬品、食品成分、ステロイドホルモン、色素及び苦味物質から選択される少なくとも1種である請求項5又は6に記載の検査装置。
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