JP3995615B2 - 分光式濃度測定装置及びその光源安定判別方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、紫外線等の吸収波長帯の光を利用して気体及び液体の濃度を測定する分光式濃度測定装置及びその光源安定判別方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の分光式濃度測定装置とし、例えば、紫外線の吸光度を利用してオゾン濃度を計測する環境用等のオゾン濃度計について、図4を参照して説明する。測定ガス1は、ゼロガス生成器2を通過して三方向弁3に送られ、かつ直接三方向弁3に送られている。ゼロガス生成器2は、測定ガス中のオゾンを吸着・分解してゼロガス、すなわちオゾンの含まないガスを生成するものとなる。又、三方向弁3の出力端には、測定セル4、流量計5、バルブ6及びポンプ7が接続されている。
【0003】
測定セル4には、低圧水銀ランプ8から放射される紫外光が入射し、かつ測定セル4を透過した紫外光の光路上には、この測定セル4を透過した光の強さを検出する検出器9が配置されている。検出器9から出力される検出信号は、マイクロコンピュータ10に入力され、測定セル4を透過した光の強さからオゾン濃度を求めて表示器11に表示される。
【0004】
測定ガス1はポンプ7により引かれ、ゼロガス生成器2においてオゾンが吸着・分解されてオゾンの含まないガス、すなわちゼロガス12とし、このゼロガス12が三方向弁3を通って測定セル4に送られる。又、測定ガス1はポンプ7により引かれ、直接に三方向弁3を通って測定セル4に送られる。ここで、三方向弁3は、切り替え動作によってゼロガス12と測定ガス1とを交互に測定セル4に送る。
【0005】
測定セル4では測定ガス1が導入されると、測定ガス1に対して低圧水銀ランプ8から放射された紫外光が照射される。紫外光は測定ガス1を透過することにより、測定ガス1に含まれるオゾンにより吸収されて検出器9に到達する。検出器9は測定ガス1を透過した紫外光を受光し、透過光の強さに応じた検出信号を出力する。一方、ゼロガス12が測定セル4に導入されると、ゼロガス12に対して低圧水銀ランプ8から放射された紫外光が照射され、紫外光はゼロガス12を透過して検出器9に到達する。検出器9はゼロガス12を透過した紫外光を受光し、この透過光の強さに応じた検出信号を出力する。
【0006】
マイクロコンピュータ10は、測定ガス1を測定セル4に導入したときの検出器9の出力信号を取り込んでその透過光の強さIxを求め、又、ゼロガス12を測定セル4に導入したときの検出器9の出力信号を取り込んで透過光の強さIo を求める。マイクロコンピュータ10では、測定ガス導入時の透過光の強さIx及びゼロガス12導入時の透過光の強さIo を下記式(1)に代入して演算し、オゾン濃度値Cを求めて表示器11に表示する。(例えば、特許文献1参照)
【0007】
下記式(1)はランバート・ベールの法則に基づく演算式であり、紫外光等の吸収波長帯の光が測定ガスを通過する際の吸光度を利用して測定ガスの濃度を計測する。
【0008】
【数1】
【0009】
【特許文献1】
特開平9−33429号公報(明細書の段落番号〔0002〕〜〔0012〕,図2)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上記オゾン濃度計が正確な濃度を計測するには、低圧水銀ランプから放射される紫外光の光量が一定であることが条件である。しかしながら、低圧水銀ランプは、図5に示したように、その原因は解明されていないが、スネーク現象と称せられる低圧水銀ランプの発光量の周期的な変動が予期せずして発生することがあった。このような現象が発生すると、濃度計は、図6に示すように、濃度値が零であるにも関わらず、その出力が変動して、あたかもオゾン濃度が変化しているかのような現象が生じる。このような現象が発生すると、オゾン濃度を監視するプロセスではシステムの動作に支障を来すことになる。
【0011】
低圧水銀ランプのスネーク現象は、図5に示したように、低圧水銀ランプの光を受光部で受けて受光部の出力を増幅した出力から捉えることができる。スネーク現象の一例を示す図5のグラフは、その縦軸が出力電圧(mV)であり、その横軸が時間軸(msec)である。このスネーク現象における周波数成分の振幅は約216mVであり、1周期が約100msecであって、周期は約10Hzである。通常、スネーク現象の周波数成分は数十Hz以下である。
【0012】
このようなスネーク現象が発生した時のオゾン濃度計の出力は、図6に示したように、濃度変化が激しく変動して、被測定物の正確な濃度の計測ができない。なお、同図の横軸が時間軸(sec)であり、縦軸が濃度値(g/m3(N))である。低圧水銀ランプがスネーク現象を発生しているときは、オゾン濃度が零であるにも関わらず、図6の測定結果では、最大約72g/m3(N)のオゾンが発生しているかのような値を示しており、このような測定結果に基づいて、プロセスの運転停止やオゾン濃度の制御等を行った場合には、重大な事態に陥るおそれがある。
【0013】
本発明は、上述のような課題に鑑みなされたものであり、光源のスネーク現象を検出して光源の発光が安定した状態で被測定物の濃度を計測ができるようにした分光式濃度測定装置及び光源安定判別方法を提供することを目的とするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を達成したものであって、請求項1の発明は、光源からの光が被測定物中を通過する際の光吸収率により該被測定物の濃度を測定する分光式濃度測定装置における光源安定判別方法であって、前記光源からの光を前記被測定物への光路から分離して受光部に導入し、該受光部の出力の時系列データを統計処理して、該受光部の出力の周期的変動を検出することを特徴とする分光式濃度測定装置の光源安定判別方法である。
【0015】
請求項1の発明では、光源からの光(吸収波長帯の光,例えば紫外光)が被測定物中を通過する際の光吸収率により被測定物の濃度を測定する分光式濃度測定装置における光源安定判別方法であって、光源にスネーク現象が発生して、光源の光量が周期的に変動して、濃度計測の信頼性を損なうことがあり、このような現象を監視して確実な濃度測定を可能とする分光式濃度測定装置の光源安定判別方法である。この光源安定判別方法は、光源からの光を被測定物質への光路から分離して受光部に導入し、この受光部の出力の時系列データを統計処理して、受光部の出力により発光量の周期的変動を検出する光源安定判別方法である。周期的変動が検出されない場合は光源が正常に発光していると判断し、発光量の周期的変動が検出された場合は光源が発光異常、すなわちスネーク現象が発生していると判断して、測定された濃度値が異常であると判断する。このように分光式濃度測定装置の光源の安定性を監視しながら被測定物の濃度測定を行うことができる作用を有する。
【0016】
また、請求項2の発明は、前記受光部の出力の周期的変動を検出する統計処理が、該光源の発光量に応じた電圧をA/D変換した時系列データをサンプリングし、該時系列データの隣接値を減算して得られる正又は負の符号の割合から判定することを特徴とする請求項1に記載の光源安定判別方法である。
【0017】
請求項2の発明では、サンプリングした変換値(時系列データ)の前後の値を減算して「正」,「負」の符号を求め、所定のサンプリング期間の「正」,「負」の符号を集計して、全データ数に対しての「正」の割合が所定の条件を満たしたとき、スネーク現象が発生していると判断し、所定の条件を満たさない場合はスネーク現象が発生していないものと判定するようにして、光源の安定性を判別する方法であり、例えば、「正」の符号の割合が40〜60%の場合はスネーク現象が発生していると判断する。また、スネーク現象の判定のためのサンプリング時間は、例えば5〜10秒程度とし、この測定期間の時系列データに基づいて、スネーク現象の判定を行う。
【0018】
また、請求項3の発明は、前記受光部の出力の周期的変動を検出する統計処理が、該光源の発光量に応じて変動する電圧をA/D変換して得られる時系列データをサンプリングし、時系列データの平均値とその値の標準偏差値に基づいて、ばらつきの度合いを求めて、前記周期的変動を検出することを特徴とする請求項1に記載の光源安定判別方法である。
【0019】
請求項3の発明では、光源からの光の発光量を電圧に変換してサンプリングした変換値(時系列データ)から平均値を求め、かつ変換値と平均値とから標準偏差値を求めて、ばらつきの度合いを算出し、光源のスネーク現象を判定するようにし、ばらつきの度合いが所定値と等しいか、或いは超えた場合、スネーク現象が発生していると判定して、光源の安定性を判別する方法であり、ばらつきの度合いは、標準偏差値を平均値で除して得られる割合であり、ばらつきの度合いが大きい場合には、光源の発光量に周期的変動、すなわちスネーク現象が発生したものと判定することができる。
【0020】
また、請求項4の発明は、光源の電圧源と、
被測定物が流入する測定セルと、
前記光源からの光が入射するハーフミラーと、
前記ハーフミラーを通過した前記光源からの光を前記測定セルに導入し、該測定セル内の被測定物を通過した透過光を受光する第1受光部と、
前記ハーフミラーで分離した該光源からの光を受光する第2受光部と、
前記第1受光部の出力をA/D変換する第1の変換器と、
前記第2受光部の出力をA/D変換する第2の変換器と、
該第2の変換器の時系列データをサンプリングして出力の周期的変動を検出し、前記光源の電圧源を遮断して再び該光源の電圧源を投入する切り換え制御を行うか否かを判定する制御手段と、
を備えることを特徴とする分光濃度測定装置である。
【0021】
請求項4の発明では、光源からの光(吸収波長帯の光)がハーフミラーを通過し測定セル内の被測定物を通過した透過光を第1受光部で受光し、光源からの光をハーフミラーで分離した光を第2受光部で受光し、第1受光部の出力電圧を第1の変換器でA/D変換して被測定物の濃度を計測し、かつ第2受光部の出力電圧を第2の変換器でA/D変換して得られる時系列データを制御手段に入力し、制御手段では、第2の変換器のA/D変換値である時系列データをサンプリングして統計的データ処理を行い、第2受光部の出力電圧の周期的変動を検出した場合、制御手段の切り換え制御により、光源の電圧源を遮断して消灯し、再び電圧源を投入して点灯するように切り換え制御して、光源のスネーク現象による異常現象を解消して、光源からの安定した光により被測定物の濃度を測定することができる作用を有する。
【0022】
また、請求項5の発明は、前記制御手段が、時系列的に得られる変換値の隣接値を減算して正負を求める第1演算手段と、該第1演算手段で得られる正又は負の符号の割合を統計処理する第2演算手段と、該第2演算手段による正又は負の符号の割合から出力の周期的変動を判定する判定手段とを備えることを特徴とする請求項4に記載の分光式濃度測定装置である。
【0023】
請求項5の発明では、制御手段が時系列的に得られる変換値(時系列データ)の隣接値を第1演算手段で減算処理して「正」,「負」を求めて、第1演算手段で得られる「正」又は「負」の符号の割合を第2演算手段により算出し、第2演算手段による「正」又は「負」の割合が所定値内であるか否かを判定手段により判定し、「正」又は「負」の割合が所定値内である場合は、出力の周期的変動が発生していると判断する。このような統計的データ処理によって、光源がスネーク現象を発生しているか否かを容易に検出することができる作用を有する。
【0024】
また、請求項6の発明は、前記制御手段が、時系列的に得られる変換値の平均値を求める第1演算手段と、該第1演算手段で得られる平均値から標準偏差値を統計処理する第2演算手段と、該平均値と該標準偏差値とでばらつきの度合いを演算して求める第3演算手段と、該第3演算手段によるばらつきの度合いから出力の周期的変動を判定する判定手段とを備えることを特徴とする請求項4に記載の分光式濃度測定装置である。
【0025】
請求項6の発明では、前記制御手段が、第1演算手段によって、時系列的に得られる変換値(時系列データ)の平均値を求め、かつ第1演算手段で得られる平均値により第2演算手段により標準偏差値を求め、さらに、該平均値と該標準偏差値とから第3演算手段によりばらつきの度合いを求めて、第3演算手段により算出されたばらつきの度合いを判定手段により判定して、第2の受光部の出力の周期的変動を判定することによって、光源がスネーク現象を生じているか否かを検出することができる作用を有する。
【0026】
また、請求項7の発明は、請求項4から6の何れかに記載の分光式濃度測定装置において、被測定物の濃度測定を行う前又は後に前記光源の発光異常を検出するか、若しくは被測定物の濃度演算処理期間に前記光源の発光異常を検出するための時系列データをサンプリングして前記光源の発光異常を検出することを特徴とする分光式濃度測定装置である。
【0027】
請求項7の発明では、被測定物の測定を行う前又は後に、若しくは被測定物の濃度演算処理する期間の何れかのタイミングで、光源の発光異常を監視することによって、濃度測定装置の動作を停止させることなく、光源の異常の有無を監視することができる分光式濃度測定装置である。例えば、スネーク現象の発生の有無の検出を、濃度測定系とは独立に設けて、光源の発光異常の監視を実施し、濃度測定系に情報を伝達するようにしてもよい。さらに、分光式濃度測定装置の測定結果は、自己診断手段に基づいて、光源の発光異常の有無を検出した後、光源の発光異常が認められない場合に出力するように制御されているので、測定結果の信頼性が格別に高いものとすることができる。なお、光源のスネーク現象の検出は周期的に実施すればよい。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る分光式濃度測定装置の光源安定判別方法及び光源の安定判別が可能な分光式濃度測定装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0029】
図1の分光式濃度測定装置は、オゾンガス等の被測定物(以下、測定ガスと称する)を測定セル21に送り込む被測定物供給系と、紫外光等の吸収波長帯の光を測定セル21に照射する光学系と、測定セル21に導入される光の強度を計測して、スネーク現象の発生の有無を監視し、かつ被測定物の濃度を計測する測定系とが設けられている。
【0030】
先ず、被測定物供給系は、例えば三方向弁等の切換弁20が測定ガスをゼロガス生成器を通過させて送られ、または直接切換弁20に送られるように構成され、切換弁20の切り換え制御によって、ゼロガス又は測定ガスが切換弁20から測定セル21に送り込まれる。光学系は、低圧水銀ランプ22から放射される紫外光がハーフミラー23を通過して測定セル21に導入され、ゼロガス又は測定ガスが送り込まれた測定セル21を透過した紫外光の光路上に透過光の強さを検出する検出器(受光部)24が配置されている。ハーフミラー23で反射した反射光の光路上には、紫外光の強さを検出する検出器(受光部)27が配置されている。低圧水銀ランプ22にはランプ電源31から安定化電圧が供給されている。なお、濃度計測装置が設置されるプロセスによってはゼロガス生成器を必要としない場合もある。
【0031】
測定系には、測定セル21を透過した光を受光する検出器24とハーフミラー23で反射して分離された光を受光する検出器27と、検出器24,27の出力を増幅する増幅器25,28と、増幅器25,28の出力をA/D変換するA/D変換器26,29とが備えられている。A/D変換器26,29により変換されたデジタル信号(時系列データ)は、CPU(中央処理装置)による制御装置30に入力される。
【0032】
制御装置30では、検出器24からの出力がA/D変換されて入力され、上記(1)式によって、既存の技術により演算処理が行われて被測定物(測定ガス)の濃度が算出され、また、制御装置30では、検出器(受光部)27からの出力がA/D変換されて入力され、低圧水銀ランプ22のスネーク現象の判定に利用するとともに、低圧水銀ランプ22の光の強さ(発光量)Io として利用することもできる。なお、A/D変換器26,27からのデジタル信号は、それぞれ異なるCPUで処理してもよい。
【0033】
低圧水銀ランプ22のスネーク現象は、先に図5で説明したように、低圧水銀ランプ22の発光量が変動する現象であって、この現象が発生した場合、検出器27の出力を増幅する増幅器28の出力電圧が周期的に変動する。この時、濃度値は、図6に示したように変動が激しくなり、測定した濃度値がばらつく現象が発生する。低圧水銀ランプ22のスネーク現象を検出するために、低圧水銀ランプ22の測定セル21を通過させる前の光をハーフミラー23で分離して、検出器27で受光する。検出器27の出力を増幅器28で増幅してA/D変換器29に入力し、A/D変換器29の出力であるA/D変換値(時系列データ)を制御装置30に入力し、制御装置30による統計的データ処理手段30aによりデータ処理を行って、低圧水銀ランプ22の発光量の周期的な変動を検出する。以下、この周期的変動を検出する統計的データ処理について説明する。
【0034】
先ず、制御装置30では、統計的データ処理手段30aによりデータ処理が行われる。A/D変換器29からA/D変換値(データ)が時系列的に制御装置30に入力される。制御装置30では、これらのA/D変換された時系列データ(変換値)を、N0,N1,N2,………N(K−1),NKと表し、隣接する変換値(N0,N1),(N1,N2),…,(N(K−1),NK)を減算して、正負の符号を抽出する。統計的データ処理手段30aでは、第1演算手段によって、Δ1=N0−N1,Δ2=N1−N2,… ,Δn=N(K−1)−NKを演算処理し、隣接値の減算結果であるΔnの「正」又は「負」の符号を抽出して、所定の測定期間(サンプリング期間)の「正」,「負」の符号データを集計する。続いて、第2演算手段により、全データ数Xに対する「正」の数Yの割合(A=Y/X×100)を算出する。第2演算手段の出力(割合A)を判定手段30bに入力して、スネーク現象の有無を判定する。判定手段では、例えば、A≧40の条件を満足する場合、すなわち、「正」の符号の割合Aが40%以上であれば、光源の出力が周期的変動を発生して、低圧水銀ランプ22にスネーク現象が発生していると判定する。この時、制御装置30はスネーク検出信号を出力して、切り換え制御信号をランプ電源31に出力する。
【0035】
次に、制御装置30の統計的データ処理手段30aによる他の検出方法として説明する。低圧水銀ランプ22の出力の周期的変動をばらつきの度合いから判定する方法である。ばらつきの度合、すなわち変動係数CVを利用して判定する。変動係数CVは、時系列データ(A/D変換値)の標準偏差(s)と平均値(*n)とから求めることができる。A/D変換器29から時系列にA/D変換値が出力され、それらの時系列データを、例えばN1,N2,……N(K−1),NKとする。この時、これらのA/D変換値の平均値*nは、*n=1/k(N1+N2+……+N(k−1)+Nk)…(2)と表すことができる。平均値の算出は、第1演算手段により求めることができる。第2演算手段では、ある測定期間の時系列データの平均値*nに対する標準偏差sが算出される。標準偏差sは下記(3)式で表され、第2演算手段で算出される。第1演算式で算出された平均値(*n)と、第2演算式で算出された標準偏差sは、第3演算手段に入力される。第3演算手段では、下記式(4)に示した演算式によって、変動係数CVが算出される。また、変動係数CVに100を乗じることによって、ばらつき度合いを算出することができる。
【0036】
【数2】
【0037】
このように統計的データ処理手段30aでは、A/D変換器29のA/D変換値のばらつきの度合い、すなわち変動係数CVによって、A/D変換値の周期的変動を知ることができる。算出された変動係数CVは、判定手段30bに入力されて、変動係数CVの値が所定値を超える場合、低圧水銀ランプ22にスネーク現象が発生したものと判定する。制御装置30の判定手段30bは予め設定された値と算出された変動係数CVとを比較して得られる結果に基づいて、スネーク検出信号を出力し、制御装置30からは低圧水銀ランプ22に供給されるランプ電源31を遮断して低圧水銀ランプ22を消灯する切り換え信号が出力される。
【0038】
次に、本発明の他の実施形態について、図2を参照して説明する。同図において、図1の実施形態と同一部分の説明は省略する。本実施形態では、低圧水銀ランプ22に安定化電圧源を供給するランプ電源31の電源ラインを遮断する自己復帰型切換スイッチ32が設けられている。制御装置30からの切り換え信号が自己復帰型切換スイッチ32に入力されると、復帰型切換スイッチ32は、オフ状態となり、低圧水銀ランプ22への電圧源の供給が遮断され、復帰型切換スイッチ32が自己復帰型であるので、直ちに復帰して低圧水銀ランプ22に電圧源が供給される。このように低圧水銀ランプ22がスネーク現象が発生したとしても、自己復帰型切換スイッチ32によって、一度短時間消灯することにより、スネーク現象が解消されて正常発光状態に戻り、安定した濃度測定が可能となる。
【0039】
また、本発明の他の実施形態について、図3を参照して説明する。同図において、図1の実施形態と同一部分の説明は省略する。本実施形態では、制御装置30に上記実施形態に加えて、自己診断手段30cと濃度限界値検出手段30dとが設けられている。制御装置30は、統計的データ処理手段30aと判定手段30bとにより、スネーク現象が検出された場合、自己診断手段30cでは、濃度限界値検出手段30dにより、測定ガスの濃度が所定の値を超えて異常値であると認識したとしても、自己診断手段30cによる自己診断機能が働いて、先に計測された濃度値が異常であると判断し、濃度値を出力しないように制御する。
【0040】
また、濃度限界値検出手段30dは、測定ガスの濃度が異常値であるか否かを判定する機能を有し、測定された濃度値が予め定められた測定ガス濃度値を超えた場合、スネーク現象が検出されていないことを条件で、プロセスに異常警報を出力する機能を有する。なお、低圧水銀ランプ22がスネーク現象を発生していることを検出した場合は、自己診断機能によって、濃度値を出力しないと同時に、異常警報が出力されないように制御する。
【0041】
また、上記実施形態において、スネーク現象が起きた低圧水銀ランプ22の電圧源を一度短時間消灯することによって、低圧水銀ランプ22が正常な発光状態に復帰するので、制御装置30は、自己診断機能によって、濃度値と異常警報とが出力されないように制御して、低圧水銀ランプ22の電圧源を短時間遮断し、正常な発光状態に戻すように切り換え制御する。
【0042】
さらにまた、制御装置30が測定ガスの濃度を測定するための演算処理を実行している際に、検出器27からの変換値(時系列データ)をサンプリングし、濃度の演算処理が完了した後、スネーク現象を検出するための統計的データ処理を実行して、低圧水銀ランプ22のスネーク現象の有無の検出を行うようにしてもよい。このようにサンプリングと演算処理を交互に実行することによって、濃度測定装置を設置したシステムを停止させることなく、測定ガスの濃度値の検出と低圧水銀ランプ22の異常の監視とを連続に実施することができる。
【0043】
一方、上記実施形態において、低圧水銀ランプ22のスネーク現象が検出された場合、切換スイッチ32に切り換え制御信号を出力して、低圧水銀ランプ22の電源電圧を短時間遮断して消灯した後、復帰させて、低圧水銀ランプ22を正常な発光状態として、再び新たな変換値(時系列データ)を制御装置30に入力して、濃度演算処理を実行する。また、測定ガスの濃度を測定する際に、事前に低圧水銀ランプ22のスネーク現象の有無の検査を実施して正常であることを確認して、測定ガスの濃度の測定を実施するようにして、低圧水銀ランプ22のスネーク現象の有無を監視しながら濃度測定を実施する。
【0044】
なお、上記実施形態では、光源として低圧水銀ランプを利用する場合について説明したが、本発明はこの実施形態に限定するものではなく、スネーク現象が他の放電系による光源にも確認されていることから、本発明は、種々の被測定物に応じた吸収波長帯の光を発光する光源を利用した濃度計に適用することができることは明らかである。
【0045】
【発明の効果】
上記記載のように、本発明によれば、光源からの光が被測定物中を通過する際の光吸収率により濃度を測定する分光式濃度測定装置において、その光源からの光を被測定物への光路から分離した光を受光部で受光し、発光量の変化を検出することにより、発光量の周期的変動を検出して、光源が正常に発光しているか否かを判断し、発光量の周期的変動が検出された場合は光源がスネーク現象を起こしていると判断する光源安定判別方法であり、このような光源安定判別方法を行うことによって、この濃度測定装置の測定結果を確実なものとし、この装置が設置されたプロセスの安定した運転を可能とする効果を有する。
【0046】
また、本発明によれば、光源のスネーク現象時の発光量の周期的変動が数10ヘルツ以下であり、従って、少なくとの2倍以上、好ましくは5〜10倍の周波数でサンプリングすることによって、この周期変動に捕らえることが可能であり、このようにして捕らえられた変換値を統計的データ処理して、容易にスネーク現象を検出することが可能であり、具体的には、発光量の周期的変動を、前記光源の発光量に応じた電圧をA/D変換してサンプリングし、時系列的に得られる変換値の隣接値を減算して得られる正又は負の符号の割合から前記周期的変動を判定したり、または、光源の発光量に応じた電圧をA/D変換してサンプリングして、時系列的に得られる変換値の平均値とその値の標準偏差値に基づいて、ばらつきの度合いから周期的変動を判定することによって、スネーク現象を検出することが可能であり、この装置が設置されたプロセスの安定した運転を可能とする効果を有する。
【0047】
また、本発明によれば、光源の電圧源と、被測定物が流入する測定セルと、前記光源からの光が入射するハーフミラーと、該光源からの光がハーフミラーを通し、被測定物を通過した透過光を受光する第1受光部と、該光源からの光が該ハーフミラーで反射した光を受光する第2受光部と、前記第1受光部の出力をA/D変換する第1の変換器と、前記第2受光部の出力をA/D変換する第2の変換器と、該第2の変換器の出力をサンプリングして出力の周期的変動を検出し、前記光源の電圧源を遮断して再び電圧源を投入する切り換え制御する制御手段とを備えた分光濃度測定装置であり、光源のスネーク現象が検出された場合には、光源の電圧源を遮断した後、再び投入するように切り換え制御することによって、安定した発光状態に復帰させることことが可能であり、確実な濃度測定が可能であり、この濃度測定装置が設置されたプロセスの運転を確実なものとすることができる利点がある。
【0048】
また、本発明によれば、制御手段が時系列的に得られる値の隣接値を減算して正負を求める第1演算手段と、該第1演算手段で得られる正又は負の符号の割合を統計処理により求める第2演算手段と、該第2演算手段による正又は負の符号の割合から出力の周期的変動を判定する判定手段とを備えるか、または、制御手段が、時系列的に得られる変換値の平均値を演算する第1演算手段と、該第1演算手段で得られる平均値から標準偏差値を演算する第2演算手段と、該平均値と該標準偏差値とでばらつきの度合いを演算する第3演算手段と、該第3演算手段による分散の度合いから出力の周期的変動を判定する判定手段とを備えた分光式濃度測定装置であり、何れも統計的データ処理で検出することが可能であり、そのプロセスに応じて、最適な検出手段を制御装置に構築できる利点がある。
【0049】
また、本発明によれば、被測定物の測定を行う前又は後に、若しくは被測定物の濃度演算処理する期間の何れかのタイミングで、光源の発光異常を監視することによって、プロセスの運転を停止させることなく、光源の異常の有無を監視することができる分光式濃度測定装置であり、自動的に光源の異常を検出することが可能であり、この濃度測定装置が設置されたプロセスの動作を確実なものとすることができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示すブロック図である。
【図2】本発明の他の実施形態を示すブロック図である。
【図3】本発明の他の実施形態を示すブロック図である。
【図4】従来の濃度測定装置を示すブロック図である。
【図5】光源のスネーク現象を示す図である。
【図6】光源のスネーク現象が発生した際の濃度変化を示す図である。
【符号の説明】
20 切換弁
21 測定セル
22 低圧水銀ランプ(光源)
23 ハーフミラー
24,27 検出器(受光部)
25,28 増幅器
26,29 A/D変換器
30 制御装置(制御手段)
31 ランプ電源
Claims (7)
- 光源からの光が被測定物中を通過する際の光吸収率により該被測定物の濃度を測定する分光式濃度測定装置における光源安定判別方法であって、前記光源からの光を前記被測定物への光路から分離して受光部に導入し、該受光部の出力の時系列データを統計処理して、該受光部の出力の周期的変動を検出することを特徴とする光源安定判別方法。
- 前記受光部の出力の周期的変動を検出する統計処理が、該光源の発光量に応じて変動する電圧をA/D変換して得られる時系列データをサンプリングし、該時系列データの隣接値を減算して得られる正又は負の符号の割合から判定することを特徴とする請求項1に記載の光源安定判別方法。
- 前記受光部の出力の周期的変動を検出する統計処理が、該光源の発光量に応じて変動する電圧をA/D変換して得られる時系列データをサンプリングし、時系列データの平均値とその値の標準偏差値に基づいて、ばらつきの度合いを求めて、前記周期的変動を検出することを特徴とする請求項1に記載の光源安定判別方法。
- 光源の電圧源と、
被測定物が流入する測定セルと、
前記光源からの光が入射するハーフミラーと、
前記ハーフミラーを通過した前記光源からの光を前記測定セルに導入し、該測定セル内の被測定物を通過した透過光を受光する第1受光部と、
前記ハーフミラーで分離した該光源からの光を受光する第2受光部と、
前記第1受光部の出力をA/D変換する第1の変換器と、
前記第2受光部の出力をA/D変換する第2の変換器と、
該第2の変換器の時系列データをサンプリングして出力の周期的変動を検出し、前記光源の電圧源を遮断して再び該光源の電圧源を投入する切り換え制御を行うか否かを判定する制御手段と、
を備えることを特徴とする分光濃度測定装置。 - 前記制御手段が、時系列的に得られる変換値の隣接値を減算して正負を求める第1演算手段と、該第1演算手段で得られる正又は負の符号の割合を統計処理する第2演算手段と、該第2演算手段による正又は負の符号の割合から出力の周期的変動を判定する判定手段とを備えることを特徴とする請求項4に記載の分光式濃度測定装置。
- 前記制御手段が、時系列的に得られる変換値の平均値を求める第1演算手段と、該第1演算手段で得られる平均値から標準偏差値を統計処理する第2演算手段と、該平均値と該標準偏差値とでばらつきの度合いを演算して求める第3演算手段と、該第3演算手段によるばらつきの度合いから出力の周期的変動を判定する判定手段とを備えることを特徴とする請求項4に記載の分光式濃度測定装置。
- 請求項4から6の何れかに記載の分光式濃度測定装置において、被測定物の濃度測定を行う前又は後に前記光源の発光異常を検出するか、若しくは被測定物の濃度演算処理する期間に前記光源の発光異常を検出するための時系列データをサンプリングして前記光源の発光異常を検出することを特徴とする分光式濃度測定装置。
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