JP3999709B2 - 磁気転写用マスター担体および磁気転写方法 - Google Patents

磁気転写用マスター担体および磁気転写方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スレーブ媒体に磁気転写すべき情報に応じた転写パターンを有する磁気転写用マスター担体、および該マスター担体を用いた磁気転写方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
磁気記録媒体においては一般に、情報量の増加に伴い、多くの情報を記録する大容量で、安価で、かつ、好ましくは短時間で必要な箇所が読み出せる、いわゆる高速アクセスが可能な媒体が望まれており、この一例として、ハードディスク、ZIP(アイオメガ社)等のフレキシブルディスクからなる高密度磁気記録媒体が知られている。これらの高密度磁気記録媒体は情報記録領域が狭トラックで構成されており、狭いトラック幅を正確に磁気ヘッドにより走査させて高いS/Nで信号を再生するためには、いわゆるトラッキングサーボ技術が大きな役割を担っている。
【0003】
トラック位置決めのためのサーボ信号や、そのトラックのアドレス信号、再生クロック信号等のサーボ情報は、磁気記録媒体の製造時にプリフォーマットとして予め磁気記録媒体に記録する必要がある。このプリフォーマットを正確にかつ効率よく行う方法として、マスター担体に形成されたサーボ情報を担持するパターンを磁気記録媒体へ磁気転写により転写する方法が、例えば特許文献1および2等において提案されている。
【0004】
磁気転写は、転写すべき情報を担持するマスター担体を磁気ディスク媒体等の磁気記録媒体(スレーブ媒体)と密着させた状態で、転写用磁界を印加することにより、マスター担体の有する転写パターンに対応する磁気パターンをスレーブ媒体に磁気的に転写するもので、マスター担体とスレーブ媒体との相対的な位置を変化させることなく静的に記録を行うことができ、正確なプリフォーマット記録が可能であり、しかも記録に要する時間も極めて短時間であるという利点を有している。
【0005】
マスター担体としては、転写情報に応じた凹凸パターンが形成された基板と該基板の少なくとも凸部上に設けられた磁性層とからなるもの、あるいは、凹凸パターンが形成された基板と該基板の凹部に埋め込まれた磁性層とからなるもの等が提案されている。
【0006】
マスター担体は非常に高価であるために、より多くのスレーブ媒体への磁気転写を行うことができる耐久性の高いマスター担体の開発が求められており、マスター担体の耐久性を向上させる方法として、マスター担体の磁性層表面にDLC膜(ダイヤモンドライクカーボン膜)を設ける手法、あるいはさらにスレーブ媒体との接触面となる最上層に潤滑剤層を設ける手法等が特許文献3、4等に提案されている。
【0007】
【特許文献1】
特開平10−40544号公報
【0008】
【特許文献2】
特開平10−269566号公報
【0009】
【特許文献3】
特開2000−195048公報
【0010】
【特許文献4】
特開2001−14665公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
磁気転写の工程には、マスター担体とスレーブ媒体とを全面に亘って均一に密着させるために比較的強い圧力で両者を密着させる工程と、磁界印加後に、両者を引き離す工程とがあり、1枚のマスター担体に対してこの密着および引離工程を繰り返す必要がある。一方、この密着および引離しを繰り返すうちにマスター担体の基板上の磁性層の一部が基板から剥離し、磁性層剥離部分および該剥離した磁性層片が密着部に介在することにより転写不良が発生し、また、この剥離した磁性層片によりマスター担体やスレーブ媒体の表面が損傷を受けるという問題が明らかになってきた。したがって、多数回の密着および引離工程によって生じる磁性層の基板からの剥離を低減することにより、マスター担体の耐久性の向上を図ることが望まれる。
【0012】
特許文献3、4に記載されているように、磁性層上に保護層や潤滑剤層を設けた場合、塵埃等によるマスター担体表面の損傷を防止する効果は得られるが、磁性層と基板との密着力を向上させる効果は得られないために、スレーブ媒体との密着・引離しを繰り返すことによる基板からの磁性層の剥れを抑制することはできない。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑み、耐久性の向上した、かつ転写不良を抑制した磁気転写用マスター担体および該マスター担体を用いた磁気転写方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
発明者らの研究により、磁気転写用マスター担体の磁性層剥離の発生は、該磁性層の膜応力の大きさに起因するものであることが明らかになってきた。磁性層は、通常スパッタリング法で成膜されるが、成膜条件によって磁性層の膜応力が大きく異なり、一般的に、スパッタ圧力を高く設定すれば膜応力を低減することができ、一方、成膜時の圧力を高くすると、磁性層の飽和磁化が低下するということが分かった(後述の【実験結果】表1参照)。磁性層の飽和磁化が低下すると、磁気転写信号に歪みやバラツキを生じ、信号品位を低下させることとなる。すなわち、磁性層の膜応力と飽和磁化はトレードオフの関係にある。一方、マスター担体の耐久性の向上を図るとともに、高品位な転写信号を得るためには、膜応力が小さく、かつ高い飽和磁化を有する磁性層を備えることが必要である。
【0015】
本発明者らによる磁気転写用マスター担体の磁性層形成条件を比較検討の結果、上層部と下層部に異なる膜質をもつ磁性層を形成することにより、高飽和磁化および低膜応力を両立できることが見出された。本発明は、この知見に基づいてなされたものである。
【0016】
本発明の磁気転写用マスター担体は、基板と該基板上に積層される磁性層とを備えた磁気転写用マスター担体であって、前記磁性層が、スパッタリング法を用いて同一磁性材料で成膜圧力を変化させて下層から上層が順に形成され、最上面から最下面に向けて飽和磁化および膜応力が徐々に小さくなる特性を有し、前記磁性層の最上面から該磁性層の厚みの30%の厚み部分である上層部の平均飽和磁化をM1、最下面から前記厚みの30%の厚み部分である下層部の平均飽和磁化をM2とした時、M1が1.9〜2.1テスラ(T)の範囲であって、0.24≦(M1−M2)/M1≦0.35であることを特徴とするものである。
【0017】
前記磁性層は、上層部と下層部との間の中間層部の平均飽和磁化M3が、 1 >M 3 >M 2であることを特徴とする
【0018】
前記磁性層は、上記条件を満たす限り単層であっても多層であってもよい。ここで、多層とは組成が異なる複数の層からなることを意味するものではなく、同一の組成であっても互いに異なる条件で作成された層、飽和磁化が互いに異なる層からなる複数の層からなるものであってもよい。
【0019】
本発明の磁気転写方法は、本発明の磁気転写用マスター担体の表面と、磁性層を有する記録媒体の該磁性層とを密着させた状態で、該記録媒体および前記マスター担体に磁界を印加して前記情報を前記記録媒体に転写することを特徴とするものである。
【0020】
【発明の効果】
本発明の磁気転写用マスター担体は、磁性層が、スパッタリング法を用いて同一磁性材料で成膜圧力を変化させて下層から上層が順に形成され、最上面から最下面に向けて飽和磁化および膜応力が徐々に小さくなる特性を有し、磁性層の最上面から該磁性層の厚みの30%の厚み部分である上層部の平均飽和磁化をM1、最下面から前記厚みの30%の厚み部分である下層部の平均飽和磁化をM2とした時、M1を1.9〜2.1Tの範囲とし、0.24≦(M1−M2)/M1≦0.35とし、上層部と下層部に異なる膜質を持つ磁性層を備えたことにより、高飽和磁化かつ低膜応力を両立できる。すなわち、従来の厚み方向に均一な磁性層では実現できない高飽和磁化、低膜応力を両立することができるため、マスター担体の耐久性向上しつつ転写信号品位を高品位なものとすることができる。
【0021】
なお、磁性層の上層部と下層部との間の中間層部の平均飽和磁化M3が、 1 >M 3 >M 2となるものとすることにより、高飽和磁化、低膜応力を両立可能なものとすることができる。
【0022】
本発明の磁気転写方法によれば上述の本発明の磁気転写用マスター担体を用いているため、磁性層の剥れ等による転写不良を抑制することができ、かつ、1枚のマスター担体を用いて多数枚の記録媒体への転写を行うことができるので、転写品質のよい記録媒体を安価に製造することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて詳細に説明する。
【0024】
図1は、本実施形態の磁気転写用マスター担体の表面の一部斜視図を示し、図2は、図1のマスター担体の一部断面図を示すものである。
【0025】
本実施形態のマスター担体3は、後述の図3に示すように円盤状に形成されており、その表面にスレーブ媒体である磁気記録媒体に転写すべき情報に応じた凹凸パターンを転写パターンとして有するものである。転写すべき情報としては、例えばサーボ信号が挙げられるが、その他種々のデータを含むものであってもよい。凹凸パターンの一部パターンは例えば図1に示すようなものである。図1において、矢印Xは円周方向(トラック方向)、矢印Yは半径方向を示す。
【0026】
図2は、図1に示したマスター担体3のII−II断面図、すなわち、面に垂直かつトラック方向Xに平行な面に沿った断面図を示す。
【0027】
マスター担体3は、表面に凹凸パターンを有する基板31と、該基板31上に形成された磁性層32とを備えてなるものである。
【0028】
磁性層32は、該磁性層32の最上面から該磁性層の厚みdの30%の厚み部分である上層部32aの平均飽和磁化をM1、最下面から厚みdの30%の厚み部分である下層部32bの平均飽和磁化をM2とした時、M1が1.9〜2.1Tの範囲であって、0.24≦(M1−M2)/M1≦0.35である。また、磁性層32は、最上面から最下面に向けて徐々に小さくなる飽和磁化を有するものである。
【0029】
この磁性層32は、スパッタ法により形成されるが、このスパッタ圧力を高圧から徐々に低圧にしつつ成膜する。一般に、スパッタ圧力が高圧になるにつれ飽和磁化は低下し、一方膜応力は小さくなる。したがって、スパッタ圧力を高圧から徐々に低圧にしつつ成膜することにより、基板側である最下面から表面となる最上面へ向けて徐々に大きくなる飽和磁化および膜応力を有する磁性層を形成することができる。
【0030】
このように、本マスター担体3は、磁性層32の上層部の飽和磁化M1、下層部の飽和磁化M2が上記関係となるように構成されているため、該磁性層32が転写品質のよい飽和磁化を備え、かつ膜応力が抑制されたものとなり、磁性層32の剥れを抑制することができ、マスター担体の耐久性を向上させることができる。マスター担体の耐久性の向上により、より多くのスレーブ媒体への磁気転写が可能となり、全体としてのコスト削減効果を得ることができる。
【0031】
なお、本実施形態では、磁性層32が凹凸に沿って一様に形成されており、凹部底面、凸部上面いずれも磁性層の厚みも同一であり、上記飽和磁化の関係も一様であるものとしたが、少なくとも凸部上面に形成された磁性層の厚みがdであり、該凸部上面に形成された磁性層の厚みdの最上面から該磁性層の厚みdの30%の厚み部分である上層部32aの平均飽和磁化をM1、最下面(基板凸部上面)から厚みdの30%の厚み部分である下層部32bの平均飽和磁化をM2とした時、M1が1.9〜2.1Tの範囲であって、0.24≦(M1−M2)/M1≦0.35を満たせば、凹部底面、凸部側面においては必ずしも上記関係を満たす必要はない。
【0032】
基板31の材料としては、Ni、Si、石英板、ガラス、Al、セラミックス、合成樹脂等が用いられる。基板材料として特に好ましいのは、Ni、もしくはNiを主成分とする強磁性を有する合金である。表面に凹凸パターンを有する基板31の作製は、スタンパー法、フォトリソグラフィー法等を用いて行うことができる。
【0033】
基板31の作製方法の概略を説明する。まず、表面が平滑なガラス板(または石英板)の上にスピンコート等でフォトレジストを形成し、このガラス板を回転させながらサーボ信号に対応して変調したレーザー光(または電子ビーム)を照射し、フォトレジスト全面に所定のパターン、例えば各トラックに回転中心から半径方向に線状に延びるサーボ信号に相当するパターンを円周上の各フレームに対応する部分に露光し、その後、フォトレジストを現像処理し、露光部分を除去しフォトレジストによる凹凸形状を有する原盤を得る。次に、原盤の表面の凹凸パターンをもとに、この表面にメッキ(電鋳)を施し、ポジ状凹凸パターンを有するNi基板を作製し、原盤から剥離する。
【0034】
また、前記原盤にメッキを施して第2の原盤を作製し、この第2の原盤を使用してメッキを行い、ネガ状凹凸パターンを有する基板を作製してもよい。さらに、第2の原盤にメッキを行うか樹脂液を押し付けて硬化を行って第3の原盤を作製し、第3の原盤にメッキを行い、ポジ状凹凸パターンを有する基板を作製してもよい。
【0035】
前記メッキとしては、無電解メッキ、電鋳、スパッタリング、イオンプレーティングを含む各種の金属成膜法が適用できる。基板の凸部高さ(凹凸パターンの深さ)は、50〜800nmの範囲が好ましく、より好ましくは80〜600nmである。この凹凸パターンがサンプルサーボ信号である場合は、円周方向よりも半径方向に長い矩形状の凸部が形成される。具体的には、半径方向の長さは0.05〜20μm、円周方向は0.05〜5μmが好ましく、この範囲で半径方向の方が長い形状となる値を選ぶことがサーボ信号の情報を担持するパターンとして好ましい。
【0036】
磁性層32の磁性材料としては、Co、Co合金(CoNi、CoNiZr、CoNbTaZr等)、Fe、Fe合金(FeCo、FeCoNi、FeNiMo、FeAlSi、FeAl、FeTaN)、Ni、Ni合金(NiFe)を用いることができ、特に好ましいのはFeCo、FeCoNiである。なお、磁性層32としては、軟磁性もしくは半硬質磁性等の保磁力の小さい磁性層を用いることにより、より良好な転写を行うことができる。さらに、磁性層32は、基板31の飽和磁化よりも高い飽和磁化値を有するものであることが好ましい。磁性層の厚み(凸部上面の磁性層の厚み)は、50〜500nmの範囲が好ましく、さらに好ましくは80〜300nmである。
【0038】
なお、磁性層32の上に5〜30nmのダイヤモンドライクカーボン(DLC)等の保護膜を設けることが好ましく、さらに潤滑剤層を設けても良い。また、磁性層と保護膜の間に、Si等の密着強化層を設けてもよい。潤滑剤を設けることにより、スレーブ媒体との接触過程で生じるずれを補正する際の、摩擦による傷の発生などを抑制し、より耐久性をより向上させることができる。
【0039】
次に、本発明の磁気転写用マスター担体を用いてスレーブ媒体へ情報を転写する磁気転写方法の実施形態について説明する。
【0040】
図3は、スレーブ媒体2とマスター担体3、4とを示す斜視図である。スレーブ媒体は、例えば、両面または片面に磁気記録層が形成されたハードディスク、フレキシブルディスク等の円盤状磁気記録媒体である。また、本実施形態においては、円盤状の基板21の両面にそれぞれ面内磁気記録層22を備えた、記録面2b,2cが形成されたものを示している。
【0041】
また、マスター担体3は上記実施形態に示したものであり、スレーブ媒体2の下側記録面2b用の凹凸パターンとして、サーボ領域35にサーボ信号に応じた凹凸パターンが形成されている。また、マスター担体4は、マスター担体3と同様の層構成からなる、スレーブ媒体2の上側記録面2c用の凹凸パターンが形成されたものである。
【0042】
図3では、磁気記録媒体2とマスター担体3,4が互いに離間した状態を示しているが、実際の磁気転写は、磁気記録媒体2の記録面2b、2cとマスター担体3,4の転写パターン面とを密着させた状態で行う。
【0043】
図4は、本発明の磁気転写用マスター担体を用いて磁気転写を行うための磁気転写装置の概略構成を示す斜視図である。磁気転写装置1は、マスター担体3,4とスレーブ媒体2とを密着させて保持する転写ホルダー10および該転写ホルダー10の内部空間のエアを真空吸引し内部を減圧状態として密着力を得る図示しない真空吸引手段からなる密着圧力印加手段と、転写ホルダー10を回転させつつ転写用磁界を印加する磁界印加手段55とを備えてなる。
【0044】
磁界印加手段55は、転写ホルダー10の両側に配設された電磁石装置50,50を備えてなり、この電磁石装置50の転写ホルダー10の半径方向に延びるギャップ51を有するコア52にコイル53が巻き付けられてなる。両電磁石装置50,50はトラック方向と平行な同一の向きの磁界を発生させるものである。また、磁界印加手段55としては、電磁石装置に代えて永久磁石装置で構成してもよい。垂直記録の場合の磁界印加手段は、転写ホルダー10の両側に配設された、極性の異なる電磁石または永久磁石から構成することができる。すなわち、垂直記録の場合は、トラック面に垂直な方向に転写用磁界を発生させるものである。
【0045】
また、磁界印加手段55は、転写ホルダー10の開閉動作を許容するように、両側の電磁石装置50,50が接離移動するか、電磁石装置50,50間に転写ホルダー10が挿入されるように電磁石装置50,50またはホルダー10が移動するようになっている。
【0046】
転写ホルダー10は、相対的に接離移動可能な左側の片側ホルダー11と右側の他側ホルダー12とを備え、その内部に形成される内部空間に、スレーブ媒体2およびマスター担体3,4を収容して、この内部空間の減圧によりスレーブ媒体2とマスター担体3,4とを中心位置を合わせた状態で重ね合わせて対峙密着させるものである。
【0047】
片側ホルダー11の押圧面には、スレーブ媒体2の片面にサーボ信号等の情報を転写する一方のマスター担体3およびスレーブ媒体2を吸着等により保持し、他側ホルダー12の押圧面には、スレーブ媒体2の他面にサーボ信号等の情報を転写する他方のマスター担体4を吸着等により保持する。
【0048】
片側ホルダー11および他側ホルダー12の背面の中心位置には、それぞれ支持軸が突設され、装置本体に支持され、回転機構に連係されて磁気転写時に回転駆動される。
【0049】
また、転写ホルダー10の内部空間は、密着時には所定の真空度に減圧されて、スレーブ媒体2とマスター担体3,4との密着力を得るととともに、密着面のエア抜きを行って密着性を高めるとともに、大気開放時および引離し時には圧縮空気の導入が行われる。また、密着力の印加のために、真空吸引に加えて、転写ホルダーを外部から機械的に加圧してもよい。
【0050】
次に、上記磁気転写装置1による磁気転写方法について説明する。上記磁気転写装置の転写ホルダー10は、一組のマスター担体3,4により複数のスレーブ媒体2に対する磁気転写を行うものであり、まず片側ホルダー11および他側ホルダー12にマスター担体3,4をそれぞれ位置を合わせて保持させておく。そして、片側ホルダー11と他側ホルダー12とを離間した開状態で、予め面内方向または垂直方向の一方に初期磁化したスレーブ媒体2を中心位置を合わせてセットした後、他側ホルダー12を片側ホルダー11に接近移動させ閉状態とする。スレーブ媒体2およびマスター担体3,4を収容した転写ホルダー10の内部空間を真空吸引することにより減圧し、スレーブ媒体2とマスター担体3,4とに均一に密着力を加え密着させる。密着力の印加のために、真空吸引に加えて、転写ホルダーを外部から機械的に加圧してもよい。
【0051】
その後、転写ホルダー10の両側に電磁石装置50を接近させ、転写ホルダー10を回転させつつ電磁石装置50によって初期磁化とほぼ反対方向に転写用磁界を印加し、マスター担体3の転写パターンに応じた磁化パターンをスレーブ媒体2の磁気記録層に転写記録する。
【0052】
図5は、面内磁気記録媒体への磁気転写の基本工程を説明するための図であり、図5(a)は磁界を一方向に印加してスレーブ媒体を初期直流磁化する工程、(b)はマスター担体とスレーブ媒体とを密着させて初期直流磁界とは略反対方向に磁界を印加する工程、(c)は磁気転写後のスレーブ媒体の記録再生面の状態をそれぞれ示す図である。なお、図5においてスレーブ媒体2についてはその下面記録面2b側のみを示している。
【0053】
図5(a)に示すように、予めスレーブ媒体2にトラック方向の一方向の初期直流磁界Hinを印加して磁気記録層22を初期直流磁化させておく。その後、図5(b)に示すように、このスレーブ媒体2の記録面2bとマスター担体3の転写パターン面とを密着させ、スレーブ媒体2のトラック方向に前記初期直流磁界Hinとは逆方向の転写用磁界Hduを印加する。スレーブ媒体2とマスター担体3の転写パターンの密着した箇所において、転写用磁界Hduは、マスター担体3の凸部に吸い込まれ、この部分に対応するスレーブ媒体2の磁化は反転せずその他の部分の初期磁化が反転する。その結果、図5(c)に示すように、スレーブ媒体2の下側記録面2bの磁気記録層22にはマスター担体3の凹凸パターンに応じた情報(例えばサーボ信号)が磁気的に転写記録される。ここでは、スレーブ媒体2の下側記録面2bへの下側マスター担体3による磁気転写について説明したが、磁気記録媒体2の上側記録面2cについても上側マスター担体4と密着させて同様に磁気転写を行う。なお、磁気記録媒体2の上下記録面2b、2cへの磁気転写は同時になされてもよいし、片面ずつ順次なされてもよい。
【0054】
なお、初期直流磁界および転写用磁界は、スレーブ媒体の保磁力、マスター担体およびスレーブ媒体の比透磁率等を勘案して定められた値を採用する必要がある。
【0055】
図5に示して説明した磁気転写の基本工程は、スレーブ媒体が面内記録媒体である場合のものであるが、スレーブ媒体が垂直記録媒体である場合には、初期磁化方向および転写磁界の印加方向を面に垂直な方向とすればよい。なお、垂直記録の場合は、マスター担体の凸部と密着した部分の初期磁化が反転し、その他の部分の初期磁化は反転しない結果として凹凸パターンに応じた磁化パターンが転写される。
【0056】
スレーブ媒体2としては、ハードディスク、高密度フレキシブルディスクなどの、塗布型磁気記録層あるいは金属薄膜型磁気記録層を備えた円盤状磁気記録媒体を使用することができる。
【0057】
なお、金属薄膜型磁気記録層を備えた磁気記録媒体の場合、磁性材料として、Co、Co合金(CoPtCr、CoCr、CoPtCrTa、CoPtCrNbTa、CoCrB、CoNi、Co/Pd等)、Fe、Fe合金(FeCo、FePt、FeCoNi)を用いることができる。磁性層としては、磁束密度が大きいこと、面内記録なら面内方向、垂直記録なら垂直方向の磁気異方性を有することが、明瞭な転写を行えるため好ましい。好ましい磁性層厚は10〜500nmであり、さらに好ましくは20〜200nmである。
【0058】
また、磁性層の下(基板側)には、該磁性層に必要な磁気異方性を持たせるために非磁性の下地層を設けることが好ましい。下地層としては、Cr、CrTi、CoCr、CrTa、CrMo、NiAl、Ru、Pd等を用いることができるが、結晶構造および格子定数が、その上に設けられる磁性層の結晶構造および格子定数と一致するものを選択する必要がある。好ましい非磁性層の厚みは、10〜150nmであり、さらに好ましくは20〜80nmである。
【0059】
さらに、垂直磁気記録媒体の場合には、磁性層の垂直磁化状態を安定化させ、記録再生時の感度を向上させるために非磁性の下地層の下に軟磁性の裏打ち層を設けてもよい。この裏打ち層としては、NiFe、CoCr、FeTaC、FeAlSi等を用いることができる。好ましい裏打ち層の厚みは、50〜2000nmであり、さらに好ましくは60〜400nmである。
【0060】
次に、本発明の第2の実施形態の磁気転写用マスター担体についてその一部断面図を図6に示して説明する。なお、そのマスター担体を用いた磁気転写方法は上記第1の実施形態と同様であるので詳細な説明を省略する。
【0061】
図6に示すように、第2の実施形態の磁気転写用マスター担体3’は、表面に凹凸パターンを有する基板31と、基板31上に形成された磁性層34とからなる。基板31、磁性層34を構成する材料、厚み等はいずれも上記第1の実施形態のマスター担体のものと同様である。
【0062】
磁性層34は、最上層34a、最下層34bおよびその間の中間層34cの3層から構成されている。ここでは、最上層34aおよび最下層34bの厚みが、それぞれ磁性層34の全厚みdの30%の厚みである。最上層34aの飽和磁化をM1、最下層34bの飽和磁化をM2としたとき、M1が1.9〜2.1Tの範囲であって、0.24≦(M1−M2)/M1≦0.35を満たす。また、中間層34cの飽和磁化をM3とすると、 1 >M 3 >M 2である。
【0063】
なお、ここでは、磁性層34が3層構造のものを例に挙げて説明したが、最上面から30%厚みである上層部の平均飽和磁化M1と最下面から30%厚みである下層部の平均飽和磁化M2とが、M1が1.9〜2.1Tの範囲であって、0.24≦(M1−M2)/M1≦0.35を満たす関係にあれば、幾つの層からなるものであってもよい。
【0064】
本実施形態の磁性層34は、例えば、各層34a,b,cを互いに異なるスパッタ圧で成膜することにより形成することができる。各層の飽和磁化を上記関係となるように構成したことにより、磁性層34が転写品質のよい飽和磁化を備え、かつ膜応力が抑制されたものとなり、磁性層34の剥れを抑制することができ、マスター担体の耐久性を向上させることができる。マスター担体の耐久性の向上により、より多くのスレーブ媒体への磁気転写が可能となり、全体としてのコスト削減効果を得ることができる。
【0068】
【実験結果】
次に、それぞれ異なる条件で作製したマスター担体について、その飽和磁化および膜応力について測定した実験結果について説明する。
【0069】
いずれのマスター担体も表面に凹凸パターンを有する基板に対して磁性層をDCスパッタリング法を用いて成膜形成して作製した。ターゲットにはFe-Co(70-30at%)を使用し、基板−ターゲット間距離を200mmとし、DCパワーを1.5kWとした。
【0070】
飽和磁化および膜応力の測定方法は次の通りである。
【0071】
<飽和磁化>
ポリイミドフィルムに磁性層をそれぞれの実験例と同一の条件で成膜したものについて、振動試料磁化測定装置(VSM)を用いて静磁気特性を測定して飽和磁化を得た。
【0072】
<膜応力>
フックの法則(下記式)を適用し、以下の手順で膜応力の測定を行った。
【0073】
膜応力(S)=δEsD2/3L2t(1-χs)
ここで、δ:変位量、t:膜厚、Es:基板のヤング率、D:基板厚さ、L:基板長さ、χs:基板のポアソン比である。
【0074】
ガラス上に短冊状(10mm×40mm)にしたポリイミドフィルムを貼り付け、基板端面1点を保持する。磁性層成膜後、ポリイミドフィルムの自由端の変位量δを測定し、基板ヤング率Es=7.6×109Pa、基板厚さD=5×10-5m、基板長さL=0.4m、基板ポアソン比χs=0.33、磁性層膜厚t=80×10-9mとして膜応力を算出した。なお、磁性層膜厚tは、均一層(実験例1〜5)の場合については200×10-9mとした。
【0075】
なお、ここでは、磁気転写用マスター担体の磁性層として好ましい飽和磁化(平均飽和磁化)は1.8T(=1.8×104G)以上であり、好ましい膜応力は3.7×109Pa(=3.7×109N/m2)未満であると仮定し評価した。
【0076】
表1に示す実験例1〜5は、従来の磁性層が最下層から最上層まで略均一な飽和磁化を有する磁気転写用マスター担体についての実験結果である。
【0077】
【表1】
Figure 0003999709
表1に示すように、成膜時圧力を増加させると飽和磁化は低下し、これに伴って膜応力が低下する結果が得られた。実験例1〜5において、高飽和磁化を有する実験例1および2は膜応力が大きすぎ、一方低膜応力を有する実験例3〜5は飽和磁化が小さすぎるという結果が得られ、従来の均一な飽和磁化を有する磁性層を備えた磁気転写用マスター担体では、良好な飽和磁化と膜応力を同時に両立するのは困難であることが分かった。
【0078】
表2に示す実験例6〜14は、磁性層の最上層と最下層とで飽和磁化が異なるように形成された磁気転写用マスター担体についての実験結果である。具体的には、図6に示した第2の実施形態のマスター担体と同様に、最上層と最下層と中間層とを備えた多層構造の磁性層を有するものであり、最下層と最上層の厚みを、全膜厚(本実験例では80nm)のそれぞれ30%の厚みとした。
【0079】
【表2】
Figure 0003999709
表2に示すように、実験例1〜5の場合と同様に、飽和磁化(平均飽和磁化)が大きいと膜応力が大きく、飽和磁化が小さいと膜応力が小さいという傾向が見られたが、実験例8、11、13において好ましい飽和磁化と好ましい膜応力を両立することができた。この実験例8、11、13は、いずれも0.24≦(M1−M2)/M1≦0.35を満たすものであった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 磁気転写用マスター担体の表面の一部斜視図
【図2】 図1の磁気転写用マスター担体の断面図
【図3】 マスター担体とスレーブ媒体とを示す斜視図
【図4】 磁気転写装置の概略構成を示す斜視図
【図5】 面内磁気記録媒体への磁気転写方法の基本工程を示す図
【図6】 本発明の第2の実施形態に係る磁気転写用マスター担体の一部断面図
【符号の説明】
1 磁気転写装置
2 スレーブ媒体
2a スレーブ媒体の基板
2b,2c 磁性層(磁気記録層)
3,4 マスター担体
10 転写ホルダー
31 基板
32 磁性層
32a 最上層部
32b 最下層部
50 電磁石装置
55 磁界印加手段

Claims (3)

  1. 基板と該基板上に積層された磁性層とを備えた、転写情報を担持した磁気転写用マスター担体であって、
    前記磁性層が、スパッタリング法を用いて同一磁性材料で成膜圧力を変化させて下層から上層が順に形成され、最上面から最下面に向けて飽和磁化および膜応力が徐々に小さくなる特性を有し、
    前記磁性層の最上面から該磁性層の厚みの30%の厚み部分である上層部の平均飽和磁化をM1、最下面から前記厚みの30%の厚み部分である下層部の平均飽和磁化をM2とした時、M1が1.9〜2.1Tの範囲であって、0.24≦(M1−M2)/M1≦0.35であることを特徴とする磁気転写用マスター担体。
  2. 前記磁性層の前記上層部と前記下層部との間の中間層部の平均飽和磁化M3が、 1 >M 3 >M 2であることを特徴とする請求項1記載の磁気転写用マスター担体。
  3. 請求項1または2記載の磁気転写用マスター担体の表面と、磁性層を有する記録媒体の該磁性層とを密着させた状態で、該記録媒体および前記マスター担体に磁界を印加して前記情報を前記記録媒体に転写することを特徴とする磁気転写方法。
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