JP3989262B2 - フラッシュクロマトグラフィーシステム及びアダプター - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はフラッシュクロマトグラフィーシステム及びアダプターに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
所謂フラッシュクロマトグラフィーは、分取方法及び精製方法の一つとして普及しているものであり、重力による移動相の移動により試料を分取、精製する所謂オープンクロマトグラフィーを基本とするものである。
この移動相の移動推進手段として、コンブレッサー又はボンベ或はポンプによる加圧と、出口側からのバキュームポンプでの減圧によるものと二方法が提案されている。
【0003】
この種の装置としては、溶離液瓶とそれに続くカラムを用い、カラムの出口側に設置した検出器を用いて、移動相を通過させ、通常30分程度で分離させるものである。検出器は、分離ピークをモニターするために用いるが、設置しない場合はフラクションコレクター等を使用し、分離後薄層クロマトグラフィー等により分離を確認する方法が取られる。又、このカラムは適宜のサイズのものを使用するが、そのカラムに対して試料負荷量、充填剤量に対応して過不足のない適宜長さのものを選定して使用することが行われている。
【0004】
又、固相抽出法は、シリカゲルに代表される固定相を用い、複雑な組成の試料中から特定の目的成分のみを選択的に抽出し、分離精製を行う方法で、充填カートリッジタイプとディスクタイプがある。
前述したオープンカラムクロマトグラフィーも広義の上では固相抽出法の一種であると云えるが、狭義の固相抽出法が目的成分特有の選択性を特に重視する前処理方法であることから区別することができる。つまり固相抽出法は目的成分を固定相に保持させ、必要としない夾雑物を流し去り、その後目的成分を適した溶媒で溶出させる方法か、又は逆に夾雑物を保持させ、目的成分を溶出させる方法が取られ、保持と溶出と云う選択性組合せによる精製が行われる。充填カートリッジタイプは、充填剤量の調節が簡単であること、充填剤の種類が豊富であること、又大量試料の前処理として自動化し易いことなど、試料を1回通すだけの使い捨てにできることなどのメリットのため、比較的安価に多数市販され使用されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来のフラッシュクロマトグラフィーに於いては、種々の方法があるが、オープンクロマトカラム作成が不可欠であった。一例を示せば、始めには充填剤を所定量ビーカーに秤量して移動相を加えて脱気する。次いで、スラリー液を出口側にコックのついたガラスオープンカラムに入れ、或は乾式で粉の充填剤をタッピング充填する場合もある。必要に応じて充填層上部にガラスビーズを敷く。移動相液面を充填層上部に合わせる。試料を充填層上部に注入する。コックを開け試料を充填層に吸着させる。移動相を加え、又リザーバーも移動相で満たす。リザーバー上部を加圧エアーと連結し、コックを開けクロマト展開を開始する。
このように細かい操作を行うため、極めて手数がかかり、面倒であった。
【0006】
前述したオープン状態のフラッシュクロマトグラフイーに対して移動相を加える側にカラム栓を装着することで、密閉して圧力を更にかけ、展開を速くすると共に、分離精度を上げる方法も実施されている。その際にカラム栓は充填剤面に密着させ、デッドボリュームをなくす必要がある。然し、カラムサイズは多種類あり、又充填剤量も夫々選択して行われる必要があるため、カラム栓も多種類用意する必要があった。
【0007】
一方、固相抽出用カートリッジカラムは、安価に大量生産が可能である反面、そのカラム(リザーバー)の充填状況にばらつきが生じ、同じ充填剤量であってもその充填高さは夫々異なることがあり、それが前処理の再現性に影響を与えることも指摘されていた。
【0008】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明においては、細かい操作を行う従来の手数のかかる充填作業をなくし、既存の固挿抽出用カートリッジをフラッシュクロマトグラフィーに利用できるようにし、更にカラム栓を充填剤面フリットに密着させる動作は、各種の充填剤の充填量に対応して可動式にしたプランジャーを持つアダプターを使用することにより、デッドボリュームを無くすようにしたもので、第1に、シャフトとプランジャーヘッドから成る可動式プランジャーと固相抽出用カートリッジより構成され、該固相抽出用カートリッジは、下端にジョイント、上端外側に鍔を形成し、内部にはフリットと充填剤を設置させる一方、プランジャーヘッドを固相抽出用カートリッジに挿通自在とし、且つプランジャーヘッドをシャフトを介して、移動自在に構成することにより、前記フリットとの押圧、隙間形成を調節自在とすると共に、シャフトに接続させた送液管により送液することを特徴とし、第2に、シャフトに螺入自在としたキャップを固相抽出用カートリッジに係合する際に、固相抽出用カートリッジに設定されたフリットとプランジャーヘッド間の距離を選択できるように調節自在としたことを特徴とし、第3に、シャフト端にプランジャーヘッドを設置する一方、シャフトにキャップを螺入自在となし所望箇所に設置すると共に、キャップをフリットと充填剤が設置された固相抽出用カートリッジに嵌合する際に、プランジャーヘッドが前記フリット全面押圧、隙間形成自在とするように螺合緊締自在としたことを特徴とし、第4に、シャフト端にプランジャーヘッドを螺合自在に設置することを特徴とし、第5に、キャップナットは固相抽出用カートリッジの鍔に端部を係合自在とし、キャップとの螺合時、キャップは固相抽出用カートリッジ開口に緊締されることを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、図に示す一例について、本発明を詳細に説明する。
1はフラッシュクロマトグラフィーのカラムとして用いられる固相抽出用のリザーバーであって、ガラス、プラスチック等既存の円筒状に形成したものを使用し、上部開口部11には鍔2を張出させ、下端にはルアーチップオス3を設けてある。リザーバーサイズは各種市販されている物を用いるので特に言及しないが、1mlから150ml位の範囲で試料に応じて選択する。4はキャップナットで、リザーバー1に挿通自在とし、前記鍔2に係止自在の係止部41を有し、内口に螺子溝42を設けてある。5はキャップで、リザーバー1の上部開口部11に嵌合し、且つ外側に螺子溝52を切り、キャップナット4の螺子溝42と螺合自在としてある。
【0010】
6はシャフトで、ステンレスや樹脂等の変形しないパイプを使用し、その外側に設けた螺子溝61によりキャップ5に設けた螺子孔51に螺合自在としてある。62はキャップ止めで、シャフト6上端に螺子固定してある。63はナットで、シャフト6下部に螺通しプランジャーヘッド8の固定を強固にしている。8はプランジャーヘッドで、シャフト6下端に螺通固定してある。該プランジャーヘッド8はテフロン(登録商標)等の固体材料にて形成してあり、Oリング81を設けてある。ヘッド8及びOリング81は使用する移動相や試料に影響しない材質が推奨される。シャフト6とプランジャーヘッド8を合わせた全体がプランジャーである。7は充填剤で、例えば、オクタデシル基結合シリカゲルや、スチレンジビニルベンゼン共重合体やグラファイトカーボン等が必要な種類と量だけ充填されている。71は移動相流入側フリット、72は移動相流出側フリットである。
【0011】
図3はフラッシュクロマトフロー概略説明図で、リザーバー1を倒立させてスタンド12にホルダー13により保持させてある。ルアーチップオス3には連結チューブ24を介して排出チューブ14を設け、それより移動相15を槽16に排出自在としてある。プランジャーヘッド8にはシャフト6及びフェラル91とワッシャー92にてチューブ17を連結し、インジェクター18を介し、ポンプ19を経て移動相20、槽21に連通してある。或はインジェクター18には移動相タンク22を介してガスボンベ23に連結してある。
該図に於いて、送液はポンプ19、インジェクター18を介して行っているが、ガス圧を利用できるし、必要に応じ、フラクションコレクターを使用し、システムアップすることは可能である。
【0012】
以下、その作動について説明すれば、先ず試料の種類、量に応じた固相抽出用充填剤7を選定する。
この際、カートリッジタイプの総保持量は、固相充填量の最大5%までと謂われており、その範囲内で適切なサイズを選定する。充填剤7の上部に移動相流入側フリット71を挿通させた後、プランジャーヘッド8が移動相流入側フリット71に当るように、プランジャーヘッド8に螺通したシャフト6とキャップ5の間隔を調節する。即ち、キャップ5とシャフト6をその螺子溝51と螺子孔61により進退させ、キャップ5のリザーバー1に挿通、載置させたとき、プランジャーヘッド8端面が充填剤7の上部に載置した移動相流入側フリット71に密着するようにする。このプランジャーヘッド8の挿入の際に、予めOリング81,81をメタノール等の溶媒で濡らしておくことは推奨され、そこでリザーバー1内に真直ぐに押し込み、移動相流入側フリット71に密着させ、デッドボリュームを無くしておくことが必要である。
但し、移動相流入側フリット71の性能を発揮させるため、中央部には極僅かな隙間83を作ることは推奨される。
【0013】
続いてキャップ5の回動により、リザーバー1の開口11に挿通させ、次にキャップナット4と螺合させて、リザーバー1の鍔2を介してキャップ5を固定する。
この後、送液を行うが、リザーバー1に接続したパイプ又はチューブ17によりポンプ19を介して行う。
試料負荷はプランジャーヘッド8をセットする前に充填剤7に載置させて行うことも、インジェクター18を介してチューブ17をによって行うことも出来る。又、エア抜きの目的でリザーバー1をスタンド12に倒立状態に保持することは推奨される。
【0014】
【実施例】
以下、本発明システムを使用して実施したフラッシュクロマトグラフィーについて食品色素の分離精製に適用した例を示し説明する。
〔実施例1〕 冷凍菓子100gに食用色素各1mg及びエタノールを約100ml加え、撹拌溶解し、水を加えて全体で200mlに容量合わせを行った。次に窒素を吹付け、溶媒を蒸発させ3mlまで濃縮した後、遠心分離を行った。その上澄液に水を加えて、10mlに容量合わせを行って測定用試料とした。冷凍菓子には、糖類、アミノ酸、有機酸などの水溶性分とビタミンE、脂質などの疎水性成分が混在している。色素は中間の極性になるため、逆相クロマトグラフィーを用いると、色素部分だけを分画できるはずである。
【0015】
市販品固相カートリッジカラムであるメガボンドエルート(登録商標)C1810g/60mlに、本発明の可動式アダプターを密着させ、充填相と隙間をなくした状態にし、図3に示したフロー該略図に組込んだ。移動相20として、初期液10mM酢酸アンモニウム水溶液、第2液10mM酢酸アンモニウム/アセトニトリル=10/90の2種を用意した。
ポンプ19の流速は、20mL/minに設定し、流速安定後にインジェクター18より1ml試料を注入した。そして注入5分後に、吸着している目的成分を溶出するために移動相20を第2液に入れ替えた。
【0016】
又、図3には示していないが、排出チューブ14の下流側に紫外可視吸収検出器を接続し、分離状態を検出波長210nmでモニターした。そのクロマトグラムが図4である。
図4から判るように、3ヶ所の分画ピークに分かれた。中央のピーク部分に目的とする色素成分が溶出されているか確認するため、矢印部分(4.5分から6.5分部分)を分画分取し、1mlに濃縮後、HPLC分析を行った。
分析条件
Figure 0003989262
図5のように、試料母体による妨害ピークの影響などもなく精製できることが分かった。
【0017】
〔実施例2〕 次に本発明の可動式アダプターを用いて、意図的に移動相流入側フリット71とプランジャーヘッド8の間に隙間を約3.6cm設けて同実験を行った。
条件は全て前実施例と同様に行った。その結果。得られたクロマトグラムは図6に示すように、図4に比べて分離状態が悪くなり、溶出時間も遅くなった。
導入された試料成分が、隙間で拡散し大きな幅を持って固相に入るため、母体と色素の分離が悪くなったと考えられる。溶出時間の遅れは、第2液の切換タイミングが遅くなり、溶出が遅れたものと考えられる。又、最後に溶出するべき脂溶成分が溶出されず、クロマトグラムがベースラインまで戻っていないと考えられる。
【0018】
隙間容量分約20mlの遅れ時間を考慮して、前実施例より1分遅れの矢印部分(5.5分から7.5分部分)を分画分取し、分画液を前実施例と同条件でHPLC分析を行った。図7
始めに水溶性成分と思われる母体ピークが大きく溶出された。又、色素1は検出されず、2,3のピーク高さも相対的に低くなった。精製時に母体成分と色素1は同時に排出されたと考えられ、溶出の早い成分の一部が固相に吸着されず抜けてしまっていると考えられる。
溶出の遅い色素10,11,12もピーク高さが減少してしまった。これは、分画内に溶出されなかったと考えられる。分画時間を長くすることにより解決できると思われるが、その分精製に時間がかかることになる。
【0019】
【発明の効果】
上記の如き本発明によれば、シャフトとプランジャーヘッドより成る可動式プランジャーを固相抽出用カートリッジに挿通自在とし、シャフトに螺入自在にしたキャップ移動によりプランジャーヘッドを所望位置に設置すると共に、シャフトに接続させた送液管により送液するので、シャフトにプランジャーヘッドを出入自在とした可動式プランジャーを構成すると共に、該可動式プランジャーを固相抽出のカートリッジに挿通し、前記カートリッジを押圧自在とし、シャフトには送風及び送液管を接続させたので、分離目的成分に対応した充填剤の取扱いが、従来のフラッシュクロマトグラフィーの面倒な操作手順を踏まずに、単にカートリッジのリザーバーへの挿入と云う単純操作により可能となり、操作が簡略化され、作業者の負担を軽減させることが出来た。
【0020】
又、従来フラッシュクロマトグラフィーにおいて使用されるカラム栓は、夫々対応する充填剤に対応して夫々選択して長さ、径等の異なるものが必要で、その用意の必要があり、且つ又充填剤との間にデッドボリュームを生ずる余地があったのを1又は数少ないプランジャーでプランジャーヘッドの位置を変化させることで対応でき、更にデッドボリュームを完全になくすことが出来る。
このため、カートリッジを使用することと可動式プランジャーの採用により、極めて操作容易で簡単なフラッシュクロマトグラフィーが利用することが出来、その利用範囲は拡大されることになった。
【0021】
本発明請求項2の発明によれば、シャフト端にプランジャーヘッドを設置する一方、シャフトにキャップを螺入自在となし所望箇所に設置すると共に、キャップを固相抽出用カートリッジに嵌合する際に固相抽出用カートリッジ係止したキャップナットと螺合緊締自在としたので、請求項1の効果の上に、本発明の可動式アダプターを用いることにより、精度の高い短時間の精製が可能であることが判った。
又、可動式であるため、今回の隙間を設けた実施例のように、分離が悪いながらも従来の分離パターンを再現することが可能であることが判った。これは、工業レベルで分離精製を行う場合、1種類の固相カートリッジカラムを用いてルーチン化されている条件を変えずに、その一方で新しい条件を検討することができるなど非常に有用である。
【0022】
更に本発明請求項3,4によれば、シャフト端にプランジャーヘッドを螺合自在に設置し、キャップナットは固相抽出用カートリッジの鍔に端部を係合自在とし、キャップとの螺合時、キャップは固相抽出用カートリッジ開口に緊締されるので、プランジャーは固相抽出用カートリッジに合わせて所望の寸法、材質を変換、選択して使用できる。然もその使用は極めて簡単であり、固相抽出の簡便さと再現性に改善されたクロマトグラフィーを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明一実施例中央縦断正面図
【図2】 本発明他実施例中央縦断正面図
【図3】 本発明一使用状態説明図
【図4】 本発明実施例1のクロマトグラム
【図5】 同上一部分画後のHPLCクロマトグラム
【図6】 本発明実施例2のクロマトグラム
【図7】 同上一部分画後のHPLCクロマトグラム
【符号の説明】
1 リザーバー
2 鍔
3 シリンジジョイント
4 キャップナット
5 キャップ
6 シャフト
7 充填剤
8 プランジャーヘッド

Claims (5)

  1. シャフトとプランジャーヘッドから成る可動式プランジャーと固相抽出用カートリッジより構成され、該固相抽出用カートリッジは、下端にジョイント、上端外側に鍔を形成し、内部にはフリットと充填剤を設置させる一方、プランジャーヘッドを固相抽出用カートリッジに挿通自在とし、且つプランジャーヘッドをシャフトを介して、移動自在に構成することにより、前記フリットとの押圧、隙間形成を調節自在とすると共に、シャフトに接続させた送液管により送液することを特徴とするフラッシュクロマトグラフィーシステム。
  2. シャフトに螺入自在としたキャップを固相抽出用カートリッジに係合する際に、固相抽出用カートリッジに設定されたフリットとプランジャーヘッド間の距離を選択できるように調節自在としたことを特徴とする請求項1に記載のフラッシュクロマトグラフィーシステム。
  3. シャフト端にプランジャーヘッドを設置する一方、シャフトにキャップを螺入自在となし所望箇所に設置すると共に、キャップをフリットと充填剤が設置された固相抽出用カートリッジに嵌合する際に、プランジャーヘッドが前記フリット全面押圧、隙間形成自在とするように螺合緊締自在としたことを特徴とするフラッシュクロマトグラフィーアダプター。
  4. シャフト端にプランジャーヘッドを螺合自在に設置することを特徴とする請求項1に記載のフラッシュクロマトグラフィーシステム。
  5. キャップナットは固相抽出用カートリッジの鍔に端部を係合自在とし、キャップとの螺合時、キャップは固相抽出用カートリッジ開口に緊締されることを特徴とする請求項1に記載のフラッシュクロマトグラフィーシステム。
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