JP4000426B2 - 輸液製剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はプラスチック製輸液容器に収容されて滅菌された還元糖含有輸液製剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、経口栄養や経管栄養が不可能であったり、不十分である患者に対しては、経静脈的栄養補給の目的から、輸液が投与されている。
【0003】
かかる輸液としては、必須アミノ酸等を含有するアミノ酸輸液、ミネラル類を含有する電解質輸液、還元糖等を含有する糖輸液、植物油等を含有する脂肪乳剤等が市販されており、之等は患者の症状等に合わせて用時に適宜混合して用いられているが、2種以上の輸液の混合利用の場合は、その混合時に細菌汚染等の問題を伴う危険があると共に、それらの混合操作が煩雑である等の問題がある。
【0004】
上記問題を解決するものとして、予め2種以上の輸液を混合して調製された輸液製剤も開発、市販されている。しかしながら、還元糖を用いた輸液製剤では、該還元糖が滅菌時及び保存時に分解し、その分解物によって輸液製剤が着色する難点がある。この難点は、一般に輸液製剤のpHを低く保つことで改善できるが、輸液製剤が本来生体内に大量に投与適用されるものであることを考慮すると、該製剤のpHは血液のpHからあまりかけ離れていないのが望ましく、従って、pHをあまり低くすることは好ましくない現状にある。
【0005】
このため、生理的pHに近い還元糖含有輸液製剤の研究、開発が当業界で切望されている。
【0006】
また、特に還元糖と共に脂肪乳剤を含有する輸液製剤の場合は、これを低pHに調整すると、脂肪乳剤中の脂肪酸が遊離して品質を劣化させる不利があり、このため、pHを5〜7.5程度に調整され且つこのpH調整とは別個に例えばジチオグリセロールやジチオスレイトール等の着色防止剤の添加策が採られている現状にある(例えば、特開平5−9112号公報等参照)。
【0007】
しかしながら、かかる着色防止剤等の栄養補給に関連しない成分の添加配合は、それ自体決して好ましくなく、できるだけ回避したいものであり、また当該輸液製剤は着色防止剤に由来して硫黄臭がするという欠点がある。従って、着色防止剤を用いることなく、還元糖の分解による着色を伴わず、遊離脂肪酸の生成をも抑制できる還元糖含有輸液製剤の研究・開発が当業界で切望されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は当業界で切望されている、生理的pHに近く且つ着色防止剤を用いずとも、還元糖の分解による着色を伴わないか該着色を充分に抑制できる還元糖含有輸液製剤を開発、提供する点、及び還元糖と共に脂肪乳剤を含有する輸液製剤の場合は、更に遊離脂肪酸の生成をも確実に抑制できる、改善された安定な輸液製剤を開発、提供する点にある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記事情に鑑み生理的pHを有し、着色防止剤を用いない還元糖を混合した輸液製剤、及び特に脂肪乳剤加還元糖配合輸液製剤の場合は遊離脂肪酸の生成をも抑制する技術につき鋭意研究を重ねた。
【0010】
その結果、汎用されているプラスチック製輸液容器(一次容器)において、これに収容すべき5.0〜8.0程度のpHを呈する薬液に、予め(滅菌前)炭酸ガスを溶解させて該液のpHを一時的に低下させた状態で滅菌し、その後薬液からの炭酸ガスの放出を、炭酸ガス吸収剤の利用により迅速に行なわせることにより生理的pHを有し且つ着色防止剤を用いない輸液製剤が提供でき、また該薬液が脂肪乳剤をも含む場合には、更に酸素吸収剤の利用によって薬液に対する酸素の悪影響を防止することによって、何等着色防止剤を利用せずとも、滅菌中及び保存中において還元糖の分解物の生成が抑制され、その結果、着色が抑制乃至防止され、遊離脂肪酸の生成も確実に抑制されるという事実を見出した。本発明はこの新規な知見に基づいて完成されたものである。
【0011】
即ち、本発明によれば、液中に炭酸ガスを溶解させた状態で滅菌された還元糖含有薬液入りプラスチック製輸液容器(以下これを「一次容器」という)を、炭酸ガス吸収剤と共に、また上記薬液が脂肪乳剤をも含む場合には更に酸素吸収剤と共に、実質的に酸素を透過しない外装容器(以下これを「二次容器」という)に収容させたことを特徴とする輸液製剤(還元糖配合輸液製剤)が提供される。
【0012】
本発明によれば、より詳しくは、還元糖を含む薬液が更に電解質を含むものである還元糖配合輸液製剤(以下「電解質加還元糖配合輸液製剤」という)、特に炭酸ガス吸収剤が、アルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ土類金属水酸化物の水溶液、より好ましくは水酸化ナトリウム水溶液である電解質加還元糖配合輸液製剤、及び還元糖を含む薬液が更に脂肪乳剤を含むものである輸液製剤(以下「脂肪乳剤加還元糖配合輸液製剤」という)、特に一次容器及び炭酸ガス吸収剤に更に脱酸素剤を二次容器に収容した脂肪乳剤加還元糖配合輸液製剤が提供される。
【0013】
本発明輸液製剤においては、炭酸ガス溶解後の薬液pHが3.5〜6.5の範囲であるもの、特に電解質加還元糖配合輸液、並びに炭酸ガス溶解後の薬液pHが4〜6.5の範囲である脂肪乳剤加還元糖配合輸液製剤が好ましい。
【0014】
尚、之等各輸液製剤は、いずれも炭酸ガス溶解前及び滅菌後の薬液pHは5.0〜8.5の範囲にあるのが好ましく、特に脂肪乳剤加還元糖配合輸液製剤の場合は、炭酸ガス溶解前及び滅菌後の薬液pHは5.0〜7.5の範囲にあるのが好ましい。
【0015】
更に、本発明によれば、より好ましくは還元糖がブドウ糖、果糖及びマルトースから選ばれる少なくとも1種である還元糖配合輸液製剤;炭酸ガス溶解時及び保存時の還元糖の分解物の生成抑制によって着色が抑制されている還元糖配合輸液製剤;及び炭酸ガス溶解時及び保存時の還元糖の分解物の生成抑制によって着色が抑制され且つ保存時の遊離脂肪酸の生成が抑制されている脂肪乳剤加還元糖配合輸液製剤が提供される。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明に係わる還元糖配合輸液製剤は、上記特定の炭酸ガス利用と炭酸ガス吸収剤の利用により生理的pHとされ且つ着色防止剤を不要とすること、特に脂肪乳剤加還元糖配合輸液製剤の場合は更に酸素吸収剤の利用に基づいて、着色防止剤を添加配合せずとも還元糖の分解による着色が抑制乃至防止され、更に遊離脂肪酸の生成も抑制されていることをその最大の特徴とし、また、電解質加還元糖配合輸液製剤の場合は、二次容器内に水溶液状の炭酸ガス吸収剤を収容した場合には、一次容器内の電解質加還元糖配合輸液中に存在するHCO3 -をCO2ガスとして精度よく吸収でき、その結果、炭酸ガス吸収剤が固型状の場合に較べて輸液のpHを任意の値により容易に調整できることをも特徴としている。
【0017】
かかる本発明製剤は、上記特徴点以外は、従来のこの種還元糖配合輸液製剤と略々同様とすることができる。
【0018】
即ち、本発明製剤中、電解質加還元糖配合輸液製剤においては、電解質として一般的な例えば炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、乳酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム等の電解質を用いることができる。
【0019】
また、この電解質加還元糖配合輸液製剤においては、重炭酸イオンの配合を必須とし、これによって、即ち上記特徴とする二次容器内に水溶液状の炭酸ガス吸収剤の収容によって、輸液中のHCO3 -をCO2ガスとして吸収する場合の、炭酸ガス吸収剤の量を、後述する試験例に示されたグラフ(図1)から算出することができ、固形状の炭酸ガス吸収剤の場合に比べて、輸液のpHをより容易に生理的なpH値に維持することができる。
【0020】
また本発明において用いられる脂肪乳剤としては、公知の各種のものをいずれも使用できる。これに用いられる油脂もまた慣用のものでよく、その例としては、例えば大豆油、綿実油、サフラワー油、トウモロコシ油、ヤシ油、シソ油、エゴマ油等の植物油の他、タラ肝油等の魚油、例えばパナセート(日本油脂社製)、ODO(日清製油社製)等の中鎖脂肪酸トリグリセリド、例えば2−リノレオイル−1,3−ジオクタノイルグリセリロール、2−リノレオイル−1,3−ジデカノイルグリセロール等の化学合成トリグリセリド(Chemical defined triglycerides)等を例示でき、之等は1種を単独でもまた2種以上混合しても利用できる。該脂肪乳剤に用いられる乳化剤もまた、通常医薬製剤に慣用されるものの1種単独又は2種以上でよく、その例としては、例えば卵黄リン脂質、水素添加卵黄リン脂質、大豆リン脂質、水素添加大豆リン脂質や例えば「プルロニックF68」、「HCO−60」(いずれも商品名)等の非イオン性界面活性剤等を例示できる。
【0021】
更に、本発明輸液製剤において利用される還元糖も、汎用される各種のものでよく、好ましいものとしては、例えばブドウ糖、果糖、マルトース等を例示できる。之等の還元糖もまた、その1種のみを単独で用いる必要はなく、2種以上を併用することができる。
【0022】
上記電解質又は脂肪乳剤と還元糖とを含む混合輸液(薬液)は、単に両者を混合することにより容易に調製され、還元糖の添加混合は、予め電解質又は脂肪乳剤の調製後に行なってもよいし、電解質又は脂肪乳剤の調製時に行なってもよい。
【0023】
かくして得られる薬液の滅菌方法は、該薬液に炭酸ガスを溶解させ、そのpHを低下させた状態で実施されることが重要であり、他の操作条件等、例えば滅菌時間、滅菌温度等は、通常のこの種滅菌操作条件等と同様のものとすることができる。より好ましくは、上記滅菌は、例えば102〜121℃の温度条件下で20〜60分間加熱することにより行なわれる。
【0024】
また、上記薬液への炭酸ガスの溶解、調製は、例えば代表的には、薬液の入った調製タンクの空間部を炭酸ガスで加圧し、目的のpHとした後、そのpHと平衡の炭酸ガス率の混合ガス(窒素ガス−炭酸ガス、空気−炭酸ガス等)又は炭酸ガス単独で加圧し、若しくは常圧で、そのpHを保持させることにより行なうことができる。その後、薬液をプラスチック製輸液容器、例えば輸液バッグ、輸液ボトル等の一次容器に充填し、その空間部を同様の混合ガス又は炭酸ガスで置換して、高圧蒸気滅菌、熱水滅菌、熱水シャワー滅菌等を行なうことにより、所望の滅菌操作を完結できる。
【0025】
上記pH値は、滅菌操作による還元糖の分解が抑制できる限り、特に制限されるものではないが、通常好ましくは、電解質加還元糖配合輸液等の還元糖配合輸液の場合は、約3.5〜6.5の範囲、脂肪乳剤加還元糖配合輸液の場合は、約4〜6.5の範囲とされるのがよい。
【0026】
上記滅菌方法によれば、薬液中に溶解させた炭酸ガスは、上記滅菌操作の間及びその後に薬液中から徐々に放出されるが、かかる薬液を収容したプラスチック製輸液容器を通常慣用されるようにガスバリア性の二次容器にて包装する場合には、その完全放出がかなり困難となり、非常に長時間に亘って薬液のpHは酸性側に傾いたままとなる。そのため還元糖由来の5−HMF類(5−ヒドロキシメチル−2−フルフラール,5-Hydroxymethyl-2-furfural)が生成しやすく、脂肪乳剤加還元糖配合輸液の場合は遊離脂肪酸の生成するおそれが高くなる。
【0027】
本発明においては、かかる5−HMF類の生成や遊離脂肪酸生成のおそれを確実に回避するために、上記滅菌が終了した薬液入りプラスチック製輸液容器を、炭酸ガス吸収剤と共に、また脂肪乳剤加還元糖配合輸液の場合は、更に脱酸素剤と共に、実質的に酸素を透過しない包装容器に収容する。これによって、短時間で薬液のpHを炭酸ガス溶解前のpHに戻すことができ、その結果、液のpHを生理的なpH領域(約5.0〜7.5)とできるだけでなく、液の酸性化に基づく5−HMF類生成や遊離脂肪酸生成のおそれを回避できる。
【0028】
一方、電解質加還元糖配合輸液製剤の場合には、炭酸ガス溶解前のpHが8を越える場合があり、このため脂肪乳剤加還元糖配合輸液製剤の場合と同様に、炭酸ガス溶解前のpHまで戻すのは、生理的pH領域を越えることとなり、好ましくない場合がある。本発明では、かかる場合に、アルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ土類金属水酸化物の水溶液を炭酸ガス吸収剤としてガス透過性容器に収容し、これを一次容器と共に、二次容器に収容して、上記炭酸ガス吸収剤の量を適宜選択することにより所望のpHを維持することができる。これは薬液pHと水溶液状態の上記炭酸ガス吸収剤の量との間に一定の相関関係があることを利用したものであり、これにより、薬液pHを炭酸ガス溶解前のそれよりも低い生理的なものに保つことができる。
【0029】
また、本発明の脂肪乳剤加還元糖配合輸液製剤では、上記二次容器内に脱酸素剤を同時に収容することによって、二次容器を通過して進入する酸素による薬液に対する悪影響をも除くことができ、かくして、上記遊離脂肪酸の生成をより一層確実に抑制乃至防止でき、更に還元糖の分解も確実に抑制することができる。
【0030】
本発明輸液製剤において、薬液を収容するプラスチック製輸液容器(一次容器)及び水溶液状態の炭酸ガス吸収剤を収容する容器の材質は、従来より医薬容器等に慣用されている各種のガス透過性プラスチックであることができる。その具体例としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、架橋エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体、之等各ポリマーのブレンド、之等各ポリマーの積層体(多層体)等を例示できる。
【0031】
実質的に酸素を透過しない二次容器及びその材質としては、従来よりよく知られているガスバリア性のものと同様でよく、通常その材質としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、エチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ナイロン、ポリエステル等を例示できる。上記二次容器は、之等材質のいずれかからなるか又はこれを含むフィルム乃至シートで構成されるか、之等フィルム乃至シートの積層体、之等フィルム乃至シートをシリカ、アルミナ等で蒸着したものの積層体、多層フィルム等、好ましくは多層フィルム製であるのがよい。
【0032】
尚、「実質的に酸素を透過しない」とは、通常酸素透過度が約10ml/m2 ・日以下、より好ましくは約1ml/m2 ・日以下をいう。
【0033】
炭酸ガス吸収剤は、公知の各種のもの、例えば市販されている炭酸ガス吸収能を有する吸収剤のいずれでもよく、その具体例としては、E200、E400、E500(いずれも三菱瓦斯化学社製)等に加えて、輸液製剤が重炭酸イオンを含む電解質加還元糖配合輸液製剤の場合は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物の水溶液等であることもでき、之等はガス透過性プラスチック容器に収容して用いられる。之等炭酸ガス吸収剤は、その利用形態には特に限定はなく、例えば液状形態或いは粉末品のような微粒子形態の場合は、必要量を通気性のある小袋等に入れて用いることができ、球状や棒状等の成形品形態の場合には、上記と同様小袋に入れて用いられる他、そのまま用いることもできる。
【0034】
之等炭酸ガス吸収剤の使用量は、バッグ内液700mlに対して通常500mlの炭酸ガス吸収能を有する程度で充分である。また、液状の炭酸ガス吸収剤を使用する電解質加還元糖配合輸液製剤の場合は、所望のpHとなるように算出された所定量とすればよく、この使用量は、例えば図1の検量線に基づき算出することができる。
【0035】
更に、脂肪乳剤加還元糖配合輸液製剤において用いられる脱酸素剤も、従来より知られている酸素吸収能を有する各種のもののいずれでもよい。その好ましい例としては、例えば水酸化鉄、酸化鉄、炭化鉄等の鉄化合物を有効成分とするものを例示できる。特に本発明に有利に利用できる上記脱酸素剤の市販品としては、例えば「エージレス」(三菱瓦斯化学社製)、「モジュラン」(日本化薬社製)、「セキュール」(日本曹達社製)等を例示できる。
【0036】
上記脱酸素剤はその形態に応じてそのままで又は通気性のある小袋等に収容した形態で、プラスチック製輸液容器及び炭酸ガス吸収剤と共に、二次容器内に収容することができる。その使用量は、一次容器内液700mlに対して200mlの酸素吸収能を有する程度で十分である。
【0037】
更に、上記炭酸ガス吸収剤と脱酸素剤とは、之等が収容容器内に一次容器とは別個に、即ち二次容器と一次容器との空間部に、収容(封入)される限り、特にそれぞれ独立して収容される必要はなく、例えば両者を一つの小袋等に混合して入れた形態で利用することもできる。
【0038】
かくして、本発明の輸液製剤製品を収得できる。これは、従来のこの種輸液製剤と同様にして利用することができる。例えば、二次容器を開封して、収容された輸液剤を単独で、若しくは必要に応じて他のアミノ酸製剤等と混合して、これを必要とする患者に経静脈的に投与され、所望の栄養補給効果等を奏し得る。
【0039】
【実施例】
以下、本発明を更に詳しく説明するため、実施例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0040】
【実施例1】
下記処方の重炭酸リンゲル液300mlを調製した。
【0041】
重炭酸塩含有薬液(mg/ml)
炭酸水素ナトリウム 2.268mg
塩化ナトリウム 6.721mg
塩化カリウム 0.298mg
塩化カルシウム(2水塩) 0.221mg
乳酸 0.500mg
ブドウ糖 50.000mg
上記で調製した薬液(pH=7.1)を炭酸ガスバブリングにより液pHを6.0とした後、平均厚み250μmのポリエチレン製バッグ(一次容器)に収容し、106℃、40分間高圧蒸気滅菌した。
【0042】
一方、炭酸ガス吸収剤として1N水酸化ナトリウム水溶液、2N水酸化ナトリウム水溶液及び4N水酸化ナトリウム水溶液をそれぞれ1mlずつ、外側が20μmのポリプロピレンで内側が30μmのポリエチレンからなるラミネートフィルム製袋(縦20mm、横35mm)に収容し、内部の空気をできるだけ排除して密封した。
【0043】
上記一次容器と各炭酸ガス吸収剤を収容したラミネートフィルム製袋とを、ガスバリア性のラミネートフィルムでできた袋(外側:ナイロン(厚さ15μm)/ポリビニルアルコール(厚さ12μm)/LLDPE(厚さ40μm):内側)(二次容器、容器内空間量300ml)に収容し、25℃の恒温槽で平衡化し、5日後に薬液pHを測定した。
【0044】
得られた結果を下記表1に示す。また、上記試験結果から求めたpHと炭酸ガス吸収剤の絶対量との関係を示すグラフを図1(縦軸:pH、横軸:炭酸ガス吸収剤絶対量(水酸化ナトリウム:mmol量))に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
図1より、炭酸ガス吸収剤絶対量(x)は、pH値をyとして、高い相関性(相関係数=0.9996)で、y=0.01470x+6.765なる式を満たす直線上に位置することが判る。
【0047】
【実施例2】
下記処方に従い、精製大豆油、精製卵黄レシチン、ブドウ糖及び有機酸(コハク酸)に注射用蒸留水を加え、TKホモミクサーで70℃下に30分間粗乳化を行ない、その後、マントンゴーリンホモジナイザー(400kg/cm2、10パス)で精乳化を行ない、乳剤を得た。そして、1N水酸化ナトリウム水溶液を用いて液pHを6.0に調製し、終量10リットルの薬液を調製した。
【0048】
〈処方〉
精製大豆油 44.4 g/l
精製卵黄レシチン 6.66g
ブドウ糖 114.3 g
コハク酸 0.2 g
水酸化ナトリウム(pH調整剤) 適量
注射用蒸留水 適量
上記調製タンクの空間部を炭酸ガスで加圧して液pHを5.2とした。その後、該空間部を液pHと平衡となる炭酸ガス率の混合ガス(炭酸ガス:窒素ガス=45:55)で上記pHを保持し、輸液バッグ(ポリエチレン製、フィルム厚250μm、内容1000ml)に1バッグ当たり700ml充填し、バッグの空間部を同様の混合ガスで置換して高圧蒸気滅菌釜に入れ、110℃で40分間滅菌して、輸液バッグを得た。
【0049】
次に、上記輸液バッグを冷却後、これと共に「E500」(三菱瓦斯化学社製、炭酸ガス吸収剤)及び「エージレスZH200」(三菱瓦斯化学社製、酸素吸収剤)を、ナイロン/エバール/ナイロン/直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)からなる4層の多層フィルム製の包装容器(内容1500〜1600ml)に収容して、本発明輸液製剤を得た。
【0050】
かくして得られた製品を、室温25℃、湿度60%にて18日間保存し、経時的に内部輸液のpH及びバッグ内炭酸ガス量の変化を観察した。
【0051】
その結果は、下記表2に示す通りである。尚、表2には、試験した輸液バッグの滅菌前のpH及び炭酸ガス量を併記する。
【0052】
また、表2には、上記「E500」を収容しない以外は同様にして作成(「エージレスZH200」のみを輸液バッグと共に収容)した比較輸液製剤I及び滅菌時における調製タンクの空間部及び輸液バッグの空間部を窒素ガスのみで置換(炭酸ガスを使用せず)し且つ上記「E500」を収容せず、上記「エージレスZH200」のみを輸液バッグと共に収容した比較輸液製剤IIについての同結果を併記する。
【0053】
【表2】
【0054】
表2より、本発明輸液製剤においては、炭酸ガスが約10日程度で殆どなくなり、pHは元のpH近くまで上昇し、かくして経時的遊離脂肪酸の生成が抑制されることが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1に従う試験において得られた薬液pHと炭酸ガス吸収剤との量的関係を示すグラフである。
Claims (12)
- 液中に炭酸ガスを溶解させた状態で滅菌された還元糖および脂肪乳剤を含む薬液入りプラスチック製輸液容器を、炭酸ガス吸収剤と共に、実質的に酸素を透過しない外装容器に収容したことを特徴とする輸液製剤であって、該還元糖がブドウ糖であり、該脂肪乳剤が大豆油を油脂成分とし、卵黄レシチンを乳化剤とするものである輸液製剤。
- 還元糖および脂肪乳剤を含む薬液が、更に電解質を含むものである請求項1に記載の輸液製剤。
- 炭酸ガス吸収剤が、アルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ土類金属水酸化物の水溶液である請求項1に記載の輸液製剤。
- 炭酸ガス吸収剤が、水酸化ナトリウム水溶液である請求項3に記載の輸液製剤。
- 上記プラスチック製輸液容器及び炭酸ガス吸収剤に更に脱酸素剤を、外装容器に収容した請求項1に記載の輸液製剤。
- 炭酸ガス溶解後の薬液pHが3.5〜6.5の範囲である請求項2に記載の輸液製剤。
- 炭酸ガス溶解後の薬液pHが4〜6.5の範囲である請求項1及び3〜5のいずれかに記載の輸液製剤。
- 炭酸ガス溶解前及び滅菌後の薬液pHが5.0〜8.5の範囲にある請求項1〜7のいずれかに記載の輸液製剤。
- 炭酸ガス溶解前及び滅菌後の薬液pHが5.0〜7.5の範囲にある請求項1、3〜5及び7のいずれかに記載の輸液製剤。
- 炭酸ガス溶解時及び保存時の還元糖の分解物の生成抑制によって着色が抑制されている請求項1〜9のいずれかに記載の輸液製剤。
- 炭酸ガス溶解時及び保存時の還元糖の分解物の生成抑制によって着色が抑制され且つ保存時の遊離脂肪酸の生成が抑制されている請求項1〜10のいずれかに記載の輸液製剤。
- 脂肪乳剤加還元糖配合輸液中に炭酸ガスを溶解させ、プラスチック製輸液容器に充填して滅菌し、滅菌された輸液入り容器を炭酸ガス吸収剤と共に実質的に酸素を透過しない外装容器に収容することを特徴とする請求項1に記載の輸液製剤の製造方法。
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