JP3995090B2 - 石材構造物の開閉扉 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
この発明は、墓所に設けられる石製の香炉台、名刺受けなどの石材構造物に設けられる両開き構造の開閉扉に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
墓所の香炉台は石製で、花台と共に墓石の前に設置されている。一般的な香炉台は、台の上面にろうそく立てや線香立てを設けたものであるが、風雨によってろうそくや線香の火が消えるのを防止するために、石の内部をくり貫いてろうそく立てや線香立てを設置し、更にその前面に石製の両開き構造の開閉扉を設けたものが提供されている。
【0003】
また、墓所に設ける名刺受けは、参拝者の名刺を受取るための箱で、金属製や石製のものが提供されている。この種の名刺受けでは、箱の前面に名刺を投入するためのスリットを設け、箱の背面に名刺を取り出すための開閉扉を設けている。墓所の名刺受けは、墓所の雰囲気や墓の材質との調和の点から、石製のものが好ましいが、石製のものであっても、名刺を取り出すための開閉扉は、ステンレス板製のスライド式の扉としているものが多い。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
石をくり貫いてその前面に石製の開閉扉を設け、内部に線香立てやろうそく立てを設けた香炉台は、石製の開閉扉はある程度の厚さを有するため、線香立てやろうそく立てがくり貫かれた窪みの奥の方に位置することとなり、線香やろうそくを立てたりそれに火を付けたりする作業が困難になり、汚れたり破損したときの掃除や修理も面倒である。また、開閉扉を背面に設けた名刺受けも、背面が墓石等に接近して設置されるのが普通であるから、名刺を取り出す作業が面倒になる。
【0005】
この発明は、上記のような従来の石製の香炉台や名刺受けの問題点を解決して、墓所の雰囲気にマッチした使いやすい香炉台や名刺受けを得ることを目的とする研究の一環としてなされたもので、墓所に設置される石材構造物に採用することによって、前記のような従来技術の問題点をすべて解消することができ、更に美感に優れ、参拝者にも好印象を与えることができる石製の開閉扉を提供することを課題としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明は、石製の本体とこの本体に鉛直軸回りに開閉可能に枢支された石製の扉2とを備えた石材構造物の開閉扉の構造に関するもので、この発明の構造における前記扉は、その面板9の内側下辺から前記本体奥側へ延びる平面扇形の台板12を一体に備えている。
【0007】
扉2は、その面板9の枢支辺側の側板11を一体に備え、前記台板12が当該面板及び側板の内側下辺を一体に連結するように設けられているものとすることができる。この構造により、閉扉時に、扉2と本体3との隙間を目立たないものにすることができる。一方、本体3の側方に花立てなどが隣接して設置されるて当該花立てなどにより本体3と扉2との隙間が隠されるときや、大きな傘を本体上に乗せる灯籠の火袋などのように、本体3に強度が要求されるときは、両側壁4、11、41を本体3側に設けて、台板12を前面板9のみと一体にした構造が適している。
【0008】
前記構造の開閉扉を墓所に設置する名刺受けなどに用いるときは、前面板9にスリット13を設け、台板12上に受箱22を定置する。
【0009】
前記構造の開閉扉を香炉台や灯籠の火袋などに用いるときは、前面板9に多数の通気孔13を備えた装飾模様52を設け、台板12上にろうそく立て53ないし線香立て51を設ける。
【0010】
この発明の石材構造物の開閉扉は、前記構造の扉2を両側に設けた両開き構造で、両側の台板12上に掛け渡された上台板40を備え、当該上台板は前記扉2の開動作によって手前側へ引出され閉動作によって前記本体3内に収納される構造としている。この構造により、両開き扉の同時開閉により、台板上のろうそく立てや線香立てが平行移動で本体に出入りするようにできる。
【0011】
上記構造の開閉扉は、請求項2に記載のように、両側の台板12の上面にそれぞれ植立されたガイドピン47と、上台板40の裏面両側に形成されたガイド溝46とを設け、上台板40を、左右のガイド溝46にそれぞれの側のガイドピン47を挿入した状態で、両台板12間に装架し、前記ガイド溝46には上台板40と扇形台板12との左右方向の相対移動ストロークを規定する内側端49及び外側端48を設けた構造とすることにより、容易に製造可能である。この構造は、上台板40の装脱も簡単であるという特徴がある。
【0012】
上記構造の開閉扉を墓所の香炉台に用いるときは、請求項3に記載のように、前面板9に多数の通気孔13を備えた装飾模様52を形成し、上台板40上にろうそく立て53及び線香立て51を設ける。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、この発明を説明する。図1ないし図4において、2は石製の扉、3は石製の本体である。本体3は、左側板4、背面板5、底板6及び天井板7を一体に備えている。また、扉2は、前面板9、右側板11及び台板12を一体に備えている。本体3は、立方体状の石材をくり貫いて左側板4、背面板5及び底板6を一体に形成した後、天井板7を接着したものであり、扉2は、立方体状の石材をくり貫いて、図に示すような形状にしたものである。
【0014】
台板12は平面扇形で、その両側辺が前面板9及び右側板11の内側下辺に一体に連結されている。前面板9及び背面板5には、多数の通気孔13を含む模様が設けられており、側板4、11には外面にレリーフ模様が設けられている。
【0015】
扉2の前面板9と側板11とが繋がる部分の上下端には、ピン孔14が穿設され、当該ピン孔には金属製の蝶番ピン15が植立されている。本体3の対応する箇所にはブッシュ孔16が穿設され、金属製のブッシュ17が埋め込まれている。本体の天井板7は、扉2の下方のピンを底板6のブッシュ17に挿通したあと、上方のピン15を天井板7のブッシュに挿通した状態で、左側板4及び背面板5の上縁に接着される。この状態で扉2は、ピン15回りに回動して、図3及び図4に示すように開閉可能になる。なお、図3は扉2の閉状態(実線)と開閉途中の状態(想像線)を示す図、図4は開放状態を示す図である。また、図1は、図4の矢印A方向から示す本体の斜視図であり、図2は、図4の矢印B方向から示す扉の斜視図である。
【0016】
扉2を開いた図4の状態では、台板12と右側板11とが前面板9と共に回動する。この回動により、台板12は本体3の内側から手前側へと引出される。台板12の上には、ろうそく立て53が固着されており、扉2を開いて引出された台板上のろうそく立て53にろうそくを立て火を付け、扉2を閉じて図3の実線の状態にすると、燭台に明りが灯る。ろうそくの燃え滓の除去やろうそく立て53の清掃は、扉2を開いて台板12が引出された状態で行うことができる。
【0017】
図5は、上記構造の開閉扉を墓所に設ける名刺受け20(図13参照)に設けた例を示した図である。本体3及び扉2の基本的な構造は、図1ないし図4のものと異なるところがない。異なる点は、扉の前面板9に名刺を投入するためのスリット21が設けられていること、通気孔やレリーフ模様などは設けられていないこと、台板12上にろうそく立てに代えて名刺を受取る受箱22が固定されていることである。
【0018】
図5は扉2を開いた状態で示してあるが、通常は扉2が閉じた状態となっており、石製の矩形の名刺受けの前面に名刺を投入するスリット21が開口した状態となっている。参拝者がこのスリットから名刺と投入すると、当該名刺は受箱22内に落下する。墓の持主や管理者は、適時名刺受けの扉2を開いて受箱22内の名刺を取り出すことにより、誰が参拝したかを知ることができる。
【0019】
上記構造の名刺受けは、全体を墓所に適した石造りとすることができ、扉2を開いたときに、手前に引出される台板12上の受箱22から名刺を取り出すことができるので、名刺の取り出し作業も容易である。
【0020】
図6及び図7は、墓の香炉台30(図13参照)に、上記構造の扉2(2L、2R)を両開き構造で設けた例を示したものである。この例における扉2の構造は、図1〜4で説明した構造と基本的に同じである。両開き構造としたため、香炉台の左側板4は左側の扉2Lの前面板及び台板と一体となっており、従って本体3は、側板を有していない。即ち、本体3は、底板、背面板及び天井板のみを備えた構造となり、その底板及び天井板の手前両隅部分で左右の扉2を枢支している。右側の扉2Rは、図2に示した扉とほぼ同一構造であり、側板外面にレリーフ模様が設けられていない点のみが異なる。左側扉2Lは、右側扉2Rと左右逆の構造で、前面板の端縁に閉じたときの隙間を隠すための桟31が設けられていない点だけが異なる。なお、この桟31は、図1〜図5のものでは、扉2の閉位置を規定する作用をしている。一方、図6、7のものでは、香炉台30の両側に設置される花立て32で扉2L、2Rの閉位置を規定することができる。
【0021】
図6、7の香炉台において、扉2を開くと、台板12が手前に引出されるので、台板上に設けたろうそく立て53や線香立て(図示せず)に、ろうそくや線香を立てて火を付け、扉2を閉じると、扉前面の通気孔13を通してろうそくの火か見え、線香の煙が流れる。ろうそくや線香は、香炉台30の内側に収まった状態となるので、風雨により火が消えるのを避けることができる。
【0022】
図8ないし図12は、墓所の香炉台30にこの発明の開閉扉を設けた実施例を示した図である。この実施例の構造は、側板を扉に設けていない点、及び扇形の台板12上に上台板40を設けている点で図1〜7の構造と異なるので、以下にこれらの点を詳しく説明する。
【0023】
図9に示すように、この実施例の扉2は、前面板9とこれに一体の扇形の台板12とで形成され、側板は備えていない。左側扉2Lも右側扉2Rと同様に側板を備えていない構造である。両側の側板は、本体3側に一体に設けられ、従って本体3は、底板6、左右の側板41、背面板5(図11参照)及び天井板7を一体に備えた構造となる。扉の台板12の上面には、その円弧縁42近くの中央より僅かに前面板9寄りの位置に、金属製のガイドピン47が植立されている。また、図12に破線で示すように、本体の側板41の内側下縁には、台板12の奥縁43が入り込んで停止する溝44が形成されている。扉2L、2Rの閉位置は、この溝44の奥面と台板12の奥側縁43とが当接することによって規定される。
【0024】
開閉扉の両側の台板12上には、上台板40が両台板12に掛け渡された状態で装架されている。上台板40の底面45には、図10に示すように、左右方向に細長いガイド溝46が刻設されており、台板12のガイドピン47がこのガイド溝46に挿入された状態で、上台板40が左右の台板12上に載置されている。
【0025】
扉2の全開位置は、ガイドピン47がガイド溝46の外側端48に当接した位置で規定される。扉2を閉じた状態では、ガイドピン47がガイド溝46の外側端48の直近の位置に来るようにする。そして、開閉途中の両側の扉がほぼ同じ角度で開かれたときの、両側のガイドピン47が最も接近するときに、両ガイドピン47がガイド溝46の内側端49の直近の位置に来るように、ガイドピン47の植立位置とガイド溝46の外側端48及び内側端49の位置を設定する。これにより、上台板40が扉2の開閉動作に伴って、左右に大きく移動することなく前後移動する。即ち、両側の扉2L、2Rを開くことによって、上台板40が手前に平行に引出され、閉じたときに平行に奥側に移動して本体3内に収まる。
【0026】
このように設けた上台板40上にろうそく立て53及び線香立て51を設ければ、扉2を開いてろうそくや線香を立てて火を付け、扉2を閉じると、当該ろうそくや線香は香炉台30内に収まる。扉2の前面には、通気孔13を有する模様52が設けられており、香炉台30内のろうそくの火は、通気孔13を通して見え、線香の煙は通気孔13を通って流れる。ろうそくや線香は風雨から保護されるので、火が消えることがない。
【0027】
扉2を開けば、上台板40が手前側へ移動して来る。更にこの実施例のものでは、上台板40を持ち上げることによって容易に取り外すことができるので、ろうそくや線香の燃え滓の除去、及びろうそく立てや線香立ての清掃が極めて容易である。更に、ろうそく立て53や線香立て51、あるいは上台板40が破損したときに、それらの修理及び交換も極めて容易にできるという特徴がある。
【0028】
【発明の効果】
以上の説明から理解されるように、この発明の開閉扉は、墓所に設置される香炉台などの石材構造物に利用することができ、従来野ざらしになっている各種のものを石材構造物内に収納して、風雨から保護することができ、収納物の出し入れや清掃等の際における使い勝手が向上するなどの有利な効果が得られる。また、この発明の開閉扉を設けても、石材構造物としての材質や外観を阻害することがなく、かつ石材の加工に適した比較的簡単な構造であるため、当該構造物のコストを大幅に上昇させることもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 石製構造物の本体の例を図4のA方向から示す斜視図
【図2】 図1の本体に設ける扉の例を図4のB方向から示す斜視図
【図3】 閉扉状態を示す断面平面図
【図4】 開扉状態を示す断面平面図
【図5】 石製構造物の第2例を開扉状態で示す斜視図
【図6】 石製構造物の第3例の外観を示す斜視図
【図7】 第3例の右側扉の斜視図
【図8】 実施例の外観を示す斜視図
【図9】 実施例の右側扉の斜視図
【図10】 実施例の上台板を下方から見た斜視図
【図11】 実施例の閉扉状態の断面平面図
【図12】 実施例の開扉状態の斜視図
【図13】 墓の一例を示す斜視図
【符号の説明】
2 扉
3 本体
9 前面板
11 側板
12 台板
40 上台板
46 ガイド溝
47 ガイドピン
51 線香立て
52 装飾模様
53 ろうそく立て

Claims (3)

  1. 石製の本体(3) 鉛直軸回りに開閉可能に枢支された石製の両開き構造の開閉扉において、各扉 (2) はその面板 (9)の内側下辺から前記本体奥側へ延びる平面扇形の台板(12)を一体に備え、両側の当該台板上に掛け渡された上台板 (40) を備え、当該上台板は前記扉 (2) の開動作によって手前側へ引出され閉動作によって前記本体 (3) 内に収納される、石材構造物の開閉扉。
  2. 両側の台板(12)の上面にそれぞれ植立されたガイドピン(47)と、上台板(40)の裏面両側に形成されたガイド溝(46)とを備え、上台板(40)は左右のガイド溝(46)にそれぞれの側のガイドピン(47)を挿入した状態で、両台板(12)間に装架され、前記ガイド溝(46)は上台板(40)と扇形台板(12)との左右方向の相対移動ストロークを規定する内側端(49)及び外側端(48)を備えている、請求項記載の石材構造物の開閉扉。
  3. 前記面板(9)に多数の通気孔(13)を備えた装飾模様(52)が形成され、上台板(40)上にろうそく立て(53)及び線香立て(51)を備えている、請求項1又は2記載の石材構造物の開閉扉。
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