JP4000953B2 - ブレーキブースタの流出空気量算出装置 - Google Patents

ブレーキブースタの流出空気量算出装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ブレーキブースタからエンジン吸気系のマニホールド部に流出する空気量を算出する技術、及びこの算出結果を用いてマニホールド部の質量空気の流入量、流出量の収支計算を行いつつ、エンジンのシリンダに吸入される質量空気量を算出する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
エンジンのシリンダ吸入空気量を高精度に算出する方式として、本願出願人は先に、吸気系のマニホールド部に流入する質量空気量とマニホールド部から流出する質量空気量との収支計算を行ってマニホールド部内の質量空気量を算出しつつ、該マニホールド部内の質量空気量とシリンダ容積とに基づいて、エンジンのシリンダに吸入される質量空気量を算出する方式を提案している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、乗用車ではエンジン吸気系のマニホールド部の負圧を用いてブレーキ力を増幅するブレーキブースタを備えたものが多いが、このものでは、一般的である。
上記ブレーキブースタを備えたものでは、始動時(アイドル時にエンジン停止した後のエンジン再始動を含む)にブレーキブースタの負圧が小さい(絶対圧が大きい)と、その後マニホールド部の負圧が増大するにしたがって、マニホールド部内にブレーキブースタ内の空気が流出する。また、その後の通常エンジン運転中もブレーキ操作毎に、同様にマニホールド部内にブレーキブースタ内の空気が流出する。
【0004】
したがって、上記マニホールド部内の質量空気の収支計算によりシリンダ吸入空気量を算出する方式において、マニホールド部内に流入する空気量の算出をエアフローメータの検出値のみに基づいて行うと、ブレーキブースタからマニホールド部に流出する空気量は算出されないため、算出精度の低下を生じ、ひいては空燃比制御性能を低下させることとなる。
【0005】
本発明は、このような従来の課題に着目してなされたもので、ブレーキブースタからエンジン吸気系のマニホールド部に流出する空気量を精度よく算出し、ひいてはシリンダ吸入空気量の算出精度を確保することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このため、本発明は、
エンジン吸気系のマニホールド部にチェックバルブを介して接続するブレーキブースタから前記マニホールド部に流出する空気量を、
前記マニホールド部の絶対圧が前記ブレーキブースタの前記チェックバルブから負圧作動室にわたる負圧空間内の絶対圧より大きいとき、前記負圧空間内の圧力が一定のとき、エンジンの吸入空気量検出値が0のとき、の少なくとも1つの条件が満たされたときは0とし、
それ以外のときに、前記マニホールド部内の圧力と、前記負圧空間内の圧力と、ブレーキブースタ内空気温度と、前記マニホールド部と前記負圧空間とを結ぶ空気流路における最小断面積と、に基づいて算出する構成とする。
【0008】
以上示した発明の構成とすれば、ブレーキブースタからマニホールド部への流出空気量を、特別に流量センサを設けることなく、既存のセンサの検出値を用いるだけで高精度に推定することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の一実施形態を示す可変動弁エンジンを搭載したハイブリッド車両のパワートレインシステム図である。
起動用モータ21で起動されるエンジン1の出力軸は、パウダクラッチ等のクラッチ22を介して走行用モータ23に動力伝達・切り離し自由に接続され、走行用モータ23の出力軸は、変速機24、ディファレンシャルギア25を介して駆動輪26に接続されている。
【0011】
ドライバによるアクセル、ブレーキ、変速機シフト位置などの信号、車速信号、バッテリ充電状態の信号などが車両制御回路27に入力され、該車両制御回路27は、起動用モータ制御回路28、エンジン制御回路29、クラッチ制御回路30、走行用モータ制御回路31、変速機制御回路32を介して各部を制御する。
【0012】
また、本車両では、所定のアイドル条件で燃費および排気浄化性能改善のため、エンジン1を停止するいわゆるアイドルストップを行うようにしている。
図2は同上のエンジン及びブレーキブースタのシステム図である。
エンジン1の吸気通路2には、吸入空気量Qaを検出するエアフローメータ3が設けられ、スロットル弁4により吸入空気量Qaを調節する。
【0013】
エンジン1の各気筒には、燃焼室6内に燃料を噴射する燃料噴射弁7、燃焼室6内で火花点火を行う点火プラグ8が設けられており、吸気弁9を介して吸入された空気に対して前記燃料噴射弁7から燃料を噴射して混合気を形成し、該混合気を前記燃焼室6内で圧縮し、点火プラグ8による火花点火によって着火する。
エンジン1の排気は、排気弁10を介して燃焼室6から排気通路11に排出され、図示しない排気浄化触媒及びマフラーを介して大気中に放出される。
【0014】
前記吸気弁9及び排気弁10は、それぞれ吸気弁側カム軸12及び排気弁側カム軸13に設けられたカムにより開閉駆動される。
吸気弁側カム軸12、排気弁側カム軸13には、クランク軸に対するカム軸の回転位相を変化させることで、吸、排気弁の開閉時期を進遅角する油圧駆動式の可変バルブタイミング機構(以下、VTC機構という)14がそれぞれ設けられている。
【0015】
ここで、前記スロットル弁4、燃料噴射弁7及び点火プラグ8の作動は、前記エンジン制御回路(ECU)29により制御され、該ECU29には、クランク角センサ15、カムセンサ18、水温センサ16、エアフローメータ3等からの信号が入力される。
また、ECU29は、クランク角センサ15及び吸気側、排気側それぞれのカム軸センサ18からの検出信号に基づいて、クランク軸に対する吸気カム軸12の回転位相(VTC位相)、クランク軸に対する排気カム軸13の回転位相(VTC位相)をそれぞれ検出することで吸気弁9及び排気弁10の開閉時期を検出すると共に、エンジンの負荷、エンジン回転速度Ne、冷却水温度Tw等の情報に基づいて吸気側カム軸12及び排気側カム軸13の目標位相角(進角値又は遅角値)を決定して、吸気弁9及び排気弁10の開閉時期を制御する。
【0016】
前記燃料噴射弁7の燃料噴射時期及び燃料噴射量は、エンジン運転条件に基づいて制御するが、燃料噴射量は、基本的には、エアフローメータ3により計測される吸入空気量(質量流量)Qaに基づいて後述のごとく算出されるシリンダ吸入空気量(シリンダ部質量空気量)Ccに対し、所望の空燃比となるように制御する。
【0017】
点火栓8による点火時期は、エンジン運転条件に基づいて、MBT(トルク上の最適点火時期)又はノック限界に制御する。
次に、ブレーキブースタについて説明すると、吸気通路2のスロットル弁4下流のマニホールド部2Aからブレーキ配管41が分岐し、チェックバルブ42を介してマスターシリンダ43に隣接する負圧作動室44に接続される。前記チェックバルブ42は、負圧作動室44からマニホールド部2Aへの空気流動を許容し、逆方向の流動を阻止する機能を有する。該チェックバルブ42と負圧作動室44との間のブレーキ配管41には、安定したブレーキ負圧を確保するための負圧タンク45が接続される。
【0018】
負圧作動室44のマスターシリンダ43と反対(後方)側に、中央部に真空弁47を装着したダイアフラム48を介して大気導入室49が隣接する。マスターシリンダ43には、ピストンロッド50が嵌挿され、負圧作動室44の反対(前方)側の油圧室にブレーキオイルが満たされ、図示しないホイールシリンダに通じている。前記ピストンロッド50は前記真空弁47及び大気導入室49の背壁に固定された大気弁51を貫通してブレーキペダル52に連結している。
【0019】
また、前記チェックバルブ42から負圧作動室44までの空間内のブレーキ負圧を検出するブレーキ負圧センサ46、前記マスターシリンダ43内の油圧を検出する油圧センサ53が配設され、マニホールド部2Aには、該マニホールド部2A内の吸気負圧を検出する吸気圧センサ54が配設される。
図3は、ブレーキ踏込み/解除時の前記真空弁47及び大気弁51の開閉機能と、動作状態を示す。ブレーキペダル52を開放している(OFF)ときは、真空弁47は開、大気弁51は閉となって、負圧作動室44と大気導入室51にマニホールド部2A内の吸気負圧が導かれ圧力差が無い状態で平衡している。
【0020】
ブレーキペダル52を踏み込むと、真空弁47は閉、大気弁51は開となって、大気中から大気導入室49に大気が流入しつつ、負圧作動室44内の空気が負圧作動室44の容積縮小分だけブレーキ配管41を介してマニホールド部2Aに流出する。ここで、大気導入室49内の大気圧と負圧作動室44内の負圧との差圧でブレーキ操作力が増幅され、踏込み力を軽減できる。
【0021】
ブレーキペダル52を踏み込んだ状態で維持、または、僅かに踏み込むと、真空弁47及び大気弁51共に閉となって、前の状態を維持する。
ブレーキペダル52を戻し操作すると、真空弁47は開、大気弁51は閉となって、大気導入室49から負圧作動室44に容積変化分の大気が流入し、該流入分は、ブレーキ配管41を介してマニホールド部2Aに流出する。
【0022】
上記ブレーキ操作によりブレーキブースタからマニホールド部2Aに流出する空気量を算出する。図4は、前記流出空気量を算出するフローを示す。
ステップ(図ではSと記す。以下同様)101では、前記吸気圧センサ53によって検出されるマニホールド部2A内の吸気負圧(絶対圧)PMANI、ブレーキ負圧センサ46によって検出されるブレーキ負圧(絶対圧)PBRKMVを読み込む。
【0023】
ステップ102では、ブレーキブースタからマニホールド部2Aへ空気が流出していないかを判定し、流出していないと判定されたときは、ステップ103へ進んで流出空気量QBMV=0とする。
この判定は、(1)ブレーキ負圧PBRKMVが一定、(2)マニホールド部の吸気負圧PMANI>ブレーキ負圧PBRKMV、(3)エアフローメータにより検出される吸入空気量が0のとき、マニホールド部への空気流出が無いと判定する。
【0024】
ここで、(1)のブレーキ負圧PBRKMVが一定を流出空気量QBMV=0を条件とすることにより、ブレーキ負圧センサ46で検出されるブレーキ負圧PBRKMVと吸気圧センサ54で検出される吸気負圧PMANIにずれがある場合でも、ブレーキ非動作時でブレーキ負圧PBRKMVが一定のときはブレーキ作動と誤判定されることがなく、定常的な誤演算を防止できる。
【0025】
また、(2)の状態ではチェックバルブ42によりマニホールド部2Aへの空気の流出が阻止されるから、正しくマニホールド部2Aへの空気流出が無いと判定することができる。
また、(3)はエンジン停止状態のときであり、例えば、アイドルストップ中のブレーキ操作でブレーキブースタの圧力が大気圧以上となった場合の誤演算により、マニホールド部2A内の空気密度を誤演算することを防止できる。
【0026】
ステップ102でマニホールド部への空気流出があると判定されたときは、該流出空気量QBMVを以下のようにして算出する。
まず、ステップ104では、空気流出がチョーク(流速最大一定の臨界状態)中か否かを、次式が成立しているかで判定する。
PMANI≦[2/(κ+1)]k/k-1×PBRKMV
κ:比熱比で空気の場合、1.4を用いる
ステップ104でチョーク中でないと判定されたときは、ステップ105へ進み、流出空気量QBMV(=QBMV1)を以下のように算出する。
【0027】
QBMV1≒ABRK×PBRKMV×[{2/(Rmv・Tmv)}
×κ/(κ−1)×{(PMANI/PBRKMV)2/k−(PMANI/PBRKMV)(k+1)/k}]1/2
ABRK:ブレーキ配管の最小断面積[m2]、PBRKMV:負圧空間内圧力[Pa]、PMANI:マニホールド部内圧力[Pa]、Tmv:負圧空間内温度[K]、Rmv:負圧空間内ガス定数[J/(Kg・K)]、κ:ブレーキブースタ内ガス比熱比
既述の実施形態と同様にTmv=Ta(吸気温度)、Rmv=Ra(空気のガス定数)とし、かつ、PMANI/PBRKMV=RPRES(比熱比)で書き換えると、次式のようになる。
【0028】
QBMV1≒ABRK×PBRKMV×{(2/Ra)×κ/(κ−1)}1/2×(1/Ta)1/2×(RPRES2/k−RPRES(k+1)/k1/2=ABRK×PBRKMV×K×G1(Ta)×G2(RPRES)
ここで、ブレーキ配管の最小断面積ABRKは、通常チェックバルブ42で断面積最小としてよい。チェックバルブ42は、中間開度もあり得るが、通常は差圧により直ぐに全開となるので全開固定値としてよいが、差圧をパラメータとしたテーブルを作成して検索した値を用いて精度を向上させることも可能である。定数Kは空気の比熱比κ=1.4とガス定数Ra=287.04J/(Kg・K)を用いてK=κ/(κ−1)}1/2=0.156として算出される。G1(Ta)=(1/Ta)1/2は、演算負荷軽減のため吸気温度Taをパラメータとするテーブルを与えて参照すればよいが、ROM容量低減のため使用温度領域を考慮して直線近似を行ってテーブルを作成してもよい。さらに、吸気温センサを備えない場合には吸気温度標準値で算出した固定値としてもよい。G2(RPRES)=(RPRES2/k−RPRES(k+1)/k1/2は、圧力比RPRES(=PMANI/PBRKMV)をパラメータとするテーブルを与えて参照すればよい。
【0029】
一方、ステップ104でチョーク中と判定されたときは、ステップ106へ進み、流出空気量QBMV(=QBMV2)を以下のように算出する。
QBMV2=ABRK×PBRKMV×[{κ/(Rmv・Tmv)}×2/(κ−1)(k+1)/k]]1/2
上記同様に、Rmv=Ra、Tmv=Taとして、
QBMV2=ABRK×PBRKMV×[{κ/(Ra・Ta)}×2/(κ−1)(k+1)/k]]1/2=ABRK×PBRKMV×K×G1(Ta)
で表されるので、既述したようにして求められるABRK、PBRKMV、K、G1(Ta)を乗じて算出できる。
【0030】
次に、以上の実施形態とは異なる要素に基づいて、ブレーキブースタからマニホールド部への流出空気量を算出する参考例について説明する。
図5は、本参考例により流出空気量を算出するフローを示す。
ステップ201では、前記吸気圧センサ53によって検出されるマニホールド部2A内の吸気負圧(絶対圧)、ブレーキ負圧センサ46によって検出されるブレーキ負圧(絶対圧)、油圧センサ53によって検出されるマスターシリンダ43内の油圧を読み込む。
【0031】
ステップ202では、前記油圧に基づいて、油圧−ストローク量の関係を示したテーブルからブレーキストローク量(ダイアフラム48の移動量)を求める。
ステップ203では、前記ブレーキストローク量の変化量ΔSmvが負か否かを判定する。ここで、ブレーキペダル52を踏み込む方向を正とし、戻し方向を負として変化量ΔSmvの正負を判定する。
【0032】
そして、変化量ΔSmvが負、つまり、ブレーキペダル52の戻し操作時は、ステップ204へ進み、大気導入室49から負圧作動室44へ流入する空気量QBMVRFを次式により算出する。
Figure 0004000953
ここで、VSTKBはブレーキストローク分容積(=ストローク量×ダイアフラム面積)であり、VSTKBzは、その前回算出値である。また、Raは空気のガス定数、Taは吸気温度であり、ブレーキブースタ内空気温度をブレーキ動作中も一定として、吸気温度Taで代用する。ΔTは単位時間(算出周期)である。
【0033】
また、変化量ΔSmvが負でない、つまり、ブレーキペダル52の踏込み時若しくは現状維持状態と判定されたときは、ステップ205へ進んで大気導入室49から負圧作動室44へ流入する空気量QBMVRFを0とする。
これは、上述したように、ブレーキ踏込みまたは維持しているとき(変化量ΔSmv≧0)は、真空弁47が閉じているため、大気導入室49から負圧作動室44への空気流入は無く、また、踏込み中は大気弁51が開き大気導入室49が大気圧となる。そして、次に、真空弁47が開くブレーキ戻し時(変化量ΔSmv<0)は、戻した容積分だけ大気導入室49から負圧作動室44へ空気流入があることに基づいて算出するものである。
【0034】
ステップ206では、ブレーキブースタからマニホールド部2Aへ空気が流出していないかを判定し、流出していないと判定されたときは、ステップ207へ進んで流出空気量QBMV=0とする。該判定は、既述した図4でのステップ102と同様に行われる。
ステップ206で、マニホールド部への空気流出があると判定されたときは、該流出空気量QBMVを以下のようにして算出する。
【0035】
まず、ステップ208では、前記チェックバルブ42からピストンロッドで仕切られる負圧作動室44までの空間(以下負圧空間という)の容積Vmvを算出する。
Vmv=Vboff−VSTKB
Vboff:ブレーキOFF(ストローク=0)時の負圧空間容積[m3]、VSTKB:ストローク分容積[m3]として求められる。
【0036】
また、ストローク分容積VSTKBは、ダイアフラムの投影面積Amv[m2]とステップ202で求めたストローク量Smv[m]との積として算出される。
ステップ209では、前記負圧空間内に充填している空気質量MBMVを算出する。
【0037】
理論的には、MBMV=PBRKMV×Vmv/(Rmv×Tmv)
PBRKMV:負圧空間内圧力[Pa]、Vmv:負圧空間容積[m3]、Rmv:負圧空間内のガス定数[J/(Kg・K)]、Tmv負圧空間内のガス温度[K]で求められるが、状態が変化しても温度変化なしとし、Rmv=Ra(空気のガス定数)=287.04J/(Kg・K)、Tmv=Ta(吸気温度)と仮定すると、次式のように求めることができる。
【0038】
MBMV=PBRKMV×Vmv/(Ra×Ta)
このように、負圧空間内のガス温度を吸気温度Taで代用することで、一般的に装着される吸気温度センサの検出値を流用でき、新たにブレーキブースタ内空気温度を検出するセンサを設ける必要がないので、コストを軽減できる。
ステップ210では、ブレーキブースタ(負圧空間)からマニホールド部2Aに流出する空気量QBMV(=QBMV1)を以下のように算出する。
【0039】
前記負圧空間の空気質量MBMVは、前記大気導入室49から負圧作動室44(負圧空間)へ流入する空気量QBMVRFと、負圧空間からマニホールド部2Aに流出する空気量QBMV1との収支計算により、次式のように表される。
MBMV=MBMVz+(QBMVRF−QBMV1)×ΔT
したがって、QBMV1=(MBMVz−MBMV)/ΔT+QBMVRF
として流出空気量QBMV1を算出できる。
【0040】
また、本参考例では、マニホールド部の吸気負圧を吸気圧センサによって検出する構成としたが、該吸気負圧を後述するようにして算出されるマニホールド部内空気質量Cmより次式で算出した推定値PMANIを用いることもできる。
PMANI=Cm×Ra×Ta/VMANI
VMANI:マニホールド部容積
また、ブレーキストローク量Smvを、マスターシリンダ内油圧でテーブルから参照する代わりに、直接ストローク量センサを設けて検出する構成としてもよい。
【0041】
図6は、かかるマニホールド部の吸気負圧PMANIとして推定値を用い、かつ、ストローク量センサでブレーキストローク量Smvを検出した参考例におけるブレーキブースタからマニホールド部への流出空気量を算出するフローを示す。
このようにすれば、図2に示した吸気圧センサ54を省略できコストを軽減できる。
【0042】
以上示した実施形態または参考例によれば、ブレーキブースタからマニホールド部への流出空気量を、特別に流量センサを設けることなく、既存のセンサの検出値を用いるだけで高精度に推定することができる。
そして、上記ブレーキブースタからマニホールド部への流出空気量を、マニホールド部の収支演算に追加することにより、該マニホールド部の収支演算によるシリンダ吸入空気量の算出を、ブレーキ操作による影響を回避しつつ正確に行うことができ、高精度な空燃比制御性能を確保できる。
【0043】
図7は、かかるシリンダ吸入空気量を連続計算するルーチンのフローを示し、所定時間Δt毎に繰り返し実行される。また、図8には連続計算部をブロック図で示している。
ステップ401では、マニホールド部吸気収支計算(マニホールド部質量空気量Cmの収支計算)のため、次式のごとく、マニホールド部内の質量空気量の前回値Cm(n-1)に、エアフローメータを経てマニホールド部へ流入する質量空気量Ca(=Qa・Δt)を加算する一方、マニホールド部からシリンダ部へ流出するシリンダ吸入空気量(質量空気量)Cc(n) を減算し、さらに、前記ブレーキブースタからマニホールド部への流出空気量QBMVz(QBMVの前回算出値)を加算して、マニホールド部内の質量空気量Cm(n)(g)を算出する。
【0044】
Cm(n) =Cm(n-1) +Ca−Cc(n)+QBMVz
ここで用いるCc(n) は前回のルーチンで次のステップ22により算出されたCcである。
ステップ402では、シリンダ吸入空気量(シリンダ部質量空気量Cc)の算出のため、次式のごとく、所定時間Δtあたりのシリンダ吸入空気量(シリンダ部体積空気量)Vcに、マニホールド部質量空気量Cmを掛算し、また、マニホールド部容積Vm(一定値)で除算して、所定時間Δtあたりのシリンダ吸入空気量(シリンダ部質量空気量)Cc(g)を求める。なお、シリンダ吸入空気量(シリンダ部体積空気量)Vcは、吸気弁9の閉時期IVC、開時期IVO、排気弁10の閉時期EVCに基づいて新気割合と実吸入容積から吸気行程毎の新気体積量を算出し、単位時間Δtあたりの新気体積量に換算することにより算出する。
【0045】
Cc=Vc・Cm/Vm ・・・(1)
この(1)式は、次のように求められる。
気体の状態方程式P・V=C・R・Tより、C=P・V/(R・T)であるので、シリンダ部について、
Cc=Pc・Vc/(R・Tc) ・・・(2)
となる。
【0046】
ここで、Pc=Pm、Tc=Tmと仮定するので、
Cc=Pm・Vc/(R・Tm) ・・・(3)
となる。
一方、気体の状態方程式P・V=C・R・Tより、P/(R・T)=C/Vであるので、マニホールド部について、
Pm/(R・Tm)=Cm/Vm ・・・(4)
となる。
【0047】
この(4)式を(3)式に代入すれば、
Cc=Vc・〔Pm/(R・Tm)〕=Vc・〔Cm/Vm〕
となり、上記(1)式が得られる。
以上のように、ステップ401,402を繰り返し実行することにより、すなわち図8に示すように連続計算することにより、シリンダ吸入空気量であるシリンダ部質量空気量Cc(g)を求めて、出力することができる。ここで、図8に示す連続計算は、エンジン回転が停止して、シリンダ部質量空気量Ccが0になった後も、吸入空気量Qaが0になるまで継続される。尚、ステップ401,402の処理順序は逆でもよい。
【0048】
図9は、図4〜図6の演算により算出されるブレーキブースタからの流出空気量QBMVを実測値と比較して示すと共に、該流出空気量QBMVを含めてマニホールド部空気質量を算出した値を、流出空気量QBMVを含めずに(補正無し)マニホールド部空気質量を算出した結果と比較して示したものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態にかかる可変動弁エンジンを搭載したアイドルストップ車両のシステム構成を示す機能ブロック図。
【図2】 同上のエンジン及びブレーキブースタのシステム図。
【図3】 同上のブレーキブースタの動作状態を示す表。
【図4】 ブレーキブースタからの流出空気量を算出する実施形態のフローチャート。
【図5】 ブレーキブースタからの流出空気量を算出する第1参考例のフローチャート。
【図6】 ブレーキブースタからの流出空気量を算出する第2参考例のフローチャート。
【図7】 連続計算(マニホールド部吸気収支計算及びシリンダ吸入空気量算出)ルーチンのフローチャート。
【図8】 連続計算部のブロック図。
【図9】 ブレーキブースタからの流出空気量を実測値と比較して示すと共に、該流出空気量を含めてマニホールド部空気質量を算出した値を、流出空気量を含めずにマニホールド部空気質量を算出した結果と比較して示した図。
【符号の説明】
1:エンジン 2:吸気通路 3:エアフローメータ 4:スロットル弁 7:燃料噴射弁 9:吸気弁 10:排気弁 12:吸気弁側カム軸13:排気弁側カム軸 14:可変バルブタイミング機構 15:クランク角センサ 27:車両制御回路 29: エンジン制御回路(ECU)
41:ブレーキ配管 42:チェックバルブ 43:マスターシリンダ
44:負圧作動室 45:負圧タンク 46:ブレーキ負圧センサ 47:真空弁 48:ダイアフラム 49:大気導入室 51:大気弁 52ブレーキペダル 53:油圧センサ 54:吸気圧センサ

Claims (2)

  1. エンジン吸気系のマニホールド部にチェックバルブを介して接続するブレーキブースタから前記マニホールド部に流出する空気量を、
    前記マニホールド部の絶対圧が前記ブレーキブースタの前記チェックバルブから負圧作動室にわたる負圧空間内の絶対圧より大きいとき、前記負圧空間内の圧力が一定のとき、エンジンの吸入空気量検出値が0のとき、の少なくとも1つの条件が満たされたときは0とし、
    それ以外のときに、前記マニホールド部内の圧力と、前記負圧空間内の圧力と、ブレーキブースタ内空気温度と、前記マニホールド部と前記負圧空間とを結ぶ空気流路における最小断面積と、に基づいて算出することを特徴とするブレーキブースタの流出空気量算出装置。
  2. 前記マニホールド部内の圧力を、該マニホールド部内の空気流出量と空気流入量との収支により算出したマニホールド部内空気質量の算出結果を用いて算出することを特徴とする請求項1に記載のブレーキブースタの流出空気量算出装置。
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