JP3983314B2 - 液晶電気光学装置 - Google Patents
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Description
【発明の利用分野】
本明細書で開示する発明は、良好な電気特性と良好なコントラストを持ち、画面全体に明るく均一な表示が得られる液晶電気光学装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶電気光学装置は、一般的に有機物材料である液晶材料を、一対の基板間に挟持し、前記一対の基板に形成された電極より発せられる電界の強度を変化させることで、液晶材料を進行する光を変調し、その結果を光量の変化として認識すできるような構成となっていることを、動作、表示の基本原理としている。
【0003】
従って、前記電極に特定の電気信号を印加すれば、電気信号を視覚的に認識可能な状態として表示させることが可能である。さらに前記電極を複数組み合わせ、画像データを印加すれば所望の画像を形成することができる。
【0004】
この従来より用いられている液晶電気光学装置における光の変調は、前記電界を基板に対して垂直に印加し、さらにその電界強度を変化させることで、一般的に棒状の形状を有する前記液晶分子の配向方向を、基板と平行、あるいは基板に垂直と変化させることで実現していた。一般的にこの場合、液晶材料の示す特徴の一つである、光学的異方性を利用して光を変調させるため、前記装置には偏光板を配置し、入射光を直線偏光となるようにしていた。
【0005】
しかし、このような動作方法をとる液晶電気光学装置は、表示面に対して垂直な方向から見たときは正常な表示状態でも、斜めから見ると表示が暗く、不鮮明になり、さらにカラー表示であれば変色してしまう現象が見られた。
【0006】
この現象は、液晶電気光学装置からの出力光と液晶分子の配向方向の関係からみると、次のように説明される。
【0007】
液晶分子を基板に垂直な方向に配する構成を採用した場合、表示に際して、長軸方向をそろえて配向しているが、位置的にはランダムな液晶分子の、垂直方向面より出力光を観測することになる。
【0008】
この構成において、基板に垂直な方向から表示を見た場合と、垂直方向から少しずれた方向から見た場合を比較すると、後者の視点からの表示は、液晶分子の長軸に対して少し傾いた視点からのものとなる。このことは、出力光の観測面積が表示を見る方向により大きく異なることを示している。
【0009】
このため、観察者に対する視野特性は、前記垂直方向からずれるほど大きく劣化することになる。
【0010】
一方別の問題として、上記構成の液晶電気光学装置の場合、液晶材料を特定の方向に配向させるため、基板には何らかの配向処理を施すのが通常であるが、基板近傍では強い配向力が働いているため、電界印加時も基板近傍の液晶分子は配向状態を維持するか、配向状態を変化させたとしても装置中間部に比べ、その度合いははるかに小さい。このため、この部分では光は散乱され表示に影響を与える。
【0011】
このような問題を解決する方法として、上記従来の液晶電気光学装置の動作モードと異なり、液晶分子が基板に平行な方向にのみ回転することにより、光学特性を変化させる動作モードが提案されている。その詳細は、特公昭63−21907号公報等に示されている。以下、この動作モードをIPSモードと称する。
【0012】
IPSモードの液晶電気光学装置の特徴は、液晶材料を駆動するために対向基板側に設けられる対向電極が、画素電極が設けられている基板側に配置されることである。すなわち、対向する一対の基板の一方に、画素電極および対向電極が配置される。
【0013】
そして、この同一基板上に形成された一対の電極間において電界を形成する。この電界は、基板および液晶層に平行な方向にその主な成分を有している。この電界でもって、液晶分子を基板に平行な面内において回転させる。従って光学的に一軸媒体である液晶材料は、前記電界により光軸を変化させ、複屈折効果が変化することにより、液晶層を透過する光の状態が変化し、表示が可能になる。
【0014】
上記のようにIPSモードは、動作の過程で液晶分子が基板に対し垂直になることがない。従って、動作の過程で液晶分子が垂直に配向することに起因していた前述の視野角の問題を解決することができる。
【0015】
IPSモードは、薄膜トランジスタ等のスイッチング素子が画素電極に接続され、アクティブマトリクス駆動を行う。
【0016】
しかし、この構成(IPSモード)の第一の欠点として、暗表示、つまり、電界OFF状態の時の液晶配向の問題がある。一般に電界OFF状態の時において、液晶は、基板全体において一様に整列していることが、望ましい。
【0017】
しかし、現実には、ラビングの状況により、配向欠陥が生じ、基板全体にわたる一様な配向は得られにくい。そのため、実際の黒の表示において、均一な黒表示は得られにくい。これは、基板の大型化の際に、無視できない問題となってくる。
【0018】
また、IPSモードの第二の欠点として、その開口率の低さが挙げられる。IPSモードにおいては、同一平面上に形成された一対の電極間に形成される電界によって液晶を制御する。従って、電極の上方およびその近傍に存在する液晶を制御することはできない。このため電極の面積の分は確実に開口率が低下してしまう。
【0019】
特に、IPSモードでは光の偏光を用いて、明暗を表示するため、偏光板は不可欠な条件であり、二枚の偏光板が、更に光透過率を下げる原因となっている。
【0020】
このような偏光板による光透過率の低下を改善した液晶電気光学装置としては、分散型液晶電気光学装置が知られている。分散型液晶電気光学装置は、偏光板や配向を必要としないという特徴を有している。
【0021】
分散型液晶の構成は、透光性の固相ポリマーがネマティク、コレステリックあるいはスメクティクの液晶を粒状または海綿状に保持してことにある。
【0022】
この液晶電気光学装置の作製方法としては、液晶のカプセル化によりポリマー中に液晶を分散させ、そのポリマーをフィルムあるいは基板上に薄膜として形成する方法が知られている。ここで、カプセル化物質としてはゼラチン、アラビアゴム、ポリビニルアルコール等が提案されている。
【0023】
この様にカプセル化された液晶を分散して内部に有するポリマーをフィルムあるいは薄膜化したものとしては、前述の例以外に、いくつか知られている。例えば、液晶材料がエポキシ樹脂中に分散したもの、また、液晶と光硬化性物質との相分離を利用したもの、3次元につながったポリマー中に液晶を含侵させたものなどが知られている。本明細書においては、これらの液晶電気光学装置を総称して分散型液晶電気光学装置と言う。
【0024】
上記分散型液晶電気光学装置の動作原理を以下に示す。まず、分散型液晶電気光学装置においては、電界が無い場合(無電界時)には液晶は特定の方向に配列せず様々な方向を向いている。この状態においては、液晶の屈折率が、液晶を包んでいるポリマーの屈折率とずれることになり、光は散乱される。そして、光の透過が妨げられ、白濁状態となる。このため、液晶電気光学装置の暗状態が実現される。
【0025】
ここで、液晶分子に縦方向電界をかける場合と、液晶分子の長軸は基板に対し垂直になる。このため、液晶の長軸方向の屈折率とポリマー樹脂の屈折率とが等しくなるように調整してあれば、屈折率の不均一性はなくなり、光散乱が抑えられる。この状態においては、液晶層を光が透過し、液晶電気光学装置の明状態が実現される。
【0026】
このように、この電気光学効果は偏光板を必要としないため光の有効利用が可能となる。
【0027】
しかし、現状の分散型の液晶電気光学装置においては、無電界時の光の散乱の度合いにより不透明度が決定されるため、コントラストの大きな表示ができないという問題がある。この点では表示の明度で問題がある、偏光板を利用した液晶電気光学装置は、未だ優位性を保持している。
【0028】
さらに別の問題として、明状態において、液晶分子の長軸が基板面に対して垂直な方向にそろう状態となり、分散型液晶電気光学装置においても前述した視野角の問題は解決されていない。
【0029】
【発明が解決しようとする課題】
以上述べたように、IPSモードで動作する液晶電気光学装置は、視野角が広いという特徴を有している。しかし、開口率の向上が困難、偏光板を使用により画面が暗くなる、等の欠点を有している。この開口率の向上には、さらなる微細加工技術の導入と画像データ保持のための液晶材等の改良が必要となる。
【0030】
これに対して分散型の液晶電気光学装置は、偏光板を必要とせず入射光をそのまま出力でき光の有効利用が可能であるという特徴がある。しかし、上記のように高いコントラストを実現しにくく、さらに視野角が狭いという欠点を有している。
【0031】
本明細書で開示する発明は、上記の欠点が無くし、かつ上記の有意性、即ちIPSモードの高視野角特性、及び分散型液晶電気光学装置の光の有効利用、という、2つの特徴を兼ね備えた液晶電気光学装置を提供するものである。
【0032】
【課題を解決するための手段】
本明細書で開示する発明は、横方向電界により液晶分子の配列を制御し、光の透過と散乱により表示を実現する分散型の液晶表示装置に適用したことを特徴とする。特に分散型の液晶層を構成する高分子バインダとして、屈折率に異方性を有する高分子材料を用いることを特徴とする。
【0033】
具体的には、液晶の分子長軸方向の屈折率と、電界印加時の液晶分子長軸方向の高分子バインダの屈折率を一致させ、かつ、これと直交方向の屈折率を液晶分子短軸方向の屈折率と一致させる。このように高分子材料として、屈折率の異なる一軸性のものを使用する。
【0034】
このような構成とすることで、複屈折効果を利用した視野角の向上と、無電界時の散乱効果を高めることによるコントラストの向上および、偏光板を必要としないことによる分散型液晶表示装置が有する明るい表示とを兼ね備えた液晶電気光学装置を得ることができる。
【0035】
以下に本明細書で開示する発明の構成を示す。本明細書で開示する発明の一つは、
液晶層と、
前記液晶層に対して基板に平行な方向を有する電界を印加する手段と、
を有し、
前記液晶層は、高分子材料中に液晶材料が分散されて保持されている構成を有していることを特徴とする。
【0036】
他の発明の構成は、
基板上に配置された液晶層と、
前記液晶層に対して基板に平行な方向に印加される電界によって入射光の透過と散乱のモードが選択されることを特徴とする。
【0037】
他の発明の構成は、
液晶層と、
前記液晶層に対して基板に平行な方向に電界を印加する手段と、
を有し、
前記液晶層は、屈折率に異方性を有する高分子材料中に液晶材料が分散されて保持された構成を有していることを特徴とする。
【0038】
他の発明の構成は、
少なくても一方が透明な2枚の基板と、
前記基板間に配置された液晶層と、
前記液晶層に対して基板に平行な方向に印加される電界によって入射光の透過と散乱のモードが選択されることを特徴とする。
【0039】
他の発明の構成は、
液晶層と、
前記液晶層に対して基板に平行な方向に電界を印加する手段と、
を有し、
前記液晶層は、電界印加時の配向ベクトルの方向における屈折率が液晶分子の長軸方向屈折率と一致し、この時、液晶の配向ベクトルと直交する方向の屈折率が、液晶の短軸方向の屈折率と一致する高分子材料からなり、
前記高分子材料中には液晶材料が分散されて保持されていることを特徴とする。
【0040】
他の発明の構成は、
液晶層と、
前記液晶層に対して基板に平行な方向に電界を印加する手段と、
を有し、
前記液晶層は、電界印加時の配向ベクトルの方向における屈折率が液晶分子の長軸方向屈折率と概略一致し、この時、液晶の配向ベクトルと直交する方向の屈折率が、液晶の短軸方向の屈折率と概略一致する高分子材料からなり、
前記高分子材料中には、液晶材料が分散されて保持されていることを特徴とする。
【0041】
本明細書に開示する発明を利用した構成の一例を図1及び図2に示す。図1に示すのは、アクティブマトリクス型の液晶電気光学装置のアクティブマトリクス回路が形成された基板側の一部を上面から見た概略図である。図2は図1をA−A’で切った断面を示す概略図である。
【0042】
図1及び図2に示す構成においては、薄膜トランジスタ(TFT)として、逆スタガー型の構成を採用した場合の例が示されている。
【0043】
図1及ぶ図2に示す構成において、(101)は一対の基板、(102)は下地酸化珪素膜、(103)はゲイト電極、(104)はコモン電極(共通電極)、(105)はゲイト絶縁膜(酸化珪素膜)、(106)は活性層を構成する島状の珪素膜(a−Si膜またはp−Si膜)、(107)はソース電極(およびソース線)、(108)はドレイン電極、(109)は層間絶縁膜である。
【0044】
また、(110)は液晶層であり、分散された液晶(113)(多数の液晶分子の集合でなる)を保持したポリマー材料(高分子材料)で構成されている。
【0045】
図1及び図2に示す構成においては、ドレイン電極(108)とコモン電極(104)との間に基板に平行な電界(液晶層(110)の層に平行な電界)を形成し、この電界により、液晶材料(113)の電気光学的な特性を変化させる。
【0046】
即ち、無電界時においては、各液晶分子がランダムな方向にその長軸を有した状態とし、電界印加時にその電界に従って液晶の分子長軸が一斉にそろった方向に配置させる。この液晶分子の分子長軸がランダムな場合とそろった場合とで、液晶層に入射する光の透過と散乱とを選択し表示を行う。
【0047】
また、液晶層(110)を構成する高分子材料の屈折率は、電界印加時の配向ベクトルの方向に、液晶分子の長軸方向の屈折率(異常光屈折率)と一致させる。あるいは概略一致させるようにする。かつ、この時、短軸方向と同じ方向の高分子バインダの屈折率(正常光屈折率)は、液晶分子の短軸方向の屈折率と一致させる。あるいは概略一致させるようにする。
【0048】
上記第一、第二の基板(101)には、透光性を有し、かつ外力に対しある程度の強度を有する材料、例えばガラス、石英などの無機材料などを用いることができる。
【0049】
TFT等を形成する基板(以下TFT基板とする)には、無アルカリガラスや石英ガラスが用いられる。また、液晶電気光学装置の軽量化を目的とする場合、複屈折性の少ないフィルム、例えばPES(ポリエチレンサルフェート)などを用いることもできる。
【0050】
また、液晶材料の駆動方法としてはマルチプレックス方式でもアクティブマトリクス方式でも良い。
【0051】
マルチプレックス方式では第一の基板上に形成するのは表示用電極、基準電極の2種だけでよいが、アクティブマトリクス方式の場合、このほかにスイッチング素子として非線形素子、例えば薄膜トランジスタ(TFT)や非線型ダイオードを各画素毎に配置する。
【0052】
TFTとしては活性層にa−Si(アモルファスシリコン)又はP−Si(多結晶)シリコンを用いたものを用いることが出来る。アクティブマトリクス方式の場合、上記駆動素子の構成は、スタガー型、逆スタガー型といった公知の構成を利用することが出来る。
【0053】
また、多結晶シリコンを用いたトランジスタを用いる場合、液晶材料を駆動する周辺駆動回路をTFTを形成した基板と同一平面上に形成することが可能となる。
【0054】
周辺駆動回路は、アクティブマトリクス回路を構成するTFTを作製するのと同じプロセスで作製することが可能である。周辺駆動回路は、一般にn−ch型のTFTとp−ch型のTFTとを組み合わせた相補型素子から形成される。
【0055】
ゲイト、ソース、ソレイン等のTFTの各電極を構成する材料としては、Cr、Al、ITO、Taを使用することが出来る。また、電極断面は矩形、台形でもかまわないが、曲面を、なだらかな面もしくは曲面を持つ断面形状にすることが好ましい。これは、液晶層中に形成される電界の形状をその電界強度にムラがないようなものとするためである。
【0056】
また、各層間絶縁膜、TFT保護膜としては酸化珪素(SiO2 )または窒化珪素(SiN)を用いることが可能である。
【0057】
対向基板(101)についてはTFTを形成した基板と同種の材料を用いることが可能である。また、対向基板には特に電極を形成する必要はないが、場合によっては基板の一部もしくは全面に電極を形成しても構わない。この時の電極材料としては上記の金属の他、透光性を有する材料、例えばITO等を使用することが出来る。
【0058】
また、対向基板上もしくはTFT基板あるいは両方の基板上にコントラスト向上のため表示に関係しない部分を遮光する手段を配置することは有効である。この遮光手段としては、Cr等の金属もしくは黒色の顔料が分散された高分子材料などにより、図示しないブラックマトリクスを形成する例を挙げることをできる。
【0059】
さらに、カラー表示の場合には各画素に対応する位置にR(赤)、G(緑)、B(青)、もしくはC(シアン)、M(マジェンダ)、Y(黄)のカラーフィルターを形成する。カラーフィルターの各色の配置はストライプ配置又はデルタ配置などが利用できる。
【0060】
利用できる液晶材料としてはネマチック、コレステリック、スメクチック性を示す材料を挙げられる。特にネマチック液晶を用い、透明樹脂中に分散させることが望ましい。
【0061】
ここでは、ネマチック液晶の中でも、駆動方法によって、誘電異方性が正もしくは負を示すものを適宜選択して使用する。さらに屈折率異方性が小さいものを用いると、視野角をより拡大できる。
【0062】
液晶を分散して保持する高分子バインダとしては、紫外線硬化型のものや、熱硬化型のものを利用することができる。紫外線硬化型としてはウレタンアクリレート系樹脂、また熱硬化型としてはエポキシ系樹脂が例として挙げられる。
【0063】
また、液晶材料と高分子バインダの混合比は重量比で液晶:高分子=5:5〜9:1とすることが望ましい。特に7:3の時、良好な表示特性が得られた。
【0064】
上記液晶を保持する高分子材料に対して、液晶層に垂直な方向における屈折率の異方性(即ち一軸性)を与える方法としては、機械的に引き延ばすことにより、屈折率の異方性を与える方法を挙げることができる。また、硬化の際に電場や磁場を特定の方向から与えることにより、屈折率の異方性を与えることもできる。また、光硬化型の樹脂において、特定の偏光状態を有した光を照射することにより、所定の光学異方性を与える方法を用いることもできる。これらは、液晶分散後、光の透過量を観測しながら製作してもよい。
【0065】
【作用】
ここで、高分子材料として屈折率が異方性を有している材料を用いる必要性について説明する。
【0066】
従来より公知の液晶層に垂直な方向に電界を加える型式を有する分散型の液晶電気光学装置においては、電界印加時において、液晶分子の長軸方向が基板に対して垂直な方向にそろう。
【0067】
このとき液晶分子の短軸方向の屈折率と高分子バインダの屈折率(この場合ポリマーの屈折率は等方性であるとする)とを一致させることにより、液晶層に入射した光はそまま透過する。
【0068】
一方本明細書に開示する発明の構成を採用した場合、電界印加時において液晶分子は、その長軸が基板と平行な方向に配列している。従って、電界印加時において、入射光は液晶分子の長軸に垂直な方向から各液晶分子に入射する。
【0069】
ここで一軸性を有する高分子バインダの配置を次にように実施する。液晶分子の長軸方向の屈折率と、電界印加時の液晶分子長軸方向の高分子バインダの屈折率を一致させ、かつ、これと直交方向の屈折率を液晶分子短軸方向の屈折率と一致させる。このように高分子材料として、屈折率の異なる一軸性のものを使用する。
【0070】
一軸性の高分子を用いることにより、無電界時の散乱する光の割合を増やすことができる。
【0071】
即ち、無電界時において、液晶分子の長軸が液晶層に垂直な方向からずれた場合、入射光の進路方向における高分子バインダと液晶分子との屈折率の違いをより大きくすることができるので、従来の等方性のポリマー樹脂を用いた場合に比較して、より激しく入射光を散乱できる。
【0072】
このことにより、電界印加時における入射光の透過と、無電界時における入射光の散乱との比を大きくすることができる。そして、高いコントラストを得ることができる。
【0073】
【実施例】
〔実施例1〕
本実施例では、図1及び図2に示す構成を作製する工程の詳細を説明する。本実施例では、TFTとして逆スタガー型の薄膜トランジスタを利用する場合の例を示す。
【0074】
まず、絶縁基板としてコーニング#7059ガラス基板(101)上に下地酸化膜(102)として厚さ1000〜3000Åの酸化珪素膜を成膜する。
【0075】
この酸化珪素膜の成膜方法としては、酸素雰囲気中でのスパッタ法やプラズマCVD法を用いればよい。
【0076】
その上にゲイト絶縁膜(103)を構成するためのCr膜を1000〜5000Åの厚さに成膜する。さらにそれをパターニングすることにより、ゲイト電極(103)の基となるパターンを形成する。
【0077】
その後、レジストをマスクとして用い等方性プラズマエッチングを行う。この時、放電ガス電圧を適切に設定することにより、エッチングの進行状況を制御し、電極に曲面を持たせる。こうして、その表面が曲面形状を有したゲイト電極(103)とコモン電極(共通電極)(104)を形成する。
【0078】
次にこれらの電極を覆うように、酸化珪素(SiO2 )よりなるゲイト絶縁膜(105)を成膜する。ゲイト絶縁膜としては、窒化珪素(SiN)を用いるのでもよい。
【0079】
次にゲイト絶縁膜(105)上に図示しない非晶質シリコン膜を成膜する。この非晶質珪素膜の成膜方法としては、プラズマCVD法または減圧熱CVD法を用いる。
【0080】
次にこの図示しない非晶質珪素膜をパターニングすることにより、非晶質珪素膜でなる活性層(106)を形成する。
【0081】
そして、非晶質シリコン膜のパターンでなる活性層(106)の一部に重畳するように、Al(アルミニウム)よりなるソース電極(107)、ドレイン電極(108)を形成する。この時、レジストをマスクとして用いた等方性プラズマエッチングを行いてそれぞれの電極の表面を曲面状態とする。
【0082】
次にTFTの保護膜として酸化珪素絶縁膜(109)を成膜する。この絶縁膜はSiN膜でも構わない。
【0083】
また、対向基板(101)もしくはTFT基板あるいは両方の基板上には、コントラスト向上のためのBM(ブラックマトリクス)を形成する。これは、表示に関係しない部分を遮光するためのものである。BMを形成する材料としては、Cr等の金属もしくは黒色の顔料が分散された高分子材料などを用いることができる。
【0084】
このようにして形成されたTFT基板と対向基板とを重ね合わせて液晶パネルを形成する。前記一対の基板は、基板間に直径3μmの球状スペーサーを挟むことでパネル面内全体で均一な基板間隔となるようにする。
【0085】
また、前記一対の基板を接着固定するためにエポキシ系の接着剤でシールを行う。シールのパターンは画素領域、周辺駆動回路領域を囲むような形状とする。
【0086】
この後所定の形状に前記一対の基板を切断する。そして、基板間に液晶層(110)を構成する高分子材料と液晶材料とを混合したものを注入する。
【0087】
ここでは、液晶材料としてプレポリマーとネマティック液晶を均一に混合した溶液を用いる。ここでは、プレポリマーとして、トリメチロールプロパントリアクリレートを用いる。そしてこのプレポリマーを重合開始剤とともに通常のネマティク液晶材料に対して約25%の割合で混合し、上記溶液を作製する。
【0088】
液晶注入後に基板全面に紫外光を照射して、基板間に形成されたモノマーを硬化(高分子化)させる。
【0089】
ここでは、偏光フィルターを利用して、所定の偏光方向を有した直線偏光の紫外光を照射することにより、所定の方向に分子構造の配向性を有したポリマーを形成する。このようにすることにより、屈折率が異方性を有したポリマーを形成することができる。
【0090】
〔実施例2〕
本実施例では、周辺駆動回路をも基板上に形成するモノリシック型のアクティブマトリクス回路を示す。以下において、図3及び図4を用いて本実施例の作製工程を説明する。
【0091】
図3は、本実施例画素部周辺の概略図である。また、図4は、図3のB−B′−B′′の断面を示したものである。図4において、左側に駆動回路のTFTの作製工程を、右側にアクティブマトリクス回路のTFTの作製工程をそれぞれ示す。
【0092】
まず、ガラス基板(301)上に下地膜を形成する。ここでは、ガラス基板としてコーニング1737ガラス基板を用いる。下地膜としては、スパッタ法で成膜される酸化珪素膜を用いる。
【0093】
その後、プラズマCVD法やLPCVD法によってアモルファスシリコン膜を300〜1500Å、好ましくは500〜1000Åに形成する。そして、500℃以上、好ましくは、500〜600℃の温度で熱アニールを行い、シリコン膜を結晶化させる。
【0094】
熱アニールによっての結晶化の後、光(レーザーなど)アニールを行って、さらに結晶化を高めてもよい。
【0095】
また、熱アニールによる結晶化の際に特開平6−244103、同6−244104に記述されているように、ニッケル等のシリコンの結晶化を促進させる元素を添加する方法を利用するのでもよい。
【0096】
次にシリコン膜をエッチングして、駆動回路のTFTの活性層(302)(Pチャネル型TFT用)、(303)(Nチャネル型TFT用)を形成する。また同時にマトリクス回路のTFT(画素TFT) の活性層(304)を形成する。
【0097】
さらに、ゲイト絶縁膜として、酸素雰囲気中でのスパッタ法によって厚さ500〜2000Åの酸化珪素膜(305)を形成する。ゲイト絶縁膜の形成方法としては、プラズマCVD法を用いてもよい。プラズマCVD法によって酸化珪素膜を形成する場合には、原料ガスとして、一酸化二窒素(N2 O)もしくは酸素(O2 )とモノシラン(SiH4 ) を用いることが好ましい。
【0098】
その後、厚さ2000〜6000Åのアルミニウム膜をスパッタ法によって基板全面に形成する。このアルミニウム膜中には、その後の熱プロセスによってヒロックが発生するのを防止するため、シリコンまたはスカンジウム、パラジウムなどを含有させる。
【0099】
等方性プラズマエッチングを行いゲイト電極(306)、(307)、(308)と、コモン電極(309)(共通電極)を形成する。(図7(A))
【0100】
この時、放電ガス電圧を適切に設定し、電極に曲面を持たせる。その後、イオンドーピング法によって、全ての島状活性層に、ゲイト電極をマスクとして自己整合的に、フォスフィン(PH3 )をドーピングガスとして燐を注入する。
【0101】
このイオン注入工程においては、ドーズ量を1×1012〜5×1013原子/cm2 とする。この工程結果、弱いN型領域(310)、(311)、(312)が形成される。(図4(B))
【0102】
次にPチャネル型の活性層を覆うフォトレジストのマスク(313)及び画素TFTの活性層(304)の一部を覆うフォトレジストのマスク(314)を形成する。フォトレジストのマスク(314)は、ゲイト電極(308)の端から3μm離れた部分まで覆う形状とする。
【0103】
そして、再びイオンドーピング法によってフォスフィンをドーピングガスとして燐を注入する。ドーズ量は1×1015〜5×1016原子/cm2 とする。この結果として、強いN型領域(ソース、ドレイン)(315)、(316)が形成される。
【0104】
なお、画素TFT上のフォトレジスト(314)に覆われていた領域(317)は、今回のドーピングでは燐が注入されないので、弱いN型のままとなる。(図4(C))
【0105】
次に、Nチャネル型TFTの活性層(303)、(304)をフォトレジストのマスク(318)で覆い、ジボラン(B2 H6 )をドーピングガスとして、イオンドーピング法により、硼素を島状領域(302)に注入する。
【0106】
ここでドーズ量は5×1014〜8×1015原子/cm2 とする。このドーピングでは、硼素のドーズ量が図4(C)における燐のドーズ量が上回るため、先に形成されていた弱いN型領域(310)は強いP型領域(319)に反転する。
【0107】
以上のドーピングにより、強いN型領域(ソース/ドレイン)(315)、(316)、強いP型領域(ソース/ドレイン)(319)、弱いN型領域(低濃度不純物領域)(317)が形成される。(図4(D))
【0108】
なお、弱いN型領域(317)のドレイン側がLDD(ライトドープドレイン領域と呼ばれる領域となる)
【0109】
その後、450〜850℃で0. 5〜3時間の熱アニールを施すことにより、ドーピングによるダメージを回復させる。またドーピングされた不純物を活性化させ、シリコンの結晶性を回復させる。
【0110】
その後、全面に層間絶縁膜(320)として、プラズマCVD法によって酸化珪素膜を厚さ3000〜6000Åの厚さに形成する。これは、窒化珪素膜あるいは酸化珪素膜と窒化珪素膜の多層膜であってもよい。
【0111】
そして、層間絶縁膜(320)をウエットエッチング法またはドライエッチング法によって、エッチングして、ソース/ドレインにコンタクトホールを形成する。
【0112】
そして、スパッタ法によって厚さ2000〜6000Åのアルミニウム膜、もしくはチタンとアルミニウムの多層膜を形成する。
【0113】
これをレジストをマスクとして用いエッチングしパターニングを行う。ここでは等方性のプラズマエッチングによってエッチングを行う。
【0114】
ここでは、エッチング時の条件適切に設定し、電極に曲面を持たせた形状を形成する。こうして周辺回路の電極・配線(321)、(322)、(323)および画素TFTの電極・配線(324)、(325)を形成する。
【0115】
さらに、プラズマCVD法によって、厚さ1000〜3000Åの窒化珪素膜(326)が層間膜として形成する。(図4(E))
【0116】
以下、実施例1と同様な方法で、液晶セルを作製する。ここで、シールのパターンは画素領域及び周辺駆動回路領域を囲むようなパターンとする。
【0117】
本実施例においては、紫外線硬化特性を有するエポキシ変成アクリル樹脂中に50重量%のネマチック液晶を分散させた樹脂を使用して液晶層を構成する。なお、(113)がエポキシ変成アクリル樹脂でなるポリマー中に分散された液晶である。
【0118】
本実施例においては、エポキシ変成アクリル樹脂を硬化させる方法として、偏光フィルターを介した紫外光を照射する方法を用いる。この方法により、液晶層に垂直(基板に垂直)な方向に屈折率の異方性を有するポリマーを形成する。
【0119】
本実施例における構成とすれば、駆動回路を画素部TFTと同一基板内に作製しているため、作製コストが少なくてすむという利点がある。
【0120】
【発明の効果】
本明細書で開示する発明を利用することにより、明るくコントラストが高く、また視野角の広いアクティブマトリクス型の液晶電気光学装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 液晶電気光学装置の画素領域を示す概略の上面図。
【図2】 液晶電気光学装置の画素領域を示す概略の断面図。
【図3】 液晶電気光学装置の画素領域を示す概略の上面図。
【図4】 液晶電気光学装置の画素領域を示す概略の断面図。
【符号の説明】
101、301 基板
102 下地膜
103 ゲイト電極
104 コモン電極
105 ゲイト絶縁膜
106 a−Siシリコン膜
107 ソース電極
108 ドレイン電極
109 TFT保護膜
110 高分子樹脂
111 保護膜
112 偏光板
113 液晶
302、303、304 活性層
305 ゲイト絶縁膜(酸化珪素)
306、307、308 ゲイト線
309 コモン(共通)電極
310〜312 弱いN型領域
313、314 フォトレジストのマスク
315、316 強いN型領域(ソース/ドレイン)
317 低濃度不純物領域
318 フォトレジストのマスク
319 強いP型領域(ソース/ドレイン)
320 層間絶縁膜
321〜325 周辺駆動回路、画素TFTの電極・配線
326 窒化珪素膜
Claims (3)
- 基板と、前記基板上の液晶層と、前記液晶層に対して前記基板の表面に平行な方向の電界を印加する手段とを有し、
前記液晶層は、高分子材料中に液晶材料が分散されて保持され、
前記高分子材料の屈折率は、電界印加時の前記液晶材料の配向ベクトルの方向において前記液晶材料の長軸方向の屈折率と概略一致し、かつ、前記配向ベクトルと直交する方向において前記液晶材料の短軸方向の屈折率と概略一致し、
前記高分子材料は、光硬化型の樹脂において、所定の偏光方向を有した光を照射することにより形成されることを特徴とする液晶電気光学装置。 - 基板上に液晶層を有し、
前記液晶層に対して前記基板の表面に平行な方向に印加される電界によって、前記液晶層に入射する光の透過と散乱が選択される液晶電気光学装置であって、
前記液晶層は、高分子材料中に液晶材料が分散されて保持され、
前記高分子材料の屈折率は、電界印加時の前記液晶材料の配向ベクトルの方向において前記液晶材料の長軸方向の屈折率と概略一致し、かつ、前記配向ベクトルと直交する方向において前記液晶材料の短軸方向の屈折率と概略一致し、
前記高分子材料は、光硬化型の樹脂において、所定の偏光方向を有した光を照射することにより形成されることを特徴とする液晶電気光学装置。 - 請求項1または請求項2において、
前記基板上に、前記電界を印加するための一対の電極を有し、
前記一対の電極それぞれの表面は、曲面の形状を有することを特徴とする液晶電気光学装置。
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