JP3984384B2 - 共重合体及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、徐放性薬剤の基材として有用な新規化合物である、コハク酸イミド単位及び/又はアスパラギン酸単位と、乳酸単位及び/又はグリコール酸単位とを併せ持つ共重合体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、生体吸収性高分子を、DDS(ドラッグ デリバリー システム)に応用するアプローチがある。DDSとは、生体吸収性高分子を基材として、適当な方法により薬剤を徐放化するシステムである。
【0003】
ここで、適当な方法の具体例としては、生体吸収性高分子と薬剤をブレンドする方法、薬剤を生体吸収性高分子によりマイクロカプセル化する方法、生体吸収性高分子に薬剤を固定化する方法等を挙げることができる。
【0004】
このような生体吸収性高分子の具体例としては、ポリ乳酸(PLA)やポリグリコール酸(PGA)等のポリα−ヒドロキシ酸を挙げることができる。
【0005】
例えば、特開昭62−64824号公報には、グリコール酸の環状二量体であるグリコリド(GLD)と、乳酸の環状二量体であるラクチド(LTD)とを開環共重合させることにより、徐放性薬剤の基材として有用な低分子量、多分散性の乳酸−グリコール酸共重合体(PLGA)を得る方法が開示されている。
【0006】
一方、上記のようなDDSにおいて、生体吸収性高分子を徐放性薬剤の基材として用いた場合の薬剤の徐放挙動は、薬剤と生体吸収性高分子との独特な相互作用によって多様に変化することが知られている。したがって、近年、種々の構造の薬剤を徐放化したいという要望があるが、基材としての生体吸収性高分子を、PLGA等の既存のポリマーから選択するだけでは、所望とする徐放速度、徐放期間、徐放pH等を発現するDDSを設計することが困難な場合が多い。
【0007】
このような技術的背景から、徐放性薬剤の基材として、新規な生体吸収性高分子材料が望まれてきた。
【0008】
また、マイクロスフェアやマイクロカプセル等の徐放性製剤を製造する際、従来から用いられているエマルジョン法では、有機溶媒を使用するので溶媒除去工程を必要とし、製剤中の残存溶媒が実質的に問題無いレベルであることをバリデーションする必要があった。
【0009】
このため、ポリマーを熱溶融して薬剤と混合することにより、無溶剤で製剤化したいという要望もある。しかし、例えば光学活性なPLAは融点が160〜180℃であり、この温度で溶融させると薬剤が熱分解してしまうという問題がある。PLAの分子量を下げれば融点が低下するが、本発明者らの知見によれば、PLAは分子量2000〜3000程度で既に120℃以上の融点をもち、一方、それ以下の分子量ではシロップ状となり、マイクロスフェア化等の製剤化が困難である。したがって、医療材料の中でも特に徐放性薬剤の基材用として用いる生体吸収性高分子として、低融点のものが望まれてきた。
【0010】
Ganpat L. Jainらは、乳酸とアスパラギン酸とのある種のランダム共重合体について開示している(Ganpat L. Jainら、Makromol.Chem., 182巻, 2557-2561, 1981年)。ここでJainらは、アスパラギン酸と乳酸とを2:1〜0.5:1の比で、減圧条件下、150℃で5時間脱水重縮合させ、アスパラギン酸:乳酸=9:1〜1.77:1である、乳酸−アスパラギン酸共重合体を得る技術を開示している。
【0011】
しかしながら、この技術により乳酸とアスパラギン酸を共重合すると、分子量分布が広く、低分子量のランダムコポリマーしか得られず、収率が低い。しかも、このポリマーは融点が高く、従って溶融加工成形性に乏しく、医療材料として用いるのには制限がある。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、例えば徐放性薬剤の基材として好適であり、具体的には、DDSで使用しようとする薬剤が熱分解しないような低い温度範囲で軟化又は溶融し、かつ常温(例えば25℃、あるいは40℃未満)ではべたつきの無い固体であり、幅広い種類の溶媒に溶解する新規共重合体及びその製造方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、ラクチドやグリコリド等と共にアスパラギン酸を加熱、重合させることにより、構造中にヒドロキシカルボン酸単位とコハク酸イミドとを併せ持つ新規な生体吸収性共重合体が得られ、この共重合体は常温で固体で、かつ100℃以下で溶融すること、幅広い溶媒に溶解すること、特異な加水分解挙動を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち本発明は、下記構造式(12)
【0015】
【化14】
Figure 0003984384
(式中、p、r、sは、3つ同時に0になることのない0又は1以上1000以下の整数であり、qは1以上100以下の整数であり、(p+r+s)/(q+1)=2〜100であり、Rは水素原子又はメチル基である。)
で表される、重量平均分子量1000以上10万以下の共重合体である
【0016】
さらに本発明は、上記共重合体のイミド環を加水分解開環して得られる、下記構造式(13)
【0017】
【化15】
Figure 0003984384
(式中、p、r、sは、3つ同時に0になることのない0又は1以上1000以下の整数であり、qは1以上100以下の整数であり、(p+r+s)/(q+1)=2〜100であり、Rは水素原子又はメチル基であり、Mは金属又は水素原子である。)
で表される共重合体である。
【0018】
さらに本発明は、アスパラギン酸と環状エステル化合物との混合物を加熱して、重合させることを特徴とする上記共重合体の製造方法である。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0020】
繰り返し構造単位として、少なくともコハク酸イミド単位とヒドロキシカルボン酸単位とを併せ持つ本発明の共重合体の構造は、例えば、核磁気共鳴(NMR)スペクトル測定や赤外吸収(IR)スペクトル測定等の公知の分析手法によって確認することができる。
【0021】
例えば、IRスペクトル測定では、コハク酸イミド単位のカルボニル結合と同時に、乳酸単位及び/又はグリコール酸単位のカルボニル結合の特徴的な吸収がみられる。
【0022】
また例えば、NMRスペクトル測定では、コハク酸イミド単位のメチレンプロトンやメチンプロトンに由来するピークと同時に、乳酸単位のメチルプロトンやメチンプロトン、及び/又はグリコール酸単位のメチレンプロトンに由来するピークが明確に確認できる。高分解能のNMR測定装置を用いれば、わずかながら、アミド基のプロトンや、アミド基に隣接するメチンプロトンに由来するピークや、その他、枝分かれや連鎖シーケンス(コハク酸イミド単位、アスパラギン酸単位、乳酸及び/又はグリコール酸単位との隣接基関与)によるピーク等の細かなピークが認められる。
【0023】
本発明の共重合体の代表的な例は、当該高分子化学分野においてブロックポリマー、グラフトポリマー、グラフトブロックポリマー、又はハイパーブランチ(hyper branched)ポリマーと呼ばれる高次構造をもつ共重合体である。より具体的には、繰り返し構造単位として主にコハク酸イミド単位をもつポリコハク酸イミドセグメントと、繰り返し構造単位としてヒドロキシカルボン酸単位をもつポリヒドロキシカルボン酸セグメントとが、ブロック状及び/又は枝分かれ状につながった構造をもつ共重合体である。
【0024】
本発明のブロックポリマー、グラフトポリマー、グラフトブロックポリマー、又はハイパーブランチポリマーは、下記構造式(3)で表されるポリコハク酸イミドセグメントと、
【0025】
【化16】
Figure 0003984384
(式中、mは1以上100以下の整数である。)
【0026】
下記構造式(4)で表されるポリヒドロキシカルボン酸セグメントと
【0027】
【化17】
Figure 0003984384
(式中、Rはメチル基又は水素原子であり、nは1以上1000以下の整数である。)
を併せ持ち、コハク酸イミド単位の割合が1〜33モル%であり、ヒドロキシカルボン酸単位の割合が67〜99モル%である共重合体であることが好ましい。
【0028】
また、本発明の共重合体の一例として、下記構造式(12)で表される構造をもつポリマーが挙げられる。
【0029】
【化18】
Figure 0003984384
(式中、p、r、sは、3つ同時に0になることのない0又は正の整数であり、qは1以上の整数であり、(p+r+s)/(q+1)=2〜100であり、Rは水素原子又はメチル基である。)
【0030】
この場合、基本的に、コハク酸イミド単位がつながったポリコハク酸イミド連鎖、ヒドロキシカルボン酸がつながったポリヒドロキシカルボン酸連鎖は、それぞれブロック性をもち、共重合体の分子中のセグメントとして存在する。
【0031】
さらに、本発明の共重合体は、そのポリコハク酸イミドセグメント中の一部のコハク酸イミド単位が開環していてもよい。この場合、この共重合体は、下記構造式(5)で表されるAセグメントと、
【0032】
【化19】
Figure 0003984384
(式中、xは1以上100以下の整数である。)
【0033】
下記構造式(6)で表されるBセグメントと、
【0034】
【化20】
Figure 0003984384
(式中、yは0又は100以下の正の整数であり、Mは金属又は水素原子である。)
【0035】
下記構造式(7)で表されるCセグメントと
【0036】
【化21】
Figure 0003984384
(式中、zは4以上1000以下の整数であり、Rはメチル基又は水素原子である。)
を併せ持つ枝分かれ状共重合体であることが好ましい。
【0037】
また、本発明の共重合体は、そのポリコハク酸イミドセグメント中に、下記構造式(9)又は(10)のような構造のアスパラギン酸単位が混在していてもよい。
【0038】
【化22】
Figure 0003984384
【0039】
【化23】
Figure 0003984384
(両式中、p、q、r及びsは0又は1000以下の正の整数であり、Rはメチル基又は水素原子である。)
【0040】
また、分子鎖末端のカルボキル基は必ずしもCOOH基である必要はない。例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属やアミン等の塩基との塩を形成していてもよい。
【0041】
本発明の共重合体の分子量については、物性等を考慮し、その重量平均分子量は1000以上10万以下である。
【0042】
本発明の共重合体の共重合組成については、コハク酸イミド単位の割合が1〜33モル%であり、ヒドロキシカルボン酸単位の割合が67〜99モル%であることが好ましい。また、少なくとも一部のコハク酸イミド単位が開環している場合は、下記構造式(11)で表されるアスパラギン酸由来の構造を含む単位の割合が1〜33モル%であり、
【0043】
【化24】
Figure 0003984384
ヒドロキシカルボン酸単位が67〜99モル%であることが好ましい。この構造式(11)で表されるアスパラギン酸由来の構造を含む単位は、コハク酸イミド単位と、これを開環した後のポリアスパラギン酸単位とを総称するものである。
【0044】
次に、本発明の共重合体の製造方法について述べる。
【0045】
本発明に係る共重合体の製造方法の一つは、アスパラギン酸と、環状エステル化合物との混合物を加熱することを特徴とする。
【0046】
使用するアスパラギン酸は、光学活性のL−体やD−体であっても、DL−体であってもよい。高分子量の共重合体を得るためには、好ましくは、フマル酸やマレイン酸等の不純物の含有量が1重量%以下の高純度のものが好ましい。
【0047】
使用する環状エステル化合物は、ヒドロキシカルボン酸が脱水環化した化合物であり、好ましくは、ラクチド、グリコリド、カプロラクトン、プロピオラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトンであり、特に好ましくはラクチド及びグリコリドである。ラクチドとしては、L−ラクチド、D−ラクチド、DL−ラクチド、ラセミ体のラクチドのいずれも使用することができる。
【0048】
使用する環状エステル化合物にはヒドロキシ酸や水分が含まれていてもよい。ただし、その量は、環状エステル化合物に対して30モル%以下であることが好ましい。また、反応の際、反応速度や生成共重合体分子量調節を目的として、環状エステル化合物に対して所定量のヒドロキシ酸や水、アルコール類を添加しても良い。その量はやはり環状エステル化合物に対して30モル%以下であることが好ましい。
【0049】
アスパラギン酸に対する、環状エステル化合物の仕込組成比が高すぎると、アスパラギン酸がポリマー中に取り込まれにくく、PLA、PGA、PLGA、ポリカプロラクトン等のポリヒドロキシカルボン酸のみが生成しやすく、本発明の目的である共重合体を得ることが困難になる。一方、アスパラギン酸の仕込組成が高すぎると、乳酸単位及び/又はグリコール酸単位のブロック連鎖長が伸長しにくく、好ましくない。かかる点を考慮すると、アスパラギン酸と、環状エステル化合物との仕込モル組成は、およそ1:1〜1:50程度が好ましい。
【0050】
本発明の製造方法では、反応時に触媒を使用しなくとも、十分にポリマーを得ることが可能である。ただし、反応時間の短縮や、生成ポリマーの高分子量化を目的として、触媒を用いても良い。好ましい触媒としては、例えば、錫や亜鉛、チタン等の金属類、オクタン酸錫、四塩化錫等の金属塩化合物、有機酸、無機酸等が挙げられる。
【0051】
反応温度の管理は重要である。反応工程全体としては、120〜230℃の範囲内で加熱することが好ましい。ただし、反応初期には、アスパラギン酸からの脱水を促すため、少なくとも140℃以上の高温で反応させることが好ましい。その温度は160〜230℃がより好ましく、180℃〜220℃が特に好ましい。反応の後半には、生成してきたポリマーの分解を抑制するために、反応初期よりも温度を下げることが好ましい。その温度は120℃〜200℃がより好ましい。
【0052】
本発明の製造方法における重合反応機構は、従来から知られている、アスパラギン酸と乳酸及び/又はグリコール酸とを加熱脱水する方法(以降「直接脱水縮合法」という)の重合機構とは異なる。それは、本発明の方法と従来の方法とでは、反応の進行状況、生成ポリマー分子量、分子量分布、及び収率が異なることからも容易に認識できる。
【0053】
以下、本発明における好適な実施態様として、環状エステル化合物がラクチド及び/又はグリコリドである場合を例に挙げて説明する。
【0054】
反応を始めた初期には、まず80〜90℃付近に融点をもつグリコリド及び又はラクチドが溶融し、融解しないアスパラギン酸粉末が浮遊しながら撹拌されている状態である。やがて、加熱と共にアスパラギン酸が脱水しながら重合し始める。アスパラギン酸の脱水で生じた水によりラクチド及び/又はグリコリドが開環し、開環して生じたヒドロキシ酸が他のラクチド及び/又はグリコリドを開環させながら重合していく。やがて、アスパラギン酸又はアスパラギン酸の重合体と、ラクチド及び/又はグリコリドの重合体との共重合が起こることにより、粉末顆粒状だったアスパラギン酸又はアスパラギン酸重合体が可溶化されて透明になり、反応溶液が均一となる。次第に反応溶液の粘度が上昇していく。
【0055】
一方、アスパラギン酸と乳酸及び/又はグリコール酸とを反応させる直接脱水縮合法では、加熱を始めた反応初期からすぐにアスパラギン酸が乳酸及び/又はグリコール酸に溶解して、透明均一な溶液となる。このため、アスパラギン酸同士が重合することなく、乳酸及び/又はグリコール酸と共重合してしまい、ランダム性の高い共重合体となる。
【0056】
本発明の製造方法において、アスパラギン酸又はアスパラギン酸の重合体の大部分が消失して反応溶液が均一になった後の反応後半では、反応系を減圧にして脱水を促進することが好ましい。脱水を促進するため、水を共沸させる溶媒を加えて還流させ、流出液中から水分を除去する方法をとっても良い。
【0057】
反応時間は、反応温度、触媒使用の有無や所望とするポリマーの分子量によっても適宜決定されるが、およそ2時間〜100時間程度である。
【0058】
反応終了後、反応混合物から生成ポリマーを精製単離する場合、再沈澱法、分別沈澱法等の公知の精製単離方法を用いることができる。例えば、反応混合物をジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、水中に投入して不溶のポリマー沈澱を濾過や遠心分離等により回収することができる。本発明の製造方法は、直接脱水縮合法に比べ、生成するポリマーの分子量が高く、分子量分布も狭い。また、再沈澱等の精製によるポリマーの回収率が高い。
【0059】
本発明に係る共重合体の一つは、アスパラギン酸と、ラクチド及び/又はグリコリドとの混合物を加熱することにより得られるポリマーであり、従来の直接脱水縮合法で得られる共重合体とは構造が異なる。この構造の違いは、公知の分析手法で確認できる。すなわち、例えばNMRスペクトルにおいて、強度の小さなピークに違いがみられ、枝分かれの程度や、ブロック性において明かな違いが確認できるのである。
【0060】
また、両者の構造の違いは、その加水分解挙動の違いとなって現れる。例えば、アスパラギン酸由来単位とヒドロキシ酸由来単位との組成比が同じ1:5の共重合体において、本発明の共重合体の場合は、体温付近の温度で、人体と同じpHの水中において、比較的速やかに(数時間から数十時間で)ポリマー全体が水溶性となり、一旦消失するが、数日〜数十日にかけて再び水不溶性となって沈澱を生じる。一方、直接脱水縮合法で得られる共重合体の場合は、水溶性となる部分もあるが、数十日にわたって水不溶のポリマーが残存し続ける。
【0061】
また、両者の構造の違いは、溶解性の差となっても現れる。さらに、分子量分布においても違いがみられる。
【0062】
これらの構造の違いはとりもなおさず製造方法の違いによる。本発明の共重合体の構造は、その独特な製造方法に由来するものである。
【0063】
さらに本発明は、アスパラギン酸と、ラクチド及び/又はグリコリドとの混合物を加熱することにより得られるポリマーのコハク酸イミド単位を加水分解により開環して得られる、繰り返し構造単位として、少なくともアスパラギン酸単位と、乳酸単位及び/又はグリコール酸単位とをもつ共重合体をも含む(以降、この共重合体を「加水分解型共重合体」という)。この加水分解型共重合体は、例えば一例として下記構造式(13)で表される構造を有する重合体である。
【0064】
【化25】
Figure 0003984384
(式中、p、r、sは、3つ同時に0になることのない0又は正の整数であり、qは0又は正の整数であり、(p+r+s)/(q+1)=2〜100であり、Rは水素原子又はメチル基であり、Mは金属又は水素原子である。)
【0065】
構造式(14)と構造式(15)との違いはイミド環の開環の有無である。加水分解の程度によって、開環構造と未開環構造との組成比を変えることができ、そのいずれの組成比の共重合体も本発明の範囲内である。
【0066】
本発明の共重合体の構造に含まれるアスパラギン酸単位は、α−アミド型単量体単位及びβ−アミド型単量体単位が混在し得るものであり、両者の比は特に限定されない。
【0067】
加水分解型共重合体を製造する場合、上記製造法で得られたコハク酸イミド単位をもつ共重合体を水又は水易溶性溶媒と水との混合溶媒の中に懸濁又は溶解させ、単に加温するか、アルカリ水溶液等を加えることによって製造すればよい。水易溶性溶媒とは、少なくとも水を5重量%以上溶かすことのできる溶媒のことで、例えばメタノールやエタノール等のアルコール類、アセトン、アセトニトリル等が挙げられる。アルカリを加える場合、過剰のアルカリを加えすぎると共重合体の分子量が低下するので注意が必要である。
【0068】
加水分解に用いるアルカリ水溶液には公知のものが使用できる。例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、アンモニア水溶液、炭酸ナトリウム水溶液等が挙げられる。
【0069】
加水分解は酸性条件下では進みにくい。一方強アルカリ条件下ではポリマー鎖の切断が起こりやすく好ましくない。係る点を考慮すると、およそpH6〜11の範囲であることが好ましい。
【0070】
一般に知られているPLAやPLGAが数千程度の低分子量のオリゴマーである場合、シロップ状か、かなりベタつく固体であるのに対し、本発明の共重合体は、低分子量でも室温(常温)でべたつきの少ない固体であり扱い易い。ガラス転移点(Tg)は40℃以上(およそ40〜60℃程度)であり、比較的低温(例えば100℃以下)で容易に溶融する。しかも溶融粘度は既存のPLAやPLGA等よりも低く、溶融して薬剤を混合するのに都合がよい。
【0071】
本発明の共重合体は、種々の有機溶剤に容易に溶解し、比較的低温で溶融成形が容易なため、マイクロスフェアやマイクロカプセル等とすることができ、徐放性薬剤の基材用樹脂として有用である。
【0072】
すなわち、本発明の共重合体と、薬剤とから構成される徐放性薬剤を得ることができる。この徐放性薬剤は、共重合体により外相を構成し、内相として薬剤を含むカプセル状の徐放性薬剤であってもよいし、本発明の共重合体と薬剤との混合物で構成されるスフェア状の形態を有するの徐放性薬剤であってもよい。
【0073】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明の内容を詳細に説明する。なお、実施例中に示した物性値等は以下のようにして測定した。
【0074】
(1)ポリマーの重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)
試料をジメチルホルムアミドに溶解し(濃度0.5重量%)、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により、ポリマーの重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を求めた。標準物質にはポリスチレンを用いた。
【0075】
(2)赤外吸収(IR)スペクトル
ポリマー試料粉体をKBr粉末とよく混合し、脱気しながら加圧することにより錠剤を成形し、FT−IR装置(フーリエ変換型積算型赤外分光装置)にてスペクトルを測定した。
【0076】
(3)核磁気共鳴(NMR)スペクトル
重水素化ジメチルスルホキシドに試料を溶解し(濃度7重量%)、核磁気共鳴測定装置を使用し、室温にてH−NMR(400MHz)およびC−NMRスペクトル(100MHz)を測定した。
【0077】
(4)示差走査熱量計(DSC)測定
示差走査型熱量計により、昇温速度10℃/分で、−50℃〜250℃の温度範囲で測定した。
【0078】
(5)ポリマーの溶解性テスト
ポリマー試料200mgを種々の溶媒2ml中に入れ、40〜50℃に加温しながら撹拌し、再び室温まで冷却してポリマーの溶解性を調べた。完溶、半溶、膨潤、不溶の4段階で評価した。
【0079】
<実施例1>
撹拌装置、脱気口をつけたガラス製反応器にL−アスパラギン酸13.3g(0.1モル)及びL−ラクチド28.8g(0.2モル)を装入した。この場合、仕込みのアスパラギン酸と乳酸とのモル比は1:4になる。反応器を180℃のオイルバスに浸漬し、撹拌した。融点98℃のラクチドが溶融し、不溶のアスパラギン酸の白色粉末が浮遊した状態で加熱を続行した。30分〜1時間程度で粉末は次第に消滅し、黄色の反応液の粘度が上昇した。加熱開始から1時間半後から、反応系を徐々に減圧にし、2時間後には1mmHgに達した。さらに2時間加熱を続けた後、反応器をオイルバスから取り出し、反応溶液を取り出して冷却固化させた。得られた薄黄褐色透明の固体を粉砕し、粉末状ポリマーを得た。Mwは6500、Mw/Mnは7.4であった。
【0080】
このポリマー10gをDMF20gに溶解した後、水400ml中に投入し、生成した沈澱を回収することにより精製した。精製収率は81%であった。精製後のポリマーのMwは9400、Mw/Mnは1.22であった。
【0081】
得られた精製ポリマーのIR測定を行ったところ、3420cm-1のブロードな吸収の他、3000cm-1、2950cm-1、1723cm-1、1720cm-1、1460cm-1、1390cm-1、1360cm-1、1210cm-1、1190cm-1、1140cm-1、1100cm-1、1050cm-1に特徴的な吸収ピークがみられた。
【0082】
精製ポリマーのH−NMR測定を行ったところ、1.3〜1.6ppmに乳酸単位のメチルプロトン、2.5〜3.3ppmにコハク酸イミド単位のメチレンプロトンに由来するピーク、5.0ppm付近に乳酸単位のメチンプロトンに由来するピーク、5.2ppm付近にコハク酸イミド単位のメチンプロトンに由来するピークが認められた。また、8.1〜8.8ppmに構造式(14)、(15)のアミドプロトンに由来するピークが確認できた。
【0083】
【化26】
Figure 0003984384
【0084】
【化27】
Figure 0003984384
【0085】
また、4.6〜4.7ppmには、上記構造式(14)、(15)のメチンプロトンに由来するピークが確認できた。
【0086】
その他、H−NMRスペクトル中には、1.0ppm、3.7ppm、4.0ppm、4.2ppm、5.4ppm、5.6ppm、7.2ppmに、ポリマー末端基や、枝分かれ部分に由来するピーク等が、ピーク強度が小さいながらも存在した。
【0087】
NMR測定の結果から、ポリマー中のアスパラギン酸由来単位(アスパラギン酸単位とコハク酸イミド単位)と乳酸単位との組成比は、1:3.9であった。
【0088】
NMRスペクトルや、IRスペクトルの解析により、得られたポリマーの構造は概ね下記構造式(16)のようであると推定できた。
【0089】
【化28】
Figure 0003984384
(式中、p、q、r、sは0又は正の整数である。)
【0090】
ただし、構造式(18)中のコハク酸イミド単位の一部は開環し、下記構造式(17)又は(18)の構造となっているものが含まれると推定した。
【0091】
【化29】
Figure 0003984384
【0092】
【化30】
Figure 0003984384
(両式中、m、nは0又は正の整数である。)
【0093】
また、得られたポリマーは常温でべたつきのない固体であり、DSC測定により、41℃においてガラス転移点を示した。結晶の融解を示す吸熱は見られず、ポリマーが非結晶性であることを示していた。
【0094】
ポリマーの溶剤への溶解性は以下の通りであった。
【0095】
完溶:ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸エチル
半溶(一部不溶物残る):クロロホルム
膨潤(又はガム状):メタノール、エタノール、2−プロパノール
不溶:水、トルエン。
【0096】
試験管に、得られたポリマー粉末を入れ、十分量のpH7.3の燐酸緩衝溶液を加え、37℃の恒温槽中で保管した。数時間から20時間以内でポリマー粉末は消失し、試験管内の溶液は微黄色の透明となった。ポリマー構造中のイミド環が加水分解され、カルボキシル基が生成したため、ポリマーが水溶性になったためであった。
【0097】
<参考例1>
L−ラクチドのみを、実施例1と同様に180℃で加熱したところ、微黄色透明の溶液となるのみで、粘度は上昇しなかった。冷却して固化した固体を回収して調べたところ、わずかに乳酸オリゴマー(2〜10量体程度)を数重量%程度含むL−ラクチドであった。
【0098】
<参考例2>
アスパラギン酸のみを、実施例1と同様に180℃で加熱したところ、4時間程度ではほとんど変化せず、アスパラギン酸の粉末を回収した。
【0099】
そこで、アスパラギン酸を220℃で2時間加熱したところ、褐色の粉末を得た。NMRやIR測定により、この褐色粉末がポリコハク酸イミドであることを確認した。Mwは15,000であった。
【0100】
このポリコハク酸イミドはDSC測定において、明確な融解吸熱ピークを示さず、250℃以上において熱分解するのみであった。
【0101】
得られたポリコハク酸イミドの溶剤への溶解性は以下の通りであった。
【0102】
半溶(一部不溶物残る):ジメチルホルムアミド
不溶:クロロホルム、テトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリル、エタノール、メタノール、水、トルエン。
【0103】
<実施例2>
撹拌装置、脱気口をつけたガラス製反応器にL−アスパラギン酸13.3g(0.1モル)及びL−ラクチド36.0g(0.25モル)を装入した。この場合、仕込みのアスパラギン酸と乳酸とのモル比は1:5になる。反応器を180℃のオイルバスに浸漬し、撹拌した。融点98℃のラクチドが溶融し、不溶のアスパラギン酸の白色粉末が浮遊した状態で加熱を続行した。30分〜1時間程度で粉末は次第に消滅し、黄色の反応液の粘度が上昇した。加熱開始から1時間半後から、反応系を徐々に減圧にし、2時間後には1mmHgに達した。さらに2時間加熱を続けた後、オイルバスの温度を160℃に下げ、さらに15時間反応を続けた。反応器をオイルバスから取り出し、反応溶液を取り出して冷却固化させた。得られた薄黄褐色透明の固体を粉砕し、粉末状ポリマーを得た。Mwは14700、Mw/Mnは1.38であった。
【0104】
このポリマー10gをDMF20gに溶解した後、水400ml中に投入し、生成した沈澱を回収することにより精製した。精製収率は94%であった。精製後のポリマーのMwは16300、Mw/Mnは1.37であった。
【0105】
NMR測定の結果から、ポリマー中のアスパラギン酸由来単位と乳酸単位との組成比は、1:5.1であった。
【0106】
DSC測定において、52℃のガラス転移点が観測された。結晶融解の吸熱ピークは見られず、非晶性ポリマーであることが示された。
【0107】
ポリマーの溶剤への溶解性は以下の通りであった。
【0108】
完溶:ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸エチル
半溶(一部不溶物残る):クロロホルム
膨潤(又はガム状):メタノール、エタノール
不溶:水、トルエン。
【0109】
試験管に、得られたポリマー粉末を入れ、十分量のpH7.3の燐酸緩衝溶液を加え、37℃の恒温槽中で保管した。数時間から20時間以内でポリマー粉末は消失し、試験管内の溶液は微黄色の透明となった。実施例1と同様に、ポリマー構造中のイミド環が加水分解してカルボキシル基を生成し、ポリマーが水溶性となった。さらにそのまま試験管を恒温層に放置して観察を続行したところ、12日経過したあたりから液が白濁し始め、15日経過頃から白色沈澱が見られた。水溶性のアスパラギン酸単位が分解により切断され、ポリマー中の乳酸単位の組成が高まったため、再び水不溶性となったものであった。19日経過した時点で液を遠心分離して白色沈澱物を回収したところ、試験に供したポリマーの25重量%にあたる白色粉末を得た。分子量をGPCにて測定したところ、Mwは12300、Mw/Mnは1.34であった。
【0110】
<実施例3>
撹拌装置、脱気口をつけたガラス製反応器にL−アスパラギン酸106.5g(0.8モル)及びL−ラクチド288.2g(2.0モル)を装入した。この場合、仕込みのアスパラギン酸と乳酸とのモル比は1:5になる。反応器を180℃のオイルバスに浸漬し、撹拌した。融点98℃のラクチドが溶融し、不溶のアスパラギン酸の白色粉末が浮遊した状態で加熱を続行した。30分〜1時間程度で粉末は次第に消滅し、黄色の反応液の粘度が上昇した。加熱開始から2時間半後に反応系を徐々に減圧にし、3時間後には1mmHgに達した。さらに11時間加熱を続けた後、反応器をオイルバスから取り出し、反応溶液を取り出して冷却固化させた。得られた薄黄褐色透明の固体を粉砕し、粉末状ポリマーを得た。Mwは26000、Mw/Mnは1.32であった。
【0111】
NMR測定の結果から、ポリマー中のアスパラギン酸由来単位と乳酸単位との組成比は、1:5.0であった。
【0112】
DSC測定において、52℃のガラス転移点が観測された。結晶融解の吸熱ピークは見られず、非晶性ポリマーであることが示された。
【0113】
<実施例4>
撹拌装置、脱気口をつけたガラス製反応器にL−アスパラギン酸6.7g(0.05モル)及びL−ラクチド36.0g(0.25モル)を装入した。この場合、仕込みのアスパラギン酸と乳酸とのモル比は1:10になる。反応器を180℃のオイルバスに浸漬し、撹拌した。融点98℃のラクチドが溶融し、不溶のアスパラギン酸の白色粉末が浮遊した状態で加熱を続行した。1時間程度で粉末は次第に消滅し、黄色の反応液の粘度が上昇した。加熱開始から2時間半後から、反応系を徐々に減圧にし、3時間後には1mmHgに達した。オイルバスの温度を160℃に下げ、さらに6時間反応を続けた。この時点で反応液をサンプリングし、分子量を測定したところ、Mwは8800であった。さらに反応を9時間継続した後、反応器をオイルバスから取り出し、反応溶液を取り出して冷却固化させた。得られた薄黄褐色透明の固体を粉砕し、粉末状ポリマーを得た。Mwは17000、Mw/Mnは1.39であった。
【0114】
このポリマー10gをDMF20gに溶解した後、水400ml中に投入し、生成した沈澱を回収することにより精製した。精製収率は96%であった。精製後のポリマーのMwは17800、Mw/Mnは1.35であった。
【0115】
NMR測定の結果から、ポリマー中のアスパラギン酸由来単位と乳酸単位との組成比は、1:10.4であった。
【0116】
DSC測定において、49℃にガラス転移点が観測された。
【0117】
ポリマーの溶剤への溶解性は以下の通りであった。
【0118】
完溶:ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸エチル、クロロホルム、熱トルエン
膨潤(又はガム状):メタノール、エタノール
不溶:水。
【0119】
<実施例5>
撹拌装置、脱気口をつけたガラス製反応器にL−アスパラギン酸13.3g(0.1モル)及びL−ラクチド144.1g(1.0モル)を装入した。この場合、仕込みのアスパラギン酸と乳酸とのモル比は1:20になる。反応器を180℃のオイルバスに浸漬し、撹拌した。融点98℃のラクチドが溶融し、不溶のアスパラギン酸の白色粉末が浮遊した状態で加熱を続行した。30分〜1時間程度で粉末は次第に消滅し、黄色の反応液の粘度が上昇した。加熱開始から2時間半後に反応系を徐々に減圧にし、3時間後には1mmHgに達した。さらに12時間加熱を続けた後、反応器をオイルバスから取り出し、反応溶液を取り出して冷却固化させた。得られた薄黄褐色透明の固体を粉砕し、粉末状ポリマーを得た。Mwは21000、Mw/Mnは1.26であった。
【0120】
このポリマー10gをDMF20gに溶解した後、水400ml中に投入し、生成した沈澱を回収することにより精製した。精製収率は95%であった。精製後のポリマーのMwは21000、Mw/Mnは1.25であった。
【0121】
NMR測定の結果から、ポリマー中のアスパラギン酸由来単位と乳酸単位との組成比は、1:19.5であった。
【0122】
DSC測定において、50℃のガラス転移点が観測された。結晶融解の吸熱ピークは見られず、非晶性ポリマーであることが示された。
【0123】
ポリマーの溶剤への溶解性は以下の通りであった。
【0124】
完溶:ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸エチル、熱トルエン
膨潤(又はガム状):メタノール、エタノール
不溶:水。
【0125】
5本の試験管に、得られたポリマー粉末を入れ、十分量のpH7.3の燐酸緩衝溶液を加え、37℃の恒温槽中で加水分解を行った。1日目、5日目、9日目、19日目、31日目にそれぞれ試験管を1本ずつ取り出し、遠心分離により不溶性ポリマー粉末を回収、乾燥した、1日目、5日目、9日目、19日目、31日目に回収されたポリマーの重量は、それぞれ63%、61%、70%、75%45%であり、Mwはそれぞれ、24000、26000、34000、17000、9000であった。
【0126】
<比較例1>
撹拌装置、脱気口をつけたガラス製反応器にL−乳酸の90%水溶液を200g装入し、反応器を180℃のオイルバスに浸漬し、撹拌した。水の留出がほぼ終わった時点で反応系を徐々に減圧にした(20mmHg)。さらに5時間加熱を続けた後、反応物を少量サンプリングしたところ、Mw9500、ガラス転移点18℃の水あめ状オリゴマーであった。さらに、減圧下(20mmHg)、160℃で反応を続行し、20時間後に反応器をオイルバスから取り出し、反応溶液を取り出して冷却固化させた。得られたポリマーは、Mw17000、ガラス転移点39℃、融点136℃のポリ乳酸であった。
【0127】
得られたポリ乳酸の溶剤への溶解性は以下の通りであった。
【0128】
完溶:ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、クロロホルム
不溶:アセトン、トルエン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸エチル、エタノール、メタノール、2−プロパノール、水。
【0129】
5本の試験管に、得られたポリマー粉末を入れ、十分量のpH7.3の燐酸緩衝溶液を加え、37℃の恒温槽中で加水分解を行った。1日目、5日目、9日目、19日目、31日目にそれぞれ試験管を1本ずつ取り出し、遠心分離により不溶性ポリマー粉末を回収、乾燥した、1日目、5日目、9日目、19日目、31日目に回収されたポリマーの重量は、それぞれ97%、96%、92%、92%、90%であり、Mwはそれぞれ、17000、17200、16800、17000、16500であった。
【0130】
<実施例6>
実施例1で得られたポリマーの粉末4.21gを、蒸留水150mlに懸濁した。液のpHは4であった。撹拌し、液のpHを見ながら、そこへ1Nの水酸化ナトリウム水溶液をゆっくり滴下していった。水酸化ナトリウム水溶液を滴下する度に、液のpHは4から9に上がり、すぐに4に低下した。水酸化ナトリウム水溶液の滴下量が増すにつれ、pHの戻りが遅くなる傾向を示した。液中に懸濁していたポリマー粒子が次第に可溶化していき、水酸化ナトリウム水溶液の滴下量が0.4gに達したとき、ポリマー粒子はほとんど消滅し、液は微黄色透明となった。pHは6.2であった。この液を濃縮乾固し、得られた黄褐色固体をメタノールに溶解し、アセトニトリル中に投入して再沈澱させて白色ポリマー固体を回収した。得られたポリマーのMwは9000、Mw/Mnは1.2であった。
【0131】
このポリマーのIRスペクトルには、実施例1のポリマーのIRスペクトルに見られた吸収ピークに加え、1620cm-1にアミド基構造に特徴的な強い吸収ピークが観察された。
【0132】
<実施例7>
実施例3で得られた共重合体0.5gを、アセトニトリル5mlに溶解し、レシチンを0.1%含有させた綿実油50ml中に投入し、ホモジナイザーにより15000回転で3分間攪拌してオイルインオイル(o/o)エマルジョンを調製した。このエマルジョンを入れた容器内を徐々に減圧にし、40℃で2時間攪拌することにより、アセトニトリルを除去した。オイルを室温、常圧に戻し、ヘキサン25mlを加え、沈殿したポリマー粒子を濾過により回収し、さらにヘキサンで粒子をよく洗浄した後乾燥した。顕微鏡観察により、ポリマー粒子は直径数μm〜数十μmのマイクロスフェアであることを確認した。
【0133】
<実施例8>
実施例5で得られた共重合体1.5gを、クロロホルム10mlに溶解した。水1mlにアセトアミノフェン100mgを溶解したものをこのクロロホルム溶液中に投入し、ホモジナイザーにより12000回転で3分間攪拌してエマルジョンを調製した。重合度約500のポリビニルアルコールの1%水溶液200mlを攪拌しながら、そこへ上記エマルジョンをピペットでゆっくり滴下した。得られたエマルジョンが入った容器を減圧にしてクロロホルムを除去した。沈殿してきたポリマー粒子を濾過により回収し、水洗、減圧乾燥することにより目的とする薬剤を含有したマイクロスフェアを得た。
【0134】
【発明の効果】
以上の通り、本発明により、繰り返し構造単位として、コハク酸イミド単位及び/又はアスパラギン酸単位と、乳酸単位及び/又はグリコール酸単位とをもつ新規共重合体及びその製造方法が提供される。この共重合体は、常温で固体であり、比較的低融点のポリマーであり、特異な加水分解挙動を示し、新規生体吸収性ポリマーとして、例えば徐放性薬剤用の基材として有用である。
【0135】
また、本発明の製造方法により、高分子量で分子量分布の狭い新規共重合体を高収率で得ることができる。

Claims (9)

  1. 下記構造式(12)
    Figure 0003984384
    (式中、p、r、sは、3つ同時に0になることのない0又は1以上1000以下の整数であり、qは1以上100以下の整数であり、(p+r+s)/(q+1)=2〜100であり、Rは水素原子又はメチル基である。)
    で表される、重量平均分子量1000以上10万以下の共重合体。
  2. 請求項1の共重合体のイミド環を加水分解開環して得られる、下記構造式(13)
    Figure 0003984384
    (式中、p、r、sは、3つ同時に0になることのない0又は1以上1000以下の整数であり、qは1以上100以下の整数であり、(p+r+s)/(q+1)=2〜100であり、Rは水素原子又はメチル基であり、Mは金属又は水素原子である。)
    で表される共重合体。
  3. Tgが40℃以上であり、実質的に融点を示さない非晶性である請求項1又は2記載の共重合体。
  4. アスパラギン酸と環状エステル化合物との混合物を加熱して、重合させることを特徴とする請求項1記載の共重合体の製造方法。
  5. 重合工程で得た共重合体のコハク酸イミド単位の少なくとも一部を加水分解により開環し、少なくともアスパラギン酸単位と、ヒドロキシカルボン酸単位とを併せ持つ共重合体を得る加水分解工程をさらに含む請求項4記載の共重合体の製造方法。
  6. アスパラギン酸と環状エステル化合物との混合モル比が1/1〜1/50である請求項4又は5記載の共重合体の製造方法。
  7. 環状エステル化合物が、ラクチド及び/又はグリコリドである請求項4〜6の何れか一項記載の共重合体の製造方法。
  8. 重合工程において、アスパラギン酸と、ラクチド及び/又はグリコリドとの混合物を120〜230℃に加熱して重合させる請求項7記載の共重合体の製造方法。
  9. 加水分解工程において、pH6〜11の条件下で加水分解を行う請求項5記載の共重合体の製造方法。
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