JP3911628B2 - 振動又は粘性測定センサー及びそれを用いた検査装置 - Google Patents

振動又は粘性測定センサー及びそれを用いた検査装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、振動又は粘性測定センサー及びそれを用いた検査装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
生体内において、振動現象は刺激の受容・伝達の際におこるパルス的な信号などにみられるが、これは生命活動を維持するための重要な現象の一つである。このような振動現象は、平衡から遠く離れた非平衡状態において形成される散逸構造としても興味深く、そのメカニズムを物理化学的に理解することを目的として種々の人工膜系においても考察されている。
【0003】
また、パルス的な応答を引き起こすイオンチャンネルなどの膜タンパク質において、機能発現はタンパク質の構造及び配向が重要であると考えられる。
【0004】
一方、近年、蛋白質を用いたバイオセンサーが種々研究開発されているが、いずれも感度、操作性、価格などの点で十分なものではなく、更なる改良が望まれていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような状況下、従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明は、簡易かつ確実に標的物質を高感度で検出することができる振動又は粘性測定センサー及びそれを用いた検査装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
<1> 液中の標的物質を特異的に捕捉するシクロデキストリンが一端に結合された両親媒性のα−ヘリックス・ポリペプチドを水晶発振子又は表面弾性波(SAW)素子に付着結合させたことを特徴とする振動又は粘性測定センサーである。
<2> 前記<1>に記載の振動又は粘性測定センサーと、該センサーに標的物質が付着又は捕捉された際の重量変化又は粘弾性変化を周波数として発振する発振回路と、該発振回路から発振された周波数を計測する周波数カウンターとを備えたことを特徴とする検査装置である。
<3> 標的物質が、タンパク質、脂質、糖、核酸及びこれらの複合体から選択される少なくとも1種である前記<2>に記載の検査装置である。
<4> 標的物質が、香料、麻酔薬、悪臭物質、芳香剤、医薬品、食品成分、ステロイドホルモン、色素及び苦味物質から選択される少なくとも1種である前記<2>から<3>のいずれかに記載の検査装置である。
【0007】
本発明の振動又は粘弾性測定センサーは、両親媒性の棒状体を有する捕捉体を基材に膜状に付着結合させたものであり、この膜部分に標的物質が吸着されたことによる重量変化又は粘弾性変化を周波数としてとして検出するものである。
【0008】
また、本発明の振動又は粘弾性測定センサーは、両親媒性の棒状体と、該棒状体に結合し、標的物質を特異的に捕捉する捕捉構造体とを有する捕捉体を基材に膜状に付着結合させたものであり、捕捉構造体が標的物質を捕捉したことによる重量変化又は粘弾性変化を周波数として高感度に検出するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
第一の発明に係る振動又は粘性測定センサーを構成する捕捉体10は、図1に示したように、両親媒性の棒状体1を有するものである。
第二の発明に係る振動又は粘性測定センサーを構成する捕捉体10は、図2に示したように、両親媒性の棒状体1と、該棒状体1に結合し、捕捉対象物を特異的に捕捉する捕捉構造体2とを有するものである。
【0010】
<棒状体>
前記棒状体としては、棒状であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、棒状無機物、棒状有機物のいずれであってもよいが、棒状有機物であるのが好ましい。
【0011】
前記棒状有機物としては、例えば、生体高分子、多糖類などが挙げられる。
前記生体高分子としては、例えば、繊維状蛋白、α−ヘリックス・ポリペプチド、核酸(DNA、RNA)などが好適に挙げられる。該繊維状蛋白としては、例えば、α−ケラチン、ミオシン、エピダーミン、フィブリノゲン、トロポマイシン、絹フィブロイン等のα−ヘリックス構造を有するものが挙げられる。
前記多糖類としては、例えば、アミロースなどが好適に挙げられる。
【0012】
前記棒状有機物の中でも、安定に棒状を維持することができ、また、目的に応じて内部に他の物質をインターカレートさせることができる点で、分子がらせん構造を有するらせん状有機分子が好ましく、該らせん状有機分子には、上述したものの内、α−ヘリックス・ポリペプチド、DNA、アミロースなどが該当する。
【0013】
〔α−ヘリックス・ポリペプチド〕
前記α−ヘリックス・ポリペプチドは、ポリペプチドの二次構造の一つであり、アミノ酸3.6残基ごとに1回転(1らせんを形成)し、4番目ごとのアミノ酸のイミド基(−NH−)とカルボニル基(−CO−)との間に螺旋軸とほぼ平行な水素結合を作り、7アミノ酸を一単位として繰り返すことによりエネルギー的に安定な構造を有している。
【0014】
前記α−ヘリックス・ポリペプチドのらせん方向としては、特に制限はなく、右巻きであってもよいし、左巻きであってもよい。なお、天然には安定性の点から前記らせん方向が右巻きのものしか存在しない。
【0015】
前記α−ヘリックス・ポリペプチドを形成するアミノ酸としては、α−ヘリックス構造を形成可能であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、該α−ヘリックス構造を形成し易いものが好ましく、このようなアミノ酸としては、例えば、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、アルギニン(Arg)、リジン(Lys)、ヒスチジン(His)、アスパラギン(Asn)、グルタミン(Gln)、セリン(Ser)、スレオニン(Thr)、アラニン(Ala)、バリン(Val)、ロイシン(Leu)、イソロイシン(Ile)、システイン(Cys)、メチオニン(Met)、チロシン(Tyr)、フェニルアラニン(Phe)、トリプトファン(Trp)などが好適に挙げられる。これらは、1種単独で使用されてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0016】
前記α−ヘリックス・ポリペプチドの親性としては、前記アミノ酸を適宜選択することにより、親水性、疎水性、両親媒性のいずれにも変え得るが、前記親水性とする場合、前記アミノ酸としては、セリン(Ser)、スレオニン(Thr)、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、アルギニン(Arg)、リジン(Lys)、アスパラギン(Asn)、グルタミン(Gln)などが好適に挙げられ、前記疎水性とする場合、前記アミノ酸としては、フェニルアラニン(Phe)、トリプトファン(Trp)、イソロイシン(Ile)、チロシン(Tyr)、メチオニン(Met)、ロイシン(Leu)、バリン(Val)などが挙げられる。
【0017】
また、前記α−ヘリックス・ポリペプチドにおいては、該α−ヘリックスを形成する前記アミノ酸における、ペプチド結合を構成しないカルボキシル基を、エステル化することにより疎水性にすることができ、一方、該エステル化されたカルボキシル基を加水分解することにより親水性にすることができる。
【0018】
前記アミノ酸としては、L−アミノ酸、D−アミノ酸、これらの側鎖部分が修飾された誘導体などのいずれであってもよい。
【0019】
前記α−ヘリックス・ポリペプチドにおけるアミノ酸の結合個数(重合度)としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、10〜5000であるのが好ましい。
前記結合個数(重合度)が、10未満であると、ポリアミノ酸が安定なα−ヘリックスを形成できなくなることがあり、5000を超えると、垂直配向させることが困難となることがある。
【0020】
前記α−ヘリックス・ポリペプチドの具体例としては、例えば、ポリ(γ−メチル−L−グルタメート)、ポリ(γ−エチル−L−グルタメート)、ポリ(γ−ベンジル−L−グルタメート)、ポリ(L−グルタミン酸−γ−ベンジル)、ポリ(n−ヘキシル−L−グルタメート)等のポリグルタミン酸誘導体、ポリ(β−ベンジル−L−アスパルテート)等のポリアスパラギン酸誘導体、ポリ(L−ロイシン)、ポリ(L−アラニン)、ポリ(L−メチオニン)、ポリ(L−フェニルアラニン)、ポリ(L−リジン)−ポリ(γ−メチル−L−グルタメート)などのポリペプチド、が好適に挙げられる。
【0021】
前記α−ヘリックス・ポリペプチドとしては、市販のものであってもよいし、公知文献等に記載の方法に準じて適宜合成乃至調製したものであってもよい。
【0022】
前記α−ヘリックス・ポリペプチドの合成の一例として、ブロックコポリペプチド〔ポリ(L−リジン)25−ポリ(γ−メチル−L−グルタメート)60〕PLLZ25−PMLG60の合成をここで示すと次の通りである。即ち、ブロックコポリペプチド〔ポリ(L−リジン)25−ポリ(γ−メチル−L−グルタメート)60〕PLLZ25−PMLG60は、下記式で示したように、n−ヘキシルアミンを開始剤として用い、Nε−カルボベンゾキシ L−リジン Nα−カルボキシ酸無水物(LLZ−NCA)の重合を行い、続けてγ−メチル L−グルタメート N−カルボキシ酸無水物(MLG−NCA)の重合を行うことにより合成することができる。
【0023】
【化1】
Figure 0003911628
【0024】
前記α−ヘリックス・ポリペプチドの合成は、上記方法に限られず、遺伝子工学的方法により合成することもできる。具体的には、前記目的とするポリペプチドをコードするDNAを組み込んだ発現ベクターにより宿主細胞を形質転換し、この形質転換体を培養すること等により製造することができる。
【0025】
前記発現ベクターとしては、例えば、プラスミドベクター、ファージベクター、プラスミドとファージとのキメラベクター、などが挙げられる。
前記宿主細胞としては、大腸菌、枯草菌等の原核微生物、酵母菌等の真核微生物、動物細胞などが挙げられる。
【0026】
また、前記α−ヘリックス・ポリペプチドは、α−ケラチン、ミオシン、エピダーミン、フィブリノゲン、トロポマイシン、絹フィブロイン等の天然の繊維状蛋白からそのα−ヘリックス構造部分を切り出すことにより調製してもよい。
【0027】
〔DNA〕
前記DNAは、1本鎖DNAであってもよいが、安定に棒状を維持することができ、内部に他の物質をインターカレートできる等の点で2本鎖DNAであるのが好ましい。
前記2本鎖DNAは、一つの中心軸の回りに、右巻きらせん状の2本のポリヌクレオチド鎖が互いに逆方向に延びた状態で位置して形成された2重らせん構造を有する。
【0028】
前記ポリヌクレオチド鎖は、アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)及びシトシン(C)の4種類の核酸塩基で形成されており、前記ポリヌクレオチド鎖において前記核酸塩基は、中心軸に対して垂直な平面内で互いに内側に突出した形で存在して、いわゆるワトソン−クリック型塩基対を形成し、アデニンに対してはチミンが、グアニンに対してはシトシンが、それぞれ特異的に水素結合している。その結果、前記2本鎖DNAにおいては、2本のポリペプチド鎖が互いに相補的に結合している。
【0029】
前記DNAは、公知のPCR(Polymerase Chain Reaction)法、LCR(Ligase chain Reaction)法、3SR(Self−sustained Sequence Replication)法、SDA(Strand Displacement Amplification)法等により調製することができるが、これらの中でもPCR法が好適である。
【0030】
また、前記DNAは、天然の遺伝子から制限酵素により酵素的に直接切り出して調製してもよいし、遺伝子クローニング法により調製してもよいし、化学合成法により調製してもよい。
【0031】
前記遺伝子クローニング法の場合、例えば、正常核酸を増幅したものをプラスミドベクター、ファージベクター、プラスミドとファージとのキメラベクター等から選択されるベクターに組み込み、大腸菌、枯草菌等の原核微生物、酵母等の真核微生物、動物細胞などから選択される増殖可能な任意の宿主に導入することにより前記DNAを大量に調製することができる。
【0032】
前記化学合成法としては、例えば、トリエステル法、亜リン酸法などのような、液相法又は不溶性の担体を使った固相合成法などが挙げられる。前記化学合成法の場合、公知の自動合成機等を用い、1本鎖のDNAを大量に調製した後、アニーリングを行うことにより、2本鎖DNAを調製することができる。
【0033】
〔アミロース〕
前記アミロースは、高等植物の貯蔵のためのホモ多糖類であるデンプンを構成するD−グルコースがα−1,4結合で直鎖状につながったらせん構造を有する多糖である。
前記アミロースの分子量としては、数平均分子量で、数千〜15万程度が好ましい。
前記アミロースは、市販のものであってもよいし、公知の方法に従って適宜調製したものであってもよい。
なお、前記アミロースは、その一部にアミロペクチンが含まれていても構わない。
【0034】
前記棒状体の長さとしては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、810nm以下であるのが好ましく、10nm〜810nmであるのがより好ましい。
【0035】
前記棒状体の径としては、特に制限はないが、前記α−ヘリックス・ポリペプチドの場合には0.8〜2.0nm程度である。
【0036】
前記棒状体は、その一部が疎水性又は親水性であり、他の部分が該一部と逆の親性を示す両親媒性である。前記棒状体が前記両親媒性であると、油相−水相界面での配向、油層又は水相中での分散、等が容易である点で有利である。
【0037】
前記両親媒性の棒状体の場合、疎水性を示す部分及び親水性を示す部分の数としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。また、この場合、疎水性を示す部分と親水性を示す部分とが交互に位置していてもよいし、いずれかの部分が棒状体の一端部にのみ位置していてもよい。
【0038】
ここで、前記両親媒性の棒状体の一例を図1に示す。図1において、棒状体1は、その一端側に疎水性部1aを、他端側に親水性部1bを有する。
【0039】
<捕捉構造体>
前記捕捉構造体としては、前記捕捉対象体を捕捉することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0040】
前記捕捉の態様としては、特に制限はないが、物理吸着、化学吸着などが挙げられる。これらは、例えば、水素結合、分子間力(ファン・デル・ワールス力)、配位結合、イオン結合、共有結合などにより形成され得る。
【0041】
前記捕捉構造体の具体例としては、例えば、包接化合物(以下「ホスト」と称することがある)、抗体、核酸、ホルモンレセプター、レクチン、生理活性物質受容体などが好適に挙げられる。これらの中でも、任意の配線を容易に形成することができる点で、核酸が好ましく、1本鎖DNA、RNAがより好ましい。
【0042】
なお、これらの捕捉構造体の捕捉対象としては、前記包接化合物の場合にはゲスト(包接される成分)であり、前記抗体の場合には抗原であり、前記核酸の場合には核酸、チューブリン、キチン等であり、前記ホルモンレセプターの場合にはホルモンであり、前記レクチンの場合には糖等であり、前記生理活性物質受容体の場合には生理活性物質である。
【0043】
〔包接化合物〕
前記包接化合物としては、分子認識能(ホスト−ゲスト結合能)を有する限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、筒状(一次元)の空洞を有するもの、層状(二次元)の空洞を有するもの、かご状(三次元)の空洞を有するもの、などが好適に挙げられる。
【0044】
前記筒状(一次元)の空洞を有する包接化合物としては、例えば、尿素、チオ尿素、デオキシコール酸、ジニトロジフェニル、ジオキシトリフェニルメタン、トリフェニルメタン、メチルナフタリン、スピロクロマン、PHTP(ペルヒドロトリフェニレン)、セルロース、アミロース、シクロデキストリン(但し、溶液中では前記空洞がかご状)、フェニルホウ酸などが挙げられる。
【0045】
前記尿素の捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、n−パラフィン誘導体などが挙げられる。
【0046】
前記チオ尿素の捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、分岐状又は環状の炭化水素などが挙げられる。
【0047】
前記デオキシコール酸の捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、パラフィン類、脂肪酸、芳香族化合物などが挙げられる。
【0048】
前記ジニトロジフェニルの捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、ジフェニル誘導体などが挙げられる。
【0049】
前記ジオキシトリフェニルメタンの捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、パラフィン類、n−アルケン類、スクアレンなどが挙げられる。
【0050】
前記トリフェニルメタンの捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、パラフィン類などが挙げられる。
【0051】
前記メチルナフタリンの捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、C16までのn−パラフィン類、分岐状パラフィン類などが挙げられる。
【0052】
前記スピロクロマンの捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、パラフィン類などが挙げられる。
【0053】
前記PHTP(ペルヒドロトリフェニレン)の捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、クロロホルム、ベンゼン、各種高分子物質などが挙げられる。
【0054】
前記セルロースの捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、HO、パラフィン類、CCl、色素、ヨウ素などが挙げられる。
【0055】
前記アミロースの捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、脂肪酸、ヨウ素などが挙げられる。
【0056】
前記シクロデキストリンは、デンプンのアミラーゼによる分解で生成する環状のデキストリンであり、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリンの3種が知られている。本発明においては、前記シクロデキストリンとして、これらの水酸基の一部を他の官能基、例えば、アルキル基、アリル基、アルコキシ基、アミド基、スルホン酸基などに変えたシクロデキストリン誘導体も含まれる。
【0057】
前記シクロデキストリンの捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、チモール、オイゲノール、レゾルシン、エチレングリコールモノフェニルエーテル、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン等のフェノール誘導体、サリチル酸、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル等の安息香酸誘導体及びそのエステル、コレステロール等のステロイド、アスコルビン酸、レチノール、トコフェロール等のビタミン、リモネン等の炭化水素類、イソチオシアン酸アリル、ソルビン酸、ヨウ素分子、メチルオレンジ、コンゴーレッド、2−p−トルイジニルナフタレン−6−スルホン酸カリウム塩(TNS)などが挙げられる。
【0058】
前記フェニルホウ酸の捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、ブドウ糖等が挙げられる。
【0059】
前記層状(二次元)の包接化合物としては、例えば、粘土鉱物、グラファイト、スメクタイト、モンモリロナイト、ゼオライトなどが挙げられる。
【0060】
前記粘土鉱物の捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、親水性物質、極性化合物などが挙げられる。
【0061】
前記グラファイトの捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、O、HSO 、ハロゲン、ハロゲン化物、アルカリ金属などが挙げられる。
【0062】
前記モンモリロナイトの捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、ブルシン、コデイン、o−フェニレンジアミン、ベンジジン、ピペリジン、アデニン、グイアニン及びこれらのリポシドなどが挙げられる。
【0063】
前記ゼオライトの捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、HOなどが挙げられる。
【0064】
前記かご状(三次元)の包接化合物としては、例えば、ヒドロキノン、気体水化物、トリ−o−チモチド、オキシフラバン、ジシアノアンミンニッケル、クリプタンド、カリックスアレン、クラウン化合物などが挙げられる。
【0065】
前記ヒドロキノンの捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、HCl、SO、アセチレン、希ガス元素などが挙げられる。
【0066】
前記気体水化物の捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、ハロゲン、希ガス元素、低級炭化水素などが挙げられる。
【0067】
前記トリ−o−チモチドの捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、シクロヘキサン、ベンゼン、クロロホルムなどが挙げられる。
【0068】
前記オキシフラバンの捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、有機塩基などが挙げられる。
【0069】
前記ジシアノアンミンニッケルの捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、ベンゼン、フェノールなどが挙げられる。
【0070】
前記クリプタンドの捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、NH4+、各種金属イオンなどが挙げられる。
【0071】
前記カリックスアレンは、フェノールとホルムアルデヒドとから適当な条件で合成されるフェノール単位をメチレン基で結合した環状オリゴマーであり、4〜8核体が知られている。これらの内、p−t−ブチルカリックスアレン(n=4)の捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、クロロホルム、ベンゼン、トルエンなどが挙げられる。p−t−ブチルカリックスアレン(n=5)の捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、イソプロピルアルコール、アセトンなどが挙げられる。p−t−ブチルカリックスアレン(n=6)の捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、クロロホルム、メタノールなどが挙げられる。p−t−ブチルカリックスアレン(n=7)の捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、クロロホルムなどが挙げられる。
【0072】
前記クラウン化合物としては、電子供与性のドナー原子として酸素を持つクラウンエーテルのみではなく、そのアナログとして窒素、硫黄などのドナー原子を環構造構成原子として持つ大環状化合物を含み、また、クリプタンドを代表する2個以上の環よりなる複環式クラウン化合物も含まれ、例えば、シクロヘキシル−12−クラウン−4、ジベンゾ−14−クラウン−4、t−ブチルベンゾ−15−クラウン−5、ジベンゾ−18−クラウン−6、ジシクロヘキシル−18−クラウン−6、18−クラウン−6、トリベンゾ−18−クラウン−6、テトラベンゾ−24−クラウン−8、ジベンゾ−26−クラウン−6などが挙げられる。
【0073】
前記クラウン化合物の捕捉対象(前記ゲスト)としては、例えば、Li,Na、K等のアルカリ金属、Mg、Ca等のアルカリ土類金属などの各種金属イオン、NH4+、アルキルアンモニウムイオン、グアニジウムイオン、芳香族ジアゾニウムイオンなどが挙げられ、該クラウン化合物はこれらと錯体を形成する。また、該クラウン化合物の捕捉対象(前記ゲスト)としては、これら以外にも、酸性度が比較的大きいC−H(アセトニトリル、マロンニトリル、アジポニトリルなど)、N−H(アニリン、アミノ安息香酸、アミド、スルファミド誘導体など)、O−H(フェノール、酢酸誘導体など)ユニットを有する極性有機化合物などが挙げられ、該クラウン化合物はこれらと錯体を形成する。
【0074】
前記包接化合物の空洞の大きさ(径)としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選定することができるが、安定した分子認識能(ホスト−ゲスト結合能)を発揮し得る観点からは0.1nm〜2.0nmであるのが好ましい。
【0075】
前記包接化合物(ホスト)と前記ゲストとの混合比率(モル比)としては、該包接化合物の種類、該ゲストの種類などによって異なり一概には規定できないが、通常、包接化合物:ゲスト成分=1:0.1〜1:10であり、包接化合物:ゲスト成分=1:0.3〜1:3が好ましい。
【0076】
〔抗体〕
前記抗体としては、標的抗原(捕捉対象物)と特異的に抗原抗体反応を生じるものであれば特に制限されず、多クローン性抗体であっても、単クローン性抗体であってもよく、更にはIgG、IgM、IgE、IgGのFab’、Fab、F(ab’)なども使用することができる。
【0077】
前記標的抗原としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、血漿蛋白、腫瘍マーカー、アポ蛋白、ウイルス、自己抗体、凝固・線溶因子、ホルモン、血中薬物、HLA抗原などが挙げられる。
【0078】
前記血漿蛋白としては、例えば、免疫グロブリン(IgG,IgA,IgM,IgD,IgE)、補体成分(C3,C4,C5,C1q)、CRP、α−アンチトリプシン、α−マイクログロブリン、β−マイクログロブリン、ハプトグロビン、トランスフェリン、セルロプラスミン、フェリチンなどが挙げられる。
【0079】
前記腫瘍マーカーとしては、例えば、α−フェトプロテイン(AFP)、癌胎児性抗原(CEA)、CA19−9、CA125、CA15−3、SCC抗原、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)、PIVKA−II、γ−セミノプロテイン、TPA、エラスターゼI、神経特異エノラーゼ(NSE)、免疫抑制酸性蛋白(IAP)などが挙げられる。
【0080】
前記アポ蛋白としては、例えば、アポA−I、アポA−II、アポB、アポC−II、アポC−III、アポEなどが挙げられる。
【0081】
前記ウイルス抗原としては、例えば、B型肝炎ウイルス(HBV)関連抗原、C型肝炎ウイルス(HVC)関連抗原、HTLV−I、HIV、狂犬病ウイルス、インフルエンザウイルス、風疹ウイルスなどが挙げられる。
前記HCV関連抗原としては、例えば、HCVc100−3リコビナント抗原、pHCV−31リコビナント抗原、pHCV−34リコビナント抗原などが挙げられ、それらの混合物が好ましく使用できる。前記HIV関連抗原としては、ウイルス表面抗原などが挙げられ、例えば、HIV−I env.gp41リコビナント抗原、HIV−I env.gp120リコビナント抗原、HIV−I gag.p24リコビナント抗原、HIV−II env.p36リコビナント抗原などが挙げられる。
また、ウイルス以外の感染症としては、MRSA、ASO、トキソプラズマ、マイコプラズマ、STDなどが挙げられる。
【0082】
前記自己抗体としては、例えば、抗マイクロゾーム抗体、抗サイログロブリン抗体、抗核抗体、リュウマチ因子、抗ミトコンドリア抗体、ミエリン抗体などが挙げられる。
【0083】
前記凝固・線溶因子としては、例えば、フィブリノゲン、フィブリン分解産物(FDP)、プラスミノゲン、α−プラスミンインヒビター、アンチトロンビンIII、β−トロンボグロブリン、第VIII因子、プロテインC、プロテインSなどが挙げられる。
【0084】
前記ホルモンとしては、例えば、下垂体ホルモン(LH、FSH、GH、ACTH、TSH、プロラクチン)、甲状腺ホルモン(T、T、サイログロブリン)、カルシトニン、副甲状腺ホルモン(PTH)、副腎皮質ホルモン(アルドステロン、コルチゾール)、性腺ホルモン(hCG、エストロゲン、テストステロン、hPL)、膵・消化管ホルモン(インスリン、C−ペプチド、グルカゴン、ガストリン)、その他(レニン、アンジオテンシンI,II、エンケファリン、エリスロポエチン)などが挙げられる。
【0085】
前記血中薬物としては、例えば、カルバマゼピン、プリミドン、バルプロ酸等の抗てんかん薬、ジゴキシン、キニジン、ジギトキシン、テオフィリン等の循環器疾患薬、ゲンタマイシン、カナマイシン、ストレプトマイシン等の抗生物質などが挙げられる。
【0086】
このような標的抗原を含む検体としては、例えば、細菌、ウイルス等の病原体、生体から分離された血液、唾液、組織病片等、或いは糞尿等の排泄物が挙げられる。更に、出生前診断を行う場合は、羊水中に存在する胎児の細胞や、試験管内での分裂卵細胞の一部を検体とすることもできる。また、これらの検体は直接、又は必要に応じて遠心分離操作等により沈渣として濃縮した後、例えば、酵素処理、熱処理、界面活性剤処理、超音波処理、或いはこれらの組み合わせ等による細胞破壊処理を予め施したものを使用することができる。
【0087】
<標的物質>
前記標的物質は、特に制限されず目的に応じて適宜選択することができるが、タンパク質、脂質、糖、核酸及びこれらの複合体から選択される少なくとも1種であることが好ましく、例えば、香料、麻酔薬、悪臭物質、芳香剤、医薬品、食品成分、ステロイドホルモン、色素及び苦味物質から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0088】
前記香料としては、例えば、ビャクダン、ちょうじ、ぢんこう、きゃら、だいういきょう、にゅうこう、けいひ、じゃこう、りゅうぜんこうなどが挙げられる。
【0089】
前記麻酔薬としては、例えば、メタノール、エタノール、アセトン、1−プロパノール、ブタノン、1−ブタノール、ジエチルエーテル、パラアルデヒド、ベンジルアルコール、クロロホルム、1−ヘキサノール、ハロエタン、メトキシフルラン、1−オクタノール、ペンタン、1−ノナノール、ヘキサン、1−デカノールなどが挙げられる。
【0090】
前記悪臭物質としては、例えば、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、イソプロピルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン等のアミン類、酢酸エチル、安息香酸エチル、クロル酢酸エチル、アクリル酸メチル等のエステル類、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸等のカルボン酸類、MIBK、MEK、シクロヘキサノン、アセトン、アセトフェノン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族などが挙げられる。
【0091】
前記色素としては、例えば、カロテノイド系色素、フラボノイド系色素、アントシアニン系色素、アントラキノン系色素、ベタシアニン系色素、ジケトン系色素、アザフィロン系色素、ポルフィリン系色素などが挙げられる。
【0092】
前記ステロイドホルモンとしては、例えば、アルドステロン、アンドロステンジオン、コルチコステロン、コルチゾール、プロゲステロン、テストステロンなどが挙げられる。
【0093】
前記苦味物質としては、例えば、ストリキニーネ、キニーネ、ニコチン、フェニルチオウレア、パパペリン、カフェイン、ナリンギン、オクタアセチルショ糖などが挙げられる。
【0094】
ここで、前記両親媒性の棒状体と、捕捉構造体2とを結合させた状態の一例を図2に示す。図2において、捕捉体10は、その棒状体の一端側に疎水性部1aを、他端側に親水性部1bを有すると共に、捕捉構造体2を棒状体1の一端に結合させている。なお、図示を省略しているが、捕捉構造体2は棒状体1の周側面に複数個結合させることもできる。
【0095】
前記結合方法としては、前記捕捉構造体と前記棒状体とに応じて適宜選択することができるが、エステル結合やアミド結合等の共有結合を利用する方法、タンパク質をアビジン標識し、ビオチン化した捕捉構造体と結合させる方法、タンパク質をストレプトアビジン標識し、ビオチン化した捕捉構造体と結合させる方法等の公知の方法が使用できる。
【0096】
前記共有結合法としては、ペプチド法、ジアゾ法、アルキル化法、臭化シアン活性化法、架橋試薬による結合法、ユギ(Ugi)反応を利用した固定化法、チオール・ジスルフィド交換反応を利用した固定化法、シッフ塩基形成法、キレート結合法、トシルクロリド法、生化学的特異結合法などが挙げられるが、好ましくは共有結合などのより安定した結合には、チオール基とマレイミド基の反応、ピリジルジスルフィド基とチオール基の反応、アミノ基とアルデヒド基の反応などを利用して行うことができ、公知の方法あるいは当該分野の当業者が容易になしうる方法、さらにはそれらを修飾した方法の中から適宜選択して適用できる。これらのなかでも、より安定した結合を形成できる化学的結合剤・架橋剤などが使用される。
【0097】
このような化学的結合剤・架橋剤としては、カルボジイミド、イソシアネート、ジアゾ化合物、ベンゾキノン、アルデヒド、過ヨウ素酸、マレイミド化合物、ピリジルジスルフィド化合物などが挙げられる。好ましい試薬としては、例えばグルタルアルデヒド、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソチオシアネート、N,N’−ポリメチレンビスヨードアセトアミド、N,N’−エチレンビスマレイミド、エチレングリコールビススクシニミジルスクシネート、ビスジアゾベンジジン、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、スクシンイミジル 3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、N−スクシンイミジル 4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)、N−スルホスクシンイミジル 4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート、N−スクシンイミジル (4−ヨードアセチル)アミノベンゾエート、N−スクシンイミジル 4−(1−マレイミドフェニル)ブチレート、イミノチオラン、S−アセチルメルカプトコハク酸無水物、メチル−3−(4’−ジチオピリジル)プロピオンイミデート、メチル−4−メルカプトブチリルイミデート、メチル−3−メルカプトプロピオンイミデート、N−スクシンイミジル−S−アセチルメルカプトアセテートなどが挙げられる。
【0098】
そして、得られる前記捕捉体を水晶発振子又は表面弾性波(SAW)素子に膜状に結合させることにより、本発明の振動又は粘性測定センサーが得られる。
【0099】
<振動又は粘性測定センサー及び検査装置>
前記第一の発明に係る振動又は粘性測定センサーは、図1に示した両親媒性の棒状体からなる捕捉体を水晶発振子又は表面弾性波(SAW)素子に膜状に付着結合させたものである。
前記第二の発明に係る振動又は粘性測定センサーは、図2に示した両親媒性の棒状体と、該棒状体に結合し、標的物質を特異的に捕捉する捕捉構造体とを有する捕捉体を水晶発振子又は表面弾性波(SAW)素子に膜状に付着結合させたものである。
また、本発明の検査装置は、前記振動又は粘性測定センサーと、該センサーに標的物質が付着又は捕捉された際の重量変化又は粘弾性変化を周波数として発振する発振回路と、該発振回路から発振された周波数を計測する周波数カウンターとを備えたものである。
【0100】
ここで、前記水晶発振子は、薄い水晶板の表面と裏面とに金属電極を蒸着したものである。この水晶発振子20の一例を図3に示す。図3Aが平面図、図3Bが正面図である。水晶板21の表面に電極12が、裏面に電極14が蒸着されている。電極12、14からは左側に電極が伸びており、その左端の部分を図示省略したクリップ型のリード線を接続して、図示を省略している交流電源に接続する。ここで、電極12、14の間に交流電界を印加すると逆圧電効果により、水晶板21は一定周期の振動を発生する。
【0101】
前記水晶発振子20の表面には図示を省略しているが、振動又は粘性測定センサー膜が付着結合されている。この膜状振動又は粘性測定センサーの捕捉結合体が捕捉対象物を特異的に捕捉し、該捕捉した捕捉対象物の質量だけ水晶発振子20の表面の質量が変化するため、共振周波数が変化する。
【0102】
ここで、厚み方向に垂直な平面に平行な振動をする水晶発振子20の表面に被覆した膜状振動又は粘性測定センサーの質量変化と共振周波数の変化量には、下記式(3)の関係があり、質量変化を共振周波数の変化量で検出することができる。例えば、9MHzの共振周波数の振動子では(面積約0.5cm)1μgの質量増加により、400Hzの周波数低下を得ることができる。
ΔF=−2.3×106(F2・ΔW/A) (3)但し、Fは水晶発振子の共振周波数(MHz)を意味し、ΔFは質量変化による共振周波数の変化量(Hz)を意味し、ΔWは膜の質量変化(g)を意味し、Aは膜の表面積(cm)を意味する。
【0103】
図4に検査装置の一例を示す。水晶発振子20(表面に振動又は粘性測定センサー10が膜状に結合されている)は水晶発振子取付アームに取り付けられ恒温ヒートブロック23中の溶液に浸されている。恒温ヒートブロック23は溶液の温度を一定に保つためのものである。溶液は攪拌機(スターラー)24により攪拌される。また、サンプルインジェクション25は溶液中に計測すべき試料を注入する。発振回路26は、水晶発振子20の電極12、14に交流電界を印加して水晶発振子20を発振させる。発振回路26の発振周波数はカウンター27によりカウントされ、コンピュータ28により解析され、被検液中の捕捉対象物の質量が表示される。
【0104】
このように、振動又は粘性測定センサーの捕捉結合体に捕捉対象物が特異的に捕捉されることにより、前記振動又は粘性測定センサーの質量が変化し、この質量変化を水晶発振子がとらえて周波数に変換するので、この周波数変化を周波数カウンターで測定することにより、特異的に捕捉対象物の存在の有無を検査することができる。
また、予め既知量の捕捉対象物を用いて検量線を作成することにより、試料中の検出又は定量すべき捕捉対象物濃度を検出又は定量することができる。
【0105】
次に、前記表面弾性波(SAW)素子とは、固体の表面に一対の櫛形電極を設け、電気信号を表面弾性波(固体表面を伝わる音波、超音波)に変換して、対向する電極まで伝達し、再び電気信号として出力する素子であり、刺激に対応して特定の周波数の信号を取り出すことができる。圧電効果を示すタンクル酸リチウム、ニオブ酸リチウムなどの強誘電体や、水晶、酸化亜鉛薄膜などが材料とされる。
【0106】
前記SAWは、媒質の表面に沿って伝搬し、媒質内部では指数関数的に減少する弾性波である。SAWは伝搬エネルギーが媒質表面に集中するので、媒質表面の変化を敏感に検出することができ、水晶発振子と同様に表面の質量変化により、SAW伝搬速度が変化する。一般に、SAW伝搬速度は発振回路を用いて発振周波数の変化として測定されている。発振周波数の変化は次式で与えられる。
Δf=(k1 +k2)f2hρ−k22h[(4μ/Vr 2)(λ+μ/λ+2μ)]
但し、k1 ,k2 は定数を意味し、hは固定化した膜の厚さを意味し、ρは膜の密度を意味し、λ,μは膜のLame定数を意味し、VrはSAW伝搬速度を意味する。
【0107】
図5は表面弾性波(SAW)素子の要部構成の一例を示す模式平面図である。この図5において、このSAW素子センサ30は、STカットの水晶製の共振周波数90MHzを持つSAW素子に、金電極38とその両端に櫛型電極36、及び点線で示した表面波伝播領域37に振動又は粘性測定センサーからなる膜(図示せず)を形成してあり、各櫛型電極36から高周波増幅器35を経て周波数カウンター39に接続され、試料中の捕捉対象物の質量が表示されるように構成されている。
【0108】
前記振動又は粘性測定センサーの捕捉結合体により被検液中の捕捉対象物が特異的に捕捉されることにより、前記振動又は粘性測定センサーの質量又は粘弾性が変化し、この質量変化又は粘弾性変化を表面弾性波(SAW)素子がとらえ周波数に変換するので、この周波数変化を周波数カウンターで測定することにより、特異的に捕捉対象物の存在の有無を検査することができる。
【0109】
また、予め既知量の捕捉対象物を用いて検量線を作成することにより、試料中の検出又は定量すべき捕捉対象物を検出又は定量することができる。
【0110】
前記バイオセンサーを構成する水晶発振子又は表面弾性波(SAW)素子の電極上に振動又は粘性測定センサーを化学的に結合・固定する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができる。例えば、共有結合などの化学的結合により行うことができる。
【0111】
前記共有結合法としては、特に制限はなく、上記振動又は粘性測定センサーにおける捕捉結合体と棒状体との結合に用いたものと同じものを適宜選択して用いることができる。
具体的には、前記振動又は粘性測定センサーの末端にチオール基を導入したものを合成し、その溶液中に水晶発振子又は表面弾性波(SAW)素子を一定時間浸漬・反応させる。次いで該溶液から振動又は粘性測定センサーが化学的に結合・固定したバイオセンサーを取り出し、乾燥させる方法などが挙げられる。このチオール基としてはS−トリチル−3−メルカプトプロピルオキシ−β−シアノエチル−N,N−ジイソプロピルアミノホスホルアミダイドなどが包含され、該振動又は粘性測定センサーの末端へのチオール基の導入はホスホルアミダイド法により行うことができる。
【0112】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0113】
(実施例1)
水晶発振子(9MHz、ATカット)の銀電極上に、α−ヘリックス・ポリペプチドの単分子膜を形成し、本発明の振動・粘性測定センサーを作成した。
前記α−ヘリックス・ポリペプチドとしては、グルタミン酸のカルボキシル基の水素原子をn−ヘキシル基で置換したものをモノマーユニットとするポリ(n−ヘキシル L−グルタメート(以下「PHeLG」と表記することがある))を使用した。該PHeLGは、ベンジルアミンを重合開始剤として用いたL−グルタミン酸・γ−メチルエステルの重合反応により得られ、その重合度はH−NMR測定によると114であった。
【0114】
水晶発振子の電極上にα−ヘリックス・ポリペプチドを結合させる方法としては、ポリペプチドの末端にチオール基を導入したものを合成し、その水溶液中に水晶発振子を浸漬・反応させ、次いで該水溶液から振動又は粘性測定センサーを取り出し、乾燥させることにより行った。
【0115】
得られた振動・粘性測定センサーを図4に示したように配置し、標的物質としてβ−ヨノン(匂い物質)のエタノール溶液を添加したところ、標的物質がセンサーに付着し質量変化による周波数が計測できた。
【0116】
(実施例2)
実施例1において、水晶発振子の代わりに図5に示したSTカットの発振周波数が10.3MHzの表面弾性波(SAW)素子を用いた以外は、実施例1と同様にして検査装置を組み立てた。
標的物質としてβ−ヨノン(匂い物質)のエタノール溶液を添加したところ、標的物質がセンサーに付着し質量変化による周波数が計測できた。
【0117】
(実施例3)
モノアミノ化したβ−シクロデキストリン(β−CyD)を開始剤として用い、γ−メチル−L−グルタミン−N−カルボキシ酸無水物の重合を行い、下記式で示した分子認識能を有するβ−CyDを分子鎖末端に配したポリペプチド(PMG−CyD)を調製した。
【0118】
【化2】
Figure 0003911628
【0119】
このポリペプチドを用いて、テフロン(R)製トラフに形成したn−ヘキサン/水界面にPMG−CyDのDMF溶液を展開し単分子膜を形成した。
【0120】
得られたPMG−CyD分子の主鎖二次構造を石英板に累積したLB膜の円二色(CD)スペクトル測定により評価した結果、分子膜中でPMG−CyD分子はα−ヘリックス構造をとっていることが確認できた。
【0121】
水晶発振子の電極上にα−ヘリックス・ポリペプチドを結合させる方法としては、ポリペプチドの末端にチオール基を導入したものを合成し、その水溶液中に水晶発振子を浸漬・反応させ、次いで該水溶液から振動又は粘性測定センサーを取り出し、乾燥させることにより行った。
【0122】
得られた振動・粘性測定センサーを図4に示したように配置し、標的物質としてブドウ糖水溶液を添加したところ、標的物質がセンサーに付着し質量変化による周波数が計測できた。
【0123】
(実施例4)
実施例3において、水晶発振子の代わりに図5に示したSTカットの発振周波数が10.3MHzの表面弾性波(SAW)素子を用いた以外は、実施例1と同様にして検査装置を組み立てた。
標的物質としてブドウ糖水溶液を添加したところ、標的物質がセンサーに付着し質量変化による周波数が計測できた。
【0124】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、香料、麻酔薬、悪臭物質、芳香剤、医薬品、食品成分、ステロイドホルモン、色素、苦味物質等の幅広い標的物質を簡易かつ確実に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の一実施例に係る捕捉体の模式図である。
【図2】図2は、別の捕捉体の模式図である。
【図3】図3は、水晶発振子の一例を示し、図3Aは平面図、図3Bは正面図である。
【図4】図4は、検査装置の一例を示す概略図である。
【図5】図5は、表面弾性波(SAW)素子を示す模式平面図である。
【符号の説明】
1 棒状体
2 捕捉構造体
10 捕捉体

Claims (4)

  1. 液中の標的物質を特異的に捕捉するシクロデキストリンが一端に結合された両親媒性のα−ヘリックス・ポリペプチドを水晶発振子又は表面弾性波(SAW)素子に付着結合させたことを特徴とする振動又は粘性測定センサー。
  2. 請求項1に記載の振動又は粘性測定センサーと、該センサーに標的物質が付着又は捕捉された際の重量変化又は粘弾性変化を周波数として発振する発振回路と、該発振回路から発振された周波数を計測する周波数カウンターとを備えたことを特徴とする検査装置。
  3. 標的物質が、タンパク質、脂質、糖、核酸及びこれらの複合体から選択される少なくとも1種である請求項2に記載の検査装置。
  4. 標的物質が、香料、麻酔薬、悪臭物質、芳香剤、医薬品、食品成分、ステロイドホルモン、色素及び苦味物質から選択される少なくとも1種である請求項2から3のいずれかに記載の検査装置。
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