JP3990560B2 - 高炉炉底電位差測定装置及び高炉内の銑滓レベル評価方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高炉内における銑滓レベルを評価するための高炉炉底電位差測定装置、銑滓レベル評価方法及び高炉炉底電位測定用接点に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
高炉炉内において、原料となる鉄鉱石はコークスとともに炉頂から炉体内に供給され、羽口から炉体内に圧送される熱風によって温度が上昇し、コークスによって還元されて溶銑となる。溶銑は炉底部に貯留し、溶銑の上に接して溶滓(スラグ)が貯留する。高炉炉内に貯留した溶銑の上部でかつ溶滓が存在する部位の高さ方向の位置を、ここでは銑滓レベルという。
【0003】
時間の経過とともに炉底部に貯留する溶銑量が増大し、銑滓レベルが上昇する。炉底部に設けられた出銑口を開口すると、溶銑及び溶滓が出銑口から炉外に導き出され、炉内の銑滓レベルが低下する。
【0004】
高炉操業において、炉内の銑滓レベルを把握することは、出銑周期を決定し、安定した経済的な操業を行う上で重要である。銑滓レベルが上昇してスラグレベルが所定以上に上昇すると、送風圧力変動が大きくなり安定的な操業状態が維持できなくなり、特に、スラグレベルが送風羽口レベルまで上昇してしまうと、スラグが羽口を閉塞してしまい、操業不能となる。スラグレベルの過度な上昇で不安定となった炉内状況を安定化させるためには、コークスの投入量を増加させたり、熱風量を変化させる等の処置が必要となり、操業コストの増大を招くこととなる。
【0005】
一般に、炉内の銑滓レベルは、銑滓の生成と排出との物質収支より大まかに推定することができる。例えば、銑滓の生成量は、単位時間あたりに高炉に装入した装入物の量とその成分から計算でき、溶銑の排出量は溶銑を収容するトーピードカーの重量変化の測定によって把握し、溶滓の排出量はスラグから製造した水滓の重量をスケールコンベアなどによって測定できるため、これらの銑滓の生成量と排出量の差分より炉内の銑滓量の増加量を推定できる。
【0006】
特開平7−150210号公報には、プロセスコンピュータを用いて出銑加速度を計算し、現在の出銑状況が初期、安定期、後期及び終了期のいずれに属するかを判定し、出銑終了時刻を予測する方法が開示されているが、この方法も基本的には上記の物質収支に立脚した炉内残銑滓量の推定方法を利用した技術である。
【0007】
しかし、物質収支による炉内残銑滓量の推定方法では、銑滓生産量は装入した鉱石類が直ちに溶融することを前提に計算するが、溶解までには少なくとも数時間のタイムラグがあるばかりでなく、成分分析値を元に計算を行うためにその分析値の精度、代表性、バラツキなどによっても誤差が生じる。
【0008】
また、銑滓排出量はスラグなどの直接的な秤量によって測定するのではなく、水滓化した後のものをスケールコンベアなどで秤量する程度であり、その誤差は少なくとも10%程度あるといわれている。このため、物質収支により銑滓レベルを推定する際には大きな誤差を前提に安全代を大きくとった対応が不可欠である。
【0009】
一方、物質収支による炉内残銑滓量の推定方法を用いずに、銑滓の検出器を用いて銑滓レベルを測定する方法としては、例えば特開昭53−86242号公報には、高炉の炉床部炉壁に、陽極と陰極からなる一対の棒状黒鉛電極を高さ方向に複数配列してそれぞれ電気的に回路を形成して通電し、溶銑が一対の棒状黒鉛電極に接触したときの導通をパイロットランプまたは電流計で検知することにより銑滓レベルを測定する方法が開示されている。この方法は、銑滓の通電を測定するために少なくとも一対の電極を銑滓に接触するように炉内に挿入して配置する必要があるため、電極表面に銑滓の冷却により形成される凝固層およびその厚み変動により通電状態が変動し信頼性のある炉内銑滓レベルの測定データを得ることは困難である。また、この方法では、電極を炉底部に炉壁を貫通させて設置するために、電極溶損時にはその部分から溶銑が流れ出し、炉底損傷といった大事故を招く可能性がある。
【0010】
また、特開昭59−140309号公報では、高炉の炉底付近の炉壁を構成するレンガに、少なくとも1対の電極を設けて四端子測定法による抵抗測定系(ダブルブリッジ系)電気回路を構成し、電気抵抗の測定値から銑滓レベルを測定する方法が開示されている。この方法は、レンガと銑滓の電気抵抗を測定するため、レンガの経時的な劣化や銑滓のレンガへの浸入等に起因するレンガの導電性の変動、およびレンガ近傍の銑滓温度や銑滓の凝固状態または流動状態に起因する銑滓の導電性の変動などによりレンガと銑滓の電気抵抗の測定値は変動し、信頼性のある炉内銑滓レベルの測定データを得ることは困難である。
【0011】
高炉炉底部付近の鉄皮表面の高さ方向2個所間において電位差が検出され、その電位差は高炉炉内の銑滓レベルと関係があることが知られている。Development & application of new techniques for blast furnace process control at SSAB Tunnplant, Lulea works. 1995 Ironmaking conference Proceedings pp271 - 279 によると、測定点として炉底部及び羽口上部の鉄皮表面を用いて電位差を測定した結果、出銑の開始・終了のインターバルと測定した電位差の時間的変動との間に相関が見られる点が記載されている。検出される電位差は0.2mV前後であり、出銑口を閉鎖している間に電位差は0.1mVほど増大し、出銑口を開いて出銑を行っている間に電位差は0.1mVほど減少して元に戻る。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
上記高炉の鉄皮表面に観測される電位差から銑滓レベルを検出する方法においては、検出される電位差が1mV以下の微弱な値であるため、ノイズの影響を受けやすい。また、銑滓レベルが同一であると推定される場合であっても、電位差の値に差異が生じることがあり、鉄皮表面の電位差から直ちに銑滓レベルを推定することが困難であった。
【0013】
本発明は、高炉炉内の銑滓レベルを精度良く推定することを可能にする方法及び装置を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
高炉炉体内部の炉底レンガに複数個の電位測定点を高さ方向に間隔を開けて設け、電位測定点の間の電位差を測定すると、5mV前後の電位差が存在し、かつ高炉炉内の銑滓レベルの変動に伴って電位差が5mV前後の幅で大きな変化を示すことが明らかになった。従来知られている高炉炉体の鉄皮表面で検出される電位差と比較すると、電位差の値および銑滓レベルの変動に伴う電位差の変動量ともに、1桁程度高い値である。そのため、ノイズの影響による誤差が非常に小さくなり、従来知られているいずれの方法と比較しても高い精度で銑滓レベルを推定することが可能になった。
【0015】
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、その要旨とするところは以下のとおりである。
(1)高炉炉底レンガ2に複数個の電位測定点11を高さ方向に間隔を開けて設け、該複数個の電位測定点11のうち、少なくとも1個の高さ方向の取り付け位置を出銑口3のレベル以上とし、少なくとも1個の高さ方向の取り付け位置を出銑口3のレベル未満とし、高炉炉体外部から挿入した金属シース熱電対20の先端シース部21を前記電位測定点11に当接し、該金属シース熱電対20のシース部21を用いて電位測定点11の間の電位差を測定することを特徴とする高炉炉底電位差測定装置。
)電位測定点11は、高炉炉底レンガ2の外周側の表面に設けることを特徴とする上記(1)記載の高炉炉底電位差測定装置。
)押し付け機構22を用いてシース熱電対20に付与した押し付け力によってシース熱電対の先端シース部21を電位測定点11に当接してなることを特徴とする上記(又は(2)に記載の高炉炉底電位差測定装置。
)上記(1)乃至()のいずれかに記載の高炉炉底電位差測定装置によって測定した電位差に基づいて高炉内の銑滓レベルを評価することを特徴とする銑滓レベル評価方法。
)シース熱電対20を用いて電位測定点11の温度を測定し、該測定した温度に基づいて銑滓レベル評価に補正を加えることを特徴とする上記()に記載の銑滓レベル評価方法。
)高炉炉体外部から挿入した金属シース熱電対20の先端シース部21を高炉炉底レンガ2の電位測定点11に当接した高炉炉底電位測定用接点10であって、高炉炉体外部において金属シース熱電対20のシース部を用いて電位測定点11の電位を測定することが可能であり、金属シース熱電対20によって電位測定点11の温度を測定することが可能であることを特徴とする高炉炉底電位測定用接点。
)押し付け機構22を用いてシース熱電対20に付与した押し付け力によってシース熱電対の先端シース部21を電位測定点11に当接してなることを特徴とする上記()に記載の高炉炉底電位測定用接点。
【0016】
【発明の実施の形態】
高炉の炉底付近の内部構造は、図1に示すように、鉄皮1の内側に炉底レンガ2が築造され、炉底レンガ2の最外周と鉄皮1との間にはステーブ5が設けられたりあるいはスタンプ材6が充填されている。本発明において、炉底レンガ2に複数個の電位測定点11を設ける。電位測定点11を用いて電位を測定するために、電位測定点11から高炉炉体外部まで延びる導線12を設ける。鉄皮1やステーブ5、スタンプ材6にはこの導線12を通すための開口が設けられる。導線12は電位測定点11において炉底レンガ2に接触し、鉄皮1、ステーブ5、スタンプ材6などとの間に導通を生じないように外部に導かれ、高炉炉体外部において導線12に別の導線14を接続し、電圧計13を用いて複数の電位測定点11の間の電位差を測定する。
【0017】
電位測定点11は、高さ方向に間隔を開けて複数個設ける。銑滓レベルを評価するために有効な電位差は、高炉の高さ方向に発生しているからである。電位差を測定するのであるから個数は最低でも2個必要であり、高さ方向3個所以上にわたって3個以上の電位測定点を設ければ、高炉高さ方向の電位分布を評価に加えることも可能である。
【0018】
複数の電位測定点の高さ方向取り付け位置は、溶銑と溶滓の境界面を挟むように配置すると、電位差測定値から銑滓レベルを評価するためには好ましい結果を得ることができる。具体的には、少なくとも1個の取り付け位置を出銑口3のレベル以上とし、少なくとも1個の取り付け位置を出銑口3のレベル未満とするように配置すれば、銑滓レベル評価のための電位差測定を行う上で好ましい。図1(a)において、電位測定用接点10a、10bは出銑口3のレベル未満に配置され、電位測定用接点10cは出銑口3のレベル以上に配置されている。
【0019】
炉底レンガ2における高炉半径方向の電位測定点11の配置位置は、図3(a)に示すように最も外周側である炉底レンガ表面に設けても良いし、図3(b)に示すように炉底レンガ2に非貫通孔30を設けた上で当該非貫通孔30の奥端を電位測定点11とする、すなわち炉底レンガ2の内部に電位測定点を設けても良い。炉底レンガ2に非貫通孔30を設けることは、炉底レンガの侵食が進行した際に溶銑もれなどによる炉底損傷を招きやすくなるという理由から好ましくないので、通常は炉底レンガ表面に電位測定点を設けることが好ましい。
【0020】
炉底レンガ2における高炉円周方向において、電位測定点11は任意の位置に配置することができる。電位差を測定するための複数の電位測定点11は、通常は高炉円周方向の同一位置において高さ方向に間隔を開けて設けられるが、もちろん円周方向の別の位置に配置した電位測定点11の間の電位を測定してもかまわない。高炉円周方向のうち、出銑口3近傍の位置を選んで電位測定点11を配置すると、当該出銑口近傍の銑滓レベルを検出することができるので、銑滓レベルの評価を出銑管理に用いる上で特に好ましい結果を得ることができる。
【0021】
炉底レンガ表面に電位測定点11を設けた本発明による電位差測定結果と、高炉鉄皮表面に電位測定点を設けた従来の電位差測定結果との対比を行った。高炉高さ方向の電位測定位置として、下方の測定点は炉底カーボンレンガ1段目レベルとし、上方の測定点は羽口4と同一レベルとした。測定結果を図4に示す。図4から明らかなように、鉄皮表面において測定した電位差は0.5mV前後と微小な電位差であるのに対し、炉底レンガ表面において測定した電位差は4〜8mVの大きな電位差を得ることができた。
【0022】
本発明の上記()()にあるように、炉底レンガの電位測定点から高炉炉体外部まで延びる導線12として、金属シース熱電対20のシース部を用いることができる。金属シース熱電対20とは、熱電対を円筒状の金属シース内に封入したものであり、熱電対の温接点は先端シース部付近に配置されている。図2に示すように高炉炉体外部から金属シース熱電対20を挿入し、金属シース熱電対20の先端シース部21を高炉炉底レンガ2の電位測定点11に当接する。金属シース部と内部の熱電対との間は電気絶縁状態とし、同時にシース部は鉄皮1やステーブ5、スタンプ材6との間も絶縁する。図2においては、磁性管等により形成した絶縁筒27を金属シース熱電対20の外周に配置することによって、シース部とその外周との間を絶縁している。このように構成した電位測定用接点10を高炉高さ方向2個所以上に配置し、各金属シース熱電対20のシース部の鉄皮1から露出した部分に導線14を接続し、さらに図示しない電圧計を接続することにより、電位差を測定することができる。
【0023】
高炉においては、操業管理を目的として鉄皮から内部に熱電対を挿入し、炉底レンガの温度測定を行うことがある。上記本発明のように電位測定にシース熱電対を用いることとすると、電位測定のために鉄皮に新たな観測口を設けることなく、従来から存在する熱電対挿入口を兼用して用いることが可能になる。
【0024】
金属シース熱電対20の先端シース部21を電位測定点11に当接するためには、押し付け機構22を用い、シース熱電対20に押し付け力を付与することによってその先端部を電位測定点11に押し付け、結果として先端シース部21を電位測定点11に当接することができる。押し付け力付与機構22としては、図2に示すように、高炉鉄皮外部の熱電対保持装置28内にバネ等の弾性体を配置し、この弾性体の反力を絶縁ストッパー25を用いて金属シース熱電対20に伝え、金属シース熱電対20を炉内側に押し付けることができる。
【0025】
電位測定にシース熱電対20を用い、熱電対先端部を電位測定点に当接させた結果として、電位測定点間の電位差を測定できると同時に、各電位測定点11の温度をも測定することができる。図2において、金属シース熱電対20の先端シース部21と反対側の端部から露出した熱電対素線24を温度測定装置23に導き、温度を測定することができる。
【0026】
金属シース熱電対20を用いた本発明の炉底電位差測定装置を、高炉円周方向において出銑口3に近接して設けた。高炉高さ方向および半径方向の電位測定点配置位置は上記図4の場合と同様とした。当該出銑口3の閉塞直前における電位差を測定すると同時に、当該熱電対を用いて電位測定点11における炉底レンガ3表面の温度を測定した。出銑口閉塞直前であるから、銑滓レベルはほぼ出銑口3の位置まで下降しており、各閉塞時でほぼ一定レベルである。このときの測定結果を用い、炉底レンガ表面の温度を横軸に、電位差測定結果を縦軸にとって、図5中に×印としてプロットした。横軸の温度としては、上下2個所の温度測定値の平均温度を採用している。温度と電位差の間には相関があり、温度が高いほど電位差が低くなっていることがわかる。この結果に基づき、温度の影響を相殺する目的で測定電位差を温度によって補正した。補正前の電位差をΔE(mV)、補正後の電位差をΔE’(mV)、上下2点の電位測定点温度の平均値をTa(℃)とし、
ΔE’=ΔE+0.0027×Ta (1)式
として補正を行ったところ、図5の●印となった。同一銑滓レベルにおける電位差測定結果が、非常に小さなばらつきの中に収まっている。すなわち、電位測定に金属シース熱電対20を用いることによって電位測定点11の温度を測定し、測定した温度によって測定電位差を補正することにより、高炉内の銑滓レベルをより高い精度で評価できることが明らかである。
【0027】
炉内容積3273m3、炉床径12.0mの高炉において、本発明を用いて銑滓レベルの評価を行った。電位測定点を炉底レンガ表面とし、下方の測定点は炉底カーボンレンガ1段目レベルとし、上方の測定点は出銑口から3.8m上方の羽口と同一レベルとした。図2に示すように金属シース熱電対20を用いた電位測定用接点10とし、上下2点間の電位差を測定すると同時に各電位測定点11の温度を測定し、上記(1)式を用いて測定電位差に補正を加えた。あわせて、電位測定点近傍の鉄皮における電位差を測定した。
【0028】
高炉炉内の残銑滓量を装入計算および銑滓排出量の秤量値に基づく銑滓の生成と排出との物質収支によって推定した。図6においては、このようにして算定した残銑滓量を横軸に取り、炉底レンガ表面で測定した温度補正前の電位差を×印、温度補正後の炉底レンガ表面での電位差を●印、鉄皮表面で測定した電位差を○印でプロットした。ここにおいて、電位差は残銑滓量=0における値を基準とし、該基準値に対する増加幅を図6の縦軸としている。鉄皮表面で測定した電位差は極めて微弱であるのに対し、炉底レンガ表面で測定した電位差は大きな値を有し、その結果としてノイズの影響を受けずに評価を行うことができる。炉底レンガ表面で測定した電位差については、温度補正を行っていない×印においても炉内残銑滓量との相関が高く、銑滓レベルの評価に用いる上で十分な精度を有することがわかる。温度補正を行った●印のデータについては、炉内残銑滓量との相関が格段に高くなり、銑滓レベルを非常に高い精度で評価することが可能になることがわかる。
【0029】
本発明の炉底レンガにおける電位差測定によって銑滓レベルを評価することにより、従来よりも信頼性の高い炉内貯留銑滓レベルの測定が可能になると共に、この電位差を予め設定した所定値以下にするように操業管理することで炉内銑滓レベルの上昇に伴うトラブルを回避することが可能となる。
【0030】
高炉操業中に炉内高さ方向の電位差の測定値が予め定めた設定値を超えた場合には、炉内貯留銑滓レベルを低下させるために、銑滓生成速度を減少させる操業アクションおよび銑滓排出速度を増加させる操業アクションの何れか一方または両方を実施すればよい。
【0031】
銑滓生成速度は、高炉の生産速度そのものであり、単位時間当たりの送風量を増減することにより変化させることが可能である。従って、銑滓生成速度を減少させる操業アクションとしては、羽口送風量を減少させる方法を用いるとよい。
【0032】
また、銑滓排出速度を増加させる操業アクションとしては、出銑で使用中の出銑口の径を大きな錐で掘削して拡大したり(促進開口)、出銑で使用中の出銑口の他に、他の閉塞している出銑口を開口して複数の出銑口で同時出銑する(ラップ出銑)などの方法により、単位時間当たりの出銑量を増加させる方法を用いることができる。
【0033】
銑滓生成速度を減少させる操業アクションおよび銑滓排出速度を増加させる操業アクションの何れか一方または両方を実施するか否かを判定するための予め定めた電位差の設定値は、高炉の操業実績と電位差の測定値との関係、および操業トラブルに至ることなく、早期回復が可能な操業アクションのタイミングをもとに高炉オペレータが予め定めておくことができる。
【0034】
具体的には、炉内残銑滓量の増加に起因して送風圧力変動が大きくなる直前の電位差を過去の実績から求め、その値もしくはその値に安全率を考慮して設定値を決めたり、一定時間出銑を停止して上昇した電位差の経時変化をもとに決めることができる。
【0035】
【発明の効果】
本発明は、高炉炉底レンガにおいて高さ方向複数の電位測定点間の電位差を測定することにより、高炉炉内の銑滓レベルを精度良く推定することが可能になる。また、高炉炉体外部から挿入した金属シース熱電対を用いて電位測定を行うことにより、従来から存在する熱電対挿入口を兼用して用いることが可能になるとともに、熱電対で測定した温度に基づいて測定電位差に補正を加えることにより、銑滓レベルをより高い精度で推定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の高炉炉底電位差測定装置及び高炉炉底電位測定用接点を示す概略図であり、(a)は高炉炉底部分断面図、(b)は電位差測定装置近傍を示す拡大図である。
【図2】金属シース熱電対を用いた本発明の高炉炉底電位測定用接点を示す断面図である。
【図3】炉底レンガにおける電位測定点配置位置を説明する断面図であり、(a)は電位測定点を炉底レンガ表面に配置した場合、(b)は電位測定点を炉底レンガ内部に配置した場合を示す図である。
【図4】鉄皮表面と炉底レンガのそれぞれで測定した電位差を対比する図である。
【図5】炉底レンガに設けた電位測定点間の電位差と電位測定点の温度との関係を示す図であり、×は温度補正なし、●は温度補正ありの状況を示す。
【図6】炉内残銑滓量と電位差増加幅との関係を示す図であり、○は鉄皮表面で測定した電位差、×は炉底レンガで測定した電位差(温度補正無し)、●は炉底レンガで測定した電位差(温度補正あり)である。
【符号の説明】
1 鉄皮
2 炉底レンガ
3 出銑口
4 羽口
5 ステーブ
6 スタンプ材
7 キャスタブル
8 溶銑
9 溶滓
10 電位測定用接点
11 電位測定点
12 導線
13 電圧計
14 導線
20 金属シース熱電対
21 先端シース部
22 押し付け機構
23 温度測定装置
24 熱電対素線
25 絶縁体ストッパー
26 絶縁筒
27 絶縁筒
28 熱電対保持装置
30 非貫通孔

Claims (7)

  1. 高炉炉底レンガに複数個の電位測定点を高さ方向に間隔を開けて設け、該複数個の電位測定点のうち、少なくとも1個の高さ方向の取り付け位置を出銑口のレベル以上とし、少なくとも1個の高さ方向の取り付け位置を出銑口のレベル未満とし、高炉炉体外部から挿入した金属シース熱電対の先端シース部を前記電位測定点に当接し、該金属シース熱電対のシース部を用いて前記電位測定点の間の電位差を測定することを特徴とする高炉炉底電位差測定装置。
  2. 前記電位測定点は、高炉炉底レンガの外周側の表面に設けることを特徴とする請求項1記載の高炉炉底電位差測定装置。
  3. 押し付け機構を用いて前記シース熱電対に付与した押し付け力によってシース熱電対の先端シース部を電位測定点に当接してなることを特徴とする請求項1又は2に記載の高炉炉底電位差測定装置。
  4. 請求項1乃至のいずれかに記載の高炉炉底電位差測定装置によって測定した電位差に基づいて高炉内の銑滓レベルを評価することを特徴とする銑滓レベル評価方法。
  5. 前記シース熱電対を用いて前記電位測定点の温度を測定し、該測定した温度に基づいて銑滓レベル評価に補正を加えることを特徴とする請求項に記載の銑滓レベル評価方法。
  6. 高炉炉体外部から挿入した金属シース熱電対の先端シース部を高炉炉底レンガの電位測定点に当接した高炉炉底電位測定用接点であって、高炉炉体外部において前記金属シース熱電対のシース部を用いて前記電位測定点の電位を測定することが可能であり、前記金属シース熱電対によって前記電位測定点の温度を測定することが可能であることを特徴とする高炉炉底電位測定用接点。
  7. 押し付け機構を用いて前記シース熱電対に付与した押し付け力によってシース熱電対の先端シース部を電位測定点に当接してなることを特徴とする請求項に記載の高炉炉底電位測定用接点。
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