JP3993279B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、トラック、バス等の重荷重車両に用いて好適な空気入りタイヤ、なかでもスタッドレスタイヤに関し、重荷重下での使用に対しても、とくには周方向サイプのサイプ底へのクラックの発生、陸部のチャンクアウトの発生等のおそれを有効に取り除いたものである。
【0002】
【従来の技術】
トレッド踏面部で周方向に連続して延びる周方向溝によって複数本の陸部列を区画してなる従来の重荷重用スタッドレスタイヤでは、多くは、図2にトレッドパターンの展開図で例示するように、トレッド端部分に位置するショルダー陸部SLに、トレッド端TEから、実質的にトレッド幅方向に延在して、ショルダー陸部内で終了するラグ溝Lをトレッド周方向に間隔をおいて複数本形成し、また、主には、タイヤの氷雪上での駆動性能および制動性能の一層の向上をもたらすべく、トレッド幅方向にジグザグ状に延びて、一端が周方向溝CGに開口することもある幅方向ジグザグサイプZSの多数本および、ラグ溝Lの陸部内終端位置から周方向溝CGまでトレッド幅方向に直線状に延びる幅方向直線サイプSSをそれぞれ形成し、そしてさらに、氷雪上での横方向グリップ力を高め、併せて、ワンダリング現象の発生を抑制する目的の下で、トレッド周方向へジグザグ状に延びる一本の周方向サイプCSの両端を、二本のラグLの陸部内終端位置に開口させて形成している。
【0003】
このような構成のスタッドレスタイヤにあっては、ラグ溝Lおよびそれぞれの幅方向サイプZS,SSに加えて、全体としてジグザグ状に延びる周方向溝CGおよび周方向サイプCSのトレッド幅方向のエッジ成分が、タイヤの、氷雪上での駆動および制動性能の発揮に寄与し、また、周方向溝CGおよび周方向サイプCSに加え、幅方向ジグザグサイプZSのトレッド周方向のエッジ成分が、氷雪上での横方向グリップ力の発揮ならびにワンダリング現象の抑制にに有効に寄与することになる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかるに、かかる従来技術にあっては、ラグ溝Lの、ショルダー陸部SL内での終端位置と、周方向サイプCSとがトレッド周方向に実質的に整列して位置することになり、それらが環状に整列する部分では、陸部剛性が低くなりすぎて変形が集中し、応力集中が生じるが故に、タイヤへの荷重の繰返しの作用によって、周方向サイプCSの溝底および、ラグ溝Lの終端部の溝底にクラックが発生したり、それらの溝底を境界とする陸部のチャンクアウトが発生したりするおそれがあった。
【0005】
この発明は、従来技術が抱えるこのような問題点を解決することを課題として検討した結果なされたものであり、それの目的とするところは、タイヤの駆動および制動性能ならびに、横方向グリップ力の発揮およびワンダリング現象の抑制に実質的な影響を及ぼすことなく、周方向サイプおよびラグ溝の溝底へのクラックの発生、それらの溝底を境とする陸部のチャンクアウトの発生等を有効に阻止して、耐久性を大きく向上させた空気入りタイヤを提供するにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明の空気入りタイヤは、直線状またはジグザグ状に延びる周方向溝によってトレッド端部分に区画されるショルダー陸部に、トレッド端から実質上トレッド幅方向に延びてショルダー陸部内で終了するラグ溝を設けるとともに、傾向的にトレッド幅方向およびトレッド周方向のそれぞれの方向に、直線状またはジグザグ状に延びる幅方向サイプおよび周方向サイプのそれぞれを設けたところにおいて、前記ラグ溝間に延在し、両端がラグ溝に開口する各一本の周方向サイプを、ショルダー陸部内でのラグ溝終端位置よりトレッド端側に片寄せて配置するとともに、周方向サイプの、ラグ溝終端位置からの片寄り量をトレッド幅の0.01〜0.1倍の範囲としてなるものである。
【0007】
この空気入りタイヤでは、周方向サイプを、ラグ溝の、ショルダー陸部内での終端位置よりトレッド端側に片寄せて配置していることから、タイヤに繰返しの荷重が作用する場合であっても、特定のトレッド円周上への極端な応力集中を十分に防止して、とくには、周方向サイプの溝底に作用する応力を有効に緩和することができるので、その溝底へのクラックの発生および、その溝底からの陸部のチャンクアウトの発生等のおそれを十分に除去して、タイヤのトレッド耐久性を大きく向上させることができる。
【0008】
そしてこのことは、周方向サイプの、ラグ溝終端位置からの片寄り量をトレッド幅の0.01〜0.1倍の範囲としたことによって特に顕著なものとなる。これをいいかえれば、その片寄り量がトレッド幅の0.01倍未満では、ラグ溝の終端と周方向サイプとが、トレッド幅方向で近づきすぎるが故に、それらの溝底に作用する応力を、所期するほどには緩和することができず、一方、0.1倍を越えると、周方向サイプを設けることの目的の一つ、すなわち、接地端近傍部分でのトレッド部剛性を低下させて、ワンダリング現象の発生を抑制するという目的を十分に達成し得なくなるうれいがある。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明の実施の形態を、図面に示すところに基づいて説明する。
図1は、この発明の一の実施形態を、トレッドパターンの半部について示すパターン展開図である。なお、タイヤの内部補強構造は、一般的な重荷重用ラジアルタイヤのそれと同様であるので、ここでは図示を省略する。
【0010】
図1に示すところでは、トレッド1の各半部に、トレッド周方向へ、ジグザグ様の傾向をもって連続して延びる二本の周方向溝2,3をトレッドセンター側から順次に設けることによって、トレッドセンター側の周方向溝2に区画されてトレッドセンターに重なるセンター陸部4、トレッド端側の周方向溝3により区画されて、それよりトレッド端側に位置するショルダー陸部5および、両周方向溝2,3間に位置する中間陸部6のそれぞれを形成する。
【0011】
ここで、センター陸部4および中間陸部6のそれぞれには、トレッド幅方向にジグザグ状に延在する複数本のサイプ7,8をそれぞれ設け、それらのサイプ7,8の各一端を、トレッド周方向で交互に反対側の周方向溝に開口させる。
【0012】
またショルダー陸部5には、一端がトレッド端TEに開口し、他端がショルダー陸部内で終了するラグ溝9を、実質的にトレッド幅方向に延在させて設けるとともに、周方向溝3の近傍部分、いいかえれば、ラグ溝9の陸部内終端位置よりトレッドセンター側部分で、トレッド幅方向へジグザグ状に延在して、多くが、一端をその周方向溝3に開口する複数本の幅方向ジグザグサイプ10および、トレッド幅方向へ直線状に延在して、ラグ溝終端および周方向溝3のそれぞれに開口する幅方向直線サイプ11のそれぞれを設ける。
【0013】
そしてさらには、一対のラグ溝間でトレッド周方向へジグザグ状に延びる一本の周方向サイプ12の両端を、ラグ溝9の陸部内終端位置よりトレッド端側へ幾分片寄せた位置でそれぞれのラグ溝9に開口させて設け、その周方向サイプ12の、ラグ溝終端位置からの片寄り量wを、トレッド幅TWの0.01〜0.1倍の範囲とする。加えて、かかる周方向サイプ12と、トレッド踏面端CEとの間には、ほぼジグザグ状をなして陸部内で終了するサイプ13の他、ほぼジグザグ状にトレッド幅方向に延びてトレッド踏面端CEに開口するサイプ14をそれぞれ設ける。
【0014】
このように構成してなる空気入りタイヤによれば、周方向溝2,3、ラグ溝9、それぞれのサイプ7,8,10,11,12,13,14等の作用下で、氷雪上でのすぐれた駆動および制動性能を発揮することができ、また、十分な横方向グリップ力を発揮し、ワンダリング現象の発生を有効に抑制することができる。
【0015】
しかも、このタイヤでは、周方向サイプ12を、ラグ溝9の終端位置に対してトレッド端側に片寄せて配置していることから、タイヤへの荷重の繰返しの作用に対し、ラグ溝の終端位置と周方向サイプとがトレッド周方向に整列する従来技術に比して、ラグ溝9の溝底についてはもちろん、とくには、周方向サイプ12の溝底への変形の集中、ひいては、応力の集中を有効に緩和することができ、これがため、その溝底へのクラックの発生および、その溝底からの陸部のチャンクアウトの発生等を十分に防止して、トレッド踏面部の耐久性を大きく向上させることができ、このことは、周方向サイプ12の、ラグ溝終端位置からの片寄り量wを、トレッド幅TWの0.01〜0.1倍の範囲とした場合にとくに顕著である。
【0016】
【実施例】
図1に示すトレッドパターンを有する、サイズが7.00R16 12PRの実施例タイヤに標準リム(JATMA YEAR BOOK 1997)を適用するとともに、6.0kgf/cm2 (規格Max)の空気圧を充填し、そしてそれを、首記サイズ標準装着車両の前後輪に装着し、30000km実車走行した後、周方向サイプ12の溝底への故障の発生の有無を検査したところ、実施例タイヤではクラックの発生も、陸部のチャンクアウトの発生も認められなかった。
【0017】
これに対し、図2に示すトレッドパターンを有する従来タイヤでは、同様の試験により、サイプ溝底へのクラックの発生が確認された。
【0018】
【発明の効果】
かくして、この発明によれば、周方向サイプを、ラグ溝の、ショルダー陸部内の終端位置よりトレッド端側に片寄せて形成することで、周方向サイプおよびラグ溝の溝底応力を緩和して、溝底クラックの発生および、溝底からの陸部のチャンクアウトの発生を効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施形態を、トレッドパターンの半部について示すパターン展開図である。
【図2】従来タイヤのトレッドパターンを示す図1と同様の図である。
【符号の説明】
1 トレッド
2,3 周方向溝
5 ショルダー陸部
9 ラグ溝
10 幅方向ジグザグサイプ
11 幅方向直線サイプ
12 周方向サイプ
13,14 サイプ
TE トレッド端
CE トレッド踏面端
Claims (1)
- 周方向溝によってトレッド端部分に区画されるショルダー陸部に、トレッド端から実質上トレッド幅方向に延びてショルダー陸部内で終了するラグ溝を設けるとともに、傾向的にトレッド幅方向およびトレッド周方向のそれぞれの方向に延びる幅方向サイプおよび周方向サイプを設けてなる空気入りタイヤであって、
前記ラグ溝間に延在し、両端がラグ溝に開口する各一本の周方向サイプを、ショルダー陸部内でのラグ溝終端位置よりトレッド端側に片寄せて配置するとともに、周方向サイプの、ラグ溝終端位置からの片寄り量をトレッド幅の0.01〜0.1倍の範囲としてなる空気入りタイヤ。
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