JP3997402B2 - リングローリング成形方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、リングローリング成形方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、フランジや歯車材等は、リング状の粗材をリングローリング成形機で圧延することで成形することができる。図5及び図6に、このようなリングローリング成形機の成形部の概略構成を示す。リングローリング成形機は、粗材11の外周面11aを押圧しながら回転する成形ロール型5と、粗材11の内周面11cを押圧しながら回転し、成形ロール型5に対して近接離反可能なマンドレル型4と、粗材11の外周面11aに当接して成形中の粗材11の外径寸法を検出するセンサーバー12と、を備えている。そして、成形ロール型5とマンドレル型4とで粗材11を厚み方向に挟持し、所定の成形圧力を負荷させた下で成形ロール型5を所定方向へ回転させて粗材11を回転させる。この時、粗材11の外径寸法はセンサーバー12により検出されている。そして、該センサーバー12により粗材11の外径寸法が設定された寸法に到達したことが検出されると、成形圧力が解放されて成形加工が終了する。
【0003】
ところで、リング状の粗材11を圧延して、外周面3aと両側面3bとの角部に周方向へ延びる段部2を有した製品3(図4参照)を成形する場合、一般に、製品3の断面形状が全幅W1、段部2の内寸法W2である時、図7に示すように、溝幅寸法W1の環状溝7と溝幅寸法W2の環状溝8とを成形面5aに付設した成形ロール型5と、溝幅寸法W1の環状溝6を成形面4aに付設したマンドレル型4と、が用いられる。また、粗材11には、図7に示すように、全幅W1´(W1´<W1)、段部2´の内側寸法W2´(W2´<W2)の製品形状と相似した断面形状の粗材11が用いられる。そして、2つの環状溝7,8が付設された成形ロール型5の成形面5aと環状溝6が付設されたマンドレル型4の成形面4aとで粗材11を挟持押圧し、成形圧力を負荷した下で成形ロール型5を回転させることにより、粗材11を各成形面4a,5aの形状に倣わせるように塑性変形(圧延成形)させる。
【0004】
しかしながら、粗材11の断面形状が製品の断面形状に相似している場合、図8に示すように、圧延時(成形時)に粗材11の段部2に圧縮応力が生じて当該段部2表面に皺や表層の巻き込みによるキズが生じて製品不良を生じることがある。そこで、成形圧力及び粗材11の送り速度(成形ロール型5の回転速度)を低く設定して皺や表層の巻き込みによるキズを防止することが考えられるが、生産性が大幅に低下し製造コストを増大させることとなる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、生産性を損なうことなく製品の皺や表層の巻き込みによるキズを防止することができるリングローリング成形方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、リング状に形成された粗材をマンドレル型と成形ロール型とで厚み方向に挟持押圧しながら周方向へ送ることで圧延し、リングローリング成形品の外周面と両側面との角部に周方向へ延びる段部を成形するリングローリング成形方法であって、成形ロール型の成形面に周方向に延びる少なくとも1つの環状溝を設けると共に粗材に環状溝の肩部と線接触する斜面を設けておいて、粗材の内周面をマンドレル型の成形面に面接触させると共に斜面を環状溝の肩部と線接触させてマンドレル型と成形ロール型とで粗材を位置決めし、斜面を環状溝の肩部で押圧して圧延してリングローリング成形品の外周面と両側面との角部に周方向へ延びる段部を成形することを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、粗材の斜面をテーパー状に形成された一対で形成し、該斜面の一対を環状溝の両側の各肩部で押圧することを特徴とする。
【0009】
従って、請求項1に記載の発明では、マンドレル型の成形面を粗材の内周面に面接触させると共に成形ロール型の肩部を粗材の斜面に線接触させることで、マンドレル型と成形ロール型とで粗材を位置決めすることが可能となる。そして、成形ロール型の肩部で斜面を押圧して粗材を圧延し、リングローリング成形品の外周面と両側面との角部に周方向へ延びる段部を成形するので、粗材表層部における肉の流れを円滑にすることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明では、テーパー状の一対の斜面を成形ロール型の環状溝の両側の各肩部で押圧するので、粗材のより安定した位置決めが可能となる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施の形態を図1乃至図4に基づいて説明する。なお、本実施の形態では、図4に示すように、外周面3aと両側面3bとの角部に外周面3aの周方向に延びる段部2を備えるリングローリング成形品3(以下、製品3と称す)の粗材1(図1参照)、及びリングローリング成形方法を説明する。図1に、リングローリング成形機(図示せず)のマンドレル型4と成形ロール型5とで挟持された粗材1の軸断面を示す。マンドレル型4は略円柱状に形成され、その外周面には製品3の内側部分(図4における紙面左側部分)の像が付設された成形面4aが形成されている。上記マンドレル型4の成形面4aには、溝幅が製品の全幅W1(図4参照)と略等しく形成された当該マンドレル型4の外周面周方向へ延びる環状溝6が付設されている。また、上記成形ロール型5の成形面5aには、溝幅が上記マンドレル型4の成形面4aの環状溝6と等しく形成された当該成形ロール型5の外周面周方向へ延びる環状溝7と、該環状溝7の底面に設けられ溝幅が製品3の両段部2の内側寸法W2(図4参照)と略等しく形成された環状溝8と、が付設されている。
【0012】
上記粗材1はリング状に形成されており、図1に示すように、外周面1aと内周面1cとが略平行に形成されている。また、軸線方向(図1における上下方向)両側の側面1bの一対は外周面1aの側から内周面1cに向けて(図1における紙面左側に向けて)緩やかに先細りとなるテーパー状に形成されている。さらに、外周面1aと各側面1bとの角部には斜面9が形成されており、該斜面9の一対は粗材1の半径方向(図1における紙面右方向)に向けて先細りとなるテーパー状に形成されている。また、図3に示すように、粗材1の全幅Waは製品3の全幅W1(図4参照)よりも若干小さく形成されている(Wa<W1)。そして、図1に示すように、粗材1は、マンドレル型4の成形面4aと成形ロール型5の成形面5aとで挟持された状態では、内周面1cがマンドレル型4の成形面4aに付設された環状溝6の底面に当接し、各斜面9が成形ロール型5の成形面5aに付設された環状溝8の各肩部10に線接触する。これにより、粗材1は、内周面1cが環状溝6の底面に当接して直径方向(図1における紙面視左右方向)に位置決めされると共に、テーパー状に配置された斜面9の一対が環状溝8の肩部10の両側に線接触して軸線方向に位置決めされる構造になっている。
【0013】
また、図3に示す、マンドレル型4と成形ロール型5とで位置決めされた状態の粗材1を、環状溝8の肩部10の稜線を含む平面Pを境界に分割した各部位の体積Va,Vbと、図4に示す、製品3を段部2の角部稜線を含む平面P´を境界に分割した各部位の体積Va´,Vb´と、を比較して、Va=Va´且つVb=Vb´となるように粗材1の形状が設定されている。これにより、圧延成形時における粗材1に内部応力が略均一に作用し、内部組織(金属組織)が均一な高品質の製品3が得られる構造になっている。
【0014】
以下、上記粗材1をリングローリング成形機(図示せず)で圧延して図4に示す製品形状に成形する際の作用を説明する。まず、粗材1をマンドレル型4の成形面4aと成形ロール型5の成形面5aとの間に位置させ、成形ロール型5を所定方向へ回転駆動させると共にマンドレル型4を成形ロール型5へ向けて所定送り速度で駆動する。なお、マンドレル型4の成形面4aと成形ロール型5の成形面5aとで挟持される前の粗材1は、内周面1cに当接されたマンドレル型4と外周面1cに当接された一対のバックアップロール(図示せず)とで支持されている。そして、粗材1の斜面9の一方に成形ロール型5の成形面5aの環状溝8の肩部10の一方が当接される。次に、斜面9の他方に肩部10の他方が当接してテーパー状に配置された斜面9の一対に環状溝8の両肩部10が当接し、図1に示すように、粗材1が軸線方向(図1における紙面視上下方向)に位置決めされる。
【0015】
そして、マンドレル型4と成形ロール型5とで粗材1に厚み方向(図1における紙面視左右方向)の成形圧力を負荷させた下で粗材1を回転させる。これにより、図2に示すように、粗材1の各斜面9が成形ロール型5の成形面5aの各肩部10で押圧されて粗材1の斜面表層部には肩部10を軸としたモーメントMが生じる。そして、粗材1は、図2の紙面視において、斜面9が肩部10との接触線で折れ曲がるようにして肩部10に倣うように塑性変形し、図4に示すように、外周面3aと側面3bとの角部に段部2が成形される。この時、粗材1の斜面表層部では、肉が肩部10との接触線の両側に円滑に流れるので、製品と相似した断面形状の従来の粗材11(図7参照)のように、段部2に皺や表層部の肉の巻き込みによるキズが生じるようなことがない。
【0016】
また、図3に示す、マンドレル型4と成形ロール型5とで位置決めされた状態の粗材1を、環状溝8の肩部10の稜線を含む平面Pを境界に分割した各部位の体積Va,Vbと、図4に示す、製品3を段部2の角部稜線を含む平面P´を境界に分割した各部位の体積Va´,Vb´と、を、Va=Va´且つVb=Vb´となるように粗材1の形状を設定したことにより、圧延成形時における粗材1に内部応力が略均一に作用して、内部組織(金属組織)が均一な高品質の製品3を得ることができる。
【0017】
この実施の形態では以下の効果を奏する。
リング状に形成された粗材1の外周面1aと両側面1bとの角部に一対の斜面9をテーパー状に設け、内周面1cをマンドレル型4の成形面4aに当接させると共に一対の斜面9を成形ロール型5の成形面5aに付設された環状溝8の両肩部10の各々に線接触させたので、粗材1をマンドレル型4と成形ロール型5とで安定した状態で位置決めすることができる。
また、粗材1の一対の斜面9を成形ロール型5の成形面5aの環状溝8の両肩部10で押圧して製品3の外周面3cと両側面3bとの角部に段部2を圧延成形するので、これにより、粗材1の斜面表層部には肩部10を軸としたモーメントMが生じて粗材1は斜面9が肩部10との接触線で折れ曲がるようにして肩部10に倣うように塑性変形する。従って、粗材1の斜面表層部は、肉が肩部10との接触線の両側に円滑に流れて、製品と相似した断面形状の従来の粗材11(図7参照)のように、段部2に皺や表層部の肉の巻き込みによるキズが生じるを防止することができる。さらに、従来の粗材11を用いた成形と比較して、成形圧力、及び粗材1の送り速度(成形ロール型5の回転速度)を大きく設定することができるので、生産性を向上させて製造コストを削減することが可能となる。
また、マンドレル型4と成形ロール型5とで位置決めされた状態の粗材1を、環状溝8の肩部10の稜線を含む平面Pを境界に分割した各部位の体積Va,Vbと、製品3を段部2の角部稜線を含む平面P´を境界に分割した各部位の体積Va´,Vb´と、を、Va=Va´且つVb=Vb´となるように粗材1の形状を設定したので、圧延成形時における粗材1に内部応力が略均一に作用して、内部組織(金属組織)が均一な高品質の製品3を得ることができる。
【0018】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、生産性を損なうことなく製品の皺や表層の巻き込みによるキズを防止することができるリングローリング成形方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本実施の形態のリングローリング成形品の粗材形状の説明図で、特に、マンドレル型と成形ロール型とで挟持された粗材の軸断面を示す図である。
【図2】 図1におけるA部の詳細図である。
【図3】 本実施の形態のリングローリング成形品の粗材形状の説明図で、特に、粗材が成形ロール型の成形面に付設された環状溝の肩部の稜線を含む平面で分割された状態を示す図である。
【図4】 本実施の形態のリングローリング成形品の説明図で、特に、製品が段部の角部稜線を含む平面で分割された状態を示す図である。
【図5】 リングローリング成形機の成形部の概略構成を示す正面図である。
【図6】 リングローリング成形機の成形部の概略構成を示す下面図である。
【図7】 従来のリングローリング成形品の粗材形状の説明図で、特に、マンドレル型と成形ロール型とで挟持された粗材の軸断面を示す図である。
【図8】 図7におけるB部の詳細図である。
【符号の説明】
1 粗材、2 段部、3 製品(リングローリング成形品)、3a 外周面(製品)、3b 側面(製品)、4 マンドレル型、4a 成形面(マンドレル型)、5 成形ロール型、5a 成形面(成形ロール型)、8 環状溝(溝)、9 斜面、10 肩部
Claims (2)
- リング状に形成された粗材をマンドレル型と成形ロール型とで厚み方向に挟持押圧しながら周方向へ送ることで圧延し、リングローリング成形品の外周面と両側面との角部に周方向へ延びる段部を成形するリングローリング成形方法であって、前記成形ロール型の成形面に周方向に延びる少なくとも1つの環状溝を設けると共に前記粗材に前記環状溝の肩部と線接触する斜面を設けておいて、前記粗材の内周面を前記マンドレル型の成形面に面接触させると共に前記斜面を前記環状溝の肩部と線接触させて前記マンドレル型と前記成形ロール型とで前記粗材を位置決めし、前記斜面を前記環状溝の肩部で押圧して圧延して前記リングローリング成形品の外周面と両側面との角部に周方向へ延びる段部を成形することを特徴とするリングローリング成形方法。
- 前記粗材の斜面をテーパー状に形成された一対で形成し、該斜面の一対を前記環状溝の両側の各肩部で押圧することを特徴とする請求項1に記載のリングローリング成形方法。
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