JP3996635B2 - 重症筋無力症処置用合成ペプチド - Google Patents

重症筋無力症処置用合成ペプチド Download PDF

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Description

発明の分野
本発明は,重症筋無力症(MG)患者の処置に有用な合成ペプチドに関し,さらに詳しくは,これらのペプチド自体,重合型または巨大分子担体に結合した型からなる医薬組成物に関する.
背景技術の説明
自己免疫疾患は自己抗原に対して向けられる免疫応答によって特徴づけられる.これらの応答は,自己反応性Tリンパ球の持続的活性化によって維持される.Tリンパ球は,異種および/または自己抗原を,抗原提示細胞(APC)の表面上の自己主要組織適合性複合体(MHC)遺伝子産物として認識して,特異的に活性化される.
重症筋無力症(MG)は自己免疫疾患であり,その症状は,神経筋接合部の後シナプス膜のアセチルコリン受容体(AChR)に対する抗体仲介自己免疫攻撃によって生じる.この抗体の攻撃はアセチルコリン受容体の喪失を起こし,正常な神経筋伝達は危機に瀕し,主として脳神経によって刺激される筋肉の偶発的な筋脱力,および易疲労性を生じる.
Tリンパ球が自己反応性過程に中心的役割を果たしているとは考えられるが,T細胞がその調節的役割に影響してMGの誘発および様々な臨床的表出を導くことになる特定の免疫調節機構は殆ど理解されておらず,筋無力症患者の処置には特異的な治療法はない.現在,処置はコリンエステラーゼ阻害剤たとえばピリドスチグミンおよびネオスチグミン,胸腺切除術,コルチコステロイド,ならびに免疫抑制剤および血漿交換療法によって行われている.
MGは,AChRの決定基に特異的な抗体によって仲介される,十分に確定された自己免疫疾患である.ヒトMHCの特異的遺伝子,HLA系がこの疾患に有意に関連することが明らかにされた.MG患者におけるある種の組織適合性抗原(HLA-B8,DR3)の高い頻度はT細胞のレベルで表現される免疫調節の欠陥を示唆するものである.
以前の研究で,本発明者らは,ヒトAChRα-サブユニットの配列を示す2つのペプチド(p195-212およびp257-269)が健康対照者に比較して,MG患者からの末梢血リンパ球(PBL)を有意に刺激することを見出したのである[Brocke,S.ら(1988),J.Clin.Invest.82:1894-1900].さらに,MG患者のHLA-DRタイプとこれらのペプチドに対する応答の間の相関が明らかにされた.すなわち,HLA-DR3を発現したすべての患者がp257-269に応答し,HLA-DR5を発現した患者の83%はp195-212に応答した.
近交系マウス株を用いたこの研究の延長から,ヒトAChRα-サブユニットの配列p195-212およびp259-271に対して高,中等度および低リスポンダー株が同定されるに至った.さらに,デンキナマズ由来のAChRで免疫したSJLおよびBALB/cマウスからのリンパ節細胞は免疫に用いた抗原に対するよりも,それぞれp195-212およびp259-271にむしろ良好に応答して増殖した[Brocke,S.ら(1990),Immunol.69:495].これらの結果は,ペプチドp195-212およびp259-271が免疫学的に優性なマウスT細胞エピトープであることを示している.
合成免疫原性ペプチド,p159-212およびp259-271に特異的な,CH3.SW起源の長期T細胞系およびクローンが本発明者らの実験室で確立され,Brock,S.らによって
Figure 0003996635
に報告された.この報告は参考として本明細書に導入する.これらの細胞系およびクローンを用いて筋無力症エピトープのT細胞認識過程の特徴を明らかにすることが可能である.この方法を用い,p159-212に特異的なT細胞系およびクローンは低(CH3.SW)および高(SJL)レスポンダーマウス株のリンパ節細胞から確立され,p259-271に特異的なT細胞系およびクローンは低(CH3.SW)および高(BALB/c)レスポンダーマウス株のリンパ節細胞から開発された.
欧州特許公報第432,691号には,無傷の生存抗原提示細胞(APC)の表面上の主要組織適合性複合体(MHC),クラスIおよびIIの遺伝子産物に対するT-細胞エピトープであるペプチドの直接結合を測定するアッセイが記載されている.このアッセイは,標識ペプチドをAPCとインキュベートし,ペプチドの標識に用いたリガンドと反応するプローブの添加により結合の程度をモニターするものである.このアッセイは自己免疫疾患および他の免疫学的疾患に適している.このアッセイにより,p159-212は数種の異なるマウス株からの生存APC上のMHCクラスII分子に直接結合することが示された.この観察されたペプチドの結合能は異なるマウス株の潜在的増殖能と相関を示し,関連抗-I-A抗体によって阻害された.さらに,ペプチドp159-212および/またはp259-271に増殖によって応答するMG患者および健康対照者からのAPCは,ビオチンで標識した同一ペプチドにも結合することが明らかにされた.MHC産物への直接結合およびT細胞に対する刺激能によって,ペプチドがスクリーニングできることは,疾患の病因におけるMG-関連エピトープの役割を説明するものかもしれない.
自己免疫疾患に関連するペプチド抗原の一続きの配列中のアミノ酸置換によって得られるペプチド類縁体は,MHC遺伝子産物には結合するが特異的ヘルパーT細胞は刺激しないペプチドに到達する可能性が示唆されてきた.このようなペプチドはインビトロおよびインビボにおいてT細胞の反応性を競合的に阻害し,したがって,相当する自己免疫疾患の処置に使用できる可能性がある[Sakai,K.ら(1989),PNAS 86:9740;Urban,J,L,ら(1989),Cell 59:257;欧州特許公報第432,691号およびPCT公報WO92/04049].しかしながら,これらの引例のいずれにも,病原ペプチドと効果的に競合し,したがって,一般的に自己免疫疾患とくに重症筋無力症の防止または処置に有用なペプチド類縁体を得るために,置換できる病原ペプチドのアミノ酸およびどのようなアミノ酸が適当な置換体として有効かに関しては何の情報もガイドラインも与えられてはいないのである.
発明の要約
本発明の目的は,ヒトAChRサブユニットの配列を表す筋無力症病原T細胞エピトープの類縁体であり,重症筋無力症の特異的処置のために設計された合成ペプチドを提供することにある.
これらの合成ペプチドはMHCクラスII遺伝子産物に結合するが,MG関連自己免疫応答に関与するT細胞は活性化しない.
したがって,本発明は,ペプチドp195-212の配列(配列番号:1):
Figure 0003996635
およびペプチドp259-271の配列(配列番号:2):
Figure 0003996635
から選ばれるヒトアセチルコリン受容体α-サブユニットの配列に相当する筋無力症病原ペプチドに対する,重症筋無力症患者からのTリンパ球の増殖性応答を阻害することができる合成ペプチドであって,少なくとも9個のアミノ酸残基を有し,ペプチドp159-212およびp259-271とは1個または2個以上のアミノ酸の置換によって異なる合成ペプチド,それらのペプチドのポリマーおよびそれらの巨大分子担体との接合体に関する.
本発明はさらに,本発明のペプチド自体,その重合型または巨大分子担体への結合型の投与による重症筋無力症の処置のための医薬組成物およびその処置方法に関する.
【図面の簡単な説明】
図1は,様々な用量の筋無力症病原性ペプチドp259-271,ならびにその類縁体p305,p306およびp307に対する,T細胞系TCBALB/c259-271の増殖性応答を示すグラフである.
図2は,様々な用量の阻害性ペプチド,p305,p306,p307およびp195-212による,T細胞系,TCBALB/c259-271のp259-271特異的増殖性応答の阻害を示すグラフである.
図3は,様々な用量のペプチド(抗原=Ag)p259-271,p305,p306およびp307による,T細胞系,TCBALB/c259-271のヘルパー活性の特異性を示すグラフである.
図4は,様々な用量のペプチドp259-271単独または類縁体p305,p306およびp307それぞれとの配合による,T細胞系,TCBALB/c259-271のヘルパー活性の阻害を示すグラフである.
図5は,様々な用量のp259-271,p305,p306およびp307に対する,p259-271で免疫したBALB/cマウスのリンパ節細胞の増殖性応答を示すグラフである.
図6は,様々な用量のp259-271単独または類縁体p306との配合に対する,p259-271で免疫したBALB/cマウスのリンパ節細胞の増殖性応答の阻害を示すグラフである.
図7は,p195-212と類縁体p455の混合物の2つの異なる用量による,T細胞系,TCSJL195-212のp195-212特異的増殖性応答の阻害を示すグラフである.
好ましい実施態様の詳細な説明
本発明は,高い親和性で適当なMHCクラスII分子に結合するがT細胞の更なる活性化は導かない,筋無力症病原性ペプチドp259-271(配列番号1:)およびp195-212(配列番号:2)の類縁体に関する.このような類縁体の例は,この機能を同様に達成するペプチドをさらに同定するために本技術分野の通常の技術を有する誰にでも実施できる操作として提供される.本発明は,母体のペプチドp159-212およびp259-271をベースに様々な位置にアミノ酸置換を有するペプチドの設計および合成に基づくものである.適当な置換によって,重症筋無力症の経過において筋無力症病原エピトープの活動に対するアンタゴニストである類縁体を同定できる.適当なMHCクラスII分子に高い親和性で結合するがT細胞の更なる活性化は招来しない類縁体は,T細胞の活性化を起こし続いて重症筋無力症の原因となる抗体の産生を生じるため同一のMHCクラスII分子に結合する筈の筋無力症病原性ペプチドと競合することになる.T細胞の増殖を起こさせる筋無力症病原性ペプチドと競合することによって,重症筋無力症の有害な作用は緩和される.
筋無力症病原性エピトープp259-271およびp195-212のT細胞エピトープとしての機能に最も重要な部分は,配列番号:1のアミノ酸残基200-208および配列番号:2の262-266である.したがって,改変はこれらのコア領域に行うのが好ましい.これらのコア領域の外側のアミノ酸残基は適当なMHCクラスII分子への結合機能にはそれほど重要ではなく,したがってこれらのアミノ酸残基の改変がT細胞の更なる活性化を防止することは期待されない.したがって,これらの領域を改変させる必要はないが,非コア領域のアミノ酸残基に置換を行う場合には,それらな置換の累積効果に関して本明細書に説明するガイドラインを満たすように選択されなければならない.
アミノ酸は,容量,疎水性-親水性パターンおよび電荷によって分類される.容量に関しては,本技術分野の通常の技術を有する者には明らかなように,大容量のアミノ酸としてはTrp,Tyr,Phe,Arg,Lys,Ile,Leu,MetおよびHisが,小容量のアミノ酸としてGly,Ala,Ser,Asp,ThrおよびProがあり,他はその中間に位置する.
疎水性-親水性パターンに関しては,アミノ酸Gly,Ala,Phe,Val,Leu,Ile,Pro,MetおよびTrpが疎水性であり,一方,残りのアミノ酸はすべて親水性であることはよく知られている.親水性アミノ酸中,Ser,Thr,GlnおよびTyrは電荷をもたず,一方Arg,Lys,HisおよびAsnは陽電荷をAspおよびGluは陰電荷を有する.
その相当する筋無力症病原性ペプチド配列番号:1および配列番号:2に対する重症筋無力症患者からのTリンパ球の増殖性応答を阻害する可能性について試験するペプチドの選択に際して重要な点は,非置換筋無力症病原性ペプチドの相当する部分の容量,疎水性-親水性パターンおよび電荷は,累積的に,実質的に変化しないことである.すなわち,疎水性残基の親水性残基による置換,またはその逆は,全体的効果が相当する非置換筋無力症病原性ペプチドの容量,疎水性-親水性パターンおよび電荷を実質的に変化しない限り可能である.上に指摘したように,これらの置換は,配列番号:1のアミノ酸残基200-208および配列番号:2の262-266の重要なエピトープコア領域に行われることが好ましい.
本発明の合成類縁体は少なくとも9アミノ酸長,好ましくは9〜12アミノ酸長を有することが好ましい.それぞれの類縁体は好ましくは,コア領域内に1〜3個の置換を有する.
本発明の好ましい実施態様においては,1個または2個以上の置換が,コア領域における疎水性アミノ酸残基を非置換ペプチドの容量を累積的に実質的に変化させないように選択された他の疎水性アミノ酸残基で置換するように選ばれる.
たとえば,p200-208においては,疎水性アミノ酸は201Ile,205Phe,206Valおよび207Metである.これらのそれぞれが,好ましい実施態様においては,他の任意の疎水性残基によって置換される.すなわち,たとえば207MetはG1y,Ala,Phe,Val,Leu,Ile,ProまたはTrpで置換できる.Alaによる置換がとくに良好な結果を与えることが確立されている.同様に,p262-266では,262Leu,264Ileおよび265Proがすべて疎水性である.したがって,これらの1〜3個が,容量に対する累積的効果が実質的でない限り,他の疎水性残基で置換できる.すなわち,たとえば265Proは,Gly,Ala,Phe,Val,Leu,Ile,MetまたはTrpによって置換できる.265ProのPheによる置換はとくに良好な結果を与えることが見出されている.
第二の実施態様においては,親水性非荷電残基が荷電または非荷電親水性残基によって置換される.p200-208ペプチドにおける親水性非荷電残基には202Thr,203Tyrおよび208Glnが包含される.p262-266ペプチドでは,266Serが非荷電親水性残基である.すなわち,たとえば,208Glnは,Ser,Thr,Tyr,Arg,Lys,His,Asn,AspまたはGluのいずれかに変換することが可能で,また266Serは,Thr,Gln,Tyr,Arg,Lys,His,Asn,AspまたはGluのいずれかに変換することが可能である.この場合も,変換は,すべての変換の累積的効果が,非置換筋無力症病原性ペプチド相当する部分の容量,疎水性-親水性パターンおよび電荷を実質的に変化させないように選択されなければならない.この実施態様内での変化の特定の例としては,208GlnのAsnまたはAspによる置換,および266SerのLysまたはAspによる置換を挙げることができる.
本発明の他の実施態様においては,荷電親水性残基が荷電(同一または逆の電荷)または非荷電親水性残基によって置換される.p200-208ペプチドにおいては,200Aspは陰性荷電親水性残基であり,204Hisは陽性荷電親水性残基である.p262-266においては,262Gluは陰性に荷電した親水性残基である.したがって,たとえば200Aspは,Ser,Thr,Gln,Tyr,Arg,Lys,His,AsnまたはGluで置換することが可能で,262GluはSer,Thr,Gln,Tyr,Arg,Lys,His,AsnまたはAspで置換することが可能である.特定の例としては,200AspのLys(逆の電荷),または262GluのSer(荷電対非荷電)による置換を挙げることができる.この場合も,どのような置換が行われても,非置換筋無力症病原性ペプチドの相当する部分の容量,疎水性-親水性パターンおよび電荷が,累積的に実質的に変化させないように選択されなければならない.
最後に,さらに別の実施態様では,疎水性残基を親水性残基で置換すること,またはその逆も,累積効果がガイドライン内にある限り可能である.このような置換の例としては,204HisのGlyによる置換または203TyrのPheによる置換または262GluのAlaによる置換がある.
ペプチド化学の技術分野における通常の熟練者には,厳密な理論的考察により,9アミノ酸程度の短い与えられたペプチドの電荷,疎水性-親水性パターンおよび容量に対する累積効果が何かは容易に認識できるものである.すなわち,適当なMHCクラスII分子との結合でネイティブな筋無力症病原性ペプチドと競合する機能は有するがT細胞の更なる活性化は招来しない本発明の類縁体を同定するためには,どのような置換を試行すべきかを決定するのには,面倒な実験は必要ではない.
ネイティブなペプチドへの置換に用いられるアミノ酸には,ノルロイシン,ヒドロキシプロリン,ヒドロキシルセリン,γ-カルボキシグルタミン酸のような修飾されたペプチドも包含されることを理解すべきである.
本明細書に示したガイドラインに個別には従う1〜3個の置換で本発明の類縁体を提供できる一部の特定の置換の組合わせには,200,Asp→Lys;203,Tyr→Phe;204,His→Gly;204,Tyr→Phe;207,Met→Nleu;207,Met→Ala;208,Gln→Asp;208,Glu→Asn;262,Glu→Asp;262,Glu→Lys;262,Glu→Ser;262,Glu→Ala;265,Pro→Leu;265,Pro→Phe;266,Ser→Lys;および266,Ser→Aspが包含される.
主としてT細胞受容体相互作用に関与する親水性アミノ酸の置換は,T細胞の活性化の遮断に効果的であろうことが期待される.疎水性残基の置換は類縁体とMHCの複合体の高い安定性に寄与するものと思われる.
筋無力症病原性ペプチドの他の修飾も本発明によって意図されるものであることを理解すべきである.すなわち,本発明のペプチドにはT細胞の増殖性応答および自己免疫疾患の防止または阻害への利用を可能にするそのペプチドの機能の少なくとも一部を維持するそれらの「化学的誘導体」を包含する意図である.
本発明のペプチドの「化学的誘導体」は,通常はそのペプチドの部分ではない付加的な化学的残基を含有する.共有結合によるペプチドの修飾は本発明の範囲内に包含される.このような修飾は,ペプチドの標的アミノ酸残基を,選ばれた側鎖または末端残基と反応できる有機誘導体化物質と反応させることによって,分子内に導入できる.このような化学的誘導体およびそれらの製造方法は本技術分野においてよく知られている.
本発明のペプチドの塩も本発明の範囲に包含される.本明細書において用いられる「塩」の語は,ペプチド分子のカルボキシル基の塩およびアミノ基の酸付加塩の両者を意味する.カルボキシル基の塩は本技術分野で知られた方法によって形成され,無機塩たとえばナトリウム,カルシウム,アンモニウム,鉄または亜鉛の塩等,および有機塩基との塩たとえばトリエタノールアミン,アルギニンもしくはリジン,ピペリジン,プロカイン等のアミンとで形成される塩が包含される.酸付加塩には,たとえば塩酸または硫酸のような鉱酸との塩,およびたとえば酢酸またはシュウ酸のような有機酸との塩が包含される.このような化学的誘導体は好ましくは,安定性,溶解性等に関連してペプチドの医薬的性質を改変させるために用いられる.
本発明の類縁体が製造されたならば,相当する筋無力症病原ペプチドに対するTリンパ球の増殖性応答を阻害する能力は,本技術分野の通常の熟練者によれば,複雑な実験によらず,たとえば本明細書に記載の試験を用いて容易に決定することができる.容易に実施できる一つの試験は,元のペプチドに対するある種のT細胞系およびクローンの増殖性応答をインビトロで阻害する置換ペプチドの能力についての試験である.T細胞系およびクローンは,配列番号:1または配列番号:2の筋無力症病原エピトープに特異的に産生されたものである.所望の活性を有する類縁体を選択するために実施できる他の試験としては,T細胞系およびクローンが母体ペプチドの存在下にペプチド特異的B細胞の活性化を促す能力を阻害する置換ペプチドの能力を試験するものである.置換ペプチドはまた,ビオチン化後,関連株の抗原提示細胞上のMHCクラスII産物に直接結合して母体の筋無力症病原エピトープの結合を阻害する能力を試験することもできる.
これらのインビトロ試験の1つまたは2つ以上で陽性の試験結果を示す置換ペプチドはインビボ活性の合理的期待を提供するものである.しかしながら,インビボ試験も煩雑な実験を要しないで実施できる.このようなインビボ動物試験の一つは,ナイーブなマウスを筋無力症病原ペプチドで免疫し,このマウスに類縁体を様々な経路および用量スケジュールで共投与する方法がある.ついで,リンパ節細胞を,筋無力症病原ペプチドに対するそれらの増殖性潜在能力について分析することができる.さらに,これらのマウスの血清中の抗-AChR抗体の力価を測定し,類縁体のインビボヘルパー細胞活性に対する効果を記録することができる.これらのインビボアッセイの利点は,疾患の誘導に対する類縁体の効果の検定を目的とするものではないが,比較的短時間ですべての類縁体のインビボスクリーニングを可能にすることである.
治療活性の最終的な証明として,この種の活性をモデルマウスによりインビボで直接測定することができる.筋無力症病原性T細胞エピトープに特異的な一部のT細胞系およびクローンは,マウスにMG類似の自己免疫性表出を誘導できることが以前明らかにされている[Yaffe,D.ら(1977),Nature 270:725-727;およびInestrosa,N.C.ら(1983),Exp.Cell.Res.147:393-405].したがって,ナイーブなマウスにこのようなクローンを注射し,自己免疫応答を防止または緩解するために,選ばれた置換ペプチドで処置することができる.ペプチドはマウスに,様々な経路,様々な投与量および様々なタイムスケジュールで注射することができる.分布容量,抗原提示細胞への取り込みおよびクリアランスを含めた類縁体の薬動力学的パラメーターを測定するためには,類縁体のビオチン化誘導体を用いることができる.各種体液中における類縁体の溶解分画の濃度はアビジンをコーティングしたプレートおよび特異的抗-ペプチド抗体を用いELISAにより測定できる.細胞結合類縁体は蛍光色素接合アビジンまたはストレプトアビジンを用いFACSにより測定できる.さらに,T細胞クローンによってマウスに誘発した自己免疫応答および疾患の表出に対するペプチドの効果を決定するために,処置マウスを周期的に検査することができる.
したがって,本明細書の実施例に使用可能であることを示した好ましい実施態様に加えて,本技術分野の通常の熟練者には,本明細書に示したガイドラインに沿って,複雑な実験を行うことなく,同様に使用可能な別の類縁体を決定できることは明白である.
与えられた置換ペプチドの与えられた重症筋無力症患者に対する期待される治療効果を検定するためにも,比較的単純なインビボ試験を行うことができる.適当なMHCクラスII分子に高い親和性で結合するがT細胞の更なる活性化は招来せず,したがってMG患者に治療効果を有すると思われるペプチドを製造することの最終目標の評価には,ペプチドをビオチン化したのち,重症筋無力症患者の末梢血リンパ球中の抗原提示細胞上のHLAクラスII産物への直接結合能および母体の筋無力症病原エピトープの結合阻止能を検定することができる.それらの特異性を確証するため,このようなアッセイにおいては,健康対照ドナーおよび対照ペプチドが使用される.
本発明の治療剤の好ましい形態は多重エピトープの単一ペプチドの形態である.すなわち,好ましい実施態様においては,2つの筋無力症病原ペプチドのそれぞれの類縁体を互いに共有結合で,たとえばアラニン残基の短い連鎖またはカテプシンによる蛋白分解候補部位によって連結する.このような部位に関しては,米国特許第5,126,249号および欧州特許第495,049号が参考になる.これは,2つの所望の類縁体中に好ましい形態の部位特異的蛋白分解を誘導する.別法として,本発明の同種または異種の多数の置換ペプチドから,たとえば,適当な重合剤たとえば0.1%グルタールアルデヒド[Audibertら(1981),Nature 289:593]を用いるペプチドの重合によって,ペプチドポリマーを形成させることもできる.このポリマーは5〜20ペプチド残基を含有することが好ましい.このようなペプチドポリマーはまた,ペプチドを架橋することにより,または多重のペプチドを巨大分子担体に結合させることによっても形成させることができる.さらに,製剤は単純に本発明の異なるペプチドの混合物とすることもできる.
適当な巨大分子担体は,たとえば,破傷風トキソイドのような蛋白質であり,アミノ酸の直鎖状または分岐状コポリマーは,L-アラニン,L-グルタミン酸およびL-リジンの直鎖状コポリマーならびにL-チロシン,L-グルタミン酸,L-アラニンおよびL-リジンの分岐状コポリマー,(T,G)-A-L,または多重鎖ポリ-DL-アラニン[M.Selaら(1955),J.Am.Chem.Soc.77:6175]である.担体との接合体は,たとえば最初にペプチドを水溶性カルボジイミドたとえば1-エチル-3-(3'-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩とカップリングさせ,ついでMuller,G.M.ら(1982),Proc.Natl.Acad.Sci.USA 79:569の記載に従い,巨大分子との接合を行うことによって得られる.各接合体中のカップリングしたペプチドの含量はアミノ酸分析により,担体単独の組成と比較して決定することができる.
本発明の好ましい実施態様によれば,1または2種以上の活性ペプチドを適当な巨大分子担体に結合させるか,またはグルタールアルデヒドの存在下に重合させることができる.
ペプチド,それらのポリマーまたはそれらの適当な巨大分子担体との接合体は,それらの生物学的利用性が保証され,処置に適当に作成された形態で患者に投与される.2個以上のペプチド類縁体に有意な阻害活性が見出された場合には,これらの類縁体はペプチドの混合物を含有する製剤として患者に投与することもできる.個々の患者が両方の病原性MG関連ペプチド,すなわちp195-212およびp259-271に応答する場合は,最終的な処置には,適当な形態で両ペプチドの適当な阻害類縁体を含有させることになる.
本発明はさらに,本発明の合成ペプチド,適当な巨大分子担体とそれらの接合体またはそれらのポリマー少なくとも1種と,所望により医薬的に許容される担体からなる医薬組成物を包含する.
投与経路には,経口,静脈内,皮下,動脈内,筋肉内,吸入,腹腔内,経鼻,莢膜内,経皮,または経腸経路を含めた他の既知経路が包含される.
本発明の組成物の投与に際しての用量範囲は,所望の効果が生じる,たとえばインビトロにおけるT細胞の増殖性によって測定される筋無力症病原ペプチドに対する免疫応答が実質的に防止または阻害され,さらに疾患が有意に処置されるのに十分な用量である.この用量は,有害な副作用,たとえば望ましくない交叉反応,全身的な免疫抑制,アナフィラキシー反応等を起こすほど大量であってはならない.
免疫関連疾患の処置に使用するのに際しての本発明のペプチドの有効用量は,約1μg〜100mg/kg体重の範囲である.投与量は患者の年齢,性別,健康状態および体重,現在の処置の種類,それがある場合にはその頻度,ならびに所望の効果の程度に依存する.
ヒトAChRの配列の合成類縁体はMG患者の特異的抗原応答を,他の免疫応答を障害することなく阻害または抑制することを目的とする.このアプローチは,MGに現在承認されている処置が,非特異的でしかも多くの有害な副作用のある免疫抑制剤の投与であることからきわめて重要である.
次に,本発明を以下の非限定的実施例によって例示する.
実施例
例1.ペプチドの製造
合成ペプチドp195-212およびp259-271ならびにそれらの類縁体p455(207,Met→Ala),(200,Asp→Lys),(203,Tyr→Phe),(204,His→Gly),(208,Gln→Asp),p305(266,Ser→Asp),p306(262,Glu→Lys),p307(262,Glu→Asp),(262,Glu→Ser),および(262,Glu→Ala)が、ペプチドシンセサイザーで,市販されている側鎖保護アミノ酸を用い,メリーフィールド固相法[Merrifieldら(1963),J.Am.Chem.Soc.85:2149]によって合成される.アミノ酸は各工程において少なくとも99%の効率で付加される.無水HFによって保護基が除去され,ペプチドが樹脂から分離される.
ペプチドは酢酸エチルまたは酢酸イソプロピルで抽出し,HPLCによって精製する.ペプチドの純度はHPLCおよびアミノ酸分析によって確認される.
上述のペプチドはそれぞれ1個の置換をもつのみであるが,2もしくは3個の置換を有し,本明細書に示したガイドラインの目標を維持する他のペプチドも同様にして合成できる.
例2.ペプチドp259-271に対するT細胞クローンのインビトロ増殖応答の阻害
p259-271に特異的なT細胞系およびクローンは,Brockeら(1990a,前出)によって記載された方法に従って高レスポンダーBALB/cマウスのリンパ節細胞から開発し,TCBALB/c259-271と命名された[Mozes,E.ら(1991),"Abstraot,15th International Congress of Biochemistry,Jerusalem,20頁].
T細胞クローンの増殖性応答は最終的に16時間の培養のためのインキュベーション後における細胞への3H-チミジンの取り込みを測定して評価した.T細胞系TCBALB/c259-271の細胞(104細胞/ウエル)を,抗原提示細胞としてのBALB/cマウスからの照射した(3,000ラド)同遺伝子系脾臓細胞(0.5×105細胞/ウエル)の存在下,各種濃度(1,5,10,20μg/ウエル)のペプチドp195-212,p259-271,p305,p306およびp307を添加してインキュベートした.培養は2mMグルタミン,1mMピルビン酸ナトリウム,非必須アミノ酸,100U/mlのペニシリン,100μg/mlのストレプトマイシン,0.25μg/mlのフンギゾン,5×10-5Mの2-メルカプトエタノール,10mMのHEPES緩衝液(補強培地)および10%ウシ胎児血清(FCS)を補充したRPMI1640培地0.2ml中にセットした.アイソトープを導入して16時間後に,細胞をろ紙上に収穫し,放射能を測定した.結果を図1に示す(3回の測定値の平均CPM±SDで表す).ペプチドp305およびp307は,試験したすべての用量でT細胞系の増殖性応答の低下を誘発した(p259-271で得られた応答のそれぞれ12%および34.3%まで)が,p306はTCBALB/c259-271細胞系の増殖を刺激しなかった.ペプチドp195-212が,ペプチドp259-271に特異的なT細胞の増殖の競合的阻害を示すことは,p195-212がp259-271と同じMHC-決定基に向けられていることから,驚くべきことではない.Brockeら(1990a,前出)はp195-212がTCSW259-271T細胞系の増殖性応答を阻害し,p259-271がTCSW195-212系の特異的増殖性応答を阻害することを報告している.
増殖性応答の阻害は,インビトロ増殖培養液中への試験する置換ペプチドの添加用量を増大させていって(25,50,75,100μg/ウエル)実施した.T細胞系TCBALB/c259-271の細胞(104細胞/ウエル)を,照射した同遺伝子系脾臓細胞(0.5×106細胞/ウエル)の存在下,p259-271(1μg/ウエル),および様々な用量の阻害ペプチドp305,p306,p307およびp195-212を添加して48時間インキュベートした.ついで,3H-チミジン(5Ci/ミリモルを0.5μCi)を加え,16時間後にプレートをろ紙上に収穫した.結果はp259-271特異的増殖応答の阻害%として表す.図2に示すように,p306はp259-271に対するTCBALB/c259-271系の増殖性応答を93%まで阻害した.
例3.インビトロ抗体産生アッセイ
合成ペプチドp305,p306およびp307を,抗体産生アッセイにおいて,ペプチド特異的B細胞と協力してTCBALB/c259-271T細胞系を刺激する能力について試験した.前もって20μgのp259-271で免疫したBALB/cマウスの脾臓から精製したB細胞(0.5×106細胞/ウエル)を正常同遺伝子系脾臓細胞(0.5×106細胞/ウエル),様々な用量のp305,p306およびp307(0.001,0.01,0.1,1および5μg/ウエル)ならびにTCBALB/c259-271系の細胞(104細胞/ウエル)とともに,96-ウエルマイクロタイタープレート中で培養した.3日間インキュベートしたのち,培地(7.5%FCSを補充した補強RPMI)を抗原を含まない新鮮な培地に交換し,4日後に上清を収穫して,特異的抗-p259-271抗体の存在について試験した(固相RIAによる).結果は3回の測定値の平均CPM±SDとして表す.
図3から明らかなように,p305の存在下には低い抗体力価が得られたが,p307によって刺激されたヘルパー活性は,母体のペプチドの存在下に得られた活性と同じ有効性を示した.これに対し,p306を培養液に添加した場合には,抗体の活性は検出できなかった.
T細胞ヘルパー活性の阻害は,インビトロ培養混合物中への試験する置換ペプチドの添加用量を増大させていって実施した.前もって,20μgのp259-271で免疫したBALB/cマウスの脾臓から精製したB細胞(0.5×106細胞/ウエル)を,正常同遺伝子系脾臓細胞(0.5×106細胞/ウエル),様々な用量のp259-271単独(0.001,0.01,0.1,1および5μg/ウエル)またはp305,p306またはp307(各20μg)とともに,ならびにTCBALB/c259-271系の細胞(104細胞/ウエル)を加えて,96-ウエルマイクロタイタープレート中で培養した.3日間インキュベートしたのち,上記と同様に培地を新鮮な培地に交換し,4日後に上清を収穫して,特異的抗-p259-271抗体の存在について試験した(固相RIAによる).結果は3回の測定値の平均CPM±SDとして表す.図4に示すように,p259-271特異的抗体の産生はp306の存在下に80%まで阻害された.
例4.p259-271による免疫後のマウスリンパ節細胞の抗原特異的増殖性応答
ペプチドp305,p306およびp307が,より異種性のT細胞集団すなわちリンパ節の増殖性応答を刺激または阻害するかどうかを明らかにするために,以下の実験を行った.
ペプチドp305,p306およびp307を,p259-271で免疫したBALB/cマウスリンパ節細胞の増殖を刺激する能力について,母体のペプチドp259-271と比較して調べた.p259-271Tで免疫したBALB/cマウスから得られたリンパ節細胞(0.5×106細胞/ウエル)を1%正常マウス血清を含有する補強培地中,様々な濃度のペプチド(10,20,50,および100μg/ウエル)の存在下に96時間インキュベートした.ついで3H-チミジン(5Ci/ミリモルを0.5μCi)を加え,16時間後にプレートをろ紙上に収穫した.結果は,3回の測定値の平均CPMとして表す.図5に示すように,p305およびp307はその細胞の低い増殖性応答を誘発した(p259-271の使用によって得られた値のそれぞれ53.2%および32.3%まで)が,p306はリンパ節細胞の増殖を刺激しなかった.
p259-271で免疫したBALB/cマウスのリンパ節細胞の増殖性応答をの阻害は,インキュベーション混合物中に病原性ペプチドp259-271と同じ時間にペプチド類縁体p306を添加して行った.p259-271で免疫したBALB/cマウスから得られたリンパ節細胞(0.5×106細胞/ウエル)を,様々な濃度のp259-271(1,5,10,および20μg/ウエル)および100μg/ウエルのp306の存在下に96時間インキュベートした.ついで,3H-チミジン(5Ci/ミリモルを0.5μCi)を加え,16時間後にプレートをろ紙上に収穫した.結果は,3回の測定値の平均CPMとして表す.図6に示すようにP306はp259-271に対するリンパ節細胞の増殖性応答を64.7%まで阻害した.
例5.ペプチドp195-212に対するT細胞クローンのインビトロ増殖性応答の阻害
p195-212に特異的なT細胞系およびクローンは,Brockeら(1990a,前出)によって記載された方法によって高(SJL)レスポンダーマウス株のリンパ節細胞から確立され,TCSJL195-212系と命名された[Mozes,E.ら(1991),前出].
T細胞クローンの増殖性応答は例2のプロトコールと同様にして評価し,図2に示す結果を得た.
p195-212ペプチド類縁体p455はTCSJL195-212系細胞の増殖を刺激しなかった.しかも,図7に示すようにp455はp159-212に対するTCSJL195-212系の増殖性応答を99%以上阻害した.これは極めて実質的な阻害を示すものである.
例6.重症筋無力症の病原ペプチドに対するヒトT細胞の増殖の阻害
病原性ペプチドp259-271およびその類縁体p305,p306およびp307,ならびにp195-212およびその類縁体p455の,ヒトT細胞の増殖性応答に対する作用を評価した.
重症筋無力症患者および適当な対照ドナーの末梢血リンパ球(PBL)(2×105細胞/ウエル)を,10%自己血清を含有する補強培地0.2ml中,様々な用量のペプチドp195-212および類縁体p455の存在下に,マイクロタイタープレートで96時間インキュベートし,ついで3H-チミジン0.5μCiにより一夜パルスして評価した.細胞を収穫し,放射能を測定した.増殖応答の阻害は,インキュベーション混合物中に病原性ペプチドp195-212と同じ時間に様々な用量のp455を添加して行った.結果は(SI)刺激係数(2および3欄),%阻害率(4欄)として表1に示す.
MG患者のPBLを,p195-212およびペプチド類縁体p455の存在下におけるそれらの増殖能について試験した.さらにPBLのp195-212特異的増殖応答に対する類縁体p455の阻害能を試験した.これらの試験における3例のMG患者の応答を表1にまとめる.この表から明らかなように,患者E.K.,C.G.およびM.R.からのPBLはp195-212に応答して増殖した(それぞれSI=6.3,4.3および3.6)が,この類縁体に対する増殖性応答は,試験したすべての濃度(10,25,50,100μM,20,50,100,200μg/ウエルに相当)で検出されなかった.さらにこの類縁体は,インヒビター:スティミュレーター比(I:S)1:1で3例すべての患者からのPBLの増殖性応答を77〜100%まで阻害した.
Figure 0003996635
MG患者のPBLをp259-271ならびにその類縁体p305,p306およびp307の存在下におけるそれらの増殖能について上述のように試験した.さらにPBLのp259-271特異的増殖応答に対する様々な用量の類縁体の阻害能を試験した.これらの試験における3例のMG患者の応答を表2にまとめる.この表から明らかなように,患者I.T.,E.K.およびC.G.からのPBLはp259-271に応答して増殖した(それぞれ,SI=4.1,3.7および2.7).しかも,各患者について少なくとも1種の類縁体がPBLのp259-271誘導増殖性応答を阻害することができた.
Figure 0003996635
例7.マウスにおける実験的MGの誘発および処置
ナイーブな同遺伝子型マウスに,TCSJLp195-212およびTCBALB/c259-271またはそれらに由来するクローン系の活性化ペプチド特異的T細胞(5〜10×106細胞)を接種する(PBS中静脈内,14回).自己免疫応答は,血清学的(たとえば抗マウスAChR抗体),組織学的および電気生理学的パラメーターによって測定する.
接種されたマウスには,それらの血清の,C2系細胞,分化によってAChRを発現するマウス筋肉細胞系を染色する能力[Yaffe,D. & Saxel,0.(1977),前出;およびInestrosa,N.C.ら(1983),前出]によって明らかなように,自己免疫応答が誘発された.さらに,接種されたBALB/cマウスの筋電図には,対照群には観察されなかった複合筋活動電位(CMAP)の典型的な無力性低下が認められた.
誘発される実験的MGの防止または治癒のために,ペプチド類縁体をa)ペプチド特異的T細胞の接種前;b)ペプチド特異的T細胞の接種と同時;c)ペプチド特異的T細胞の接種後,ただし自己免疫応答の出現前;d)実験的MGの出現後に投与する.自己免疫応答の重篤度の低下はペプチドによる処置の適合性を指示する.
本明細書に引用したすべての参考文献は,雑誌論文もしくは要約,公開されたもしくは対応する米国もしくは外国の特許出願,発行された米国もしくは外国特許,または他のすべての引例を含め,引用した引例に掲載されたすべてのデータ,表,図および本文を含むすべてを参考として本明細書に導入する.さらに,本明細書に引用された参考文献中に引用された参考文献の全内容をすべて参考として本明細書に導入する.
既知方法工程,慣用方法工程,既知方法または慣用方法に関する言及はいかなる意味においても,本発明の様態,説明または実施態様が関連技術中に開示,教示または示唆されていることを自認するものではない.
特定の実施態様についての以上の説明により本発明の一般的性質は完全に明らかにされているので,本技術分野の熟練者の知識(本明細書に引用した参考文献の内容も含めて)を適用することにより,複雑な実験を要しないで,また本発明の一般的概念から逸脱することなく,このような特定の実施態様の改変および/または各種応用の適用は容易である.したがって,このような適用および改変は本明細書に提供された教示およびガイドラインに基づき,開示された実施態様の均等物の意味および範囲に包含されるものである.本明細書における表現および術語は説明の目的で用いられるものであって,限定を目的とするものではないことを理解すべきであり,本明細書の術語および表現は,本明細書に提示された教示およびガイドラインを参照し,熟練した技術者が,本技術分野における通常の熟練者の知識と合せて解釈すべきである.
【配列表】
配列番号:1
配列の長さ:18
配列の型:アミノ酸
鎖の長さ:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
配列
Figure 0003996635
配列番号:2
配列の長さ:13
配列の型:アミノ酸
鎖の長さ:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
配列
Figure 0003996635

Claims (2)

  1. 配列番号1:
    Figure 0003996635
    の式で示されるペプチドp195-212及び配列番号2:
    Figure 0003996635
    の式で示されるペプチドp259-271からなる群より選ばれるヒトアセチルコリン受容体α-サブユニットの部分配列に相当する筋無力症病原ペプチドに対する重症筋無力症患者からのTリンパ球の増殖性応答を阻害することができる応答阻害ペプチドであり、
    該応答阻害ペプチドは、配列番号1及び2の該アミノ酸残基とは配列番号1及び2の該アミノ酸残基中の1個のアミノ酸置換によって異なり、該アミノ酸置換は
    配列番号1のアミノ酸残基195-212の207Metがアミノ酸Alaによって置換される;
    配列番号2のアミノ酸残基259-271の266Serがアミノ酸Aspによって置換される;
    配列番号2のアミノ酸残基259-271の262Gluがアミノ酸Lysによって置換される;
    又は、
    配列番号2のアミノ酸残基259-271の262Gluがアミノ酸Aspによって置換される、
    アミノ酸置換より選択される上記応答阻害ペプチド。
  2. 請求項に記載の応答阻害ペプチドの有効量と医薬的に許容される賦形剤からなる、重症筋無力症の処置用医薬組成物。
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