JP3998070B2 - 画像処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、木目柄を有する建材化粧シート(以下、単に化粧シートと称す)に対して、天然木目が有する照り、即ち光沢、及び照りの移動感を発現させるために行う、複数種類の波状曲線で構成される細線パターンの凹凸模様を形成するための加工に係り、特にその細線パターンを作成するための画像処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
木目柄を有する化粧シートに対して、天然木目が有する照り、及び照りの移動感を発現させるために、化粧シートに図20に示すような波状曲線群からなるパターン(以下、細線パターンと称す)をエンボス加工することが行われている(この点に関して、例えば特開平5−294100号公報、特開平4−52181号公報、「材料」Vol.43,No.485,pp.147-151,Feb.1994を参照)。
【0003】
なお、本明細書において、エンボス加工は、複数種類の波状曲線で構成される細線パターンよりなる凹凸模様を化粧シートに形成するための加工全般を指すものとする。従って、化粧シートに対して複数種類の波状曲線で構成される細線パターンよりなる凹凸模様を形成することができる版は全てエンボス版であり、そのエンボス版がどのようにして製造されるかは問わない。また、以下においてはエンボス版を賦形版と称することもある。
【0004】
さて、特開平4−52181号公報によれば細線パターンは平行直線群でもよいとされているが、所望の照り、及び照りの移動を発現させようとすると図20に示すような波状曲線群が望ましいことが研究の結果確認されている。
【0005】
なお、以下においては細線パターンの方向を次のように定義する。即ち、いま図20に示す細線パターンがあった場合、図の実線の矢印で示す方向を曲線の走り方向と称し、曲線の走り方向と直交する方向、即ち図の破線の矢印で示す方向を曲線の並び方向と称することにする。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のエンボス加工には以下に述べるような種々の問題があるが、そのような問題を説明する前に従来のエンボス版の製造工程について説明する。
【0007】
従来、エンボス版を作成するには、まずX−Yプロッタによりフィルムに細線パターンを描画し、その描画した細線パターンを光学的に所定の倍率に縮小する。このように縮小を行うのは次のような理由による。即ち、特開平4−52181号公報によればエンボス加工によって化粧シートに形成される溝の間隔は 0.1〜 100μm程度、また特開平5−294100号公報によれば溝、及びその間隔は 1〜1000μm程度であり、更に本発明者等の研究によれば溝、及びその間隔は数十μm程度であるのが望ましいのであるが、このようなエンボス加工を行うための細線パターンをX−Yプロッタで原寸大で描画することは非常に難しいために、まずX−Yプロッタで大きく描画し、それを縮小するのである。従って、縮小の倍率は描画された各波状曲線の線幅、及びその間隔がこれらの値になるように定められることになる。
【0008】
このようにしてマスタフィルムが作成される。なお、このマスタフィルムは複数枚作成される。
【0009】
そして、それらのマスタフィルムを手作業により貼り合わせ、エンボス版用のシリンダのサイズとして製版用のフィルムに焼き付けを行う。そのようにして作成した製版フィルムを用いてエンボス版用のシリンダに凹凸を形成し、そのシリンダを用いて化粧シートにエンボス加工を施す。そして、例えばX−Yプロッタで描画された各波状曲線の部分が化粧シートにおいては溝を形成するものとすると、波状曲線が描画されないスペースの部分はエンボス加工された化粧シートにおいては溝でない部分、即ち凸部を形成することになるが、以下においては当該凸部を土手と称することにする。
【0010】
以上のようにしてエンボス版が作成されるのであるが、上述したように細線パターンはX−Yプロッタで描画されるので、描画される各波状曲線の線幅は一定であり、従って細線パターンの曲線の並び方向のスペースの間隔は場所によって異なることになる。
【0011】
例えば、図20に示す細線パターンにおいては図中Aで示す箇所では波状曲線は粗になっているのでスペースは広いが、Bで示す箇所では波状曲線は密になっているのでスペースは狭くなっている。
【0012】
しかし、このように細線パターンの曲線の並び方向において波状曲線間のスペースが変化している場合には、波状曲線の粗密に基づいてモアレが発生することがあり、従ってこのような細線パターンを用いてエンボス加工を施した場合には、化粧シートにおいてはモアレによって光の反射にむらが生じ、その結果、照り及びその移動の態様が意図したものと異なってしまうことがあることが判明した。
【0013】
これが従来のエンボス加工における一つの問題である。従って、本発明の一つの目的は、細線パターンをエンボス加工した化粧シートにおいて、光の反射にむらがなく、照り、及びその移動を意図した通りに発現させることができるようにすることにあり、そのためのエンボス加工を行うための細線パターンを作成するための画像処理装置を提供するものである。
【0014】
また、従来においてはフィルムに描画した細線パターンを光学的に縮小しているが、細線パターンを縮小する際に当該光学系の収差等によって細線パターンが歪んでしまい、高い寸法精度が得られないという問題がある。このような細線パターンの歪みは光学系の周辺部で特に顕著である。
【0015】
従って本発明の他の目的は、高い寸法精度が得られる細線パターンを作成できる画像処理装置を提供することにある。
【0016】
更に、従来においてはマスタフィルムを手作業で貼り付けて製版フィルムを作成しているのであるが、その作業は非常に難しいという問題があった。即ち、いま例えばマスタフィルム上の細線パターンが図21に示されるようであったとすると、マスタフィルムを貼り付けるに際しては、曲線の走り方向には図22(A)に示すように隣接するマスタフィルムの細線パターンのそれぞれの波状曲線が連続するように貼り付け、また曲線の並び方向においては、図22(B)に示すように隣接するマスタフィルムの細線パターンが綺麗に並ぶように貼り付ける必要がある。なお、図中、Fは一つのマスタフィルム上の細線パターンの範囲を示す。
【0017】
このことの必要性は明らかであろう。実際、マスタフィルムを貼り付ける際に例えば図23(A),(B)に示すように隣接するマスタフィルムの細線パターンが綺麗に連続していない場合には、細線パターンの段差あるいは不連続性に基づいてモアレあるいは意図しない不所望のパターンが現れ、それによって化粧シートには意図しない照り、及びその移動が発現してしまうことが確認されている。
【0018】
しかし、細線パターンを形成する波状曲線は上述したように非常に狭い間隔で配列されているので、手作業によってマスタフィルムを図22(B)に示すように隣接するマスタフィルムの細線パターンが綺麗に並ぶように貼り付けることは非常に困難であった。
【0019】
従って本発明の他の目的は、曲線の走り方向にも、曲線の並び方向にも細線パターンを自動的に綺麗に連続させることができる画像処理装置を提供することにある。
【0020】
また更に、細線パターンを構成する波状曲線は種々の関数に基づいて描画することができるが、実際には三角関数、あるいは複数の三角関数を合成した関数を用いるのが一般的である。
【0021】
そして、複数の三角関数を合成した関数を用いれば複雑な形状の波状曲線を描画できるのであるが、このような関数ではデザイナが意図した通りの照り、及びその移動を発現させることができないことがあることが判明した。
【0022】
また、デザイナによっては波状曲線の形状を手書きで指定する場合もあり、あるいは周期や振幅の値が指定される場合もあるが、一般に指定された通りの波状曲線を三角関数を合成して作成することは非常に難しいものである。
【0023】
そこで、本発明の更に他の目的は、所望の形状の波状曲線からなる細線パターンを容易に作成することができる画像処理装置を提供することである。
【0024】
【課題を解決するための手段】
まず、細線パターンをエンボス加工した化粧シートにおいて、光の反射にむらがなく、照り、及びその移動を意図した通りに発現させることができるようにするためには、曲線の並び方向において、溝の幅と土手の幅との比を常に一定の比率、望ましくは1:1とするのがよいことを本発明者等は研究の結果見い出した。これによれば、各波状曲線の線幅は一定ではなく、図20のAで示すような曲線の並び方向において波状曲線が粗である部分では波状曲線の線幅は太くなり、同図のBで示すような波状曲線が密である部分では波状曲線の線幅は細いものとなる。
【0027】
高い精度を有する細線パターンを作成するための手段についてであるが、従来高い精度が得られなかったのはフィルムに描画した細線パターンを縮小していたためであり、原寸大の細線パターンが作成できれば縮小する必要はないのでこの問題を解決することができる。
【0028】
そこで、本発明の画像処理装置は、請求項1記載のように、入力手段と、画像処理手段とを備える画像処理装置であって、画像処理手段は、入力手段によって二つの波状曲線が定義され、且つ当該二つの波状曲線の間に作成する波状曲線の数が設定された場合には、波状曲線を作成する際に用いる直交座標の一方の軸方向であって、波状曲線の始点と終点を結ぶ方向に沿った軸方向である曲線の走り方向と直交する方向である曲線の並び方向において波状曲線の線幅とスペースの幅の比率が場所によらず所定の比率になるように、設定された数の波状曲線をビットマップデータとして生成して、化粧シートにエンボス加工される細線パターンデータを作成することを特徴とするのである。
【0029】
ここで、細線パターンデータを作成する場合に用いられる始めの二つの波状曲線は種々の手法で定義することが可能であるが、デザイナによって波状曲線の形状が指定された場合には、当該指定された形状の曲線を三角関数あるいは他の関数を合成して形成することは非常に難しいものである。
【0030】
そこで、本発明の画像処理装置においては任意の所望の形状を有する波状曲線を形成できるようにするために請求項2の構成をとる。
【0031】
即ち、画像処理手段は、前記細線パターンデータを作成する場合に用いられるはじめの二つの波状曲線を定義するに際して、入力手段によって定義された複数の特徴点に基づいて波状曲線を作成するようにするのである。
【0032】
これによれば、特徴点は任意の位置に定義できるので所望の形状の波状曲線を作成することが可能となる。このような特徴点に基づいて波状曲線を作成するためには、例えばベジエ関数、スプライン関数等を用いればよい。
【0033】
なお、この特徴点は、請求項3に記載のように、始点、終点、節点、制御点から構成され、制御点の指定のない節点区間は折れ線になるものとすることができる。ここで、制御点は、始点と終点とを含む隣接する節点間において少なくとも一つ設定できるものであり、波状曲線はこの制御点の位置に基づいて作成されることになる。
【0034】
また、画像処理手段は、請求項4記載のように、入力手段によって作成した一つもしくは複数の細線パターンの合成が指示された場合には、隣接する細線パターンが連続するように合成する。
【0035】
これによれば細線パターンの合成は自動的に行われるので、従来のように手作業を行う必要はなく、所望の形状の波状曲線からなる細線パターンを容易に作成することができる。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ、木目柄を有する化粧シートの作成工程を説明することによって発明の実施の形態を説明する。
【0037】
図1は本発明に係る画像処理装置の構成例を示す図であり、図中、1は画像処理部、2は表示部、3は入力部、4は記憶部を示す。
【0038】
画像処理部1は以下に述べる画像処理を行うと共に、当該画像処理装置の動作を統括して管理するものであり、CPU及びその周辺回路で構成される。
【0039】
表示部2はカラーCRT等の表示装置で構成されている。入力部3はキーボード、マウス等によって構成されている。記憶部4は作成した細線パターン、複数の細線パターンを合成したパターン(以下、この細線パターンを合成して得たパターンを合成細線パターンと称す)等を記憶するためのものである。
【0040】
次に、木目柄を有する化粧シートの作成工程に沿って、オペレータの操作、画像処理装置の動作、エンボス版の製造方法及び化粧シートの製造方法等について説明する。
【0041】
図2は化粧シートの作成工程を示すフローチャートであり、まず、画像処理装置を用いて細線パターンを作成する(ステップS1)。
【0042】
この細線パターンの作成の工程においては、図3に示すようにオペレータは、細線パターンを作成する基準となる二つの基準波状曲線の形状、画像寸法、画像の解像度、描画する波状曲線の本数Mを設定する(ステップS20)。
【0043】
ここで、二つの基準波状曲線は、細線パターンを作成する基準となる波状曲線であり、オペレータはこの二つの基準波状曲線の形状を入力部3により設定するのである。この二つの基準波状曲線の形状を設定する方法としては、予め関数の形式を定義しておき、その周期、振幅を等のパラメータをオペレータが設定する方法(以下、第1の方法と称す)、オペレータが入力部3を用いて表示部2の画面上で任意の形状を設定する方法(以下、第2の方法と称す)等種々の方法が考えられるが、ここでは上記第1の方法と第2の方法の何れかをメニューにより選択可能とする。
【0044】
即ち、細線パターンの作成を行う場合には、表示部2の画面には基準波状曲線の設定に関して、第1の方法を選択するためのメニューと、第2の方法を選択するためのメニューとが表示されるので、オペレータは何れか一方を選択すればよい。
【0045】
画像寸法については、作成する細線パターンの曲線の走り方向のサイズW及び曲線の並び方向のサイズHを入力部3により数値入力する。なお、サイズW,Hのサイズの単位は任意に定めることができるが、ここではmmとする。
【0046】
この細線パターンの画像寸法W,Hは任意に設定できることは当然である。例えば、エンボス版用のシリンダとしては幅及び円周が共に 930mmのものを用いることが多いので、このサイズのシリンダを用いる場合を想定すると、最終的には 930× 930mmのサイズの細線パターンを作成しなければならないので、W=H= 930(mm)とすることができることは当然である。
【0047】
しかし、このように大きなサイズの画像データを一度に作成するには長時間を要するばかりでなく、データ量が非常に大きなものとなるので取り扱いには非常に不便なものとなる。また、何等かの原因によって作成した細線パターンの手直しが要求された場合には再度長時間を掛けて細線パターンを作成しなければならないことになる。
【0048】
そこで、エンボス版用のシリンダのサイズより小さな細線パターンを一つあるいは複数作成し、それらを曲線の走り方向、曲線の並び方向にそれぞれ合成することによって当該シリンダのサイズの細線パターンを作成するようにするのがよい。
【0049】
その例を図4に示す。図4によればA,B,Cの3つの細線パターンが曲線の並び方向に合成されており、曲線の走り方向にはその合成された細線パターンが隙間なく合成されている。なお、このように細線パターンを合成するに際しては図22(A),(B)に示すように隣接する細線パターンの波状曲線と段差が生じないようにしなければならないのは当然であるが、この細線パターンの合成については後述する。
【0050】
このような方法によれば、一つの細線パターンのデータ量も比較的小さく、短時間で作成できるので、取り扱いも容易であり、細線パターンの手直し等に対しても速やかに対応することができることは当業者に明らかである。従って、画像寸法W,Hの値はそれぞれエンボス版のサイズの整数分の1とするのがよい。
【0051】
また、画像の解像度(ドット/mm)、及び描画する波状曲線の本数Mについても入力部3により数値入力する。
【0052】
さて、いまオペレータが各基準波状曲線の形状の設定方法として第1の方法を選択し、画像寸法W,H、画像の解像度d、描画する波状曲線の本数Mを設定したとすると、次にオペレータは二つの基準波状曲線の形状を決定するためのパラメータを設定する。
【0053】
ここで、二つの基準波状曲線の形状を定義するためにどのような関数を用いるかは任意であるが、ここでは二つの基準波状曲線はそれぞれ次の式のように三角関数の組み合わせで定義されているものとする。
【0054】
【数1】
【0055】
この(1) ,(2) 式において、A11,B11,C11,A12,B12,C12,A13,B13,C13は一つの基準波状曲線の形状を決定するためのパラメータであり、A21,B21,C21,A22,B22,C22,A23,B23,C23はもう一つの基準波状曲線の形状を決定するためのパラメータである。
【0056】
従って、オペレータはこれらのパラメータの値を入力部3から数値入力することによって二つの基準波状曲線の形状を定めることができる。この二つの基準波状曲線の形状を全く同じものとすることができることは当然であるが、一般にはこれらの二つの基準波状曲線の形状は異ならせた方が望ましいことが確認されている。
【0057】
このようにして波状曲線を生成するために必要な設定が終了すると、画像処理部1は細線パターンの生成の処理を開始する(ステップS21)。このステップでは、画像処理部1は、まず二つの基準波状曲線の形状を決定し、その二つの基準波状曲線を、ワークメモリ等の所定のメモリ上に、曲線の並び方向に間隔Hを隔てて、原寸大のビットマップパターンとして描画する。なお、このときの基準波状曲線の線幅は1ドットでよい。
【0058】
その概念を図5を用いて説明する。
図5においては、二つの基準波状曲線P,Qが曲線の並び方向に書き込まれており、それらの基準線の間隔はH×dドットとなされている。そして、画像の解像度がdであるから、曲線の走り方向のドット数はW×dとなる。例えば、いまW=H= 310mm、d= 100ドット/mmとすると、当該メモリ上の曲線の走り方向のドット数は 31000ドットとなる。また、二つの基準波状曲線P,Qの基準線の間のドット数も同様に 31000ドットとなる。
【0059】
なお、ここでは図4に示すようにエンボス版のサイズより小さいサイズを有する細線パターンを作成し、曲線の走り方向にはその細線パターンを単純に隙間なく配置して合成するようにしているので、そのとき、隣接して配置される細線パターンの各波状曲線は連続する必要があることは当然である。そこで、そのためには基準波状曲線の両端部の基準線からのレベルは同じにする必要がある。実際、図5においては基準波状曲線P,Qの両端部のレベルは全て基準線のレベルにある。つまり、基準波状曲線の形状を定めるためのパラメータ及び曲線の走り方向の画像寸法Wはこのような条件を満足するように設定するのである。
【0060】
このことによって、これらの基準波状曲線P,Qに基づいて作成された細線パターンの各波状曲線は、曲線の走り方向に隙間なく配置されたとき連続するようになることは明らかである。
【0061】
さて、画像処理部1は二つの基準波状曲線P,Qに基づいてM本の波状曲線を生成するのであるが、そのときの動作は次のようである。
【0062】
まず、画像処理部1は曲線の走り方向についてdドット毎に区切り、その区切り位置において基準波状曲線P,Qの間を 2M等分する。そして次に、基準波状曲線P,Q間の分割した区間の奇数番目の区間または偶数番目の区間を、区切り位置を中心として幅dドットの範囲を塗り潰す。
【0063】
例えばいま、理解を容易にするために二つの基準波状曲線P,Qに基づいて3本の波状曲線を作成するものとすると、画像処理部1は、図6(A)に示すように曲線の走り方向の各区切り位置i(i=1,2,…,W)において基準波状曲線P,Qの間を 6等分する。そして、いま分割した区間の奇数番目の区間を塗り潰すものとすると、画像処理部1は図6(B)の黒の矩形で示す領域を塗り潰す。
【0064】
以上の処理を全ての区切り位置iについて行うことによって、短時間で、定義された二つの基準波状曲線P,Qの間に、基準波状曲線Pの形状からもう一つの基準波状曲線Qの形状まで滑らかに形状が変化するM本の波状曲線を生成することができる。しかもこの細線パターンにおいては塗り潰しによって描画される波状曲線の線幅と、塗り潰されないスペースの幅の曲線の並び方向の比率は、曲線の走り方向の位置によらず1対1、あるいは略1対1となる。
【0065】
このようにして、画像寸法 310× 310mm、画像の解像度 100ドット/mm、波状曲線の本数2500本の細線パターンを良好に作成することができた。
【0066】
なお、生成された各波状曲線は、図6Bに示されるように、塗り潰された矩形領域の繋がりで構成されるので段差を有するものではあるが、実際の波状曲線の曲線の並び方向のピッチは 120μm程度、従って生成される各波状曲線の線幅は60μm程度であるので、この段差が目立つことは全くなく、何の問題もないことが確認されている。
【0067】
なお、以上においては曲線の走り方向についてdドット毎に区切り、各区切り位置において基準波状曲線間を 2M等分し、その奇数番目または偶数番目の区間を塗り潰すようにしたが、曲線の走り方向の各ドット位置において基準波状曲線間を 2M等分し、その奇数番目または偶数番目の区間のドットを塗り潰すようにしてもよい。これによれば生成される波状曲線をより滑らかなものとすることができる。
【0068】
以上が図3のステップS21の処理であり、この細線パターン生成の処理が終了すると、画像処理部1は作成した細線パターンを表示部2に表示する(ステップS22)。このとき、画像処理部1は、細線パターンが表示部2の表示領域に収まるように、細線パターンの波状曲線及びビットマップデータのドットを間引く処理を行う。
【0069】
例えば、いま、作成した細線パターンの画像寸法が 310× 310mm、画像の解像度が 100ドット/mm、波状曲線の本数が2500本とすると、メモリ上のドット数は 31000× 31000ドットとなるが、表示部2のドット数が1000×1000である場合には少なくともドット数を 1/31に間引く必要がある。しかし、単純にドットの間引きを行うと2500本の波状曲線はモアレになって判別できなくなるので、表示に際しては画像処理部1は波状曲線をも 1/31に間引いて表示するようにするのである。その細線パターンの表示例を図7に示す。
【0070】
オペレータは表示された細線パターンを観察して、望ましいものでなかった場合には再度ステップS20からやり直しとなるが、望ましいものであった場合には当該細線パターンの格納を入力部3から指示する。このときオペレータは当該細線パターンを登録するためのファイル名を入力する必要があることは当然である。
【0071】
これにより、画像処理部1は、生成した原寸大の細線パターンのビットマップデータをメモリ上から切り出し、記憶部4に格納する(ステップS23)。このとき切り出す範囲は、曲線の走り方向には波状曲線が生成されたW×dドットの範囲であり、曲線の並び方向には生成された波状曲線の先端より大きめの範囲とする。この余裕をどの程度もたせるかは任意であるが 1cm相当分程度でよい。従って、最初に描画された基準波状曲線の一方、即ち基準波状曲線間を分割した区間の奇数番目の区間を塗り潰す場合には下方に描画された基準波状曲線が、また偶数番目の区間を塗り潰す場合には上方に描画された基準波状曲線が生成された波状曲線と共に格納されることになるが、この基準波状曲線は後述するように細線パターンを合成する場合に利用されることになる。
【0072】
このようにして一つの細線パターンが作成できるが、図4に示すような合成を行う場合には、3つの細線パターンA,B,Cを作成することになる。なお、各細線パターンに要求される波状曲線の形状については後述する。
【0073】
以上、第1の方法によって基準波状曲線を定めた場合について説明したが、次に第2の方法によって基準波状曲線を定める場合について説明する。
【0074】
以上の説明から明らかなように、第1の方法では予め定義されている関数のパラメータを設定することによって基準波状曲線の形状を決定するようになされているのであるが、デザイナが意図する基準波状曲線が非常に複雑なものである場合には当該基準波状曲線を得るためのパラメータを求めるのは非常に困難であり、デザイナが意図した通りの基準波曲線が得られない場合が多い。
【0075】
そこで、デザイナが意図した通りの基準波状曲線を得ることができるように用意されているのが第2の方法であり、この方法においてはオペレータは表示部2の画面を観察しながら対話形式で基準波状曲線を決定することができる。
【0076】
さて、いまオペレータが各基準波状曲線の形状の設定方法として第2の方法を選択し、画像寸法W,H、画像の解像度d、描画する波状曲線の本数Mを設定したとすると、画像処理部1は、表示部2の画面に少なくとも二つの座標系を有する初期画面を表示する。図8はその例を示す図であり、A,Bで示すように二つの座標系が上下に並べて表示されている。
【0077】
この画面の状態で、オペレータは、まずそれぞれの座標系において一つの周期関数曲線を作成するために、それぞれの座標系に対して、始点、終点、及び節点を入力する。これらの点は全てマウスによりカーソルを移動させ、所望の位置でマウスをクリックすることで入力することが可能であるが、始点と終点については位置を正確に入力する必要があるので、テンキーを用いて数値で入力するのがよい。また、いま作成しようとしているのは一つの周期関数曲線であるから、始点と終点は図中 0で示す基準線上に指定するようにする。また、節点は始点と終点の間に何個でも入力可能であるので、デザイナに指定された基準波状曲線に応じて入力すればよい。
【0078】
このように始点、終点、節点が入力されると、画像処理部1は、始点から節点を通って終点に至る折れ線を表示する。図9にその例を示す。図中、Sは始点、Nは節点、Eは終点を示している。図9においては、上側の座標系では始点Sの座標は(0,0) 、終点Eの座標は(0,100) であり、その間に4個の節点Nが入力され、始点Sから順に4つの節点Nを通って終点Eに至る折れ線が表示されている。また、下側の座標系では始点Sの座標は(0,0) 、終点Eの座標は(0,150) であり、その間に4個の節点Nが入力され、始点Sから順に4個の節点Nを通って終点Eに至る折れ線が表示されている。
【0079】
なお、上側の座標系の曲線の周期と、下側の座標系の曲線の周期とは同じでもよいし、図9に示すように異なっていてもよい。ただし、後述するところから明らかなように、ここで作成する周期関数曲線の周期は曲線の走り方向の画像寸法Wの整数分の 1でなければならない。
【0080】
次に、オペレータは、所望する位置に制御点を入力する。この制御点は、節点Nの位置、始点Sと隣接する節点Nとの間、節点Nと隣接する節点Nとの間、節点Nと隣接する終点Eとの間に制御点を入力する。この操作は折れ線で表示されている周期関数曲線を滑らかに連続する曲線にするために行うものであり、制御点が入力されると、画像処理部1は入力された制御点で定義されるベジエ曲線を発生し、折れ線を連続する曲線として生成して表示する。図10はその例を示す図であるが、制御点の入力によって折れ線が滑らかな曲線に変形されることが分かる。図10においては、曲線上の白丸は節点Nを示し、節点Nを挟む両側の小さな白丸が制御点を示している。この制御点の入力もデザイナによって指示された基準波状曲線の形状に応じて適宜入力すればよい。なお、ベジエ曲線を発生させる手法については周知であるので説明は省略する。
【0081】
このように、節点Nの入力及び制御点の入力は共にマウスを用いて行うことができるが、その区別はメニューの選択で行うようにすればよい。即ち、例えば節点入力と制御点入力のメニューを用意しておき、節点を入力する場合には節点入力のメニューを選択してから行い、制御点を入力する場合には制御点入力のメニューを選択してから行うようにすればよい。また、3つのボタンを有するマウスを用いて、一つのボタン、例えば左側のボタンを節点入力のためのボタンに割り当て、もう一つのボタン、例えば中央のボタンを制御点入力のためのボタンに割り当て、残りのボタン、例えば右側のボタンをキャンセルのためのボタンに割り当てるようにしてもよい。この方法によれば節点の入力、制御点の入力をメニュー選択の操作を行うことなく連続して行うことができる。
【0082】
このようにして二つの所望の周期関数曲線が得られたら、次にオペレータはそれぞれの周期関数曲線を所望の長さ、即ち曲線の走り方向の画像寸法Wまでコピーを行う。例えば、いまW= 300mmとすると、オペレータは、図10の上側の周期関数曲線については曲線の走り方向に3回のコピーを指示し、下側の周期関数曲線については曲線の走り方向に2回のコピーを指示する。
【0083】
これによって、画像処理部1はそれぞれの周期関数曲線について指示された回数だけ隙間なく曲線の走り方向にコピーする処理を行い、その結果を表示する。このとき、画像処理部1は、設定された曲線の走り方向の画像寸法Wの全ての範囲に渡って当該曲線が表示できるように、表示のスケールを自動的に変更する。図11はその表示例を示す図であり、この図のスケールは図10のスケールと異なっていることが分かる。
【0084】
そして、オペレータは表示部2の画面を観察することによって所望の曲線を描画することができた場合にはこれら二つの曲線を基準波状曲線として決定し、波状曲線生成の処理の実行を入力部3により指示する。
【0085】
これによって画像処理部1はこれら二つの基準波状曲線の間に設定された本数の波状曲線を生成し、表示する。この波状曲線生成の処理、その表示の処理、及びその後の処理は上述したと同じであるので説明は省略する。
【0086】
以上のようであるので、第2の方法によれば、基準波状曲線の形状を決定する際の自由度が非常に高く、従って意図した通りの基準波状曲線を効率よく定めることができる。また、このことによって所望の波状曲線を有する細線パターンを作成することができるので、このような細線パターンをエンボス加工した化粧シートにおいては意図した通りの照り、及び照りの移動を発現させることが可能となる。
【0087】
以上、図2のステップS1の細線パターンの作成の工程について説明したが、上述したようにして細線パターンを作成すると、次にオペレータは合成する細線パターンを指定して、細線パターンの合成の処理(ステップS2)を入力部3から指示する。この指示はメニュー選択により行う。
【0088】
この処理はステップS1で作成した小さな細線パターンを合成して、最終的に要求されるエンボス版用のシリンダのサイズを有する合成細線パターンを得るための処理であるが、曲線の走り方向には作成された細線パターンを単純に隙間なくコピーすればよい。なぜなら、上述したように細線パターンの曲線の走り方向の切り出しサイズはWであるからである。従って、例えばエンボス版用のシリンダの幅または円周が 930mmであり、細線パターンの曲線の走り方向の画像寸法Wが 310mmである場合には、当該細線パターンを曲線の走り方向に3回隙間なくコピーすれば、シリンダの当該方向のサイズとすることができる。
【0089】
しかし、曲線の並び方向の合成は、このように単純に隙間なくコピーする方法によっては行うことはできない。即ち、曲線の並び方向において波状曲線の線幅とスペース幅との比率が1対1になるようにするという条件は合成した合成細線パターンにおいても満足する必要があり、従って、細線パターンを曲線の並び方向に合成するに際しては、二つの細線パターンの繋ぎ部分においても曲線の並び方向において波状曲線の線幅とスペース幅との比率が1対1になるようにしなければならない。
【0090】
ところが、上述したように細線パターンのビットマップデータは矩形に切り出されて格納されるのであるが、上述したように曲線の並び方向には所定の余裕をもって切り出されるので、このような細線パターンのデータを曲線の並び方向に単純に隙間なくコピーしたのでは二つの細線パターンの繋ぎ部分においてスペースの幅が大きくなり、上記の条件を満足させることはできない。
【0091】
そこで、画像処理部1は指定された細線パターンを曲線の並び方向に合成するに際しては次のような動作を行うが、その動作を説明する前に合成される細線パターンの波状曲線の形状について説明しておく。
【0092】
いま、図4に示すように合成するものとし、図中Aで示す細線パターンが図5に示されるような二つの基準波状曲線P,Qに基づいて作成されたものとする。また、基準波状曲線Pが細線パターンAの上側にあり、基準波状曲線Qは細線パターンAの下側にあるとすると、細線パターンAの最下部は図12(A)に示すようである。図12(A)は細線パターンAの最下部の一部を拡大して示す図であり、図中、Qは下側の基準波状曲線であり、10は細線パターンの最下部に位置する波状曲線を示す。
【0093】
このとき、細線パターンAの下に合成される細線パターンBの最上部に位置する波状曲線は、基準波状曲線Qに基づいて生成されることが必要である。なぜなら、基準波状曲線Qに基づいて生成された波状曲線の上側の輪郭の形状は基準波状曲線Qと略同一であるからであり、当該波状曲線の上側の輪郭を細線パターンAの基準波状曲線Qの位置に一致させるように細線パターンBを合成すれば、細線パターンAと細線パターンBの繋ぎ部分において、曲線の並び方向の波状曲線の線幅とスペース幅との比率が略1対1になるからである。
【0094】
例えば、いま図12(B)に示す波状曲線11が細線パターンBの最上部に位置する波状曲線であり、当該波状曲線11が基準波状曲線Qに基づいて生成されたものとすると、当該波状曲線11の上側の輪郭12は基準波状曲線Qと殆ど同じである。これは上述した波状曲線の生成の手法から明らかである。従って、図12(C)に示すように、この波状曲線11の上側の輪郭12を細線パターンAの基準波状曲線Qの位置に一致させるように合成すれば、曲線の並び方向における波状曲線の線幅とスペース幅との比率は略1対1となることは明らかである。このとき、細線パターンAと細線パターンBの曲線の走り方向の位置を一致させることは当然である。なお、このような合成はメモリ上で容易に行うことができることは当業者に明らかである。
【0095】
以上のところから、細線パターンBを作成するための基準波状曲線としては、基準波状曲線Qと、他の基準波状曲線Rを設定すればよいことが分かる。同様に、図4の細線パターンCを作成するためには、上側の基準波状曲線としては細線パターンBの下側の基準波状曲線である基準波状曲線Rを用いればよい。しかし、図4に示す場合には細線パターンCの下側の基準波状曲線としては任意の波状曲線を用いることはできず、細線パターンAの上側の基準波状曲線Pを用いる必要がある場合がある。
【0096】
即ち、図4の縦方向がエンボス版用シリンダの周方向であるとすると、細線パターンAの波状曲線と細線パターンCの波状曲線とは連続している必要がある。そうでない場合には細線パターンAと細線パターンCの繋ぎ部分において波状曲線が不連続になってしまうことは明らかである。
【0097】
つまり、合成細線パターンはエンボス版用のシリンダの周方向にエンドレスである必要があるのであり、そのためには、図4に示す場合には、細線パターンCの下側の基準波状曲線としては細線パターンAの上側の基準波状曲線と同じものを用いる必要があるのである。
【0098】
なお、以上のところから、細線パターンを作成するに際して、二つの基準波状曲線を同じ形状にした場合には、その細線パターンだけを用いてエンボス版用のシリンダのサイズを有する合成細線パターンを作成することができることは明らかである。
【0099】
従って、いま図4に示すように合成する場合、細線パターンAを基準波状曲線P,Qに基づいて作成し、細線パターンBを基準波状曲線Q,Rに基づいて作成し、細線パターンCを基準波状曲線R,Pに基づいて作成して、これら3つの細線パターンを指定して合成を指示すると、画像処理部1は、曲線の走り方向にはそれぞれの細線パターンを単純に隙間なく3回コピーする。また、曲線の並び方向には、上述した合成手法により3つの細線パターンを図13に示すように4面付けして、その中から3H分の長さ、即ちエンボス版用シリンダの円周の長さ分だけ切り出して記憶部4に格納する。
【0100】
このようにして得られた矩形の合成細線パターンがエンボス版用シリンダの円周方向にエンドレスであることは明らかである。また、この合成細線パターンのビットマップデータがエンボス版用のシリンダの原寸大のサイズを有していることも明らかである。
【0101】
以上が図2のステップS2の細線パターンの合成の処理であり、次に、ステップS2で作成した合成細線パターンを用いてエンボス版を作成する(ステップS3)。
【0102】
この工程においては、まずレーザビームによりエンボス版用の版材にパターンを直接描画露光する描画装置にステップS2で作成した合成細線パターンのビットマップデータでセットする。なお、このとき描画装置がビットマップデータを直接受け付けるものである場合には、合成細線パターンのビットマップデータをそのままセットすればよいが、ランレングス等所定の形式で圧縮されたデータしか受け付けないものである場合には、合成細線パターンのビットマップデータを当該所定の形式によって圧縮する必要があることは当然である。
【0103】
また、当該描画装置がステップS2の細線パターンの合成の処理を行う機能を有している場合には、細線パターンのデータを描画装置にセットして、上述した合成を処理を行ってもよい。
【0104】
さて、図14に示すように、エンボス版の材料となる版材40の表面にはレジスト膜50を形成する。なお、図14は版材の一部の断面を示している。以下においても同様である。
【0105】
ここでは版材40としては銅板からなるシリンダを用いるものとするが、平板状のものであってもよい。また、版材40としては銅板を用いるのが通常であるが、エンボス版としての機能を果たすのに適した材質のものであれば、どのようなものを用いてもかまわない。しかし、後述するように当該版材40に対しては合成細線パターンを描画露光した後にエッチング工程を行うので、銅や鉄等の金属が好ましい。
【0106】
また、レジスト膜50も、後のエッチング工程における保護膜として機能するものであれば、どのようなレジスト剤を用いてもよいが、レーザビームを用いて直接描画露光するのに適したレジスト剤を使用することが望ましい。
【0107】
続いて、合成細線パターンのデータを用いてレジスト膜50を直接露光する。ここではネガ型のレジストを用いているため、合成細線パターンのデータにおける波状曲線の部分のみが露光されるように、露光用レーザビームの走査を制御する。なお、ポジ型のレジストを用いた場合には、逆に、合成細線パターンのデータのスペースの部分のみを露光する。
【0108】
この露光工程によって、レジスト膜50は、図15に示すように、露光部51と未露光部52とに分かれることになる。このレジストを温湯によって現像すると、未露光部52は溶出して除去され、図16に示すように、硬化した露光部51だけが残る。
【0109】
次に、残存した露光部51を保護膜として、表面からエッチングを行う。ここでは、腐蝕液として、塩化第二銅水溶液を用いた。これにより、版材40の表面露出部分が腐蝕除去され、版材40は、図17において41で示すように形状が変化することになる。
【0110】
エッチング工程完了後、残存レジスト層である露光部51を剥離除去する。これによって図18に示すように、波状曲線に相当する凸部が形成された版材41が得られる。この版材41では、曲線の並び方向における凸部の幅と凹部の幅とは略1対1になっていることは明らかである。
【0111】
以上のようにしてエンボス版が得られるが、次にこのエンボス版を用いて化粧シートに対してエンボス加工を施す(ステップS4)。
【0112】
エンボス加工を施すに際しては、予め木目模様を印刷した化粧シート、あるいは木目模様を印刷し、且つ木目の導管に相当する絵柄のエンボス加工(以下、このエンボス加工を木目エンボス加工と称す)を施した化粧シートを用意する。なお、木目印刷、及び木目エンボス加工については周知であるので、説明は省略する。
【0113】
ここで化粧シートの材料について付言すると次のようである。当該化粧シートはエンボス加工に適した基材でなければならないことは当然であるが、このような基材としては、通常、熱可塑性樹脂からなる板、シートあるいはフィルムが広く知られており、例えば、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル等のビニル系樹脂、ポリメタアクリル酸メチル等のアクリル樹脂、等からなるシートやフィルムが一般的に用いられる。
【0114】
こうして用意した化粧シートに対して、ステップS3で作成したエンボス版41を用いたエンボス加工を行う。即ち、化粧シートに対して、熱や圧力を加えることにより、エンボス版上の凹凸構造を化粧シート上に賦形する加工を行う。このような加工を行う装置としては、ロールエンボス機(輪転式エンボス機)等が知られている。
【0115】
ここではエンボス版はシリンダ状であるのでロールエンボス機を用いてロールエンボス法によりエンボス加工を行うが、この際には、シリンダ状のエンボス版表面の凹凸形状を加工対象となる化粧シートに熱圧で賦形する。化粧シートに対する加熱加圧条件は、この化粧シートの熱圧的挙動によって異なるが、ごく一般的な熱可塑性樹脂を材料として用いた場合、軟化点または熱変形温度と融点または溶融温度との間の範囲で、適当な温度に加熱し、エンボス版を化粧シートに押圧して賦形し、冷却することにより形状を固定すればよい。
【0116】
しかる後、エンボス版を化粧シートから離型する。加熱方式としては、赤外線照射、温風吹き付け、加熱ローラからの伝導熱、誘電加熱など、種々の方法が公知である。
【0117】
なお、当該合成細線パターンのエンボス加工は、化粧シートが木目柄の印刷のみが施されたものである場合には、木目柄の印刷が施されている面に対して行ってもよく、またその反対側の面に対して行ってもよい。しかし、化粧シートが木目柄の印刷及び木目エンボス加工が施されているものである場合には、当該合成細線パターンのエンボス加工は、木目柄の印刷が施されている面とは反対側の面に対して行う。なぜなら、木目エンボス加工は、木目柄の印刷が施された面に行われるからである。
【0118】
図19に化粧シートの拡大断面図を示す。図19において、60は化粧シートを示し、61は木目柄印刷及び/または木目エンボス加工が施された面を示している。この合成細線パターンのエンボス加工によって賦形される溝63と土手64の幅の比率は、曲線の並び方向において略1対1であることは明らかである。
【0119】
なお、当該合成細線パターンのエンボス加工を木目柄の印刷が施された面の反対側の面に対して行った場合には、当該合成細線パターンのエンボス加工を行った後に、アルミニウム蒸着等によって光反射層を形成してもよい。
【0120】
以上によって化粧シートが作成される。なお、化粧シート表面に耐摩耗性や耐薬品性をもたせる場合には、上塗り塗装を施してもよいことは当然である。このような上塗り剤としては種々のものが公知である。例えば、イソシアネート等の硬化剤を用いた2液硬化型のポリウレタンやポリエステル等の熱硬化性樹脂や、紫外線硬化型あるいは電子線硬化型のウレタンアクリレート等の樹脂を結合剤として用いた上塗り剤を用いることができる。上塗り剤の塗装工程としては、グラビアコート、スプレーコート等の方法が知られている。
【0121】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。
【0122】
例えば、賦形版の製造方法としては、本出願人が先に特開平4−14448号で提案した方法、即ち、電離放射線硬化樹脂を細線パターンによる凹凸を形成したロールに流し込んで硬化させ、細線パターンによる凹凸を賦形する方法を用いてもよく、特にこの方法によれば、細線パターンによる凹凸をより高精度に賦形することができる。
【0123】
また、以上の説明ではエンボス版としてシリンダを用いるものとしたが、平板状のものであってもよい。そしてその場合には平版プレス機を用いてエンボス加工を行えばよい。
【0124】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、細線パターンがエンボス加工された化粧シートにおいて、細線パターンの曲線の並び方向における溝と土手の幅の比率を曲線の走り方向の位置によらず所定の比率とすることができるので、照り及びその移動を良好に発現させることができる。
【0125】
また、細線パターンは原寸大のビットマップデータとして作成し、そのビットマップデータを用いてエンボス版の版材に露光するので、寸法精度が高いエンボス版を作成することができ、エンボス版の品質を大幅に向上させることが可能となる。
【0126】
また、細線パターンを作成する際に用いる基準波状曲線を表示画面上で自由に作成することができるので、デザイン的にリアリティの高い波状曲線を作成することができる。
【0127】
更に、細線パターンの作成、及びその合成を誰でもが容易に行うことができるので、作業負担を大幅に改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る画像処理装置の構成例を示す図である。
【図2】 化粧シートの作成工程を示すフローチャートである。
【図3】 図2のステップS1の細線パターンの作成の工程を示すフローチャートである。
【図4】 エンボス版用のシリンダのサイズの細線パターンを作成するための方法を説明するための図である。
【図5】 基準波状曲線の例を示す図である。
【図6】 基準波状曲線に基づいて波状曲線を生成するための手法を説明するための図である。
【図7】 作成した細線パターンの表示例を示す図である。
【図8】 第2の方法により基準波状曲線を作成する場合に表示される初期画面の例を示す図である。
【図9】 第2の方法により基準波状曲線を作成する場合において節点入力したときに表示される折れ線の表示例を示す図である。
【図10】 図9の折れ線を、制御点を入力することによって滑らかな曲線に変形した場合の表示例を示す図である。
【図11】 図10の二つの周期関数曲線をそれぞれ曲線の走り方向にコピーして所望の長さの基準波状曲線とした表示例を示す図である。
【図12】 細線パターンを曲線の並び方向に合成する場合の手法を説明するための図である。
【図13】 複数の細線パターンを合成してエンボス版用のシリンダのサイズの合成細線パターンを作成するための手法を説明するための図である。
【図14】 エンボス版の作成工程において、エンボス版の版材にレジストを塗布した状態を示す断面図である。
【図15】 エンボス版の作成工程において、版材に細線パターンを露光した状態を示す断面図である。
【図16】 エンボス版の作成工程において、細線パターンの露光の後に現像した状態を示す断面図である。
【図17】 エンボス版の作成工程において、版材をエッチングした場合の状態を示す断面図である。
【図18】 最終的に得られたエンボス版の状態を示す断面図である。
【図19】 木目柄印刷を施した面の裏面に細線パターンのエンボス加工を施して作成した化粧シートの断面を示す図である。
【図20】 細線パターンの例を示す図である。
【図21】 細線パターンの例を示す図である。
【図22】 細線パターンの合成を説明するための図である。
【図23】 細線パターンの合成を説明するための図である。
【符号の説明】
1…画像処理部、2…表示部、3…入力部、4…記憶部。
Claims (4)
- 入力手段と、画像処理手段とを備える画像処理装置であって、
画像処理手段は、入力手段によって二つの波状曲線が定義され、且つ当該二つの波状曲線の間に作成する波状曲線の数が設定された場合には、波状曲線を作成する際に用いる直交座標の一方の軸方向であって、波状曲線の始点と終点を結ぶ方向に沿った軸方向である曲線の走り方向と直交する方向である曲線の並び方向において波状曲線の線幅とスペースの幅の比率が場所によらず所定の比率になるように、設定された数の波状曲線をビットマップデータとして生成して、化粧シートにエンボス加工される細線パターンデータを作成する
ことを特徴とする画像処理装置。 - 画像処理手段は、前記細線パターンデータを作成する場合に用いられるはじめの二つの波状曲線を定義するに際して、入力手段によって定義された複数の特徴点に基づいて波状曲線を作成することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
- 前記特徴点は、始点、終点、節点、制御点から構成され、制御点の指定のない節点区間は折れ線になることを特徴とする請求項2記載の画像処理装置。
- 画像処理手段は、入力手段によって作成した一つもしくは複数の細線パターンの合成が指示された場合には、隣接する細線パターンが連続するように合成する
ことを特徴とする請求項1、2または3記載の画像処理装置。
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