JP3991919B2 - スピーカ用振動板 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は各種音響機器に使用されるスピーカ用振動板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図6は従来のスピーカ用振動板の要部断面図である。図6において、21はエッジ一体型のスピーカ用振動板であり、円錐形状の振動板本体21aと、この振動板本体21aの外周縁部に一体成形された環状のエッジ21bとから構成されている。このエッジ一体型のスピーカ用振動板21は歪を少なくするためにエッジ21bとして発泡プラスチックが使用される。ここで、前記したエッジ一体型のスピーカ用振動板21においては、一般的に振動板本体21aとしてパルプ材が使用される。
【0003】
一方、近年、音質、特性の向上のために振動板本体21aとして合成樹脂を使用する試みがなされている。この合成樹脂製の振動板本体21aを用いる場合には、図7に示すように予め所定形状に成形された振動板本体21aの外周縁部に接着剤22を塗布し、この接着剤22を含んでエッジ21bを一体成形するようにしていた。
【0004】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【0005】
【特許文献1】
特開平9−261794号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、エッジ一体型のスピーカ用振動板において、パルプ材でなる振動板本体にエッジを一体成形する工法は安定した技術が確立されているものの、合成樹脂製の振動板本体にエッジを一体成形する場合、エッジ成形時の加熱による振動板本体の変形が課題となり、この変形を考慮した成形設備を採用した際には莫大な費用およびロスコストが発生する問題を有していた。さらに、信頼性確保のため前加工として接着剤を塗布する必要があり、接着剤の塗布工程の追加や接着剤の付加費用が発生する等、信頼性・コスト面においての課題は少ないものであった。
【0007】
本発明は上記課題を解決するものであり、音質・信頼性の向上とともに、従来の生産性と大差なく合成樹脂製の振動板本体にエッジを一体成形することができるエッジ一体型のスピーカ用振動板およびこれを用いたスピーカを提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成を有する。
【0009】
本発明の請求項1記載の発明は、所定形状に成形された合成樹脂製の振動板本体と、この振動板本体の外周縁部に前記振動板本体を構成する合成樹脂の軟化点より低い軟化温度を有する発泡プラスチックでエッジを一体成形で形成したスピーカ用振動板であり、前記エッジとして前記振動板本体を構成する合成樹脂の軟化点より低い軟化温度をもった発泡プラスチックを使用するため、前記振動板本体に前記エッジを一体成形する時に振動板本体の熱変形を発生することなくエッジ一体型のスピーカ用振動板を得ることができ、信頼性および生産性の向上、さらには外観品位の高いスピーカ用振動板を得ることができるものであると共に、研磨処理、低温プラズマ処理または成形金型による微細なシボ加工のいずれかにより振動板本体の外周縁部の表裏両面に凹凸状の粗面を形成して、この凹凸状の粗面を持つ外周縁部にエッジを一体成形するものであるため、凹凸状の粗面によるクサビ効果を利用することにより、前記振動板本体に前記エッジを一体成形することができて信頼性の向上を図ることができ、また、前加工としての接着剤を廃止して工程削減を図ることができる。
更に、凹凸状の粗面は前述の研磨処理、低温プラズマ処理または成形金型により、微細なシボ加工を簡単に成形でき、振動板本体にエッジを確実に一体成形することができるというものである。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、エッジを構成する発泡プラスチックは、型内発泡ウレタンまたは発泡ゴムから選択されるスピーカ用振動板であり、エッジ成形時に低温加熱にて成形することができ、防水性が高く、共振時の振幅が小さい高品質なスピーカ用振動板を得ることができる。
【0013】
請求項に記載の発明は、請求項1記載の発明において、振動板本体は、その中心軸線に直交する平面に平行な平坦な外周縁部を有し、この外周縁部の表裏両面に設けた凹凸状の粗面を含むようにエッジを一体成形したスピーカ用振動板であり、平坦な外周縁部に凹凸状の粗面を含んでエッジを一体成形することができるため、前記振動板本体と前記エッジとの接合力を向上させ、品質、性能をさらに安定させることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のスピーカ用振動板およびこれを用いたスピーカについて説明する。
【0016】
(実施の形態1)
図1は本発明の一実施形態におけるスピーカの断面図、図2は同スピーカに使用するスピーカ用振動板の要部拡大断面図である。図1において、8は磁気回路であり、トッププレート8aとボトムプレート8cにてリング状のマグネット8bを挟持し、トッププレート8aとボトムプレート8cのセンターポール8dとの間に磁気ギャップ12を構成しており、トッププレート8aにフレーム9が結合されている。4はエッジ一体型のスピーカ用振動板であり、円錐形状の振動板本体4aの外周縁部に環状のエッジ4bを一体成形したものである。このスピーカ用振動板4は、内周の中央孔にボイスコイル11を有するボイスコイルボビン10が結合されており、外周がエッジ4bを介して前記フレーム9に結合されている。
【0017】
ここで、前記エッジ一体型のスピーカ用振動板4は、図2に示すように予め所定の形状に成形した合成樹脂製の振動板本体4aの外周縁部に発泡プラスチックとしての型内発泡ウレタンでなるエッジ4bを一体成形し、前記振動板本体4aにエッジ4bを接合している。前記エッジ4bが一体成形される振動板本体4aは図2に示すように研磨処理により表裏両面に凹凸状の粗面4aaを形成している。また、前記した型内発泡ウレタンは振動板本体4aを構成する合成樹脂の軟化点より低い軟化温度を持つものである。したがって、エッジ4bの一体成形時に所定形状に成形された振動板本体4aの熱変形の発生はなく、また振動板本体4aの凹凸状の粗面4aaにエッジ4bの材料がくい込むクサビ効果により振動板本体4aとエッジ4bの接合力が向上される。
【0018】
このように、エッジ一体型のスピーカ用振動板4のエッジ4bの材料として、振動板本体4aを構成する合成樹脂の軟化点より軟化温度の低い型内発泡ウレタンを選定することにより、図3に示すように、特に中高域での再生能力の向上を図ることができることを確認した。図3において、一点鎖線Aは従来のスピーカ用振動板を用いたスピーカ(構成はスピーカ用振動板を除き同様であるので説明は省略する。)の周波数特性を、実線Bは本実施の形態におけるスピーカ用振動板を用いたスピーカの周波数特性を示す。
【0019】
(実施の形態2)
図4は本発明の他の実施の形態におけるスピーカ用振動板の要部断面図である。本実施の形態において、実施の形態1と異なる点は、所定形状の成形された合成樹脂製の振動板本体4aのエッジ4bが一体成形される外周縁部にのみ凹凸状の粗面4abを形成し、この凹凸状の粗面4abの部分を含んでエッジ4bを一体成形したことである。ここで、凹凸状の粗面4abは振動板本体4aの成形金型に微細なシボ加工を施すことにより形成した。
【0020】
(実施の形態3)
図5は本発明の他の実施の形態におけるスピーカ用振動板の要部断面図である。本実施の形態において、実施の形態1と異なる点は、振動板本体4aに、その中心軸線に直交する平面に平行な平坦な外周縁部を設け、この外周縁部の表裏両面にのみ凹凸状の粗面4acを形成し、この凹凸状の粗面4acを含んでエッジ4bを一体成形したことである。この凹凸状の粗面4acは実施の形態2と同様の方法で形成した。
【0021】
なお、本実施の形態においては、発泡プラスチックとして型内発泡ウレタンを使用したが、他に発泡ゴムを使用することができる。また凹凸状の粗面は研磨処理、成形金型による微細なシボ加工により形成したが、他に低温プラズマ処理にて形成することも可能である。
【0022】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、所定形状に成形された合成樹脂製の振動板本体の外周縁部に、当該本体を構成する合成樹脂の軟化点より軟化温度の低い発泡プラスチックでなるエッジを一体成形したので、極めて生産性に優れ、品質の安定したエッジ一体型のスピーカ用振動板を得、高音質かつ低歪で高耐入力可能なスピーカを提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態におけるスピーカの断面図
【図2】同スピーカに使用するスピーカ用振動板の要部拡大断面図
【図3】同スピーカ用振動板を用いたスピーカと従来のスピーカの周波数特性図
【図4】本発明の他の実施の形態におけるスピーカ用振動板の要部断面図
【図5】本発明の更なる他の実施の形態におけるスピーカ用振動板の要部断面図
【図6】従来のスピーカ用振動板の要部断面図
【図7】同スピーカ用振動板の要部断面図
【符号の説明】
4 スピーカ用振動板
4a 振動板本体
4b エッジ
4aa,4ab,4ac 凹凸状の粗面

Claims (3)

  1. 予め所定形状に成形された合成樹脂製の振動板本体と、この振動板本体の外周縁部に前記振動板本体を構成する合成樹脂の軟化点より低い軟化温度を有する発泡プラスチックでエッジを一体成形で形成したスピーカ用振動板であって、前記振動板本体の外周縁部の表裏両面に研磨処理、低温プラズマ処理または成形金型による微細なシボ加工のいずれかにより凹凸状の粗面を形成したスピーカ用振動板。
  2. エッジを構成する発泡プラスチックは、型内発泡ウレタンまたは発泡ゴムから選択される請求項1記載のスピーカ用振動板。
  3. 振動板本体は、その中心軸線に直交する平面に平行な平坦な外周縁部を有し、この外周縁部の表裏両面に設けた凹凸状の粗面を含むようにエッジを一体成形した請求項1記載のスピーカ用振動板。
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