JP3987808B2 - アクチュエータ及びこれを用いた電動歯ブラシ - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明はアクチュエータ、殊に電動歯ブラシの駆動源として好適に用いることができるアクチュエータとこれを用いた電動歯ブラシに関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
電動歯ブラシにおける歯ブラシは、バス磨き用であれば往復直線運動を、ローリング磨き用であれば軸回りの所定角度内の往復回動運動を行うのであるが、電動歯ブラシに用いられている駆動源には、通常の軸回り回転を行うモータを用いたものが多く、この場合、運動変換機構を介して上記の往復直線運動もしくは往復回動運動を行わせている。また、運動変換機構として上記の両種運動を切り換えることができるようにしたものも提供されている。
【０００３】
電動歯ブラシに用いられている駆動源には、リニア振動型のアクチュエータも提供されている。特開２００２−０７８３１０号公報に示された上記アクチュエータは、歯ブラシに直結されることになる出力軸の軸方向の往復振動を直接発生させるものであり、運動変換機構による動力ロスがなく、また高速な振動を行わせることができるものとなっている。
【０００４】
【特許文献１】
特開２００２−０７８３１０号公報
【０００５】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記のアクチュエータが発生させることができる動きは軸方向の往復振動だけであり、従って電動歯ブラシの駆動源としてみた場合、バス磨きしか行うことができないものであり、ローリング磨きも行わせることができるようにするには、別途運動変換機構を用いなくてはならない。
【０００６】
本発明はこのような点に鑑みなされたものであって、その目的とするところは運動変換機構を必要とせずに軸方向の往復運動と軸回りの所定角度内の回動運動とを選択的に行わせることができるアクチュエータとこれを用いた電動歯ブラシを提供するにある。
【０００７】
【課題を解決するための手段】
しかして本発明に係るアクチュエータは、強磁性体で形成された一対の固定子と、軸方向に間隔をおいて位置する上記一対の固定子間に位置して軸方向移動及び軸回りの所定角度内の回動が自在となっている可動子とを備え、上記の各固定子は夫々周方向において２つ以上のコイルボビン部を備えて各コイルボビン部に夫々個別に電流が制御されるとともに励磁時にコイルボビン部の上記軸方向両端を異極に磁化するコイルが巻回されており、磁石の介在で周方向において少なくとも２極に分割されている可動子は、各極のほぼ中央部に各固定子側に向けて突出して隣り合うコイルボビン部の対向する側面間に位置するとともにその両側面がコイルボビン部の上記側面に対向する突起を備えていることに特徴を有している。
【０００８】
固定子における可動子の突起が間に位置している部分が同極となるように励磁することで、可動子に軸方向移動を行わせることができ、固定子における可動子の突起が間に位置している部分が異極となるように励磁することで、可動子に軸回りの回動を行わせることができる。
【０００９】
この場合、固定子は周方向において４つのコイルボビン部を備えて各コイルボビン部に夫々個別に電流が制御されるコイルが巻回されており、可動子は各固定子側に夫々異なるコイルボビン部間に位置する２つの突起を備えているものであることが好ましい。
【００１０】
また、固定子のコイルボビン部はそのコイル巻回部が細くなっていることが好ましい。
【００１１】
可動子はその外周部において出力軸に連結されていてもよい。
【００１２】
そして本発明に係る電動歯ブラシは、請求項１〜４のいずれかの項に記載のアクチュエータを歯ブラシの軸方向駆動及び軸回りの所定角度内の回動駆動用の駆動源としていることに特徴を有している。運動変換機構を介することなく歯ブラシに軸方向運動と軸回りの回動運動とを選択的に行わせることができる。
【００１３】
【発明の実施の形態】
以下本発明を実施の形態の一例を図１〜図３に基づいて詳述すると、このアクチュエータは、鉄などの強磁性体で形成された一対の固定子１，１と、両固定子１，１間に配されているとともに出力軸７が中心に固定された円盤状の可動子２とからなるもので、各固定子１，１は、夫々周方向において４つのコイルボビン部１０を備えて図３に示すように各コイルボビン部１０の軸方向中央部の細くなっている部分にコイル３が巻回されている。その励磁時にコイルボビン部の上記軸方向両端を異極に磁化するこれらコイル３は、個別に電流が制御されるものとなっている。また、各固定子１，１のコイルボビン部１０における可動子２側の端部１１は相互に切り離されて、間に空間が設けられている。図中６は固定子１が固定されているケース、８は出力軸７を支持している軸受である。尚、磁石５に付した図１中の矢印は磁力線の方向を示している。
【００１４】
強磁性体で形成されている可動子２は図２(b)に示すように円盤状であるとともに磁石５の介在で周方向において２極に分割されているもので、各極部のほぼ中央部には各固定子１，１側に向けて突出する突起２０，２０を備えている。これら突起２０は、固定子１における隣り合うコイルボビン部１０，１０の対向する側面間に位置しており、突起２０の両側面がコイルボビン部１０の可動子２側の端部の上記側面に対向している。
【００１５】
展開図で示した図３に示すように、一方の固定子１における可動子２の一方の極部の突起２０が間に位置している２つのコイルボビン部１０，１０の可動子２側の端部を、上記一方の極部の磁気極性と同じになるようにコイル３，３に通電して励磁するとともに、他方の固定子１における可動子２の一方の極部の突起２０が間に位置している２つのコイルボビン部１０，１０の可動子２側の端部を、上記一方の極部の磁気極性と逆極性とになるようにコイル３，３に通電して励磁すれば、可動子２と一方の固定子１との間には磁気反発力が、可動子２と他方の固定子１との間には磁気吸引力が働いて、可動子２は軸方向の一方に駆動される。そして各コイル３に対してそれまでと逆方向に電流を流せば、可動子２は軸方向の他方に駆動される。従って、各コイル３に交番電流を夫々に応じた方向で供給することにより、可動子２は軸方向の往復運動を行うことになる。
【００１６】
また、展開図で示した図４に示すような磁気極性となるように、つまりは固定子１における可動子２の突起２０が間に位置している部分が異極となるように励磁すれば、可動子２の突起２０と固定子１との間に突起２０の片側で磁気反発力が作用し、突起２０の他側で磁気吸引力が作用して可動子２を周方向に駆動するために可動子２は軸回りの回動を行うものであり、コイル３に交番電流を流すことで可動子２は軸回りの往復回動を行う。
【００１７】
なお、このようなアクチュエータを電動歯ブラシの駆動源とする場合、歯ブラシの駆動をきわめて高速で行うことができるために、軸方向運動のストローク及び往復回動運動の時の回動角を大きくすると、歯と歯ブラシとの間の摩擦熱が問題となってしまうことから、上記ストロークは数ｍｍ及び回動角は５°以内といった微小なものでよい。
【００１８】
また、上記構成のアクチュエータの場合、展開図で示した図６及び図７に示すように２つある固定子１，１のうちの一方のコイル３による励磁で可動子２を軸方向駆動し、他方の固定子１のコイル３による励磁で可動子２を回動駆動することを交互に且つ駆動方向を変えて行うことで、可動子２に軸方向の往復移動と軸回りの往復回動とを同時に行わせることができる。
【００１９】
ところで、上記の例では各固定子１の４つのコイルボビン部１０に夫々コイル３を巻回しているが、磁石５によって２極に分割されている可動子２における一方の極部と対向している２つのコイルボビン部１０にだけコイル３を巻回して、可動子２の上記極部にある突起２０をコイル３が巻回されている２つのコイルボビン部１０，１０の間に位置させているものであってもよい。コイル３，３が２つだけであっても図８に示す軸方向の駆動と図９に示す軸回りの回動駆動とを行わせることができる。もっとも、４つのコイル３を用いたものに比して推力やトルクは低下する。
【００２０】
図１０に可動子２の他例を示す。これは出力軸７と可動子２との連結を、出力軸７から分岐させた一対の連結軸７０，７０を円盤状の可動子２の外周部に連結することで行ったものである。図２に示したものでは、可動子２を２極に分割するための磁石５が出力軸７で分断されてしまうために２個の磁石５が必要となるのに対して、この例で示したものにおいては一つの磁石５でよい。
【００２１】
【発明の効果】
以上のように本発明においては、強磁性体で形成された一対の固定子と、軸方向に間隔をおいて位置する上記一対の固定子間に位置して軸方向移動及び軸回りの所定角度内の回動が自在となっている可動子とを備え、上記の各固定子は夫々周方向において２つ以上のコイルボビン部を備えて各コイルボビン部に夫々個別に電流が制御されるとともに励磁時にコイルボビン部の上記軸方向両端を異極に磁化するコイルが巻回されており、磁石の介在で周方向において少なくとも２極に分割されている可動子は、各極のほぼ中央部に各固定子側に向けて突出して隣り合うコイルボビン部の対向する側面間に位置するとともにその両側面がコイルボビン部の上記側面に対向する突起を備えていることから、固定子における可動子の突起が間に位置している部分が同極となるように励磁することで、可動子に軸方向移動を行わせることができ、固定子における可動子の突起が間に位置している部分が異極となるように励磁することで、可動子に軸回りの回動を行わせることができるものであり、可動子に軸方向運動と軸回りの回動運動の両方を選択的に行わせることができる。
【００２２】
この場合、固定子は周方向において４つのコイルボビン部を備えて各コイルボビン部に夫々個別に電流が制御されるコイルが巻回されており、可動子は各固定子側に夫々異なるコイルボビン部間に位置する２つの突起を備えているものであることが、発生推力及びトルクを大きくすることができる点で好ましい。
【００２３】
また、固定子のコイルボビン部はそのコイル巻回部が細くなっていると、コイルの巻回スペースを大きくすることができるために、コイルの巻数を多くすることができ、推力やトルクを大きくすることができる。
【００２４】
可動子はその外周部において出力軸に連結されていてもよい。出力軸と可動子との連結を可動子中央で行う場合に比して、可動子を２極に分割する磁石の数を少なくすることができる。
【００２５】
そして、このようなアクチュエータを歯ブラシの軸方向駆動及び軸回りの所定角度内の回動駆動用の駆動源としている電動歯ブラシでは、その歯ブラシのバス磨き用の駆動とローリング磨き用の駆動とをアクチュエータのみで行うことができるものであり、運動変換機構を必要としないために小型化が容易である。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の実施の形態の一例を示すもので、(a)は斜視図、(b)は概略側面図である。
【図２】 (a)は同上の固定子の斜視図、(b)は同上の可動子の斜視図である。
【図３】 (a)(b)は同上の固定子のコイルボビン部の正面図と側面図である。
【図４】 (a)(b)は同上の軸方向駆動についての説明図である。
【図５】 (a)(b)は同上の軸回り回動駆動についての説明図である。
【図６】 (a)(b)は同上の斜め方向駆動についての説明図である。
【図７】 (a)(b)は同上の斜め方向駆動についての説明図である。
【図８】 (a)(b)は他例の軸方向駆動についての説明図である。
【図９】 (a)(b)は同上の軸回り回動駆動についての説明図である。
【図１０】可動子の他例の斜視図である。
【符号の説明】
１ 固定子
２ 可動子
３ コイル
４ コイル
５ 磁石
１０ 突起

Claims (5)

1. 強磁性体で形成された一対の固定子と、軸方向に間隔をおいて位置する上記一対の固定子間に位置して軸方向移動及び軸回りの所定角度内の回動が自在となっている可動子とを備え、上記の各固定子は夫々周方向において２つ以上のコイルボビン部を備えて各コイルボビン部に夫々個別に電流が制御されるとともに励磁時にコイルボビン部の上記軸方向両端を異極に磁化するコイルが巻回されており、磁石の介在で周方向において少なくとも２極に分割されている可動子は、各極のほぼ中央部に各固定子側に向けて突出して隣り合うコイルボビン部の可動子側における対向する側面間に位置するとともにその両側面がコイルボビン部の上記側面に対向する突起を備えていることを特徴とするアクチュエータ。
2. 固定子は周方向において４つのコイルボビン部を備えて各コイルボビン部に夫々個別に電流が制御されるコイルが巻回されており、可動子は各固定子側に夫々異なるコイルボビン部間に位置する２つの突起を備えていることを特徴とする請求項１記載のアクチュエータ。
3. 固定子のコイルボビン部はそのコイル巻回部が細くなっていることを特徴とする請求項２記載のアクチュエータ。
4. 可動子はその外周部において出力軸に連結されていることを特徴とする請求項１〜３のいずれかの項に記載のアクチュエータ。
5. 請求項１〜４のいずれかの項に記載のアクチュエータを歯ブラシの軸方向駆動及び軸回りの所定角度内の回動駆動用の駆動源としていることを特徴とする電動歯ブラシ。

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