JP3993940B2 - 植物工場における空調システム及びその装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、植物工場における空調システム及びその装置に係り、特に、省電力を図ることができる植物工場における空調システム及びその装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
植物工場における栽培植物は、天候や害虫などに左右されず一定の環境で栽培が行え、常に一定の品質の商品が得られるメリットがあるが、この栽培植物の商品コストには、ランニングコストが大きな割合を占めている。
【0003】
ランニングコストの中でも、植物の生育のために必要な電気照明用電力費、並びに空調用電力費が大きな割合を占める。
【0004】
密閉式人工光利用型植物工場では、生育用電気照明が周年必要となるため、費用は年間を通して冷房の空調システムとなり、その年間消費電力量は、膨大な量となる。
【0005】
そこで昼間の空調用電力量を節減する空調システムの1つに、夜間電力を有効利用した蓄熱空調システムが挙げられる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
これまで、蓄熱式空調システムは、ビル用の空調としては検討されているが、植物工場用として最適なシステムの検討はなされていない。
【0007】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、昼間の空調用電力量を低減できる植物工場における空調システム及びその装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、栽培植物を栽培する温室内を空調する植物工場における空調システムにおいて、蓄冷熱槽内の水を夜間電力で冷却して蓄冷し、その蓄冷熱槽内の冷水を充填式空調機に導入し、他方、温室内に設置した栽培植物の栽培棚の周囲を間仕切り壁にて局所的に仕切って上部が開放した局所空間を形成し、その局所空間の下部に、周囲に多数の穴が穿設された浸み出しダクトを設けると共に局所空間の上部に還気ダクトを設け、その還気ダクトから局所空間内の空気を吸引して上記充填式空調機に導入すると共に上記冷水と直接熱交換し、その熱交換後の冷却空気を浸み出しダクトに略自然対流に近い状態で供給して局所空間を空調するようにした植物工場における空調システムである。
【0009】
請求項2の発明は、充填式空調機に供給する蓄冷熱槽内の冷水に、一部井水を混入する請求項1記載の植物工場における空調システムである。
【0010】
請求項3の発明は、栽培植物を栽培する温室内を空調する植物工場における空調装置において、夜間電力で水を冷却して蓄冷する蓄冷熱槽と、その蓄冷熱槽内の冷水で空気を直接熱交換して冷却する充填式空調機と、温室内に設置した栽培植物の栽培棚の周囲を間仕切り壁で仕切って形成された上部が開放した局所空間と、その局所空間の下部に設けた、周囲に多数の穴が穿設された浸み出しダクトと、局所空間の上部に設けた還気ダクトと、その還気ダクトから局所空間内の空気を吸引して上記充填式空調機に導入すると共に熱交換後の冷却空気を浸み出しダクトに自然対流に近い状態で供給循環する空気循環手段とを備えた植物工場における空調装置である。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適一実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0012】
図1において、10は、ガラス壁で形成された温室で、その温室10内に、レタス等の栽培植物11を水耕栽培する培養液槽12を支持する栽培棚13が設置され、その栽培棚13の周囲を覆って上部が開放した局所空間14を形成する間仕切り壁が設けられる。
【0013】
他方、地中に冷水を貯留する蓄冷熱槽16が設けられ、その蓄冷熱槽16内の水を夜間電力で冷却するヒートポンプからなるチラーユニット17が接続される。
【0014】
蓄冷熱槽16内の水は、吸引ライン18より三方弁19を介しポンプ20にて吸引されてチラーユニット17に供給され、チラーユニット17で冷却されて、戻しライン21より蓄冷熱槽16に戻される。この際、戻しライン21に、三方弁19と接続される循環ライン22が接続され、チラーユニット17で冷却した冷水の一部を循環ライン22,三方弁19の分岐ポートを通して再度チラーユニット17に供給してチラーユニット17の入口水温を調節する。
【0015】
蓄冷熱槽16内の冷水は、冷水ライン24を介して充填式空調機25に供給される。
【0016】
充填式空調機25は、そのケース26の上部に冷水を噴射する噴射管27が設けられ、その下方に冷水と空気を直接熱交換する充填層28が設けられ、底部に貯水部29が形成され、その貯水部29と噴射管27を結んで、循環ライン30が接続され、その循環ライン30に三方弁31とポンプ32が接続されて構成され、三方弁31の分岐ポートに冷水ライン24が接続され、貯水部29に冷却後の水を蓄冷熱槽16に戻す冷水戻しライン33が接続される。
【0017】
また噴射管27には、井水供給ライン35が接続され、その井水供給ライン35に、開閉弁36とポンプ37が接続され、さらに井水供給ライン35には分岐ライン38が接続され、開閉弁39、ボールタップ40を介して貯水部29に井水を供給できるようになっている。
【0018】
充填式空調機25は、温室10の局所空間14へ延びる給気ダクト42が接続され、その給気ダクト42に、空気循環手段としての軸流ファン43が接続され、さらに温水熱交換器44が接続される。
【0019】
給気ダクト42は、温室10の壁に沿って延びるように設けられ、その給気ダクト42に複数の浸み出しダクト45が接続されると共にその浸み出しダクト45が局所空間14を横断するように温室10の床面に配置される。浸み出しダクト45は、その周面に直径1mm以下の穴が多数穿設されて形成されたものよりなる。
【0020】
局所空間14の上部には、充填式空調機25に接続された還気ダクト46の吸引口46aが配置される。還気ダクト46には、外気導入ライン47が接続され、その接続部にそれぞれダンパ48,49が接続される。
【0021】
給気ダクト42には、冷風中に微量のオゾンを注入するオゾン発生器50が、開閉弁51を介して接続される。
【0022】
培養液槽12の培養液は培養液タンク52からライン53にて供給され、この培養液タンク52内の培養液を冷却すべく冷却コイル54が設けられ、その冷却コイル54に、蓄冷熱槽16内の冷水を流すためのポンプ55,三方弁56を備えた冷水ライン57が接続され、また三方弁56の分岐ポートに冷却コイル54を通った冷水を再度循環する循環ライン58が接続される。
【0023】
チラーユニット17は、冬季には、水の加熱ユニットとなり、夜間電力を利用して蓄冷熱槽16内の水を温水として貯留するようになっている。
【0024】
蓄冷熱槽16内の温水は、温水供給ライン60、三方弁61、ポンプ62を介して温水熱交換器44に供給され、戻しライン63を介して蓄冷熱槽16に戻される。
【0025】
また三方弁61の分岐ポートには循環ライン64が接続され、温水熱交換器44から排出された熱交換後の温水を再度温水熱交換器44に循環できるようになっている。
【0026】
なお、図において、65は蓄冷熱槽16内の水を排水するための外溝である。
【0027】
次に本発明の作用を述べる。
【0028】
夏季など外気温が高いとき、例えば外気温が33.5℃、相対湿度58.2%の条件で、温室10において局所空間14内の栽培植物11の成育環境として、室内温度30℃,相対湿度60%に維持するとすると、空気線図を基にすれば、浸み出しダクト45から温度22℃,相対湿度95%の冷気を供給すればよい。
【0029】
そこで、先ずチラーユニット17を夜間電力で駆動して蓄冷熱槽16内の冷水を7℃に冷却して蓄冷する。
【0030】
この蓄冷熱槽16内の冷水を冷水ライン24から三方弁31を介し、さらに循環ライン30より貯水部29内の熱交換後の冷水を混ぜて充填式空調機25の噴射管27に17℃の冷水を供給して噴射する。他方、局所空間14からの空気が吸引口46aより還気ダクト46を介して充填式空調機25内に吸引されて充填層28で熱交換されて給気ダクト42を通し、浸み出しダクト45より温度22℃,相対湿度95%の冷気を、浸み出しダクト45からしみ出すように、略自然対流に近い状態で供給して、局所空間14内が栽培植物11の成育に良好な環境に保つことができる。
【0031】
この際、冷気は相対湿度が95%と高湿度であり、通常のヒートポンプ式空調機のように絶対湿度を下げることがなく、栽培植物11の成育に十分な水を供給できるため、散水の必要はない。さらに、温室10の全体でなく、間仕切り壁15で、栽培植物11の栽培棚13の周囲を仕切った局所空間14を局所的に空調するため、空調負荷の少ないものとすることが可能となる。
【0032】
また、この湿式空調時にオゾン発生器50より、給気ダクト42に微量のオゾンを適宜供給することで、局所空間14内の滅菌が行える。
【0033】
さらに、培養液槽12へ供給する培養液は、培養液タンク52内を蓄冷熱槽16内の冷水で、22℃程度に冷却して供給する。
【0034】
蓄冷熱槽16内の冷水を使用する際、ランニングコストを考慮し、外気温が低いときなど、適宜井水供給ライン35から井水を噴射管27に流すことで、ランニングコストを低減できる。
【0035】
次に、冬季など外気温が低い場合、例えば、外気温が−0.6℃、相対湿度55.8%の条件で、温室10において局所空間14内の栽培植物11の成育環境として、室内温度20℃,相対湿度60%に維持するとすると、空気線図を基にすれば、浸み出しダクト45から温度約25℃,相対湿度約45%の温風を供給すればよい。
【0036】
そこで、先ずチラーユニット17を夜間電力で駆動して蓄冷熱槽16内の水を45℃に加温して温水として蓄熱し、この温水を温水供給ライン60より温水熱交換器44に供給し、充填式空調機25から給気ダクト42を通して供給された空気(約20℃)を約25℃にして浸み出しダクト45に供給することで、局所空間14内が栽培植物11の成育に適した環境に維持できる。
【0037】
また、培養液タンク52内の培養液も蓄冷熱槽16内の温水で加温するようにする。
【0038】
この冬期運転においては、充填式空調機25の噴射管27から温水の噴射はないが、湿度調整のために井水供給ライン35から井水を適宜噴射して加湿するようにする。
【0039】
夜間電力で、蓄冷熱槽16内に蓄冷される冷水(或いは温水)の蓄冷量(蓄熱量)は、蓄冷熱槽16の容量とチラーユニット17の能力により決定され、夜間電力で蓄冷した冷水で、局所的空調の総て補おうとすると、蓄冷熱槽16とチラーユニット17のイニシャルコストが高くなるため、外気温が高いときや低いときなどは、日中にチラーユニット17を駆動しながら局所空調を行うようにする。
【0040】
なお、上述の実施の形態においては、栽培棚13を一段の例で示したが、多段にしても良い。この場合、各段に採光の取れるようにしたり、直接照明を行うようにしても良い。また、浸み出しダクト45は、栽培植物11の下方に設置したが、局所空間14の上部或いは起立させて側面に配置するようにしても良い。
【0041】
【発明の効果】
以上要するに本発明によれば、温室内で、栽培植物を水耕栽培するにおいて、その栽培棚を局所的に仕切り、他方夜間電力で蓄冷熱槽内の水を蓄冷熱し、その蓄冷熱槽内の冷温水を充填式空調機に供給して局所空間内の空気と直接熱交換して空調を行うことで、栽培のランニングコストを可及的に低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態を示す図である。
【符号の説明】
10 温室
11 栽培植物
13 栽培棚
14 局所空間
15 間仕切り壁
16 蓄冷熱槽
25 充填式空調機
45 浸み出しダクト
46 還気ダクト

Claims (3)

  1. 栽培植物を栽培する温室内を空調する植物工場における空調システムにおいて、蓄冷熱槽内の水を夜間電力で冷却して蓄冷し、その蓄冷熱槽内の冷水を充填式空調機に導入し、他方、温室内に設置した栽培植物の栽培棚の周囲を間仕切り壁にて局所的に仕切って上部が開放した局所空間を形成し、その局所空間の下部に、周囲に多数の穴が穿設された浸み出しダクトを設けると共に局所空間の上部に還気ダクトを設け、その還気ダクトから局所空間内の空気を吸引して上記充填式空調機に導入すると共に上記冷水と直接熱交換し、その熱交換後の冷却空気を浸み出しダクトに略自然対流に近い状態で供給して局所空間を空調することを特徴とする植物工場における空調システム。
  2. 充填式空調機に供給する蓄冷熱槽内の冷水に、一部井水を混入する請求項1記載の植物工場における空調システム。
  3. 栽培植物を栽培する温室内を空調する植物工場における空調装置において、夜間電力で水を冷却して蓄冷する蓄冷熱槽と、その蓄冷熱槽内の冷水で空気を直接熱交換して冷却する充填式空調機と、温室内に設置した栽培植物の栽培棚の周囲を間仕切り壁で仕切って形成された上部が開放した局所空間と、その局所空間の下部に設けた、周囲に多数の穴が穿設された浸み出しダクトと、局所空間の上部に設けた還気ダクトと、その還気ダクトから局所空間内の空気を吸引して上記充填式空調機に導入すると共に熱交換後の冷却空気を浸み出しダクトに自然対流に近い状態で供給循環する空気循環手段とを備えたことを特徴とする植物工場における空調装置。
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